説明

インクジェット記録装置

【課題】表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体を加熱加圧してそのインク受容層を透明化するに際し、その透明化を適切に行うことができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】前記インクジェット記録装置は、記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧してインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、記録の行われた記録媒体を加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段と、を有し、加熱加圧手段は、記録媒体の記録面側に接触し、且つ2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材と、ベルト部材の、記録媒体剥離箇所よりも記録媒体搬送方向上流側を加熱する発熱体と、ベルト部材に対し記録媒体を挟んで対向して配置されたローラと、を含み構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、詳しくは、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行った後に、加熱加圧手段により記録媒体を加熱加圧するようにしたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の記録面上に微小液滴状のインクを噴射させて画像記録を行うインクジェット記録は、近年の技術進歩により銀塩写真に迫る高画質化並びに装置の低価格化が可能となるに及び急速に普及するに至っている。
【0003】
かかるインクジェット記録において用いられるインクは染料インクと顔料インクに大別される。染料インクは溶媒に可溶であり、高純度で鮮明な発色を示し、また、粒子性がないために散乱光、反射光が発生しないため、透明性が高く、色相も鮮明である一方、光化学反応等により色素分子が破壊されると、分子数の減少がそのまま着色濃度に影響するため耐光性が悪いという問題がある。これに対し、顔料インクは、溶媒に不溶であり、色素分子は粒子を形成して溶媒に分散した状態で着色に寄与しており、表面の分子が光化学反応等により破壊されたとしてもその下部に新たな色素分子層があるので、見かけ上の着色力低下が小さく、染料インクに比べて画像保存性に優れるという利点がある。
【0004】
しかし、顔料インクは粒子に起因する散乱光、反射光の影響により光沢性に劣る問題が見られる。このため、分散剤を含有する顔料インクを用いて画像を記録形成した記録媒体表面に光沢を付与し、更に画像の水との接触による滲みを防止すると共に耐擦過性を向上させる目的で、表層(画像記録面側)に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層を有する記録媒体を用いて画像を記録形成し、その後、記録媒体を加熱加圧することにより上記インク受容層中の熱可塑性樹脂粒子を溶融及び平滑化させ、該インク受容層を透明化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−341407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる技術において、記録ヘッドにより画像が記録形成された記録媒体は、インク受容層を透明化するために搬送手段によって加熱加圧手段に搬送され、加熱加圧されてインク受容層が透明化されるが、高品質な画像プリントを作成するためには、このインク受容層の透明化を適切に行うことが望まれる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体を加熱加圧してそのインク受容層を透明化するに際し、その透明化を適切に行い、高品質の画像プリントを作成することのできるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は以下の発明によって達成される。
【0009】
その他発明1は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段による記録媒体の加熱加圧時間が0.1〜2秒であることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0010】
これにより、記録媒体のインク受容層が透明化するのに必要十分な加熱加圧処理が実現でき、良質な画像プリントを作成することができる。
【0011】
その他発明2は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、記録媒体の種類に応じ、前記加熱加圧手段による記録媒体の加熱加圧時間を変更することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0012】
これにより、多様な記録媒体に対してそれぞれ最適な加熱時間で加熱加圧処理を行うことができ、良質な画像プリント作成に有効である。
【0013】
その他発明3は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、記録媒体の種類に応じ、加熱加圧手段の保持温度範囲を変更することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0014】
これにより、多様な記録媒体に対してそれぞれ最適な加熱温度で加熱加圧処理を行うことができ、良質な画像プリント作成に有効である。
【0015】
その他発明4は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段が、記録媒体を挟んで互いに対向する2つのローラを含んで構成され、該2つのローラの少なくとも一方の記録媒体接触面が縦弾性率(ヤング率)10〜10Paの部材で構成されていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0016】
これにより、適切な加圧力及び加圧時間を簡単な構成で得ることができる。
【0017】
