説明

インクジェットプリンタおよび画像記録方法

【課題】記録媒体に記録された画像における色ムラを抑制する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出機構31a〜31d、および、記録媒体上に付与されたインクを加熱して記録媒体に定着させるヒータ35を備える。吐出機構31a〜31dでは、複数の第1吐出口317a〜317dとヒータ35との間の走査方向の距離がそれぞれ、複数の第2吐出口318a〜318dとヒータ35との間の走査方向の距離と異なる。そこで、複数の第1吐出口317a〜317dに第1色変換テーブルを適用し、複数の第2吐出口318a〜318dに、第1色変換テーブルとは異なる第2色変換テーブルを適用することにより、発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体に記録された画像における色ムラを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーにて画像記録を行うインクジェットプリンタおよび画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷用紙上に画像を記録するインクジェットプリンタの1つとして、印刷用紙の全幅に亘って設けられた吐出部から、所定の走査方向に1回だけ移動する印刷用紙に向けてインクを吐出して画像の記録を行うワンパスタイプのインクジェットプリンタが知られている。例えば、特許文献1では、それぞれが所定の配列方向に配列された記録素子の列を有する複数の短尺ヘッドを、記録媒体の全幅に亘って当該配列方向に並べた記録ヘッドが開示されている。記録ヘッドでは、隣接する短尺ヘッドが、配列方向に直交する方向において異なる位置に配置される。
【0003】
一方、特許文献2では、複数色のインクによりカラー印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、RGBの3色からなる画像データを、色変換テーブルを参照しつつ、プリンタにて使用されるC,LC,M,LN,Y,Kの各色の多階調データに変換する技術が開示されている。当該インクジェットプリンタでは、気温や湿度といった環境条件に応じて、複数の色変換テーブルから適切な色変換テーブルが選択されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−144542号公報
【特許文献2】特開2001−105636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のインクジェットプリンタでは、記録ヘッドよりも手前に配置されたヒータにより記録媒体が加熱された後、記録ヘッドから記録媒体にインクが吐出され、記録媒体の熱によりインクのドットが記録媒体に定着する。特許文献1のインクジェットプリンタでは、隣接する2つの短尺ヘッドにおいて、短尺ヘッドとヒータとの間の走査方向における距離が異なるため、記録媒体が加熱されてからインクの着弾までの時間が異なり、インクの着弾時の記録媒体の温度が異なってしまう。その結果、着弾後のインクのドットの濡れ拡がりが異なり、記録媒体上において上記2つの短尺ヘッドにそれぞれ対応する2つの領域における発色に差が生じてしまう。
【0006】
また、記録ヘッドよりも後側にヒータが設けられ、記録媒体上に吐出されたインクをヒータにて加熱して定着するインクジェットプリンタも知られている。このようなインクジェットプリンタにおいても同様に、複数の短尺ヘッドの配置により、インクの着弾から加熱までの時間が異なると、複数の短尺ヘッドにそれぞれ対応する記録媒体上の複数の領域において発色に差が生じてしまう。
【0007】
さらに、カラー印刷を行うインクジェットプリンタでは、複数色のインクにそれぞれ対応する複数のヘッドが走査方向に配列されるが、各色の短尺ヘッドの配置により、第1の色のインクの着弾と第2の色のインクの着弾との間の時間が、幅方向の位置によって異なると、着弾後のインクのドットの濡れ拡がりや異なる色のインクのドットの重なり状態が異なって発色に差が生じてしまう。これらの発色の差は、印刷物の観察者により、色ムラとして認識される。このような色ムラは、特許文献2のように、気温や湿度に合わせて色変換テーブルを変更しても抑制することはできない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、色ムラを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、カラーにて画像記録を行うインクジェットプリンタであって、第1インクの微小液滴を記録媒体に向けて吐出する前部吐出機構と、前記第1インクとは異なる色の第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出する後部吐出機構と、前記記録媒体を前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して所定の走査方向に相対的に移動し、前記前部吐出機構に対向する位置および前記後部吐出機構に対向する位置を1回のみ通過させる移動機構と、前記走査方向における位置が前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して相対的に固定され、前記記録媒体上に付与されたインクを前記記録媒体に定着させる、または、定着を補助する定着処理部と、色変換テーブルを記憶する記憶部と、前記色変換テーブルを利用しつつ、画像記録に用いられる画像データの色を変換する画像データ変換部とを備え、前記前部吐出機構が、前記走査方向に垂直な幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第1前部吐出口群と、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第2前部吐出口群とを備え、前記後部吐出機構が、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第1前部吐出口群に対向する第1後部吐出口群と、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第2前部吐出口群に対向する第2後部吐出口群とを備え、前記第1前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離と異なり、または、前記第1前部吐出口群と前記第1後部吐出口群との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記第2後部吐出口群との間の前記走査方向の距離と異なり、前記記憶部が、前記第1前部吐出口群および前記第1後部吐出口群に適用される第1色変換テーブル、並びに、前記第2前部吐出口群および前記第2後部吐出口群に適用されるとともに前記第1色変換テーブルとは異なる第2色変換テーブルを記憶する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記前部吐出機構が、前記第1前部吐出口群が設けられる第1前部ヘッドと、前記第2前部吐出口群が設けられる第2前部ヘッドとを備え、前記後部吐出機構が、前記第1後部吐出口群が設けられる第1後部ヘッドと、前記第2後部吐出口群が設けられる第2後部ヘッドとを備え、前記第1前部ヘッドと前記第2前部ヘッドとが、前記幅方向において隣接するとともに前記走査方向において異なる位置に配置され、前記第1後部ヘッドと前記第2後部ヘッドとが、前記幅方向において隣接するとともに前記走査方向において異なる位置に配置される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットプリンタであって、前記第1前部吐出口群の端部と、前記第2前部吐出口群の端部とが、前記幅方向の所定の重複範囲にて前記走査方向に重なり、前記第1後部吐出口群の端部と、前記第2後部吐出口群の端部も、前記重複範囲にて前記走査方向に重なり、前記記録媒体上の前記重複範囲に対応するとともに前記走査方向に延びる重複領域に対して、前記第1前部吐出口群からの前記第1インクの吐出と、前記第2前部吐出口群からの前記第1インクの吐