インクジェットヘッド
【課題】給電部に導電性部材を設けて平坦化することで、当該給電部の平坦化した部分を、外部装置に安定して接続し、圧電体にクラックを生じにくくすることができるインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェットヘッドは、インク吐出部を有し、インク供給路を形成する開口を有するスペーサ、及び圧電体からなる振動板が交互に積層された積層圧電体と、前記インク吐出部に配設されたノズルプレートと、を有するインクジェットヘッドであって、前記積層圧電体は、更に、前記積層圧電体間に設けられた隙間に挿入される導電性部材により形成された、前記圧電体へ給電するための給電部を備え、前記給電部の一部では、前記導電性部材及び前記積層圧電体が平坦化され、当該平坦化された給電部の一部から、接続素子を介して外部装置と接続する。
【解決手段】本発明のインクジェットヘッドは、インク吐出部を有し、インク供給路を形成する開口を有するスペーサ、及び圧電体からなる振動板が交互に積層された積層圧電体と、前記インク吐出部に配設されたノズルプレートと、を有するインクジェットヘッドであって、前記積層圧電体は、更に、前記積層圧電体間に設けられた隙間に挿入される導電性部材により形成された、前記圧電体へ給電するための給電部を備え、前記給電部の一部では、前記導電性部材及び前記積層圧電体が平坦化され、当該平坦化された給電部の一部から、接続素子を介して外部装置と接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに関し、特にインクジェットヘッドの給電部の平坦化に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを噴射するタイプの印刷機、いわゆるインクジェットプリンタは様々な方式が提案されている。その一つとして、圧電素子に電圧を加えるとその圧電素子が伸縮し、それに合わせて振動板が振動することによって、ノズルからインク滴が追い出されるという構造を有するピエゾ(圧電素子)方式などがある。このピエゾ方式のインクジェットヘッドとして、図18(a)に示すインクジェットヘッド1800は、電圧Vを加えると伸縮する圧電素子1801からなる振動板1802を、基板1803に凹設したインク室1804に対して対面又は側面に接合する構成である。そして、図18(b)に示すように、インクジェットヘッド1800は、インク供給路1805から供給されたインクに振動板1802の振動を伝え、インク噴射口1806からインク滴1807を噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえば、特許文献1で開示されているような、従来例のインクジェットヘッドでは、外部電源と接続する給電部に、PZT(ペブロスカイト型の結晶構造をもつ酸化物強誘電体)からなる圧電素子とスペーサとの積層体の積層方向に沿って隙間が存在する。そのため、給電部と接続し、外部装置とインクジェットヘッドとを電気的に接続する接続素子を設けると、給電部と接続素子との接続性は良好ではない。さらに、給電部に設けられた導電層に対して、セラミック材料であるPZTにクラックが生じやすい。
【0005】
本発明の目的は、インクジェットヘッドの給電部に導電性部材を設けて平坦化することで、当該給電部の平坦化した部分を外部装置と接続する接続素子を介して、外部装置に安定して接続するとともに、インクジェットヘッドの圧電体にクラックを生じにくくすることができる、インクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態として、インクジェットヘッドは、インク吐出部を有し、インク供給路を形成する開口を有するスペーサ、及び圧電体からなる振動板が交互に積層された積層圧電体と、前記インク吐出部に配設されたノズルプレートと、を有するインクジェットヘッドであって、前記積層圧電体は、更に、前記積層圧電体間に設けられた隙間に挿入される導電性部材により形成された、前記圧電体へ給電するための給電部を備え、前記給電部の一部では、前記導電性部材及び前記積層圧電体が平坦化され、当該平坦化された給電部の一部から、接続素子を介して外部装置と接続する。
【0007】
上記インクジェットヘッドでは、前記導電性部材は、導電性の板部材であっても良い。また、前記導電性の板部材は、溝加工により可撓性を備える金属板であって、前記金属板の対向する一組の面に、少なくとも一の方向に沿って延びる一又は複数の溝が設けられていても良い。さらには、前記金属板の対向する一組の面に設けられた複数の溝は、前記一の方向に沿って延びる溝と、前記一の方向と異なる方向に延びる溝とを有する。また、前記導電性の板は銅で形成されていても良い。
【0008】
上記インクジェットヘッドでは、前記導電性部材は、導電性の箔であっても良い。また、導電性の箔は銅で形成されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインクジェットヘッドによれば、インクジェットヘッドの給電部に、導電性部材を設けて平坦化し、当該給電部の平坦化した部分を外部装置と接続する接続素子を介して、外部装置に安定して接続することができると共に、インクジェットヘッドの圧電体にクラックを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1の要部分解斜視図。
【図2】図1のインクジェットヘッド1の要部分解断面図。
【図3】図1のインクジェットヘッド1の要部断面図。
【図4】図1のインクジェットヘッド1を構成する単位積層体を示す斜視図。
【図5】(a)図1のインクジェットヘッド1を構成するスペーサ200の概略図、(b)図1のインクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Aの概略図、(c)図1のインクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Bの概略図。
【図6】図4に示す単位積層体を多数積層した状態を示す概略的斜視図。
【図7】(a)〜(d)は、図1のインクジェットヘッド1の振動板100を製造工程の一部を示す図。
【図8】(a)〜(c)は、図1のインクジェットヘッド1のスペーサ200の製造工程の一部を示す図。
【図9】図1のインクジェットヘッド1のノズルプレートを示す概略図。
【図10】本発明の実施の形態に係る銅板301を給電部16に挿入する様子を示す図。
【図11】図10に示す銅板301を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図。
【図12】本発明の実施の形態に係る欠損加工済み銅板501の斜視図。
【図13】図12に示す欠損加工済み銅板501を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図。
【図14】本発明の実施の形態に係る銅箔701の斜視図。
【図15】図14に示す銅箔701を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図。
【図16】給電部16の平坦化評価の方法を示すフロー図。
【図17】給電部16の平坦化評価結果を示す図。
【図18】(a)従来のインクジェットヘッドの原理を示す概略図、(b)(a)に示す従来のインクジェットヘッドの作用を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1の要部について説明する。
図1に示すように、圧電体10は板状に成形される。圧電体10は、板状に成形されたスペーサ200の両方の表面に接した状態で、スペーサ200に設けたインク流路形成用切溝32を塞ぐように配置され、スペーサ200に互いに接合される。すなわち、スペーサ200のインク流路形成用切溝32の上壁および底壁と、各圧電体10の対向する表面とで囲まれた領域によってインク流路33が形成される(図3参照)。
【0013】
図2及び図3に示すように、各圧電体10の対向する表面には、インク流路33に沿った位置に電圧印加用の一方の電極14Aが設けられると共に、各圧電体10の反対側の表面にも電圧印加用の他方の電極14Bが設けられる。電圧印加用の電極14A、14Bは、インク流路33の幅の概ね半分の幅を有し、インク流路33に沿って配設されている。この構成により、圧電体10の変形効率が良くなる。
【0014】
次に、図4を参照して、インクジェットヘッド1を構成する単位積層体について説明する。図4に示すように、電圧印加用の電極14A、14Bは、インク流路33に沿って延設された導電路(導電層パターン)18(を介して、例えば、圧電体10の上端部に設けた給電部16に電気的に接続される。導体路18は、電極14A(又は14B)からインク流路33に沿って延設されている。なお、給電部16は、圧電体10の上端部以外に設けても良い。
【0015】
電圧印加用の電極14A、14Bへの電圧印加により、圧電体10が変形し、インク流路33の容積が変化する。インク流路33の容積が小さくなると、インク流路33内にあるインクが吐出される。また、インク流路33の容積が大きくなると、インクタンク(図示を省略)から新たなインクが供給される。
【0016】
なお、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1は、圧電体10の駆動モードとして、d33モード、d31モード、d15モードのいずれでも駆動させることが可能である。そのため、インク等の液滴の噴射が阻害されない。また、液滴の噴射速度やサイズ等のバラツキが生じることもない。また、圧電体10の駆動モードとして、d33モード、d31モード、d15モードのうち、2つ以上のモードを混合させて用いることもできる。
【0017】
図4に示すように、圧電体10は、スペーサ200のインク供給路を形成するためのインク供給口形成用開口34に連通する、開口を有している。圧電体10がスペーサ200を挟持した状態で積層された際に、上述した開口がインク供給口12を形成する。さらに、圧電体10には、電圧印加用電極14A、14Bや、給電部16等の導電路18のうち、給電部(例えば、給電パッド)16を除いた部分を被覆する絶縁保護膜20が設けられる。また、後述するようなスペーサ200やノズルプレート300との接合部に対応する部分には、接合用金属層22が設けられる。
【0018】
絶縁保護膜20は、Si3N4、SiO2等の無機膜や、エポキシ系樹脂やPIなどの有機膜から形成され、スパッタリング、CVD、塗布等の方法で圧電体10上に設けられる。絶縁保護膜20の厚さは、0.05〜5μm程度であれば良い。絶縁保護膜20の厚さが、0.05μm未満では、十分な絶縁性を確保できない。一方、絶縁保護膜20の厚さが5μmを超えると、無機膜では膜応力が増大し、クラックが生じやすくなる。また、絶縁保護膜20の厚さが5μmを超えると、有機膜では、圧電体10の変位が吸収され、インクに圧力を十分に伝達できない。
【0019】
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、圧電体10からなる一対の振動板100によって挟持されるスペーサ200は、インク流路形成用切溝32と、インク流路形成用切溝32に連続するインク供給口形成用開口34とを有する板状の部材である。
【0020】
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、振動板100は、PZT(Pb(Zr、Ti)O3)を主成分とする圧電セラミックから形成されている。振動板100に適用できる圧電セラミックの条件としては、(1)圧電定数、及び電気機械結合係数が大きく、(2)キュリー点が高く、(3)誘電率が低く、(4)誘電的・機械的な損失が小さい材料であれば良い。例えば、Pb(Zr、Ti)O3セラミックとして、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3、Pb(Y1/3Nb1/3)O3−PbZrO3−PbTiO3、Pb(Mn1/3Nb1/3)O3−PbZrO3−PbTiO3、Pb(Co1/3Nb1/3)O3−PbZrO3−PbTiO3などが挙げられる。これら以外にも、例えば、Sr(K0.25・Nb0.75)O3やSr(W0.25・Nb0.75)O3などの圧電材料をPZTに固溶させた組成でも良い。
【0021】
次に、図5(a)〜図5(c)を参照して、スペーサ200の形成例について説明する。図5(a)は、インクジェットヘッド1を構成するスペーサ200の概略図である。図5(b)は、インクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Aの概略図である。図5(c)は、インクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Bの概略図である。
【0022】
図5(a)に示すように、スペーサ200は、積層された際にインク流路33の一部にオリフィス50が形成されるように、インク流路形成用切溝32の一部が流路方向に垂直な方向において幅狭な幅狭部分52として形成される。
【0023】
図5(b)に示すように、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1において、図5(a)に示すスペーサ200に代わるスペーサ200Aでは、幅狭部分52をインク供給口形成用開口34に連結させることで、インク流路33の長さが幅狭部分52の長さ分だけ小さくなる。さらに、インク流路33の流路断面積がインク供給口形成用開口34付近で幅狭部分52の分だけ減少するように形成されている。そのため、圧電体10での物理的に発生した力が、オリフィス50で形成された切溝内の幅狭部分に集中し、インクに伝播した圧電体の圧力が供給孔へ逃げにくくなる。したがって、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、より効率よく、インクを飛翔させることができる。さらに、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、低い電圧であってもインクを飛翔させることができ、より高い粘度のインクを飛翔させることができる。
【0024】
図5(c)に示すように、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1において、図5(a)に示すスペーサ200に代わるスペーサ200Bは、幅狭部分52を、インク供給口形成用開口34から所定の距離だけ離れた位置に配設すると、インク流路33の長さが、幅狭部分52の長さにインク供給口形成用開口34から幅狭部分までの離間距離を加えた分だけ小さくなると共に、流路断面積も上述した位置で幅狭部分52の分だけ減少するように形成されている。そのため、圧電体10での物理的に発生した力が、オリフィス50で形成された切溝内の幅狭部分に集中し、インクに伝播した圧電体の圧力が供給孔へ逃げにくくなる。したがって、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、より効率よく、インクを飛翔させることができる。さらに、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、低い電圧であってもインクを飛翔させることができ、より高い粘度のインクを飛翔させることができる。
【0025】