本発明1は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置であって、前記加熱加圧手段は、前記記録媒体の記録面側に接触し、且つ2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材と、該ベルト部材の、記録媒体剥離箇所よりも記録媒体搬送方向上流側を加熱する発熱体と、該ベルト部材に対し記録媒体を挟んで対向して配置されたローラと、を含み構成されていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0018】
上記により、記録媒体の記録面側に接触するベルト部材と記録媒体の剥離箇所が発熱体配置位置よりも下流にあるため、剥離箇所における記録媒体の表面温度が発熱体による加熱温度よりも低下する。これにより、記録媒体表層の熱可塑性樹脂粒が硬化するため、剥離時に記録媒体表層の表面が荒れる恐れが少なくなり、光沢低下を防止できる。
【0019】
更に、ローラとベルト部材とが圧着することで面接触するため、高速処理時にも適切な加圧力及び加圧時間を得ることができるようになる。また、ベルト部材と該ベルト部材を懸架しているローラとの配置やベルト部材の張力を調整することで、ベルト部材と該ベルト部材に対向するローラとの接触面積及び加圧力を容易に調整可能である。
【0020】
本発明2は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段と、を有するインクジェット記録装置であって、前記加熱加圧手段は、前記記録媒体の記録面側に接触し、且つ2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材と、該ベルト部材の、記録媒体剥離箇所よりも記録媒体搬送方向上流側を加熱する発熱体と、該ベルト部材に対し記録媒体を挟んで対向して配置された2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0021】
上記により、記録媒体の記録面側に接触するベルト部材と記録媒体の剥離箇所が発熱体配置位置よりも下流にあるため、剥離箇所における記録媒体の表面温度が発熱体による加熱温度よりも低下する。これにより、記録媒体表層の熱可塑性樹脂粒が硬化するため、剥離時に記録媒体表層の表面が荒れる恐れが少なくなり、光沢低下を防止できる。
【0022】
更に、ベルト部材同士が圧着することで面接触するため、高速処理時にも適切な加圧力及び加圧時間を得ることができるようになる。また、各ローラの配置や各ベルト部材の張力を調整することで、両ベルト部材同士の接触面積及び加圧力を容易に調整可能である。更に、記録媒体の搬送方向の設計自由度も高く、装置の小型化や操作性向上に有利である。
【0023】
その他発明5は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記所定の温度範囲をT±ΔT℃としたとき、Tが50〜150℃、ΔTが10℃以下であることを特徴とする本発明1及び2、その他発明1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
【0024】
これにより、記録媒体を安定して加熱処理するのに必要十分な温度範囲で行うことができ、良質に安定してインク受容層を透明化させることが可能である。
【0025】
その他発明6は、前記加熱加圧手段による記録媒体加圧力が、9.8×10〜4.9×10Paであることを特徴とする本発明1及び2、その他発明1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
【0026】
これにより、記録媒体を安定して加圧処理するのに必要十分な加圧力で行うことができ、良質に安定してインク受容層を透明化させることが可能である。
【0027】
その他発明7は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段の記録媒体接触面を清掃する清掃手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0028】
これにより、加熱加圧手段において記録媒体との接触面が汚れて記録媒体の画像を汚したり、加熱加圧性能が低下したりすることを防止することができ、記録媒体のインク受容層を常に良質に透明化させることができる。
【0029】
その他発明8は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段の記録媒体接触面に記録媒体の一部又はインクが転写することを防止する転写防止液を前記加熱加圧手段の記録媒体接触面に付与する転写防止液付与手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0030】
これにより、加熱加圧手段の記録媒体接触面へ記録媒体の一部又はインクが転写することが防止され、記録媒体との接触面が汚れて記録媒体の画像を汚したり、加熱加圧性能が低下したりすることを防止することができ、記録媒体のインク受容層を常に良質に透明化させることができる。
【0031】
その他発明9、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段の記録媒体接触面に記録媒体の一部又はインクが転写することを防止する転写防止液を記録後且つ加熱加圧前の記録媒体に付与する転写防止液付与手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0032】
これにより、加熱加圧手段の記録媒体接触面へ記録媒体の一部又はインクが転写することが防止され、記録媒体との接触面が汚れて記録媒体の画像を汚したり、加熱加圧性能が低下したりすることを防止することができ、記録媒体のインク受容層を常に良質に透明化させることができる。
【0033】
その他発明10は、前記転写防止液は、シリコンオイルを含んでいることを特徴とするその他発明8又は9記載のインクジェット記録装置である。
【0034】
これにより、安価で安定な材料で加熱加圧手段の記録媒体接触面への転写を確実に防止できる。
【0035】
その他発明11は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記記録媒体に光沢を付与するための光沢液を前記加熱加圧手段の記録媒体接触面に付与する光沢液付与手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0036】
これにより、記録媒体表面の透明化に加えて一層の光沢を付与することができ、より高品質の画像プリントを作成することができる。
【0037】
