インクジェットプリンタ及びその画像記録方法
【課題】インクの往復動の切り替え動作があっても高品質な画像記録を行う。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送部と、搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、第1のインク経路によってインクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、第2のインク経路によってインクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧することで、インクヘッドを介して第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替える加減圧手段と、搬送部、インクヘッド及び加減圧手段を制御する制御部と、を具備するインクジェットプリンタであって、記録媒体のページギャップ間でインクヘッドに流れるインクの向きを切り替える。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送部と、搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、第1のインク経路によってインクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、第2のインク経路によってインクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧することで、インクヘッドを介して第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替える加減圧手段と、搬送部、インクヘッド及び加減圧手段を制御する制御部と、を具備するインクジェットプリンタであって、記録媒体のページギャップ間でインクヘッドに流れるインクの向きを切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク往復動経路を備えたインクジェットプリンタ及びその画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数のノズルが形成されたインクヘッドを搭載し、これらノズルから記録媒体にインクを吐出して画像記録(印刷)を行うインクジェットプリンタが知られている。
例えば、特許文献1には、インクヘッドと、インクヘッドにインクを供給する供給経路と、インクヘッドからインクを排出する排出経路と、を有するインクジェットプリンタが開示されている。このインクジェットプリンタは、供給経路の一端側にインクカートリッジを、排出経路の一端側にインクタンクをそれぞれ接続し、インクヘッドを経由してインクカートリッジとインクタンクとの間でインクを往復動させながら画像記録を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3419220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいて、インクの往復動の切り換え動作時には、インクの流れによる慣性力やポンプ駆動開始時の不安定さから発生する圧力変動等の影響によって、インクヘッドのノズルにかかる圧力が安定しない。このため、インクの不吐出や吐出量のばらつきが生じ、画像記録品位の低下を招いてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、インクの往復動の切り替え動作があっても高品質な画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及びその画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧することで、前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替える加減圧手段と、前記搬送部、前記インクヘッド及び前記加減圧手段を制御する制御部と、を具備し、前記加減圧手段により前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、前記搬送部により記録媒体を搬送するタイミングとが異なるように、前記制御部を制御するインクジェットプリンタである。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、を具備し、前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替えながら、所定の時間間隔を置いて搬送される複数の記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタの画像記録方法において、前記所定の時間間隔中に、前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替える画像記録方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクの往復動の切り替え動作があっても高品質な画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及びその画像記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、インクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】図2は、インクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図3】図3は、インクヘッドの断面図である。
【図4】図4は、インクヘッドの斜視図である。
【図5】図5は、インク往復動時の圧力及び流量の時間変化を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態における画像記録時のインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図8】図8は、第1の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態におけるインク往復動の切り替え、媒体供給及び画像記録動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図12】図12は、第2の実施形態の変形例におけるインク往復動の切り替え、媒体供給及び画像記録動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、第2の実施形態の変形例における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図14】図14は、第3の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図15】図15は、第4の実施形態におけるインクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図16】図16は、第5の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図17】図17(a)乃至(c)は、第6の実施形態におけるインク経路の構成を示す概略図である。
【図18】図18(a)乃至(c)は、第7の実施形態におけるインク経路の構成を示す概略図である。
【図19】図19は、第8の実施形態におけるインク経路の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、インクジェットプリンタ1の構成を示す概略図である。
インクジェットプリンタ1は、大別すると、記録媒体2を収容し供給する供給部3と、供給された記録媒体2を搬送する搬送部4と、記録媒体2にインクを吐出するインクヘッド100を備えた画像記録部5と、インクヘッド100をクリーニングするクリーニング部6と、画像記録された記録媒体2を排出し収容する排出部7と、前記インクヘッド100を含むインク経路20(図2)と、これらを始めとするインクジェットプリンタ1の各構成部を制御する制御部8と、を有している。これら各構成部は、不図示の筐体内に収容されている。
【0012】
以下の説明では、記録媒体2の搬送方向をX方向、X方向と直交する方向をY方向又は幅方向(主走査方向)、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向又は上下方向(鉛直方向)と称する。
【0013】
供給部3は、供給トレイ9と、ピックアップローラ10と、を有している。供給トレイ9は、記録媒体2として、例えば、所定の大きさにカットされた用紙を収容している。ピックアップローラ10は、供給トレイ9内に収容されている記録媒体2と当接して、当接した記録媒体2を1枚ずつ取り出し、搬送部4へと給送する。
【0014】
搬送部4は、レジストローラ対11と、従動ローラ12と、テンションローラ13、14と、駆動ローラ15と、搬送ベルト16と、プラテン17と、吸引ファン18と、を有している。これら各構成部は、不図示の搬送部フレームに保持されている。
【0015】
レジストローラ対11は、搬送部4の媒体搬送方向最上流側に位置しており、ピックアップローラ10により給送された記録媒体2がこれにより搬送される。レジストローラ対11は、記録媒体2の搬送を一時停止させ、その搬送姿勢を矯正すると共に搬送開始のタイミングを調整して、搬送ベルト16へと記録媒体2を搬送する。
【0016】
搬送ベルト16は、帯状の無端ベルトであり、その表面には不図示の多数の孔が設けられている。この搬送ベルト16は、例えば、従動ローラ12、2つのテンションローラ13、14及び駆動ローラ15の4つのローラによって、テンションが掛けられた状態で保持されている。駆動ローラ15には、不図示のモータが接続されており、このモータを駆動させることによって、搬送ベルト16が図1の時計回りに回転(移動)する。
【0017】
搬送ベルト16の下方には、プラテン17及び吸引ファン18が設けられている。プラテン17は、画像記録部5と対向する領域が少なくとも平面となるように加工されており、その表面には不図示の多数の孔が形成されている。吸引ファン18は、搬送ベルト16及びプラテン17の多数の孔から空気を吸引する。これにより、記録媒体2が搬送ベルト16上に吸着され、所定の搬送速度で下流側へと搬送される。
【0018】
画像記録部5は、搬送部4(プラテン17)の上方にこれに対向して設けられている。この画像記録部5は、媒体搬送方向上流側から順に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクをそれぞれ吐出するインクヘッド100(100a、100b、100c、100d)と、インクヘッド100を保持するヘッド保持部材19と、を有している。本実施形態では、記録媒体2の幅に満たない複数のインクヘッド100を、記録媒体2の幅方向に、該記録媒体2における記録領域幅以上となるようにヘッド保持部材19に固定することでラインヘッド21を構成している。具体的には、6個のインクヘッド100を千鳥状にヘッド保持部材19に固定することでラインヘッド21を構成している。なお、画像記録部5の構成として、本実施形態では、シングルパス方式としたが、シリアル方式としてもよい。
このインクヘッド100(ラインヘッド21)は、インク経路20の構成部の1つである。インク経路20の詳細は、後述する。
【0019】
クリーニング部6は、各ラインヘッド21に対応するクリーニングユニット22(22a、22b、22c、22d)を有している。クリーニングユニット22は、インクヘッド100をクリーニングするために設けられており、特に図示しないが、インクヘッド100のノズル面を払拭するブレード部材や、ノズル面をキャッピングするキャップ部材などを有している。各クリーニングユニット22は、不図示の移動機構により、画像記録時には、図1に示すように、対応するインクヘッド100に対して媒体搬送方向下流側の位置(退避位置)に、また、クリーニング時には、対応するインクヘッド100に対向する位置(クリーニング位置)に配置される。
【0020】
排出部7は、排出ローラ対23と、排出トレイ24と、を有している。排出ローラ対23は、画像記録部5により画像記録済みの記録媒体2を挟持し、排出トレイ24へと排出する。排出トレイ24は、排出された記録媒体2を収容する。
【0021】
このように構成されたインクジェットプリンタ1において、画像記録時には、供給部3から1枚ずつ取り出された記録媒体2が搬送部4へと搬送され、画像記録部5によって画像が記録され、画像が記録された記録媒体2が排出部7へと排出される。これら一連の動作が、制御部8によって制御される。
【0022】
次に、インク経路20について、図2を参照して説明する。
なお、以下では、代表的な1色のインクに関わるインク経路20のみを説明するが、インク色ごとに同様のインク経路が備わっている。
【0023】
インク経路20は、記録媒体2にインクを吐出するインクヘッド100(ラインヘッド21)と、インクヘッド100に供給するインクを貯留する第1のインク貯留部としてのインクカートリッジ60と、インクヘッド100から排出されるインクを貯留する第2のインク貯留部としてのインクタンク50と、を有している。インクカートリッジ60とインクヘッド100とは、加温部30を介在して第1のインク経路(第1のチューブ)31によって接続されている。また、インクヘッド100とインクタンク50とは、冷却部40を介在して第2のインク経路(第2のチューブ)32によって接続されている。すなわち、インク経路20は、インクカートリッジ60からインクヘッド100を介してインクタンク50にインクを流せ、さらに、インクタンク50からインクヘッド100を介してインクカートリッジ60にインクを流せる、インク往復動経路である。
【0024】
まず、インクカートリッジ60の構成について説明する。
インクカートリッジ60は、外装61と、可撓性のスパウトパック(袋体)62と、を有しており、密閉された外装61の中に、インクが充填されたスパウトパック62が装入されている。インクカートリッジ60は、第1のインク経路31に対して着脱自在であり、装着時には、第1のインク経路31の一端部に設けられた不図示の中空針がスパウトパック62に貫通されて、スパウトパック62内のインクが第1のインク経路31に流れるように連結される。
【0025】
インクカートリッジ60には、外装61とスパウトパック62との間に連通する通路が設けられており、この通路に空気経路33の一端側が接続されている。空気経路33の他端側には、加減圧手段としてのポンプ34が設けられている。この空気経路33は、さらに、空気経路35の一端側と連通しており、空気経路35には、空気経路33内の圧力を検出する圧力センサ72が設けられている。ポンプ34は、例えばチューブポンプで構成され、制御部8によって、正転により外装61の内部の空気を排気し、逆転して外装61の内部に空気を吸気するように制御される。すなわち、正転時にはスパウトパック環境が減圧され、逆転時には加圧される。このときの圧力が、圧力センサ72で検出される。
【0026】
次に、インクタンク50の構成について説明する。
インクタンク50は、密閉された構成であり、内部には、インク液面を検出するフロート70が揺動自在に設けられている。このフロート70には、図示されないマグネットが保持されている。インクタンク50の外側には、フロート70のマグネットと対向する位置にホール素子を備えた液面センサ71が取り付けられている。第2のインク経路32の一端部は、インクタンク50の底面近くまで延びた不図示のパイプと連結している。
【0027】
インクタンク50の上面には、インクタンク50内の空気と連通する開口が設けられており、この開口に空気経路36の一端側が接続されている。また、空気経路36の他端側には、加減圧手段としてのポンプ37が設けられている。この空気経路36は、さらに、空気経路38の一端側と連通しており、空気経路38には、空気経路36内の圧力を検出する圧力センサ73が設けられている。ポンプ37は、例えばチューブポンプで構成され、制御部8によって、正転によりインクタンク50の内部の空気を排気し、逆転してインクタンク50の内部に空気を吸気するように制御される。すなわち、正転時にはインクタンク50の内部の空気が減圧され、逆転時には加圧される。このときの圧力が、圧力センサ73で検出される。
【0028】
次に、加温部30及び冷却部40について説明する。
加温部30は、第1のインク経路31中の、インクヘッド100の近傍に配置されている。加温部30は、例えば、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い金属で作られたインク経路を有し、そこに発熱体が巻き付けられている。発熱体の外側は、熱伝導性の低い樹脂などでできたカバーで覆われ、外気と断熱されており、熱交換効率(加温効率)を高めている。また、冷却部40は、第2のインク経路32中の、インクタンク50の近傍に配置されている。冷却部40も、例えば、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い金属で作られたインク経路を有し、また、外気との接触面積を増やすために、金属部分の一部にフィン形状部分を有している。さらに、このフィン形状部分に対向してファンが設けられており、フィン形状部分に風を拭きつけて熱交換効率(冷却効率)を高めている。
【0029】
次に、インクヘッド100の内部構造について、図3並びに図4を参照して説明する。
インクヘッド100には、ベース103の一面側に、周囲を取り囲み中央が空洞部である枠102が接着され、この空洞部にあってベース103の前記一面側に圧電素子104が対をなして接着されている。枠102と圧電素子104とは、前記空洞部を塞ぐようにして、Z方向に同じ高さで設けられている。さらに、ノズルプレート101が、枠102と圧電素子104とに対してZ方向に積層され、接着されている。
【0030】
圧電素子104には、X方向に複数の溝が掘られており、これら溝がチャンネル104aを形成している。これらチャンネル104aは、Y方向に平行に掘られている。チャンネル104aは、例えば、ピッチ約170μm、幅85μm、深さ300μm程度である。対をなす2つの圧電素子104は、Y方向に半ピッチずらして配置されている。また、ノズルプレート101のノズル面101aには、各チャンネル104aの中央部のZ方向に、インクを吐出する複数のノズル(ノズル孔)101bが形成されている。これらノズル101bは、チャンネル104aに対応してY方向に配列されている。
【0031】
図4に示すように、ベース103には、対をなす圧電素子104の中央部に、Y方向に複数の孔103aが配列されている。これら孔103aは、例えば、直径1mm程度で、3mm間隔で配置された貫通孔である。同じく、枠102と圧電素子104とのX方向の隙間の位置にも、複数の孔103bが配列されている。
【0032】
ベース103の他面側には、流路部材105、106がZ方向に積層され、接着されている。流路部材105には、Y方向に、ベース103の複数の孔103aと対向している1本の流路105aと、ベース103の複数の孔103bと対向している2本の流路105bと、の3本の平行な流路(溝)が形成されている。そして、これら流路105a、105bに蓋をするようにして、流路部材105の上に流路部材106が接着されている。
【0033】
流路部材106には、ノズル101bに連通するインク導入部として、パイプ状の2本のインクポート107、108が設けられている。インクポート107の孔は、流路105aに、インクポート108の孔は、流路部材106の凸部106aの内部で2本の流路105bをつなぐ接続流路106bに、それぞれつながっている。さらに、インクポート107には、一端側がインクカートリッジ60に接続された第1のインク経路31の他端側が接続されている。また、インクポート108には、一端側がインクタンク50に接続された第2のインク経路32の他端側が接続されている。
【0034】
インクヘッド100の内部のインクの流れについて簡単に説明すると、インクポート107から流入したインクは、流路105aを通ってインクヘッド100の幅全体に行き渡り、複数の孔103aから対をなす圧電素子104の中央部に、幅全体に亘って供給される。供給されたインクは、ここで各圧電素子104の方向に分かれ、各チャンネル104aの中を通って枠102と圧電素子との隙間に到達する。到達したインクは、複数の孔103bから2本の流路105bを通り、接続流路106bで合流して、インクポート108から流出する。また、上記流れとは逆向きに、インクポート108からインクポート107へとインクを流すことも可能である。
【0035】
チャンネル104aの電極配線は、ベース103の電極接続面103cで、ドライブIC110が搭載されたFPC109と接続されており、各チャンネル104aに電圧波形を加えることにより駆動を行う。ベース103は、圧電素子104と比較して十分に熱伝導率の高い金属でできていることが好ましい。
【0036】
インクポート107、108は、固定部材111に設けられた穴111c、111dを貫通しており、この貫通部分で接着されて固定部材111と一体化している。また、固定部材111は、カバー113とビス止めされて一体化している。ドライブIC110は、不図示のばね等の弾性部材でカバー112、113の内面に押圧されて密着している。
【0037】
ベース103の中央部には、インクの温度を検出する温度センサ(サーミスタ)114が設けられている。この温度センサ114の出力は、ベース103が熱伝導性の高い材質であることから、その裏側にあるチャンネル104a中を流れるインクの温度とほぼ同じ値を示す。インクの温度によってインクの粘性が変化するため、適切なインク吐出量を保つためには、圧電素子に印加する電圧を適宜制御する必要がある。そこで、温度センサ114で検出された温度に応じて、制御部により圧電素子の電圧を制御する。
【0038】
圧電素子104は、駆動により発熱する。この発熱の一部は、吐出されるインクと共に外へ放熱される。また、この発熱の一部は、ベース103へ伝熱され、インクヘッド100の外気へ放熱される。残りの発熱の大半は、ベース103や流路部材105、106に蓄熱される。このような蓄熱によるインクヘッド100の温度上昇を防止するために、インクヘッド100は、インクポート107から108へ、あるいはインクポート108から107へインクを流すことにより、吐出されるインク以外のインクが余分な熱を奪って流れるように設計されている。
【0039】
