説明

インクジェット記録装置および記録方法

【課題】記録を行なわない空白領域が存在する場合にプリントスループットを向上させる。
【解決手段】インクを吐出する記録ヘッドを用いて搬送されるシートに記録を行なうインクジェット記録装置であって、記録前のシートに熱を与える予熱手段7と、記録によってインクが付与されたシートに熱を与えて定着させる定着手段10と、シートが搬送される方向においてシートに記録を行わない空白領域が所定長さよりも長い場合には、前記空白領域が前記記録ヘッドの記録位置を記録時の搬送速度よりも高速に通過するよう制御し、且つ前記空白領域に続く記録領域が前記記録位置より上流の所定位置に達したら前記記録時の搬送速度に戻るよう制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥手段でシート上のインクを乾燥させることができるインクジェット記録装置および乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、シートの種類、記録速度、インク打ち込み量、周囲環境の温湿度などによって、インクが乾燥しにくい場合がある。したがって、インクの乾燥を行なうために、シートに画像を形成する領域よりもシートを排紙する領域側に乾燥領域を設け、記録をしつつインクの乾燥を行なうインクジェット記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この乾燥領域を備えた記録装置では、一定の速度でシートを搬送しながら、シートの記録を行なった領域のインクを乾燥させ、インクをシートに定着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−174887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートに、記録ヘッドの走査方向に記録を行なわない領域(記録データがない空白領域)が存在することがある。この空白領域を高速で搬送する(空送りする)と、トータルのプリントスループット向上が期待できる。しかし、高速搬送に続いて次の記録を行なう領域のシートの温度が低いと、シートの熱分布が一定でなくなり、インクの乾燥むらが生じる。その結果、濃度むらが発生し、画像品質が低下することになる。
【0005】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、記録を行なわない空白領域が存在する場合に、プリントスループットを向上さえることができる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明では、インクを吐出する記録ヘッドを用いて搬送されるシートに記録を行なうインクジェット記録装置であって、
記録前のシートに熱を与える予熱手段と、記録によってインクが付与されたシートに熱を与えて定着させる定着手段と、シートが搬送される方向においてシートに記録を行わない空白領域が所定長さよりも長い場合には、前記空白領域が前記記録ヘッドの記録位置を記録時の搬送速度よりも高速に通過するよう制御し、且つ前記空白領域に続く記録領域が前記記録位置より上流の所定位置に達したら前記記録時の搬送速度に戻るよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成によれば、記録を行なわない空白領域が存在する場合に、プリントスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のインクジェット記録装置を示す概略構成図である。
【図2】実施形態の記録装置を示すブロック図である。
【図3】実施形態の記録装置の画像形成部および乾燥部を示す概略構成図である。
【図4】実施形態の第1の領域と第2の領域を決定するテーブルを示す表である。
【図5】実施形態の搬送制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】記録を行なわない領域がない場合の記録装置の状態について説明する図である。
【図7】実施形態の高速搬送を行なわない場合の記録装置の状態を示す図である。
【図8】実施形態の高速搬送を行なう場合の記録装置の状態を示す図である。
【図9】実施形態の高速搬送によりシートが少し搬送された状態を示す図である。