さらに、前記インク流路33を形成するインク流路形成用切溝32の幅(キャビティー幅)は、300μmから1800μmの範囲であることが望ましい。キャビティ幅が300μm未満であれば、圧電体10の変位量が小さくなりやすく、飛翔速度が低下することや高粘度の液体を飛翔させにくくなる場合がある。キャビティ幅が1800μmを越えると、剛性が不足して、圧電体10の変位量に見合うだけの圧力を液体にかけることができない。そのため、圧電体10の変位する力が液体に負けているといった現象が起きると推定される。
【0026】
その一方、オリフィス50を形成するような幅狭部分52の幅の比率は、キャビティ幅に対して、10%から75%の範囲であることが望ましい。オリフィス50の比率が10%未満であると、インク流路33の幅が狭くなり、インクの流通を阻害してしまうからである。その結果、インク噴射の飛翔性などに影響を与えてしまう。逆に、オリフィス50の比率が75%を越えると、オリフィス50を形成する効果が相殺してしまい、その結果として、飛翔性の向上やインクの噴射性の向上が行えなくなる。
【0027】
スペーサ200、200A、及び200Bは、絶縁性樹脂、金属、セラミックス、無機材料等を用いて板状であれば良い。これらの材料は、単体で用いても良い。また、2種類以上の材料を複合化した複合体で用いても良い。
【0028】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である絶縁性樹脂として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂、さらにこれらの複合樹脂等を用いることができる。
【0029】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である熱可塑性樹脂として、例えば、ABS樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等を用いることができる。
【0030】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0031】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である金属として、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、SUS、コバール、42アロイ、鉄、チタン、クロム等の単体、又はそれらの合金を用いることができる。
【0032】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料であるセラミックスとして、例えば、ガラスセラミックや、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、炭化珪素等を用いることができる。無機材料としては、例えば、Siや、SiO2、炭素(カーバイト等を含む)等が含有された材料を用いることができる。
【0033】
ここで、スペーサ200、200A、及び200Bに用いる材料に要求される基本的な特性としては、(1)少なくともインク流路形成用切溝32及びインク供給口形成用開口34が形成され得ること、(2)平坦性に優れること、(3)スペーサ200、200A、及び200Bに用いる材料の表層に金属層が形成され得ること、である。
【0034】
上述した基本特性を有する材料のうち、スペーサ200、200A、及び200Bには、特に、SiまたはSiO2を用いることができる。SiまたはSiO2は、基材の平坦度を保つことが容易であり、また、SiまたはSiO2は、圧電体10との熱膨張係数の差が小さいことから、変形などの不具合が生じない。更に、SiまたはSiO2は、酸化被膜などの保護膜を容易に形成することができ、しかも、エッチング等による外形加工性にも優れる。
【0035】
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、スペーサ200、200A、及び200Bは、上述した基本特性を有する材料から形成されることによって、その両面に接合された2つの振動板100で発生した振動を、スペーサ200、200A、及び200Bに形成されたインク流路33内の液体に効果的に伝えることができる。
【0036】
<振動板100とスペーサ200との接合:接着剤>
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、振動板100とスペーサ200との接合には、半田、絶縁性接着剤、金属含有接着剤などを用いることができる。接着剤の形成方法としては、印刷、塗布、フィルムの貼り付け、スプレーによる噴射などが挙げられる。
【0037】
接着剤の厚みは、0.5μm以上であることが望ましい。接着剤の厚みが0.5μm未満では、接着剤の厚みの均一性が確保されず、振動板とスペーサとの接合の不具合が生じてしまう。また、接着剤の厚みは10μm以下であることが望ましい。接着剤の厚みが10μmを越えると、圧電体10の変位が吸収され、インクに充分に圧力が伝達されないために、インクの飛翔性を阻害する。
【0038】
なお、振動板100とスペーサ200との接合に用いる接着材として、半田を用いる場合、Sn/Pb、Sn/Ag、Sn/Sb等からなる組成の接着材を用いることができる。
【0039】
なお、振動板100とスペーサ200との接合に用いる接着材として、絶縁性接着剤を用いる場合、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等)、熱可塑性樹脂(ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等)、感光性樹脂、紫外線硬化樹脂などを用いることができる。絶縁性接着剤とは、接着剤に導電性がないものを示すのである。また、必要に応じて、絶縁性接着剤に、無機などの粒子が配合されていてもよい。
【0040】
なお、振動板100とスペーサ200との接合に用いる接着材として、金属含有接着剤を用いる場合、Cu、Ag、Auなどの金属粒子が1種又は2種以上含有したものが含まれる。その一例として、0.03μmのAg粒子が含有したものにエポキシ樹脂などの接着剤を配合したものである。金属含有接着剤は、導電性接着剤ともいう。
【0041】
<振動板100とスペーサ200との接合:金属接合>
なお、振動板100とスペーサ200との接合には、振動板100及びスペーサ200のうち、少なくとも一部に金属層を形成し、その金属層により接合を行う金属接合により行うこともできる。以下、振動板100とスペーサ200との接合を金属接合によって行う場合について、説明する。
【0042】
振動板100とスペーサ200との接合面には、接合用金属層22、38がそれぞれ形成される。また、振動板100又はスペーサ200と、ノズルプレート300との接合面にも、接合用金属層22が形成されている。接合用金属層22は、全面に形成してもよいし、接合が必要な部分にのみ形成してもよい。
【0043】
振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層を形成する方法としては、電解めっき、無電解めっき等の化学的な形成方法や、スパッタ、蒸着、CVD等の物理的な形成方法を用いることが望ましく、複数層の金属層を形成する場合には、それらを同一の形成方法で形成してもよいし、異なる形成方法で形成してもよい。
【0044】
振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みは、0.01μm以上であることが望ましい。振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みが0.01μm未満であると、金属皮膜の均一性が確保されにくくなる。また、金属接合を行うと、接合が不十分になる。そのため、振動板100とスペーサ200との密着性が得られない。すなわち、圧電体10からなる振動板100、スペーサ200及びノズルプレート300の接合部に金属膜を被覆し、それらの接合部位を加熱および加圧することによって互いに金属接合させ、互いに密着させるように構成されている。
【0045】
なお、振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層としては、金、銅、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウム等の金属を、単層又は2層以上の複数層で形成する。なお、振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層としては、半田やロウ付け材(銀ロウ、金ロウ等)の合金で形成しても良い。これらの金属は、比較的低温でも金属同士の接合を行うことができ、その密着性も優れている。
【0046】
なお、上述した金属層は、スペーサ200だけでなく、圧電体10からなる振動板100およびノズルプレート300においても、同様に、それらの表面のうち、少なくとも互いに接合される表面に形成されている。前記圧電体10からなる振動板100、スペーサ200およびノズルプレート300の接合面を被覆する金属膜は、同一金属により形成されると良い。例えば、金及び銅のいずれか一方を用いることができる。その理由は、それぞれの接合面での熱膨張係数が同じになるために、接合面付近での熱膨張などの応力を起因とする剥離や剥がれを阻止できるからである。
【0047】
なお、振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みとしては、0.01μm〜3μm程度であることが望ましい。振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みが0.01μm未満では良好な接合ができない。振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みが3μmを越えると、金属接合する際、形成した金属膜内で破断、クラック等が発生しやすくなり、接合力が低下する。
【0048】
また、接合する金属表面を予め洗浄するのが望ましい。なぜなら、金属接合前の金属表面に酸化膜や窒化膜などが形成されている場合、及び金属接合前の金属表面に油脂成分などが付着して汚染されている場合があるからである。汚染された状態で金属接合すると密着性が低下する。そのため、金属接合前に、金属表面から酸化膜や窒化膜などを取り除くことが必要となる。
【0049】
また、金属接合の条件として、(1)金属温度が50℃以上300℃以下、(2)圧力が0.01MPa以上100MPa以下、(3)接合時間が0.5分以上、という条件で金属接合するのが望ましい。金属接合の条件(1)について、金属温度が50℃未満の温度では、金属膜が活性化されないために、強固な金属接合できず、逆に温度が300℃を越えると、金属膜の酸化が進み、接合強度を低下させてしまう。金属温度が50℃以上300℃以下であれば、金属−金属間の接合を行うことができ、接合強度も安定させることができる。
【0050】
金属接合の条件(2)として、圧力が0.01MPa未満であると金属接合できず、圧力が100MPaを越えると、接合部位に形成された金属膜の破壊を引き起こし、金属接合の強度を低下させてしまう。金属接合の条件(3)として、接合時間が0.5分未満では、短すぎて均熱化が進まないため、安定した金属接合を行なうことができない。
【0051】
また、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、前述した温度や圧力よりも小さい温度、圧力条件によって仮接合をした後、本接合を行なっても良い。また、3層以上の振動板100を積層させる場合、それらを一括して積層した後、接合させるような一括積層でも良い。また、振動板100を個別に金属接合させたものを、さらに積層させる、逐次積層でも良い。
【0052】
また、金−金の同一金属の場合、金属接合の条件として、(1)金属温度が50℃以上250℃以下、(2)圧力が10MPa以上100MPa以下、(3)接合時間が1分以上、という条件下で、金属接合を行うことが望ましい。この場合、積層方式は、一括積層方式又でも逐次積層方式でも良い。
【0053】
また、銅−銅の同一金属の場合、金属接合の条件として、(1)金属温度が80℃以上150℃以下、(2)圧力が0.01MPa以上35MPa以下、(3)接合時間が0.5分以上、という条件下で、金属接合を行うことが望ましい。この場合積層方式は、一括積層方式でも逐次積層方式でも良い。なお、銅−銅での金属接合を行なう場合、その接合面の酸化膜(CuOなどの銅酸化物)を酸処理などで予め除去した後、金属接合させることが望ましい。密着強度が向上するからである。
【0054】
本実施の形態にかかるインクジェットヘッド1においては、圧電体10からなる振動板100とスペーサ200とノズルプレート300とを、互いに金属接合により一体化させたので、使用するインクの特性(酸、アルカリ、溶剤含有など)による制限を受けることが大幅に少なくなる。すなわち、振動板100の接合面に介在する接着剤を溶解させることはなく、また、インク内に接着剤などの成分が混ざることもないために、噴射されたインクなどの変質、変色などを引き起こすこともなくなる。
【0055】
前記酸を主成分とするインクとしては、酢酸、酪酸、塩酸、硝酸などの酸溶液全般を主成分とするインクを用いることができる。
また、アルカリを主成分とするインクとしては、NaOH、KOHなどのアルカリ溶液全般を主成分とするインクを用いることができる。
また、アルコールを主成分とするインクとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類全般を主成分とするインクを用いることができる。
【0056】
さらに、溶剤を主成分とするインクとしては、酢酸エステル類、グリコールエーテル類、ケトン類等溶剤全般を主成分とするインクを用いることができる。インクの主成分である溶剤の具体例として、たとえば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルブロビルアセテート、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、スワゾール、ソルベッソ、エチセロ、ブチセロ、セロアセ、ヘキサン、アノン等が挙げられる。
【0057】
上述したインクには、従来技術のように接着剤などが混ざらないので、本実施の形態にかかるインクジェットヘッド1によれば、所望のタイプのインクを噴射させることができる。
【0058】
以下、本実施の形態にかかるインクジェットヘッド1の各構成について、その製造工程を説明する。
【0059】
(A)圧電体の製造工程
圧電材料としての鉛ジルコニウム・チタネート(以下、「PZT」という)を、以下のような工程により製造する。
(1)原料配合
まず、PZT製造に用いる複数のセラミック材料のモル分率や添加物量を原料の重量比に換算し、秤量調合する。Pb(Zr、Ti)O2を構成するPbO(またはPb3O2)、ZrO2、TiO2をそれぞれ粉末にし、さらに他の添加成分も粉末にして、それらの規定量を調合する。これらの原料粉末の純度は、98%以上であれば良い。事前に原料として用いるものに含有されている不純物の種類、粒径分布は把握しておくことが望ましい。
【0060】
(2)混合粉砕
ボールミルに、(1)原料配合の工程で調合した原料と純水を加え、回転数:150〜650rpm、混合時間:12〜24時間の条件下で混合、粉砕する。混合粉砕の工程では、調合した原料及び純水が均一に混合され、粉砕されるように行なう。不均一であると、仮焼成時の反応性や最終製品における圧電特性に大きな影響を与える。
【0061】
(3)仮焼成
(2)混合粉砕の工程で混合、粉砕された原料を、温度80〜150℃、時間30〜240分程度で乾燥させ、予め余分な水分を取り除いた後、温度800〜900℃、時間30〜60分程度で仮焼成を行う。仮焼成では、粉体の状態で予め固相反応させることができる。