また、圧電素子104を駆動する際には、ドライブIC110が発熱する。この発熱は、カバー112、113に伝熱されるが、これらカバー112、113には外面に多数の放熱突起112a、113aが設けられているため、インクヘッド100周囲の空気との表面積が大きくなり、放熱効果が高められる。
【0040】
次に、インク経路20中のインク往復動について説明する。
本実施形態において、第1のインク経路31は、例えば、内径φ4mm、長さ400mmであり、第2のインク経路32は、例えば、内径φ5mm、長さ300mmである。インクヘッド100のノズル面101aに対するインクカートリッジ60の水頭差をH1、インクタンク50の水頭差をH2とし、例えば、H1を−Z方向に100mm、H2を−Z方向に250mmと設定する。待機状態では、インクカートリッジ60から第1のインク経路31、インクヘッド100、第2のインク経路32を経由してインクタンク50までインクが充填されており、また、インクタンク50内のインク量は、液面センサ71がONとなる液面高さのインク量となっている。このとき、ポンプ34、37は停止しており、また、空気経路33、36は密閉状態となっている。
【0041】
待機状態では、液面センサ71がONとなった直後に、インクカートリッジ60とインクタンク50との水頭差を打ち消す圧力を空気経路33、36内に生成することにより、ノズル101bの内側に窪んだメニスカスを形成し、インクの流れが停止した状態を作り出している。この圧力の生成は、圧力センサ72、73で空気経路33、36内の圧力を監視しながらポンプ34、37を正転又は逆転させることにより果される。所望の圧力が生成された後、ポンプ34、37を停止させる。
【0042】
本実施形態において、空気経路33、36内に生成する圧力は、水頭差H1、H2、インク密度ρ及び重力加速度gの積で計算される。例えば、上述の場合において、ρ=900kg/m3、g=9.8m/s2とすると、水頭差H1、H2の差分(−150mm)より発生する圧力は、ρ×g×(H2−H1)=−1323Paとなる。これを打ち消す圧力を空気経路33、36内に生成して、ノズル101bにメニスカスが形成される負圧を作り出すには、例えば、インクカートリッジ60の内部の気室圧力P1を−100Pa(空気経路33も同様)、インクタンク50の内部の気室圧力P2を1223Pa(空気経路36も同様)に設定する。つまり、空気経路33と空気経路36との圧力の差分が−1323Paとなるように設定する。この値に設定された場合には、ノズル101b内の圧力は−982Paと計算される。
【0043】
続いて、待機状態から、インクタンク50内のインクを第2のインク経路32、インクヘッド100、第1のインク経路31を経由してインクカートリッジ60に流す場合について説明する。
【0044】
まず、ポンプ34を正転させて、インクカートリッジ60の内部の気室圧力P1を減少させる。同時に、ポンプ37を逆転させて、インクタンク50の内部の気室圧力P2を増加させる。インクの表面張力が28dyn/cmの場合、ノズル101bの直径が25μm程度であれば、前記メニスカスは−4500Pa程度までは壊れることなく、ノズル101bから空気を吸い込むことはない。また、一般的に、インクの吐出に最適なノズル圧があり、これを維持することでインクの吐出量が一定となり、吐出不良が発生する確率が最も少なくなる。ここでは、−1000Pa±200Paを最適吐出ノズル圧とする。
【0045】
ここで、圧力P1、P2は、画像記録に適したノズル圧とインクヘッド100の温度上昇防止のための流量との両方を満足させる必要がある。この点について、詳細に説明する。
流路抵抗については、チューブの直径と長さ及びインクの粘度から計算される。半径r、長さL、インク粘度ηの場合、このチューブ内を流れるインクの流路抵抗Rは、R=8Lη/πr4で計算される。また、このチューブ内をインクが流れる流量Qと圧力差ΔPとの関係は、ΔP= RQである。
【0046】
第1のチューブ31の流路抵抗をR1、第2のチューブ32の流路抵抗をR2、並設された6つのインクヘッド100からなるラインヘッド21の流路抵抗をRh、水頭差H1による圧力をh1、水頭差H2による圧力をh2とすると、インクタンク50からインクカートリッジ60までの圧力差ΔPは、ΔP=(P1+h1)−(P2+h2)で計算される。また、インクタンク50からインクカートリッジ60までの流路抵抗Rは、R=R1+R2+Rhで計算される。ラインヘッド21を流れるインク流量Qは、上述の関係式からQ=ΔP/Rで計算される。このときのノズル101bの圧力(ノズル圧)Phは、ノズル101bに対してラインヘッド21を形成している流路抵抗値が対称である場合には、インクカートリッジ60側からの圧力から計算すると、Ph=P1+h1−(R1+Rh/2)×Qにより求めることができる(Ph=P2+h2+(R2+Rh/2)でもよい)。
【0047】
また、インクヘッド100内にインクを流す目的のひとつは、上述したように、圧電素子104で発生した熱量を奪い、インクヘッド100の温度上昇を防止することである。例えば、25℃におけるインクヘッド100の発熱量から、1ヘッド当たり略0.53ml/sのインクを流す必要があるとした場合、6つのインクヘッド100からなるラインヘッド21の温度上昇防止のために必要なインク流量は、略3.21m /s以上となる。h1、h2、R1、R2、Rhは定数であるから、圧力P1、P2の組合せのみで流量Qを決めることができ、例えば、P1=−3780Pa、P2=2560Paに設定すれば、ラインヘッド21を流れるインクのインク流量は略3.21m /sとなり、且つノズル圧Phは−1002Paとなり、画像記録に最適なノズル圧範囲近傍となる。このように、圧力P1、P2は、画像記録に適したノズル圧とインクヘッド100の温度上昇防止のための流量との両方を満足するように設定する。
【0048】
次に、インクカートリッジ60のインクを第1のインク経路31、インクヘッド100、第2のインク経路32を経由してインクタンク50に流す場合について説明する。
この場合は、ポンプ34を逆転させて、インクカートリッジ60の内部の気室圧力P1を増加させる。同時に、ポンプ37を正転させて、インクタンク50の内部の気室圧力P2を減少させる。ここで、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す場合でも、前述したインクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流す場合と同様に、圧力P1、P2は、画像記録に適したノズル圧とインクヘッド100の温度上昇防止のための流量との両方を満足させる必要がある。しかし、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す場合でも、前述したようにh1、h2、R1、R2、Rhは定数であるから、圧力P1、P2の組合せのみで流量Qを決めることができる。例えば、P1=3540Pa、P2=−1910Paに設定すれば、25℃でのインク流量Qを3.21ml/s、ノズル圧Phを−997Paとすることができ、所望の流量とノズル圧とを得ることができる。
【0049】
なお、インクの粘度ηは、温度によって変動する。つまり、インクは、温度が低いと粘度ηが大きく、温度が低いと粘度ηが小さくなる。しかし、インクヘッド100内の温度センサ114の検出温度に基づいて、予めインクの温度に対応して算出された圧力P1、P2となるように圧力センサ72、73で圧力を検出しながら制御部8によりポンプ34、37を制御することで、所望の一定流量Qと最適吐出ノズル圧Phとを設定することが可能である。
【0050】
以上のように、圧力P1、P2の設定を周期的に変更することで、インク経路20中のインクの流れを周期的に切り替え、ラインヘッド21を経由しながらインクを往復動させる。なお、圧力P1、P2は、インクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流した場合でも、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流した場合でも、所望の範囲内の流量及び所望の範囲内のノズル圧がかかるように設定されている。
【0051】
次に、インク往復動時の圧力及び流量の時間変化について、図5を参照して説明する。
図5は、インク往復動時の圧力P1、P2、ノズル圧Ph及びインク流量Qの推移を示している。
インクジェットプリンタ1の電源がOFFの状態、又は画像記録を行わない待機状態では、ポンプ34、37は停止しており、ノズル圧Phは、波形部80に示すように略−982Paとなっている。この状態では、流量Qは0である。
【0052】
インクジェットプリンタ1に画像記録指示がなされると、制御部8からの動作信号により、ポンプ34が正転、ポンプ37が逆転の動作を開始する。ポンプ34は、インクカートリッジ60内の外装61とスパウトパック62と間の気室から空気を外部に吐き出し、インクカートリッジ60内の圧力P1が−3780Paになるまで減圧する。圧力P1が−3780Paに向かって下降していく状態が波形部78であり、ポンプ34の回転数の高い動作により圧力P1を急激に下降させている。また、ポンプ37は、外気から空気を取り込み、インクタンク50内の圧力P2が2560Paになるまで加圧する。圧力P2が2560Paに向かって上昇していく状態が波形部79であり、ポンプ37の回転数の高い動作により圧力P2を急激に上昇させている。この一連の動作により、インクタンク50内からインクヘッド100(ラインヘッド21)を経由してインクカートリッジ60に向かってインクが流れる。
【0053】
ポンプ34、37は、起動時やインク往復動切り替え時など、圧力を大きく変化させる場合には、回転数の高い動作を行う。また、ポンプ34、37は、所望の圧力に達した後の圧力の変化が小さい場合には、回転数の低い動作を行う。この回転数の低い動作により、圧力P2が、波形部88の状態である2560Paに維持され、また、圧力P1が、波形部89の状態である−3780Paに維持される。
なお、本実施形態では、ポンプの回転速度を変えることにより気室に対して送り込んだり吐き出したりする空気の量を変えて、圧力の変化量を早めたり遅くしたりしているが、これによらず、必要とする圧力の変化量に応じて単位時間内当たりの空気の移動量が大きい動作と小さい動作とを任意に設定できればよい。
【0054】
次に、設定された所定の時間(図5では7秒間)が経過すると、ポンプ34、37の動作を逆転させる。ポンプ34は、インクカートリッジ60内の外装61とスパウトパック62との間の気室に外気から空気を取り込み、圧力P1が3540Paになるまで加圧する。上述のようなポンプ34の回転数の高い動作により圧力P1が3540Paに向かって急激に上昇していく状態が波形部91である。また、ポンプ37は、インクタンク50内の空気を外部に吐き出し、圧力P2が−1910Paになるまで減圧する。上述のようなポンプ37の回転数の高い動作により圧力P2が−1910Paに向かって急激に下降していく状態が波形部90である。この一連の動作により、インクカートリッジ60内からインクヘッド100(ラインヘッド21)を経由してインクタンク50内に向かってインクが流れる。
【0055】
ポンプ34、37の上述のような回転数の低い動作により、圧力P1が波形部86の状態である3540Paに維持され、また、圧力P2が波形部87の状態である−1910Paに維持される。
【0056】
以上のようにして、インクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流す動作と、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す動作とを、ポンプ34、37の設定された動作間隔で切り替えて繰り返すことにより、インクヘッド100にインクを継続的に供給しながら、画像記録に適したノズル圧Ph(波形部85)を得る。
【0057】
ここで、以上の一連の動作において、インクの流れを切り替えるタイミングでは、インクの流れがゼロとなる箇所が存在する。波形部92は、その状態を示している。
【0058】
つまり、ポンプ34、37の動作を開始した直後や、ポンプ34、37の正転/逆転を切り替えた直後では、所望の圧力(例えば、上述のP1:−3780PaやP2:2560Pa、P1:3540PaやP2:−1910Pa)に短時間で到達し、インクヘッド100の熱を奪うのに必要なインク流量Qを確保するために、ポンプ34、37の回転数を上げることで、圧力P1、P2を急激に変化させている。そのため、圧力P1、P2の波形は、波形部81、82のように、オーバーシュートやアンダーシュートが発生した不安定な状態となっており、また、ノズル圧Phも、波形部83、84のように乱れている。また、インクヘッド100を流れる流量Qも、その影響を受けて波形部93に示すように変動する。これは、2つのポンプ34、37の空気を送る能力や吸い込む能力の違いや、インクタンク50とインクカートリッジ60との気室の大きさの違いや、インクやポンプの静的/動的な慣性力により、圧力が変化するタイミングや変化量にばらつきが生じるためである。
【0059】
上記のノズル圧Phの乱れは、メニスカスを壊す程ではないため、ノズル101bからインクヘッド100内に空気を吸い込んだり、インクが漏れたりすることはない。しかし、このときのノズル圧Phは、画像記録には適さない圧力、つまり最適吐出ノズル圧の範囲である−1000Pa±200Paから逸脱した圧力となっている。
【0060】
このため、本実施形態では、ノズル圧Phが乱れている時間(波形部83、84)には画像記録を行わないように、記録媒体の搬送タイミングを制御する。この制御について、図6並びに図7を参照して説明する。
【0061】
図6は、本実施形態における画像記録時のインクジェットプリンタ1の動作を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態において変動する圧力P1、P2、ノズル圧Phの推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミング(トリガ)とを示すタイムチャートである。図7の上側のタイムチャートは、縦軸が圧力(Pa)、横軸が経過時間(s)を示しており、下側のタイムチャートは、縦軸が駆動信号(ON/OFF)、横軸が経過時間(s)を示している。両タイムチャートの横軸(経過時間(s))は、同じタイミングを示している。
【0062】
図7において、圧力P1、P2、ノズル圧Phの波形は、図5から抜粋しており、図5と同様の参照符号を付している。媒体供給動作を示す駆動信号は、凸部(駆動信号)131の立ち上がりで記録媒体2が1枚供給されることを示している。また、画像記録動作を示す駆動信号は、凸部(駆動信号)132の間、インクヘッド100からインクが吐出されて画像が記録されることを示している。また、画像記録動作の駆動信号132内に付されているp1〜p9は、何枚目の記録媒体が画像記録されているかを示しており、媒体供給動作の駆動信号131上の(p1)〜(p9)も同様である。
【0063】
まず、ユーザが、不図示の入力部により、インクジェットプリンタ1に画像記録指示を入力する(ステップS1)。本実施形態では、一例として、長辺がY方向に位置されたA4サイズの記録媒体9枚に画像記録を行う指示を入力する。
【0064】
続いて、制御部8により、記録媒体の搬送方向の長さ(本実施形態では、A4サイズの記録媒体の短辺の長さ)に応じた媒体供給タイミングが設定される(ステップS2)。この媒体供給タイミングの設定では、インクの流れを切り替える動作が行われるタイミングまでに何枚の画像記録が可能であるかを判断し、これに基づいて供給可能な枚数Nを設定する(ステップS2)。例えば、本実施形態では、図7の下側の記録動作のタイムチャートに示すように、p1〜p4の画像記録、つまりN=4が設定される。また、インクの流れが切り替わるタイミングに画像記録動作を行わないように、記録媒体を供給するタイミングを遅らせる待ち時間Twを設定する(ステップS2)。この設定については、後述する。
【0065】
次に、制御部8により、1枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p1)が出されて、搬送部3への媒体供給動作が開始される(ステップS3)。図7に示すように、この媒体供給動作が開始されてから時間Ta後に、ラインヘッド21にインクを流す動作が開始される。上述したように、待機状態(インクが流れていない状態)からポンプ34を正転、ポンプ37を逆転することにより、インクタンク50からラインヘッド21を経由してインクカートリッジ60へとインクが送液される(ステップS4)。
【0066】
送液動作が開始された初期段階では、ポンプ34の回転数の高い正転動作、ポンプ37の回転数の高い逆転動作が行われているため、圧力P1、P2の変動が大きく適正なノズル圧Phが得られていない。ノズル圧Phが安定するまでの時間がT1である。時間T1は、インク経路20の構成により変わるため、構成に応じて設定される。
このように、ノズル圧Phが不安定な時間T1中に画像記録動作が行われないように、1枚目の媒体供給信号131(p1)が出されてからTa時間経過後に、インクを送液する動作が開始される。
【0067】
圧力センサ72、73により検知される圧力P1、P2が画像記録に最適なノズル圧Ph=1000Pa±200Paが得られる設定圧付近(例えば、P1=−3780Pa、P2=2560Pa)に達したと判定されると、ポンプ34は回転数の低い正転動作に、ポンプ37は回転数の低い逆転動作に移行される。圧力P1、P2が設定付近となり、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間がT2である。
【0068】
1枚目の媒体供給動作を開始してから時間Tn後には、記録媒体は、インクヘッド100のノズル面101aに対向する画像記録開始位置に到達し、1枚目の画像記録の駆動信号132(p1)が出される(ステップS5)。1枚目の画像記録動作は、1枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Tn(Ta+T1と同様の時間)経過後に行われる。
【0069】
1枚目の媒体供給信号131(p1)が出されてから時間Tr経過後、2枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p2)が出され、2枚目の記録媒体が搬送部3へ送られる。媒体供給の駆動信号131は、ステップS2で設定されたN枚分(本実施形態では、N=4、図7のp1〜p4)まで、所定の時間Trの間隔で出力され、各駆動信号131の開始から時間Tn経過後に画像記録の駆動信号132が出される。1枚目の画像記録信号132(p1)と2枚目の画像記録信号132(p2)との間の(信号133)は、ペーパーギャップ、すなわち画像記録済みの記録媒体とこれから画像記録がなされる記録媒体との間で、画像記録部4による画像記録が行われていない状態を示している。
【0070】
媒体供給動作や画像記録動作が行われている間には、随時、ステップS1で指示された枚数(本実施形態では9枚)の画像記録が完了したか否かの確認を行う(ステップS6)。完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS7へ進む。
【0071】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、ステップS2で設定された供給可能な枚数N(本実施形態では4枚)に達しているか否かの確認を行う(ステップS7)。達していなければ、ステップS5に戻り、画像記録動作を続行する。達していれば、ステップS8に進み、媒体供給動作を停止し、ステップS2で設定した待ち時間Twだけ、媒体供給動作を待つ。本実施形態では、このように、媒体供給動作を待つことで、インクの流れを切り替える時間T1中に画像記録動作が行われないように、制御部8により制御している。
【0072】
図7において、媒体供給動作の駆動信号中に破線で示される凸状の信号が、このような制御なく5枚目の記録媒体の供給がなされる場合の5枚目の媒体供給信号である。この媒体供給タイミングの後、5枚目の画像記録をした場合、5枚目の画像記録動作はインクの流れを切り替える時間となるT1中になされることになり、記録不良を引き起こす虞がある。そこで、本実施形態では、5枚目の媒体供給動作を待ち時間Twだけ遅らせることで、画像記録動作がなされるタイミングを時間T1から外したタイミング(p5:駆動信号131)とする。
【0073】
4枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p4)が出されてからTr+Tw時間後、5枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p5)が出されて、5枚目の媒体供給動作が開始される(ステップS9)。そして、5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Ta経過後に、インクの流れを反転させるように、ポンプ34を逆転、ポンプ37を正転させて、インクカートリッジ60からラインヘッド21を経由しインクタンク50へインクを送液させる(ステップS10)。
【0074】
送液動作を反転する段階でも、ポンプ34の回転数の高い逆転動作、ポンプ37の回転数の高い正転動作が行われているため、圧力P1、P2の変動が大きく適正なノズル圧Phが得られていない。ノズル圧Phが安定するまでの時間がT1である。また、圧力センサ72、73により検知される圧力P1、P2が画像記録に最適なノズル圧Phが得られる設定圧付近(例えば、P1=3540Pa、P2=−1910Pa)に達したと判定されると、ポンプ34は回転数の低い逆転動作に、ポンプ37は回転数の低い正転動作に移行される。圧力P1、P2が設定付近となり、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間がT2である。
【0075】
5枚目の媒体供給動作を開始してから時間Tn後には、記録媒体は、インクヘッド100のノズル面101aに対向する画像記録開始位置に到達し、5枚目の画像記録の駆動信号132(p5)が出される(ステップS11)。5枚目の画像記録動作は、5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Tn(Ta+T1と同様の時間)経過後に行われる。言い換えると、ノズル圧Phが画像記録に適さない不安定な時間T1中に画像記録動作が行われないように、インク送液動作が開始される時間(又は、インク送液動作を切り替える時間)に対して、記録媒体の搬送を待機させるように、媒体供給を開始するタイミングが設定される。
【0076】