【図10】実施形態の記録を行なう領域が第2の領域に搬送された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置を示す概略構成図である。本実施形態の記録装置は、大判のシートに記録を行なうものである。本実施形態の装置で使用するシートは、水分を弾く塩化ビニール等の受容層を持たないシート(以下、受容層無しシートと呼ぶ)を想定している。また、一般的な受容層有りのシートも使用可能である。使用するインクは、シート上で熱を加えることによってインク中の水分が蒸発し、続いて軟化、そして被膜化するという性質を持つエマルション成分を多く含むものを想定している。シート上でインクが被膜化することによって画像の耐候性、耐水性、耐擦化性を向上させることができる。 記録装置1は、1200dpiの解像度を有する記録ヘッド3を用いて制御部2で記録制御しながらシリアルプリント方式で記録を行なう。なお、ラインヘッドを用いてラインプリント方式でプリントを行うような形態であってもよい。記録ヘッドは、ノズルを縦方向に1280ノズル有している。本実施形態の記録装置では、ロール紙を収納するロール紙ユニット4を備え、ロール紙から引き出されたシート上に記録を行なっている。
【0011】
記録装置1とホストPC14は、LANのネットワーク9により接続されている。排紙部5は、記録ヘッド3により記録されたシートが不図示のカッターによりカットされ、排紙される。操作部6は、記録装置の各操作をユーザが指示するためのものである。
【0012】
記録装置1には、塩化ビニール等の発水性の高い受容層無しシートでも、インクを確実に定着させるために、予熱手段と定着手段が設けられている。予熱ヒータ7(予熱手段)は、記録前のシートのインク付与面に熱を与えて予熱を行う。定着ヒータ10(定着手段)は、記録ヘッドでインクが付与されたシートのインク付与面に熱を与えて、インクを定着させる。第1の温度センサ11は、給紙手段4に比較的近い位置のシートの温度を計測する。また、第2の温度センサ12は。予熱ヒータ7に比較的近い位置のシートの温度を計測する。また、第3の温度センサ13は、定着ヒータに比較的近い位置のシートの温度を計測する。
【0013】
図2は、本実施形態の記録装置を示すブロック図である。制御部2001は、画像形成装置の制御を行い、CPU(中央演算装置)2002を有している。また制御部2001は、ROM2003から読み出したプログラムを実行することで制御を行う。
【0014】
RAM2004は、外部から受信した記録ジョブデータやプリンタコントローラから受信した画像データを格納するためのデータメモリ領域と、制御部2001がプログラムを実行するためのワークメモリ領域は、それぞれ独立してRAM2004上に確保される。不揮発性メモリ2005は、FlashROMやEEPROMで構成されており、不揮発性メモリ2005上には、画像形成装置に現在設定されているシートの種類のような設定値が、電力供給から独立して不揮発に記憶される。制御部2001の画像処理回路2006は、プリンタコントローラから受信した画像データの各画素データを処理して、記録ヘッドに送るヘッドデータ信号を出力する。
【0015】
ストレージ2007は、外部I/F部2008から受信した記録ジョブデータをファイルとして保存する。外部I/F部2008は、IPプロトコルのようなネットワーク接続プロトコルによる送受信が可能である。操作部2009は、CPUからのメッセージをLCDやLEDによってユーザに表示し、キー入力装置によってユーザからの指示を画像形成装置に入力する。メカ制御部2010は、図示していない給紙駆動部、カッター駆動部、排紙駆動部を制御し、シートの搬送制御を行う。記録制御部2011は、図示していないインク供給部、キャリッジ駆動部を制御し、記録ヘッドを駆動し、メカ制御部2010とも同期して、シート上に記録を実行する。記録ヘッド回路2012は、記録制御部2011の制御に従って、記録ヘッドノズルからのインクの吐出を行う。ヘッド温度センサ2013は、本実施形態ではヘッドと一体化してダイオードセンサで構成され、記録ヘッド回路2012を経由して、ヘッド面の温度を制御部2001に伝えることができる。 予熱部2014は、本実施形態における予熱ヒータ1007を駆動する。熱定着部2015は、本実施形態における定着ヒータ1010を駆動する。クリーニング部2016は、記録ヘッドの清掃手段であり、脱着部2017と変速部2018を有している。メインファン2019は、外気と機体内の空気を攪拌する。
【0016】
第1の温度センサ部2020は、第1の温度センサ11を駆動し、比較的給紙部4に近い位置のシートの温度を測定し、制御部2001に伝える。第2の温度センサ部2021は、第2の温度センサ12を駆動し、比較的予熱ヒータ1007に近い位置のシートの温度を測定し、制御部2001に伝える。第3の温度センサ部2022は、第3の温度センサ13を駆動し、比較的定着ヒータ10に近い位置のシートの温度を測定し、制御部2001に伝えることができる。
【0017】
次に、本実施形態の記録方法について説明する。本実施形態の記録方法では、シリアルプリントで記録ヘッドの走査方向に記録を行なわない空白領域がある場合、その領域のシートの搬送方向の長さが所定長さよりも長い場合に、シートの搬送を通常の搬送速度よりも高速で連続送りして搬送する。そして、空白領域が記録ヘッドの記録位置より上流の所定位置に達したら、高速搬送を終えて通常の速度に戻る。ここで、所定長さは予熱手段と乾燥手段のシート搬送方向における配置関係に基づいて設定される。また、所定位置は記録ヘッドと予熱手段のシート搬送方向における配置関係に基づいて設定される。
