説明

インクジェット画像形成装置

【課題】反応液・処理液といったインク以外の消耗品をなるべく使用せず、様々な被記録材に、画像濃度が高く、定着性が良く、フェザリングやブリーディング、ビーディングの少ない高画質な画像を得ることができるインクジェット画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド13には、水と、非イオン性界面活性剤と、疎水性Aブロックと親水性BブロックからなるABAブロックポリマー型界面活性剤とを少なくとも有するインク組成物が収容されている。画像信号入力に応じて、温度調整手段により中間転写体11の表面が予め定められた、非イオン性界面活性剤の曇点よりも高い第1の温度範囲に加熱される。吐出されたインク滴23は、ABAブロックポリマー型界面活性剤が溶解・分散したゾル状態であるが、中間転写ローラ11に着弾して第1の温度範囲にまで即座に加熱されてインクドット全体がゲル状態に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク(インク組成物)を吐出して画像を形成するインクジェット画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録は、数十μmといった微細なノズルからインクを吐出するため、インクの目詰まり等の問題からインクの着色剤として溶解性の高い染料が用いられてきた。染料インクは発色性に優れており、写真プリントにおいて銀塩写真に匹敵する画質を得ることができるが、その反面、耐水性・耐光性・耐ガス性など画像保存性に劣る欠点を有している。
この欠点を補うため、インクの着色剤として顔料の利用が進められ、工業用の大判プリンタから、現在ではパーソナル市場やオフィス市場のプリンタにも搭載されている。
【0003】
普通紙にカラー画像を印字する際には、2色重ね部分等の色境界でのにじみ(以下、「ブリーディング」という)を押さえるために、インクに界面活性剤などを添加することによりインクの紙への浸透性を高めることが行われている(特許文献1参照)。インクの紙への浸透性を高めることにより色境界でのにじみは低減できるが、その反面、普通紙を形成するセルロース繊維にそって浸透するので文字や細線の印字周辺部ににじみ(以下、「フェザリング」という)が発生しやすくなる。
ブリーディングとフェザリングの防止を両立させるため、黒文字の印字にのみ浸透性の低いインクを使用する等の工夫がなされているが、その場合には、黒色インクの乾燥性が悪く高速印字が困難であるという問題が残る。
【0004】
そこで、インク中の着色剤を定着するための材料(水溶性高分子、白色顔料等)を予め塗工したインクジェット専用の被記録材が特許文献2〜6等に提案、開示されている。これらのインクジェット記録に適した専用紙を用いることにより、画像品質は格段に改善される。しかしながら、専用紙はコスト面で問題があり、特にビジネス用途では普通紙に高画質で印字できることが求められる。
普通紙などの一般的な被記録材に対応するため、特許文献7には、被記録材上に予めカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のポリマー溶液を噴射し、ついでそのポリマー溶液が付着した部分にインクを吐出して印字するインクジェット記録方法が提案されている。しかし、これらのポリマー溶液ではフェザリングは抑えられず、また耐水性も改善されなかった。
【0005】
特許文献8には、インクジェット記録ヘッドを用いて画像を形成する装置であって、インクを吸収する吸水性樹脂粒子を被記録材に塗布する手段と、インクを被記録材に塗布された吸水性樹脂粒子上に吐出させる手段と、前記吸水性樹脂粒子を被記録材に定着させる手段とを有することを特徴とする画像形成装置が提案されている。しかしながら、吸水性樹脂粒子は吸湿しやすく、装置内あるいは保管時に吸湿により塊状となり、被記録材に吸水性樹脂粉体を均一に塗布することが困難になるなどの不具合を生じやすい。
また、インク中の着色剤を不溶化する化合物を含む被記録材の前処理液を被記録材上にインクジェット方法により付着した後にその被記録材の前処理液が付着した部分にインクを吐出して画像形成するインクジェット記録方法が特許文献9〜11等に開示されている。
【0006】
これらの方法では、色境界にじみとフェザリングの両者がある程度の水準で改善される。しかしながらこれらの方法では、前処理液を安定して吐出せしめるために、前処理液の粘度を低くする必要があり、よって着色剤を不溶化せしめる化合物を低濃度にせざるをえなかった。
このような前処理液で十分な画質改善効果を得るためには、前処理液を比較的多量に付与しなければならず、水分を含む液体を多量に被記録材に付与するため、被記録材のカールやコックリングが発生しやすかった。
【0007】
特許文献12には、シリコーンオイルなどのシリコーン化合物とカチオン性化合物とを少なくとも含有した無色の液体組成物を被記録材に塗布した後、アニオン性成分を含有するインクをインクジェット記録方式により被記録材に付着させることを特徴とする画像形成方法が開示されている。しかしながら、シリコーン化合物が付着した被記録材部分はインクの浸透性が著しく低いため画像部の乾燥が遅いという問題があった。
特許文献13では、インクの浸透性や濡れ性を改善するため、着色剤を不溶化する化合物および所定の界面活性剤を含有する画像記録促進液を被記録材に対して付与した後、インクをインクジェット記録方式により被記録材に付着させることにより画像を形成する方法が提案されている。この方法によれば、画像記録促進液中の界面活性剤がインクの被記録材に対する浸透性や濡れ性を改善するため、画像の乾燥性が向上し高速記録に対応が可能となるものの、着色材を不溶化せしめる成分量が少ないため、ブリーディングやフェザリングの防止効果が不十分であり、更なる改善が求められていた。
【0008】
特許文献14〜16等に開示されるように、インクの着色剤を不溶化せしめる多価金属塩を含む反応液を被記録材に塗布することにより画像品質は大きく向上した。