5枚目の媒体供給信号131(p5)が出されてから時間Tr経過後、6枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p6)が出され、6枚目の記録媒体が搬送部3へ送られる。媒体供給の駆動信号131は、ステップS2で設定されたN枚分(本実施形態では、N=4、図7のp5〜p8)まで、所定の時間Trの間隔で出力され、各駆動信号131の開始から時間Tn経過後に画像記録の駆動信号132(p6)がなされる。5枚目の画像記録信号132(p5)と6枚目の画像記録信号132(p6)との間の(信号133)は、先の説明と同様に、ペーパーギャップで画像記録が行われていない状態を示している。
【0077】
媒体供給動作や画像記録動作が行われている間には、随時、ステップS1で指示された枚数の画像記録が完了したか否かの確認を行う(ステップS12)。完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS13へ進む。
【0078】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、ステップS2で設定された供給可能な枚数Nに達しているか否かの確認を行う(ステップS13)。達していなければ、ステップS11に戻り、画像記録動作を続行する。達していれば、ステップS14に進み、媒体供給動作を停止し、ステップS8と同様に、設定した待ち時間Twだけ、媒体供給動作を待つ。つまり、9枚目の媒体供給動作を待ち時間Twだけ遅らせることで、画像記録動作がなされるタイミングを時間T1から外したタイミング(p9:駆動信号131)とする。
【0079】
8枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p8)が出されてからTr+Tw時間後、9枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p9)が出されて、9枚目の媒体供給動作が開始される(ステップS15)。そして、9枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Ta後に、インクの流れを反転させるように、ポンプ34を正転、ポンプ37を逆転させて、インクタンク50からラインヘッド21を経由しインクカートリッジ60へインクを送液させる(ステップS16)。
【0080】
そして、9枚目の媒体供給信号からTn時間経過後、9枚目の画像記録が行われ、全ての画像記録が終了する。
全ての画像記録が完了すると、媒体供給動作を停止し(ステップS17)、インク経路20が待機状態になるよう、上述したように、インクタンク50の液面センサ71がONとなった直後に、インクカートリッジ60とインクタンク50との水頭差を打ち消す圧力を空気経路33、36に生成して、ポンプ34、37を停止させる(ステップS18)。
【0081】
次に、供給可能な枚数N、待ち時間Twの設定について、図7を参照して説明する。
以下の説明では、インクジェットプリンタ1における媒体供給開始位置から画像記録位置までの距離をLh[mm]、記録媒体の搬送速度をV[mm/s]、1枚の記録媒体の搬送方向の長さをL1[mm]、ペーパーギャップをL2[mm]とする。
【0082】
供給可能な枚数Nは、ノズル圧Phが安定している時間T2中に画像記録を行うことができる回数から求めることができる。1枚の記録媒体の画像記録にかかる時間は、Ll/V、ペーパーギャップ133の時間は、L2/Vであるから、T2/(L1/V+L2/V)で算出された商をA、余りをTeとすれば、
T2/{(Ll+L2)/V}−T2/Tr=A・・・Te
である。Teは余った時間を示している。この時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができれば、A+1が供給可能な枚数Nとなり、時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができなければ、Aが供給可能な枚数Nとなる。つまり、
Te≧L1/Vであれば、NはA+1枚
Te<L1/Vであれば、NはA枚
である。また、媒体供給動作を遅延させる待ち時間Twは、前記求められた供給可能な枚数Nを用いて、Tw=Tp−Tr×Nとなる。
【0083】
媒体供給を行うタイミングは、インクの流れを切り替える動作が開始されるよりも時間Taだけ早ければよく、媒体供給動作を開始してから画像記録動作が開始されるまでの時間Tn=Lh/Vより、Ta=Tn−T1=Lh/V−T1となる。
また、インクの流れを切り替える間隔Tpは、Tp=T1+T2と表され、N枚の画像記録が行われる際の媒体供給間隔Trは、Tr=(L1+L2)/Vとなる。
【0084】
例えば、一方向にインクを送液可能な時間を7秒とすれば、Tp=T1+T2=7秒となり、インク経路20の構成からT1の時間を設定すれば、T2の値も決まり、設計からの固定値となる、L1、L2、Lh、Vを用いることにより、N、Tw、Tr、Tn、Tp、Taを求めることができる。
なお、前記設定は一例であり、この設定に限らず、インクの流れを切り替えるタイミングに画像記録を行わないよう、媒体供給を行うタイミングを設定すればよい。つまり、供給された記録媒体のページギャップ間で、インクの流れの切り替え動作が完了するように、記録媒体の供給(搬送)タイミングを制御すればよい。
【0085】
図8は、A3サイズの記録媒体9枚に画像記録指示が実行された場合の圧力の推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミングとを示すタイムチャートである。
図8において、図7の場合と異なる点は、一方向の送液動作で2枚の画像記録が行われ、待ち時間Tw’が設定される点である。このように、記録媒体の大きさに応じて、一方向の送液動作で画像記録可能な枚数N及び待ち時間Tw(Tw’)が設定される。
【0086】
本実施形態によれば、インクを往復動させながらインクヘッドにインクを供給し、インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、記録媒体を搬送(供給)するタイミングとが異なるように、つまり、インクの流れを切り替えるタイミングに基づいて記録媒体の搬送動作を開始するタイミングを制御しているため、切り替え時には、画像記録が行われない。換言すれば、先行して搬送される記録媒体と後続して搬送される記録媒体とのページギャップ間でインクの流れる向きが切り替えられるように、記録媒体を搬送(供給)するタイミングが制御されている。これにより、ラインヘッド21(インクヘッド100)は、画像記録に適したノズル圧Phが掛った状態でインクを吐出させることができ、高画質な画像を記録することができる。
【0087】
以下、第2乃至第8の実施形態について説明する。
以下では、インクジェットプリンタ1の基本構成は、特に述べない限り、図1乃至図4に示される第1の実施形態と同様であり、ノズル圧Phを画像記録に適した圧力に設定する方法も同様である。従って、これらの構成及び設定について、同一の部分には同一の参照番号を付してその図示及び説明は省略し、主に、異なる部分の構成及び動作について説明する。
【0088】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図9並びに図10を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態における画像記録時のインクジェットプリンタ1の動作を示すフローチャートであり、図10は、これに対応するタイムチャートである。なお、図10は、A4サイズの記録媒体9枚に画像記録指示が実行された場合のタイムチャートである。
【0089】
まず、第1の実施形態と同様に、ユーザが、不図示の入力部により、インクジェットプリンタ1に画像記録指示を入力する(ステップS1)。続いて、制御部8により、記録媒体の搬送方向の長さ(本実施形態では、A4サイズの記録媒体の短辺の長さ)に応じたインクの流れを切り替える時間Tcが設定される(ステップS19)。このインクの流れを切り替える時間Tcは、画像記録動作中にインクの流れを切り替える動作を行わないようにして設定される。この設定については、後述する。
【0090】
次に、第1の実施形態と同様に、1枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(pl)が出されることにより、搬送部3への媒体供給動作が開始されて(ステップS3)、媒体供給動作が開始されてから時間Ta後に、ラインヘッド21にインクを流す動作が開始される。以下、ステップS4におけるポンプ34、37の駆動、ステップS5における1枚目の画像記録動作、ステップS6における画像記録が完了したかの確認も、第1の実施形態と同様である。ステップS6において、指示された枚数の画像記録が完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS20へ進む。
【0091】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、1枚目の媒体供給が開始されてからステップS19で設定された時間Tcが経過したかの確認を行う(ステップS20)。経過していなければ、ステップS5に戻り、画像記録動作を続行する。経過していれば、ステップS10に進む。時間Tcの間隔に合わせてインクの切り替え動作を行うことにより、インクヘッドの下方をペーパーギャップが通過する間、すなわち画像記録を行わない時間と、ノズル圧Phが画像記録に適さない時間(ノズル圧Phが安定するまでの時間)T1とのタイミングを合わせている。
【0092】
例えば、図10に示すように、5枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p5)が出されてから時間Ta後のタイミングで、インクの流れを反転させる動作が行われる。このタイミングは、インク送液動作が開始されてから時間Tcが経過した時間でもある。すなわち、1枚目の画像記録動作が開始されてから4枚目の画像記録動作が完了するまでは、インクタンク50からインクカートリッジ60へインクを流す動作が行われ、4枚目の画像記録動作と5枚目の画像記録動作とのペーパーギャップ133の間に、インクの流れを切り替える動作を行い、5枚目の画像記録動作からは、インクカートリッジ60からインクタンク50へインクを流す動作を行う。5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Ta経過後に、インクの流れを反転させるように、ポンプ34を逆転、ポンプ37を正転させて、インクカートリッジ60からラインヘッド21を経由しインクタンク50へインクを送液させる(ステップS10)。
【0093】
送液動作を反転する段階では、上述したように、P1、P2の変動が大きく適正なノズル圧Phが得られていない状態であり、ノズル圧Phが安定するまでの時間がT1である。また、圧力センサ72、73により検知されるPl、P2の圧力が、画像記録に最適なノズル圧が得られる設定圧付近(P1=3540Pa、 P2=−1910Pa)にまで達したと判定されると、ポンプ34は回転数の低い逆転動作に移行し、ポンプ37は回転数の低い正転動作に移行される。圧力P1、P2が設定付近となり、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間がT12である。
【0094】
5枚目の媒体供給動作を開始してから時間Tn後には、記録媒体は、インクヘッド100のノズル面101aに対向する画像記録開始位置に到達し、5枚目の駆動信号132(p5)が出される(ステップS11)。5枚目の画像記録動作は、5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Tn(Ta+T1と同様の時間)経過後行われる。言い換えると、ノズル圧Phが画像記録に適さない不安定な時間T1中に画像記録動作が行われないように、媒体供給を開始するタイミングに対して、インク吐出を待機させるように、インク送液動作が開始される時間(又は、インク送液動作を切り替える時間)が設定される。
【0095】
5枚目の媒体供給信号131(p5)が出されてから時間Tr経過後、6枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p6)が出され、6枚目の記録媒体が搬送部3へ送られる。
【0096】
媒体供給動作や画像記録動作が行われている間には、第1の実施形態と同様に、随時、ステップS1で指示された枚数の画像記録が完了したかの確認を行う(ステップS12)。完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS21へ進む。
【0097】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、5枚目の媒体供給動作が開始されてからステップS19で設定されたインクを切り替える時間Tcが経過したかの確認を行う(ステップS21)。経過していなければ、ステップS11に戻り、画像記録動作を続行する。経過していれば、ステップS16に進む。このように、時間Tcの間隔に合わせてインクの切り替え動作を行うことにより、ペーパーギャップがインクヘッドを通過する間、すなわち画像記録を行わない時間と、ノズル圧Phが画像記録に適さない時間T1(=ノズル圧Phが安定するまでの時間)とのタイミングを合わせている。
【0098】
9枚目の媒体供給信号131が出されてから時間Ta後に、インクの流れを反転させる動作が行われる。ポンプ34を正転、ポンプ37を逆転させることにより、インクタンク50からラインヘッド21を経由しインクカートリッジ60へインクを送液させる(ステップS16)。
【0099】
そして、9枚目の媒体供給信号からTn時間経過後、9枚目の画像記録が行われ、全ての画像記録が終了する。
全ての画像記録が完了すると、第1の実施形態と同様に、媒体供給動作を停止し(ステップS17)、ポンプ34、37を停止させる(ステップS18)。
【0100】
次に、インクの流れを切り替える時間Tcの設定について、図10を参照して説明する。
インクの流れを切り替える時間Tcは、インクを一方向に送液可能な最大時間をTmaxとすると、条件Tc≦Tmaxを満たす必要がある。この条件を逸脱すると、インクタンク50内のインクが空となり、インクヘッド100に空気を送ってしまい、吐出不良を発生させる虞があるからである。よって、時間Tmaxの間に何枚の画像記録が可能かを求めて、その枚数の画像記録が完了した後に、インクの流れを切り替える動作を行うようTcの時間が設定される。
【0101】
時間Tmax中に画像記録可能な枚数Nは、(Tmax−T1)/Trで算出された商をA、余りをTeとすれば、
(Tmax−T1)/Tr=A・・・Te
である。Teは余った時間を示している。この時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができれば、A+1が供給可能な枚数Nとなり、時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができなければ、Aが供給可能な枚数Nとなる。つまり、
Te≧L1/Vであれば、NはA+1枚
Te<L1/Vであれば、NはA枚
である。また、インクの流れを切り替える時間Tcは、前記求められた媒体供給可能な枚数Nを用い、Tc=Tr×Nとなる。
【0102】
インクの流れを開始するタイミングは、媒体供給動作が開始された時間Ta経過後のタイミングで行えばよく、媒体供給動作を開始してから画像記録動作が開始されるまでの時間Tn=Lh/Vより、Ta=Tn−T1=Lh/V−T1となる。
また、画像記録が行われる際の媒体供給間隔(Tr)は、Tr=(L1+L2)/Vとなる。
【0103】
なお、前記設定は一例であり、この設定に限らず、媒体供給を行うタイミングに画像記録を行わないよう、インクの流れを切り替えるタイミングを設定すればよい。つまり、供給された記録媒体のページギャップ間で、インクの流れの切り替える動作が完了するように、インクの流れを切り替えるタイミングを制御すればよい。
【0104】
図11は、A3サイズの記録媒体9枚に画像記録指示が実行された場合の圧力の推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミングとを示すタイムチャートである。
図11において、図10の場合と異なる点は、一方向の送液動作で2枚の画像記録動作が行われ、インクの流れを切り替える時間Tc’が設定される点である。このように、記録媒体の大きさに応じて、インクの流れを切り替える時間Tc(Tc’)が設定される。
【0105】
本実施形態によれば、インクを往復動させながらインクヘッドにインクを供給し、インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、記録媒体を搬送(供給)するタイミングとが異なるように、つまり、記録媒体を搬送(供給)するタイミングに基づいてインクの流れを切り替えるタイミングを制御しているため、切り替え時には、画像記録が行われない。換言すれば、先行して搬送される記録媒体と後続して搬送される記録媒体とのページギャップ間でインクの流れる向きが切り替えられるように、切り替えタイミングが制御されている。これにより、ラインヘッド21(インクヘッド100)は、画像記録に適したノズル圧Phが掛った状態でインクを吐出させることができ、高画質な画像を記録することができる。また、本実施形態では、記録媒体を供給するタイミングや条件(画像記録枚数や記録媒体のサイズ)に合わせて、インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングを制御しているため、効率よく画像記録を行うことができ、単位時間当たりの画像記録枚数を向上することができる。
【0106】
(変形例)
図12は、第2の実施形態の変形例における画像記録時のインクジェットプリンタ1の動作を示すフローチャートである。
本変形例において、図9に示す第2の実施形態のフローチャートと異なる点は、ステップS22〜S25が追加されている点である。
【0107】
本変形例では、ステップS20の後、供給される記録媒体のサイズに変更がないかの確認を行う(ステップS22)。変更があれば、YESに進み、ステップS19で設定されたインクの流れを切り替える時間Tcの設定を時間Tc’に変更し(ステップS23)、ステップS10に進む。変更がなければ、NOに進み、そのままステップS10に進む。
【0108】
このようなステップを追加することで、サイズの異なる記録媒体への画像記録指示が行われた場合でも、一方向のインクの流れごとにインクの流れを切り替える時間Tcの設定を変更可能となり、インクの流れが切り替わるタイミングに画像記録動作を行わない動作が可能である。
【0109】
本変形例では、サイズの異なる記録媒体が混在した場合にも対応し、インクの流れを替える動作ごとにTcの設定値が見直される。この設定値の見直しについて説明する。
まず、1枚目の媒体供給信号131が出されてから時間Ta経過後にインクタンク50からインクカートリッジ60へインクを流す動作が行われて、画像記録が開始される。
【0110】
次に、一方向にインクを送液可能な最大時間Tmaxの間に何枚目までの画像記録が可能かを求めて、インクの切り替える時間Tcを求める。
ここで、記録媒体p1〜pN(Nは自然数)の搬送方向の長さをL1’〜LN’とすれば、
Tmax≧T1 +Ll’/V
+L2/V+L2’/V
+・・・
+L2/V+LN’/V=Tc
の関係が成り立つ枚数までを、一方向の流れで媒体供給可能な枚数とし、その時間をTcとする。
【0111】
このとき、Tmax−Tc=Tdefとすると、Tdefは、インクをまだ送液可能だが画像記録動作とのタイミングの関係でインクの流れを反転させたために発生する送液残り時間である。このTdefは、インクの流れを反転させた後のインク送液可能な最大時間Tmax’に影響を及ぼすため、この時間を考慮して、インクの流れを反転させた後の画像記録枚数、次のインクの流れを切り替える時間Tc’を求める。
【0112】
例えば、先の一方向の流れでp1〜p4の記録媒体の画像記録が行われているとすれば、p5からの画像記録がインクの送液方向が反転された後に行われる。ここで、
Tmax’≧T1 +L5’/V
+L2/V+L6’/V
+・・・
+L2/V+LN’/V=Tc’
の関係が成り立つ枚数までを、一方向の流れで媒体供給可能な枚数とし、その時間をTc’とする。
【0113】
このとき、Tmax’=Tmax−Tdef=Tcであるから、Tc≧Tc’となる。また、Tmax’−Tc’=Tdef’とすると、Tdef’は、インクをまだ送液可能だが画像記録動作とのタイミングの関係でインクの流れを反転させたために発生する送液残り時間である。
【0114】
同様の考え方により、Tmax’=Tmax−Tdef’として、画像記録可能な枚数、Tc’’を求め、インクの流れを切り替える時間が設定される。
なお、前記設定は一例であり、この設定に限らず、インクの流れを切り替えるタイミングに画像記録を行わないよう、インクの流れを切り替えるタイミングを設定すればよい。つまり、供給された記録媒体のページギャップ間で、インクの流れの切り替える動作が完了するように、インクの流れを切り替えるタイミングを制御すればよい。
【0115】
図13は、サイズの異なる記録媒体が混在した場合のタイムチャートであり、A4横サイズ3枚、A3縦サイズ4枚、A4横サイズ1枚、B4縦サイズ4枚の画像記録を連続的に行っている。
【0116】
図13において、インクを送液可能な時間を、Tmax、Tmax’、Tmax ’’、インクの切り替わるタイミングをTc、Tc’、Tc’’、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間を時系列順にT13、T14、T15、T16とすれば、
Tmax≧T1+T13=Tc
Tmax’≧T1+T14=Tc’
Tmax’’≧T1+T15=Tc’’
となり、T13の時間内には、A4サイズ3枚(駆動信号146)とA3サイズ1枚(駆動信号147)の画像記録動作、T14の時間内には、A3サイズ3枚(駆動信号147)の画像記録動作、T15の時間内には、A4サイズ1枚(駆動信号146)とB4サイズ3枚(駆動信号148)の画像記録動作が行われる。T16の時間内に残りのB4サイズ1枚(駆動信号148)の画像記録が行われることで画像記録は完了し、その後、インク経路20が待機状態に移行するための動作が行われる。
【0117】
本変形例では、異なるサイズの記録媒体が混在している場合にも、効率よく高品質な画像記録を行うことができる。
【0118】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、図14を参照して説明する。