【0018】
図3は、本実施形態の記録装置の画像形成部および乾燥部を示す概略構成図である。ロール紙4から引き出されたシートPは、図中に示すy方向に乾燥される。シートPの中で画像が記録されない空白領域のシート搬送方向の長さが、所定長さ(第1の長さ)の第1の領域X1よりも長い場合には、通常の搬送よりも速い搬送速度で高速搬送を行なって、画像形成部(記録ヘッド3)の下を高速に通過させる。第1の領域X1は、記録装置の搬送領域において、シート中の画像が記録されている領域の乾燥が終了する地点3006から開始する。そして、第1の領域X1は、記録ヘッド3、定着ヒータ7よりも搬送領域において上流方向である。
【0019】
この高速搬送は、記録ヘッド3の記録位置から上流側に別の所定距離(第2の長さ)だけ離れた所定位置を起点とする第2の領域X2に、記録を行なう領域が来ると終了し、通常の記録時の搬送速度に戻る。この第2の領域X2は、記録が行なわれる領域に予熱ヒータ7から熱が伝えられ、高速搬送前に記録を行なった領域とほぼ同じ温度になるような領域である。
【0020】
なお、本明細書において搬送速度とは、シリアルプリントにおいて、ある所定時間の中で繰り返し行うシートのステップ送りあるいは連続送りでシートが搬送される合計距離を前記所定時間で割って求められる平均速度を意味する。つまり、1つのステップ送りの中の速度を意味するものではない。
【0021】
このような第1の領域X1と第2の領域X2は、予めROM2003などに記憶されているテーブルを用い、第1から第3の温度センサの温度に基づき決定される。
【0022】
図4は、本実施形態の第1の領域X1および第2の領域X2を決定するテーブルを示す表である。本図に示すテーブルは、普通紙のドラフト記録を行う場合のテーブルである。本実施形態のテーブルにより、上述した第1の領域X1と第2の領域X2を、温度センサで計測した温度に基づき決定する。
【0023】
本実施形態において、温度の影響は、シートの種類と、記録の仕方に影響を受けるため、そのそれぞれに分けて、第1の領域X1と第2の領域X2の既定値を記憶する必要がある。また、第1の領域X1と第2の領域X2は、第1の温度センサで測定された加熱前のシートの温度からも影響を受けるため、第1の温度センサで測定されたシートの温度毎に分けている。
【0024】
図4(a)は、第1の温度センサ11で測定したシートの温度が20〜30℃の場合の表である。また、図4(b)は、第1の温度センタで測定したシートの温度が10℃から20℃の場合の表である。第1の領域X1は、シート中に記録ヘッドの走査方向に記録を行なわない領域(記録データがない領域)がある場合に、通常の速度よりも高速でシートを搬送することができる、記録を行なわない領域の基準を示す距離である。すなわち、記録を行なわない領域のシートの搬送方向の距離が、第1の領域X1よりも長い場合には、記録を行なわない領域を、シートを通常の速度よりも高速の速度で搬送する。この第1の領域X1は、記録を行なわない領域の下流側の記録ヘッドの走査方向に記録を行なう領域(記録データがある領域)の搬送方向上流側の記録がされて、定着ヒータ10により乾燥されてインクの定着が終わった位置から始まる。そして、後述する第2の領域の上流側の位置から定められた距離、上流側に離れた位置である。少し上流側に離れた位置とは、第2の領域まで高速で搬送を行なうことになるため、第2の領域よりも上流側であればよいが、実際には高速で搬送を行なうためには、高速の搬送を開始してからモータの駆動が高速の搬送の状態になるまで、若干の距離が必要になる。したがって、第2の領域からモーらの駆動が高速の状態になるまでの距離以上、記録を行なわない領域がなければ高速の搬送にする意味がない。
【0025】
本実施形態では、モータの駆動が高速の状態になるまでの距離を加味しているが、モータも駆動が高速の状態になるまで若干の距離が必要にならない場合には、第1の領域X1の上流側の位置は、第2の領域X2の上流側の位置よりも長いものであればよい。
【0026】
また、第2の領域X2は、シートの中で記録ヘッドの走査方向に記録を行なわない領域を高速搬送する場合に、高速搬送を終了する位置を示す距離を持つ。第2の領域X2は、記録ヘッド3から上流側の距離を規定しているが、その距離の上流側に位置は、その場所から通常搬送しても、余熱ヒータの熱により高速記録を行なう前の記録領域とほぼ同じ温度で記録ヘッドにより記録を行なうことができる距離である。この距離は、シートの温度によっても異なるので、第1の温度センサ、第2の温度センサ、第3の温度センサにより計測された温度の結果に基づいて定めされる。高速搬送を終えた後の記録領域が、温度低下が起こり記録を再開することができない、また温度が低いまま記録を行なった場合に相互の熱分布が異なることにより定着むらが生じることを、記録ヘッドから距離を持たせることにより解消している。