(4)混合粉砕
ボールミルに(3)仮焼成の工程において仮焼成した原料と純水を加えて、回転数:150〜650rpm、混合時間:12〜36時間、の条件下で混合、粉砕する。
【0062】
(5)バインダー配合
(4)混合粉砕の工程で得た混合物にバインダー(結合剤)を均一に加え、成形の前段階とする。
前記バインダーとしては、アクリル系バインダーや、PVA、PVB等を用いることができる。
前記バインダーの重量比は、0.5%以下にすることが良い。
重量比が0.5%を越えると、成形を容易にし、機械的な強度を得ることができるが、電気的特性や圧電性が低下する。また、酸化物の還元が促進されやすくなるからである。
【0063】
(6)成形
粒径が0.05〜10μmの原料粉末を成形して、所定形状の成形体とした。
(7)焼成
前記(6)にて得た成形体を、温度:900〜1300℃、保持時間:30分〜3時間、の条件下で焼成する。
(8)研磨、切断、表面仕上げ、焼成を終えた圧電材料を所定の寸法にするために、研磨加工、切断加工、表面仕上げ加工を行なう。
【0064】
(9)電極焼付
分極処理や圧電体として使用するために電極を形成する工程である。その一例として、銀ペーストを圧電材料に塗布し、500〜800℃で焼き付ける方法が挙げられる。それ以外にも無電解メッキによる電極作成法、真空蒸着法、スパッタによって電極を形成してもよい。銀以外にも金、ニッケル、銅、チタン、亜鉛、アルミニウム等の金属を単層もしくは2層以上の複数層で形成することができる。その電極の厚さは、0.1〜5μmが望ましい。その理由は、厚さが0.1μm未満では、抵抗が高く、分極しにくいからであり、一方、厚さが5μmを超えると、不経済であるからである。
【0065】
(10)分極処理
焼結されたままのPZTなどの圧電材料は、等方的であり圧電性をもたないので、これに圧電性を付与させるために、圧電材料のもつ抗電界以上の直流電界を印加して、自発分極の向きを揃え極性を与える分極処理を行う。例えば、80〜150℃前後の絶縁油の中で、1〜5kv/分の直流電界を印加しつつ、数十分間保持しながら分極を施す。この分極工程を経ることにより、圧電材料が圧電性を有する圧電体となる。本実施の形態では、圧電体の分極方向は、電界方向に対して垂直な方向とする(シェアモード)。
【0066】
(B)振動板の製造工程
以下、図7(a)〜図7(d)を参照し、振動板100の製造工程について説明する。
【0067】
(1)板状体の加工
前述した(A)圧電体の製造工程で製造した圧電体材料としてのPZTを、厚さ80〜90μmの板状に加工し、さらに、その板状体を所定の大きさ、例えば、5mm×7mmに切断して圧電体(例えば、圧電素子板)10とした。圧電体10をドリル等の加工具を用いて穴加工し、開口径が1mmのインク供給口12を形成する(図7(a)参照)。その後、圧電体10の表面を研磨して平滑化した。研磨の一例として、粗研磨(粒子名:GC#4000)、鏡面研磨(コロイダルシリカ)の2段階の研磨を行い、圧電体10の厚みが均一となるように平滑化した。それにより、圧電体10の厚みを70μm、その表面の平均粗度(Ra:JIS B 0601、2001年度)を0.1μm以下にした。
【0068】
(2)導体層形成
前記(1)板状体の加工の工程により作成された圧電体10の全面に、ドライフィルムレジスト層(旭化成エレクトロニクス(株)社製 製品名:SPG−152)を形成した。このレジスト層は、ドライフィルムを用いないで、レジスト液を塗布することによって形成してもよい。前記圧電体10に電界を形成するための電圧印加電極14およびその電極を外部に接続するための給電部16を含む導電層パターン18が描画されたマスクを、該ドライフィルムレジスト層上に載置して、露光量:80mj/cm2で露光し、その後、ナトリウムなどが含有されたアルカリ水溶液で現像することによって、圧電体10上に、マスクパターンに相当するレジスト非形成部を有するレジスト層を形成した。
【0069】
前記レジスト層のレジスト非形成部に、蒸着、スパッタ等の物理的な方法により、チタン層を形成し、更に、そのチタン層上に金層を形成することによって、2層構成の導電層パターン18を圧電体10の表面および裏面に形成した(図7(b)参照)。前記導電層パターン18をスパッタにより形成する場合には、例えば、スパッタ装置(芝浦製作所製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間:18分の条件下でスパッタ処理を施し、厚みが0.03〜0.06μmのチタン層を形成する。
【0070】
そして、そのチタン層上には、同じスパッタ装置を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間5分の条件下で、厚みが0.05〜0.3μmの金層を形成して、チタン−タンタル−金の3層構成の導電層パターン18を形成する。その後、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、レジスト層およびレジスト層表面の金属層をリフトオフ法により剥離、除去させることによって、圧電体10の両面に、電圧印加用電極14と給電部16とからなる導電層パターン18を形成した。
【0071】
(3)絶縁保護膜形成
前記(2)導体層形成の工程で形成した圧電素子板上に、給電部16に対応する部分を予めくり抜いてあるポリイミド樹脂からなる転写シートを、温度150〜250℃、圧力1.5Kg/cm2の条件で熱圧着させ、圧電体10上の導電層パターン18のうち給電部16だけを露出させた状態で絶縁保護膜20を形成した(図7(c)参照)。
【0072】
(4)接合用金属層形成
前記(3)絶縁保護膜形成の工程で、絶縁保護膜20を形成した圧電体10上に、給電部16に対応する部分を型取ったマスクを載置して、給電部16を被覆し、そのような被覆状態で接合用金属層22を形成した(図7(d)参照)。前記マスクは、圧電体10上に接合用金属層22を形成した後に、取り除く。前記給電部16の被覆は、マスクを用いることなく、給電部16をレジスト層で被覆保護した状態で、接合用金属層22を形成し、その後、レジスト層を化学的に取り除くことによって行なうこともできる。
【0073】
接合用金属層22は、例えば、圧電体10上に、給電部16に対応する部分を型取ったマスクを載置した状態で、スパッタ装置(芝浦製作所製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間:18分の条件下でスパッタ処理を施して、ポリイミド層上に、厚みが0.03〜0.06μmのチタン層を形成した。同様に、そのチタン層上に、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間:30分の条件下で、厚み:1.0μmの金層を形成し、その後、給電部16を被覆しているマスクを取り除いた。これによって、給電部16以外の全面にチタン−金の2層構造の接合用金属層22を形成した。
【0074】
(C)スペーサ200の製造工程
以下、図8(a)〜図8(c)を参照し、スペーサ200の製造工程について説明する。
【0075】
(1)マスク層形成
まず、直径4インチ、厚さ70μmのシリコンウェハを用意する(図8(a)参照)。
前記シリコンウェハの片面全体に、ドライフィルムレジスト層(旭化成社製 製品名:SPG−152)を形成する。レジスト層は、ドライフィルムを用いないで、レジスト液を塗布することによって形成してもよい。
【0076】
図8(a)に拡大して示すように、インク流路形成用切溝32、インク流路形成用切溝32の上壁または下壁に対して90度をなす端壁54(流路方向に対して90度をなす、図5(a)参照)とそれに連続する幅狭部分52、幅狭部分52に連結されたインク供給口形成用開口34、および給電部16を収容する給電収容部36が描画されたマスクを作成した。このマスクを該ドライフィルムレジスト層に載置して、露光量:80mj/cm2で露光し、その後、ナトリウムなどが含有されたアルカリ水溶液で現像することによって、シリコン基板30上にインク流路形成用切溝32、インク流路形成用切溝32の上壁または下壁に対して90度をなす端壁54とそれに連続する幅狭部分52、その幅狭部分52に連結されたインク供給口形成用開口34、給電部収容部36およびピース外形に対応したレジスト非形成部を形成した。
【0077】
また、ドライエッチング処理に代えて、硫酸系、塩酸系、HF系のエッチャントを用いて、ウェットエッチング処理を施してもよい。また、ドライエッチング処理とウェットエッチング処理との複合工程によるエッチング処理を施してもよい。エッチング処理終了後に、10%水酸化ナトリウム水溶液によってレジスト層を剥離、除去した。
【0078】
(2)接合用金属層形成
前記(1)の工程で得たシリコン基板30上に、接合用金属層38を形成した(図8(c)参照)。接合用金属層38は、例えば、スパッタ装置(芝浦製作所製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間18分の条件下で、厚み:0.03〜0.06μmのチタン層を形成し、さらに、そのチタン層上に、同様のスパッタ装置を用いて、5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間30分の条件下で、厚み:1.0μmの金層を形成することによって、シリコン基板30の全面にチタン−金の2層構成の金属膜を被覆した。
【0079】
スペーサ200は、図8(a)に拡大して示すように、インク流路形成用切溝32の先端(ノズル穴側)からインク供給口形成用開口34までの距離(キャビティー長)が4.5mm、キャビティ幅600μm、幅狭部分52が形成された位置、即ち、インク流路形成用切溝32の先端から端壁54までの距離が4.2mm、流路方向に垂直な方向における幅狭部分52の幅が、100μmとし、流路方向における幅狭部分52の長さが、300μmであり、インク流路形成用切溝32の流路方向に沿った壁部(上壁または下壁)と幅狭部分の流路方向に沿った壁部(上壁または下壁)と幅狭部分の流路方向に沿った端壁54とを繋ぐ端壁は、流路方向に対して90°の角度をなしている。また、スペーサ200を挟んで対向配置される電極のサイズは、幅:300μm、長さ:3.65mmとした。
【0080】
(D)ノズルプレートの製造工程
以下、図9を参照し、スペーサ200の製造工程について説明する。
(1)マスク層形成
まず、直径4インチ、厚さ70μmのシリコンウェハを準備する。次に、前記シリコンウェハの片面の全体に、ドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニクス(株)社製、製品名:SPG−152)を貼付けてレジスト層を形成する。レジスト層は、ドライフィルムを用いることなく、レジスト液を塗布することによって形成してもよい。
【0081】
次いで、直径が30〜50μmの開口を150μmピッチで描画したマスクを該ドライフィルムレジスト層上に載置して、露光量:80mj/cm2で露光し、その後、ナトリウムなどが含有されたアルカリ水溶液を用いて現像することによって、シリコン上に、マスクパターンに相当するレジスト非形成部を形成した。
【0082】
(2)基材のエッチング
前記(1)の工程で形成したレジスト層を有する板状シリコン90に、フッ素系ガス、ハロゲン系ガスによるドライエッチング処理を施した。前記エッチング処理は、例えば、ドライエッチング装置(東京エレクトロン社製)を用いて、RFパワー:600W、ガス流量:SF6/O2=130/10sccm、エッチング時間:40分の条件で、マスク層のレジスト非形成部に向けて、フッ素系ガスなどのガスを照射することにより、開口径が30〜50μmの孔がピッチ150μmで配列されてなる液滴噴射孔42を形成し、ノズルプレート300とした。
【0083】
また、ドライエッチング処理に代えて、硫酸系、塩酸系、HF系のエッチャント液を用いて、ウェットエッチング処理を施してもよい。また、ドライエッチング処理とウェットエッチング処理との複合工程によるエッチング処理を施してもよい。前記エッチング処理を施したシリコンに、剥離処理を行うことにより、板状シリコン上に形成されてマスク層を除去した。場合によっては、使用するインクの種類に応じて、シリコンの表面に、SiC、SiO2、DLCなどの無機膜や、シリコーン、テフロン(登録商標)などの有機膜で親液、撥液処理を施してもよい。
【0084】
(E)積層工程
(1)振動板とスペーサの積層
前記(B)の(1)〜(4)の工程で作製された振動板100と、前記(C)の(1)〜(3)の工程で作製されたスペーサ200とを交互に積層させる。その際に、最外層は、圧電体(例えば、圧電素子)10からなる振動板100となるように積層させる(
図4参照)。その後、振動板100のインク供給口12とスペーサ200のインク供給口形成用開口34とが合致するように位置合わせを行った後、圧力:10〜100MPa、温度:50〜250℃の条件下で熱圧着し、図6に示すように、1分以上保持して一括積層させることによって、圧電体10からなる複数の振動板100がスペーサ200のインク流路形成用切溝32を挟んで対向配置された形態の積層圧電体400を形成した。
【0085】
(2)ノズルプレート接合
前記(1)で製造した積層圧電体400に、前記(C)で製造したノズルプレート300を以下の(a)〜(c)の工程によって接合させた。
(a)まず、ノズルプレート300の接合面となるべき表面を研磨し、その接合面を平坦にした。その研磨方法としては、コロイダルシリカ、SiC、ダイアモンドなどの研磨剤を用いて行うのが良い。ダイアモンド砥粒(ビューラー社製、製品名:メタダイヤモンドサスペンション)を用いて研磨を行い、その後、コロイダルシリカ(フジミインコーポレード社製、製品名:COMPOL)による仕上げ研磨を行った。
【0086】
(b)前記仕上げ研磨の後、ノズルプレート300の積層圧電体400との接合面以外をレジストなどによりマスキングし、さらに、スパッタ装置(芝浦製作所社製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間:18分の条件下で、スパッタ処理を施して、厚み:0.03〜0.06μmのチタン層を形成し、そのチタン層上に、同様のスパッタ装置を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間:30分の条件下で、厚み:1.0μmの金層を形成した。それにより、ノズルプレート300の接合面全域にわたってチタン−金の2層構造の金属層(図示を省略)を被覆した。
【0087】
(c)前記(b)の工程で金属層が形成されたノズルプレート300の接合面を、振動板100とスペーサ200とを積層させた積層圧電体400に当接させ、位置合わせを行った後、圧力:10〜100MPa、温度:50℃〜250℃の条件で熱圧着し、1分以上程度保持することによって、ノズルプレート300を積層圧電体400に接合させてなるプリンタヘッド積層体を製造した。
【0088】
<給電部16の導電部材:銅板301>
ここで、図10〜図17を参照して、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1の給電部16の構成について、詳細に説明する。図10は、銅板301を給電部16に挿入する様子を示す図である。図11は、図10に示す銅板301を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図である。図10、図11中、銅板301の厚さをH1と表記する。