図14は、第3の実施形態における圧力P1、P2、ノズル圧Phの推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミング(トリガ)を示すタイムチャートである。
【0119】
本実施形態では、サイズの異なる記録媒体に連続して画像記録が行われた場合に、1枚の画像記録が完了するごとにインクの流れを切り替えている。例えば、図14に示すように、A4横サイズ1枚、A3縦サイズ2枚、B4縦サイズ1枚、A4横サイズ1枚、A3縦サイズ1枚の順に画像記録指示が出されたとき、A4横の画像記録(駆動信号152)、インクの流れの切り替え、A3縦画像記録1枚目(駆動信号153)、インクの流れ切り替え、A3縦画像記録2枚目(駆動信号153)、インクの流れの切り替え、…、A3縦画像記録1枚目(駆動信号153)のように、1枚の画像記録を終えるごとにインクの流れを切り替える動作を行う。
【0120】
例えば、1枚目の画像記録動作でサイズの小さい記録媒体に画像記録した後に、サイズの大きい記録媒体に画像記録させようとすると、1枚目の画像記録動作ではインクを送液する時間が短いため、2枚目の画像記録のときにはインクを送液する十分なインク量が確保できない虞がある。そこで、本実施形態では、1枚目の媒体供給駆動信号149を開始するTs時間前からインクを送液する動作を開始し、1枚目の媒体供給駆動信号149から画像記録が行われるまでの時間Tnと合わせて、一方向に送液可能な最大時間Tmaxの略半分の時間送液動作を行った後から画像記録を開始するように、Tmax/2≒Ts+Tnの関係が成り立つよう設定されている。
【0121】
この時間を設定することにより、インクを往復する流れが、Tmaxの略半分の時間を中心に動作され、サイズの異なる記録媒体に画像記録が行われても、インクが不足することなく、1枚の画像記録が完了するごとにインクの流れを切り替えることが可能となる。
【0122】
また、さらに、A4、A3、A4、A3、…のように、サイズの小さい記録媒体と大きい記録媒体とが交互に継続して画像記録される場合、インクが往復動する位置が少しずつ偏り、Tmaxの範囲を逸脱してしまう虞がある。このような場合も考慮し、Tmax/2の時間からのずれが任意に設定された閾値から逸脱した場合には、一方向の送液方向を延ばし、それに合わせて記録媒体を供給するタイミングを遅らせる制御が行われる。
【0123】
本実施形態では、記録媒体の搬送動作が行われ、1枚の画像記録が完了するたびにインクヘッド内を流れるインクの向きを切り替えているため、切り替え時には、画像記録が行われない。換言すれば、先行して搬送される記録媒体と後続して搬送される記録媒体とのページギャップ間でインクの流れる向きが切り替えられるように、切り替えタイミングが制御されている。これにより、ラインヘッド21(インクヘッド100)は、画像記録に適したノズル圧Phが掛った状態でインクを吐出させることができ、高画質な画像を記録することができる。
【0124】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、従動ローラ12の上方でこれに対向する位置に、記録媒体2の先端(エッジ)を検知し位置検出を行う媒体位置検出手段としての媒体位置センサ25を有している。この媒体位置センサ25は、インクヘッド100に対して所定の距離L25だけ、媒体搬送方向上流側に位置しており、画像記録部4が固定された不図示の搬送部フレームに固定されている。
【0125】
媒体位置センサ25は、レジストローラ対11から搬送される記録媒体2の先端を検知することで、記録媒体2がインクヘッド100の下方に搬送されるまでの時間を求めて、インクヘッド100がインクを吐出するタイミングやインク経路20中のインクの流れを切り替えるタイミングを決定する。媒体位置センサ25は、画像記録部4に対して固定されているため、相対的な位置関係にずれがなく、記録媒体2がインクヘッド100の下方に搬送されるまでの時間を精度よく検知することができる。つまり、搬送速度をVとすれば、媒体位置センサ25が記録媒体2のエッジを検出してからL25/Vの時間で記録媒体2がインクヘッド100の画像記録開始位置に到達することが容易に算出することができる。さらに、媒体位置センサ25により検出された情報に基づいて、制御部8によりインクヘッド100のインク吐出タイミングを制御することも可能である。
【0126】
本実施形態によれば、記録媒体の先端を検出し、搬送される記録媒体の位置を精度よく検知可能な媒体位置センサを備えているため、記録媒体の位置を正確に求めることができ、インクの流れを切り替えるタイミングを精度よく決定することができる。
【0127】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態について、図16を参照して説明する。
本実施形態において、第1の実施形態のインク経路20と異なる点は、インクカートリッジ60及びインクタンク50のインク液面がインクヘッド100のノズル面101aよりも高い位置に配置されている点である。
【0128】
このような位置関係でも、圧力P1、P2を設定することで、画像記録に適したノズル圧を維持しながら、インクヘッド100を経由してインクを往復動させることが可能である。例えば、インクカートリッジ60とインクタンク50とのインク液面をインクヘッド100のノズル面101aから100mm高い位置とし、第1のインク経路31、第2のインク経路32及びラインヘッド21の流路抵抗値が第1の実施形態と同様の場合について説明する。
【0129】
インクジェットプリンタ1は、画像記録を行わない状態では、P1=P2=−1880Paにすることで、ノズル圧Phを−998Paに設定することができる。画像記録時にインクタンク50からインクカートリッジ60へインクを流す場合には、Pl=−5540Pa、P2=350Paに設定すれば、画像記録に適したノズル圧−1004Paを得ることができる。また、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す場合には、P1=1780Pa、P2=−4120Paに設定すれば、画像記録に適したノズル圧−998Paを得ることができる。
【0130】
また、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングとを制御する。
【0131】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態について、図17を参照して説明する。
本実施形態では、インク経路20の構成が第1の実施形態のインク経路20と異なる。
【0132】
本実施形態のインク経路20では、2つのインクタンク50、51の水頭差圧により、これらタンク内の圧力P1、P2を設定する。
【0133】
インク経路20は、インクヘッド100(ラインヘッド21)と、インクタンク50と、第1の実施形態のインクカートリッジ60に代わるインクタンク51と、インクタンク50、51内のインク量をそれぞれ検知するように、これらの近傍にそれぞれ設けられた液面センサ71、74と、インクタンク50、51をそれぞれ所望の高さに昇降させるタンク昇降部52と、を有している。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、インクタンク51とインクヘッド100とは、第1のインク経路(第1のチューブ)31によって接続されており、また、インクヘッド100とインクタンク50とは、第2のインク経路(第2のチューブ)32によって接続されている。また、図示しないが、インクタンク50、51には、大気と連通するポートが形成されている。
【0134】
待機状態(画像記録を行わない状態)では、インクタンク50、51の高さは、インクヘッド100のノズル圧Phが負圧を保つことができる位置、例えば、ノズル面101aよりもZ方向に略110mmだけ高い位置にある(図17(a))。画像記録動作が指示されると、タンク昇降部52により、インクタンク50は上昇され、インクタンク51は下降される。ここで、第1及び第2のインク経路31、32を、同じ長さの、φ5mmのチューブとし(流路抵抗R1=R2)、第1の実施形態と同様のインク粘度ρ、ラインヘッド21の流路抵抗Rh(両側のインク導入口に対称の流路抵抗)とすれば、ラインヘッド21の熱を奪って流れるためのインク流量3.21ml/sを確保可能な高さとすることができる。インクタンク50、51の移動量は、280mmであり、インクタンク50の高さは、ノズル面から167mmだけ高い位置、インクタンク51の高さは、ノズル面から393mmだけ低い位置まで移動する(図17(b))。そして、インクタンク50の液面センサ71がONからOFFになるまで、この位置で維持される。このとき、インクタンク50からラインヘッド21を経由してインクタンク51へとインクが流れ、ラインヘッド21に流れるインク量は3 . 21ml/sとなる。
【0135】
次に、液面センサ71がONからOFFに変わると、タンク昇降部52により、インクタンク50は下降され、インクタンク51は上昇される。インクタンク50、51の移動量は、280×2=560mmであり、インクタンク50の高さは、ノズル面から393mmだけ低い位置まで、インクタンク51の高さは、ノズル面から167mmだけ高い位置まで移動する(図17(c))。そして、インクタンク51の液面センサ74がONからOFFになるまで、この位置で維持される。このとき、インクタンク51からラインヘッド21を経由してインクタンク50へとインクが流れ、ラインヘッド21に流れるインク量は3 . 21ml/sとなる。
【0136】
画像記録動作が終了し、インクの往復動を停止する場合には、インクタンク50、51を図17(a)の位置に戻す。
以上のように、待機状態には、図17(a)の位置に、画像記録動作時には図17(b)と(c)との状態を交互に繰り返すことで、ラインヘッドにインクを往復動させる。
【0137】
なお、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングとを制御する。
【0138】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態について、図18を参照して説明する。
本実施形態では、インク経路20の構成が第1の実施形態のインク経路20と異なる。
【0139】
本実施形態のインク経路20では、2つのインクタンク50、51に設けられたベローズ300、301の伸縮でタンク内の空気を加減圧することにより、これらタンク内の圧力P1、P2を設定する。
【0140】
インク経路20は、インクヘッド100(ラインヘッド21)と、インクタンク50、51と、インクタンク50の近傍に設けられた液面センサ71と、インクタンク50、51内の空気をそれぞれ加減圧するベローズ300、301と、ロッド308、309をそれぞれ有し、制御部8からの電気信号に応じてロッド308、309をベローズ300、301に対してそれぞれ動作させるシリンダ304、305と、ロッド308、309の一端部に固定され、シリンダ304、305の押し引きする力を伝える板部材306、307と、を有している。板部材306、307は、それぞれ、ベローズ300、301に固定され、板部材306、307の一端部の位置を検出し、ベローズ300、301の伸縮時の長さを位置検出センサ302、303で検知している。
【0141】
待機状態(画像記録を行わない状態)では、インクタンク50、51内の圧力P1、P2は、ノズル面101aからインクタンク内の液面までの水頭差圧を考慮し、ノズルを負圧に保つような負圧レベルに保たれている。画像記録指示がなされると、シリンダ304のロッド308が出ることで板部材306がベローズ300を押し、ベローズ300が縮んでいく。それと同時に、シリンダ305のロッド309が引っ込むことで板部材307がベローズ301を引っ張り、ベローズ301が伸びていく。ベローズの体積変動によりインクタンク内の圧力は変化していく。
【0142】
このときのインクタンク50の圧力変化は、ロッド308のストローク量に対して、ベローズ300とインクタンク50とで形成される空気室の体積変化量を予め求めておくことにより算出可能である。本実施形態では、ロッド308の変位量を位置検出センサ302で検知し、その量に応じてインクタンク50内の圧力P2を求めている。同様に、インクタンク51の圧力変化は、ロッド309のストローク量に対して、ベローズ301とインクタンク51とで形成される空気室の体積変化量を予め求めておくことにより算出可能である。本実施形態では、ロッド309の変位量を位置検出センサ303で検知し、その量に応じてインクタンク51内の圧力P1を求めている。
【0143】
P1、P2が所望の圧力になる位置までシリンダ304、305が動き、その位置を維持する。その状態が、図18(b)である。このとき、インクは、インクタンク50からインクヘッド100を経由してインクタンク51へ流れていく。
【0144】
時間が経つにつれて、圧力P1、P2は下がっていくため、インクの流れも少なくなっていく。これではインクヘッドの温度上昇防止に必要なインク流量を確保できなくなるため、好ましくない。そこで、この確保できなくなる時間を予め求めておき、その時間が経過したら次の動作へ移る。
【0145】
例えば、図18(b)の状態から5秒後にはシリンダ304のロッド308が引っ込むことで、板部材306がベローズ300を引っ張り、ベローズ300が伸びていく。同時に、シリンダ305のロッド309が出ることで、板部材307がベローズ301を押し、ベローズ301が縮んでいく。圧力P2、P1が、所望の圧力になるまでシリンダ304、305が動き、その位置を維持する。その状態が、図18(c)である。このとき、インクは、インクタンク51からインクヘッド100を経由してインクタンク50へ流れていく。インクタンク50の液面センサ71がOFFからONになった初期の液面位置の状態になると次の動作を行う。
【0146】
インクの往復動を続ける場合には、図18(b)並びに(c)に示すように、継続したベローズの伸縮を交互に行う。画像記録が終了し、インクの往復動を停止する場合には、図18(a)に示す初期位置にシリンダを戻す。
以上のように、画像記録を行わない場合には、図18(a)の状態、画像記録動作時には、図18(b)と(c)との状態を交互に繰り返すことで、ラインヘッドにインクを往復動させる。なお、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングとを制御する。
【0147】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態について、図19を参照して説明する。
このインク経路20は、第7の実施形態のインク経路20に対して、インクタンク内には空気がなく、ベローズの伸縮により直接インク(非圧縮性)を押し引きしてインクの流れを切り替えている。この方式を使用すると、経路内に空気の層が存在しないため、空気に触れると色素が凝集し固化し易いインクを使用することが可能となる。
【0148】
図19に示すように、インク経路20は、Z方向でインクタンク50を挟んでベローズ300に対向して設けられたベローズ310と、Z方向でインクタンク51を挟んでベローズ301に対向して設けられたベローズ311と、ベローズ310の位置を検出するように、ベローズ310の近傍に配置された位置センサ312と、を有している。位置センサ312は、ベローズ311の位置を検出するように、ベローズ311の近傍に配置されてもよい。これらベローズ310、311のばね定数K2は、ベローズ300、301のばね定数K1よりも大きく設定され(K2>K1)、ベローズ300、301の伸び縮みするストローク量に対して、伸び切らず、かつ、縮み切らないストローク量(ばね定数の特性を得られる範囲)を確保している。
【0149】
画像記録を行わないときや、画像記録を行う動作が指示されたときのシリンダ304、305や、ベローズ300、301の動作や位置検出方法は、第7の実施形態と同様である。
【0150】
本実施形態では、インク経路20内が非圧縮性であるインクで満たされており、ベローズ300とインクタンク50、ベローズ301とインクタンク51内の体積変動が敏感にインク経路内に伝わってしまうが、この変動を吸収し、急激な圧力変動を防止するダンパの役目を果すのがベローズ310、311である。例えば、ベローズ310、311が設けられていない場合、ベローズ300の動きがベローズ301よりもわずか100ms早く動作しただけでも、経路内には数十kPaレベルでの圧力変動が発生し、インクヘッドのノズルからインクが垂れたりノズルから空気を吸い込んだりする虞がある。このような問題を防ぐために、ベローズ310、311が設けられている。
【0151】
また、画像記録動作により経路内のインク量が減った場合には、ベローズ310の戻りが小さくなり少し縮まった状態に変化するため、その位置を位置センサ312で検知し、経路内のインクが不足していると判断された場合には、インクカートリッジからインクタンクへインクを送液する動作が行われる。以上のようにして、ラインヘッドにインクを流す動作を可能としている。
【0152】
本実施形態によれば、インク経路部内に空気層がないため、空気に触れると色素が凝集し固化し易いインクの使用が可能となる。なお、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングを制御する。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能である。
【0154】
以下は、本発明の付記請求項である。
[1]記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された記録媒体にインクを吐出する複数のノズルを備え、該ノズルに連通する第1及び第2のインク導入部を有するインクヘッドと、
第1のインク経路によって前記第1のインク導入部と接続された第1のインク貯留部と、
第2のインク経路によって前記第2のインク導入部と接続された第2のインク貯留部と、
前記第1及び第2のインク貯留部内に空気を供給、及び前記第1及び第2のインク貯留部内の空気を吸引することで、前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧する加減圧手段と、
前記搬送部、前記インクヘッド及び前記加減圧手段を制御する制御部と、を具備し、
前記加減圧手段は、前記制御部により、前記第1のインク貯留部内を加圧かつ前記第2のインク貯留部内を減圧する第1の動作と、前記第1のインク貯留部内を減圧かつ前記第2のインク貯留部内を加圧する第2の動作と、を交互に繰り返すことにより、前記インクヘッドに流れるインクの向きを、前記第1のインク導入部から前記第2のインク導入部へ流れる向きと、前記第2のインク導入部から前記第1のインク導入部へ流れる向きと、で切り替え可能であるインクジェットプリンタにおいて、
前記制御部は、前記加減圧手段によりインクの流れる向きを反転させる際に、前記搬送部による前記記録媒体の搬送及び、前記インクヘッドのインク吐出のうちのいずれかを待機させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【符号の説明】
【0155】
1…インクジェットプリンタ、2…記録媒体、3…供給部、4…搬送部、5…画像記録部、6…クリーニング部、7…排出部、8…制御部、20…インク経路、21…ラインヘッド、30…加温部、31…第1のインク経路、32…第2のインク経路、33…空気経路、34…ポンプ、35…空気経路、36…空気経路、37…ポンプ、38…空気経路、40…冷却部、50,51…インクタンク、52…タンク昇降部、60…インクカートリッジ、70…フロート、71…液面センサ、72,73…圧力センサ、74…液面センサ、100…インクヘッド、101…ノズルプレート、101a…ノズル面、101b…ノズル、102…枠、103…ベース、104…圧電素子、104a…チャンネル、105,106…流路部材、105a,105b…流路、106a…凸部、106b…接続流路、107,108…インクポート、114…温度センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク往復動経路を備えたインクジェットプリンタ及びその画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数のノズルが形成されたインクヘッドを搭載し、これらノズルから記録媒体にインクを吐出して画像記録(印刷)を行うインクジェットプリンタが知られている。
例えば、特許文献1には、インクヘッドと、インクヘッドにインクを供給する供給経路と、インクヘッドからインクを排出する排出経路と、を有するインクジェットプリンタが開示されている。このインクジェットプリンタは、供給経路の一端側にインクカートリッジを、排出経路の一端側にインクタンクをそれぞれ接続し、インクヘッドを経由してインクカートリッジとインクタンクとの間でインクを往復動させながら画像記録を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3419220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいて、インクの往復動の切り換え動作時には、インクの流れによる慣性力やポンプ駆動開始時の不安定さから発生する圧力変動等の影響によって、インクヘッドのノズルにかかる圧力が安定しない。このため、インクの不吐出や吐出量のばらつきが生じ、画像記録品位の低下を招いてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、インクの往復動の切り替え動作があっても高品質な画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及びその画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧することで、前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替える加減圧手段と、前記搬送部、前記インクヘッド及び前記加減圧手段を制御する制御部と、を具備し、前記加減圧手段により前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、前記搬送部により記録媒体を搬送するタイミングとが異なるように、前記制御部を制御するインクジェットプリンタである。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、を具備し、前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替えながら、所定の時間間隔を置いて搬送される複数の記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタの画像記録方法において、前記所定の時間間隔中に、前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替える画像記録方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクの往復動の切り替え動作があっても高品質な画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及びその画像記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、インクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】図2は、インクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図3】図3は、インクヘッドの断面図である。
