説明

インキ用バインダー、インキおよびインキ硬化物

【課題】表面タック性を低減することができ、耐久性および密着性にも優れるインキ硬化物を得ることができるインキを製造するための、インキ用バインダー、そのインキ用バインダーを含むインキ、および、そのインキを硬化させて得られるインキ硬化物を提供すること。
【解決手段】活性水素基を有するポリウレタン樹脂を含有する主剤と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有する硬化剤とからインキ用バインダーを調製し、そのインキ用バインダーと顔料とを含むインキを得て、そのインキを硬化させることにより、インキ硬化物を得る。このインキ用バインダーを用いて得られるインキによれば、表面タック性が低減されるとともに、優れた耐久性および密着性を備えるインキ硬化物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ用バインダー、インキおよびインキ硬化物に関し、詳しくは、インキ用バインダー、そのインキ用バインダーを含むインキ、および、そのインキを硬化させて得られるインキ硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、種々の分野で汎用され、例えば、インクなどの分散剤として用いられることが知られている。
【0003】
例えば、アジペート系ポリエステルジオールなどの、数平均分子量500〜10000の長鎖ポリオールと、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールやイソホロンジアミンなどの、炭素数20以下の鎖延長剤と、N−メチルジエタノールアミンなどの、第三級アミノ基含有活性水素化合物と、イソホロンジイソシアネートなどの有機ジイソシアネートを反応させて得られ、かつ、ガラス転移温度が−35〜+20℃であるポリウレタン系樹脂を含有するポリウレタン系印刷インキ用バインダーが、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−166148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、このようなインキ用バインダーを用いて得られるインキの硬化物は、表面タック性が高く(すなわち、耐ブロッキング性に劣り)、例えば、硬化物同士を接触させた場合に、それらが互いにくっつき、取扱性を低下させる場合がある。また、このようなインキおよびその硬化物は、耐候性、耐湿性などの耐久性にも劣る場合がある。
【0006】
また、このようなインキ用バインダーを用いて得られるインキおよびその硬化物としては、例えば、基材に処理し、硬化させた場合に、その基材に対する優れた密着性が要求されている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、表面タック性を低減することができ、耐久性および密着性にも優れるインキ硬化物を得ることができるインキを製造するための、インキ用バインダー、そのインキ用バインダーを含むインキ、および、そのインキを硬化させて得られるインキ硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のインキ用バインダーは、活性水素基を有するポリウレタン樹脂を含有する主剤と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有する硬化剤とから調製されることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のインキ用バインダーでは、前記ポリウレタン樹脂が、ペンタメチレンジイソシアネートを含む樹脂原料の反応により得られることが好適である。
【0010】
また、本発明のインキ用バインダーでは、前記ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体が、イソシアヌレート基および/またはアロファネート基を有することが好適である。
【0011】
また、本発明のインキ用バインダーでは、前記活性水素基が、アミノ基を含むことが好適である。
【0012】
また、本発明のインキ用バインダーでは、前記ポリウレタン樹脂のアミン価が、0.2〜15mgKOH/gであることが好適である。
【0013】
また、本発明のインキ用バインダーでは、前記硬化剤のイソシアネート基濃度が、15〜28質量%であることが好適である。
【0014】
また、本発明のインキは、上記のインキ用バインダーと、顔料とを含むことを特徴としている。
【0015】
また、本発明のインキ硬化物は、上記のインキを硬化させて得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインキ用バインダーは、活性水素基を有するポリウレタン樹脂を含有する主剤と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有する硬化剤とから調製されるため、このインキ用バインダーを用いて得られる本発明のインキによれば、表面タック性が低減されるとともに、優れた耐久性および密着性を備える本発明のインキ硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のインキ用バインダーは、主剤と硬化剤とから、調製される。
【0018】
主剤は、活性水素基(例えば、水酸基、アミノ基など)を有するポリウレタン樹脂を含有している。
【0019】
主剤において、活性水素基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物成分(詳しくは後述するが、例えば、ポリオール成分、ポリアミン成分など)とを、イソシアネート成分のイソシアネート基に対する、活性水素基含有化合物成分の活性水素基(例えば、水酸基、アミノ基など)の割合が1を超過するように反応させることにより、得ることができる。
【0020】
イソシアネート成分としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0021】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0023】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI、例えば、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートなど)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(シス異性体、トランス異性体もしくはその混合物)(HXDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0027】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0028】
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
【0029】
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
また、イソシアネート成分として、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、さらに、モノイソシアネートを併用することができる。
【0031】
モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート,シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
これらモノイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
これらイソシアネート成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
イソシアネート成分として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート、より好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
イソシアネート成分として、ペンタメチレンジイソシアネートを用いれば(すなわち、ポリウレタン樹脂がペンタメチレンジイソシアネートを含む樹脂原料の反応により調製されていれば)、ポリウレタン樹脂と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体と、顔料とから調製されるインキを硬化させて得られるインキ硬化物の、表面タック性、耐候性、耐湿性などの物性の向上を図ることができる。
【0036】
また、イソシアネート成分において、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5〜3.0、好ましくは、1.9〜2.5、とりわけ好ましくは、2である。
【0037】
また、イソシアネート成分のイソシアネート基含有率(JIS K 1603−1(2007)に準拠)は、例えば、31〜56質量%、好ましくは、36〜56質量%、より好ましくは、51〜55質量%である。また、このイソシアネート成分のアミン当量(JIS K 1603−1(2007)に準拠)は、例えば、75〜136、好ましくは、75〜117、より好ましくは、76〜82である。
【0038】
活性水素基含有化合物成分としては、例えば、ポリオール成分、ポリアミン成分などが挙げられる。
【0039】
ポリオール成分としては、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。
【0040】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400未満、好ましくは、300未満の化合物であって、例えば、低分子量ジオール、低分子量トリオール、水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0041】