その他発明12は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記記録媒体に光沢を付与するための光沢液を記録後の記録媒体に付与する光沢液付与手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0038】
これにより、記録媒体表面の透明化に加えて一層の光沢を付与することができ、より高品質の画像プリントを作成することができる。
【0039】
その他発明13発明は、記録媒体の種類により前記光沢液を付与するか否か制御する手段を有することを特徴とするその他発明11または12記載のインクジェット記録装置である。
【0040】
これにより、光沢を付与すべき種類の記録媒体に対してのみ自動的に選択して光沢を付与することができる。
【0041】
その他発明14は、前記光沢液を付与するか否か選択するための光沢液付与選択手段を有することを特徴とするその他発明11または12記載のインクジェット記録装置である。
【0042】
これにより、記録媒体に対して光沢を付与するか否かを、目的に応じて自由に選択することができる。
【0043】
その他発明15は、前記光沢液は、シリコンオイルを含んでいることを特徴とするその他発明11〜14のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
【0044】
これにより、安価で安定な材料で記録媒体表面に確実に光沢を付与することができる。
【0045】
その他発明16は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、一定時間記録を行わないときは、前記温度制御手段による温度制御を停止して加熱加圧手段の発熱を停止することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0046】
これにより、無駄な電力消費が抑えられ、消費電力の節約を図ることができるようになる。
【0047】
その他発明17は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、一定時間記録を行わないときは、加熱加圧手段を前記所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に保持することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0048】
これにより、消費電力の節約を図ることができる上に、加熱加圧処理開始時には加熱加圧手段を速やかに加熱させることができるため、短時間で加熱加圧処理を再開させることができる。
【0049】
その他発明18は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、一定時間記録を行わないときは、加熱加圧手段を前記所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に保持し、さらに一定時間記録を行わないときは、前記温度制御手段による温度制御を停止して加熱加圧手段の発熱を停止することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0050】
これにより、長時間に亘る無駄な電力消費が抑えられ、消費電力の節約を図ることができる上に、比較的短時間の記録休止の後に画像記録を再開したときには、加熱加圧手段を速やかに加熱させることができるため、短時間で加熱加圧処理を再開させることができる。
【0051】
その他発明19は、前記加熱加圧手段の発熱停止又は前記第2の温度範囲からの復帰後、加熱加圧手段が最低処理温度以上で且つ所定の温度範囲に達するまでの間は、加熱加圧時間を相対的に長くして記録媒体の加熱加圧処理を行うことを特徴とする本発明1及び2、その他発明16〜18のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
【0052】
これにより、加熱加圧手段が所定の温度範囲に達するまで待つ必要がなくなり、早期に加熱加圧処理を開始することができ、それだけ画像プリント作成の高速化が図れる。
【0053】
その他発明20は、記録媒体の加熱加圧時間を長くするときは、記録媒体搬送方向の単位時間長さ当りの記録時間を相対的に長くすることを特徴とするその他発明19記載のインクジェット記録装置である。
【0054】
これにより、記録ヘッドによる画像の記録速度と加熱加圧手段による記録媒体の加熱加圧処理速度とをほぼ同じにすることができるようになり、記録ヘッドと加熱加圧手段との間に記録済みの記録媒体を待機させるための特段の記録媒体収納手段等を設ける必要がなくなる。
【0055】
その他発明21は、前記記録ヘッドは、記録媒体の搬送方向に対して略直交する方向に沿って往復走査して記録を行うように構成され、該記録ヘッドの移動方向を反転させる際の停止時間を調整することにより、記録媒体搬送方向の単位長さ当りの記録時間を長くすることを特徴とするその他発明20記載のインクジェット記録装置である。
【0056】
これにより、記録ヘッドの駆動周波数と走査速度を何ら変化させずに一定とすることができ、記録ヘッドのインク射出特性が安定し、また、記録ヘッドの駆動回路や走査駆動系を単純化させることができる。
【0057】
その他発明22は、前記記録ヘッドは、記録媒体の幅全域に亘ってインク吐出ノズルが形成されたライン状ヘッドにより構成され、該記録ヘッドのインク吐出間隔を調整することにより、記録媒体搬送方向の単位長さ当りの記録時間を長くすることを特徴とするその他発明20記載のインクジェット記録装置である。
【0058】
一般に、ライン状ヘッドの場合は、走査型の記録ヘッドよりもインク吐出間隔が長いため、吐出周期を長くなるように変化させてもインク射出特性の変化が少ない利点がある。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体を加熱加圧してそのインク受容層を透明化するに際し、その透明化を適切に行い、高品質の画像プリントを作成することのできるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】加熱加圧手段の部分断面図である。
【図3】図2の(iii)−(iii)線に沿う断面図である。
【図4】加熱加圧手段の他の態様を示す構成図である。
【図5】加熱加圧手段の更に他の態様を示す構成図である。
【図6】清掃手段を示す構成図である。
【図7】清掃手段の他の態様を示す構成図である。
【図8】転写防止液付与手段を示す構成図である。
【図9】転写防止液付与手段の他の態様を示す構成図である。