【図4】図4は、インクヘッドの斜視図である。
【図5】図5は、インク往復動時の圧力及び流量の時間変化を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態における画像記録時のインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図8】図8は、第1の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態におけるインク往復動の切り替え、媒体供給及び画像記録動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図12】図12は、第2の実施形態の変形例におけるインク往復動の切り替え、媒体供給及び画像記録動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、第2の実施形態の変形例における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図14】図14は、第3の実施形態における圧力、媒体供給及び画像記録動作を示すタイムチャートである。
【図15】図15は、第4の実施形態におけるインクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図16】図16は、第5の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図17】図17(a)乃至(c)は、第6の実施形態におけるインク経路の構成を示す概略図である。
【図18】図18(a)乃至(c)は、第7の実施形態におけるインク経路の構成を示す概略図である。
【図19】図19は、第8の実施形態におけるインク経路の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、インクジェットプリンタ1の構成を示す概略図である。
インクジェットプリンタ1は、大別すると、記録媒体2を収容し供給する供給部3と、供給された記録媒体2を搬送する搬送部4と、記録媒体2にインクを吐出するインクヘッド100を備えた画像記録部5と、インクヘッド100をクリーニングするクリーニング部6と、画像記録された記録媒体2を排出し収容する排出部7と、前記インクヘッド100を含むインク経路20(図2)と、これらを始めとするインクジェットプリンタ1の各構成部を制御する制御部8と、を有している。これら各構成部は、不図示の筐体内に収容されている。
【0012】
以下の説明では、記録媒体2の搬送方向をX方向、X方向と直交する方向をY方向又は幅方向(主走査方向)、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向又は上下方向(鉛直方向)と称する。
【0013】
供給部3は、供給トレイ9と、ピックアップローラ10と、を有している。供給トレイ9は、記録媒体2として、例えば、所定の大きさにカットされた用紙を収容している。ピックアップローラ10は、供給トレイ9内に収容されている記録媒体2と当接して、当接した記録媒体2を1枚ずつ取り出し、搬送部4へと給送する。
【0014】
搬送部4は、レジストローラ対11と、従動ローラ12と、テンションローラ13、14と、駆動ローラ15と、搬送ベルト16と、プラテン17と、吸引ファン18と、を有している。これら各構成部は、不図示の搬送部フレームに保持されている。
【0015】
レジストローラ対11は、搬送部4の媒体搬送方向最上流側に位置しており、ピックアップローラ10により給送された記録媒体2がこれにより搬送される。レジストローラ対11は、記録媒体2の搬送を一時停止させ、その搬送姿勢を矯正すると共に搬送開始のタイミングを調整して、搬送ベルト16へと記録媒体2を搬送する。
【0016】
搬送ベルト16は、帯状の無端ベルトであり、その表面には不図示の多数の孔が設けられている。この搬送ベルト16は、例えば、従動ローラ12、2つのテンションローラ13、14及び駆動ローラ15の4つのローラによって、テンションが掛けられた状態で保持されている。駆動ローラ15には、不図示のモータが接続されており、このモータを駆動させることによって、搬送ベルト16が図1の時計回りに回転(移動)する。
【0017】
搬送ベルト16の下方には、プラテン17及び吸引ファン18が設けられている。プラテン17は、画像記録部5と対向する領域が少なくとも平面となるように加工されており、その表面には不図示の多数の孔が形成されている。吸引ファン18は、搬送ベルト16及びプラテン17の多数の孔から空気を吸引する。これにより、記録媒体2が搬送ベルト16上に吸着され、所定の搬送速度で下流側へと搬送される。
【0018】
画像記録部5は、搬送部4(プラテン17)の上方にこれに対向して設けられている。この画像記録部5は、媒体搬送方向上流側から順に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクをそれぞれ吐出するインクヘッド100(100a、100b、100c、100d)と、インクヘッド100を保持するヘッド保持部材19と、を有している。本実施形態では、記録媒体2の幅に満たない複数のインクヘッド100を、記録媒体2の幅方向に、該記録媒体2における記録領域幅以上となるようにヘッド保持部材19に固定することでラインヘッド21を構成している。具体的には、6個のインクヘッド100を千鳥状にヘッド保持部材19に固定することでラインヘッド21を構成している。なお、画像記録部5の構成として、本実施形態では、シングルパス方式としたが、シリアル方式としてもよい。
このインクヘッド100(ラインヘッド21)は、インク経路20の構成部の1つである。インク経路20の詳細は、後述する。
【0019】
クリーニング部6は、各ラインヘッド21に対応するクリーニングユニット22(22a、22b、22c、22d)を有している。クリーニングユニット22は、インクヘッド100をクリーニングするために設けられており、特に図示しないが、インクヘッド100のノズル面を払拭するブレード部材や、ノズル面をキャッピングするキャップ部材などを有している。各クリーニングユニット22は、不図示の移動機構により、画像記録時には、図1に示すように、対応するインクヘッド100に対して媒体搬送方向下流側の位置(退避位置)に、また、クリーニング時には、対応するインクヘッド100に対向する位置(クリーニング位置)に配置される。
【0020】
排出部7は、排出ローラ対23と、排出トレイ24と、を有している。排出ローラ対23は、画像記録部5により画像記録済みの記録媒体2を挟持し、排出トレイ24へと排出する。排出トレイ24は、排出された記録媒体2を収容する。
【0021】
このように構成されたインクジェットプリンタ1において、画像記録時には、供給部3から1枚ずつ取り出された記録媒体2が搬送部4へと搬送され、画像記録部5によって画像が記録され、画像が記録された記録媒体2が排出部7へと排出される。これら一連の動作が、制御部8によって制御される。
【0022】
次に、インク経路20について、図2を参照して説明する。
なお、以下では、代表的な1色のインクに関わるインク経路20のみを説明するが、インク色ごとに同様のインク経路が備わっている。
【0023】
インク経路20は、記録媒体2にインクを吐出するインクヘッド100(ラインヘッド21)と、インクヘッド100に供給するインクを貯留する第1のインク貯留部としてのインクカートリッジ60と、インクヘッド100から排出されるインクを貯留する第2のインク貯留部としてのインクタンク50と、を有している。インクカートリッジ60とインクヘッド100とは、加温部30を介在して第1のインク経路(第1のチューブ)31によって接続されている。また、インクヘッド100とインクタンク50とは、冷却部40を介在して第2のインク経路(第2のチューブ)32によって接続されている。すなわち、インク経路20は、インクカートリッジ60からインクヘッド100を介してインクタンク50にインクを流せ、さらに、インクタンク50からインクヘッド100を介してインクカートリッジ60にインクを流せる、インク往復動経路である。
【0024】
まず、インクカートリッジ60の構成について説明する。
インクカートリッジ60は、外装61と、可撓性のスパウトパック(袋体)62と、を有しており、密閉された外装61の中に、インクが充填されたスパウトパック62が装入されている。インクカートリッジ60は、第1のインク経路31に対して着脱自在であり、装着時には、第1のインク経路31の一端部に設けられた不図示の中空針がスパウトパック62に貫通されて、スパウトパック62内のインクが第1のインク経路31に流れるように連結される。
【0025】
インクカートリッジ60には、外装61とスパウトパック62との間に連通する通路が設けられており、この通路に空気経路33の一端側が接続されている。空気経路33の他端側には、加減圧手段としてのポンプ34が設けられている。この空気経路33は、さらに、空気経路35の一端側と連通しており、空気経路35には、空気経路33内の圧力を検出する圧力センサ72が設けられている。ポンプ34は、例えばチューブポンプで構成され、制御部8によって、正転により外装61の内部の空気を排気し、逆転して外装61の内部に空気を吸気するように制御される。すなわち、正転時にはスパウトパック環境が減圧され、逆転時には加圧される。このときの圧力が、圧力センサ72で検出される。
【0026】
次に、インクタンク50の構成について説明する。
インクタンク50は、密閉された構成であり、内部には、インク液面を検出するフロート70が揺動自在に設けられている。このフロート70には、図示されないマグネットが保持されている。インクタンク50の外側には、フロート70のマグネットと対向する位置にホール素子を備えた液面センサ71が取り付けられている。第2のインク経路32の一端部は、インクタンク50の底面近くまで延びた不図示のパイプと連結している。
【0027】
インクタンク50の上面には、インクタンク50内の空気と連通する開口が設けられており、この開口に空気経路36の一端側が接続されている。また、空気経路36の他端側には、加減圧手段としてのポンプ37が設けられている。この空気経路36は、さらに、空気経路38の一端側と連通しており、空気経路38には、空気経路36内の圧力を検出する圧力センサ73が設けられている。ポンプ37は、例えばチューブポンプで構成され、制御部8によって、正転によりインクタンク50の内部の空気を排気し、逆転してインクタンク50の内部に空気を吸気するように制御される。すなわち、正転時にはインクタンク50の内部の空気が減圧され、逆転時には加圧される。このときの圧力が、圧力センサ73で検出される。
【0028】
次に、加温部30及び冷却部40について説明する。
加温部30は、第1のインク経路31中の、インクヘッド100の近傍に配置されている。加温部30は、例えば、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い金属で作られたインク経路を有し、そこに発熱体が巻き付けられている。発熱体の外側は、熱伝導性の低い樹脂などでできたカバーで覆われ、外気と断熱されており、熱交換効率(加温効率)を高めている。また、冷却部40は、第2のインク経路32中の、インクタンク50の近傍に配置されている。冷却部40も、例えば、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い金属で作られたインク経路を有し、また、外気との接触面積を増やすために、金属部分の一部にフィン形状部分を有している。さらに、このフィン形状部分に対向してファンが設けられており、フィン形状部分に風を拭きつけて熱交換効率(冷却効率)を高めている。
【0029】
次に、インクヘッド100の内部構造について、図3並びに図4を参照して説明する。
インクヘッド100には、ベース103の一面側に、周囲を取り囲み中央が空洞部である枠102が接着され、この空洞部にあってベース103の前記一面側に圧電素子104が対をなして接着されている。枠102と圧電素子104とは、前記空洞部を塞ぐようにして、Z方向に同じ高さで設けられている。さらに、ノズルプレート101が、枠102と圧電素子104とに対してZ方向に積層され、接着されている。
【0030】
圧電素子104には、X方向に複数の溝が掘られており、これら溝がチャンネル104aを形成している。これらチャンネル104aは、Y方向に平行に掘られている。チャンネル104aは、例えば、ピッチ約170μm、幅85μm、深さ300μm程度である。対をなす2つの圧電素子104は、Y方向に半ピッチずらして配置されている。また、ノズルプレート101のノズル面101aには、各チャンネル104aの中央部のZ方向に、インクを吐出する複数のノズル(ノズル孔)101bが形成されている。これらノズル101bは、チャンネル104aに対応してY方向に配列されている。
【0031】
図4に示すように、ベース103には、対をなす圧電素子104の中央部に、Y方向に複数の孔103aが配列されている。これら孔103aは、例えば、直径1mm程度で、3mm間隔で配置された貫通孔である。同じく、枠102と圧電素子104とのX方向の隙間の位置にも、複数の孔103bが配列されている。
【0032】
ベース103の他面側には、流路部材105、106がZ方向に積層され、接着されている。流路部材105には、Y方向に、ベース103の複数の孔103aと対向している1本の流路105aと、ベース103の複数の孔103bと対向している2本の流路105bと、の3本の平行な流路(溝)が形成されている。そして、これら流路105a、105bに蓋をするようにして、流路部材105の上に流路部材106が接着されている。
【0033】
流路部材106には、ノズル101bに連通するインク導入部として、パイプ状の2本のインクポート107、108が設けられている。インクポート107の孔は、流路105aに、インクポート108の孔は、流路部材106の凸部106aの内部で2本の流路105bをつなぐ接続流路106bに、それぞれつながっている。さらに、インクポート107には、一端側がインクカートリッジ60に接続された第1のインク経路31の他端側が接続されている。また、インクポート108には、一端側がインクタンク50に接続された第2のインク経路32の他端側が接続されている。
【0034】
インクヘッド100の内部のインクの流れについて簡単に説明すると、インクポート107から流入したインクは、流路105aを通ってインクヘッド100の幅全体に行き渡り、複数の孔103aから対をなす圧電素子104の中央部に、幅全体に亘って供給される。供給されたインクは、ここで各圧電素子104の方向に分かれ、各チャンネル104aの中を通って枠102と圧電素子との隙間に到達する。到達したインクは、複数の孔103bから2本の流路105bを通り、接続流路106bで合流して、インクポート108から流出する。また、上記流れとは逆向きに、インクポート108からインクポート107へとインクを流すことも可能である。
【0035】
チャンネル104aの電極配線は、ベース103の電極接続面103cで、ドライブIC110が搭載されたFPC109と接続されており、各チャンネル104aに電圧波形を加えることにより駆動を行う。ベース103は、圧電素子104と比較して十分に熱伝導率の高い金属でできていることが好ましい。
【0036】
インクポート107、108は、固定部材111に設けられた穴111c、111dを貫通しており、この貫通部分で接着されて固定部材111と一体化している。また、固定部材111は、カバー113とビス止めされて一体化している。ドライブIC110は、不図示のばね等の弾性部材でカバー112、113の内面に押圧されて密着している。
【0037】
ベース103の中央部には、インクの温度を検出する温度センサ(サーミスタ)114が設けられている。この温度センサ114の出力は、ベース103が熱伝導性の高い材質であることから、その裏側にあるチャンネル104a中を流れるインクの温度とほぼ同じ値を示す。インクの温度によってインクの粘性が変化するため、適切なインク吐出量を保つためには、圧電素子に印加する電圧を適宜制御する必要がある。そこで、温度センサ114で検出された温度に応じて、制御部により圧電素子の電圧を制御する。
【0038】
圧電素子104は、駆動により発熱する。この発熱の一部は、吐出されるインクと共に外へ放熱される。また、この発熱の一部は、ベース103へ伝熱され、インクヘッド100の外気へ放熱される。残りの発熱の大半は、ベース103や流路部材105、106に蓄熱される。このような蓄熱によるインクヘッド100の温度上昇を防止するために、インクヘッド100は、インクポート107から108へ、あるいはインクポート108から107へインクを流すことにより、吐出されるインク以外のインクが余分な熱を奪って流れるように設計されている。
【0039】
また、圧電素子104を駆動する際には、ドライブIC110が発熱する。この発熱は、カバー112、113に伝熱されるが、これらカバー112、113には外面に多数の放熱突起112a、113aが設けられているため、インクヘッド100周囲の空気との表面積が大きくなり、放熱効果が高められる。
【0040】
次に、インク経路20中のインク往復動について説明する。
本実施形態において、第1のインク経路31は、例えば、内径φ4mm、長さ400mmであり、第2のインク経路32は、例えば、内径φ5mm、長さ300mmである。インクヘッド100のノズル面101aに対するインクカートリッジ60の水頭差をH1、インクタンク50の水頭差をH2とし、例えば、H1を−Z方向に100mm、H2を−Z方向に250mmと設定する。待機状態では、インクカートリッジ60から第1のインク経路31、インクヘッド100、第2のインク経路32を経由してインクタンク50までインクが充填されており、また、インクタンク50内のインク量は、液面センサ71がONとなる液面高さのインク量となっている。このとき、ポンプ34、37は停止しており、また、空気経路33、36は密閉状態となっている。
【0041】
待機状態では、液面センサ71がONとなった直後に、インクカートリッジ60とインクタンク50との水頭差を打ち消す圧力を空気経路33、36内に生成することにより、ノズル101bの内側に窪んだメニスカスを形成し、インクの流れが停止した状態を作り出している。この圧力の生成は、圧力センサ72、73で空気経路33、36内の圧力を監視しながらポンプ34、37を正転又は逆転させることにより果される。所望の圧力が生成された後、ポンプ34、37を停止させる。
【0042】
本実施形態において、空気経路33、36内に生成する圧力は、水頭差H1、H2、インク密度ρ及び重力加速度gの積で計算される。例えば、上述の場合において、ρ=900kg/m3、g=9.8m/s2とすると、水頭差H1、H2の差分(−150mm)より発生する圧力は、ρ×g×(H2−H1)=−1323Paとなる。これを打ち消す圧力を空気経路33、36内に生成して、ノズル101bにメニスカスが形成される負圧を作り出すには、例えば、インクカートリッジ60の内部の気室圧力P1を−100Pa(空気経路33も同様)、インクタンク50の内部の気室圧力P2を1223Pa(空気経路36も同様)に設定する。つまり、空気経路33と空気経路36との圧力の差分が−1323Paとなるように設定する。この値に設定された場合には、ノズル101b内の圧力は−982Paと計算される。
【0043】
続いて、待機状態から、インクタンク50内のインクを第2のインク経路32、インクヘッド100、第1のインク経路31を経由してインクカートリッジ60に流す場合について説明する。
【0044】
まず、ポンプ34を正転させて、インクカートリッジ60の内部の気室圧力P1を減少させる。同時に、ポンプ37を逆転させて、インクタンク50の内部の気室圧力P2を増加させる。インクの表面張力が28dyn/cmの場合、ノズル101bの直径が25μm程度であれば、前記メニスカスは−4500Pa程度までは壊れることなく、ノズル101bから空気を吸い込むことはない。また、一般的に、インクの吐出に最適なノズル圧があり、これを維持することでインクの吐出量が一定となり、吐出不良が発生する確率が最も少なくなる。ここでは、−1000Pa±200Paを最適吐出ノズル圧とする。
【0045】
ここで、圧力P1、P2は、画像記録に適したノズル圧とインクヘッド100の温度上昇防止のための流量との両方を満足させる必要がある。この点について、詳細に説明する。
流路抵抗については、チューブの直径と長さ及びインクの粘度から計算される。半径r、長さL、インク粘度ηの場合、このチューブ内を流れるインクの流路抵抗Rは、R=8Lη/πr4で計算される。また、このチューブ内をインクが流れる流量Qと圧力差ΔPとの関係は、ΔP= RQである。
【0046】
第1のチューブ31の流路抵抗をR1、第2のチューブ32の流路抵抗をR2、並設された6つのインクヘッド100からなるラインヘッド21の流路抵抗をRh、水頭差H1による圧力をh1、水頭差H2による圧力をh2とすると、インクタンク50からインクカートリッジ60までの圧力差ΔPは、ΔP=(P1+h1)−(P2+h2)で計算される。また、インクタンク50からインクカートリッジ60までの流路抵抗Rは、R=R1+R2+Rhで計算される。ラインヘッド21を流れるインク流量Qは、上述の関係式からQ=ΔP/Rで計算される。このときのノズル101bの圧力(ノズル圧)Phは、ノズル101bに対してラインヘッド21を形成している流路抵抗値が対称である場合には、インクカートリッジ60側からの圧力から計算すると、Ph=P1+h1−(R1+Rh/2)×Qにより求めることができる(Ph=P2+h2+(R2+Rh/2)でもよい)。