低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,3−ブチレングリコール(1,3−ブタンジオール)、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−22アルカンジオール、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAまたはそのC2−4アルキレンオキサイド付加体などの脂環族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、レゾルシン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、上記ビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、N−メチルジエタノールアミンなどの3級アミノ基含有ジオールなどが挙げられる。
【0042】
低分子量トリオールとしては、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などが挙げられる。
【0043】
水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどが挙げられる。
【0044】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300以上、好ましくは、400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオール、などが挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールおよび/または後述するポリアミン成分を開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などのポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上から選択される多価アルコールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、および、その酸ハライドとの縮合反応またはエステル交換反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0048】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などが挙げられる。
【0049】
多塩基酸のアルキルエステルとしては、上記した多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
【0050】
酸無水物としては、上記した多塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられ、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
【0051】
酸ハライドとしては、上記した多塩基酸から誘導される酸ハライドが挙げられ、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0052】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸、乳酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0053】
さらに、ポリエステルポリオールには、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L−ラクチド、D−ラクチドなどのラクチド類などを開環重合により得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0054】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類を用いて得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる非晶性ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0055】
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0056】
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0057】
また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
そして、アクリルポリオールは、それら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0059】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0060】
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
【0061】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0062】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0063】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0064】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
また、ポリオール成分としては、さらに、天然物由来のポリオール成分、具体的には、糖などが挙げられる。
【0066】
糖としては、例えば、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトルロース、エリトロース、トレオース、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース、セドヘプツロース、ジギトキソースなどの単糖類、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ツラノース、セロビオース、パラチノース、ゲンチオビオース、メリビオース、ソホロースなどの二糖類、例えば、ラフィノース、メレジトース、ゲンチアノース、プランテオース、マルトトリオース、セロトリオース、マンニノトリオース、パノースなどの三糖類、例えば、アルカボース、スタキオース、セロテトラオース、スコロドースなどの四糖類、例えば、グリコーゲン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、グルカン、フルクトース、N−アセチルグルコサミン、キチン、キトサン、カロニン、ラミナラン、イヌリン、レバン、ゾウベヤシマンナン、キシラン、アクチノスペクチン酸、アルギン酸、グアラン、マンナン、へパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、プルランなどの多糖類、例えば、エリトリトール、エリスリトール、マルチトール、スクロースなどの糖アルコール、シクロデキストリンなどのオリゴ糖が挙げられる。また、糖アルコールとしては、例えば、上記したグリセリン、上記したソルビトール、上記したキシリトール、上記したマンニトール、上記したマンニットなども含まれる。
【0067】
これら糖は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
これらポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0069】
ポリオール成分として、好ましくは、高分子量ポリオール、または、高分子量ポリオールおよび低分子量ジオールの併用が挙げられる。
【0070】
ポリアミン成分は、アミノ基を2つ以上有する化合物であって、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどが挙げられる。
【0071】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0072】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0073】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0074】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む。)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0075】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0076】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
【0077】
これらポリアミン成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0078】
また、活性水素基含有化合物成分としては、さらに、水酸基−アミノ基併有成分が挙げられる。
【0079】
水酸基−アミノ基併有成分は、1つ以上の水酸基と1つ以上のアミノ基とを有する化合物であって、例えば、モノエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。
【0080】
また、水酸基−アミノ基併有成分としては、さらに、天然物由来の水酸基−アミノ基併有成分、具体的には、アミノ酸などが挙げられる。
【0081】
アミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、ヒドロキシリシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン、ヒドロキシプロリン、チロシン、バリン、グルコサミン、モナチン、タウリン、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、γ−アミノ酪酸、アントラニル酸、アミノ安息香酸、サイロキシン、ホスホセリン、デスモシン、オルチニン、クレアチン、テアニンなどが挙げられる。
【0082】
これら水酸基−アミノ基併有成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、水酸基−アミノ基併有成分は、例えば、ポリウレタン樹脂の分子量を調整するために用いることもできる。
【0083】
また、活性水素基含有化合物としては、上記のほか、例えば、ノボラック、クレゾール系に代表されるフェノール樹脂、ポリフェノール類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸および乳酸、グリコール酸の共重合体なども挙げられる。
【0084】
また、活性水素基含有化合物成分としては、さらに、天然物由来の活性水素化合物成分として、例えば、ウルシオール、クルクミン、リグニン、カルダノール、カルドール、2−メチルカルドール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、テルペン、ラッコール、チチオール、フェノール、ナフトール、アセチル−CoA(アセチルコエンザイムエー)、アセトアセチル−CoA(アセトアセチルコエンザイムエー)、D−(−)−3−ヒドロキシブチリル−CoA、サクシニル−CoA、(R)−3−ヒドロキシブチレート、イソオイゲノール、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート、ソホロリピッド、エマルザンなどが挙げられる。
【0085】
さらに、天然物由来の活性水素基含有化合物成分としては、例えば、脂肪酸などの酸が挙げられる。
【0086】
脂肪酸としては、例えば、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸、コハク酸、オキサロ酢酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、グルコン酸、没食子酸、酒石酸、リンゴ酸、ウンデシレン酸、11−アミノウンデカン酸、へプチル酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、リノレン酸、リノール酸、リシノール酸、オレイン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、3−ヒドロキシ酪酸、レブリン酸、アビエチン酸、ネオアミエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸、アナカルド酸、パルミチン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシへキサン酸、3−ヒドロキシバレリン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸、グリオキシル酸、オキソグルタン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、スピクルスポル酸などが挙げられる。
【0087】
さらに、活性水素基含有化合物成分としては、ポリウレタン樹脂の分子量を調整する場合などには、モノオールおよび/またはモノアミンを併用することができる。
【0088】
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5〜38)および脂肪族不飽和アルコール(C9〜24)、アルケニルアルコール、2−プロペン−1−オール、アルカジエノール(C6〜8)、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オールなどが挙げられる。
【0089】
これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0090】
モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン)、3−(ドデシルオキシ)プロピルアミン、モルホリンなどが挙げられる。
【0091】
これらモノアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
これら活性水素基含有化合物成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0093】
そして、ポリウレタン樹脂の製造方法としては、分子末端に活性水素基(例えば、水酸基、アミノ基など)が導入されるようにポリウレタン樹脂を調製できれば、特に制限されず、公知の方法が用いられる。そのような方法として、好ましくは、プレポリマー法が挙げられる。
【0094】
プレポリマー法では、例えば、まず、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物成分の一部とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
【0095】
イソシアネート基末端プレポリマーの合成において、イソシアネート成分として、好ましくは、上記した脂肪族脂肪族ポリイソシアネート、より好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0096】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの合成において、活性水素基含有化合物成分の一部として、好ましくは、高分子量ポリオール(および必要により低分子量ポリオール)が挙げられる。また、高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられ、必要により配合される低分子量ポリオールとして、好ましくは、低分子量ジオール、より好ましくは、脂肪族ジオールおよび3級アミノ基含有ジオールの併用が挙げられる。
【0097】
活性水素基含有化合物成分として、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールが併用される場合には、それらの配合割合は、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールの総量100質量部に対して、高分子量ポリオールが、例えば、80質量部以上、好ましくは、90質量部以上、通常、100質量部未満であり、低分子量ポリオールが、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、通常、0質量部を超過する。
【0098】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物成分の一部とを、活性水素基含有化合物成分の一部中の活性水素基に対するイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比R(NCO/活性水素基)が、例えば、1.1〜5.5、好ましくは、1.3〜4.5、さらに好ましくは、1.5〜3.5となるように処方(混合)し、反応容器中にて、所定のイソシアネート基濃度(後述)に至るまで、例えば、室温〜150℃、好ましくは、50〜120℃で、例えば、0.5〜18時間、好ましくは、2〜10時間反応させる。
【0099】
また、この反応においては、好ましくは、ウレタン化触媒を添加する。
【0100】
ウレタン化触媒としては、例えば、アミン類、有機金属化合物、カリウム塩などが挙げられる。
【0101】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0102】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0103】
カリウム塩としては、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどが挙げられる。
【0104】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0105】
ウレタン化触媒の配合割合は、イソシアネート成分および活性水素基含有化合物成分の総量に対して、例えば、1〜5000ppm、好ましくは、2〜3000ppmである。
【0106】
また、この方法では、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物成分とを、有機溶剤中において反応させることもできる。
【0107】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0108】
さらに、有機溶剤としては、例えば、非極性溶剤(非極性有機溶剤)が挙げられ、これら非極性溶剤としては、脂肪族、ナフテン系炭化水素系有機溶剤を含む、アニリン点が、例えば、10〜70℃、好ましくは、12〜65℃の、低毒性で溶解力の弱い非極性有機溶剤や、ターペン油に代表される植物性油などが挙げられる。
【0109】
これら有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0110】
なお、有機溶剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0111】
また、反応終了後には、必要に応じて、未反応のイソシアネート成分を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、除去することもできる。
【0112】