【図10】転写防止液付与手段の更に他の態様を示す構成図である。
【図11】転写防止液付与手段の更に他の態様を示す構成図である。
【図12】光沢液付与手段を示す構成図である。
【図13】光沢液付与手段の他の態様を示す構成図である。
【図14】光沢液付与手段の更に他の態様を示す構成である。
【図15】光沢液付与手段の更に他の態様を示す構成図である。
【図16】光沢液の付与を選択的に行う状態を示す説明図である。
【図17】種別コードを設けた記録媒体の裏面を示す説明図である。
【図18】記録媒体種別判別センサを示す構成図である。
【図19】光沢液付与手段の制御フローを示すフローチャートである。
【図20】光沢液付与手段の他の制御フローを示すフローチャートである。
【図21】インクジェット記録装置の電気的構成を示す構成ブロック図である。
【図22】温度制御手段の第1の態様の制御フローを示すフローチャートである。
【図23】温度制御手段の第2の態様の制御フローを示すフローチャートである。
【図24】温度制御手段の第3の態様の制御フローを示すフローチャートである。
【図25】インクジェット記録装置の他の態様を示す構成図である。
【図26】記録媒体の積層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に本発明に係るインクジェット記録装置の実施の形態について図を参照して説明する。なお、本発明は、以下に限定されるものではない。
【0062】
本発明に係るインクジェット記録装置に主として用いられる記録媒体は、図26に示すように、支持体1Aの表層に熱可塑性樹脂粒子を含有するインク受容層1Bを有し、該インク受容層1Bに隣接して色材とインク溶媒成分がインク受容層1B表面で分離した後にインク溶媒成分が吸収される空隙層を有する顔料インク溶媒吸収層1Cを少なくとも有して構成されている。
【0063】
支持体1Aとしては、従来からインクジェット用記録媒体として用いられている支持体を用いることができ、例えば、普通紙、アート紙、コート紙及びキャストコート紙等の紙製支持体の他、プラスチック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体、これらを貼り合せた複合支持体を用いることができる。
【0064】
インク受容層1Bに含有される熱可塑性樹脂粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。熱可塑性樹脂粒子は、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮して適宜選択される。
【0065】
インク受容性については、熱可塑性樹脂粒子の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また10μmを越えると、支持体上に塗設する際にインク受容層1Bに隣接する顔料インク溶媒吸収層1Cとの接着性や、塗設乾燥後の記録媒体の被膜強度の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹脂粒子径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0066】
最外層を形成する熱可塑性樹脂粒子は、塗布乾燥前は水などの溶媒中に分散状態で存在している。分散粒径にバラツキのない、単一の熱可塑性樹脂粒子の場合は、塗布後の乾燥で粒子は最密六方充填されて、単一粒子層を形成し、その際の空隙率は約26%である。しかし通常熱可塑性樹脂粒子は多分散性であり、その空隙率は熱可塑性樹脂粒子同士の凝集状態で変化する。また、形成される空隙径は熱可塑性樹脂粒子の粒径に依存する。
【0067】
また、支持体1A上の塗設膜厚としては、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
【0068】
熱可塑性樹脂粒子の選択の基準としてはガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子による空隙が消失してしまう。また、Tgが支持体1Aの熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後溶融成膜するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体1Aの熱安定性等が問題となる。熱可塑性樹脂粒子の好ましいTgは50〜150℃であり、後述するようにインクジェット記録装置の加熱加圧手段における温度制御においては、このTgを目標温度範囲とする。
【0069】
画像形成後、記録画像はその経時保存による画質劣化をできるだけ抑制する必要がある。顔料インクを用いた場合は、染料インクの様な比較的短期間での濃度低下、変色を気にする必要はないが、未印字部がUV光により黄変(分解)することを抑制する観点から熱可塑性樹脂粒子を選択する必要がある。
【0070】
最外層のインク受容層1Bに隣接する顔料インク溶媒吸収層1Cは、顔料インク溶媒の吸収能を有することが必要であり、これは無機固体微粒子(以下、単に無機微粒子ともいう)を顔料インクの溶媒吸収層中に含有させることによって発揮する。
【0071】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等が挙げられる。
【0072】
無機微粒子の平均粒径は、微粒子そのもの或いは空隙型の顔料インク溶媒吸収層の断面や表面に現れた微粒子を電子顕微鏡で観察し、100個の任意粒子の平均粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の微粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0073】
高濃度の画像が形成される、鮮明な画像が記録できる、低コストで製造できる等の観点からすると、無機固体微粒子としては、気相法により合成された微粒子シリカ、コロイダルシリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた無機固体微粒子を用いることが好ましい。アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非結晶性であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。現在、このような気相法によって合成された微粒子シリカは市販されており、市販の微粒子シリカには日本アエロジル社の各種のアエロジルがある。