一方、特許文献17、18には、インク非浸透性の中間転写体上にインクジェット記録方法によりインク像を形成し、その後インク像を中間転写体から被記録材に転写する中間転写方式と呼ばれる方法が提案されている。これらに記載されている中間転写方式では、記録ヘッドを記録紙から離して配置することができ、紙粉の付着による記録ヘッドのノズルの目詰まりを抑制することができる。
また、記録ヘッドと記録紙のギャップを常に一定に保つのは困難であるが、記録ヘッドと中間転写体の場合は一定に保つことができ、また、紙種対応性がよく、従って信頼性の高い方式と言える。しかしながら、高い転写率を得るための離型性の良い中間転写体材料ではブリーディングや隣接液滴の集合(ビーディング)が激しく、画像品質が低下するという問題点があった。
【0009】
特許文献19等には、特許文献17、18に記載された方法を改良するものとして、インクを中間転写体上に吐出してインク像を形成した後、中間転写体上でインクの大半の水分を蒸発させて、濃縮したインクを紙等の被記録材に転写する方法が開示されている。この方法では、一旦、中間転写体上に良好な画像が形成されれば、一般に使用されている、所謂、普通紙上でも良好な画像品質を得ることができる。
しかしながら、常温ではインクの濃縮に時間を要するため、中間転写体を加熱してインク中の溶媒の蒸発を促進する必要があり、大きなエネルギーを必要とする問題があった。
【0010】
特許文献20、21等には、中間転写体の表面にポリアクリル酸などの吸水性樹脂粒子の層を設けて、中間転写体に付与されるインク中の水分を吸収した後に、吸水性樹脂粒子ごと被記録材に転写する方法が開示されている。この方法は、普通紙上でも良好な画像品質を得ることができるが、前述の特許文献8と同様に、保管時の吸湿により吸水性樹脂粒子が塊状となり、中間転写体上に均一に塗布することが困難になるなどの問題がある。
特許文献22には、インクを被記録材に吐出せしめて画像を形成する前または後に、インク中の成分と反応する多価金属塩やポリアリルアミンを含む反応液を中間転写体上に付着させて被記録材に付与する方法が開示されている。この方法は、従来法と比較して被記録材に付着する反応液を少なくし、被記録材に生じるカールやコックリングを低減できる。
【0011】
特許文献23には、カチオン性高分子化合物と界面活性剤および/又は濡れ促進剤を含む処理液を中間転写体上に付与し、該処理液とインクジェット方式で吐出されるインクを接触・混合せしめ、その後、被記録材に転写する画像形成方法が開示されている。
特許文献24〜26にも同様に、アニオン性のインク着色剤と反応し凝集作用を引き起こす多価金属塩などを含む処理液を中間転写体上に付与し、該処理液とインクジェット方式で吐出されるインクを接触・混合せしめ、その後、被記録材に転写する画像形成方法が開示されている。
特許文献24では、最低造膜温度(MFT)が30度以下の水溶性樹脂をさらにインクもしくは処理液に含有させることによって、画像に耐擦過性をさらに付与することができることが記載されている。
特許文献25には、転写前の画像に水溶性樹脂を付与することで同様に耐擦過性を付与することができることが記載されている。特許文献26には、処理液と反応する着色剤とは別のもう一つの反応成分として、樹脂粒子表面にイオン性基を有する樹脂エマルジョンをインクにさらに含ませて、凝集作用の追加効果により着色剤の凝集力が高まることが記載されている。
【0012】
特許文献27等には、インクと接触・混合した際に、混合液のpHを大きく変化せしめる処理液を中間転写体に付与することが開示されている。
これら反応液・処理液は、中間転写体上及び被記録材上の画像品質に係わる課題(上記ブリーディング、フェザリング、ビーディング)に対して効果的である。しかしながら、反応液・処理液を紙や中間転写体へ全面塗布した場合、非画像部分は未使用なため非効率という問題点がある。また、インクの他に消耗品が増えることで、ランニングコストが上がる問題点がある。また、反応液・処理液は水をベースとしており、最終的に紙に吸収される水分量が多くなり、カールやコックリングが発生しやすくなる。プリント速度が速くなるほどこのカールやコックリングの傾向が顕著になり問題となる。
【0013】
フェザリングやブリーディングといった被記録材での滲み・混色以外にも、インク着色剤が顔料系の場合の定着性(耐擦性)が問題となる。定着性を向上させる方法として、例えば特許文献28には樹脂エマルジョンをインク中に含むことが提案されている。また、樹脂エマルジョンではなく比較的低分子の水溶性樹脂をインク中に含むものも提案されているように、被記録材表面での顔料粒子の定着性向上には樹脂が必要である。
【0014】
上述のように、普通紙に対して高画質かつ高速、高信頼で記録するために、種々の提案がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、反応液・処理液といったインク以外の消耗品をなるべく使用せず、様々な被記録材に、画像濃度が高く、定着性が良く、フェザリングやブリーディング、ビーディングの少ない高画質な画像を得ることができるインクジェット画像形成装置を提供することを、その目的とする。
また、本発明の他の目的は、従来技術のような中間転写体上のインク水分を蒸発させるような大きな熱エネルギーを必要としないインクジェット画像形成装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、記録ヘッドのノズル目詰まりを低減でき、信頼性を高めることができるインクジェット画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、インク組成物内に熱により状態が変化する熱応答性を持つ組成物を含め、記録ヘッドから吐出されるまでは目詰まりを生じない流動性を確保し、吐出後は予め加熱された中間転写体の熱刺激によってビーディング等を抑制できるように状態変化するようにした。