さらに、有機溶剤が配合される場合には、イソシアネート成分および活性水素基含有化合物成分の反応後の有機溶剤も、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去することができる。
【0113】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーの数平均分子量(測定法:GPC法(標準ポリスチレン換算))は、例えば、1000〜30000、好ましくは、2000〜20000であり、また、イソシアネート基当量は、例えば、500〜15000、好ましくは、1000〜10000である。
【0114】
また、イソシアネート基末端プレポリマーにおける、未反応(遊離)のイソシアネート成分の含有量は、例えば、0.01〜5質量%、好ましくは、0.05〜3質量%である。
【0115】
なお、イソシアネート基当量は、アミン当量と同義であり、JIS K 1603−1(2007)のA法またはB法により、求めることができる。また、未反応のイソシアネート成分の含有量は、例えば、HPLC測定により求めることができる。
【0116】
そして、このようなイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量(イソシアネート基含量、NCO%)は、例えば、0.3〜8質量%、好ましくは、0.6〜4質量%である。
【0117】
次いで、この方法では、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有化合物成分の残部とを反応させる。なお、プレポリマー法において、活性水素基含有化合物成分の残部は、鎖伸長剤として用いられる。
【0118】
活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)として、好ましくは、ポリアミン成分が挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリアミンが挙げられる。
【0119】
活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)として、ポリアミン成分を用いれば、分子末端において、遊離の活性水素基としてアミノ基が導入されたポリウレタン樹脂、すなわち、分子末端の遊離の活性水素基のうち少なくとも一部の活性水素基がアミノ基であるポリウレタン樹脂、好ましくは、すべての活性水素基がアミノ基であるポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0120】
ポリウレタン樹脂の分子末端の遊離の活性水素基がアミノ基を含有していれば、主剤および硬化剤の2液配合後の好適なポットライフを得ることができる。
【0121】
また、活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)としては、ポリウレタン樹脂の分子量を調整するため、ポリアミン成分と水酸基−アミノ基併有成分とを併用することもできる。
【0122】
活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)として、ポリアミン成分と水酸基−アミノ基併有成分とが併用される場合には、それらの配合割合は、ポリアミン成分と水酸基−アミノ基併有成分との総量100質量部に対して、ポリアミン成分が、例えば、10質量部以上、好ましくは、60質量部以上、通常、100質量部未満であり、水酸基−アミノ基併有成分が、例えば、90質量部以下、好ましくは、40質量部以下、通常、0質量部を超過する。
【0123】
ポリアミン成分と水酸基−アミノ基併有成分との配合割合が上記範囲であれば、分子末端において、遊離の活性水素基としてアミノ基が導入されたポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0124】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)とを反応させるには、イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)とを、活性水素基含有化合物成分の残部(鎖伸長剤)中の活性水素基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比R(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75を超過、好ましくは、0.9を超過し、1未満となるように処方(混合)して、例えば、室温〜250℃、好ましくは、室温〜200℃で、例えば、5分〜72時間、好ましくは、1〜24時間反応させる。
【0125】
これにより、活性水素基を有するポリウレタン樹脂を調製することができる。
【0126】
得られるポリウレタン樹脂の数平均分子量(測定法:GPC法(標準ポリスチレン換算))は、例えば、3000〜100000、好ましくは、5000〜50000であり、また、アミン価は、例えば、0.1〜20mgKOH/g、好ましくは、0.2〜15mgKOH/g、より好ましくは、2〜6mgKOH/gである。
【0127】
ポリウレタン樹脂のアミン価が上記範囲であれば、ポリウレタン樹脂と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体と、顔料とから調製されるインキを硬化させて得られるインキ硬化物の、表面タック性、耐候性、耐湿性などの物性の向上を図ることができる。
【0128】
なお、ポリウレタン樹脂のアミン価は、アミン当量に基づいて求められる。
【0129】
なお、プレポリマー法を例示してポリウレタン樹脂の製造方法を説明したが、ポリウレタン樹脂の製造方法としては、分子末端に活性水素基(好ましくは、アミノ基)を有するポリウレタン樹脂を得ることができれば特に限定されず、例えば、ワンショット法など、公知の方法を用いることもできる。
【0130】
また、主剤は、少なくとも上記ポリウレタン樹脂を含有していればよく、その他の主剤成分を含有することができる。
【0131】
その他の主剤成分として、具体的には、例えば、上記した活性水素基含有化合物成分などが挙げられる。
【0132】
その他の主剤成分が含有される場合において、ポリウレタン樹脂と、その他の主剤成分との配合割合は、それらの総量100質量部に対して、ポリウレタン樹脂が、例えば、10〜95質量部、好ましくは、30〜80質量部であり、その他の主剤成分が、例えば、5〜90質量部、好ましくは、20〜70質量部である。
【0133】
このようにして得られる主剤は、そのまま、つまり、上記のように製造されたポリウレタン樹脂(さらに必要によりその他の主剤成分)から有機溶剤を除去して用いることができ、また、有機溶剤を除去することなく溶液として用いることもできる。さらには、上記のように製造されたポリウレタン樹脂(さらに必要によりその他の主剤成分)を、上記した有機溶剤で希釈し、溶液として用いることもできる。
【0134】
主剤が溶液として用いられる場合には、その固形分濃度は、例えば、20〜80質量%、好ましくは、30〜70質量%である。
【0135】
また、主剤の粘度(25℃)は、例えば、50〜20000mPa・s、好ましくは、100〜10000mPa・sである。
【0136】
硬化剤は、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有するポリイソシアネート組成物として調製される。
【0137】
ペンタメチレンジイソシアネートとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ペンタメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、または、これらの混合物が挙げられ、好ましくは、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0138】
なお、ペンタメチレンジイソシアネートは、例えば、市販品として入手することもできるが、公知の方法、例えば、生化学的手法などによりペンタメチレンジアミンまたはその塩を製造し、そのペンタメチレンジアミンまたはその塩を、ホスゲン化法、カルバメート化法などの方法で反応させることにより、製造することができる。
【0139】
また、ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートを変性することにより得られ、例えば、上記したポリイソシアネート誘導体と同様の誘導体が挙げられる。
【0140】
また、ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体として、好ましくは、下記(a)〜(e)の官能基を少なくとも1種含有することが挙げられる。
(a)イソシアヌレート基
(b)アロファネート基
(c)ビウレット基
(d)ウレタン基
(e)ウレア基
上記(a)の官能基(イソシアヌレート基)を含有するペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマー(三量体)であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと、モノオールや低分子量ジオールとを、公知のイソシアヌレート化触媒(トリマー化触媒、例えば、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートなど)の存在下において反応させ、三量化することにより、得ることができる。
【0141】
なお、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマーは、イソシアヌレート基の他、さらに、イミノオキサジアジンジオン基などを有するポリイソシアネートを含むことができる。
【0142】
