説明

イオン発生装置およびその製造方法

【課題】ケース本体に樹脂を充填して硬化させた後に蓋体3をケース本体2に取り付ける従来のものでは、樹脂の硬化に伴ってケース本体2が変形する場合があり、ケース本体2に蓋体3を取り付けることができない場合が生じるおそれがある。
【解決手段】ケース本体2に蓋体3を取り付けた後に、樹脂注入口4から樹脂を注入することとした。なお、樹脂注入口4から下方に延びる筒状の樹脂通路41を形成した。規定量の樹脂を急速に充填しても、樹脂がこの樹脂通路41内に一旦滞留し、その後に樹脂がケース本体2内に拡がるので、樹脂の充填時間を短くすることができる。また、蓋体3をケース本体2に取り付けた後で樹脂を硬化させるので、ケース本体2が変形しても蓋体3が取り付けられないという不具合は生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース本体の表面に露出するように取り付けられた放電電極からイオンを発生させるイオン発生装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のイオン発生装置は、ケース本体内に昇圧トランスやその他の電子部品を収納させ、その後に放電電極と電子部品とをリード線を介してハンダ付けにより接続している。そして、リード線がハンダ付けされた放電電極を外部に露出するように取り付けたあと、ケース本体内に樹脂を充填してポッティングを行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところがこのような構成では製造工程が煩雑となり、特に最後に樹脂を充填する際、樹脂注入口を大きく形成できないことから、樹脂の充填に長時間を有する。
【0004】
このような不具合を解消するため、特願2004−336836号として、表面に露出するように放電電極が取り付けられたケース本体内に電子部品を格納させ、その後、ケース本体の上部開口から樹脂をケース本体内に注入するようにしたものを提案した。このものでは、樹脂を加熱して硬化させた後にケース本体の上部開口に蓋体を取り付けて上部開口を閉塞するようにしている。
【特許文献1】特開2003−45611号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載の従来のイオン発生装置の不具合を解消すべく提案したものは、ケース本体に充填した樹脂を加熱硬化させた後に蓋体をケース本体に取り付けているが、樹脂を硬化させる工程で樹脂が収縮するため、ケース本体が変形する場合がある。ケース本体が変形するとその後で蓋体をケース本体に取り付ける際に、蓋体がうまく取り付けられないという不具合が生じる。
【0006】
また、ケース本体内に格納する回路基板に、外部からのハーネスが接続されるコネクタを固定した場合、蓋体にはこのコネクタが臨む窓穴を設けなければならない。そして蓋体をケース本体に取り付けた際にこの窓穴からコネクタが外部に露出する必要がある。ところが、蓋体をケース本体に取り付ける時点では樹脂が硬化しているのでコネクタの位置を微調節することができない。そのため窓穴をコネクタの形状よりも余分に大きく形成しなければならない。
【0007】
さらに、樹脂をケース本体の上部開口から充填できるので短時間で多量の樹脂を充填できるが、回路基板の下方の空気が抜ける速度が樹脂の充填速度に追いつけないと、ケース本体から樹脂が溢れる。そのため、せっかく上部開口から急速に樹脂を充填できるのに、樹脂を複数回に分けて充填しなければならない。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記の不具合を解消することができるイオン発生装置とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置は、表面に露出するようにイオン発生用の放電電極が取り付けられたケース本体に電子部品が格納され、その状態で樹脂によりポッティングされ、かつケース本体の上部開口を閉塞する蓋体を備えたイオン発生装置において、蓋体の上面に、ポッティング用の樹脂をケース本体内に充填するための樹脂注入口を設け、さらにその樹脂注入口の周縁から、充填された樹脂の表面に達する位置まで延設された筒状の樹脂通路を形成したことを特徴とする。
【0010】
なお、ケース本体と蓋体との接合部で、蓋体の下端がケース本体の上記上部開口内に嵌入し、かつ蓋体の下端が、ケース本体内に充填された樹脂の表面より下方に位置していれば、接合部が充填された樹脂でシールされ、より高い気密性が確保できる。
【0011】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置の製造方法は、表面に露出するようにイオン発生用の放電電極が取り付けられたケース本体に電子部品を格納する電子部品格納工程と、ポッティング用の樹脂をケース本体内に充填するための樹脂注入口が上面に設けられると共に、この樹脂注入口の周縁から下方に筒状の樹脂通路が延設された蓋体を、ケース本体の上部開口に嵌合させてこの上部開口を閉塞させる閉塞工程と、充填完了した状態で樹脂通路の下端が樹脂に接する量の樹脂を樹脂注入口から注入する注入工程と、注入された樹脂をケース本体内で硬化させる硬化工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、樹脂通路が設けられているので、一度に多量の樹脂を樹脂注入口に注入しても、樹脂はすぐにケース本体全体に拡がらず、樹脂通路に一旦溜まって、樹脂通路から徐々にケース本体に拡がる。そのため樹脂の注入に要する時間を短くすることができ、かつケース本体から樹脂が溢れることが防止される。
【0013】
