説明

インクジェットプリンタ

【課題】印刷媒体の凹凸に起因して階調ムラが生じた。
【解決手段】複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドと、実際に印刷する対象である第1の印刷媒体を搬送するためのローラと、前記第1の印刷媒体の凹凸を検出する検出部と、予め実験的に印刷した第2の印刷媒体の凹凸と、前記複数のピエゾ素子から吐出される液滴の、前記凹凸を有する前記第2の印刷媒体への着弾後の階調を本来的な階調と実質的に等しくするために必要な、前記液滴の吐出時の階調との対応関係を記憶する不揮発性メモリと、前記第1の印刷媒体の凹凸に基づき、前記不揮発性メモリに記憶された前記対応関係を参照することにより、前記第1の印刷媒体へ吐出する液滴の吐出時の階調を決定する決定部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドを有するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に記載されたような「印刷媒体(印刷用紙)を搬送するためのローラを備える印刷装置」では、図5に示されるように、印刷ヘッドH10を構成する複数のピエゾ素子P10、P20、....から、ローラR10、R20により搬送される印刷用紙PA10に向けて、同じ大きさの液滴E10、E20、...を吐出することにより印刷を行う。
【0003】
【特許文献1】特開2005−178225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のインクジェットプリンタでは、図5に示されるように、ローラR10、R20の搬送に起因して印刷用紙PA10に凹凸が生じることから、液滴E10、E20、...がたとえ同じ大きさであっても、印刷用紙PA10に着弾した後の液滴e10、e20、...の大きさ(印刷用紙PA10の印刷面に対し垂直な方向から見た面積)が異なり、これにより、階調ムラのような、印刷された文字や画像の画質の低下を招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記した課題を解決すべく、以下の適用例により実現される。
【0006】
[適用例1]
適用例1のインクジェットプリンタは、
複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドと、
実際に印刷する対象である第1の印刷媒体を搬送するためのローラと、
前記第1の印刷媒体の凹凸を検出する検出部と、
予め実験的に印刷した第2の印刷媒体の凹凸と、前記複数のピエゾ素子から吐出される液滴の、前記凹凸を有する前記第2の印刷媒体への着弾後の階調を本来的な階調と実質的に等しくするために必要な、前記液滴の吐出時の階調との対応関係を記憶する不揮発性メモリと、
前記第1の印刷媒体の凹凸に基づき、前記不揮発性メモリに記憶された前記対応関係を参照することにより、前記第1の印刷媒体へ吐出する液滴の吐出時の階調を決定する決定部と、を含む。
【0007】
適用例1のインクジェットプリンタによれば、前記決定部が、前記第1の印刷媒体の凹凸に基づき、前記不揮発性メモリに記憶された、前記予め実験的に印刷した第2の印刷媒体の凹凸と、前記複数のピエゾ素子から吐出される液滴の、前記凹凸を有する前記第2の印刷媒体への着弾後の階調を本来的な階調と実質的に等しくするために必要な、前記液滴の吐出時の階調との対応関係を参照することにより、前記第1の印刷媒体に吐出する液滴の階調を決定することから、前記凹凸を有する第1の印刷媒体への着弾後の階調を本来的な階調と実質的に等しくすることが可能となる。
【0008】
[適用例2]
適用例2のインクジェットプリンタは、適用例1のインクジェットプリンタであって、
前記不揮発性メモリは、FeRAMである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施例のインクジェットプリンタについて図面を参照して説明する。
【0010】
〈構成〉
図1は、実施例のインクジェットプリンタの構成を示す。実施例のインクジェットプリンタIJPは、印刷用紙PA1(図2に図示。)に印刷を行うべく、図1に示されるように、印刷ヘッドHと、制御部Cと、紙送り機構Mと、位置検出部Dと、不揮発性メモリFと、を含む。
【0011】
印刷ヘッドHは、図4に示されるように、複数(例えば、5個)のピエゾ素子P1〜P5と、ノズルNZ1〜NZ5と、を有する。
【0012】
ピエゾ素子P1は、図4に示されるように、ノズルNZ1から印刷用紙PA1に向けて液滴E1を吐出する。他のピエゾ素子P2〜P5も同様にして、ノズルNZ2〜NZ5から印刷用紙PA1に向けて液滴E2〜E5を吐出する。
【0013】
図1に戻り、制御部Cは、インクジェットプリンタIJPの全体の動作を監視しかつ制御する。制御部Cは、加えて、印刷用紙PA1の凹凸に基づき、不揮発性メモリFに記憶された階調データDTを参照して、吐出時の液滴E1〜E5の階調を決定する。
【0014】