上記(b)の官能基(アロファネート基)を含有するペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートとモノアルコールとを、公知のアロファネート化触媒(例えば、上記イソシアヌレート化触媒)の存在下で反応させることにより、得ることができる。
【0143】
上記(c)の官能基(ビウレット基)を含有するペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、ペンタメチレンジイソシアネートのビウレット変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと、例えば、水、第三級アルコール(例えば、t−ブチルアルコールなど)、第二級アミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)などとを、公知のビウレット化触媒(例えば、トリメチルリン酸など)の存在下で反応させることにより、得ることができる。
【0144】
上記(d)の官能基(ウレタン基)を含有するペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、ペンタメチレンジイソシアネートのポリオール変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートとポリオール成分(例えば、トリメチロールプロパンなど)との反応により、得ることができる。
【0145】
上記(e)の官能基(ウレア基)を含有するペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、ペンタメチレンジイソシアネートのポリアミン変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと水、ポリアミン成分などとの反応により、得ることができる。
【0146】
なお、上記各反応においては、必要により、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(例えば、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール)などの添加剤や、例えば、有機亜リン酸エステル(例えば、トリス(トリデシル)ホスファイトなど)などの助触媒を、反応系に配合することもできる。
【0147】
さらに、上記した有機溶剤の存在下において上記各成分を反応させることができ、さらには、反応後に、公知の方法により有機溶剤を除去することもできる。
【0148】
また、ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、上記(a)〜(e)の官能基を少なくとも1種含有するか、または、2種以上含有することもできる。そのようなペンタメチレンジイソシアネートの誘導体は、上記の反応を適宜併用することにより、生成される。
【0149】
ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体において、遊離のペンタメチレンジイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネートを上記のように変性させた後、公知の方法で除去してもよく、その濃度は、ペンタメチレンジイソシアネートおよびその誘導体の総量に対して、例えば、5質量%以下、好ましくは、1質量%以下、通常、0質量%を超過する。
【0150】
これらペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0151】
ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体として、好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体が挙げられる。
【0152】
また、ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体として、好ましくは、イソシアヌレート基および/またはアロファネート基を有することが挙げられる。
【0153】
ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体が、イソシアヌレート基および/またはアロファネート基を有する場合には、ポリウレタン樹脂と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体と、顔料とから調製されるインキを硬化させて得られるインキ硬化物の、表面タック性、耐候性、耐湿性などの物性の向上を図ることができる。
【0154】
ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体が、イソシアヌレート基およびアロファネート基を有する場合には、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率は、例えば、0.2〜2000、好ましくは、0.5〜400、より好ましくは、1〜300、最も好ましくは、1.5〜200である。
【0155】
なお、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率は、例えば、H−NMRによって、アロファネート基に相当するシグナルと、イソシアヌレート基に相当するシグナルとの比率(面積比率)を求めることにより、算出することができる。
【0156】
ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体のイソシアネート基濃度は、例えば、10〜28質量%、好ましくは、18〜28質量%、より好ましくは、20〜26質量%、最も好ましくは、23〜26質量%である。
【0157】
ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体のイソシアネート基濃度は、n−ジブチルアミン法(JIS K−1556(2006)に準拠)により測定することができる。
【0158】
また、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体の粘度(25℃)は、例えば、100〜8000mPa・s、好ましくは、200〜5000mPa・sである。
【0159】
また、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体には、例えば、スルホンアミド基を含有する化合物、具体的には、芳香族スルホンアミド類(例えば、o−およびp−トルエンスルホンアミドなど)や、脂肪族スルホンアミド類などを含有させることもできる。
【0160】
スルホンアミド基を含有する化合物の配合割合は、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体に対して、例えば、10〜5000ppm、好ましくは、50〜4000ppm、より好ましくは、100〜3000ppmである。
【0161】
また、硬化剤は、少なくとも上記ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有していればよく、その他の硬化剤成分を含有することができる。
【0162】
その他の硬化剤成分として、具体的には、例えば、上記したイソシアネート成分などが挙げられる。
【0163】
その他の硬化剤成分が含有される場合において、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体と、その他の硬化剤成分との配合割合は、それらの総量100質量部に対して、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体が、例えば、5質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、80質量部以上、通常、100質量部未満であり、その他の硬化剤成分が、例えば、95質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、20質量部以下、通常、0質量部を超過する。
【0164】
また、硬化剤のイソシアネート基濃度は、例えば、7〜30質量%、好ましくは、15〜28質量%、より好ましくは、17〜28質量%、最も好ましくは、23〜28質量%である。
【0165】
硬化剤のイソシアネート基濃度が上記範囲であれば、ポリウレタン樹脂と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体と、顔料とから調製されるインキを硬化させて得られるインキ硬化物の、表面タック性、耐候性、耐湿性などの物性の向上を図ることができる。
【0166】
なお、硬化剤のイソシアネート基濃度は、n−ジブチルアミン法(JIS K−1556(2006)に準拠)により測定することができる。
【0167】
また、硬化剤は、そのまま、つまり、上記のように製造されたペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(さらに必要によりその他の硬化剤成分)から有機溶剤を除去して用いることができ、また、有機溶剤を除去することなく溶液として用いることもできる。さらには、上記のように製造されたペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(さらに必要によりその他の硬化剤成分)を、上記した有機溶剤で希釈し、溶液として用いることもできる。
【0168】
硬化剤が溶液として用いられる場合には、その固形分濃度は、例えば、50〜95質量%、好ましくは、75〜95質量%である。
【0169】
また、硬化剤の粘度(25℃)は、例えば、50〜7000mPa・s、好ましくは、100〜4000mPa・sである。
【0170】
そして、インキ用バインダーは、上記した主剤および上記した硬化剤から調製される。
【0171】