【0017】
具体的には、本発明は、中間転写体と、水と、非イオン性界面活性剤と、疎水性Aブロックと親水性BブロックからなるABAブロックポリマー型界面活性剤とを少なくとも有するインク組成物と、前記中間転写体の表面温度を前記非イオン性界面活性剤の曇点よりも高い第1の温度範囲に調整する温度調整手段と、前記中間転写体に対向して配置された記録ヘッドを有し、前記インク組成物を画像信号に応じて前記記録ヘッドから吐出して前記中間転写体上に画像を形成する画像形成手段と、前記中間転写体上に形成された画像を被記録媒体に転写する転写手段と、を有することを特徴とするインクジェット画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜3に記載の発明によれば、中間転写体を用いているので、従来技術で記載したように、画像形成面と記録ヘッドとの距離を一定に保つことができるため画像形成の信頼性が高く、画像形成面と記録ヘッドとの距離を短くすることも可能であるため着弾精度が向上する、紙種対応性がよいなど中間転写体の利点を享受できる。
加えて、以下の理由により従来課題を解決できる。中間転写体が温度調整手段により予め定められた第1の温度範囲に調整され、インクジェットヘッドのような画像形成手段によりインク組成物の液滴が中間転写体に接触して非イオン性界面活性剤の曇点以上の温度に達すると、液滴に含まれるABAブロックポリマー型界面活性剤の会合状態が変化する。
具体的には、曇点以下の温度範囲(第二の温度範囲)では、ABAブロックポリマー型界面活性剤の疎水性Aブロックは添加している非イオン性界面活性剤の吸着効果によりポリマーの水への溶解性・分散性は保たれておりゾル状態である。インク組成物の中間転写体上への着弾後、第1の温度範囲にまで加熱されると疎水性Aブロックに吸着した非イオン性界面活性剤の親水性が低下し、ポリマー分子内および分子間の疎水性Aブロック同士の疎水会合が形成されて、その結果、液滴の粘度増加やゲル化が起こり、インク水分を蒸発させるような大きな熱エネルギーをかけることなく中間転写体上でのブリーディングやビーディングといった課題を解決できる。
また、第2の温度範囲に冷却されるとゲル状態からゾル状態に可逆的に変化することで、中間転写体のクリーニングの負荷を減らすことができる。
転写工程での中間転写体と被記録媒体との押圧・シアリングにより、増粘やゲル化したインク組成物の被記録媒体への定着性を向上させる。
また、被記録媒体が普通紙のような場合、増粘やゲル化したインク組成物を紙繊維孔中に押し込めることで転写するため、紙カールやコックリングといった問題も抑制できる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、画像形成工程を行う前に中間転写体を第1の温度範囲に温度調整することで、画像形成工程でインク組成物の増粘やゲル化が起こるようになる。また、全画像信号に応じた画像形成工程と被記録媒体への転写工程が完了したのちにインク組成物がゲル化しない第2の温度範囲に中間転写体を冷却することで、熱伝達によるノズル近傍のインク組成物のゲル化を抑制する。第2の温度範囲にまで冷却すればそれ以上の温調は不必要なため温度調整手段を休止することで待機時の無駄なエネルギーを省くことができる。
請求項4又は5に記載の発明によれば、記録ヘッド内のインク組成物が吐出される前にゲル化することを抑制でき、中間転写体への着弾精度(画像形成精度)の低下を防止することができる。
請求項7、8に記載の発明によれば、インク組成物を転写する前に予め被記録媒体を加熱する加熱手段を備えているので、転写工程で中間転写体側をインク組成物がゲル化する第1の温度範囲に加熱するとともに、被記録媒体側、特に被記録媒体の表面温度を第1の温度範囲になるように予め加熱しておくことにより、インク組成物はゲル状態のまま転写される。よって、被記録媒体上でのブリーディング、フェザリング、及び紙カールやコックリングを改善することができる。
請求項9に記載の発明によれば、転写工程後の被記録媒体が再度、加熱手段を通過することにより、被記録媒体上のインク組成物の水分乾燥が促進され、紙カールやコックリングを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット画像形成装置の概要構成図である。
【図2】インク組成物の吐出状態を示す図である。
【図3】第2の実施形態に係るインクジェット画像形成装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2に基づいて第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の要部概略図である。
画像信号入力に伴い、中間転写体としての中間転写ローラ11の回転が開始し、温度調整手段16により第1の温度範囲に向けて中間転写ローラ11を加熱する。中間転写ローラ11は、アルミニウム製の円筒状の支持体11aと、表面層としてシリコーンゴム層11bとからなる。
温度調整手段16は、中間転写ローラ11の内部中央に配置された熱源としてのヒータ17と、ヒータ17に電気エネルギーを供給する電源18と、電源18を制御する制御手段19と、クリーニングユニット12に内蔵され、中間転写ローラ11の表面温度を検知する温度センサ20とから構成されている。
中間転写ローラ11を加熱する熱源は内部設置方式のハロゲンヒータ等に限定されず、外部設置方式、面状ヒータ、電磁誘導加熱方式等種々のものを用いることができる。
また、温度センサ20の配置位置はクリーニングユニット12内に限定されない。
【0022】
クリーニングユニット12に内蔵された温度センサ20が中間転写ローラ11の表面温度を計測し、この温度情報は制御手段19に出力される。制御手段19の図示しないメモリには第1の温度範囲が記憶されており、中間転写ローラ11の表面温度が第1の温度範囲に到達後、制御手段19は、画像信号に応じてライン型記録ヘッド13(イエロー用記録ヘッド13Y、シアン用記録ヘッド13C、マゼンタ用記録ヘッド13M、ブラック用記録ヘッド13Bk)の図示しない加圧手段を駆動する。