【0027】
さらに、第1の領域X1および第2の領域X2を、各センサで測定した温度以外にも、シートの種類と記録の仕方から検索参照することで、制御部2001は、状況に適した、第1の領域と第2の領域を取得して用いることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、温度センサを3つ設け、それぞれ温度を計測して、第1の領域および第2の領域を決定しているが、温度センサは1つでもよく、1つの温度にも続き第1の領域および第2の領域を決定してもよい。
【0029】
次に、具体的にシート中に記録ヘッドの走査方向に記録を行なわない領域があるときであって、高速搬送を行なう場合、行なわない場合について、詳細に説明をする。
【0030】
まず、シート中に記録ヘッドの走査方向に記録を行なわない領域について説明する前に、指標となるシート中に記録を行なわない領域がない場合についてのシートの温度分布について説明をする。
【0031】
図5は、本実施形態の搬送制御の流れを示すフローチャートである。本実施形態の制御は、制御部2001で実行されるプログラムにより実行される。
【0032】
まず、現在、シートの搬送が高速搬送であるか否かを判定する(ステップS51)。高速搬送が行なわれていなければ、図4に示すテーブルを用いて第1の領域と第2の領域を取得する。そして、記録を行なわない領域のシート搬送方向の長さと、第1の領域とを比較し、第1の領域内であるか否かを判定する(ステップS52)。そして、記録を行なわない領域の搬送方向の長さが第1の領域以上であれば、シートの記録を行なわない領域の下流側の端部を第2の領域の上流側の端部まで高速で搬送する。
【0033】
図6は、シート中に記録を行なわない領域がない場合の記録装置の状態について説明する図である。画像形成部(記録ヘッド3)および乾燥部、温度分布について示している。
【0034】
温度分布を示すグラフにおいて、横軸は、シートの搬送方向に位置を示し、縦軸はシートの温度を示している。温度分布9003は、適正温度9007を下回ると記録部においてシートが充分加熱されていない状態を示している。また、温度分布9003は、適正温度9008を下回ると、定着部により加熱が充分されていない状態を示している。図6では、シートの全域に記録を行なう場合であり、この場合は予熱ヒータ7と定着ヒータ10により加熱されている箇所の温度が上がる。
【0035】
図7は、シート中に記録を行なわない空白領域があるが、高速搬送を行なわない場合の記録装置の状態について説明をする図である。
【0036】
シートの中で記録を行なわない空白領域5003(白抜きの部分)が存在するが、空白領域5003の搬送方向の距離が第1の領域X1よりも短い。したがって、高速搬送は行なわず、空白領域5003も通常の記録時と同じ搬送速度で搬送される。上述したように、ここで言う搬送速度とは、ある所定時間の中で繰り返し行うシートのステップ送りでシートが搬送される距離を前記所定時間で割って求められる平均速度を意味する。
【0037】
図7の温度分布は、高速記録を行なわない状態におけるシートの温度分布について示す。図6に示す温度分布に比べ、予熱ヒータ7により加熱されている部分で少し高くなっている。これは、記録を行なわない領域ではシートの搬送速度は記録を行なうときと同じであるため、付与されたインクによって奪われる熱量が無い分、シートの温度が少し上がるためである。
【0038】
図8は、シート中に記録を行なわない領域があり、高速搬送を行なう場合の記録装置の状態を示す図である。記録が行われない空白領域6003(白抜きの部分)のシート搬送方向の長さは、第1の領域X1よりも長い。したがって、空白領域6003が画像形成部(記録ヘッド3)の下を高速に通過するよう高速搬送が行なわれる。
【0039】
この場合の温度分布11001は。図6に示す温度分布10001と比較しても、予熱ヒータ部分9005がさらに少し高くなっている。これは、記録が行われないが、シート搬送速度は、通常の状態とまだ同じであるため、付与されたインクによって奪われる熱量が無い分、シートの温度がさらに少し上がったことを示している。
【0040】
図9は、図8を用いて説明したシートの高速搬送によりシートが少し搬送されたときの記録装置の状態を示す図である。この状態では、シート中、空白領域6003に続いて記録を行なう領域6002は記録ヘッド3に近づいているが、まだ第2の領域X2よりも上流側にある。
【0041】