出とが切り替えつつ行われ、前記重複領域において、前記第1後部吐出口群からの前記第2インクの吐出と、前記第2後部吐出口群からの前記第2インクの吐出とが、前記第1インクの場合と同様に切り替えつつ行われ、前記画像データの色を変換する際に、前記重複領域の各位置に対して、前記第1前部吐出口群の一の吐出口および前記第1後部吐出口群の一の吐出口からのインクの吐出が行われる場合に前記第1色変換テーブルが利用され、前記第2前部吐出口群の一の吐出口および前記第2後部吐出口群の一の吐出口からのインクの吐出が行われる場合に前記第2色変換テーブルが利用される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、第1インクの微小液滴を吐出する前部吐出機構と、前記第1インクとは異なる色の第2インクの微小液滴を吐出する後部吐出機構と、記録媒体を前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して所定の走査方向に相対的に移動する移動機構と、前記走査方向における位置が前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して相対的に固定され、前記記録媒体上に付与されたインクを前記記録媒体に定着させる、または、定着を補助する定着処理部とを備え、前記前部吐出機構が、前記走査方向に垂直な幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第1前部吐出口群と、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第2前部吐出口群とを備え、前記後部吐出機構が、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第1前部吐出口群に対向する第1後部吐出口群と、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第2前部吐出口群に対向する第2後部吐出口群とを備え、前記第1前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離と異なり、または、前記第1前部吐出口群と前記第1後部吐出口群との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記第2後部吐出口群との間の前記走査方向の距離と異なるインクジェットプリンタによりカラーにて画像記録を行う画像記録方法であって、 a)第1色変換テーブル、および、前記第1色変換テーブルとは異なる第2色変換テーブルを準備する工程と、b)画像記録に用いられる画像データの前記第1前部吐出口群および前記第1後部吐出口群に対応する部分に前記第1色変換テーブルを適用し、前記第2前部吐出口群および前記第2後部吐出口群に対応する部分に前記第2色変換テーブルを適用しつつ画像データの色を変換する工程と、c)前記移動機構により、前記記録媒体を前記走査方向に相対的に移動し、前記前部吐出機構に対向する位置および前記後部吐出機構に対向する位置を1回のみ通過させ、前記記録媒体の移動に同期して、前記前部吐出機構および前記後部吐出機構から前記第1インクおよび前記第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出する工程とを備える。
【0013】
請求項5に記載の発明は、それぞれが幅方向に沿って配列された複数の吐出口を有するとともに前記幅方向に沿って千鳥状に配列される複数の前部ヘッドと、それぞれが前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口を有するとともに前記幅方向に沿って千鳥状に配列される複数の後部ヘッドと、記録媒体を前記複数の前部ヘッドおよび前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に垂直な走査方向に相対的に移動する移動機構と、前記走査方向における位置が前記複数の前部ヘッドおよび前記複数の後部ヘッドに対して相対的に固定され、前記記録媒体上に付与されたインクを前記記録媒体に定着させる、または、定着を補助する定着処理部とを備えるインクジェットプリンタによりカラーにて画像記録を行う画像記録方法であって、a)前記複数の前部ヘッドの境界の前記幅方向における位置である前部ヘッド境界位置が、前記複数の後部ヘッドの境界の前記幅方向における位置である後部ヘッド境界位置とずれている本記録配置から、前記複数の前部ヘッドを前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に相対的に移動し、前記前部ヘッド境界位置と前記後部ヘッド境界位置とを一致させたテーブル取得配置とする工程と、b)前記移動機構により、前記記録媒体を前記走査方向に相対的に移動し、前記複数の前部ヘッドに対向する位置および前記複数の後部ヘッドに対向する位置を1回のみ通過させる際に、前記複数の前部ヘッドから第1インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出し、前記複数の後部ヘッドから前記第1インクとは異なる第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出してカラーパッチを記録し、前記カラーバッチを測色して得られるデータから複数の色変換テーブルを取得する工程と、c)前記複数の前部ヘッドを前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に相対的に移動し、前記前部ヘッド境界位置と前記後部ヘッド境界位置を一致させた他のテーブル取得配置とした後に、前記b)工程を行う工程と、d)前記複数の前部ヘッドを前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に相対的に移動して前記本記録配置とする工程と、e)前記複数の前部ヘッドの境界および前記複数の後部ヘッドの境界のうち前記幅方向にて隣接する各2つの境界の間の領域について、前部ヘッドと前記定着部との間の前記走査方向の距離、および、前部ヘッドと後部ヘッドとの間の前記走査方向の距離に基づいて、前記b)工程および前記c)工程にて取得された複数の色変換テーブルから色変換テーブルを選択しつつ画像記録に用いられる画像データの色を変換する工程と、f)前記移動機構により、前記記録媒体を前記走査方向に相対的に移動し、前記複数の前部ヘッドに対向する位置および前記複数の後部ヘッドに対向する位置を1回のみ通過させ、前記記録媒体の移動に同期して、前記複数の前部ヘッドから前記第1インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出し、前記複数の後部ヘッドから前記第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、色ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す図である。
【図2】印刷ヘッドの底面の一部を示す図である。
【図3】コンピュータにより実現される機能構成を示すブロック図である。
【図4】インクジェットプリンタの動作を示す図である。
【図5】閾値マトリクスおよび元画像を抽象的に示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッドの底面の一部を示す図である。
【図7】第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッドの底面の一部を示す図である。
【図8】インクの吐出の切り替えの様子を示す図である。
【図9】第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッドの底面の一部を示す図である。
【図10】インクジェットプリンタの動作を示す図である。
【図11】他の印刷ヘッドの底面の一部を示す図である。
【図12】他の印刷ヘッドの底面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、複数の記録媒体9に対してインクジェット方式にて順次カラー印刷を行う(すなわち、カラー画像を記録する)枚葉式の画像記録装置である。本実施の形態では、記録媒体9として印刷用紙が利用され、印刷用紙上にカラーにて画像が記録される。