加圧手段としては公知の種々のものを採用できるが、本実施形態では圧電素子による加圧方式を採用している。
記録ヘッド13からインク組成物の吐出が開始され、中間転写ローラ11の表面に画像が形成される。ライン型記録ヘッド13には、インクを供給する供給手段と供給流路(図示せず)、インクカートリッジ(図示せず)、制御基板(図示せず)等が設けられている。
【0023】
一方、給紙トレイ(図示せず)に収納された被記録媒体としての記録用紙14は、送り出しローラ(図示せず)、搬送ローラ(図示せず)、レジストローラ対を通り(図示せず)、中間転写ローラ11と転写手段としての加圧ローラ15とのニップに到達し、該ニップ部で中間転写ローラ11上に形成されたカラー画像(ここでは4色)を転写される。
加圧ローラ15で記録用紙14に圧力をかけることにより、インクの定着性、平滑性が向上する。その後、記録用紙14は搬送ローラ(図示せず)より排紙トレイ(図示せず)に排紙される。
【0024】
図2は、記録ヘッド13から吐出されたインク組成物の状態変化を説明する図である。
記録ヘッド13のノズル板22と中間転写ローラ11の表面層11bまでの距離は300μmで、ノズル30の開口径D1は25μm、中間転写ローラ11の表面に着弾したインクドット24の径D2は40μm程度である。
着弾直前まではインク組成物としてのインク滴23は、ABAブロックポリマー型界面活性剤が溶解・分散したゾル状態であるが、中間転写ローラ11に着弾して第1の温度範囲にまで即座に加熱されてインクドット全体がゲル状態に変化する。
記録ヘッド13のノズル板22は、表面に撥水膜が塗布された、または撥水処理した発泡断熱シリコーンゴム層22aを有している。画像形成中、中間転写ローラ11からの熱伝達(輻射熱)によるノズル近傍でのインク組成物のゲル化を抑制するためのものである。
中間転写ローラ11からの輻射熱による記録ヘッド13内でのインク組成物のゲル化を抑制する方法としては、上記の他に、記録ヘッド13に該記録ヘッドを冷却する冷却手段を設ける構成としてもよい。
冷却手段としては、例えば、ノズル板22内やヘッド外面に流路を形成して冷却水を循環させる水冷方式や、記録ヘッド13に向けて送風する空冷方式を採用することができる。
図2において、符号31は液室を、32はインク液(インク組成物)を示している。
【0025】
全画像信号に基づくジョブが終了し、且つ、被記録媒体への転写工程が完了したら、制御手段19は、中間転写ローラ11の温度をインク組成物がゲル化しない第2の温度範囲に制御(冷却)する。中間転写ローラ11からの輻射熱により記録ヘッド13内のインクが増粘化ないしゲル化することを防ぐためである。
第2の温度範囲も上記図示しないメモリに記憶されている。冷却後はそれ以上の温度調節は不要であるので、待機時の無駄なエネルギー消費を回避すべく、制御手段19は温度制御を停止する。
【0026】
図3に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
本実施形態では、転写工程前に記録用紙14の表面を加熱する加熱手段35を有している。加熱手段35は、熱源を有する加熱ローラ36と、搬送ローラ37とから構成されており、加熱ローラ36の温度は制御手段19により制御されるようになっている。加熱手段35は図示しないレジストローラ対の用紙搬送方向上流側に配置されている。
加熱手段35としては熱ローラ方式に限定されず、面状ヒータで加熱するようにしてもよい。
転写ニップに進入する前に記録用紙14の表面を第1の温度範囲の温度に予め加熱しておくことにより、記録用紙14の吸熱による温度低下で中間転写ローラ11上のゲル化状態が変化することを防止でき、中間転写ローラ11上での画像状態のまま記録用紙14に転写することができる。
転写工程後、記録用紙14が再度加熱手段35を通過するようにすれば、記録用紙14上のインク組成物の水分乾燥を促進でき、紙カールやコックリングを抑制できる。
この場合、転写ニップの下流側に加熱手段35とは別個に加熱手段を設ける構成としてもよい。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の実施例を示す。
[実施例1]
ABAブロックポリマー型界面活性剤は、以下のように合成した。250mmolのアクリルアミド、0.5mmolのS−シアノメチル−S−ドデシルトリチオカーボネート、及び0.5mmolのアゾビスイソブチロニトリルを混合して、アルゴン雰囲気下60℃、6時間重合した。次いで、前述の重合で得たもの、10mmolのメチルメタクリレート、及び0.5mmolのアゾビスイソブチロニトリルを混合して、N,N−ジメチルホルムアミド中で、60℃、6時間重合した。反応後、メタノール及び水で透析を行い、凍結乾燥により回収した。
前述で得たABAブロックポリマー型界面活性剤が10%になるように、また非イオン性界面活性剤としてニューコール2307(日本乳化剤製)が1%になるように、pH10の水酸化ナトリウム水溶液に添加して良く攪拌した。これに、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD、ケッチェン・ブラック・インターナショナル製)とポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重量比で4:1になるように混合して少量の水を添加してビーズミルで分散させて得たブラック分散液を添加した。更に等量に混合したグリセリン・ジエチレングリコール・2−ピロリドン混合液を添加した。界面活性剤含有水溶液と、ブラック分散液と、グリセリン・ジエチレングリコール・2−ピロリドン混合液は重量比で1:1:1となるようにし、トリエタノールアミンでpH8に調整することでインク組成物を得た。
【0028】