【0089】
本発明の実施の形態に係る銅板301では、図10中、矢印Pで示すように、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に銅板301を挿入する。そして、図10に示す銅板301を挿入した後、給電部16に接着剤303を充填する。その結果、図11に示すように、給電部16を上方から見ると、銅板301が接着剤303を介して振動板100間の隙間S1に固着される。その後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16は、平坦化した端面で、外部電源との接続素子であるFPC(Flexible Printed Circuit)の接続部に半田付けされる。
【0090】
上述のように、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に銅板301を挿入した後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に制御することができ、外部電源との接続素子(たとえば、FPC)との電気的接続が良好となる。
【0091】
なお、銅板301の寸法は、縦1.1mm、横1.3mm、厚さ70μmmである。縦と横の寸法は、給電部16とほぼ同じである。
【0092】
なお、接着剤303で、銅板301を振動板100に固着したが、これに限らない。銅板の寸法を、隙間S1の寸法と精度よく合わせておけば、銅板301を振動板100の間に挿入して、接着剤303なしに隙間S1内に銅板301を固定することができる。
【0093】
なお、接着剤303は、熱硬化型エポキシ系の接着剤であるが、これに限らない。接着剤303は、銅板301を振動板100に固着すると共に、ホコリや塵などのコンタミネーションが隙間S1に侵入するのを防ぐものであれば良い。
【0094】
<給電部16の導電部材:欠損加工済み銅板501>
ここで、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、銅板301に代わって、図12に示す欠損加工された銅板501(以下、欠損加工済み銅板501という)を、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に挿入しても良い。銅板301に代わって、欠損加工済み銅板501を用いることで、剛性を低くすることができる。そのため、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に制御することができる。更に、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0095】
図12、図13を参照し、圧電体10とスペーサ200との積層体の積層方向に沿った隙間S1に挿入する導電性部材の他の例(1)について説明する。図12は、欠損加工済み銅板501の斜視図である。図13は、図12に示す欠損加工済み銅板501を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図である。また、図12、図13に示す直交座標系の座標軸XYZは、互いに垂直な方向を示し、各図の同一の座標軸は、同一の方向を示している。なお、図12、図13中、欠損加工済み銅板501の厚さをH2と表記する。
【0096】
図12に示すように、欠損加工済み銅板501は、対向する一方の組の一の面503と他の面505とに、深さ20μmの溝を所定の方向に所定間隔で形成してなる。本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、欠損加工済み銅板501の縦方向(図12中、Z軸方向)に沿う複数の縦溝507と、欠損加工済み銅板501の横方向(図12中、X軸方向)に沿う複数の横溝509とを形成する。
【0097】
そして、欠損加工済み銅板501を給電部16の隙間S1へ挿入した後、接着剤303が、縦溝507又は横溝509に沿って対向する一方の組の面503、507の全面に接着剤が行きわたり易くなる。そのため、欠損加工済み銅板501は、接着剤303を介して、振動板100に接着する。
【0098】
さらに、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、欠損加工の分、欠損加工済み銅板501に可撓性を持たせ、かつ剛性を低くすることができる。そのため、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0099】
さらに、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、応力を緩和することができるので、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0100】
さらに、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、縦溝507又は横溝509により区分けされた、欠損加工済み銅板501の一の面503又は他の面505の各部分が、互いに独立して、振動板100と接触する(多点接触)。そのため、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0101】
なお、複数の縦溝507又は複数の横溝509が形成される1組の面503、505とは異なる他方の組の面のうち、一の面511が、後述する給電部16の端面となる。
【0102】
接着剤303は、熱硬化型エポキシ系の接着剤である。接着剤303は、欠損加工済み銅板501を振動板100に固着すると共に、ホコリや塵などのコンタミネーションが、隙間S1に侵入するのを防ぐ。
【0103】
図13に示すように、給電部16を上方(図13中、Z軸に沿う方向)から見ると、欠損加工済み銅板501が、接着剤303を介して振動板100間の隙間S1に固着される。その後、欠損加工済み銅板欠損加工済み銅板501の一の面511を含む給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16は、平坦化した端面で、外部電源との接続素子であるFPCの接続部に半田付けされる。
【0104】
上述のように、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、欠損加工の分、欠損加工済み銅板501に可撓性を持たせ、かつ剛性を低くすることができる。そのため、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に抑えることができるだけでなく、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくすることができる。したがって、給電部16は、外部電源との接続素子(たとえば、FPC)との電気的接続が良好となる。
【0105】
なお、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、欠損加工済み銅板501の欠損加工部分として、縦溝507と横溝509とを設けたが、縦溝507だけでも良い。横溝509を設けておくと、接着剤と一緒に隙間S1に流れこんだ空気の抜けが良くなり、接着剤が全体に行きわたり易くなる。
【0106】
なお、本実施の形態では、複数の縦溝507と複数の横溝509とを設けたが、一つの縦溝507だけでも、欠損加工済み銅板501を隙間S1内で、接着剤303を介して振動板100に固定できれば良い。
【0107】
なお、欠損加工済み銅板501の複数の溝507、509を形成する方法としては、パンチングなど機械加工、マスクでのハーフエッチング、金型を使用した放電加工、リフトオフなど、様々な一般的な金属の加工方法を用いることができる。
【0108】
<給電部16の導電部材:銅箔701>
ここで、図14、図15を参照し、圧電体10とスペーサ200との積層体の積層方向に沿った隙間に挿入する導電性部材の他の例(2)について説明する。図14は、導電性部材の他の例(2)である銅箔701の斜視図である。図15は、図14に示す銅箔701を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図である。図14、図15中、銅箔701の厚さをH3と表記する。
【0109】
本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、外部電源と接続する給電部16において、銅板301に代えて、図14に示す銅箔701を振動板100間の隙間S1に挿入しても良い。そして、図14に示す銅箔701を隙間S1に挿入した後、給電部16に接着剤303を充填する。
【0110】
その結果、図15に示すように、給電部16を上方から見ると、銅箔701が接着剤303を介して振動板100間の隙間S1に固着される。銅箔701の厚さH3は、銅板に比べて薄いため、給電部16を上方から見ると、接着剤303を充填する際に多少湾曲する。その後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16は、平坦化した端面で、外部電源との接続素子であるFPCの接続部に半田付けされる。
【0111】
上述のように、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に銅箔701を挿入した後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に抑えることができ、給電部16に設けられた導電層(銅箔701を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0112】
ここで、図16、図17を参照し、上述した銅板301、欠損加工済み銅板501、及び銅箔701を用いて平坦化した給電部16の平坦化評価の方法及びその結果について説明する。図16は、給電部16の平坦化評価の方法を示すフロー図である。図17は、給電部16の平坦化評価結果を示す図である。なお、少なくとも導電性のフィラーで隙間S1を充填した比較例についても、合わせてその結果を示す。
【0113】
図16に示すように、ステップST1601で、導電性部材を給電部16の隙間S1に挿入する。そして、ステップST1602に遷移する。
【0114】
ステップST1602で、給電部16の隙間S1に接着剤を充填する。そして、ステップST1603に遷移する。
ステップST1603で、接着剤を加熱硬化する。そして、ステップST1604に遷移する。
【0115】
ステップST1604で、給電部16の端面を研磨する。そして、ステップST1605に遷移する。
そして、ステップST1605で、給電部16の端面に、接続素子であるFPCを半田付けする。
【0116】
上述した図16に示すステップにより作成した給電部16について、その平坦化の評価結果を、図17を参照して説明する。図17は給電部16の平坦化評価結果を示す図である。図17では、給電部16の平坦化を評価する指標として、(1)給電部16の端面の表面粗さ(Ra:JIS B 0601 2001年度)を示す段差max、(2)給電部16の端面の静電容量、(3)給電部16のFPCとの接続位置の3つを用いる。そして、その3つの指標を総合的に判断して、給電部16の平坦化を評価する。
【0117】
なお、図17では、給電部16の隙間S1に挿入する導体及び接着剤の組み合わせとして、(1)欠損加工済み銅板501及び熱硬化型エポキシ系接着剤、(2)銅板301及び熱硬化型エポキシ系接着剤、並びに(3)銅箔701及び熱硬化型エポキシ系接着剤を、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1の評価対象とする。以下、説明のため、(1)欠損加工済み銅板501及び熱硬化型エポキシ系接着剤、(2)銅板301及び熱硬化型エポキシ系接着剤、並びに(3)銅箔701及び熱硬化型エポキシ系接着剤を、それぞれ、評価対象(1)、評価対象(2)、評価対象(3)と記載する。
【0118】
なお、図17では、比較例として、(4)Agフィラー及び導電性接着剤(溶剤)、(5)Agフィラー及び導電性接着剤(無溶剤)、並びに(6)Agフィラーと銅箔、及び導電性接着剤(無溶剤)、の各組み合わせについて、その評価結果を合わせて示す。以下、説明のため、(4)Agフィラー及び導電性接着剤(溶剤)、(5)Agフィラー及び導電性接着剤(無溶剤)、並びに(6)Agフィラーと銅箔、及び導電性接着剤(無溶剤)、の各組み合わせを、比較例(4)、比較例(5)、比較例(6)と記載する。
【0119】
なお、図17中、(2)給電部16の端面の静電容量、(3)給電部16のFPCとの接続位置の指標について、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用可能な場合をOKと表記し、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用不可能な場合には、NGと表記する。
【0120】
なお、図17中、給電部16の平坦化評価は、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用可能な場合をOKと表記し、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用不可能な場合には、NGと表記する。
【0121】
ここで、図17に示すように、評価対象(1)〜(3)のそれぞれについて、給電部16の平坦化を評価する指標(1)である段差maxは、1.77、1.91、1.88である。つまり、評価対象(1)〜(3)の段差maxは、所定の値2.00以下に抑えられている。言い換えると、評価対象(1)〜(3)では、給電部16の端面の表面粗さを、所定の値以下に抑えられている。
【0122】
一方、比較例(4)〜(6)のそれぞれについて、給電部16の平坦化を評価する指標(1)である段差maxは、所定の値2.00より大きい、4.89、2.55、2.85である。そのため、比較例(4)〜(6)では、給電部16の端面の表面粗さを、所定の値以下に抑えることができない。
【符号の説明】
【0123】
10 圧電体
16 給電部
100 振動板
200 スペーサ
300 ノズルプレート
301 銅板
303 接着剤
400 積層圧電体
501 欠損加工済み銅板
507 縦溝
509 横溝
701 銅箔
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに関し、特にインクジェットヘッドの給電部の平坦化に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを噴射するタイプの印刷機、いわゆるインクジェットプリンタは様々な方式が提案されている。その一つとして、圧電素子に電圧を加えるとその圧電素子が伸縮し、それに合わせて振動板が振動することによって、ノズルからインク滴が追い出されるという構造を有するピエゾ(圧電素子)方式などがある。このピエゾ方式のインクジェットヘッドとして、図18(a)に示すインクジェットヘッド1800は、電圧Vを加えると伸縮する圧電素子1801からなる振動板1802を、基板1803に凹設したインク室1804に対して対面又は側面に接合する構成である。そして、図18(b)に示すように、インクジェットヘッド1800は、インク供給路1805から供給されたインクに振動板1802の振動を伝え、インク噴射口1806からインク滴1807を噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえば、特許文献1で開示されているような、従来例のインクジェットヘッドでは、外部電源と接続する給電部に、PZT(ペブロスカイト型の結晶構造をもつ酸化物強誘電体)からなる圧電素子とスペーサとの積層体の積層方向に沿って隙間が存在する。そのため、給電部と接続し、外部装置とインクジェットヘッドとを電気的に接続する接続素子を設けると、給電部と接続素子との接続性は良好ではない。さらに、給電部に設けられた導電層に対して、セラミック材料であるPZTにクラックが生じやすい。