【0017】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、複数の記録媒体9を図1中の(+Y)方向である走査方向に移動する移動機構2、移動機構2による搬送途上の記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出して定着させる印刷ヘッド3、移動機構2に記録媒体9を供給する供給部51、印刷終了後の記録媒体9を移動機構2から受け取る排出部52、これらの機構を制御する制御部4、および、制御部4に接続されるコンピュータ6を備える。
【0018】
移動機構2は、それぞれが1枚のシート状の記録媒体9(本実施の形態では、印刷用紙)を吸着保持する複数のステージ21、複数のステージ21を案内する環状のガイド22、および、ガイド22内のベルトを図1中における反時計回りに移動させることにより、記録媒体9を保持するステージ21を印刷ヘッド3の下方(すなわち、(−Z)側)において(+Y)方向に移動するベルト駆動機構(図示省略)を備える。
【0019】
印刷ヘッド3は、それぞれが複数の吐出口から記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出する4つの吐出機構31a〜31dを備える。吐出機構31a〜31dは図1中のY方向に配列され、それぞれ異なる色のインクを吐出する。印刷ヘッド3において、図1中の最も(−Y)側に位置する吐出機構31aはK(ブラック)の有色インクを吐出し、吐出機構31aの(+Y)側の吐出機構31bはC(シアン)の有色インクを吐出し、吐出機構31bの(+Y)側の吐出機構31cはM(マゼンタ)の有色インクを吐出し、吐出機構31cの(+Y)側の吐出機構31dはY(イエロー)の有色インクを吐出する。なお、印刷ヘッド3では、他の色のインクを吐出する吐出機構が設けられてもよい。
【0020】
印刷ヘッド3では、吐出機構31dの(+Y)側にヒータ35が設けられる。ヒータ35の走査方向における位置は、吐出機構31a〜31dに対して相対的に固定されている。吐出機構31a〜31dから記録媒体9上に付与されたインクのドットは、ヒータ35により加熱されることにより記録媒体9に定着する。すなわち、ヒータ35は、記録媒体9上のインクを記録媒体9に定着させる定着処理部である。
【0021】
インクジェットプリンタ1では、走査方向(Y方向)に垂直な幅方向(X方向)に関して、印刷ヘッド3の吐出機構31a〜31dおよびヒータ35が記録媒体9の全幅に亘って(すなわち、X方向の全長に亘って)設けられており、記録媒体9を印刷ヘッド3に対して走査方向に相対的に移動し、印刷ヘッド3に対向する位置を1回のみ通過させることにより、記録媒体9に対する印刷が完了する。すなわち、インクジェットプリンタ1では、記録媒体9のX方向における往復移動を伴わない印刷(いわゆる、ワンパス印刷)が行われる。
【0022】
図2は、印刷ヘッド3の底面の一部を示す図である。吐出機構31aは、幅方向に沿って千鳥状に配置される複数の第1ヘッド311aおよび複数の第2ヘッド312aを備える。第1ヘッド311aには、幅方向に沿って配列された複数の第1吐出口317aが設けられ、第2ヘッド312aには、幅方向に沿って配列された複数の第2吐出口318aが設けられる。第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aに設けられる吐出口の個数は、実際には、図2に示すものよりも多い(後述する他のヘッドにおいても同様)。
【0023】
第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとは、幅方向において隣接するとともに走査方向において異なる位置に配置される。複数の第1ヘッド311aは、走査方向において同じ位置に配置され、複数の第2ヘッド312aも、走査方向において同じ位置に配置される。複数の第1ヘッド311aは、複数の第2ヘッド312aよりも(−Y)側、すなわち、記録媒体9に対する印刷が進行する方向の前側(以下、「上流側」ともいう。)に位置し、各第1ヘッド311aの複数の第1吐出口317aも、各第2ヘッド312aの複数の第2吐出口318aよりも(−Y)側に位置する。したがって、複数の第1吐出口317aとヒータ35との間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318aとヒータ35との間の走査方向の距離よりも長い。
【0024】
吐出機構31b〜31dは、吐出機構31aと同様の構造を有する。吐出機構31b〜31dは、幅方向に沿って千鳥状に配置される複数の第1ヘッド311b〜311dおよび複数の第2ヘッド312b〜312dを備える。第1ヘッド311b〜311dには、幅方向に沿って配列された複数の第1吐出口317b〜317dが設けられ、第2ヘッド312b〜312dには、幅方向に沿って配列された複数の第2吐出口318b〜318dが設けられる。吐出機構31b〜31dの第1ヘッド311b〜311dと第2ヘッド312b〜312dとはそれぞれ、幅方向において隣接するとともに走査方向において異なる位置に配置される。複数の第1吐出口317b〜317dとヒータ35との間の走査方向の距離はそれぞれ、複数の第2吐出口318b〜318dとヒータ35との間の走査方向の距離よりも長い。
【0025】
ここで、吐出機構31a、第1ヘッド311a、第2ヘッド312a、複数の第1吐出口317aおよび複数の第2吐出口318aをそれぞれ、第1インクを吐出する前部吐出機構、第1前部ヘッド、第2前部ヘッド、第1前部吐出口群および第2前部吐出口群とし、吐出機構31b、第1ヘッド311b、第2ヘッド312b、複数の第1吐出口317bおよび複数の第2吐出口318bをそれぞれ、第1インクとは異なる第2インクを吐出する後部吐出機構、第1後部ヘッド、第2後部ヘッド、第1後部吐出口群および第2後部吐出口群とすると、前部吐出機構の第1前部ヘッドに設けられた第1前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離は、前部吐出機構の第2前部ヘッドに設けられた第2前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離と異なる。また、第1前部吐出口群と後部吐出機構の第1後部ヘッドに設けられた第1後部吐出口群との間の走査方向の距離は、第2前部吐出口群と後部吐出機構の第2後部ヘッドに設けられた第2後部吐出口群との間の走査方向の距離に等しい。
【0026】
インクジェットプリンタ1では、上述のヒータ35、第1前部吐出口群、第1後部吐出口群、第2前部吐出口群および第2後部吐出口群の位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31cとの間においても成立する。また、当該位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31dとの間、吐出機構31bと吐出機構31cとの間、吐出機構31bと吐出機構31dとの間、および、吐出機構31cと吐出機構31dとの間においても成立する。
【0027】
図3は、コンピュータ6により実現される機能構成を示すブロック図である。コンピュータ6は、記憶部61および画像データ変換部60を備え、画像データ変換部60は、第1画像変換部62および第2画像変換部63を備える。記憶部61には、インクジェットプリンタ1により印刷される予定の第1画像データ81、第1色変換テーブル851、第2色変換テーブル852、および、閾値マトリクス710が記憶される。第1画像データ81は、R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の3色からなるデータである。閾値マトリクス710は、網点形成用のデータであり、SPM(Screen Pattern Memory)データとも呼ばれる。
【0028】