[実施例2]
非イオン性界面活性剤としてニューコール2308(日本乳化剤製)を使用した以外は実施例1と同様である。
[実施例3]
ブラック分散液にポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを使用しないこと以外は実施例1と同様である。
[実施例4]
顔料として、カーボンブラックの替わりにピグメントイエロー152を使用したこと以外は実施例3と同様である。
[実施例5]
顔料として、カーボンブラックの替わりにピグメントブルー15を使用したこと以外は実施例3と同様である。
[実施例6]
顔料として、カーボンブラックの替わりにピグメントレッド83を使用したこと以外は実施例3と同様である。
【0029】
[比較例1]
260mmolのアクリルアミド、0.5mmolのS−シアノメチル−S−ドデシルトリチオカーボネート、及び0.5mmolのアゾビスイソブチロニトリルを混合して、アルゴン雰囲気下60℃、6時間重合した。反応後、メタノール及び水で透析を行い、凍結乾燥により回収した。
前述で得たポリマーが3%になるように、また非イオン性界面活性剤としてニューコール2308(日本乳化剤製)が0.5%になるように、pH10の水酸化ナトリウム水溶液に添加して良く攪拌した。これに、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD、ケッチェン・ブラック・インターナショナル製)とポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重量比で4:1になるように混合して少量の水を添加してビーズミルで分散させて得たブラック分散液を添加した。更に等量に混合したグリセリン・ジエチレングリコール・2−ピロリドン混合液を添加した。界面活性剤含有水溶液と、ブラック分散液と、グリセリン・ジエチレングリコール・2−ピロリドン混合液は重量比で1:1:1となるようにし、トリエタノールアミンでpH8に調整することでインク組成物を得た。
【0030】
[比較例2]
ABAブロックポリマー型界面活性剤を3%とした以外は、実施例1と同様である。
【0031】
実施例1〜6、及び比較例1〜2で得られたインク組成物を25℃と65℃の条件で粘度を測定した。25℃での粘度が5mPas以下は○判定とし、5〜20mPasの場合は△判定、20mPas以上の場合は×判定とした。
また、65℃での粘度が1000mPas以上の場合は○判定とし、1000〜50mPasの場合は△判定、50mPas以下の場合は×判定とした。この結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
次に、図1で示したライン型記録ヘッド13Y、13C、13M、13Bk、中間転写ローラ11、加圧ローラ15、クリーニングユニット(温度検知装置内蔵)12、温度調整装置16を1式とした評価装置を用意した。
中間転写ローラの支持体は直径20mm、長さ250mmのアルミ素管で、外周にシリコーンゴム層を0.2mmの厚みで形成したものであり、時計回り方向に200mm/sで回転駆動させている。
中間転写ローラ表面は温度調整装置により65℃に温調されている。加圧ローラは、荷重10kgf/cmで中間転写ローラに押し当てられており、中間転写体の駆動の連れまわりで反時計回り方向に回転している。中間転写ローラの表面から500μmのギャップ距離で離間させて、ライン型記録ヘッド(市販インクジェットプリンタGX5000、リコー製)を配置した。圧電素子駆動手段(図示せず)により中間転写ローラ表面には任意のパターンのインクドットを形成することができる。
【0034】
インクドットは、中間転写ローラと加圧ローラとの間に記録用紙(リコー製:type6200)を通紙することで普通紙表面に転写させる。
ライン型記録ヘッドにより、中間転写ローラ表面の移動方向と直交方向(副走査方向)に約1インチ幅の連続した帯状領域に、主走査方向300dpi、副走査方向300dpiのブラックインク網点を形成した。一点あたり10pLとなるように圧電素子駆動手段を調整した。中間転写ローラの駆動を途中で止めて、中間転写ローラ上のブラックインク網点をデジタルマイクロスコープで観察してビーディング具合を評価した。
その結果、ブラックインクは実施例1〜6及び比較例1〜2で得たものを使用した。比較例のインクは中間転写ローラ上でビーディングを起こしていた。一方、実施例1〜6のインクはビーディングが抑制されていた。
【0035】
次に、本発明のインク組成物等について詳細に説明する。
[非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤は、以下のいずれのものでも適応できる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、アルキルポリグルコシドなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルなどの多環フェニルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテルなどのアルキルアミンエーテル型、ポリオキシエチレンアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレートなどの脂肪酸エステル型が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の曇点としては、インク安定性の観点からすると高いほうがよく、投入エネルギー低減の観点からすると低いほうが好ましい。そのため、上述の界面活性剤の曇点としては40〜80℃のものが好ましく、50〜70℃のものがより好ましい。
【0036】
[ABAブロックポリマー型界面活性剤]