【0074】
無機微粒子の平均粒径に特に制限はないが、100nm以下が好ましく、空隙層を形成するために最も好ましい平均粒径は化合物によって異なる。例えば、上記気相法シリカの場合、1次粒子の状態で分散された無機微粒子の1次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)が4〜20nmのものを最も好ましく用いることができる。
【0075】
顔料インク溶媒吸収層1Cとしては、上記無機微粒子を用いる他に、例えば特開昭59−148583号、同55−51583号、同58−72495号等に記載されている各種親水性樹脂及びシリカとの配合液、特開平9−150574号、同10−181189号に記載されているアルキレンオキサイド含有又はポリカーボネートを含有するウレタン樹脂エマルジョン等を用いることもできる。
【0076】
また、前記無機微粒子を用いて顔料インク溶媒吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いて顔料インク溶媒吸収層1Cを形成させてもよい。
【0077】
この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂および水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。
【0078】
上記ポリウレタン樹脂を用いた顔料インク溶媒吸収層1Cは、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、顔料インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0079】
記録媒体1のインク受容層1B及び顔料インク溶媒吸収層1Cにおいて、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m当り20ml以上であることが好ましい。
【0080】
空隙容量が20ml/m未満の場合、印字時のインク量が1ml/m以下であると、インク吸収性は良好であるものの、インク量が40ml/m越えるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性が遅いなどの問題が生じやすい。
【0081】
空隙容量の上限は特に限定されないが、空隙型のインク吸収層の膜厚を通常50μm以下にすることがひび割れ等の被膜の物理特性を悪化させないためには必要で、この点からすると、空隙容量を40ml/m以上とすることは難しい。
【0082】
空隙容量は、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙又は板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)で測定したとき、吸収時間2秒における液体転移量(ml/m)で表される。なお、上記の測定方法では、測定に純水(イオン交換水)が使用されているが、測定面積の判別を容易にするために、2%未満の水溶性染料を含有させてもよい。
【0083】
記録媒体の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。塗布法としては、バーコーター、ロールコーター、アプリケーター、スピナー等の他に、生産効率を高める観点から2種以上の層を同時に塗布する場合、エクストルージョンコーティング及びカーテンコーティングが特に有効である。
【0084】
インク受容層1B中に好ましく含有されるシリコンエマルジョン又は水溶性シリコン化合物としては、例えばシロキサンの官能基がメチルで離型剤として一般的なジメチルシロキサン化合物、その他該化合物に置換基としてビニル基、水素原子、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、フェニル基等を導入した化合物が挙げられる。また、含有量としては熱可塑性樹脂粒子100に対して質量比で1%未満であることが好ましい。添加量が1%以上であると、離型性は向上するが、加熱及び加圧により定着の不均一性に起因すると推定される色ムラが発生し好ましくない。
【0085】
図1は、インクジェット記録装置の概略構成図である。
【0086】
記録媒体1は、図示しない供給手段により供給され、記録媒体搬送手段(以下、単に搬送手段という。)2によって図示右方向へ搬送され、搬送手段2の下流側に配置された記録ヘッド3によって記録媒体1の記録面上に所定の画像が記録形成されるようになっている。
【0087】
記録媒体1は、図示例ではロール状に巻回された長尺状のロールペーパーを用いた例を示しているが、これに限らず、適宜サイズに裁断されたシート状の記録媒体であってもよい。
【0088】
搬送手段2は、図示しない駆動手段により回転駆動される搬送ローラ21と、記録媒体1を該搬送ローラ21との間に挟みつけるための従動ローラ22とを有して構成され、記録媒体1を搬送ローラ21と従動ローラ22との間に挟持した状態で、搬送ローラ21の回転駆動により、後述する記録ヘッド3による画像記録に応じて図示右方向(副走査方向)へ所定量搬送するようになっている。
【0089】
記録ヘッド3は、搬送手段2の下流側に配置され、記録媒体1の幅方向に亘り該記録媒体1の搬送方向と略直交するように架設された走査ガイド31に移動可能に取り付けられ、図示しない駆動手段によって該走査ガイド31に沿って主走査移動可能に構成された往復走査型の記録ヘッドである。
【0090】
記録ヘッド3には、例えばY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)等の各色の顔料インクが貯留された複数のインクタンクを有しており、走査ガイド31に沿って主走査移動しながら、画像データに応じて所定のインクを所定のタイミングで噴射させることにより、上記搬送手段2による記録媒体1の搬送と協働して、記録媒体1の記録面上に所定の画像を記録形成する。
【0091】
顔料インクとしては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料又はカーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0092】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0093】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0094】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0095】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0096】