インキ用バインダーにおいて、主剤と硬化剤との質量割合は、主剤(主剤が溶液として用いられる場合には、有機溶剤を含む。)100質量部に対して、硬化剤(硬化剤が溶液として用いられる場合には、有機溶剤を含む。)が、例えば、0.05〜20質量部、好ましくは、0.1〜5質量部であり、また、主剤中の固形分100質量部に対して、硬化剤中の固形分が、例えば、0.1〜60質量部、好ましくは、0.2〜20質量部である。
【0172】
また、主剤と硬化剤との配合割合は、主剤中の活性水素基に対する、硬化剤中のイソシアネート基の当量比R(NCO/活性水素基)が、例えば、1.1〜2.4、好ましくは、1.2〜1.9となるように、調整される。
【0173】
また、インキ用バインダーには、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤、滑剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、離型剤、フィラー、加水分解防止剤、難燃剤などを配合することができる。
【0174】
なお、添加剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0175】
このような添加剤は、主剤および硬化剤の両方またはいずれか一方に、予め添加することができ、また、主剤および硬化剤の配合時に、別途添加することができる。
【0176】
また、添加剤を、主剤および/または硬化剤に添加する場合には、各成分の調製、具体的には、主剤におけるポリウレタン樹脂や、硬化剤におけるペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体などの調製において、各反応原料に添加することができ、また、反応後のポリウレタン樹脂や、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体などに添加することもできる。
【0177】
そして、本発明のインキは、上記したインキ用バインダーと、顔料とを含有している。
【0178】
顔料としては、特に制限されず、公知の顔料を用いることができる。顔料として、具体的には、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、インジゴ系、ペリレン系などの有機顔料、例えば、酸化チタン、カ−ボンブラック、弁柄、群青などの無機顔料などが挙げられる。
【0179】
これら顔料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0180】
インキ用バインダーと顔料との配合割合は、インキ用バインダーにおける主剤(主剤が溶液として用いられる場合には、有機溶剤を含む。)100質量部に対して、顔料が、例えば、1〜500質量部、好ましくは、2〜200質量部であり、また、主剤中の固形分100質量部に対して、顔料が、例えば、2〜1500質量部、好ましくは、4〜500質量部である。
【0181】
また、インキには、必要に応じて、上記した有機溶剤を配合することができ、インキにおける樹脂固形分は、例えば、2〜40質量%、好ましくは、5〜20質量%である。
【0182】
また、インキには、必要に応じて、上記した公知の添加剤などを、適宜の割合で配合することができる。なお、添加剤は、上記したように、インキ用バインダーに予め添加することができ、また、インキ用バインダーおよび顔料の配合時に別途添加することができる。
【0183】
そして、得られるインキは、例えば、はけ塗り、ロールコーターによる塗布、バーコーターによる塗布、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷による塗布など、公知の塗布・印刷法を用いて、塗布・印刷の対象となる基材(例えば、基板や支持体など)に、塗布することができる。
【0184】
そして、インキを硬化させることにより、本発明のインキ硬化物を得ることができる。
【0185】
インキを硬化させる方法としては、特に制限されないが、例えば、インキを上記したように基材に塗布し、例えば、25〜80℃、好ましくは、30〜60℃において、例えば、0.5〜30分間、好ましくは、1〜10分間乾燥させる。その後、必要により、相対湿度(RH)が、例えば、30〜80%、好ましくは、45〜55%の条件下において、例えば、23〜60℃、好ましくは、23〜40℃で、例えば、1〜14日間、好ましくは、1〜7日間、養生(エージング処理)する。
【0186】
これにより、インキ硬化物を得ることができる。
【0187】
そして、上記したインキ用バインダーは、活性水素基を有するポリウレタン樹脂を含有する主剤と、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有する硬化剤とから調製されるため、このインキ用バインダーを用いて得られる上記インキによれば、表面タック性が低減されるとともに、優れた耐久性および密着性を備えるインキ硬化物を得ることができる。
【0188】
なお、このような方法において用いられるペンタメチレンジアミンまたはその塩は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどの製造原料(重合用モノマー原料)や、例えば、ポリウレタン、エポキシ樹脂などの硬化剤として、好適に用いることができる。
【0189】
また、このような方法において用いられるペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体は、例えば、カルボジイミド誘導体、ウレトンイミン誘導体、ウレトジオン誘導体、ウレア誘導体、ビウレット誘導体、アロファネート誘導体の原料として、好適に用いることができる。
【0190】
また、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を、例えば、塗料、オーバープリントニス(OPニス)、工業あるいは包装用途接着剤、熱可塑および熱硬化性あるいはミラブルエラストマー、シーラント、水性樹脂、熱硬化樹脂、バインダー樹脂(具体的には、例えば、インキ、スクリーン印刷、コンクリートなどの用途において、例えば、ゴムチップ、粒状天然石、紙、木材、各種プラスチックチップ、各種金属、トナー、磁気記録材料などの各種材料に用いられるバインダー樹脂)、レンズ用樹脂、活性エネルギー硬化性樹脂、液晶性樹脂、軟質フォーム、硬質フォームなどの製造において用いれば、それらの耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性および電気的特性を向上させることができる。
【0191】
さらには、このようなペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体や、ペンタメチレンジアミンまたはその塩は、例えば、上記した活性水素基含有化合物成分、とりわけ、上記した天然物由来の糖、アミノ酸、脂肪酸などの架橋剤、修飾剤としても使用することができる。
【実施例】
【0192】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、製造例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<加水分解性塩素の濃度(単位:%)>
イソシアネートに含有される加水分解性塩素の濃度(HC)は、JIS K−1556(2000)の附属書3に記載されている加水分解性塩素の試験方法に準拠して測定した。
<ペンタメチレンジイソシアネートの濃度(単位:質量%)>
後述する調製例1で得られたペンタメチレンジイソシアネートを用い、以下のHPLC分析条件下で得られたクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、ポリイソシアネート組成物中のペンタメチレンジイソシアネートの濃度を算出した。
【0193】
装置;Prominence(島津製作所社製)
1) ポンプ LC−20AT
2) デガッサ DGU−20A3
3) オートサンプラ SIL−20A
4) カラム恒温槽 COT−20A
5) 検出器 SPD−20A
カラム;SHISEIDO SILICA SG−120
カラム温度;40℃
溶離液;n−ヘキサン/メタノール/1,2−ジクロロエタン=90/5/5(体積比)
流量;0.2mL/min
検出方法;UV 225nm
<イソシアネート基の転化率(単位:%)>
イソシアネート基の転化率は、以下のGPC測定条件において得られたクロマトグラムにより、全ピーク面積に対するペンタメチレンジイソシアネートのピークよりも高分子量側にあるピークの面積の割合を、イソシアネート基の転化率とした。
【0194】
装置;HLC−8020(東ソー社製)
カラム;G1000HXL、G2000HXLおよびG3000HXL(以上、東ソー製商品名)を直列に連結
カラム温度;40℃
溶離液;テトラヒドロフラン
流量;0.8mL/min
検出方法;示差屈折率
標準物質;ポリエチレンオキシド(東ソー社製、商品名:TSK標準ポリエチレンオキシド)
<イソシアネート基濃度(単位:質量%)>
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556(2006)に準拠したn−ジブチルアミン法により、測定した。
<粘度(単位:mPa・s)>
東機産業社製のE型粘度計TV−30を用いて、ポリイソシアネート組成物の25℃における粘度を測定した。
<アミン価(単位:mgKOH/g)>
ポリウレタン樹脂のアミン価は、試料を20mLのエタノールに溶解させ、0.2Nのエタノール性塩酸溶液で滴定し、以下の式により算出した。
アミン価=(A×f×0.2×56.1)/M
M:試料重量
f:0.2Nのエタノール性塩酸溶液の力価
A:滴定量
<イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率>
イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率は、H−NMRを測定し、シグナルの面積比から、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率を算出した。
装置:AL−400(JEOL社製、399.65MHz、プローブ:TH5ATFG2、30度パルス、パルス繰り返し時間:15秒間、分解能:0.06Hz、積算回数64回、シフト値の基準:TMS(dDMSO溶媒)、サンプル濃度:0.2重量%、試験管:5mmΦ)
ウレタン結合のピーク:6.7〜7.5ppm
アロファネート基のピーク:8.5ppm
イソシアヌレート基のピーク:3.7ppm
調製例1(ペンタメチレンジイソシアネートの製造)
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、o−ジクロロベンゼン2000質量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン2300質量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、ペンタメチレンジアミン(純度99.9質量%)400質量部をo−ジクロロベンゼン2600質量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0195】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度160℃で90分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン1100質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0196】
次いで、減圧下でo−ジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下でペンタメチレンジイソシアネートを留去させた。次いで、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにペンタメチレンジイソシアネートを装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、190℃、3時間加熱処理した。次いで、加熱処理後のペンタメチレンジイソシアネートを、ガラス製フラスコに装入し、充填物(住友重機械工業社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学社製、商品名:蒸留頭K型)、および、冷却器を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、純度99.9質量%のペンタメチレンジイソシアネートを得た。ペンタメチレンジイソシアネートの加水分解性塩素の濃度は、0.004%であった。
【0197】
合成例1(ポリイソシアネート組成物(a)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネートを500質量部、1,3−ブタンジオールを7質量部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3質量部装入し、82℃で3時間反応させた。
【0198】
次いで、50℃まで冷却し、トリマー化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.025質量部添加した。屈折率とイソシアネートの純度を測定し、所定の反応率にいたるまで反応を継続し、さらにトリマー化触媒を0.01質量部添加した。90分後に所定の反応率に達したため、o−トルエンスルホンアミドを0.1質量部添加した(イソシアネート基の転化率:15質量%)。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、さらに、得られた組成物100質量部に対し、o−トルエンスルホンアミドを0.02質量部添加し、ポリイソシアネート組成物(a)を得た。
【0199】
このポリイソシアネート組成物(a)のペンタメチレンジイソシアネートの濃度は0.2質量%、イソシアネート基濃度は23.2質量%、25℃における粘度は2500mPa・s、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率は2.1であった。
【0200】
合成例2(ポリイソシアネート組成物(b)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネートを500質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.2質量部、トリメチルリン酸を8質量部、水を4質量部装入し、130℃に昇温し、イソシアネート基濃度が計算値(48.7質量%)に達するまで反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、ポリイソシアネート組成物(b)を得た。
【0201】
このポリイソシアネート組成物(b)のペンタメチレンジイソシアネートの濃度は0.6質量%、イソシアネート基濃度は24.9質量%、25℃における粘度は2800mPa・s、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率は0であった。
【0202】
合成例3(ポリイソシアネート組成物(c)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、滴下ロートおよび、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネートを500質量部装入し、窒素雰囲気下、75℃に昇温した。次に、リボンヒーターで加熱した滴下ロートに、溶解させたトリメチロールプロパン(以下、TMPと略する場合がある。)を48.4質量部仕込み、1時間かけて滴下した。滴下後、80℃に昇温し、所定のイソシアネート基濃度(41.4質量%)に達するまで反応させ、ポリイソシアネート反応液(c)を得た。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、ポリイソシアネート組成物(c)を得た。
【0203】
このポリイソシアネート組成物(c)におけるペンタメチレンジイソシアネートの濃度は0.3質量%、イソシアネート基濃度は18.1質量%、25℃における粘度は2100mPa・s、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率は0であった。
【0204】
合成例4(ポリオールAの製造)
テレフタル酸、アジピン酸、ネオペンチルグリコールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールを、それらのモル比が、テレフタル酸/アジピン酸/ネオペンチルグリコール/3−メチル−1,5−ペンタンジオール=1/1/1/2となるように配合し、窒素気流下180〜220℃でエステル化反応させた。所定量の水を留出後、系内を徐々に減圧し、13.3kPa以下、220℃で縮合反応させて、数平均分子量が2000のポリエステルポリオール(以下、ポリオールA)を得た。
【0205】
合成例5
アジピン酸、1,4−ブタンジオールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールを、それらのモル比が、アジピン酸/1,4−ブタンジオール/3−メチル−1,5−ペンタンジオール=1/1/1となるように配合し、窒素気流下180〜220℃でエステル化反応させた。所定量の水を留出後、系内を徐々に減圧し、13.3kPa以下、220℃で縮合反応させて、数平均分子量が2000のポリエステルポリオール(以下、ポリオールB)を得た。
【0206】
合成例6(ポリウレタン樹脂Aの製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリオールAを91.7質量部、ポリオールBを137.6質量部、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略する場合がある。)を8.3質量部、N−メチルジエタノールアミン(以下、MDEAと略する場合がある。)を3.7質量部、メチルエチルケトン(以下、MEKと略する場合がある。)を300質量部装入し、均一に攪拌した。次いで、ペンタメチレンジイソシアネートを45.2質量部添加した後、70℃に加熱し、ジブチル錫(IV)ジラウラート(和光純薬工業製)を0.002質量部添加した。所定のイソシアネート基濃度(0.98質量%)に達した後、25℃に冷却した。次いで、MEKを182.1質量部添加し、さらに、イソプロパノール(以下、IPAと略する場合がある。)を213.8質量部、イソホロンジアミン(エボニックデグサジャパン社製、商品名:VESTANAT IPD、以下、IPDAと略する場合がある。)を17.7質量部混合したアミン溶液を添加した。FT−IRによりイソシアネート基のピークが検出されなくなるまで反応させ、ポリウレタン樹脂Aを得た。ポリウレタン樹脂Aは固形分が30%、25℃における粘度は750mPa・s、アミン価は4mgKOH/gであった。
【0207】
合成例7(ポリウレタン樹脂Bの製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリオールAを90.5質量部、ポリオールBを135.7質量部、NPGを8.1質量部、MDEAを3.6質量部、MEKを300質量部装入し、均一に攪拌した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学社製、商品名:タケネート700、以下、HDIと略する場合がある。)を48.7質量部添加した後、70℃に加熱し、ジブチル錫(IV)ジラウラートを0.002質量部添加した。所定のイソシアネート基濃度(0.98質量%)に達した後、25℃に冷却した。次いで、MEKを184.9質量部添加し、さらに、IPAを210.8質量部、IPDAを17.7質量部混合したアミン溶液を添加した。FT−IRによりイソシアネート基のピークが検出されなくなるまで反応させ、ポリウレタン樹脂Bを得た。ポリウレタン樹脂Bは固形分が30%、25℃における粘度は520mPa・s、アミン価は4mgKOH/gであった。