【0005】
本発明の目的は、インクジェットヘッドの給電部に導電性部材を設けて平坦化することで、当該給電部の平坦化した部分を外部装置と接続する接続素子を介して、外部装置に安定して接続するとともに、インクジェットヘッドの圧電体にクラックを生じにくくすることができる、インクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態として、インクジェットヘッドは、インク吐出部を有し、インク供給路を形成する開口を有するスペーサ、及び圧電体からなる振動板が交互に積層された積層圧電体と、前記インク吐出部に配設されたノズルプレートと、を有するインクジェットヘッドであって、前記積層圧電体は、更に、前記積層圧電体間に設けられた隙間に挿入される導電性部材により形成された、前記圧電体へ給電するための給電部を備え、前記給電部の一部では、前記導電性部材及び前記積層圧電体が平坦化され、当該平坦化された給電部の一部から、接続素子を介して外部装置と接続する。
【0007】
上記インクジェットヘッドでは、前記導電性部材は、導電性の板部材であっても良い。また、前記導電性の板部材は、溝加工により可撓性を備える金属板であって、前記金属板の対向する一組の面に、少なくとも一の方向に沿って延びる一又は複数の溝が設けられていても良い。さらには、前記金属板の対向する一組の面に設けられた複数の溝は、前記一の方向に沿って延びる溝と、前記一の方向と異なる方向に延びる溝とを有する。また、前記導電性の板は銅で形成されていても良い。
【0008】
上記インクジェットヘッドでは、前記導電性部材は、導電性の箔であっても良い。また、導電性の箔は銅で形成されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインクジェットヘッドによれば、インクジェットヘッドの給電部に、導電性部材を設けて平坦化し、当該給電部の平坦化した部分を外部装置と接続する接続素子を介して、外部装置に安定して接続することができると共に、インクジェットヘッドの圧電体にクラックを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1の要部分解斜視図。
【図2】図1のインクジェットヘッド1の要部分解断面図。
【図3】図1のインクジェットヘッド1の要部断面図。
【図4】図1のインクジェットヘッド1を構成する単位積層体を示す斜視図。
【図5】(a)図1のインクジェットヘッド1を構成するスペーサ200の概略図、(b)図1のインクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Aの概略図、(c)図1のインクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Bの概略図。
【図6】図4に示す単位積層体を多数積層した状態を示す概略的斜視図。
【図7】(a)〜(d)は、図1のインクジェットヘッド1の振動板100を製造工程の一部を示す図。
【図8】(a)〜(c)は、図1のインクジェットヘッド1のスペーサ200の製造工程の一部を示す図。
【図9】図1のインクジェットヘッド1のノズルプレートを示す概略図。
【図10】本発明の実施の形態に係る銅板301を給電部16に挿入する様子を示す図。
【図11】図10に示す銅板301を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図。
【図12】本発明の実施の形態に係る欠損加工済み銅板501の斜視図。
【図13】図12に示す欠損加工済み銅板501を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図。
【図14】本発明の実施の形態に係る銅箔701の斜視図。
【図15】図14に示す銅箔701を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図。
【図16】給電部16の平坦化評価の方法を示すフロー図。
【図17】給電部16の平坦化評価結果を示す図。
【図18】(a)従来のインクジェットヘッドの原理を示す概略図、(b)(a)に示す従来のインクジェットヘッドの作用を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1の要部について説明する。
図1に示すように、圧電体10は板状に成形される。圧電体10は、板状に成形されたスペーサ200の両方の表面に接した状態で、スペーサ200に設けたインク流路形成用切溝32を塞ぐように配置され、スペーサ200に互いに接合される。すなわち、スペーサ200のインク流路形成用切溝32の上壁および底壁と、各圧電体10の対向する表面とで囲まれた領域によってインク流路33が形成される(図3参照)。
【0013】
図2及び図3に示すように、各圧電体10の対向する表面には、インク流路33に沿った位置に電圧印加用の一方の電極14Aが設けられると共に、各圧電体10の反対側の表面にも電圧印加用の他方の電極14Bが設けられる。電圧印加用の電極14A、14Bは、インク流路33の幅の概ね半分の幅を有し、インク流路33に沿って配設されている。この構成により、圧電体10の変形効率が良くなる。
【0014】
次に、図4を参照して、インクジェットヘッド1を構成する単位積層体について説明する。図4に示すように、電圧印加用の電極14A、14Bは、インク流路33に沿って延設された導電路(導電層パターン)18(を介して、例えば、圧電体10の上端部に設けた給電部16に電気的に接続される。導体路18は、電極14A(又は14B)からインク流路33に沿って延設されている。なお、給電部16は、圧電体10の上端部以外に設けても良い。
【0015】
電圧印加用の電極14A、14Bへの電圧印加により、圧電体10が変形し、インク流路33の容積が変化する。インク流路33の容積が小さくなると、インク流路33内にあるインクが吐出される。また、インク流路33の容積が大きくなると、インクタンク(図示を省略)から新たなインクが供給される。
【0016】
なお、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1は、圧電体10の駆動モードとして、d33モード、d31モード、d15モードのいずれでも駆動させることが可能である。そのため、インク等の液滴の噴射が阻害されない。また、液滴の噴射速度やサイズ等のバラツキが生じることもない。また、圧電体10の駆動モードとして、d33モード、d31モード、d15モードのうち、2つ以上のモードを混合させて用いることもできる。
【0017】
図4に示すように、圧電体10は、スペーサ200のインク供給路を形成するためのインク供給口形成用開口34に連通する、開口を有している。圧電体10がスペーサ200を挟持した状態で積層された際に、上述した開口がインク供給口12を形成する。さらに、圧電体10には、電圧印加用電極14A、14Bや、給電部16等の導電路18のうち、給電部(例えば、給電パッド)16を除いた部分を被覆する絶縁保護膜20が設けられる。また、後述するようなスペーサ200やノズルプレート300との接合部に対応する部分には、接合用金属層22が設けられる。
【0018】
絶縁保護膜20は、Si3N4、SiO2等の無機膜や、エポキシ系樹脂やPIなどの有機膜から形成され、スパッタリング、CVD、塗布等の方法で圧電体10上に設けられる。絶縁保護膜20の厚さは、0.05〜5μm程度であれば良い。絶縁保護膜20の厚さが、0.05μm未満では、十分な絶縁性を確保できない。一方、絶縁保護膜20の厚さが5μmを超えると、無機膜では膜応力が増大し、クラックが生じやすくなる。また、絶縁保護膜20の厚さが5μmを超えると、有機膜では、圧電体10の変位が吸収され、インクに圧力を十分に伝達できない。
【0019】
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、圧電体10からなる一対の振動板100によって挟持されるスペーサ200は、インク流路形成用切溝32と、インク流路形成用切溝32に連続するインク供給口形成用開口34とを有する板状の部材である。
【0020】
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、振動板100は、PZT(Pb(Zr、Ti)O3)を主成分とする圧電セラミックから形成されている。振動板100に適用できる圧電セラミックの条件としては、(1)圧電定数、及び電気機械結合係数が大きく、(2)キュリー点が高く、(3)誘電率が低く、(4)誘電的・機械的な損失が小さい材料であれば良い。例えば、Pb(Zr、Ti)O3セラミックとして、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3、Pb(Y1/3Nb1/3)O3−PbZrO3−PbTiO3、Pb(Mn1/3Nb1/3)O3−PbZrO3−PbTiO3、Pb(Co1/3Nb1/3)O3−PbZrO3−PbTiO3などが挙げられる。これら以外にも、例えば、Sr(K0.25・Nb0.75)O3やSr(W0.25・Nb0.75)O3などの圧電材料をPZTに固溶させた組成でも良い。
【0021】
次に、図5(a)〜図5(c)を参照して、スペーサ200の形成例について説明する。図5(a)は、インクジェットヘッド1を構成するスペーサ200の概略図である。図5(b)は、インクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Aの概略図である。図5(c)は、インクジェットヘッド1を構成するスペーサ200Bの概略図である。
【0022】
図5(a)に示すように、スペーサ200は、積層された際にインク流路33の一部にオリフィス50が形成されるように、インク流路形成用切溝32の一部が流路方向に垂直な方向において幅狭な幅狭部分52として形成される。
【0023】
図5(b)に示すように、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1において、図5(a)に示すスペーサ200に代わるスペーサ200Aでは、幅狭部分52をインク供給口形成用開口34に連結させることで、インク流路33の長さが幅狭部分52の長さ分だけ小さくなる。さらに、インク流路33の流路断面積がインク供給口形成用開口34付近で幅狭部分52の分だけ減少するように形成されている。そのため、圧電体10での物理的に発生した力が、オリフィス50で形成された切溝内の幅狭部分に集中し、インクに伝播した圧電体の圧力が供給孔へ逃げにくくなる。したがって、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、より効率よく、インクを飛翔させることができる。さらに、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、低い電圧であってもインクを飛翔させることができ、より高い粘度のインクを飛翔させることができる。
【0024】
図5(c)に示すように、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1において、図5(a)に示すスペーサ200に代わるスペーサ200Bは、幅狭部分52を、インク供給口形成用開口34から所定の距離だけ離れた位置に配設すると、インク流路33の長さが、幅狭部分52の長さにインク供給口形成用開口34から幅狭部分までの離間距離を加えた分だけ小さくなると共に、流路断面積も上述した位置で幅狭部分52の分だけ減少するように形成されている。そのため、圧電体10での物理的に発生した力が、オリフィス50で形成された切溝内の幅狭部分に集中し、インクに伝播した圧電体の圧力が供給孔へ逃げにくくなる。したがって、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、より効率よく、インクを飛翔させることができる。さらに、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、低い電圧であってもインクを飛翔させることができ、より高い粘度のインクを飛翔させることができる。
【0025】
さらに、前記インク流路33を形成するインク流路形成用切溝32の幅(キャビティー幅)は、300μmから1800μmの範囲であることが望ましい。キャビティ幅が300μm未満であれば、圧電体10の変位量が小さくなりやすく、飛翔速度が低下することや高粘度の液体を飛翔させにくくなる場合がある。キャビティ幅が1800μmを越えると、剛性が不足して、圧電体10の変位量に見合うだけの圧力を液体にかけることができない。そのため、圧電体10の変位する力が液体に負けているといった現象が起きると推定される。
【0026】
その一方、オリフィス50を形成するような幅狭部分52の幅の比率は、キャビティ幅に対して、10%から75%の範囲であることが望ましい。オリフィス50の比率が10%未満であると、インク流路33の幅が狭くなり、インクの流通を阻害してしまうからである。その結果、インク噴射の飛翔性などに影響を与えてしまう。逆に、オリフィス50の比率が75%を越えると、オリフィス50を形成する効果が相殺してしまい、その結果として、飛翔性の向上やインクの噴射性の向上が行えなくなる。
【0027】
スペーサ200、200A、及び200Bは、絶縁性樹脂、金属、セラミックス、無機材料等を用いて板状であれば良い。これらの材料は、単体で用いても良い。また、2種類以上の材料を複合化した複合体で用いても良い。
【0028】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である絶縁性樹脂として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂、さらにこれらの複合樹脂等を用いることができる。
【0029】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である熱可塑性樹脂として、例えば、ABS樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等を用いることができる。
【0030】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0031】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料である金属として、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、SUS、コバール、42アロイ、鉄、チタン、クロム等の単体、又はそれらの合金を用いることができる。
【0032】
なお、スペーサ200、200A、及び200Bの材料であるセラミックスとして、例えば、ガラスセラミックや、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、炭化珪素等を用いることができる。無機材料としては、例えば、Siや、SiO2、炭素(カーバイト等を含む)等が含有された材料を用いることができる。
【0033】