記録媒体1を挟んで記録ヘッド3の反対側には、記録媒体保持部32が配置されており、図示しない吸引手段によりその表面に記録媒体1を吸着保持し、記録媒体1の記録面上に記録ヘッド3により画像を記録形成する際の記録媒体1の浮き上がりを防止する。
【0097】
加熱加圧手段4は、記録ヘッド3によって画像が記録形成された後の記録媒体1に対して加熱加圧するべく記録ヘッド3の下流側に配置されており、加熱ローラ41と、記録媒体1を該加熱ローラ41との間に挟み付けるための圧着ローラ42とを有して構成されている。
【0098】
図2に示すように、加熱ローラ41は中空状のローラからなり、その軸方向に沿って熱源であるハロゲンランプヒーター等の発熱体43を内蔵しており、該発熱体43の熱により加熱ローラ41を加熱させ、記録媒体1のインク受容層中に含まれる熱可塑性樹脂粒子を溶融させる。加熱ローラ41の端部周縁にはギヤ412が形成され、駆動モータ44に取付けられた歯車441と歯合することで駆動モータ44の駆動力が伝達され、所定方向に回転駆動される。符号411は軸受けである。
【0099】
この加熱ローラ41は、発熱体43から発せられる熱により効率良く記録媒体1を加熱することができるように熱伝導率の高い材質により形成されることが好ましく、金属ローラが好ましく用いられる。表面には記録媒体1を加熱加圧した際のインクによる汚染を防止するためフッ素樹脂コートされていることが好ましい。その他、耐熱シリコンゴムを被覆したシリコンゴムローラを用いることもできる。
【0100】
加熱ローラ41の表面に近接して温度センサ5が配置されており、該温度センサ5によって加熱ローラ41の温度を検出することで、図示しない温度制御手段によって発熱体43の発熱量を制御し、加熱ローラ41の温度を所定の温度範囲に保持するように制御するようになっている。
【0101】
圧着ローラ42は、外周に弾性を有するゴム被覆42aを施したステンレス等の金属ローラからなり、図3に示すように、その両端のローラ軸42bが軸受け421を介してそれぞれ支持枠422に取付け支持されている。支持枠422は、圧着ローラ42が記録媒体1を加熱ローラ41に対して加圧することができるように、該記録媒体1を挟んで加熱ローラ41に対して所定の加圧力をもって圧着するように、付勢部材45、45によって付勢されている。図示例では付勢部材45、45によって圧着ローラ42を加熱ローラ41側に引っ張る方向に付勢しているが、圧着ローラ42を加熱ローラ41側に押圧する方向に付勢するように設けてもよい。また、付勢部材45、45としては、コイルバネ、板バネ等の他、所定の弾発力をもって圧着ローラ42を加熱ローラ41側に付勢し得るものであれば任意に使用できる。
【0102】
前記記録ヘッド3によって所定の画像が記録形成された記録媒体1は搬送手段2によってかかる加熱加圧手段4に搬送される。加熱加圧手段4では、加熱ローラ41及び圧着ローラ42の間に記録媒体1を挟持し、加熱ローラ41の回転駆動によって所定の速度で搬送しつつ、その過程で記録媒体1を加熱及び加圧させ、表層のインク受容層中の熱可塑性樹脂粒子を溶融及び平滑化させて透明化させる。
【0103】
かかる加熱加圧手段4による記録媒体1の加熱加圧時間は、0.1〜2秒である。記録媒体1の加熱加圧時間がこの範囲にあることで、記録媒体1のインク受容層が透明化するのに必要十分な加熱加圧処理が可能であり、良質な画像プリント作成に有効である。加熱加圧手段4による加熱加圧時間を上記範囲にするには、加熱ローラ41の回転数を適宜調整することによって行うことができる。
【0104】
上記圧着ローラ42は、その表面(記録媒体接触面)に弾性を有するゴム被覆42aを有していることで、加熱ローラ41との間で形成されるニップ領域がある程度の幅を有して形成される。このときの圧着ローラ42の記録媒体接触面である上記ゴム被覆42aの縦弾性率(ヤング率)を、10〜10Pa、好ましくは1.0×10〜4.0×10Paとすることにより、加熱ローラ41と圧着ローラ42とを大きな接触面積でもって加圧接触させることができ、適切な加圧力及び加圧時間を簡単な構成で得ることができるようになる。
【0105】
なお、圧着ローラ42に代えて加熱ローラ41外周に耐熱シリコンゴム等を被覆することにより、上記範囲の縦弾性率(ヤング率)を有するようにしてもよく、また、加熱ローラ41及び圧着ローラ42の双方が上記範囲の縦弾性率(ヤング率)となるように構成してもよい。要するに、2つのローラ41、42の少なくとも一方の記録媒体接触面が上記範囲の縦弾性率(ヤング率)となるように構成されていればよい。
【0106】
また、記録媒体1の加熱加圧時間は、記録媒体1の種類に応じて変更するようにすると、多様な記録媒体1に対してそれぞれ最適な加熱加圧処理を行うことができるようになり、良質な画像プリント作成に有効である。
【0107】
ここで記録媒体の種類とは、記録媒体の支持体の材質の種類、支持体の厚さの種類、記録媒体のインク受容層中に含有される熱可塑性樹脂粒子の種類、記録媒体表面の面質(絹目、光沢等)の種類等が挙げられる。
【0108】
更に、記録媒体1の上記種類に応じ、加熱加圧手段4の保持温度範囲を変更するようにしてもよく、同様に、多様な記録媒体1に対してそれぞれ最適な加熱加圧処理を行うことができるようになり、良質な画像プリント作成に有効である。
【0109】
図4、図5に加熱加圧手段4の別の態様を示す。
【0110】
図4(a)は、加熱ローラ41は図1〜3に示す態様と同一であるが、記録媒体1を加熱ローラ41との間で加圧するための圧着ローラ42の構成に代えて、加熱ローラ41と記録媒体1を挟んで対向する2つのローラ46a、46b間に懸架されたベルト部材47によって構成している。
【0111】
この態様において、ベルト部材47は所定の張力で両ローラ46a、46b間に懸架されており、該ベルト部材47を加熱ローラ41に対して圧接させるようにすることで、両者の間に記録媒体1を挟持すると同時に加圧し、加熱ローラ41の回転駆動によって図示右方向に搬送させるようになっている。
【0112】
ベルト部材47の材質としては、ステンレス等の金属部材やシリコンゴム等の弾性部材を用いることができる。
【0113】
この態様によれば、加熱ローラ41とベルト部材47とが面接触するため、特に高速処理時にも適切な加圧力及び加圧時間を得ることができるようになる。また、各ローラ46a、46bの配置やベルト部材47の張力を調整することにより、加熱ローラ41とベルト部材47との接触面積及び加圧力を容易に調整可能である。