ABAブロックポリマー型界面活性剤は、Aブロックが疎水性、Bブロックが親水性であればいずれのものでも適応できる。Aブロックとして直鎖アルキル基、分岐アルキル基、多環フェニル基、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、及びそれらの誘導体などが挙げられる。また、Bブロックとして非イオン性、イオン性いずれの場合でも良い。非イオン性ブロックの例として、ポリオキシアルキレン、及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、及びそれらの誘導体、ポリビニルピロリドン、及びその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド及びそれらの誘導体など挙げられる。
【0037】
イオン性ブロックの例として、ポリアクリル酸塩、及びその誘導体、ポリメタクリル酸塩、及びその誘導体、ポリアクリル酸アルキル四級アンモニウム塩、及びその誘導体、ポリメタクリル酸アルキル四級アンモニウム塩、及びその誘導体、ポリアクリルアミドアルキル四級アンモニウム塩、及びその誘導体、ポリスチレンスルホン酸塩、及びその誘導体等、が挙げられる。
また、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、メチルデンプン、エチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルデンプンなどのデンプン誘導体、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸誘導体、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲンなどの動物系ポリマーの誘導体、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、カラギーナンなどの植物系ポリマーの誘導体、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、プルラン、カードランなどの微生物系ポリマーの誘導体等も挙げられる。Bブロックのポリマーは、下限臨界溶液温度を有していないほうが望ましい。
下限臨界溶液温度を有しているポリマーである場合、その温度は非イオン性界面活性剤の曇点より高い必要があり、第一の温度範囲は曇点より高くかつBブロックの下限臨界溶液温度より高い範囲内である。
【0038】
ABAトリブロックポリマーの平均重量分子量としては特に制限がないが、完全に溶解したゾル状態でのインクジェット吐出性を考慮するとポリマー分子量は小さいほうが好ましく、着弾後のゲル状態の強度を考慮するとポリマーの分子量は大きいほうが好ましい。そのため、1万以上10万以下の範囲のものが好ましい。また、2万以上5万以下のものがより好ましい。インク組成物中のポリマーの濃度としては、1重量%以上10重量%以下の範囲が好ましく、2重量%以上5重量%以下がより好ましい。
ABAブロックポリマー型界面活性剤は着色剤とは独立して存在している場合であってもそうでない場合であっても構わない。ここでいう独立とは、ポリマーが溶解・分散した状態である低粘度状態のときに、着色剤とポリマーとの間に化学的相互作用が小さいことを指す。独立でない場合は、着色剤(主に顔料)の表面に疎水性Aブロックが吸着している状態を指す。
【0039】
吐出時(ゾル状態)のインク組成物の粘度範囲は、粘度が1〜20mPa・s、好ましく2〜8mPa・sであり、着弾時のインク組成物の粘度変化は、少なくとも10倍、好ましくは100倍、より好ましくは1000倍以上の粘度増加、ゲル状態になることである。その他のインク組成物物性の好適な範囲は、表面張力が10〜60mN/m、好ましくは20〜50mN/m、導電率が0.01〜1S/m、好ましくは0.02〜0.2S/mである。
【0040】
[着色剤成分]
本発明に用いる着色剤成分の具体例としては、例えば、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、食用染料に分類される染料を挙げることができる。
より具体的には、酸性染料および食用染料として、C.I.アシッドイエロー 17、23、42、44、79、142 C.I.アシッドレッド 1、8、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、87、89、92、97、106、111、114、115、134、186、249、254、289C.I.アシッドブルー 9、29、45、92、249 C.I.アシッドブラック 1、2、7、24、26、94 C.I.フードイエロー 3、4 C.I.フードレッド7、9、14 C.I.フードブラック 1、2等がある。
【0041】
直接性染料として、 C.I.ダイレクトイエロー 1、12、24、26、33、44、50、86、120、132、142、144C.I.ダイレクトレッド 1、4、9、13、17、20、28、31、39、80、81、83、89、225、227 C.I.ダイレクトオレンジ 26、29、62、102C.I.ダイレクトブルー 1、2、6、15、22、25、71、76、79、86、87、90、98、163、165、199、202 C.I.ダイレクトブラック 19、22、32、38、51、56、71、74、75、77、154、168、171等がある。
反応性染料としてC.I.リアクティブ.ブラック3、4、7、11、12、17、C.I.リアクティブ.イエロー1、5、11、13、14、20、21、22、25、40、47、51、55、65、67、C.I.リアクティブ.レッド1、14、17、25、26、32、37、44、46、55、60、66、74、79、96、97、C.I.リアクティブ.ブルー1、2、7、14、15、23、32、35、38、41、63、80、95等があり、溶解性の高さ、色調の良好さ、本発明における方法で記録した場合の耐水性の良さから、好ましく用いることができる。
【0042】