【0208】
合成例8(ポリウレタン樹脂Cの製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリオールAを85.5質量部、ポリオールBを128.3質量部、NPGを7.7質量部、MDEAを3.4質量部、MEKを300質量部装入し、均一に攪拌した。次いで、イソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製、商品名:VESTANAT IPDI、以下、IPDIと略する場合がある。)を61.7質量部添加した後、70℃に加熱し、ジブチル錫(IV)ジラウラートを0.002質量部添加した。所定のイソシアネート基濃度(0.98質量%)に達した後、25℃に冷却した。次いで、MEKを196.4質量部添加し、さらに、IPAを199.3質量部、IPDAを17.7質量部混合したアミン溶液を添加した。FT−IRによりイソシアネート基のピークが検出されなくなるまで反応させ、ポリウレタン樹脂Cを得た。ポリウレタン樹脂Cは固形分が30%、25℃における粘度は800mPa・s、アミン価は4mgKOH/gであった。
【0209】
合成例9(ポリウレタン樹脂Dの製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリオールAを91.7質量部、ポリオールBを137.6質量部、NPGを8.3質量部、MDEAを3.7質量部、MEKを300質量部装入し、均一に攪拌した。次いで、ペンタメチレンジイソシアネートを45.2質量部添加した後、70℃に加熱し、ジブチル錫(IV)ジラウラートを0.002質量部添加した。所定のイソシアネート基濃度(0.98質量%)に達した後、25℃に冷却した。次いで、MEKを172.7質量部添加し、さらに、IPAを213.8質量部、1,4−ブタンジオールを4.7質量部、1,3−ブタンジオールを4.7質量部混合した溶液を添加した後、70℃に加熱し、ジブチル錫(IV)ジラウラートを0.002質量部添加した。FT−IRによりイソシアネート基のピークが検出されなくなるまで反応させ、ポリウレタン樹脂Dを得た。ポリウレタン樹脂Dは固形分が30%、25℃における粘度は700mPa・sであった。
【0210】
実施例1
主剤として、ポリウレタン樹脂Aを100質量部、顔料として、二酸化チタン(TiO、和光純薬工業製)を100質量部、有機溶媒として、MEK50質量部をそれぞれ用意し、ガラスビーズとともに、ペイントシェーカーにて攪拌混合し、分散溶液を得た。
【0211】
次いで、硬化剤として、ポリイソシアネート組成物(a)を用意し、その硬化剤と上記分散溶液とを、各成分の配合処方が表1に示す通りとなるように混合し、インキ用バインダーおよびそのインキ用バインダーを含むインキを得た。
【0212】
その後、得られたインキをバーコーターにて、厚さ15μmのコロナ放電処理された延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムの放電処理面に、乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、60℃で1分間乾燥し、その後23℃、相対湿度50%の室内で24時間エージングした。これにより、インキ硬化物(塗布皮膜)を得た。
【0213】
実施例2〜6
主剤の種類および配合量、顔料の配合量、有機溶媒の配合量、硬化剤の種類および配合量を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして、インキ用バインダー、インキおよびインキ硬化物を得た。
【0214】
比較例1
主剤として、ポリウレタン樹脂Aを100質量部、顔料として、二酸化チタンを100質量部、有機溶媒として、MEK50質量部をそれぞれ用意し、ガラスビーズとともに、ペイントシェーカーにて攪拌混合し、分散溶液を得た。
【0215】
次いで、硬化剤として、タケネートD−170N(ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソシアネート基含量20.7%、三井化学社製)を用意し、その硬化剤と上記分散溶液とを、各成分の配合処方が表1に示す通りとなるように混合し、インキ用バインダーおよびそのインキ用バインダーを含むインキを得た。
【0216】
その後、実施例1と同様にして、インキ硬化物を得た。
【0217】
比較例2
主剤の種類および配合量、顔料の配合量、有機溶媒の配合量、硬化剤の種類および配合量を表1に示す通りとした以外は、比較例1と同様にして、インキ用バインダー、インキおよびインキ硬化物を得た。
【0218】
評価
各実施例および各比較例において得られたインキ硬化物を、下記する方法によって評価した。その結果を表1に示す。
<表面タック性(耐ブロッキング性)>
各実施例および各比較例において得られたサンプル(表面にインキ硬化物が形成されたポリエチレンテレフタラートフィルム)2枚を用意し、一方のサンプルのポリエチレンテレフタラートフィルムの裏面(インキ硬化物が形成されていない面)と、他方のサンプルのインキ硬化物とを、それぞれ貼り合わせ、積層フィルムとした。
【0219】
次いで、得られた積層フィルムをガラス板に挟み、5kgのおもりをのせ、60℃、90%RHの恒温槽中に24時間静置した。規定時間経過後、恒温槽から取り出し、ガラス板からフィルムをはずし、23℃、50%RHの室内で1時間静置した。次にサンプルを注意深くはがした後、インキ硬化物の剥離状態を以下の基準で評価した。
○ インキ硬化物の剥離がない。
△ インキ硬化物の剥離が部分的に見られる。
× インキ硬化物の剥離が大部分で見られる。
<密着性>
JIS K5600−5−6(1999)に準じたクロスカット法(カット間隔1mm)によって付着性を試験し、以下の基準により評価した。
◎ インキ硬化物が全く剥がれなかった。
○ インキ硬化物の20%未満が剥がれた。
△ インキ硬化物の20%以上50%未満が剥がれた。
× インキ硬化物の50%以上が剥がれた。
<耐候性>
以下の条件にてQUV試験を実施した後、23℃、50%RHの室内で1時間静置した。次に、JIS K5600−5−6(1999)に準じたクロスカット法(カット間隔1mm)によって付着性を試験し、以下の基準により評価した。
QUV試験条件
装置:デューパネル 光コントロールウェザーメーター(型式FDP、スガ試験機製)
サイクル条件:60℃×10%RH×4時間、50℃×95%RH×4時間
サイクル数:15サイクル
放射照度:28W/m
◎ インキ硬化物が全く剥がれなかった。
○ インキ硬化物の20%未満が剥がれた。
△ インキ硬化物の20%以上50%未満が剥がれた。
× インキ硬化物の50%以上が剥がれた。
<耐湿性(耐温水性)>
80℃の温水に1週間浸漬後、23℃、50%RHの室内で1時間静置した。次に、JIS K5600−5−6(1999)に準じたクロスカット法(カット間隔1mm)によって付着性を試験し、以下の基準により評価した。
◎ インキ硬化物が全く剥がれなかった。
○ インキ硬化物の20%未満が剥がれた。
△ インキ硬化物の20%以上50%未満が剥がれた。
× インキ硬化物の50%以上が剥がれた。
【0220】
【表1】

【0221】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0222】
タケネートD−170N:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソシアネート基含量20.7%、25℃における粘度2700mPa・s、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比率2.4(三井化学社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基を有するポリウレタン樹脂を含有する主剤と、
ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含有する硬化剤と
から調製されることを特徴とする、インキ用バインダー。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、ペンタメチレンジイソシアネートを含む樹脂原料の反応により得られることを特徴とする、請求項1に記載のインキ用バインダー。
【請求項3】
前記ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体が、イソシアヌレート基および/またはアロファネート基を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のインキ用バインダー。
【請求項4】
前記活性水素基が、アミノ基を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインキ用バインダー。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂のアミン価が、0.2〜15mgKOH/gであることを特徴とする、請求項4に記載のインキ用バインダー。
【請求項6】
前記硬化剤のイソシアネート基濃度が、15〜28質量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインキ用バインダー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のインキ用バインダーと、顔料とを含むことを特徴とする、インキ。
【請求項8】
請求項7に記載のインキを硬化させて得られることを特徴とする、インキ硬化物。