【0114】
また、図4(b)は、圧着ローラ42は図1〜3に示す態様と同一とし、加熱ローラ41に代えて上記ベルト部材47を用いている。発熱体43はベルト部材47の内側に配置させて該ベルト部材47を直接加熱させるようにしている。
【0115】
なお、ベルト部材47を懸架させるローラは2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0116】
図5は、加熱加圧手段4を、記録媒体1を挟んで対向する2つのベルト部材47a、47bと、それらベルト部材47a、47bを懸架するためのローラ群(46c〜46g)によって構成した態様を示している。
【0117】
ベルト部材47aは2つのローラ46c、46d間に所定張力で懸架されており、その内側に発熱体43が配置されている。この発熱体43によりベルト部材47aが加熱されるようになっている。
【0118】
一方、ベルト部材47bは、記録媒体1を挟んで上記ベルト部材47aと対向するように配置されており、3つのローラ46e、46f、46gに亘って所定張力で懸架されている。なお、上記ローラ46c、46dは、それぞれ上記ローラ46eと46fの間及びローラ46fと46gの間に位置している。
【0119】
この態様において、記録媒体1はベルト部材47aと47bの間に挟持され、図示しない駆動手段によりローラ46c又は46dが回転駆動してベルト部材47aが反時計回りに駆動することにより図示右方向へ搬送される。ベルト部材47aと47bとは互いに圧接状に対向しており、記録媒体1が両ベルト部材47a、47b間に挟持されて搬送される過程で加熱されると同時に加圧されるようになっている。
【0120】
この態様によっても、ベルト部材47a及び47bが互いに面接触するため、特に高速処理時にも適切な加圧力及び加圧時間を得ることができるようになる。また、各ローラ46c〜46gの配置や各ベルト部材47a、47bの張力を調整することにより、両ベルト部材47a及び47bの接触面積及び加圧力を容易に調整可能である。更に、各ローラ46c〜46gの配置を変えることにより、記録媒体1の搬送方向にかかわる設計の自由度が図1〜図3及び図4の態様に比べて高くなり、装置の小型化や操作性向上に有利となるという利点もある。
【0121】
また、加熱加圧手段4による記録媒体1の加圧力は、9.8×10〜4.9×10Paであることが好ましい。加圧力が上記範囲を上下いずれに外れても、記録媒体1のインク受容層を良好に透明化するのに必要十分な加圧力が得られ難くなる。なお、加圧力は、加圧加熱手段4に感圧紙を挟んで加圧させ、感圧紙の発色度合から圧力を換算することによって測定することができる。
【0122】
図6、図7は、加熱加圧手段4の記録媒体接触面を清掃するための清掃手段6の構成を示している。
【0123】
図6は、加熱加圧手段4の加熱ローラ41外周面の記録媒体接触面に清掃ローラ61を設けた例を示している。
【0124】
清掃ローラ61は、回転軸の外周にスポンジを囲繞して構成したスポンジローラからなり、加熱ローラ41と平行に延び且つ着脱可能に配設されている。この清掃ローラ61は、通常は回転せずにそのスポンジ面を加熱ローラ41の記録媒体接触面に当接させており、加熱ローラ41が回転駆動することでスポンジ面が記録媒体接触面を摺擦し、該記録媒体接触面の汚れを拭き取っていく。
【0125】
清掃ローラ61には、図示しない回転駆動手段が設けられており、例えば記録媒体1の処理枚数が一定処理量となると、所定角度(例えば5°)回転するように駆動制御され、清掃ローラ61表面の新しい面で加熱ローラ41の記録媒体接触面を清掃し得るようになっている。所定量回転し、清掃ローラ61表面が全て汚れたら、取り外してスポンジ面又は清掃ローラ61毎新品と交換する。
【0126】
図7は、加熱加圧手段4の加熱ローラ41外周面の記録媒体接触面に清掃ベルト62を設けた例を示している。
【0127】
清掃ベルト62は、不織布等によって加熱ローラ41の少なくとも記録媒体接触面と略同幅に形成され、2つの巻取ローラ62a、62b間に架け渡されており、一方のローラ62a又は62bから繰り出されて他方のローラ62b又は62aに図示しない回転駆動手段によって巻き取り可能に構成されている。
【0128】
清掃ベルト62は、両巻取ローラ62a、62b間に架け渡された状態で、加熱ローラ41の記録媒体接触面に当接するように配置されており、通常は両巻取ローラ62a、62bは回転せずに、加熱ローラ41が回転駆動することで記録媒体接触面を摺擦し、該記録媒体接触面の汚れを拭き取っていく。そして、例えば記録媒体1の処理枚数が一定処理量となると、巻取ローラ62a又は62bが所定量回転するように駆動制御され、清掃ベルト62の新しい面で加熱ローラ41の記録媒体接触面を清掃し得るようになっている。清掃ベルト62が全て巻き取られると、取り外して新品と交換する。
【0129】
このように加熱加圧手段4に清掃手段6を設けることにより、記録媒体1との接触面が汚れて記録媒体1の画像を汚染したり、加熱加圧性能が低下することを防止することができ、記録媒体1のインク受容層を常に良質に透明化させることが可能である。
【0130】
図8〜図10は転写防止液付与手段の構成を示している。
【0131】
これらに示す転写防止液付与手段7は、加熱加圧手段4の記録媒体接触面に、記録媒体1の一部(例えばインク受容層中に含有される熱可塑性樹脂粒子)又は記録ヘッド3から記録媒体1表面に塗布されたインクが転写することを防止するための転写防止液を、該記録媒体接触面に付与するようにしている。
【0132】
転写防止液としては、シリコンオイルを含んでいることが好ましい。シリコンオイルは安価でありながら安定な材料であり、記録媒体接触面の汚れを確実に防止することができる。
【0133】
図8に示す態様では、転写防止液を含浸させたスポンジローラからなる塗布ローラ71を加熱ローラ41の記録媒体接触面である外周面に当接するように配置させ、加熱ローラ41の回転駆動によって塗布ローラ71に含浸された転写防止液を該記録媒体接触面に塗布するようにしている。塗布ローラ71には回転駆動手段(図示せず)を設け、例えば処理枚数が一定量となる毎に所定角度ずつ回転させ、塗布ローラ71の新しい面で転写防止液を塗布し得るようになっている。塗布ローラ71は着脱可能に構成されており、含浸されている転写防止液がなくなったら新品と交換される。
【0134】