または、無機顔料、有機顔料といった顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの白色顔料や酸化鉄などの黒色顔料などを用いることが出来る。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。また、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0043】
より具体的には、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(ベンガラ)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
【0044】
顔料の粒径に特に制限は無いが、最大個数換算で最大頻度が20〜150nmの粒径の顔料インクを用いることが好ましい。粒径が150nmを超えると、記録液としての顔料分散安定性が悪くなるばかりでなく、記録液の吐出安定性も劣化し、画像濃度などの画像品質も低くなり好ましくない。粒径が20nm未満では、記録液の保存安定性、プリンタでの噴射特性は安定し高い画像品質も得られるが、そのように細かな粒径にまで分散せしめるのは、分散操作や、分級操作が複雑となり、経済的に記録液を製造することが困難となる。
【0045】
非イオン性界面活性剤の他にイオン性界面活性剤を複合しても構わない。スルホン酸塩系界面活性剤の具体例としては、ドデシルスルホン酸およびその塩、デシルスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルスルホン酸およびその塩、ラウリル硫酸塩、オレイル硫酸塩などのアルキル硫酸エルテル類、ドデシルベンゼンスルホン酸およびその塩、ラウリルベンゼンスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルベンゼンスルホン酸とその塩、ジオクチルスルホ琥珀酸およびその塩、ジヘキシルスルホ琥珀酸およびその塩、またそのようなジアルキルスルホ琥珀酸およびその塩、ナフチルスルホン酸およびその塩、またそのような芳香族アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、フッ素化アルキルスルホン酸およびその塩等のフッ素系アニオン性界面活性剤などが挙げられる。
カルボン酸塩系界面活性剤の具体例として、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油カリウム、アルケニルコハク酸ジナトリウムなどが挙げられる。
【0046】
本発明のインク組成物は、水を主な液媒体として使用するが、インクを所望の物性にするため、あるいはインクの乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するため、後述の水溶性有機溶媒を保湿剤成分として使用することが好ましい。
水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。
【0047】
また、その他の保湿成分として、ソルビトール等の糖アルコール、ヒアルロン酸等の多糖類、ポリエチレングリコール等の高分子、また、尿素、乳酸、クエン酸塩、アミノ酸系といった天然保湿成分も用いることができる。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。これらの水溶性有機溶媒の含有量は特に制限はないが、好ましくはインク全体の1〜60重量%、更に好ましくは10〜40重量%の範囲で用いる。
【0048】
酸性pH調整剤としては、ホウ酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、塩化アンモニウム等を用いることができる。アルカリ性pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物、四級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を用いることができる。
その他、必要に応じてpH緩衝剤、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、防錆剤等の添加剤を用いても構わない。
【0049】
[中間転写体]
中間転写体は、アルミニウム製の支持体と表面層としてシリコーンゴムからなるものが用いられるが、支持体であるアルミニウム、表面層であるシリコーンゴムはこれに限ったものではない。支持体は良熱伝導性で機械的強度がある必要があり好適には金属やその合金が用いられる。また、表面層は、良熱伝導性・撥水性が高く平滑な弾性材料であればよい。熱伝導性は、温度調整手段から供給される熱エネルギーを効率的に中間転写体表面に伝達する機能として必要である。
撥水性は、インク組成物が中間転写体の表面層から紙などの被記録媒体へ転写する時の転写しやすさの指標となり、撥水性が高いほど転写率が良い。
しかしその反面、ゲル化していない通常のインク組成物では着弾位置での固定化が困難でビーディングの原因となる。弾性は、転写の際に必要な機能で、中間転写体の表面層が紙の繊維に沿って変形することで接触面積が向上し高い転写率が達成できる。低い圧力で転写するにはある程度柔らかい表面層材料を選択しなければならない。
【0050】
これらの機能を満たす材料として、例えば、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム材料単体、もしくはこれらにカーボンブラックやカーボンナノチューブ、金や銀などの金属微粒子を混入させた熱伝導性ゴムを用いればよい。
熱伝導性を上げるためには良導電性無機微粒子を増やすことが考えられるが、表面の導電性微粒子の密度が高いと撥水性低下の要因となる。