次に、図4を参照しつつインクジェットプリンタ1の動作について説明する。インクジェットプリンタ1では、まず、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が取得され、記憶部61に記憶されることにより準備される(ステップS11)。色変換テーブルの取得では、移動機構2により走査方向に移動する記録媒体9に対し、印刷ヘッド3からインクの微小液滴が吐出されてカラーパッチが記録媒体9上に記録される。そして、測色計によりカラーパッチを測色して得られるデータから色変換テーブルが取得される。このとき、記録媒体9上において第1ヘッド311a〜311dにより記録された第1領域を測色して得られたデータから第1色変換テーブル851が取得され、記録媒体9上において第2ヘッド312a〜312dにより記録された第2領域を測色して得られたデータから、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852が取得される。なお、カラーパッチの測色は、インクジェットプリンタ1の外部に設けられた測色計により行われてもよく、インクジェットプリンタ1に測色計が設けられて行われてもよい。
【0029】
続いて、図3に示す第1画像変換部62により、記憶部61に予め記憶され、画像記録(すなわち、描画)に用いられる第1画像データ81が、インクジェットプリンタ1にて使用されるK,C,M,Yの4色からなる第2画像データに変換される(ステップS12)。第2画像データは、第2画像変換部63に送られる。
【0030】
第2画像変換部63では、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852を利用しつつ、第2画像データに対する微調整(すなわち、色変換)が行われ、K,C,M,Yの4色からなる第3画像データが生成される(ステップS13)。第3画像データへの色変換では、第2画像データの第1ヘッド311a〜311d(図2参照)に対応する部分に第1色変換テーブル851が適用され、第2画像データの第2ヘッド312a〜312dに対応する部分に第2色変換テーブル852が適用される。換言すれば、第1色変換テーブル851は、複数の第1吐出口317a〜317dに適用され、第2色変換テーブル852は、複数の第2吐出口318a〜318dに適用される。生成された第3画像データは、閾値マトリクス710と共にコンピュータ6から制御部4へと送られる。
【0031】
制御部4では、第3画像データおよび閾値マトリクス710に基づいて、第3画像データに対応する画像を表現する網点画像の信号(いわゆる描画データであり、以下、「網点画像データ」という。)が生成される(ステップS14)。網点画像データは、第3画像データをK,C,M,Yの各色に分版し、分版された画像データを閾値マトリクスにより網点化することにより生成されたK,C,M,Yの各色の網点画像データを有する。
【0032】
網点化に際しては(すなわち、網点画像を生成する際には)、図5に示すように第3画像データに対応する画像70を同一の大きさの多数の領域に分割して網点化の単位となる繰り返し領域71が設定される。制御部4のSPMは、一の繰り返し領域71に相当する記憶領域であるマトリクス空間(マトリクス領域)を有し、マトリクス空間の各アドレス(すなわち、繰り返し領域71の各画素に対応するマトリクス空間の座標(画素))に閾値が設定されることにより閾値マトリクス710が生成される。
【0033】
そして、概念的には画像70の各繰り返し領域71と閾値マトリクス710とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の階調レベルと閾値マトリクス710の対応する閾値とが比較されることにより、網点記録媒体である記録媒体9上のその画素の位置に描画を行うか否か(すなわち、インクの液滴を吐出するか否か)が決定される。したがって、仮に画像70の階調レベルが一様である場合は、閾値マトリクス710においてその階調レベルよりも小さな閾値が設定されているアドレスの画素に描画が行われ、巨視的には一様な網点が生成されることとなる。実際には画像70は濃淡(すなわち、様々な階調レベルの部位)を有するため、繰り返し領域71内において画像70の濃淡に応じて網点の状態が変化することとなる。
【0034】
次に、図1に示す記録媒体9が供給部51からステージ21上に供給されて保持され、制御部4により制御される移動機構2により(+Y)方向に移動する。そして、網点画像データに基づいて、印刷ヘッド3の吐出機構31a〜31dが制御部4により制御されることにより、記録媒体9の移動に同期してK,C,M,Yのインクの微小液滴が吐出されて画像が記録される(ステップS15)。インクジェットプリンタ1では、複数の記録媒体9に対して連続して画像の記録が行われる。なお、ステップS11における第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の取得は、通常、インクジェットプリンタ1の出荷時等に行われる。
【0035】
以上に説明したように、インクジェットプリンタ1では、複数の第1吐出口317aとヒータ35との間の走査方向の距離が、複数の第2吐出口318aとヒータ35との間の走査方向の距離と異なり、複数の第1吐出口317b〜317d、および、複数の第2吐出口318b〜318dにおいても同様である。このため、仮に、第1吐出口317a〜317dおよび第2吐出口318a〜318dに同一の色変換テーブルを適用したとすると、第1吐出口317a〜317dから記録媒体9上に吐出されたインクと、第2吐出口318aから記録媒体9上に吐出されたインクとの間で発色に差異が生じ、色ムラとして認識されてしまう。
【0036】
そこで、インクジェットプリンタ1では、上述のように、複数の第1吐出口317a〜317dに第1色変換テーブル851を適用し、複数の第2吐出口318a〜318dに、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852を適用することにより、発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。このようなインクジェットプリンタ1の構造は、各吐出機構31a〜31dがそれぞれ、幅方向に沿って千鳥状に配列される複数の第1ヘッド311a〜311dおよび複数の第2ヘッド312a〜312dを備えるインクジェットプリンタに特に適している。
【0037】
インクジェットプリンタ1では、ヒータ35が、吐出機構31a〜31dよりも(−Y)側に配置され、ヒータ35により予め加熱された記録媒体9に、吐出機構31a〜31dからインクが吐出されてもよい。記録媒体9上に付与されたインクは、ヒータ35から記録媒体9に予め付与された熱により記録媒体9上に定着する。すなわち、ヒータ35は、記録媒体9上に付与されたインクの定着を補助する定着処理部として働く。この場合も、複数の第1吐出口317a〜317dとヒータ35との間の走査方向の距離がそれぞれ、複数の第2吐出口318a〜318dとヒータ35との間の距離と異なるため、複数の第1吐出口317a〜317dに第1色変換テーブル851を適用し、複数の第2吐出口318a〜318dに、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852を適用することにより、発色の差異の発生を抑制することができる。その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
【0038】
なお、インクジェットプリンタ1では、吐出機構31a〜31dの(−Y)側および(+Y)側の双方にヒータが設けられてもよい。この場合、当該2つのヒータは、記録媒体9上に付与されたインクの記録媒体9への定着を補助するとともに、当該インクを記録媒体9に定着させる定着処理部として働く。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。図6は、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッド3aの底面の一部を示す図である。印刷ヘッド3aは、吐出機構31a,31cにおいて第1ヘッド311a,311cが第2ヘッド312a,312cよりも(+Y)側、すなわち、記録媒体9に対する印刷が進行する方向の後側(以下、「下流側」ともいう。)に位置する点を除き、図2に示す印刷ヘッド3と同様の構造を有する。また、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構造は、印刷ヘッド3aを除き、図1に示すインクジェットプリンタ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0040】