この場合の温度分布12001は、図7に示す温度分布と比較しても、予熱ヒータ部分9005と、定着ヒータ部分9006の温度が少し低くなっている。これは、記録を行なわれずにシートの搬送が高速で行なわれたために、両ヒータにより十分に温められないシートが記録部や定着部に進入する。これにより、第2の温度センサと第3の温度センサで測定されるシートの温度が少し低くなるのである。
【0042】
図10は、図9を用いて説明したシートの高速搬送によりシートの次に記録を行なう領域6002の先端部が、第2の領域X2まで搬送されたときの記録装置の状態を示している。本図では、画像形成部および乾燥部、温度分布について示している。この状態において、シートの搬送が高速搬送から通常の搬送速度に戻る。
【0043】
この場合の温度分布13001は、シートの搬送が高速搬送から通常の搬送に戻るため、予熱ヒータ部分9005と定着ヒータ部分9006の温度が、図6に示す温度分布9003の予熱ヒータ部分9005と定着ヒータ部分9006の温度と同じになる。このように、シートの搬送速度が戻ったために、両ヒータによるシートの加熱が十分に行なわれ、通常の状態に回復したことがわかる。
【0044】
以上説明してきたように、本実施形態で実施される搬送制御により記録が行なわれない部分についてシートの搬送を高速搬送にした場合であっても、シート中の記録が行なわれる領域については温度分布を適正値に保つことができる。
【0045】
以上説明したように、シートの温度測定と高速搬送の制御によって、インクを乾燥させて定着させるインクジェット記録装置であっても、乾燥むらを生じないで走査方向に記録を行わない領域を高速でシートを搬送する。これにより、トータルのプリントスループットが向上し、且つ、無駄な乾燥のためのエネルギーを消費しないので省エネルギーの効果も生じる。
【0046】
なお、本実施形態では、エマルション成分を多く含むインクを使用しているが、本発明はそのようなインクに限定されるものではなく、インクの成分は如何なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
3 記録ヘッド
7 予熱ヒータ(予熱手段)
10 定着ヒータ(定着手段)
11 第1の温度センサ
12 第2の温度センサ
13 第3の温度センサ
X1 第1の領域
X2 第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを用いて搬送されるシートに記録を行なうインクジェット記録装置であって、
記録前のシートに熱を与える予熱手段と、
記録によってインクが付与されたシートに熱を与えて定着させる定着手段と、
シートが搬送される方向においてシートに記録を行わない空白領域が所定長さよりも長い場合には、前記空白領域が前記記録ヘッドの記録位置を記録時の搬送速度よりも高速に通過するよう制御し、且つ前記空白領域に続く記録領域が前記記録位置より上流の所定位置に達したら前記記録時の搬送速度に戻るよう制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記空白領域が前記所定長さ以下の場合には、前記高速の搬送は行わないことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記所定長さは前記予熱手段と定着手段の前記方向における配置関係に基づいて設定され、前記所定位置は前記記録ヘッドと前記予熱手段の前記方向における配置関係に基づいて設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記シートの温度を計測する1以上の温度センサをさらに備え、前記所定位置は前記温度センサにより計測された温度に基づき設定されることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記シートはインクの受容層を持たない受容層無しシートであり、前記インクはエマルション成分を含むインクであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
インクを付与する記録ヘッドを用いて搬送されるシートに記録を行なう記録方法であって、
記録によってインクが付与されたシートに熱を与えて乾燥させる工程と、
シートが搬送される方向においてシートに記録を行わない空白領域が所定長さよりも長い場合には、前記空白領域が前記記録ヘッドの記録位置を記録時の搬送速度よりも高速に通過するよう制御し、且つ前記空白領域に続く記録領域が前記記録位置より上流の所定位置に達したら前記記録時の搬送速度に戻るよう制御する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28090(P2013−28090A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166302(P2011−166302)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】