ここで、スペーサ200、200A、及び200Bに用いる材料に要求される基本的な特性としては、(1)少なくともインク流路形成用切溝32及びインク供給口形成用開口34が形成され得ること、(2)平坦性に優れること、(3)スペーサ200、200A、及び200Bに用いる材料の表層に金属層が形成され得ること、である。
【0034】
上述した基本特性を有する材料のうち、スペーサ200、200A、及び200Bには、特に、SiまたはSiO2を用いることができる。SiまたはSiO2は、基材の平坦度を保つことが容易であり、また、SiまたはSiO2は、圧電体10との熱膨張係数の差が小さいことから、変形などの不具合が生じない。更に、SiまたはSiO2は、酸化被膜などの保護膜を容易に形成することができ、しかも、エッチング等による外形加工性にも優れる。
【0035】
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、スペーサ200、200A、及び200Bは、上述した基本特性を有する材料から形成されることによって、その両面に接合された2つの振動板100で発生した振動を、スペーサ200、200A、及び200Bに形成されたインク流路33内の液体に効果的に伝えることができる。
【0036】
<振動板100とスペーサ200との接合:接着剤>
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、振動板100とスペーサ200との接合には、半田、絶縁性接着剤、金属含有接着剤などを用いることができる。接着剤の形成方法としては、印刷、塗布、フィルムの貼り付け、スプレーによる噴射などが挙げられる。
【0037】
接着剤の厚みは、0.5μm以上であることが望ましい。接着剤の厚みが0.5μm未満では、接着剤の厚みの均一性が確保されず、振動板とスペーサとの接合の不具合が生じてしまう。また、接着剤の厚みは10μm以下であることが望ましい。接着剤の厚みが10μmを越えると、圧電体10の変位が吸収され、インクに充分に圧力が伝達されないために、インクの飛翔性を阻害する。
【0038】
なお、振動板100とスペーサ200との接合に用いる接着材として、半田を用いる場合、Sn/Pb、Sn/Ag、Sn/Sb等からなる組成の接着材を用いることができる。
【0039】
なお、振動板100とスペーサ200との接合に用いる接着材として、絶縁性接着剤を用いる場合、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等)、熱可塑性樹脂(ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等)、感光性樹脂、紫外線硬化樹脂などを用いることができる。絶縁性接着剤とは、接着剤に導電性がないものを示すのである。また、必要に応じて、絶縁性接着剤に、無機などの粒子が配合されていてもよい。
【0040】
なお、振動板100とスペーサ200との接合に用いる接着材として、金属含有接着剤を用いる場合、Cu、Ag、Auなどの金属粒子が1種又は2種以上含有したものが含まれる。その一例として、0.03μmのAg粒子が含有したものにエポキシ樹脂などの接着剤を配合したものである。金属含有接着剤は、導電性接着剤ともいう。
【0041】
<振動板100とスペーサ200との接合:金属接合>
なお、振動板100とスペーサ200との接合には、振動板100及びスペーサ200のうち、少なくとも一部に金属層を形成し、その金属層により接合を行う金属接合により行うこともできる。以下、振動板100とスペーサ200との接合を金属接合によって行う場合について、説明する。
【0042】
振動板100とスペーサ200との接合面には、接合用金属層22、38がそれぞれ形成される。また、振動板100又はスペーサ200と、ノズルプレート300との接合面にも、接合用金属層22が形成されている。接合用金属層22は、全面に形成してもよいし、接合が必要な部分にのみ形成してもよい。
【0043】
振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層を形成する方法としては、電解めっき、無電解めっき等の化学的な形成方法や、スパッタ、蒸着、CVD等の物理的な形成方法を用いることが望ましく、複数層の金属層を形成する場合には、それらを同一の形成方法で形成してもよいし、異なる形成方法で形成してもよい。
【0044】
振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みは、0.01μm以上であることが望ましい。振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みが0.01μm未満であると、金属皮膜の均一性が確保されにくくなる。また、金属接合を行うと、接合が不十分になる。そのため、振動板100とスペーサ200との密着性が得られない。すなわち、圧電体10からなる振動板100、スペーサ200及びノズルプレート300の接合部に金属膜を被覆し、それらの接合部位を加熱および加圧することによって互いに金属接合させ、互いに密着させるように構成されている。
【0045】
なお、振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層としては、金、銅、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウム等の金属を、単層又は2層以上の複数層で形成する。なお、振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層としては、半田やロウ付け材(銀ロウ、金ロウ等)の合金で形成しても良い。これらの金属は、比較的低温でも金属同士の接合を行うことができ、その密着性も優れている。
【0046】
なお、上述した金属層は、スペーサ200だけでなく、圧電体10からなる振動板100およびノズルプレート300においても、同様に、それらの表面のうち、少なくとも互いに接合される表面に形成されている。前記圧電体10からなる振動板100、スペーサ200およびノズルプレート300の接合面を被覆する金属膜は、同一金属により形成されると良い。例えば、金及び銅のいずれか一方を用いることができる。その理由は、それぞれの接合面での熱膨張係数が同じになるために、接合面付近での熱膨張などの応力を起因とする剥離や剥がれを阻止できるからである。
【0047】
なお、振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みとしては、0.01μm〜3μm程度であることが望ましい。振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みが0.01μm未満では良好な接合ができない。振動板100とスペーサ200との接合面に形成する金属層の厚みが3μmを越えると、金属接合する際、形成した金属膜内で破断、クラック等が発生しやすくなり、接合力が低下する。
【0048】
また、接合する金属表面を予め洗浄するのが望ましい。なぜなら、金属接合前の金属表面に酸化膜や窒化膜などが形成されている場合、及び金属接合前の金属表面に油脂成分などが付着して汚染されている場合があるからである。汚染された状態で金属接合すると密着性が低下する。そのため、金属接合前に、金属表面から酸化膜や窒化膜などを取り除くことが必要となる。
【0049】
また、金属接合の条件として、(1)金属温度が50℃以上300℃以下、(2)圧力が0.01MPa以上100MPa以下、(3)接合時間が0.5分以上、という条件で金属接合するのが望ましい。金属接合の条件(1)について、金属温度が50℃未満の温度では、金属膜が活性化されないために、強固な金属接合できず、逆に温度が300℃を越えると、金属膜の酸化が進み、接合強度を低下させてしまう。金属温度が50℃以上300℃以下であれば、金属−金属間の接合を行うことができ、接合強度も安定させることができる。
【0050】
金属接合の条件(2)として、圧力が0.01MPa未満であると金属接合できず、圧力が100MPaを越えると、接合部位に形成された金属膜の破壊を引き起こし、金属接合の強度を低下させてしまう。金属接合の条件(3)として、接合時間が0.5分未満では、短すぎて均熱化が進まないため、安定した金属接合を行なうことができない。
【0051】
また、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、前述した温度や圧力よりも小さい温度、圧力条件によって仮接合をした後、本接合を行なっても良い。また、3層以上の振動板100を積層させる場合、それらを一括して積層した後、接合させるような一括積層でも良い。また、振動板100を個別に金属接合させたものを、さらに積層させる、逐次積層でも良い。
【0052】
また、金−金の同一金属の場合、金属接合の条件として、(1)金属温度が50℃以上250℃以下、(2)圧力が10MPa以上100MPa以下、(3)接合時間が1分以上、という条件下で、金属接合を行うことが望ましい。この場合、積層方式は、一括積層方式又でも逐次積層方式でも良い。
【0053】
また、銅−銅の同一金属の場合、金属接合の条件として、(1)金属温度が80℃以上150℃以下、(2)圧力が0.01MPa以上35MPa以下、(3)接合時間が0.5分以上、という条件下で、金属接合を行うことが望ましい。この場合積層方式は、一括積層方式でも逐次積層方式でも良い。なお、銅−銅での金属接合を行なう場合、その接合面の酸化膜(CuOなどの銅酸化物)を酸処理などで予め除去した後、金属接合させることが望ましい。密着強度が向上するからである。
【0054】
本実施の形態にかかるインクジェットヘッド1においては、圧電体10からなる振動板100とスペーサ200とノズルプレート300とを、互いに金属接合により一体化させたので、使用するインクの特性(酸、アルカリ、溶剤含有など)による制限を受けることが大幅に少なくなる。すなわち、振動板100の接合面に介在する接着剤を溶解させることはなく、また、インク内に接着剤などの成分が混ざることもないために、噴射されたインクなどの変質、変色などを引き起こすこともなくなる。
【0055】
前記酸を主成分とするインクとしては、酢酸、酪酸、塩酸、硝酸などの酸溶液全般を主成分とするインクを用いることができる。
また、アルカリを主成分とするインクとしては、NaOH、KOHなどのアルカリ溶液全般を主成分とするインクを用いることができる。
また、アルコールを主成分とするインクとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類全般を主成分とするインクを用いることができる。
【0056】
さらに、溶剤を主成分とするインクとしては、酢酸エステル類、グリコールエーテル類、ケトン類等溶剤全般を主成分とするインクを用いることができる。インクの主成分である溶剤の具体例として、たとえば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルブロビルアセテート、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、スワゾール、ソルベッソ、エチセロ、ブチセロ、セロアセ、ヘキサン、アノン等が挙げられる。
【0057】
上述したインクには、従来技術のように接着剤などが混ざらないので、本実施の形態にかかるインクジェットヘッド1によれば、所望のタイプのインクを噴射させることができる。
【0058】
以下、本実施の形態にかかるインクジェットヘッド1の各構成について、その製造工程を説明する。
【0059】
(A)圧電体の製造工程
圧電材料としての鉛ジルコニウム・チタネート(以下、「PZT」という)を、以下のような工程により製造する。
(1)原料配合
まず、PZT製造に用いる複数のセラミック材料のモル分率や添加物量を原料の重量比に換算し、秤量調合する。Pb(Zr、Ti)O2を構成するPbO(またはPb3O2)、ZrO2、TiO2をそれぞれ粉末にし、さらに他の添加成分も粉末にして、それらの規定量を調合する。これらの原料粉末の純度は、98%以上であれば良い。事前に原料として用いるものに含有されている不純物の種類、粒径分布は把握しておくことが望ましい。
【0060】
(2)混合粉砕
ボールミルに、(1)原料配合の工程で調合した原料と純水を加え、回転数:150〜650rpm、混合時間:12〜24時間の条件下で混合、粉砕する。混合粉砕の工程では、調合した原料及び純水が均一に混合され、粉砕されるように行なう。不均一であると、仮焼成時の反応性や最終製品における圧電特性に大きな影響を与える。
【0061】
(3)仮焼成
(2)混合粉砕の工程で混合、粉砕された原料を、温度80〜150℃、時間30〜240分程度で乾燥させ、予め余分な水分を取り除いた後、温度800〜900℃、時間30〜60分程度で仮焼成を行う。仮焼成では、粉体の状態で予め固相反応させることができる。
(4)混合粉砕
ボールミルに(3)仮焼成の工程において仮焼成した原料と純水を加えて、回転数:150〜650rpm、混合時間:12〜36時間、の条件下で混合、粉砕する。
【0062】
(5)バインダー配合
(4)混合粉砕の工程で得た混合物にバインダー(結合剤)を均一に加え、成形の前段階とする。
前記バインダーとしては、アクリル系バインダーや、PVA、PVB等を用いることができる。
前記バインダーの重量比は、0.5%以下にすることが良い。
重量比が0.5%を越えると、成形を容易にし、機械的な強度を得ることができるが、電気的特性や圧電性が低下する。また、酸化物の還元が促進されやすくなるからである。
【0063】
(6)成形
粒径が0.05〜10μmの原料粉末を成形して、所定形状の成形体とした。
(7)焼成
前記(6)にて得た成形体を、温度:900〜1300℃、保持時間:30分〜3時間、の条件下で焼成する。
(8)研磨、切断、表面仕上げ、焼成を終えた圧電材料を所定の寸法にするために、研磨加工、切断加工、表面仕上げ加工を行なう。
【0064】
(9)電極焼付
分極処理や圧電体として使用するために電極を形成する工程である。その一例として、銀ペーストを圧電材料に塗布し、500〜800℃で焼き付ける方法が挙げられる。それ以外にも無電解メッキによる電極作成法、真空蒸着法、スパッタによって電極を形成してもよい。銀以外にも金、ニッケル、銅、チタン、亜鉛、アルミニウム等の金属を単層もしくは2層以上の複数層で形成することができる。その電極の厚さは、0.1〜5μmが望ましい。その理由は、厚さが0.1μm未満では、抵抗が高く、分極しにくいからであり、一方、厚さが5μmを超えると、不経済であるからである。
【0065】
(10)分極処理
焼結されたままのPZTなどの圧電材料は、等方的であり圧電性をもたないので、これに圧電性を付与させるために、圧電材料のもつ抗電界以上の直流電界を印加して、自発分極の向きを揃え極性を与える分極処理を行う。例えば、80〜150℃前後の絶縁油の中で、1〜5kv/分の直流電界を印加しつつ、数十分間保持しながら分極を施す。この分極工程を経ることにより、圧電材料が圧電性を有する圧電体となる。本実施の形態では、圧電体の分極方向は、電界方向に対して垂直な方向とする(シェアモード)。
【0066】
(B)振動板の製造工程
以下、図7(a)〜図7(d)を参照し、振動板100の製造工程について説明する。
【0067】
(1)板状体の加工