【0047】
また、インクヘッド100内にインクを流す目的のひとつは、上述したように、圧電素子104で発生した熱量を奪い、インクヘッド100の温度上昇を防止することである。例えば、25℃におけるインクヘッド100の発熱量から、1ヘッド当たり略0.53ml/sのインクを流す必要があるとした場合、6つのインクヘッド100からなるラインヘッド21の温度上昇防止のために必要なインク流量は、略3.21m /s以上となる。h1、h2、R1、R2、Rhは定数であるから、圧力P1、P2の組合せのみで流量Qを決めることができ、例えば、P1=−3780Pa、P2=2560Paに設定すれば、ラインヘッド21を流れるインクのインク流量は略3.21m /sとなり、且つノズル圧Phは−1002Paとなり、画像記録に最適なノズル圧範囲近傍となる。このように、圧力P1、P2は、画像記録に適したノズル圧とインクヘッド100の温度上昇防止のための流量との両方を満足するように設定する。
【0048】
次に、インクカートリッジ60のインクを第1のインク経路31、インクヘッド100、第2のインク経路32を経由してインクタンク50に流す場合について説明する。
この場合は、ポンプ34を逆転させて、インクカートリッジ60の内部の気室圧力P1を増加させる。同時に、ポンプ37を正転させて、インクタンク50の内部の気室圧力P2を減少させる。ここで、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す場合でも、前述したインクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流す場合と同様に、圧力P1、P2は、画像記録に適したノズル圧とインクヘッド100の温度上昇防止のための流量との両方を満足させる必要がある。しかし、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す場合でも、前述したようにh1、h2、R1、R2、Rhは定数であるから、圧力P1、P2の組合せのみで流量Qを決めることができる。例えば、P1=3540Pa、P2=−1910Paに設定すれば、25℃でのインク流量Qを3.21ml/s、ノズル圧Phを−997Paとすることができ、所望の流量とノズル圧とを得ることができる。
【0049】
なお、インクの粘度ηは、温度によって変動する。つまり、インクは、温度が低いと粘度ηが大きく、温度が低いと粘度ηが小さくなる。しかし、インクヘッド100内の温度センサ114の検出温度に基づいて、予めインクの温度に対応して算出された圧力P1、P2となるように圧力センサ72、73で圧力を検出しながら制御部8によりポンプ34、37を制御することで、所望の一定流量Qと最適吐出ノズル圧Phとを設定することが可能である。
【0050】
以上のように、圧力P1、P2の設定を周期的に変更することで、インク経路20中のインクの流れを周期的に切り替え、ラインヘッド21を経由しながらインクを往復動させる。なお、圧力P1、P2は、インクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流した場合でも、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流した場合でも、所望の範囲内の流量及び所望の範囲内のノズル圧がかかるように設定されている。
【0051】
次に、インク往復動時の圧力及び流量の時間変化について、図5を参照して説明する。
図5は、インク往復動時の圧力P1、P2、ノズル圧Ph及びインク流量Qの推移を示している。
インクジェットプリンタ1の電源がOFFの状態、又は画像記録を行わない待機状態では、ポンプ34、37は停止しており、ノズル圧Phは、波形部80に示すように略−982Paとなっている。この状態では、流量Qは0である。
【0052】
インクジェットプリンタ1に画像記録指示がなされると、制御部8からの動作信号により、ポンプ34が正転、ポンプ37が逆転の動作を開始する。ポンプ34は、インクカートリッジ60内の外装61とスパウトパック62と間の気室から空気を外部に吐き出し、インクカートリッジ60内の圧力P1が−3780Paになるまで減圧する。圧力P1が−3780Paに向かって下降していく状態が波形部78であり、ポンプ34の回転数の高い動作により圧力P1を急激に下降させている。また、ポンプ37は、外気から空気を取り込み、インクタンク50内の圧力P2が2560Paになるまで加圧する。圧力P2が2560Paに向かって上昇していく状態が波形部79であり、ポンプ37の回転数の高い動作により圧力P2を急激に上昇させている。この一連の動作により、インクタンク50内からインクヘッド100(ラインヘッド21)を経由してインクカートリッジ60に向かってインクが流れる。
【0053】
ポンプ34、37は、起動時やインク往復動切り替え時など、圧力を大きく変化させる場合には、回転数の高い動作を行う。また、ポンプ34、37は、所望の圧力に達した後の圧力の変化が小さい場合には、回転数の低い動作を行う。この回転数の低い動作により、圧力P2が、波形部88の状態である2560Paに維持され、また、圧力P1が、波形部89の状態である−3780Paに維持される。
なお、本実施形態では、ポンプの回転速度を変えることにより気室に対して送り込んだり吐き出したりする空気の量を変えて、圧力の変化量を早めたり遅くしたりしているが、これによらず、必要とする圧力の変化量に応じて単位時間内当たりの空気の移動量が大きい動作と小さい動作とを任意に設定できればよい。
【0054】
次に、設定された所定の時間(図5では7秒間)が経過すると、ポンプ34、37の動作を逆転させる。ポンプ34は、インクカートリッジ60内の外装61とスパウトパック62との間の気室に外気から空気を取り込み、圧力P1が3540Paになるまで加圧する。上述のようなポンプ34の回転数の高い動作により圧力P1が3540Paに向かって急激に上昇していく状態が波形部91である。また、ポンプ37は、インクタンク50内の空気を外部に吐き出し、圧力P2が−1910Paになるまで減圧する。上述のようなポンプ37の回転数の高い動作により圧力P2が−1910Paに向かって急激に下降していく状態が波形部90である。この一連の動作により、インクカートリッジ60内からインクヘッド100(ラインヘッド21)を経由してインクタンク50内に向かってインクが流れる。
【0055】
ポンプ34、37の上述のような回転数の低い動作により、圧力P1が波形部86の状態である3540Paに維持され、また、圧力P2が波形部87の状態である−1910Paに維持される。
【0056】
以上のようにして、インクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流す動作と、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す動作とを、ポンプ34、37の設定された動作間隔で切り替えて繰り返すことにより、インクヘッド100にインクを継続的に供給しながら、画像記録に適したノズル圧Ph(波形部85)を得る。
【0057】
ここで、以上の一連の動作において、インクの流れを切り替えるタイミングでは、インクの流れがゼロとなる箇所が存在する。波形部92は、その状態を示している。
【0058】
つまり、ポンプ34、37の動作を開始した直後や、ポンプ34、37の正転/逆転を切り替えた直後では、所望の圧力(例えば、上述のP1:−3780PaやP2:2560Pa、P1:3540PaやP2:−1910Pa)に短時間で到達し、インクヘッド100の熱を奪うのに必要なインク流量Qを確保するために、ポンプ34、37の回転数を上げることで、圧力P1、P2を急激に変化させている。そのため、圧力P1、P2の波形は、波形部81、82のように、オーバーシュートやアンダーシュートが発生した不安定な状態となっており、また、ノズル圧Phも、波形部83、84のように乱れている。また、インクヘッド100を流れる流量Qも、その影響を受けて波形部93に示すように変動する。これは、2つのポンプ34、37の空気を送る能力や吸い込む能力の違いや、インクタンク50とインクカートリッジ60との気室の大きさの違いや、インクやポンプの静的/動的な慣性力により、圧力が変化するタイミングや変化量にばらつきが生じるためである。
【0059】
上記のノズル圧Phの乱れは、メニスカスを壊す程ではないため、ノズル101bからインクヘッド100内に空気を吸い込んだり、インクが漏れたりすることはない。しかし、このときのノズル圧Phは、画像記録には適さない圧力、つまり最適吐出ノズル圧の範囲である−1000Pa±200Paから逸脱した圧力となっている。
【0060】
このため、本実施形態では、ノズル圧Phが乱れている時間(波形部83、84)には画像記録を行わないように、記録媒体の搬送タイミングを制御する。この制御について、図6並びに図7を参照して説明する。
【0061】
図6は、本実施形態における画像記録時のインクジェットプリンタ1の動作を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態において変動する圧力P1、P2、ノズル圧Phの推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミング(トリガ)とを示すタイムチャートである。図7の上側のタイムチャートは、縦軸が圧力(Pa)、横軸が経過時間(s)を示しており、下側のタイムチャートは、縦軸が駆動信号(ON/OFF)、横軸が経過時間(s)を示している。両タイムチャートの横軸(経過時間(s))は、同じタイミングを示している。
【0062】
図7において、圧力P1、P2、ノズル圧Phの波形は、図5から抜粋しており、図5と同様の参照符号を付している。媒体供給動作を示す駆動信号は、凸部(駆動信号)131の立ち上がりで記録媒体2が1枚供給されることを示している。また、画像記録動作を示す駆動信号は、凸部(駆動信号)132の間、インクヘッド100からインクが吐出されて画像が記録されることを示している。また、画像記録動作の駆動信号132内に付されているp1〜p9は、何枚目の記録媒体が画像記録されているかを示しており、媒体供給動作の駆動信号131上の(p1)〜(p9)も同様である。
【0063】
まず、ユーザが、不図示の入力部により、インクジェットプリンタ1に画像記録指示を入力する(ステップS1)。本実施形態では、一例として、長辺がY方向に位置されたA4サイズの記録媒体9枚に画像記録を行う指示を入力する。
【0064】
続いて、制御部8により、記録媒体の搬送方向の長さ(本実施形態では、A4サイズの記録媒体の短辺の長さ)に応じた媒体供給タイミングが設定される(ステップS2)。この媒体供給タイミングの設定では、インクの流れを切り替える動作が行われるタイミングまでに何枚の画像記録が可能であるかを判断し、これに基づいて供給可能な枚数Nを設定する(ステップS2)。例えば、本実施形態では、図7の下側の記録動作のタイムチャートに示すように、p1〜p4の画像記録、つまりN=4が設定される。また、インクの流れが切り替わるタイミングに画像記録動作を行わないように、記録媒体を供給するタイミングを遅らせる待ち時間Twを設定する(ステップS2)。この設定については、後述する。
【0065】
次に、制御部8により、1枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p1)が出されて、搬送部3への媒体供給動作が開始される(ステップS3)。図7に示すように、この媒体供給動作が開始されてから時間Ta後に、ラインヘッド21にインクを流す動作が開始される。上述したように、待機状態(インクが流れていない状態)からポンプ34を正転、ポンプ37を逆転することにより、インクタンク50からラインヘッド21を経由してインクカートリッジ60へとインクが送液される(ステップS4)。
【0066】
送液動作が開始された初期段階では、ポンプ34の回転数の高い正転動作、ポンプ37の回転数の高い逆転動作が行われているため、圧力P1、P2の変動が大きく適正なノズル圧Phが得られていない。ノズル圧Phが安定するまでの時間がT1である。時間T1は、インク経路20の構成により変わるため、構成に応じて設定される。
このように、ノズル圧Phが不安定な時間T1中に画像記録動作が行われないように、1枚目の媒体供給信号131(p1)が出されてからTa時間経過後に、インクを送液する動作が開始される。
【0067】
圧力センサ72、73により検知される圧力P1、P2が画像記録に最適なノズル圧Ph=1000Pa±200Paが得られる設定圧付近(例えば、P1=−3780Pa、P2=2560Pa)に達したと判定されると、ポンプ34は回転数の低い正転動作に、ポンプ37は回転数の低い逆転動作に移行される。圧力P1、P2が設定付近となり、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間がT2である。
【0068】
1枚目の媒体供給動作を開始してから時間Tn後には、記録媒体は、インクヘッド100のノズル面101aに対向する画像記録開始位置に到達し、1枚目の画像記録の駆動信号132(p1)が出される(ステップS5)。1枚目の画像記録動作は、1枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Tn(Ta+T1と同様の時間)経過後に行われる。
【0069】
1枚目の媒体供給信号131(p1)が出されてから時間Tr経過後、2枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p2)が出され、2枚目の記録媒体が搬送部3へ送られる。媒体供給の駆動信号131は、ステップS2で設定されたN枚分(本実施形態では、N=4、図7のp1〜p4)まで、所定の時間Trの間隔で出力され、各駆動信号131の開始から時間Tn経過後に画像記録の駆動信号132が出される。1枚目の画像記録信号132(p1)と2枚目の画像記録信号132(p2)との間の(信号133)は、ペーパーギャップ、すなわち画像記録済みの記録媒体とこれから画像記録がなされる記録媒体との間で、画像記録部4による画像記録が行われていない状態を示している。
【0070】
媒体供給動作や画像記録動作が行われている間には、随時、ステップS1で指示された枚数(本実施形態では9枚)の画像記録が完了したか否かの確認を行う(ステップS6)。完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS7へ進む。
【0071】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、ステップS2で設定された供給可能な枚数N(本実施形態では4枚)に達しているか否かの確認を行う(ステップS7)。達していなければ、ステップS5に戻り、画像記録動作を続行する。達していれば、ステップS8に進み、媒体供給動作を停止し、ステップS2で設定した待ち時間Twだけ、媒体供給動作を待つ。本実施形態では、このように、媒体供給動作を待つことで、インクの流れを切り替える時間T1中に画像記録動作が行われないように、制御部8により制御している。
【0072】
図7において、媒体供給動作の駆動信号中に破線で示される凸状の信号が、このような制御なく5枚目の記録媒体の供給がなされる場合の5枚目の媒体供給信号である。この媒体供給タイミングの後、5枚目の画像記録をした場合、5枚目の画像記録動作はインクの流れを切り替える時間となるT1中になされることになり、記録不良を引き起こす虞がある。そこで、本実施形態では、5枚目の媒体供給動作を待ち時間Twだけ遅らせることで、画像記録動作がなされるタイミングを時間T1から外したタイミング(p5:駆動信号131)とする。
【0073】
4枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p4)が出されてからTr+Tw時間後、5枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p5)が出されて、5枚目の媒体供給動作が開始される(ステップS9)。そして、5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Ta経過後に、インクの流れを反転させるように、ポンプ34を逆転、ポンプ37を正転させて、インクカートリッジ60からラインヘッド21を経由しインクタンク50へインクを送液させる(ステップS10)。
【0074】
送液動作を反転する段階でも、ポンプ34の回転数の高い逆転動作、ポンプ37の回転数の高い正転動作が行われているため、圧力P1、P2の変動が大きく適正なノズル圧Phが得られていない。ノズル圧Phが安定するまでの時間がT1である。また、圧力センサ72、73により検知される圧力P1、P2が画像記録に最適なノズル圧Phが得られる設定圧付近(例えば、P1=3540Pa、P2=−1910Pa)に達したと判定されると、ポンプ34は回転数の低い逆転動作に、ポンプ37は回転数の低い正転動作に移行される。圧力P1、P2が設定付近となり、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間がT2である。
【0075】
5枚目の媒体供給動作を開始してから時間Tn後には、記録媒体は、インクヘッド100のノズル面101aに対向する画像記録開始位置に到達し、5枚目の画像記録の駆動信号132(p5)が出される(ステップS11)。5枚目の画像記録動作は、5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Tn(Ta+T1と同様の時間)経過後に行われる。言い換えると、ノズル圧Phが画像記録に適さない不安定な時間T1中に画像記録動作が行われないように、インク送液動作が開始される時間(又は、インク送液動作を切り替える時間)に対して、記録媒体の搬送を待機させるように、媒体供給を開始するタイミングが設定される。
【0076】
5枚目の媒体供給信号131(p5)が出されてから時間Tr経過後、6枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p6)が出され、6枚目の記録媒体が搬送部3へ送られる。媒体供給の駆動信号131は、ステップS2で設定されたN枚分(本実施形態では、N=4、図7のp5〜p8)まで、所定の時間Trの間隔で出力され、各駆動信号131の開始から時間Tn経過後に画像記録の駆動信号132(p6)がなされる。5枚目の画像記録信号132(p5)と6枚目の画像記録信号132(p6)との間の(信号133)は、先の説明と同様に、ペーパーギャップで画像記録が行われていない状態を示している。
【0077】
媒体供給動作や画像記録動作が行われている間には、随時、ステップS1で指示された枚数の画像記録が完了したか否かの確認を行う(ステップS12)。完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS13へ進む。
【0078】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、ステップS2で設定された供給可能な枚数Nに達しているか否かの確認を行う(ステップS13)。達していなければ、ステップS11に戻り、画像記録動作を続行する。達していれば、ステップS14に進み、媒体供給動作を停止し、ステップS8と同様に、設定した待ち時間Twだけ、媒体供給動作を待つ。つまり、9枚目の媒体供給動作を待ち時間Twだけ遅らせることで、画像記録動作がなされるタイミングを時間T1から外したタイミング(p9:駆動信号131)とする。
【0079】
8枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p8)が出されてからTr+Tw時間後、9枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p9)が出されて、9枚目の媒体供給動作が開始される(ステップS15)。そして、9枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Ta後に、インクの流れを反転させるように、ポンプ34を正転、ポンプ37を逆転させて、インクタンク50からラインヘッド21を経由しインクカートリッジ60へインクを送液させる(ステップS16)。
【0080】
そして、9枚目の媒体供給信号からTn時間経過後、9枚目の画像記録が行われ、全ての画像記録が終了する。
全ての画像記録が完了すると、媒体供給動作を停止し(ステップS17)、インク経路20が待機状態になるよう、上述したように、インクタンク50の液面センサ71がONとなった直後に、インクカートリッジ60とインクタンク50との水頭差を打ち消す圧力を空気経路33、36に生成して、ポンプ34、37を停止させる(ステップS18)。
【0081】
次に、供給可能な枚数N、待ち時間Twの設定について、図7を参照して説明する。
以下の説明では、インクジェットプリンタ1における媒体供給開始位置から画像記録位置までの距離をLh[mm]、記録媒体の搬送速度をV[mm/s]、1枚の記録媒体の搬送方向の長さをL1[mm]、ペーパーギャップをL2[mm]とする。
【0082】
供給可能な枚数Nは、ノズル圧Phが安定している時間T2中に画像記録を行うことができる回数から求めることができる。1枚の記録媒体の画像記録にかかる時間は、Ll/V、ペーパーギャップ133の時間は、L2/Vであるから、T2/(L1/V+L2/V)で算出された商をA、余りをTeとすれば、
T2/{(Ll+L2)/V}−T2/Tr=A・・・Te
である。Teは余った時間を示している。この時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができれば、A+1が供給可能な枚数Nとなり、時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができなければ、Aが供給可能な枚数Nとなる。つまり、
Te≧L1/Vであれば、NはA+1枚
Te<L1/Vであれば、NはA枚
である。また、媒体供給動作を遅延させる待ち時間Twは、前記求められた供給可能な枚数Nを用いて、Tw=Tp−Tr×Nとなる。
【0083】
媒体供給を行うタイミングは、インクの流れを切り替える動作が開始されるよりも時間Taだけ早ければよく、媒体供給動作を開始してから画像記録動作が開始されるまでの時間Tn=Lh/Vより、Ta=Tn−T1=Lh/V−T1となる。
また、インクの流れを切り替える間隔Tpは、Tp=T1+T2と表され、N枚の画像記録が行われる際の媒体供給間隔Trは、Tr=(L1+L2)/Vとなる。
【0084】