印刷ヘッド3aでは、上述のように、吐出機構31a,31cにおいて第1ヘッド311a,311cが第2ヘッド312a,312cよりも(+Y)側に位置しており、各第1ヘッド311a,311cの複数の第1吐出口317a,317cも、各第2ヘッド312a,312cの複数の第2吐出口318a,318cよりも(+Y)側に位置する。したがって、複数の第1吐出口317a,317cとヒータ35との間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318a,318cとヒータ35との間の走査方向の距離よりも短い。
【0041】
吐出機構31b,31dでは、印刷ヘッド3と同様に、第1ヘッド311b,311dが第2ヘッド312b,312dよりも(−Y)側に位置し、各第1ヘッド311b,311dの複数の第1吐出口317b,317dも、各第2ヘッド312b,312dの複数の第2吐出口318b,318dよりも(−Y)側に位置する。したがって、複数の第1吐出口317b,317dとヒータ35との間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318b,318dとヒータ35との間の走査方向の距離よりも長い。
【0042】
また、複数の第1吐出口317aと複数の第1吐出口317bとの間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318aと複数の第2吐出口318bとの間の走査方向の距離よりも短く、複数の第1吐出口317bと複数の第1吐出口317cとの間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318bと複数の第2吐出口318cとの間の走査方向の距離よりも長い。複数の第1吐出口317cと複数の第1吐出口317dとの間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318dと複数の第2吐出口318dとの間の走査方向の距離よりも短く、複数の第1吐出口317aと複数の第1吐出口317dとの間の走査方向の距離も、複数の第2吐出口318aと複数の第2吐出口318dとの間の走査方向の距離よりも短い。
【0043】
ここで、上記と同様に、吐出機構31a、第1ヘッド311a、第2ヘッド312a、複数の第1吐出口317aおよび複数の第2吐出口318aをそれぞれ、前部吐出機構、第1前部ヘッド、第2前部ヘッド、第1前部吐出口群および第2前部吐出口群とし、吐出機構31b、第1ヘッド311b、第2ヘッド312b、複数の第1吐出口317bおよび複数の第2吐出口318bをそれぞれ、後部吐出機構、第1後部ヘッド、第2後部ヘッド、第1後部吐出口群および第2後部吐出口群とすると、前部吐出機構の第1前部ヘッドに設けられた第1前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離は、前部吐出機構の第2前部ヘッドに設けられた第2前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離と異なり、かつ、第1前部吐出口群と第1後部吐出口群との間の走査方向の距離も、第2前部吐出口群と第2後部吐出口群との間の走査方向の距離と異なる。
【0044】
印刷ヘッド3aでは、上述の第1前部吐出口群、第1後部吐出口群、第2前部吐出口群および第2後部吐出口群の位置関係は、吐出機構31bと吐出機構31cとの間においても成立する。また、当該位置関係は、吐出機構31cと吐出機構31dとの間、および、吐出機構31aと吐出機構31dとの間においても成立する。
【0045】
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1の実施の形態と同様に、走査方向に移動する記録媒体9(図1参照)に対し、印刷ヘッド3aからインクの微小液滴が吐出されてカラーパッチが記録され、測色計によりカラーパッチを測色して得られるデータから色変換テーブルが取得されて準備される(図4:ステップS11)。このとき、記録媒体9上において第1ヘッド311a〜311dにより記録された第1領域を測色して得られたデータから第1色変換テーブル851が取得され、記録媒体9上において第2ヘッド312a〜312dにより記録された第2領域を測色して得られたデータから、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852が取得される。その後、ステップS12〜S15が行われ、記録媒体9上に画像が記録される。
【0046】
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1の実施の形態と同様に、複数の第1吐出口317a〜317dに第1色変換テーブル851を適用し、複数の第2吐出口318a〜318dに、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852を適用することにより、発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
【0047】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。図7は、第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッド3bの底面の一部を示す図である。第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構造は、印刷ヘッド3bが印刷ヘッド3とは異なる構造を有する点を除き、図1に示すインクジェットプリンタ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0048】
図7に示す印刷ヘッド3bでは、吐出機構31a〜31dのそれぞれにおいて、第1ヘッド311a〜311dの端部と第2ヘッド312a〜312dの端部とが、走査方向に重なっており、複数の第1吐出口317a〜317dの端部と、複数の第2吐出口318a〜318dの端部とが、幅方向の所定の重複範囲340(図7中において、二点鎖線にて囲んで示す。)にて走査方向に重なる。本実施の形態では、各重複範囲340において、4つの第1吐出口317a〜317dと4つの第2吐出口318a〜318dとが走査方向に重なっている(すなわち、幅方向の同じ位置に位置する。)。
【0049】
第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、記録媒体9上のにおいて、上述の重複範囲340に対応する領域(以下、「重複領域」という。)が走査方向に延びている。そして、当該重複領域に対して、複数の第1吐出口317aからのインクの吐出と、複数の第2吐出口318aからのインクの吐出とが、制御部4による制御により切り替えつつ行われる。複数の第1吐出口317b〜317dからのインクの吐出と、複数の第2吐出口318b〜318dからのインクの吐出との切り替えは、複数の第1吐出口317aからのインクの吐出と、複数の第2吐出口318aからのインクの吐出との切り替えと同様に行われる。すなわち、第1吐出口317aからのインクにより形成されたドット上には、第1吐出口317b〜317dからインクの吐出が行われ、第2吐出口318aからのインクにより形成されたドット上には、第2吐出口318b〜318dからインクの吐出が行われる。なお、実際のドット形成位置は、インクの色に応じて若干ずれてもよい。
【0050】