また、樹脂を硬化させる前に蓋体をケース本体に取り付けるので、ケース本体が変形しておらず、取り付け不良が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して、1は本発明によるイオン発生装置である。図1ではイオン発生装置1を上下反転させて示している。このイオン発生装置1はケース本体2とこのケース本体2の上部開口を閉塞する蓋体3とで構成されている。ケース本体2の底部2aには放電電極21が外部に露出するように取り付けられている。
【0015】
図2を参照して、ケース本体2内には、昇圧コイル22やその他の電子部品が格納されている。24は回路基板に固定されたコネクタであり、外部のハーネスが取り付けられ、外部から電力を受電するためのものである。なお、23はノイズ防止用のシールドケースである。
【0016】
このケース本体2の上部開口20に、上方から蓋体3が取り付けられる。蓋体3の下部には嵌入部30が形成されており、この嵌入部30が上部開口20の内側に嵌ることにより蓋体3がケース本体2に取り付けられる。
【0017】
このようにケース本体2に蓋体3を取り付けた際に、コネクタ24が外部に対して露出するように、蓋体3の上面に窓穴31が形成されている。また、同じく蓋体3の上面には樹脂注入口4が形成されている。この樹脂注入口4の周縁には下方に延びる筒状の樹脂通路41が形成されている。
【0018】
蓋体3をケース本体2に取り付けた後、この樹脂注入口4からケース本体2に対して樹脂を注入する。この樹脂は加熱されることにより硬化する樹脂であって、例えばウレタン樹脂を用いる。
【0019】
図3を参照して、注入する樹脂の量は、完全に注入が完了した時点で樹脂の表面Pが樹脂通路41の下端41aと蓋体3の嵌入部30の下端3aとに共に接する量とした。なお、樹脂が下端3aに接していると、嵌入部30と上部開口20との隙間に樹脂が毛管現象によって若干侵入し、後の工程で樹脂を硬化させると、その隙間に侵入した樹脂によってケース本体2と蓋体3とが強固に連結されるとともに、嵌入部30と上部開口20とが完全にシールされる。
【0020】
上述のように、充填した樹脂は加熱されることにより硬化するので、ケース本体2内に樹脂を充填した後、加熱炉に移動させる。ただし、樹脂注入口4から規定量の樹脂をすべて急速に充填しても、樹脂通路41内に樹脂が一旦滞留し、イオン発生装置1を加熱炉に搬送する間に、樹脂通路41内に滞留した樹脂がケース本体2内に拡がり、樹脂が溢れることなくケース本体2内への樹脂の充填を完了させることができる。
【0021】
そして、樹脂が硬化した後は、樹脂通路41の下端41aが樹脂の表面Pに接するので、樹脂通路41はケース本体2の内部に対して完全にシールされる。ただし、上記の構成では窓穴31とコネクタ24との間の気密が確保されない。樹脂を硬化させた後、ケース本体2内を完全に外部からシールしたい場合には、図4に示すように、窓穴31の周縁からも下方に延びる筒状部32を形成し、筒状部32の下端32aも樹脂の表面Pに接するようにすればよい。なお、図4に示す構成を採用する際には、蓋体3の上面に微細な空気抜き穴33を設けておき、樹脂を硬化させた後にその空気抜き穴33を閉鎖する。
【0022】
ところで、上記実施の形態で用いたウレタン樹脂は加熱することにより硬化させたが、常温で硬化する樹脂を用いてポッティングしてもよい。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】イオン発生装置を上下反転させた図
【図2】イオン発生装置の分解図
【図3】イオン発生装置の断面図
【図4】他の実施の形態における断面図
【符号の説明】
【0025】
1 イオン発生装置
2 ケース本体
3 蓋体
4 樹脂注入口
21 放電電極
41 樹脂通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に露出するようにイオン発生用の放電電極が取り付けられたケース本体に電子部品が格納され、その状態で樹脂によりポッティングされ、かつケース本体の上部開口を閉塞する蓋体を備えたイオン発生装置において、蓋体の上面に、ポッティング用の樹脂をケース本体内に充填するための樹脂注入口を設け、さらにその樹脂注入口の周縁から、充填された樹脂の表面に達する位置まで延設された筒状の樹脂通路を形成したことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
ケース本体と蓋体との接合部で、蓋体の下端がケース本体の上記上部開口内に嵌入し、かつ蓋体の下端が、ケース本体内に充填された樹脂の表面より下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
表面に露出するようにイオン発生用の放電電極が取り付けられたケース本体に電子部品を格納する電子部品格納工程と、ポッティング用の樹脂をケース本体内に充填するための樹脂注入口が上面に設けられると共に、この樹脂注入口の周縁から下方に筒状の樹脂通路が延設された蓋体を、ケース本体の上部開口に嵌合させてこの上部開口を閉塞させる閉塞工程と、充填完了した状態で樹脂通路の下端が樹脂に接する量の樹脂を樹脂注入口から注入する注入工程と、注入された樹脂をケース本体内で硬化させる硬化工程とからなることを特徴とするイオン発生装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−222045(P2006−222045A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36661(P2005−36661)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)