例えば、一方向にインクを送液可能な時間を7秒とすれば、Tp=T1+T2=7秒となり、インク経路20の構成からT1の時間を設定すれば、T2の値も決まり、設計からの固定値となる、L1、L2、Lh、Vを用いることにより、N、Tw、Tr、Tn、Tp、Taを求めることができる。
なお、前記設定は一例であり、この設定に限らず、インクの流れを切り替えるタイミングに画像記録を行わないよう、媒体供給を行うタイミングを設定すればよい。つまり、供給された記録媒体のページギャップ間で、インクの流れの切り替え動作が完了するように、記録媒体の供給(搬送)タイミングを制御すればよい。
【0085】
図8は、A3サイズの記録媒体9枚に画像記録指示が実行された場合の圧力の推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミングとを示すタイムチャートである。
図8において、図7の場合と異なる点は、一方向の送液動作で2枚の画像記録が行われ、待ち時間Tw’が設定される点である。このように、記録媒体の大きさに応じて、一方向の送液動作で画像記録可能な枚数N及び待ち時間Tw(Tw’)が設定される。
【0086】
本実施形態によれば、インクを往復動させながらインクヘッドにインクを供給し、インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、記録媒体を搬送(供給)するタイミングとが異なるように、つまり、インクの流れを切り替えるタイミングに基づいて記録媒体の搬送動作を開始するタイミングを制御しているため、切り替え時には、画像記録が行われない。換言すれば、先行して搬送される記録媒体と後続して搬送される記録媒体とのページギャップ間でインクの流れる向きが切り替えられるように、記録媒体を搬送(供給)するタイミングが制御されている。これにより、ラインヘッド21(インクヘッド100)は、画像記録に適したノズル圧Phが掛った状態でインクを吐出させることができ、高画質な画像を記録することができる。
【0087】
以下、第2乃至第8の実施形態について説明する。
以下では、インクジェットプリンタ1の基本構成は、特に述べない限り、図1乃至図4に示される第1の実施形態と同様であり、ノズル圧Phを画像記録に適した圧力に設定する方法も同様である。従って、これらの構成及び設定について、同一の部分には同一の参照番号を付してその図示及び説明は省略し、主に、異なる部分の構成及び動作について説明する。
【0088】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図9並びに図10を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態における画像記録時のインクジェットプリンタ1の動作を示すフローチャートであり、図10は、これに対応するタイムチャートである。なお、図10は、A4サイズの記録媒体9枚に画像記録指示が実行された場合のタイムチャートである。
【0089】
まず、第1の実施形態と同様に、ユーザが、不図示の入力部により、インクジェットプリンタ1に画像記録指示を入力する(ステップS1)。続いて、制御部8により、記録媒体の搬送方向の長さ(本実施形態では、A4サイズの記録媒体の短辺の長さ)に応じたインクの流れを切り替える時間Tcが設定される(ステップS19)。このインクの流れを切り替える時間Tcは、画像記録動作中にインクの流れを切り替える動作を行わないようにして設定される。この設定については、後述する。
【0090】
次に、第1の実施形態と同様に、1枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(pl)が出されることにより、搬送部3への媒体供給動作が開始されて(ステップS3)、媒体供給動作が開始されてから時間Ta後に、ラインヘッド21にインクを流す動作が開始される。以下、ステップS4におけるポンプ34、37の駆動、ステップS5における1枚目の画像記録動作、ステップS6における画像記録が完了したかの確認も、第1の実施形態と同様である。ステップS6において、指示された枚数の画像記録が完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS20へ進む。
【0091】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、1枚目の媒体供給が開始されてからステップS19で設定された時間Tcが経過したかの確認を行う(ステップS20)。経過していなければ、ステップS5に戻り、画像記録動作を続行する。経過していれば、ステップS10に進む。時間Tcの間隔に合わせてインクの切り替え動作を行うことにより、インクヘッドの下方をペーパーギャップが通過する間、すなわち画像記録を行わない時間と、ノズル圧Phが画像記録に適さない時間(ノズル圧Phが安定するまでの時間)T1とのタイミングを合わせている。
【0092】
例えば、図10に示すように、5枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p5)が出されてから時間Ta後のタイミングで、インクの流れを反転させる動作が行われる。このタイミングは、インク送液動作が開始されてから時間Tcが経過した時間でもある。すなわち、1枚目の画像記録動作が開始されてから4枚目の画像記録動作が完了するまでは、インクタンク50からインクカートリッジ60へインクを流す動作が行われ、4枚目の画像記録動作と5枚目の画像記録動作とのペーパーギャップ133の間に、インクの流れを切り替える動作を行い、5枚目の画像記録動作からは、インクカートリッジ60からインクタンク50へインクを流す動作を行う。5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Ta経過後に、インクの流れを反転させるように、ポンプ34を逆転、ポンプ37を正転させて、インクカートリッジ60からラインヘッド21を経由しインクタンク50へインクを送液させる(ステップS10)。
【0093】
送液動作を反転する段階では、上述したように、P1、P2の変動が大きく適正なノズル圧Phが得られていない状態であり、ノズル圧Phが安定するまでの時間がT1である。また、圧力センサ72、73により検知されるPl、P2の圧力が、画像記録に最適なノズル圧が得られる設定圧付近(P1=3540Pa、 P2=−1910Pa)にまで達したと判定されると、ポンプ34は回転数の低い逆転動作に移行し、ポンプ37は回転数の低い正転動作に移行される。圧力P1、P2が設定付近となり、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間がT12である。
【0094】
5枚目の媒体供給動作を開始してから時間Tn後には、記録媒体は、インクヘッド100のノズル面101aに対向する画像記録開始位置に到達し、5枚目の駆動信号132(p5)が出される(ステップS11)。5枚目の画像記録動作は、5枚目の媒体供給動作が開始されてから時間Tn(Ta+T1と同様の時間)経過後行われる。言い換えると、ノズル圧Phが画像記録に適さない不安定な時間T1中に画像記録動作が行われないように、媒体供給を開始するタイミングに対して、インク吐出を待機させるように、インク送液動作が開始される時間(又は、インク送液動作を切り替える時間)が設定される。
【0095】
5枚目の媒体供給信号131(p5)が出されてから時間Tr経過後、6枚目の記録媒体を供給する駆動信号131(p6)が出され、6枚目の記録媒体が搬送部3へ送られる。
【0096】
媒体供給動作や画像記録動作が行われている間には、第1の実施形態と同様に、随時、ステップS1で指示された枚数の画像記録が完了したかの確認を行う(ステップS12)。完了していれば、YESの記号Bに進み、終了動作へ移行する。完了していなければ、NOであるステップS21へ進む。
【0097】
指示された枚数の画像記録が完了していない場合には、5枚目の媒体供給動作が開始されてからステップS19で設定されたインクを切り替える時間Tcが経過したかの確認を行う(ステップS21)。経過していなければ、ステップS11に戻り、画像記録動作を続行する。経過していれば、ステップS16に進む。このように、時間Tcの間隔に合わせてインクの切り替え動作を行うことにより、ペーパーギャップがインクヘッドを通過する間、すなわち画像記録を行わない時間と、ノズル圧Phが画像記録に適さない時間T1(=ノズル圧Phが安定するまでの時間)とのタイミングを合わせている。
【0098】
9枚目の媒体供給信号131が出されてから時間Ta後に、インクの流れを反転させる動作が行われる。ポンプ34を正転、ポンプ37を逆転させることにより、インクタンク50からラインヘッド21を経由しインクカートリッジ60へインクを送液させる(ステップS16)。
【0099】
そして、9枚目の媒体供給信号からTn時間経過後、9枚目の画像記録が行われ、全ての画像記録が終了する。
全ての画像記録が完了すると、第1の実施形態と同様に、媒体供給動作を停止し(ステップS17)、ポンプ34、37を停止させる(ステップS18)。
【0100】
次に、インクの流れを切り替える時間Tcの設定について、図10を参照して説明する。
インクの流れを切り替える時間Tcは、インクを一方向に送液可能な最大時間をTmaxとすると、条件Tc≦Tmaxを満たす必要がある。この条件を逸脱すると、インクタンク50内のインクが空となり、インクヘッド100に空気を送ってしまい、吐出不良を発生させる虞があるからである。よって、時間Tmaxの間に何枚の画像記録が可能かを求めて、その枚数の画像記録が完了した後に、インクの流れを切り替える動作を行うようTcの時間が設定される。
【0101】
時間Tmax中に画像記録可能な枚数Nは、(Tmax−T1)/Trで算出された商をA、余りをTeとすれば、
(Tmax−T1)/Tr=A・・・Te
である。Teは余った時間を示している。この時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができれば、A+1が供給可能な枚数Nとなり、時間Te内に1枚の記録媒体に画像記録を行うことができなければ、Aが供給可能な枚数Nとなる。つまり、
Te≧L1/Vであれば、NはA+1枚
Te<L1/Vであれば、NはA枚
である。また、インクの流れを切り替える時間Tcは、前記求められた媒体供給可能な枚数Nを用い、Tc=Tr×Nとなる。
【0102】
インクの流れを開始するタイミングは、媒体供給動作が開始された時間Ta経過後のタイミングで行えばよく、媒体供給動作を開始してから画像記録動作が開始されるまでの時間Tn=Lh/Vより、Ta=Tn−T1=Lh/V−T1となる。
また、画像記録が行われる際の媒体供給間隔(Tr)は、Tr=(L1+L2)/Vとなる。
【0103】
なお、前記設定は一例であり、この設定に限らず、媒体供給を行うタイミングに画像記録を行わないよう、インクの流れを切り替えるタイミングを設定すればよい。つまり、供給された記録媒体のページギャップ間で、インクの流れの切り替える動作が完了するように、インクの流れを切り替えるタイミングを制御すればよい。
【0104】
図11は、A3サイズの記録媒体9枚に画像記録指示が実行された場合の圧力の推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミングとを示すタイムチャートである。
図11において、図10の場合と異なる点は、一方向の送液動作で2枚の画像記録動作が行われ、インクの流れを切り替える時間Tc’が設定される点である。このように、記録媒体の大きさに応じて、インクの流れを切り替える時間Tc(Tc’)が設定される。
【0105】
本実施形態によれば、インクを往復動させながらインクヘッドにインクを供給し、インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、記録媒体を搬送(供給)するタイミングとが異なるように、つまり、記録媒体を搬送(供給)するタイミングに基づいてインクの流れを切り替えるタイミングを制御しているため、切り替え時には、画像記録が行われない。換言すれば、先行して搬送される記録媒体と後続して搬送される記録媒体とのページギャップ間でインクの流れる向きが切り替えられるように、切り替えタイミングが制御されている。これにより、ラインヘッド21(インクヘッド100)は、画像記録に適したノズル圧Phが掛った状態でインクを吐出させることができ、高画質な画像を記録することができる。また、本実施形態では、記録媒体を供給するタイミングや条件(画像記録枚数や記録媒体のサイズ)に合わせて、インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングを制御しているため、効率よく画像記録を行うことができ、単位時間当たりの画像記録枚数を向上することができる。
【0106】
(変形例)
図12は、第2の実施形態の変形例における画像記録時のインクジェットプリンタ1の動作を示すフローチャートである。
本変形例において、図9に示す第2の実施形態のフローチャートと異なる点は、ステップS22〜S25が追加されている点である。
【0107】
本変形例では、ステップS20の後、供給される記録媒体のサイズに変更がないかの確認を行う(ステップS22)。変更があれば、YESに進み、ステップS19で設定されたインクの流れを切り替える時間Tcの設定を時間Tc’に変更し(ステップS23)、ステップS10に進む。変更がなければ、NOに進み、そのままステップS10に進む。
【0108】
このようなステップを追加することで、サイズの異なる記録媒体への画像記録指示が行われた場合でも、一方向のインクの流れごとにインクの流れを切り替える時間Tcの設定を変更可能となり、インクの流れが切り替わるタイミングに画像記録動作を行わない動作が可能である。
【0109】
本変形例では、サイズの異なる記録媒体が混在した場合にも対応し、インクの流れを替える動作ごとにTcの設定値が見直される。この設定値の見直しについて説明する。
まず、1枚目の媒体供給信号131が出されてから時間Ta経過後にインクタンク50からインクカートリッジ60へインクを流す動作が行われて、画像記録が開始される。
【0110】
次に、一方向にインクを送液可能な最大時間Tmaxの間に何枚目までの画像記録が可能かを求めて、インクの切り替える時間Tcを求める。
ここで、記録媒体p1〜pN(Nは自然数)の搬送方向の長さをL1’〜LN’とすれば、
Tmax≧T1 +Ll’/V
+L2/V+L2’/V
+・・・
+L2/V+LN’/V=Tc
の関係が成り立つ枚数までを、一方向の流れで媒体供給可能な枚数とし、その時間をTcとする。
【0111】
このとき、Tmax−Tc=Tdefとすると、Tdefは、インクをまだ送液可能だが画像記録動作とのタイミングの関係でインクの流れを反転させたために発生する送液残り時間である。このTdefは、インクの流れを反転させた後のインク送液可能な最大時間Tmax’に影響を及ぼすため、この時間を考慮して、インクの流れを反転させた後の画像記録枚数、次のインクの流れを切り替える時間Tc’を求める。
【0112】
例えば、先の一方向の流れでp1〜p4の記録媒体の画像記録が行われているとすれば、p5からの画像記録がインクの送液方向が反転された後に行われる。ここで、
Tmax’≧T1 +L5’/V
+L2/V+L6’/V
+・・・
+L2/V+LN’/V=Tc’
の関係が成り立つ枚数までを、一方向の流れで媒体供給可能な枚数とし、その時間をTc’とする。
【0113】
このとき、Tmax’=Tmax−Tdef=Tcであるから、Tc≧Tc’となる。また、Tmax’−Tc’=Tdef’とすると、Tdef’は、インクをまだ送液可能だが画像記録動作とのタイミングの関係でインクの流れを反転させたために発生する送液残り時間である。
【0114】
同様の考え方により、Tmax’=Tmax−Tdef’として、画像記録可能な枚数、Tc’’を求め、インクの流れを切り替える時間が設定される。
なお、前記設定は一例であり、この設定に限らず、インクの流れを切り替えるタイミングに画像記録を行わないよう、インクの流れを切り替えるタイミングを設定すればよい。つまり、供給された記録媒体のページギャップ間で、インクの流れの切り替える動作が完了するように、インクの流れを切り替えるタイミングを制御すればよい。
【0115】
図13は、サイズの異なる記録媒体が混在した場合のタイムチャートであり、A4横サイズ3枚、A3縦サイズ4枚、A4横サイズ1枚、B4縦サイズ4枚の画像記録を連続的に行っている。
【0116】
図13において、インクを送液可能な時間を、Tmax、Tmax’、Tmax ’’、インクの切り替わるタイミングをTc、Tc’、Tc’’、画像記録に適したノズル圧Phが安定して得られている時間を時系列順にT13、T14、T15、T16とすれば、
Tmax≧T1+T13=Tc
Tmax’≧T1+T14=Tc’
Tmax’’≧T1+T15=Tc’’
となり、T13の時間内には、A4サイズ3枚(駆動信号146)とA3サイズ1枚(駆動信号147)の画像記録動作、T14の時間内には、A3サイズ3枚(駆動信号147)の画像記録動作、T15の時間内には、A4サイズ1枚(駆動信号146)とB4サイズ3枚(駆動信号148)の画像記録動作が行われる。T16の時間内に残りのB4サイズ1枚(駆動信号148)の画像記録が行われることで画像記録は完了し、その後、インク経路20が待機状態に移行するための動作が行われる。
【0117】
本変形例では、異なるサイズの記録媒体が混在している場合にも、効率よく高品質な画像記録を行うことができる。
【0118】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、図14を参照して説明する。
図14は、第3の実施形態における圧力P1、P2、ノズル圧Phの推移と、媒体供給動作及び媒体供給動作に対応した画像記録動作のタイミング(トリガ)を示すタイムチャートである。
【0119】
本実施形態では、サイズの異なる記録媒体に連続して画像記録が行われた場合に、1枚の画像記録が完了するごとにインクの流れを切り替えている。例えば、図14に示すように、A4横サイズ1枚、A3縦サイズ2枚、B4縦サイズ1枚、A4横サイズ1枚、A3縦サイズ1枚の順に画像記録指示が出されたとき、A4横の画像記録(駆動信号152)、インクの流れの切り替え、A3縦画像記録1枚目(駆動信号153)、インクの流れ切り替え、A3縦画像記録2枚目(駆動信号153)、インクの流れの切り替え、…、A3縦画像記録1枚目(駆動信号153)のように、1枚の画像記録を終えるごとにインクの流れを切り替える動作を行う。
【0120】
例えば、1枚目の画像記録動作でサイズの小さい記録媒体に画像記録した後に、サイズの大きい記録媒体に画像記録させようとすると、1枚目の画像記録動作ではインクを送液する時間が短いため、2枚目の画像記録のときにはインクを送液する十分なインク量が確保できない虞がある。そこで、本実施形態では、1枚目の媒体供給駆動信号149を開始するTs時間前からインクを送液する動作を開始し、1枚目の媒体供給駆動信号149から画像記録が行われるまでの時間Tnと合わせて、一方向に送液可能な最大時間Tmaxの略半分の時間送液動作を行った後から画像記録を開始するように、Tmax/2≒Ts+Tnの関係が成り立つよう設定されている。
【0121】
この時間を設定することにより、インクを往復する流れが、Tmaxの略半分の時間を中心に動作され、サイズの異なる記録媒体に画像記録が行われても、インクが不足することなく、1枚の画像記録が完了するごとにインクの流れを切り替えることが可能となる。
【0122】
また、さらに、A4、A3、A4、A3、…のように、サイズの小さい記録媒体と大きい記録媒体とが交互に継続して画像記録される場合、インクが往復動する位置が少しずつ偏り、Tmaxの範囲を逸脱してしまう虞がある。このような場合も考慮し、Tmax/2の時間からのずれが任意に設定された閾値から逸脱した場合には、一方向の送液方向を延ばし、それに合わせて記録媒体を供給するタイミングを遅らせる制御が行われる。
【0123】
本実施形態では、記録媒体の搬送動作が行われ、1枚の画像記録が完了するたびにインクヘッド内を流れるインクの向きを切り替えているため、切り替え時には、画像記録が行われない。換言すれば、先行して搬送される記録媒体と後続して搬送される記録媒体とのページギャップ間でインクの流れる向きが切り替えられるように、切り替えタイミングが制御されている。これにより、ラインヘッド21(インクヘッド100)は、画像記録に適したノズル圧Phが掛った状態でインクを吐出させることができ、高画質な画像を記録することができる。
【0124】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、従動ローラ12の上方でこれに対向する位置に、記録媒体2の先端(エッジ)を検知し位置検出を行う媒体位置検出手段としての媒体位置センサ25を有している。この媒体位置センサ25は、インクヘッド100に対して所定の距離L25だけ、媒体搬送方向上流側に位置しており、画像記録部4が固定された不図示の搬送部フレームに固定されている。
【0125】
媒体位置センサ25は、レジストローラ対11から搬送される記録媒体2の先端を検知することで、記録媒体2がインクヘッド100の下方に搬送されるまでの時間を求めて、インクヘッド100がインクを吐出するタイミングやインク経路20中のインクの流れを切り替えるタイミングを決定する。媒体位置センサ25は、画像記録部4に対して固定されているため、相対的な位置関係にずれがなく、記録媒体2がインクヘッド100の下方に搬送されるまでの時間を精度よく検知することができる。つまり、搬送速度をVとすれば、媒体位置センサ25が記録媒体2のエッジを検出してからL25/Vの時間で記録媒体2がインクヘッド100の画像記録開始位置に到達することが容易に算出することができる。さらに、媒体位置センサ25により検出された情報に基づいて、制御部8によりインクヘッド100のインク吐出タイミングを制御することも可能である。
【0126】
本実施形態によれば、記録媒体の先端を検出し、搬送される記録媒体の位置を精度よく検知可能な媒体位置センサを備えているため、記録媒体の位置を正確に求めることができ、インクの流れを切り替えるタイミングを精度よく決定することができる。
【0127】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態について、図16を参照して説明する。
本実施形態において、第1の実施形態のインク経路20と異なる点は、インクカートリッジ60及びインクタンク50のインク液面がインクヘッド100のノズル面101aよりも高い位置に配置されている点である。
【0128】