図8は、1つの重複領域340aに対する第1吐出口317a〜317dからのインクの吐出と第2吐出口318a〜318dからのインクの吐出との切り替えの様子を示す図である。図8中において円にて示すドット95内の数字が「1」である場合、ドット95は、第1吐出口317a〜317dから吐出されたインクにより形成されたものであり、数字が「2」である場合、ドット95は、第2吐出口318a〜318dから吐出されたインクにより形成されたものである。図8に例示するように、重複領域340aにおいて走査方向に並ぶ複数のドット95は、第1吐出口317a〜317dおよび第2吐出口318a〜318dからのインクの吐出を、様々に切り替えて形成されてよい。
【0051】
第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、コンピュータ6において第2画像データを第3画像データに変換する際に、各重複領域340aの幅方向の各位置に対して、複数の第1吐出口317a〜317dのうち各1つの第1吐出口317a〜317dからインクの吐出が行われる場合には、図4におけるステップS11にて取得された第1色変換テーブル851が利用される。また、各重複領域340aの幅方向の各位置に対して、複数の第2吐出口318a〜318dのうち各1つの第2吐出口318a〜318dからインクの吐出が行われる場合には、第2色変換テーブル852が利用される。
【0052】
このように、複数の第1吐出口317a〜317dの端部と複数の第2吐出口318a〜318dの端部とが走査方向に重なる重複範囲340において、インクを吐出する吐出口に合わせて色変換テーブルを切り替えて適用することにより、発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。なお、重複範囲340において重複する吐出口の個数は、必ずしも4つには限定されず、1つまたは2つ以上であってもよい。
【0053】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。図9は、第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッド3cの底面の一部を示す図である。第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構造は、印刷ヘッド3cが印刷ヘッド3とは異なる構造を有する点を除き、図1に示すインクジェットプリンタ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0054】
図9に示す印刷ヘッド3cでは、吐出機構31a〜31dが、図示省略の吐出機構移動部により、レール33a〜33dに沿って幅方向に個別に移動される。吐出機構31a〜31dでは、それぞれが幅方向に沿って配列された複数の吐出口320a〜320dを有する複数のヘッド310a〜310dが、幅方向に沿って千鳥状に配列される。吐出機構31aにおける複数のヘッド310aの境界の幅方向における位置である第1ヘッド境界位置300a、吐出機構31bにおける複数のヘッド310bの境界の幅方向における位置である第2ヘッド境界位置300b、吐出機構31cにおける複数のヘッド310cの境界の幅方向における位置である第3ヘッド境界位置300c、および、吐出機構31dにおける複数のヘッド310dの境界の幅方向における位置である第4ヘッド境界位置300dは、それぞれ幅方向においてずれている。以下の説明では、図9に示すヘッド310a〜310dの配置を、「本記録配置」と呼ぶ。
【0055】
印刷ヘッド3cでは、幅方向において隣接する各2つのヘッド境界位置300a〜300dの間の領域が、ヘッド310a〜310dの位置関係がそれぞれ異なる複数の領域となっている。例えば、二点鎖線で囲む領域341では、ヘッド310aが吐出機構31aにおいて下流側(すなわち、千鳥状に配置された複数のヘッド310aのうちの(+Y)側)に位置し、ヘッド310b〜310dも吐出機構31b〜31dにおいて下流側に位置する。領域342では、ヘッド310a,310b,310dが下流側に位置し、ヘッド310cは上流側に位置する。領域343では、ヘッド310a、310dが下流側に位置し、ヘッド310b,310cは上流側に位置する。領域344では、ヘッド310a〜310cが上流側に位置し、ヘッド310dは下流側に位置する。
【0056】
また、領域345では、ヘッド310a〜310dが全て上流側に位置する。領域346では、ヘッド310a,310b,310dが上流側に位置し、ヘッド310cは下流側に位置する。領域347では、ヘッド310a,310dが上流側に位置し、ヘッド310b,310cは下流側に位置する。領域348では、ヘッド310a〜310cは下流側に位置し、ヘッド310dは上流側に位置する。
【0057】
ここで、吐出機構31aのヘッド310aおよび吐出機構31bのヘッド310bをそれぞれ、前部ヘッドおよび後部ヘッドと呼び、第1ヘッド境界位置300aおよび第2ヘッド境界位置300bをそれぞれ、前部ヘッド境界位置および後部ヘッド境界位置と呼ぶと、本記録配置では、前部ヘッド境界位置が後部ヘッド境界位置と幅方向においてずれている。前部ヘッド、後部ヘッド、前部ヘッド境界位置および後部ヘッド境界位置の上記位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31cとの間においても成立する。また、当該位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31dとの間、吐出機構31bと吐出機構31cとの間、吐出機構31bと吐出機構31dとの間、および、吐出機構31cと吐出機構31dとの間においても成立する。
【0058】
図10は、第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタの動作の一部を示す図である。当該インクジェットプリンタでは、吐出機構31a〜31dの一部または全てが、吐出機構移動部により幅方向に移動され、第1ヘッド境界位置300a、第2ヘッド境界位置300b、第3ヘッド境界位置300cおよび第4ヘッド境界位置300dが幅方向において一致するように配置される(ステップS31)。以下の説明では、第1ヘッド境界位置300a、第2ヘッド境界位置300b、第3ヘッド境界位置300cおよび第4ヘッド境界位置300dが一致する状態の複数のヘッド310a〜310dの配置を、「テーブル取得配置」という。テーブル取得配置は、例えば、図2に示すヘッドの配置と同様とされる。
【0059】
続いて、記録媒体9上にカラーパッチが記録され、測色計によりカラーパッチを測色して得られるデータから、ステップS11と同様に、複数の色変換テーブルが取得される(ステップS32)。
【0060】
次に、吐出機構31a〜31dを幅方向に相対的に移動し、複数のヘッド310a〜310dの配置が、各ヘッド境界位置が一致する他のテーブル取得配置とされる(ステップS33,S34)。他のテーブル取得配置は、例えば、領域343および領域347と同様のヘッド配置を有するものとされる。その後、ステップS32に戻って、カラーパッチの印刷、並びに、複数の色変換テーブルの取得が行われる。このとき得られる色変換テーブルは、最初のテーブル取得配置とはヘッド310a〜310dの配置が異なるため、最初のテーブル取得配置にて取得された色変換テーブルとは異なる。
【0061】
第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、上述の領域341〜348のそれぞれにおけるヘッド310a〜310dの走査方向の位置関係に対応する色変換テーブルが取得されるまでステップS32〜S34が繰り返される。領域341〜348の色変換テーブルが取得されて記憶部61(図3参照)に記憶されると、吐出機構31a〜31dが幅方向に移動され、図9に示す本記録配置とされる(ステップS35)。
【0062】
コンピュータ6では、R,G,Bの3色からなる第1画像データ81(図3参照)が、K,C,M,Yの4色からなる第2画像データに変換される(ステップS36)。そして、記憶部61に記憶された色変換テーブルを利用しつつ、第2画像データに対する色変換が行われ、K,C,M,Yの4色からなる第3画像データが生成される(ステップS37)。このとき、各領域341〜348について、ヘッド310a〜310dのそれぞれとヒータ35との間の走査方向の距離、および、ヘッド310a〜310dの互いの間の走査方向の距離に基づいて、ステップS32〜S34において取得された複数の色変換テーブルから、走査方向におけるヘッド310a〜310dおよびヒータ35の位置関係が等しい色変換テーブルが選択されて利用される。その後、図4に示すステップS14,S15が行われ、記録媒体9上に画像が記録される。