前述した(A)圧電体の製造工程で製造した圧電体材料としてのPZTを、厚さ80〜90μmの板状に加工し、さらに、その板状体を所定の大きさ、例えば、5mm×7mmに切断して圧電体(例えば、圧電素子板)10とした。圧電体10をドリル等の加工具を用いて穴加工し、開口径が1mmのインク供給口12を形成する(図7(a)参照)。その後、圧電体10の表面を研磨して平滑化した。研磨の一例として、粗研磨(粒子名:GC#4000)、鏡面研磨(コロイダルシリカ)の2段階の研磨を行い、圧電体10の厚みが均一となるように平滑化した。それにより、圧電体10の厚みを70μm、その表面の平均粗度(Ra:JIS B 0601、2001年度)を0.1μm以下にした。
【0068】
(2)導体層形成
前記(1)板状体の加工の工程により作成された圧電体10の全面に、ドライフィルムレジスト層(旭化成エレクトロニクス(株)社製 製品名:SPG−152)を形成した。このレジスト層は、ドライフィルムを用いないで、レジスト液を塗布することによって形成してもよい。前記圧電体10に電界を形成するための電圧印加電極14およびその電極を外部に接続するための給電部16を含む導電層パターン18が描画されたマスクを、該ドライフィルムレジスト層上に載置して、露光量:80mj/cm2で露光し、その後、ナトリウムなどが含有されたアルカリ水溶液で現像することによって、圧電体10上に、マスクパターンに相当するレジスト非形成部を有するレジスト層を形成した。
【0069】
前記レジスト層のレジスト非形成部に、蒸着、スパッタ等の物理的な方法により、チタン層を形成し、更に、そのチタン層上に金層を形成することによって、2層構成の導電層パターン18を圧電体10の表面および裏面に形成した(図7(b)参照)。前記導電層パターン18をスパッタにより形成する場合には、例えば、スパッタ装置(芝浦製作所製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間:18分の条件下でスパッタ処理を施し、厚みが0.03〜0.06μmのチタン層を形成する。
【0070】
そして、そのチタン層上には、同じスパッタ装置を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間5分の条件下で、厚みが0.05〜0.3μmの金層を形成して、チタン−タンタル−金の3層構成の導電層パターン18を形成する。その後、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、レジスト層およびレジスト層表面の金属層をリフトオフ法により剥離、除去させることによって、圧電体10の両面に、電圧印加用電極14と給電部16とからなる導電層パターン18を形成した。
【0071】
(3)絶縁保護膜形成
前記(2)導体層形成の工程で形成した圧電素子板上に、給電部16に対応する部分を予めくり抜いてあるポリイミド樹脂からなる転写シートを、温度150〜250℃、圧力1.5Kg/cm2の条件で熱圧着させ、圧電体10上の導電層パターン18のうち給電部16だけを露出させた状態で絶縁保護膜20を形成した(図7(c)参照)。
【0072】
(4)接合用金属層形成
前記(3)絶縁保護膜形成の工程で、絶縁保護膜20を形成した圧電体10上に、給電部16に対応する部分を型取ったマスクを載置して、給電部16を被覆し、そのような被覆状態で接合用金属層22を形成した(図7(d)参照)。前記マスクは、圧電体10上に接合用金属層22を形成した後に、取り除く。前記給電部16の被覆は、マスクを用いることなく、給電部16をレジスト層で被覆保護した状態で、接合用金属層22を形成し、その後、レジスト層を化学的に取り除くことによって行なうこともできる。
【0073】
接合用金属層22は、例えば、圧電体10上に、給電部16に対応する部分を型取ったマスクを載置した状態で、スパッタ装置(芝浦製作所製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間:18分の条件下でスパッタ処理を施して、ポリイミド層上に、厚みが0.03〜0.06μmのチタン層を形成した。同様に、そのチタン層上に、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間:30分の条件下で、厚み:1.0μmの金層を形成し、その後、給電部16を被覆しているマスクを取り除いた。これによって、給電部16以外の全面にチタン−金の2層構造の接合用金属層22を形成した。
【0074】
(C)スペーサ200の製造工程
以下、図8(a)〜図8(c)を参照し、スペーサ200の製造工程について説明する。
【0075】
(1)マスク層形成
まず、直径4インチ、厚さ70μmのシリコンウェハを用意する(図8(a)参照)。
前記シリコンウェハの片面全体に、ドライフィルムレジスト層(旭化成社製 製品名:SPG−152)を形成する。レジスト層は、ドライフィルムを用いないで、レジスト液を塗布することによって形成してもよい。
【0076】
図8(a)に拡大して示すように、インク流路形成用切溝32、インク流路形成用切溝32の上壁または下壁に対して90度をなす端壁54(流路方向に対して90度をなす、図5(a)参照)とそれに連続する幅狭部分52、幅狭部分52に連結されたインク供給口形成用開口34、および給電部16を収容する給電収容部36が描画されたマスクを作成した。このマスクを該ドライフィルムレジスト層に載置して、露光量:80mj/cm2で露光し、その後、ナトリウムなどが含有されたアルカリ水溶液で現像することによって、シリコン基板30上にインク流路形成用切溝32、インク流路形成用切溝32の上壁または下壁に対して90度をなす端壁54とそれに連続する幅狭部分52、その幅狭部分52に連結されたインク供給口形成用開口34、給電部収容部36およびピース外形に対応したレジスト非形成部を形成した。
【0077】
また、ドライエッチング処理に代えて、硫酸系、塩酸系、HF系のエッチャントを用いて、ウェットエッチング処理を施してもよい。また、ドライエッチング処理とウェットエッチング処理との複合工程によるエッチング処理を施してもよい。エッチング処理終了後に、10%水酸化ナトリウム水溶液によってレジスト層を剥離、除去した。
【0078】
(2)接合用金属層形成
前記(1)の工程で得たシリコン基板30上に、接合用金属層38を形成した(図8(c)参照)。接合用金属層38は、例えば、スパッタ装置(芝浦製作所製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間18分の条件下で、厚み:0.03〜0.06μmのチタン層を形成し、さらに、そのチタン層上に、同様のスパッタ装置を用いて、5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間30分の条件下で、厚み:1.0μmの金層を形成することによって、シリコン基板30の全面にチタン−金の2層構成の金属膜を被覆した。
【0079】
スペーサ200は、図8(a)に拡大して示すように、インク流路形成用切溝32の先端(ノズル穴側)からインク供給口形成用開口34までの距離(キャビティー長)が4.5mm、キャビティ幅600μm、幅狭部分52が形成された位置、即ち、インク流路形成用切溝32の先端から端壁54までの距離が4.2mm、流路方向に垂直な方向における幅狭部分52の幅が、100μmとし、流路方向における幅狭部分52の長さが、300μmであり、インク流路形成用切溝32の流路方向に沿った壁部(上壁または下壁)と幅狭部分の流路方向に沿った壁部(上壁または下壁)と幅狭部分の流路方向に沿った端壁54とを繋ぐ端壁は、流路方向に対して90°の角度をなしている。また、スペーサ200を挟んで対向配置される電極のサイズは、幅:300μm、長さ:3.65mmとした。
【0080】
(D)ノズルプレートの製造工程
以下、図9を参照し、スペーサ200の製造工程について説明する。
(1)マスク層形成
まず、直径4インチ、厚さ70μmのシリコンウェハを準備する。次に、前記シリコンウェハの片面の全体に、ドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニクス(株)社製、製品名:SPG−152)を貼付けてレジスト層を形成する。レジスト層は、ドライフィルムを用いることなく、レジスト液を塗布することによって形成してもよい。
【0081】
次いで、直径が30〜50μmの開口を150μmピッチで描画したマスクを該ドライフィルムレジスト層上に載置して、露光量:80mj/cm2で露光し、その後、ナトリウムなどが含有されたアルカリ水溶液を用いて現像することによって、シリコン上に、マスクパターンに相当するレジスト非形成部を形成した。
【0082】
(2)基材のエッチング
前記(1)の工程で形成したレジスト層を有する板状シリコン90に、フッ素系ガス、ハロゲン系ガスによるドライエッチング処理を施した。前記エッチング処理は、例えば、ドライエッチング装置(東京エレクトロン社製)を用いて、RFパワー:600W、ガス流量:SF6/O2=130/10sccm、エッチング時間:40分の条件で、マスク層のレジスト非形成部に向けて、フッ素系ガスなどのガスを照射することにより、開口径が30〜50μmの孔がピッチ150μmで配列されてなる液滴噴射孔42を形成し、ノズルプレート300とした。
【0083】
また、ドライエッチング処理に代えて、硫酸系、塩酸系、HF系のエッチャント液を用いて、ウェットエッチング処理を施してもよい。また、ドライエッチング処理とウェットエッチング処理との複合工程によるエッチング処理を施してもよい。前記エッチング処理を施したシリコンに、剥離処理を行うことにより、板状シリコン上に形成されてマスク層を除去した。場合によっては、使用するインクの種類に応じて、シリコンの表面に、SiC、SiO2、DLCなどの無機膜や、シリコーン、テフロン(登録商標)などの有機膜で親液、撥液処理を施してもよい。
【0084】
(E)積層工程
(1)振動板とスペーサの積層
前記(B)の(1)〜(4)の工程で作製された振動板100と、前記(C)の(1)〜(3)の工程で作製されたスペーサ200とを交互に積層させる。その際に、最外層は、圧電体(例えば、圧電素子)10からなる振動板100となるように積層させる(
図4参照)。その後、振動板100のインク供給口12とスペーサ200のインク供給口形成用開口34とが合致するように位置合わせを行った後、圧力:10〜100MPa、温度:50〜250℃の条件下で熱圧着し、図6に示すように、1分以上保持して一括積層させることによって、圧電体10からなる複数の振動板100がスペーサ200のインク流路形成用切溝32を挟んで対向配置された形態の積層圧電体400を形成した。
【0085】
(2)ノズルプレート接合
前記(1)で製造した積層圧電体400に、前記(C)で製造したノズルプレート300を以下の(a)〜(c)の工程によって接合させた。
(a)まず、ノズルプレート300の接合面となるべき表面を研磨し、その接合面を平坦にした。その研磨方法としては、コロイダルシリカ、SiC、ダイアモンドなどの研磨剤を用いて行うのが良い。ダイアモンド砥粒(ビューラー社製、製品名:メタダイヤモンドサスペンション)を用いて研磨を行い、その後、コロイダルシリカ(フジミインコーポレード社製、製品名:COMPOL)による仕上げ研磨を行った。
【0086】
(b)前記仕上げ研磨の後、ノズルプレート300の積層圧電体400との接合面以外をレジストなどによりマスキングし、さらに、スパッタ装置(芝浦製作所社製、製品名:CFS−4ES−231)を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:100W、スパッタ時間:18分の条件下で、スパッタ処理を施して、厚み:0.03〜0.06μmのチタン層を形成し、そのチタン層上に、同様のスパッタ装置を用いて、真空度:5.0×10−4Pa、電力量:200W、スパッタ時間:30分の条件下で、厚み:1.0μmの金層を形成した。それにより、ノズルプレート300の接合面全域にわたってチタン−金の2層構造の金属層(図示を省略)を被覆した。
【0087】
(c)前記(b)の工程で金属層が形成されたノズルプレート300の接合面を、振動板100とスペーサ200とを積層させた積層圧電体400に当接させ、位置合わせを行った後、圧力:10〜100MPa、温度:50℃〜250℃の条件で熱圧着し、1分以上程度保持することによって、ノズルプレート300を積層圧電体400に接合させてなるプリンタヘッド積層体を製造した。
【0088】
<給電部16の導電部材:銅板301>
ここで、図10〜図17を参照して、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1の給電部16の構成について、詳細に説明する。図10は、銅板301を給電部16に挿入する様子を示す図である。図11は、図10に示す銅板301を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図である。図10、図11中、銅板301の厚さをH1と表記する。
【0089】
本発明の実施の形態に係る銅板301では、図10中、矢印Pで示すように、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に銅板301を挿入する。そして、図10に示す銅板301を挿入した後、給電部16に接着剤303を充填する。その結果、図11に示すように、給電部16を上方から見ると、銅板301が接着剤303を介して振動板100間の隙間S1に固着される。その後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16は、平坦化した端面で、外部電源との接続素子であるFPC(Flexible Printed Circuit)の接続部に半田付けされる。
【0090】
上述のように、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に銅板301を挿入した後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に制御することができ、外部電源との接続素子(たとえば、FPC)との電気的接続が良好となる。
【0091】
なお、銅板301の寸法は、縦1.1mm、横1.3mm、厚さ70μmmである。縦と横の寸法は、給電部16とほぼ同じである。
【0092】
なお、接着剤303で、銅板301を振動板100に固着したが、これに限らない。銅板の寸法を、隙間S1の寸法と精度よく合わせておけば、銅板301を振動板100の間に挿入して、接着剤303なしに隙間S1内に銅板301を固定することができる。
【0093】
なお、接着剤303は、熱硬化型エポキシ系の接着剤であるが、これに限らない。接着剤303は、銅板301を振動板100に固着すると共に、ホコリや塵などのコンタミネーションが隙間S1に侵入するのを防ぐものであれば良い。
【0094】
<給電部16の導電部材:欠損加工済み銅板501>
ここで、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、銅板301に代わって、図12に示す欠損加工された銅板501(以下、欠損加工済み銅板501という)を、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に挿入しても良い。銅板301に代わって、欠損加工済み銅板501を用いることで、剛性を低くすることができる。そのため、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に制御することができる。更に、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0095】