このような位置関係でも、圧力P1、P2を設定することで、画像記録に適したノズル圧を維持しながら、インクヘッド100を経由してインクを往復動させることが可能である。例えば、インクカートリッジ60とインクタンク50とのインク液面をインクヘッド100のノズル面101aから100mm高い位置とし、第1のインク経路31、第2のインク経路32及びラインヘッド21の流路抵抗値が第1の実施形態と同様の場合について説明する。
【0129】
インクジェットプリンタ1は、画像記録を行わない状態では、P1=P2=−1880Paにすることで、ノズル圧Phを−998Paに設定することができる。画像記録時にインクタンク50からインクカートリッジ60へインクを流す場合には、Pl=−5540Pa、P2=350Paに設定すれば、画像記録に適したノズル圧−1004Paを得ることができる。また、インクカートリッジ60からインクタンク50にインクを流す場合には、P1=1780Pa、P2=−4120Paに設定すれば、画像記録に適したノズル圧−998Paを得ることができる。
【0130】
また、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングとを制御する。
【0131】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態について、図17を参照して説明する。
本実施形態では、インク経路20の構成が第1の実施形態のインク経路20と異なる。
【0132】
本実施形態のインク経路20では、2つのインクタンク50、51の水頭差圧により、これらタンク内の圧力P1、P2を設定する。
【0133】
インク経路20は、インクヘッド100(ラインヘッド21)と、インクタンク50と、第1の実施形態のインクカートリッジ60に代わるインクタンク51と、インクタンク50、51内のインク量をそれぞれ検知するように、これらの近傍にそれぞれ設けられた液面センサ71、74と、インクタンク50、51をそれぞれ所望の高さに昇降させるタンク昇降部52と、を有している。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、インクタンク51とインクヘッド100とは、第1のインク経路(第1のチューブ)31によって接続されており、また、インクヘッド100とインクタンク50とは、第2のインク経路(第2のチューブ)32によって接続されている。また、図示しないが、インクタンク50、51には、大気と連通するポートが形成されている。
【0134】
待機状態(画像記録を行わない状態)では、インクタンク50、51の高さは、インクヘッド100のノズル圧Phが負圧を保つことができる位置、例えば、ノズル面101aよりもZ方向に略110mmだけ高い位置にある(図17(a))。画像記録動作が指示されると、タンク昇降部52により、インクタンク50は上昇され、インクタンク51は下降される。ここで、第1及び第2のインク経路31、32を、同じ長さの、φ5mmのチューブとし(流路抵抗R1=R2)、第1の実施形態と同様のインク粘度ρ、ラインヘッド21の流路抵抗Rh(両側のインク導入口に対称の流路抵抗)とすれば、ラインヘッド21の熱を奪って流れるためのインク流量3.21ml/sを確保可能な高さとすることができる。インクタンク50、51の移動量は、280mmであり、インクタンク50の高さは、ノズル面から167mmだけ高い位置、インクタンク51の高さは、ノズル面から393mmだけ低い位置まで移動する(図17(b))。そして、インクタンク50の液面センサ71がONからOFFになるまで、この位置で維持される。このとき、インクタンク50からラインヘッド21を経由してインクタンク51へとインクが流れ、ラインヘッド21に流れるインク量は3 . 21ml/sとなる。
【0135】
次に、液面センサ71がONからOFFに変わると、タンク昇降部52により、インクタンク50は下降され、インクタンク51は上昇される。インクタンク50、51の移動量は、280×2=560mmであり、インクタンク50の高さは、ノズル面から393mmだけ低い位置まで、インクタンク51の高さは、ノズル面から167mmだけ高い位置まで移動する(図17(c))。そして、インクタンク51の液面センサ74がONからOFFになるまで、この位置で維持される。このとき、インクタンク51からラインヘッド21を経由してインクタンク50へとインクが流れ、ラインヘッド21に流れるインク量は3 . 21ml/sとなる。
【0136】
画像記録動作が終了し、インクの往復動を停止する場合には、インクタンク50、51を図17(a)の位置に戻す。
以上のように、待機状態には、図17(a)の位置に、画像記録動作時には図17(b)と(c)との状態を交互に繰り返すことで、ラインヘッドにインクを往復動させる。
【0137】
なお、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングとを制御する。
【0138】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態について、図18を参照して説明する。
本実施形態では、インク経路20の構成が第1の実施形態のインク経路20と異なる。
【0139】
本実施形態のインク経路20では、2つのインクタンク50、51に設けられたベローズ300、301の伸縮でタンク内の空気を加減圧することにより、これらタンク内の圧力P1、P2を設定する。
【0140】
インク経路20は、インクヘッド100(ラインヘッド21)と、インクタンク50、51と、インクタンク50の近傍に設けられた液面センサ71と、インクタンク50、51内の空気をそれぞれ加減圧するベローズ300、301と、ロッド308、309をそれぞれ有し、制御部8からの電気信号に応じてロッド308、309をベローズ300、301に対してそれぞれ動作させるシリンダ304、305と、ロッド308、309の一端部に固定され、シリンダ304、305の押し引きする力を伝える板部材306、307と、を有している。板部材306、307は、それぞれ、ベローズ300、301に固定され、板部材306、307の一端部の位置を検出し、ベローズ300、301の伸縮時の長さを位置検出センサ302、303で検知している。
【0141】
待機状態(画像記録を行わない状態)では、インクタンク50、51内の圧力P1、P2は、ノズル面101aからインクタンク内の液面までの水頭差圧を考慮し、ノズルを負圧に保つような負圧レベルに保たれている。画像記録指示がなされると、シリンダ304のロッド308が出ることで板部材306がベローズ300を押し、ベローズ300が縮んでいく。それと同時に、シリンダ305のロッド309が引っ込むことで板部材307がベローズ301を引っ張り、ベローズ301が伸びていく。ベローズの体積変動によりインクタンク内の圧力は変化していく。
【0142】
このときのインクタンク50の圧力変化は、ロッド308のストローク量に対して、ベローズ300とインクタンク50とで形成される空気室の体積変化量を予め求めておくことにより算出可能である。本実施形態では、ロッド308の変位量を位置検出センサ302で検知し、その量に応じてインクタンク50内の圧力P2を求めている。同様に、インクタンク51の圧力変化は、ロッド309のストローク量に対して、ベローズ301とインクタンク51とで形成される空気室の体積変化量を予め求めておくことにより算出可能である。本実施形態では、ロッド309の変位量を位置検出センサ303で検知し、その量に応じてインクタンク51内の圧力P1を求めている。
【0143】
P1、P2が所望の圧力になる位置までシリンダ304、305が動き、その位置を維持する。その状態が、図18(b)である。このとき、インクは、インクタンク50からインクヘッド100を経由してインクタンク51へ流れていく。
【0144】
時間が経つにつれて、圧力P1、P2は下がっていくため、インクの流れも少なくなっていく。これではインクヘッドの温度上昇防止に必要なインク流量を確保できなくなるため、好ましくない。そこで、この確保できなくなる時間を予め求めておき、その時間が経過したら次の動作へ移る。
【0145】
例えば、図18(b)の状態から5秒後にはシリンダ304のロッド308が引っ込むことで、板部材306がベローズ300を引っ張り、ベローズ300が伸びていく。同時に、シリンダ305のロッド309が出ることで、板部材307がベローズ301を押し、ベローズ301が縮んでいく。圧力P2、P1が、所望の圧力になるまでシリンダ304、305が動き、その位置を維持する。その状態が、図18(c)である。このとき、インクは、インクタンク51からインクヘッド100を経由してインクタンク50へ流れていく。インクタンク50の液面センサ71がOFFからONになった初期の液面位置の状態になると次の動作を行う。
【0146】
インクの往復動を続ける場合には、図18(b)並びに(c)に示すように、継続したベローズの伸縮を交互に行う。画像記録が終了し、インクの往復動を停止する場合には、図18(a)に示す初期位置にシリンダを戻す。
以上のように、画像記録を行わない場合には、図18(a)の状態、画像記録動作時には、図18(b)と(c)との状態を交互に繰り返すことで、ラインヘッドにインクを往復動させる。なお、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングとを制御する。
【0147】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態について、図19を参照して説明する。
このインク経路20は、第7の実施形態のインク経路20に対して、インクタンク内には空気がなく、ベローズの伸縮により直接インク(非圧縮性)を押し引きしてインクの流れを切り替えている。この方式を使用すると、経路内に空気の層が存在しないため、空気に触れると色素が凝集し固化し易いインクを使用することが可能となる。
【0148】
図19に示すように、インク経路20は、Z方向でインクタンク50を挟んでベローズ300に対向して設けられたベローズ310と、Z方向でインクタンク51を挟んでベローズ301に対向して設けられたベローズ311と、ベローズ310の位置を検出するように、ベローズ310の近傍に配置された位置センサ312と、を有している。位置センサ312は、ベローズ311の位置を検出するように、ベローズ311の近傍に配置されてもよい。これらベローズ310、311のばね定数K2は、ベローズ300、301のばね定数K1よりも大きく設定され(K2>K1)、ベローズ300、301の伸び縮みするストローク量に対して、伸び切らず、かつ、縮み切らないストローク量(ばね定数の特性を得られる範囲)を確保している。
【0149】
画像記録を行わないときや、画像記録を行う動作が指示されたときのシリンダ304、305や、ベローズ300、301の動作や位置検出方法は、第7の実施形態と同様である。
【0150】
本実施形態では、インク経路20内が非圧縮性であるインクで満たされており、ベローズ300とインクタンク50、ベローズ301とインクタンク51内の体積変動が敏感にインク経路内に伝わってしまうが、この変動を吸収し、急激な圧力変動を防止するダンパの役目を果すのがベローズ310、311である。例えば、ベローズ310、311が設けられていない場合、ベローズ300の動きがベローズ301よりもわずか100ms早く動作しただけでも、経路内には数十kPaレベルでの圧力変動が発生し、インクヘッドのノズルからインクが垂れたりノズルから空気を吸い込んだりする虞がある。このような問題を防ぐために、ベローズ310、311が設けられている。
【0151】
また、画像記録動作により経路内のインク量が減った場合には、ベローズ310の戻りが小さくなり少し縮まった状態に変化するため、その位置を位置センサ312で検知し、経路内のインクが不足していると判断された場合には、インクカートリッジからインクタンクへインクを送液する動作が行われる。以上のようにして、ラインヘッドにインクを流す動作を可能としている。
【0152】
本実施形態によれば、インク経路部内に空気層がないため、空気に触れると色素が凝集し固化し易いインクの使用が可能となる。なお、本実施形態でも、第1乃至第3の実施形態と同様に、インクの流れが切り替わる時に画像記録動作を行わないよう、記録媒体の搬送動作タイミング及び/又はインクの流れを切り替えるタイミングを制御する。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能である。
【0154】
以下は、本発明の付記請求項である。
[1]記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された記録媒体にインクを吐出する複数のノズルを備え、該ノズルに連通する第1及び第2のインク導入部を有するインクヘッドと、
第1のインク経路によって前記第1のインク導入部と接続された第1のインク貯留部と、
第2のインク経路によって前記第2のインク導入部と接続された第2のインク貯留部と、
前記第1及び第2のインク貯留部内に空気を供給、及び前記第1及び第2のインク貯留部内の空気を吸引することで、前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧する加減圧手段と、
前記搬送部、前記インクヘッド及び前記加減圧手段を制御する制御部と、を具備し、
前記加減圧手段は、前記制御部により、前記第1のインク貯留部内を加圧かつ前記第2のインク貯留部内を減圧する第1の動作と、前記第1のインク貯留部内を減圧かつ前記第2のインク貯留部内を加圧する第2の動作と、を交互に繰り返すことにより、前記インクヘッドに流れるインクの向きを、前記第1のインク導入部から前記第2のインク導入部へ流れる向きと、前記第2のインク導入部から前記第1のインク導入部へ流れる向きと、で切り替え可能であるインクジェットプリンタにおいて、
前記制御部は、前記加減圧手段によりインクの流れる向きを反転させる際に、前記搬送部による前記記録媒体の搬送及び、前記インクヘッドのインク吐出のうちのいずれかを待機させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【符号の説明】
【0155】
1…インクジェットプリンタ、2…記録媒体、3…供給部、4…搬送部、5…画像記録部、6…クリーニング部、7…排出部、8…制御部、20…インク経路、21…ラインヘッド、30…加温部、31…第1のインク経路、32…第2のインク経路、33…空気経路、34…ポンプ、35…空気経路、36…空気経路、37…ポンプ、38…空気経路、40…冷却部、50,51…インクタンク、52…タンク昇降部、60…インクカートリッジ、70…フロート、71…液面センサ、72,73…圧力センサ、74…液面センサ、100…インクヘッド、101…ノズルプレート、101a…ノズル面、101b…ノズル、102…枠、103…ベース、104…圧電素子、104a…チャンネル、105,106…流路部材、105a,105b…流路、106a…凸部、106b…接続流路、107,108…インクポート、114…温度センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、
第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、
前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧することで、前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替える加減圧手段と、
前記搬送部、前記インクヘッド及び前記加減圧手段を制御する制御部と、を具備し、
前記加減圧手段により前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、前記搬送部により記録媒体を搬送するタイミングとが異なるように、前記制御部を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングに対して、前記制御部が前記記録媒体を搬送するタイミングを制御することを特徴とする請求項1のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記記録媒体を搬送するタイミングに対して、前記制御部が前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングを制御することを特徴とする請求項1のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記搬送部は、搬送された記録媒体の先端を検出する媒体位置検出手段を有し、
前記記録媒体を搬送するタイミングが、前記媒体位置検出手段により検出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記媒体位置検出手段により検出された情報に基づいて、前記制御部が、前記インクヘッドのインク吐出タイミングを制御することを特徴とする請求項4のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記記録媒体の搬送方向の長さに応じて、前記制御部が、前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替える周期を変更することを特徴とする請求項3のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、
第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、を具備し、
前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替えながら、所定の時間間隔を置いて搬送される複数の記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタの画像記録方法において、
前記所定の時間間隔中に、前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項8】
前記所定の時間間隔中に前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替えることは、前記所定の時間間隔を制御することにより行われる請求項7の画像記録方法。
【請求項9】
前記所定の時間間隔中に前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替えることは、前記インクヘッドに流れるインクの向きの切り替えを制御することにより行われる請求項7の画像記録方法。
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、
第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、
前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧することで、前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替える加減圧手段と、
前記搬送部、前記インクヘッド及び前記加減圧手段を制御する制御部と、を具備し、
前記加減圧手段により前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングと、前記搬送部により記録媒体を搬送するタイミングとが異なるように、前記制御部を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングに対して、前記制御部が前記記録媒体を搬送するタイミングを制御することを特徴とする請求項1のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記記録媒体を搬送するタイミングに対して、前記制御部が前記インクヘッドに流れるインクの向きが切り替わるタイミングを制御することを特徴とする請求項1のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記搬送部は、搬送された記録媒体の先端を検出する媒体位置検出手段を有し、
前記記録媒体を搬送するタイミングが、前記媒体位置検出手段により検出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記媒体位置検出手段により検出された情報に基づいて、前記制御部が、前記インクヘッドのインク吐出タイミングを制御することを特徴とする請求項4のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記記録媒体の搬送方向の長さに応じて、前記制御部が、前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替える周期を変更することを特徴とする請求項3のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
第1のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第1のインク貯留部と、
第2のインク経路によって前記インクヘッドに接続された第2のインク貯留部と、を具備し、
前記インクヘッドを介して前記第1及び第2のインク貯留部間でインクの流れる向きを切り替えながら、所定の時間間隔を置いて搬送される複数の記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタの画像記録方法において、
前記所定の時間間隔中に、前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項8】
前記所定の時間間隔中に前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替えることは、前記所定の時間間隔を制御することにより行われる請求項7の画像記録方法。
【請求項9】
前記所定の時間間隔中に前記インクヘッドに流れるインクの向きを切り替えることは、前記インクヘッドに流れるインクの向きの切り替えを制御することにより行われる請求項7の画像記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−171342(P2012−171342A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38797(P2011−38797)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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