また、撥水性を上げるためシリコーンオイルを含浸させたものでも構わないし、表面層は単層構造、多層構造のどちらでも構わない。撥水性は水の後退接触角が60°以上、好ましくは80°以上であり、硬度はJIS−Aで60以下、好ましくは40以下である。また、表面層の厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。熱伝導率は0.5W/(m・K)以上、好ましくは2W/(m・K)である。
【0051】
中間転写体側からの熱伝達を抑えるため、上述のように、記録ヘッドのノズル面側が断熱構造をとっている、あるいは断熱材を備えていてもよい。好ましくは、記録ヘッド全体が断熱構造をとっている、あるいは断熱材を備えている。断熱材としては、発泡材質であることが好ましく、発泡ポリウレタンなどのような0.05W/(m・K)以下のものが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
11 中間転写体としての中間転写ローラ
14 被記録媒体としての記録用紙
15 転写手段としての加圧ローラ
16 温度調整手段
35 加熱手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開昭55−65269号公報
【特許文献2】特開昭56−86789号公報
【特許文献3】特開昭55−144172号公報
【特許文献4】特開昭55−81992号公報
【特許文献5】特開昭52−53012号公報
【特許文献6】特開昭56−89594号公報
【特許文献7】特開昭56−89595号公報
【特許文献8】特開平5−96720号公報
【特許文献9】特開昭64−63185号公報
【特許文献10】特開平8−20159号公報
【特許文献11】特開平8−20161号公報
【特許文献12】特開平8−142500号公報
【特許文献13】特開平10−250216号公報
【特許文献14】特開平11−10856号公報
【特許文献15】特開2000−44855号公報
【特許文献16】特開2000−63719号公報
【特許文献17】米国特許第4538156号
【特許文献18】米国特許第5099256号
【特許文献19】特開昭62−92849号公報
【特許文献20】特開平11−188858号公報
【特許文献21】特開2000−343808号公報
【特許文献22】特許第3658765号公報
【特許文献23】特開2003−246135号公報
【特許文献24】特開2002−370441号公報
【特許文献25】特開2005−170036号公報
【特許文献26】特開2003−82265号公報
【特許文献27】特開2008−019286号公報
【特許文献28】特開2004−026947号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体と、
水と、非イオン性界面活性剤と、疎水性Aブロックと親水性BブロックからなるABAブロックポリマー型界面活性剤とを少なくとも有するインク組成物と、
前記中間転写体の表面温度を前記非イオン性界面活性剤の曇点よりも高い第1の温度範囲に調整する温度調整手段と、
前記中間転写体に対向して配置された記録ヘッドを有し、前記インク組成物を画像信号に応じて前記記録ヘッドから吐出して前記中間転写体上に画像を形成する画像形成手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を被記録媒体に転写する転写手段と、を有するインクジェット画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記温度調整手段は、前記画像形成手段による画像形成工程を行う前に前記中間転写体を第1の温度範囲に調整し、全画像信号に応じた画像形成工程と被記録媒体への転写工程が完了したのちに、前記中間転写体を前記非イオン性界面活性剤の曇点よりも低い第2の温度範囲に調整し、第2の温度範囲に到達したのちに温度調整を休止することを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記インク組成物は、前記温度調整手段から前記中間転写体を介して供給される熱により、第1の温度範囲に加熱されるとゾル状態からゲル状態に変化し、第2の温度範囲に冷却されるとゲル状態からゾル状態に変化することを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記記録ヘッドの前記中間転写体側の表面は、前記中間転写体からの熱伝達による前記インク組成物のゲル化を抑制する断熱層又は断熱材を有していることを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記記録ヘッドに、該記録ヘッドを第2の温度範囲に冷却する冷却手段を設けたことを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成装置において、
前記インク組成物には、さらに染料及び顔料の少なくともいずれかを含むことを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成装置において、
被記録媒体に前記インク組成物を転写する前に予め被記録媒体を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記加熱手段により、転写工程での被記録媒体の表面温度が第1の温度範囲となっていることを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のインクジェット画像形成装置において、
転写工程後の被記録媒体が再度、前記加熱手段を通過することを特徴とするインクジェット画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240372(P2012−240372A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114930(P2011−114930)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】