図12、図13を参照し、圧電体10とスペーサ200との積層体の積層方向に沿った隙間S1に挿入する導電性部材の他の例(1)について説明する。図12は、欠損加工済み銅板501の斜視図である。図13は、図12に示す欠損加工済み銅板501を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図である。また、図12、図13に示す直交座標系の座標軸XYZは、互いに垂直な方向を示し、各図の同一の座標軸は、同一の方向を示している。なお、図12、図13中、欠損加工済み銅板501の厚さをH2と表記する。
【0096】
図12に示すように、欠損加工済み銅板501は、対向する一方の組の一の面503と他の面505とに、深さ20μmの溝を所定の方向に所定間隔で形成してなる。本実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、欠損加工済み銅板501の縦方向(図12中、Z軸方向)に沿う複数の縦溝507と、欠損加工済み銅板501の横方向(図12中、X軸方向)に沿う複数の横溝509とを形成する。
【0097】
そして、欠損加工済み銅板501を給電部16の隙間S1へ挿入した後、接着剤303が、縦溝507又は横溝509に沿って対向する一方の組の面503、507の全面に接着剤が行きわたり易くなる。そのため、欠損加工済み銅板501は、接着剤303を介して、振動板100に接着する。
【0098】
さらに、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、欠損加工の分、欠損加工済み銅板501に可撓性を持たせ、かつ剛性を低くすることができる。そのため、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0099】
さらに、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、応力を緩和することができるので、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0100】
さらに、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、縦溝507又は横溝509により区分けされた、欠損加工済み銅板501の一の面503又は他の面505の各部分が、互いに独立して、振動板100と接触する(多点接触)。そのため、給電部16に設けられた導電層(欠損加工済み銅板501を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0101】
なお、複数の縦溝507又は複数の横溝509が形成される1組の面503、505とは異なる他方の組の面のうち、一の面511が、後述する給電部16の端面となる。
【0102】
接着剤303は、熱硬化型エポキシ系の接着剤である。接着剤303は、欠損加工済み銅板501を振動板100に固着すると共に、ホコリや塵などのコンタミネーションが、隙間S1に侵入するのを防ぐ。
【0103】
図13に示すように、給電部16を上方(図13中、Z軸に沿う方向)から見ると、欠損加工済み銅板501が、接着剤303を介して振動板100間の隙間S1に固着される。その後、欠損加工済み銅板欠損加工済み銅板501の一の面511を含む給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16は、平坦化した端面で、外部電源との接続素子であるFPCの接続部に半田付けされる。
【0104】
上述のように、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、欠損加工済み銅板501を銅板301の代わりに用いることで、欠損加工の分、欠損加工済み銅板501に可撓性を持たせ、かつ剛性を低くすることができる。そのため、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に抑えることができるだけでなく、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくすることができる。したがって、給電部16は、外部電源との接続素子(たとえば、FPC)との電気的接続が良好となる。
【0105】
なお、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、欠損加工済み銅板501の欠損加工部分として、縦溝507と横溝509とを設けたが、縦溝507だけでも良い。横溝509を設けておくと、接着剤と一緒に隙間S1に流れこんだ空気の抜けが良くなり、接着剤が全体に行きわたり易くなる。
【0106】
なお、本実施の形態では、複数の縦溝507と複数の横溝509とを設けたが、一つの縦溝507だけでも、欠損加工済み銅板501を隙間S1内で、接着剤303を介して振動板100に固定できれば良い。
【0107】
なお、欠損加工済み銅板501の複数の溝507、509を形成する方法としては、パンチングなど機械加工、マスクでのハーフエッチング、金型を使用した放電加工、リフトオフなど、様々な一般的な金属の加工方法を用いることができる。
【0108】
<給電部16の導電部材:銅箔701>
ここで、図14、図15を参照し、圧電体10とスペーサ200との積層体の積層方向に沿った隙間に挿入する導電性部材の他の例(2)について説明する。図14は、導電性部材の他の例(2)である銅箔701の斜視図である。図15は、図14に示す銅箔701を挿入した後、給電部16を上方から見た平面図である。図14、図15中、銅箔701の厚さをH3と表記する。
【0109】
本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、外部電源と接続する給電部16において、銅板301に代えて、図14に示す銅箔701を振動板100間の隙間S1に挿入しても良い。そして、図14に示す銅箔701を隙間S1に挿入した後、給電部16に接着剤303を充填する。
【0110】
その結果、図15に示すように、給電部16を上方から見ると、銅箔701が接着剤303を介して振動板100間の隙間S1に固着される。銅箔701の厚さH3は、銅板に比べて薄いため、給電部16を上方から見ると、接着剤303を充填する際に多少湾曲する。その後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16は、平坦化した端面で、外部電源との接続素子であるFPCの接続部に半田付けされる。
【0111】
上述のように、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド1では、外部電源と接続する給電部16において、振動板100間の隙間S1に銅箔701を挿入した後、給電部16の端面を研磨して平坦化することで、給電部16の端面の表面粗さを一定以下に抑えることができ、給電部16に設けられた導電層(銅箔701を含む)に対して、粒界結合力が弱いセラミック材料であるPZTにクラックが生じにくくなる。
【0112】
ここで、図16、図17を参照し、上述した銅板301、欠損加工済み銅板501、及び銅箔701を用いて平坦化した給電部16の平坦化評価の方法及びその結果について説明する。図16は、給電部16の平坦化評価の方法を示すフロー図である。図17は、給電部16の平坦化評価結果を示す図である。なお、少なくとも導電性のフィラーで隙間S1を充填した比較例についても、合わせてその結果を示す。
【0113】
図16に示すように、ステップST1601で、導電性部材を給電部16の隙間S1に挿入する。そして、ステップST1602に遷移する。
【0114】
ステップST1602で、給電部16の隙間S1に接着剤を充填する。そして、ステップST1603に遷移する。
ステップST1603で、接着剤を加熱硬化する。そして、ステップST1604に遷移する。
【0115】
ステップST1604で、給電部16の端面を研磨する。そして、ステップST1605に遷移する。
そして、ステップST1605で、給電部16の端面に、接続素子であるFPCを半田付けする。
【0116】
上述した図16に示すステップにより作成した給電部16について、その平坦化の評価結果を、図17を参照して説明する。図17は給電部16の平坦化評価結果を示す図である。図17では、給電部16の平坦化を評価する指標として、(1)給電部16の端面の表面粗さ(Ra:JIS B 0601 2001年度)を示す段差max、(2)給電部16の端面の静電容量、(3)給電部16のFPCとの接続位置の3つを用いる。そして、その3つの指標を総合的に判断して、給電部16の平坦化を評価する。
【0117】
なお、図17では、給電部16の隙間S1に挿入する導体及び接着剤の組み合わせとして、(1)欠損加工済み銅板501及び熱硬化型エポキシ系接着剤、(2)銅板301及び熱硬化型エポキシ系接着剤、並びに(3)銅箔701及び熱硬化型エポキシ系接着剤を、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1の評価対象とする。以下、説明のため、(1)欠損加工済み銅板501及び熱硬化型エポキシ系接着剤、(2)銅板301及び熱硬化型エポキシ系接着剤、並びに(3)銅箔701及び熱硬化型エポキシ系接着剤を、それぞれ、評価対象(1)、評価対象(2)、評価対象(3)と記載する。
【0118】
なお、図17では、比較例として、(4)Agフィラー及び導電性接着剤(溶剤)、(5)Agフィラー及び導電性接着剤(無溶剤)、並びに(6)Agフィラーと銅箔、及び導電性接着剤(無溶剤)、の各組み合わせについて、その評価結果を合わせて示す。以下、説明のため、(4)Agフィラー及び導電性接着剤(溶剤)、(5)Agフィラー及び導電性接着剤(無溶剤)、並びに(6)Agフィラーと銅箔、及び導電性接着剤(無溶剤)、の各組み合わせを、比較例(4)、比較例(5)、比較例(6)と記載する。
【0119】
なお、図17中、(2)給電部16の端面の静電容量、(3)給電部16のFPCとの接続位置の指標について、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用可能な場合をOKと表記し、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用不可能な場合には、NGと表記する。
【0120】
なお、図17中、給電部16の平坦化評価は、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用可能な場合をOKと表記し、本実施の形態に係るインクジェットヘッド1として使用不可能な場合には、NGと表記する。
【0121】
ここで、図17に示すように、評価対象(1)〜(3)のそれぞれについて、給電部16の平坦化を評価する指標(1)である段差maxは、1.77、1.91、1.88である。つまり、評価対象(1)〜(3)の段差maxは、所定の値2.00以下に抑えられている。言い換えると、評価対象(1)〜(3)では、給電部16の端面の表面粗さを、所定の値以下に抑えられている。
【0122】
一方、比較例(4)〜(6)のそれぞれについて、給電部16の平坦化を評価する指標(1)である段差maxは、所定の値2.00より大きい、4.89、2.55、2.85である。そのため、比較例(4)〜(6)では、給電部16の端面の表面粗さを、所定の値以下に抑えることができない。
【符号の説明】
【0123】
10 圧電体
16 給電部
100 振動板
200 スペーサ
300 ノズルプレート
301 銅板
303 接着剤
400 積層圧電体
501 欠損加工済み銅板
507 縦溝
509 横溝
701 銅箔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出部を有し、インク供給路を形成する開口を有するスペーサ、及び圧電体からなる振動板が交互に積層された積層圧電体と、
前記インク吐出部に配設されたノズルプレートと、を有するインクジェットヘッドであって、
前記積層圧電体は、更に、
前記積層圧電体間に設けられた隙間に挿入される導電性部材により形成された、前記圧電体へ給電するための給電部を備え、
前記給電部の一部では、前記導電性部材及び前記積層圧電体が平坦化され、当該平坦化された給電部の一部から、接続素子を介して外部装置と接続する、
インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記導電性部材は、導電性の板部材である、
請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記導電性の板部材は、溝加工により可撓性を備える金属板であって、
前記金属板の対向する一組の面に、少なくとも一の方向に沿って延びる一又は複数の溝が設けられている、
請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記金属板の対向する一組の面に設けられた複数の溝は、
前記一の方向に沿って延びる溝と、前記一の方向と異なる方向に延びる溝とを有する、
請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記導電性部材は、導電性の箔である、
請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記導電性の板又は前記導電性の箔は、銅で形成されている、
請求項2又は請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項1】
インク吐出部を有し、インク供給路を形成する開口を有するスペーサ、及び圧電体からなる振動板が交互に積層された積層圧電体と、
前記インク吐出部に配設されたノズルプレートと、を有するインクジェットヘッドであって、
前記積層圧電体は、更に、
前記積層圧電体間に設けられた隙間に挿入される導電性部材により形成された、前記圧電体へ給電するための給電部を備え、
前記給電部の一部では、前記導電性部材及び前記積層圧電体が平坦化され、当該平坦化された給電部の一部から、接続素子を介して外部装置と接続する、
インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記導電性部材は、導電性の板部材である、
請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記導電性の板部材は、溝加工により可撓性を備える金属板であって、
前記金属板の対向する一組の面に、少なくとも一の方向に沿って延びる一又は複数の溝が設けられている、
請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記金属板の対向する一組の面に設けられた複数の溝は、
前記一の方向に沿って延びる溝と、前記一の方向と異なる方向に延びる溝とを有する、
請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記導電性部材は、導電性の箔である、
請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記導電性の板又は前記導電性の箔は、銅で形成されている、
請求項2又は請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−235522(P2011−235522A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108473(P2010−108473)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
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