紙送り機構Mは、図2に示されるように、協働して印刷用紙PA1を紙送り方向に搬送する、第1のローラR1(送り出し側)及び第2のローラR2(送り受け側)を有する。印刷用紙PA1は、第1のローラR1及び第2のローラR2の搬送動作に起因して、正確には第1、第2のローラR1、R2間の紙送り力の微差、搬送される印刷用紙PA1自身の材質、及び、搬送される印刷用紙PA1が置かれている環境(温度、湿度等)によって、図2に示されるように、起伏(凹凸)が生じる。
【0015】
位置検出部Dは、図2に示されるように、印刷用紙PA1の上方に設けられており、発光素子LEと、受光素子LRとを有する。発光素子LEは、例えば、LEDであり、印刷用紙PA1に向けて光を放射し、また、受光素子LRは、例えば、フォトダイオードであり、印刷用紙PA1によって反射された光を受光する。これにより、位置検出部Dは、印刷用紙PA1の凹凸(高さ)を検出する。
【0016】
不揮発性メモリFは、例えば、EEROM、FeRAMであり、前記階調データDTを記憶している。階調データDTは、図3に示されるように、印刷用紙PA1の高さ(凹凸)と、着弾後の液滴e1〜e5の階調を本来的な階調(本来あるべき階調)に近づけるために、当該高さにある印刷用紙PA1の領域(後述される領域A1〜A5)に向けて吐出する液滴E1〜E5の吐出時の階調を規定する。
【0017】
階調データDTは、例えば、印刷用紙PA1中のある領域の高さが「H1」であるとき、当該領域に吐出する液滴の吐出時の階調を「T1」にすべき旨を規定し、また、印刷用紙PA1中のある領域の高さが「H2」であるとき、当該領域に吐出する液滴の吐出時の階調を「T2」にすべき旨を規定する。
【0018】
〈動作〉
実施例のインクジェットプリンタの動作について説明する。インクジェットプリンタIJPでは、第1のローラR1及び第2のローラR2が印刷用紙PA1を搬送しているとき、位置検出部Dは、印刷用紙PA1の高さを検出する。例えば、図2に示されるように、印刷用紙PA1の領域A1、A2、A3、A4、A5の各々の高さ(位置)が、「H0」、「H2」、「H4」、「H3」、「H1」であることを検出する。
【0019】
印刷用紙PA1の領域A1〜A5の高さが検出されると、制御部Cは、不揮発性メモリFに記憶されている階調データDTを参照して、領域A1〜A5に液滴を吐出すべき液滴の吐出時の階調を決定する。
【0020】
より詳しくは、例えば、領域A1の高さが「H0」であることから、制御部Cは、領域Aに対応するピエゾ素子P1が吐出する液滴の吐出時の階調を「T0」にすべきことを決定し、同様にして、領域A2の高さが「H2」であることから、領域A2に対応するピエゾ素子P2が吐出すべき液滴の吐出時の階調を「T2」にすべきことを決定する。このようにして、制御部Cは、図4に示されるように、ピエゾ素子P1〜P5の各々から、吐出時の階調が「T0」、「T2」、「T4」、「T3」、「T1」である液滴E1〜E5を吐出させる。この結果、印刷用紙PA1への着弾後の液滴e1〜e5の階調は、本来的な階調と実質的に等しくなる。
【0021】
〈効果〉
上述したように、実施例のインクジェットプリンタIJPでは、制御部Cが、第1のローラR1及び第2のローラR2により搬送される印刷用紙PA1の領域A1〜A5の高さに基づき、不揮発性メモリFに記憶されている階調データDTを参照することにより、領域A1〜A5に対応するピエゾ素子P1〜P5が吐出すべき液滴E1〜E5の吐出時の階調を決定する。これにより、印刷用紙PA1への着弾後の液滴e1〜e5の階調が、本来的な階調と実質的に等しくなり、その結果、階調ムラのような画質の低下を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例のインクジェットプリンタの構成を示す。
【図2】実施例の印刷ヘッドの構成を示す図。
【図3】実施例の階調データの内容を示す図。
【図4】実施例のピエゾ素子による印刷の動作を示す図。
【図5】従来のピエゾ素子による印刷の動作を示す図。
【符号の説明】
【0023】
IJP…インクジェットプリンタ、H…印刷ヘッド、F…不揮発性メモリ、DT…階調データ、D…位置検出部、M…紙送り機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドと、
実際に印刷する対象である第1の印刷媒体を搬送するためのローラと、
前記第1の印刷媒体の凹凸を検出する検出部と、
予め実験的に印刷した第2の印刷媒体の凹凸と、前記複数のピエゾ素子から吐出される液滴の、前記凹凸を有する前記第2の印刷媒体への着弾後の階調を本来的な階調と実質的に等しくするために必要な、前記液滴の吐出時の階調との対応関係を記憶する不揮発性メモリと、
前記第1の印刷媒体の凹凸に基づき、前記不揮発性メモリに記憶された前記対応関係を参照することにより、前記第1の印刷媒体へ吐出する液滴の吐出時の階調を決定する決定部と、を含むことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記不揮発性メモリは、FeRAMであることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−162695(P2010−162695A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4298(P2009−4298)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】