【0063】
第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、図9に示すように、ヘッド310a〜310dの配置が異なる複数の領域を有するとともに各領域の幅が小さい場合であっても、ヘッド310a〜310dの配置変更および色変換テーブルの取得を繰り返すことにより、上記各領域に対応する色変換テーブルを容易に取得することができる。これにより、各領域に異なる色変換テーブルを適用しつつ画像記録を行って発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0065】
例えば、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1では、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852は、画像データ変換部60の第2画像変換部63による第3画像データの生成の際に利用されるが、第1画像変換部62による第1画像データ81から第2画像データへの変換の際に、吐出口とヒータ35との走査方向における位置関係に基づいて用意された複数種類の色変換テーブルが利用され、その後、第3画像データが生成されてもよい。
【0066】
インクジェットプリンタ1の吐出機構31a〜31dでは、図11に示すように、第1ヘッド311a〜311dがそれぞれ、幅方向に沿って千鳥状に配列された(すなわち、各ヘッド内の(+Y)側と(−Y)側とに幅方向に沿って交互に配列された)第1吐出口317a〜317dを有し、第2ヘッド312a〜312dがそれぞれ、幅方向に沿って千鳥状に配列された第2吐出口318a〜318dを有していてもよい。この場合であっても、上述のように、複数の第1吐出口317a〜317dに第1色変換テーブル851を適用し、複数の第2吐出口318a〜318dに、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852を適用することにより、発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
【0067】
図11に示す吐出機構31aでは、第1ヘッド311aの(−Y)側に位置する複数の第1吐出口317aとヒータ35との間の走査方向の距離と、(+Y)側に位置する複数の第1吐出口317aとヒータ35との間の走査方向の距離とが異なる。そこで、(−Y)側の複数の第1吐出口317a、および、(+Y)側の複数の第1吐出口317aをそれぞれ、第1前部吐出口群および第2前部吐出口群と捉え、第1ヘッド311bの第1吐出口317b(第1ヘッド311c,311dの第1吐出口317c,317dでもよい。)のうち第1前部吐出口群および第2前部吐出口群に走査方向においてそれぞれ対向する複数の吐出口を、第1後部吐出口群および第2後部吐出口群として、第1前部吐出口群および第1後部吐出口群に一の色変換テーブルを適用し、第2前部吐出口群および第2後部吐出口群に他の色変換テーブルを適用することにより、記録媒体9に記録された画像における色ムラが抑制されてもよい。また、第2ヘッド312a〜312dに対しても同様に、2種類の色変換テーブルが適用されてもよい。
【0068】
また、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1では、吐出機構31a〜31dに代えて、図12に示すように、第1吐出口317a〜317dが設けられたヘッド313と第2吐出口318a〜318dが設けられたヘッド314とが、幅方向に沿って千鳥状に配置されてもよい。
【0069】
インクジェットプリンタでは、ヒータ35以外の定着処理部が設けられてもよい。例えば、印刷ヘッド3から吐出されるインクが紫外線硬化性インクである場合、記録媒体9上に付与されたインクに紫外線を照射することによりインクを定着させる定着処理部が設けられてもよい。また、インクジェットプリンタでは、印刷用紙以外の様々な記録媒体9に対する画像の記録が行われてよい。
【0070】
上述のインクジェットプリンタでは、記録媒体9を印刷ヘッドに対して相対的に移動することができるのであれば、例えば、印刷ヘッドを走査方向に移動する移動機構が設けられてもよい。インクジェットプリンタでは、例えば、ロール紙等の長尺状の記録媒体に対して画像記録が行われてもよい。
【0071】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0072】
1 インクジェットプリンタ
2 移動機構
9 記録媒体
31a〜31d 吐出機構
35 ヒータ
60 画像データ変換部
61 記憶部
300a 第1ヘッド境界位置
300b 第2ヘッド境界位置
300c 第3ヘッド境界位置
300d 第4ヘッド境界位置
310a〜310d,313,314 ヘッド
311a〜311d 第1ヘッド
312a〜312d 第2ヘッド
317a〜317d 第1吐出口
318a〜318d 第2吐出口
320a〜320d 吐出口
340 重複範囲
340a 重複領域
851 第1色変換テーブル
852 第2色変換テーブル
S11〜S15,S31〜S37 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーにて画像記録を行うインクジェットプリンタであって、
第1インクの微小液滴を記録媒体に向けて吐出する前部吐出機構と、
前記第1インクとは異なる色の第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出する後部吐出機構と、
前記記録媒体を前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して所定の走査方向に相対的に移動し、前記前部吐出機構に対向する位置および前記後部吐出機構に対向する位置を1回のみ通過させる移動機構と、
前記走査方向における位置が前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して相対的に固定され、前記記録媒体上に付与されたインクを前記記録媒体に定着させる、または、定着を補助する定着処理部と、
色変換テーブルを記憶する記憶部と、
前記色変換テーブルを利用しつつ、画像記録に用いられる画像データの色を変換する画像データ変換部と、
を備え、
前記前部吐出機構が、
前記走査方向に垂直な幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第1前部吐出口群と、
前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第2前部吐出口群と、
を備え、
前記後部吐出機構が、
前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第1前部吐出口群に対向する第1後部吐出口群と、
前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第2前部吐出口群に対向する第2後部吐出口群と、
を備え、
前記第1前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離と異なり、または、前記第1前部吐出口群と前記第1後部吐出口群との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記第2後部吐出口群との間の前記走査方向の距離と異なり、
前記記憶部が、前記第1前部吐出口群および前記第1後部吐出口群に適用される第1色変換テーブル、並びに、前記第2前部吐出口群および前記第2後部吐出口群に適用されるとともに前記第1色変換テーブルとは異なる第2色変換テーブルを記憶することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記前部吐出機構が、
前記第1前部吐出口群が設けられる第1前部ヘッドと、
前記第2前部吐出口群が設けられる第2前部ヘッドと、
を備え、
前記後部吐出機構が、
前記第1後部吐出口群が設けられる第1後部ヘッドと、
前記第2後部吐出口群が設けられる第2後部ヘッドと、
を備え、
前記第1前部ヘッドと前記第2前部ヘッドとが、前記幅方向において隣接するとともに前記走査方向において異なる位置に配置され、
前記第1後部ヘッドと前記第2後部ヘッドとが、前記幅方向において隣接するとともに前記走査方向において異なる位置に配置されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記第1前部吐出口群の端部と、前記第2前部吐出口群の端部とが、前記幅方向の所定の重複範囲にて前記走査方向に重なり、前記第1後部吐出口群の端部と、前記第2後部吐出口群の端部も、前記重複範囲にて前記走査方向に重なり、
前記記録媒体上の前記重複範囲に対応するとともに前記走査方向に延びる重複領域に対して、前記第1前部吐出口群からの前記第1インクの吐出と、前記第2前部吐出口群からの前記第1インクの吐出とが切り替えつつ行われ、前記重複領域において、前記第1後部吐出口群からの前記第2インクの吐出と、前記第2後部吐出口群からの前記第2インクの吐出とが、前記第1インクの場合と同様に切り替えつつ行われ、
前記画像データの色を変換する際に、前記重複領域の各位置に対して、前記第1前部吐出口群の一の吐出口および前記第1後部吐出口群の一の吐出口からのインクの吐出が行われる場合に前記第1色変換テーブルが利用され、前記第2前部吐出口群の一の吐出口および前記第2後部吐出口群の一の吐出口からのインクの吐出が行われる場合に前記第2色変換テーブルが利用されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
第1インクの微小液滴を吐出する前部吐出機構と、前記第1インクとは異なる色の第2インクの微小液滴を吐出する後部吐出機構と、記録媒体を前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して所定の走査方向に相対的に移動する移動機構と、前記走査方向における位置が前記前部吐出機構および前記後部吐出機構に対して相対的に固定され、前記記録媒体上に付与されたインクを前記記録媒体に定着させる、または、定着を補助する定着処理部とを備え、
前記前部吐出機構が、前記走査方向に垂直な幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第1前部吐出口群と、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口である第2前部吐出口群とを備え、前記後部吐出機構が、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第1前部吐出口群に対向する第1後部吐出口群と、前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口であり、前記走査方向において前記第2前部吐出口群に対向する第2後部吐出口群とを備え、
前記第1前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記定着処理部との間の前記走査方向の距離と異なり、または、前記第1前部吐出口群と前記第1後部吐出口群との間の前記走査方向の距離が、前記第2前部吐出口群と前記第2後部吐出口群との間の前記走査方向の距離と異なるインクジェットプリンタによりカラーにて画像記録を行う画像記録方法であって、
a)第1色変換テーブル、および、前記第1色変換テーブルとは異なる第2色変換テーブルを準備する工程と、
b)画像記録に用いられる画像データの前記第1前部吐出口群および前記第1後部吐出口群に対応する部分に前記第1色変換テーブルを適用し、前記第2前部吐出口群および前記第2後部吐出口群に対応する部分に前記第2色変換テーブルを適用しつつ画像データの色を変換する工程と、
c)前記移動機構により、前記記録媒体を前記走査方向に相対的に移動し、前記前部吐出機構に対向する位置および前記後部吐出機構に対向する位置を1回のみ通過させ、前記記録媒体の移動に同期して、前記前部吐出機構および前記後部吐出機構から前記第1インクおよび前記第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出する工程と、
を備えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項5】
それぞれが幅方向に沿って配列された複数の吐出口を有するとともに前記幅方向に沿って千鳥状に配列される複数の前部ヘッドと、それぞれが前記幅方向に沿って配列された複数の吐出口を有するとともに前記幅方向に沿って千鳥状に配列される複数の後部ヘッドと、記録媒体を前記複数の前部ヘッドおよび前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に垂直な走査方向に相対的に移動する移動機構と、前記走査方向における位置が前記複数の前部ヘッドおよび前記複数の後部ヘッドに対して相対的に固定され、前記記録媒体上に付与されたインクを前記記録媒体に定着させる、または、定着を補助する定着処理部とを備えるインクジェットプリンタによりカラーにて画像記録を行う画像記録方法であって、
a)前記複数の前部ヘッドの境界の前記幅方向における位置である前部ヘッド境界位置が、前記複数の後部ヘッドの境界の前記幅方向における位置である後部ヘッド境界位置とずれている本記録配置から、前記複数の前部ヘッドを前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に相対的に移動し、前記前部ヘッド境界位置と前記後部ヘッド境界位置とを一致させたテーブル取得配置とする工程と、
b)前記移動機構により、前記記録媒体を前記走査方向に相対的に移動し、前記複数の前部ヘッドに対向する位置および前記複数の後部ヘッドに対向する位置を1回のみ通過させる際に、前記複数の前部ヘッドから第1インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出し、前記複数の後部ヘッドから前記第1インクとは異なる第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出してカラーパッチを記録し、前記カラーバッチを測色して得られるデータから複数の色変換テーブルを取得する工程と、
c)前記複数の前部ヘッドを前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に相対的に移動し、前記前部ヘッド境界位置と前記後部ヘッド境界位置を一致させた他のテーブル取得配置とした後に、前記b)工程を行う工程と、
d)前記複数の前部ヘッドを前記複数の後部ヘッドに対して前記幅方向に相対的に移動して前記本記録配置とする工程と、
e)前記複数の前部ヘッドの境界および前記複数の後部ヘッドの境界のうち前記幅方向にて隣接する各2つの境界の間の領域について、前部ヘッドと前記定着部との間の前記走査方向の距離、および、前部ヘッドと後部ヘッドとの間の前記走査方向の距離に基づいて、前記b)工程および前記c)工程にて取得された複数の色変換テーブルから色変換テーブルを選択しつつ画像記録に用いられる画像データの色を変換する工程と、
f)前記移動機構により、前記記録媒体を前記走査方向に相対的に移動し、前記複数の前部ヘッドに対向する位置および前記複数の後部ヘッドに対向する位置を1回のみ通過させ、前記記録媒体の移動に同期して、前記複数の前部ヘッドから前記第1インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出し、前記複数の後部ヘッドから前記第2インクの微小液滴を前記記録媒体に向けて吐出する工程と、
を備えることを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71410(P2013−71410A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214068(P2011−214068)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】