図9に示す態様では、2つの巻取ローラ72a、72b間に架け渡された不織布等からなる塗布ベルト72に転写防止液を含浸させ、該塗布ベルト72を加熱ローラ41の記録媒体接触面に当接させて、加熱ローラ41の回転駆動によって塗布ベルト72に含浸された転写防止液を該記録媒体接触面に塗布するようにしている。巻取ローラ72a又は72bには回転駆動手段(図示せず)を設けておき、例えば処理枚数が一定量となる毎に所定量ずつ回転させて転写防止液を塗布し終えた領域を巻き取っていき、塗布ベルト72の新しい面で転写防止液を塗布し得るようになっている。塗布ベルト72を巻き取り終えたら、新品と交換される。
【0135】
図10に示す態様では、転写防止液を含浸させた不織布等からなる塗布パッド73を加熱ローラ41の記録媒体接触面に当接させ、加熱ローラ41の回転駆動によって塗布パッド73に含浸された転写防止液を該記録媒体接触面に塗布するようにしている。塗布パッド73は着脱可能に構成されており、含浸されている転写防止液がなくなったら新品と交換される。
【0136】
このように加熱加圧手段4の記録媒体接触面に転写防止液を付与する転写防止液付与手段7を設けることにより、加熱加圧手段4の記録媒体接触面への記録媒体1の一部又はインクが転写することが防止され、記録媒体の画像を汚染したり、加熱加圧性能が低下することを防止することができ、記録媒体1のインク受容層を常に良質に透明化させることが可能である。
【0137】
図11は転写防止液付与手段7の更に別の態様を示している。
【0138】
この態様に示す転写防止液付与手段7は、加熱加圧手段4の記録媒体接触面にではなく、記録ヘッド3の下流側且つ加熱加圧手段4の上流側に配置され、記録ヘッド3による画像記録後且つ加熱加圧手段4による加熱加圧処理前の記録媒体1に対して転写防止液を付与するようになっている。
【0139】
転写防止液は、図10に示す態様と同様の塗布パッド74に含浸されており、記録ヘッド3によって画像が記録形成された後の記録媒体1の記録面に当接するように配設された塗布ローラ75の表面に当接している。これにより塗布ローラ75を介して塗布パッド74に含浸された転写防止液が記録媒体1の記録面に塗布されるようになっている。
【0140】
このように転写防止液付与手段7を、記録ヘッドによる画像記録後且つ加熱加圧手段4による加熱加圧処理前の記録媒体1に対して付与するようにしても、上記同様に、加熱加圧手段4の記録媒体接触面への記録媒体1の一部又はインクが転写することが防止され、記録媒体の画像を汚染したり、加熱加圧性能が低下することを防止することができ、記録媒体1のインク受容層を常に良質に透明化させるために有効である。
【0141】
なお、図11においては、転写防止液が塗布パッド74に含浸されるものについて説明したが、転写防止液を図8に示すスポンジローラからなる塗布ローラ71又は図9に示す塗布ベルト72にそれぞれ含浸させ、それら塗布ローラ71又は塗布ベルト72を、図11に示すように塗布ローラ75を介して、又は直接記録媒体1に接触させて付与するようにしてもよい。
【0142】
図12〜図14は光沢液付与手段の構成を示している。
【0143】
これらに示される光沢液付与手段8は、加熱加圧手段4の記録媒体接触面に、記録媒体1の表面に光沢を付与するための光沢液を、該記録媒体接触面に付与するようにしている。
【0144】
光沢液としては、シリコンオイルを含んでいることが好ましい。シリコンオイルは安価でありながら安定な材料であり、記録媒体1表面に確実に光沢を付与することができる。
【0145】
図12に示す態様では、光沢液を含浸させたスポンジローラからなる塗布ローラ81を加熱ローラ41の記録媒体接触面である外周面に当接するように配置させ、加熱ローラ41の回転駆動によって塗布ローラ81に含浸された光沢液を該記録媒体接触面に塗布するようにしている。塗布ローラ81には回転駆動手段(図示せず)を設け、例えば処理枚数が一定量となる毎に所定角度ずつ回転させ、塗布ローラ81の新しい面で光沢液を塗布し得るようになっている。塗布ローラ81は着脱可能に構成されており、含浸されている光沢液がなくなったら新品と交換される。
【0146】
図13に示す態様では、2つの巻取ローラ82a、82b間に架け渡された不織布等からなる塗布ベルト82に光沢液を含浸させ、該塗布ベルト82を加熱ローラ41の記録媒体接触面に当接させて、加熱ローラ41の回転駆動によって塗布ベルト82に含浸された光沢液を該記録媒体接触面に塗布するようにしている。巻取ローラ82a又は82bには回転駆動手段(図示せず)を設けておき、例えば処理枚数が一定量となる毎に所定量ずつ回転させて光沢液を塗布し終えた領域を巻き取っていき、塗布ベルト82の新しい面で光沢液を塗布し得るようになっている。塗布ベルト82を巻き取り終えたら、新品と交換される。
【0147】
図14に示す態様では、光沢液を含浸させた不織布等からなる塗布パッド83を加熱ローラ41の記録媒体接触面に当接させ、加熱ローラ41の回転駆動によって塗布パッド83に含浸された光沢液を該記録媒体接触面に塗布するようにしている。塗布パッド83は着脱可能に構成されており、含浸されている光沢液がなくなったら新品と交換される。
【0148】
このように加熱加圧手段4の記録媒体接触面に光沢液を付与する光沢液付与手段8を設けることにより、記録媒体1表面の透明化に加えて一層の光沢を付与することができ、より高品質の画像プリントを作成することができるようになる。
【0149】
図15は光沢液付与手段8の別の態様を示している。
【0150】
この態様に示す光沢液付与手段8は、加熱加圧手段4の記録媒体接触面にではなく、記録ヘッド3によって画像が記録形成された後の記録媒体1に対して光沢液を付与するようになっている。図15(a)は、光沢液を加熱加圧手段4による加熱加圧処理前の記録媒体1に付与する態様を示し、図15(b)は、同じく光沢液を加熱加圧手段4による加熱加圧処理後に付与する態様を示しており、記録ヘッド3による画像を記録形成した後の記録媒体1に対して光沢液を付与し得るものであれば、いずれの態様でも構わない。
【0151】
光沢液は、図14に示される塗布パッド83と同様の塗布パッド84に含浸されており、該塗布パッド84に当接した塗布ローラ85を介して、記録媒体1の記録面に塗布し得るようになっている。
【0152】
このように光沢液付与手段8を、記録ヘッドによる画像記録後の記録媒体1に対して付与するようにしても、上記同様に、記録媒体1表面の透明化に加えて一層の光沢を付与することができ、より高品質の画像プリントを作成することができるようになる。
【0153】
なお、光沢液付与手段8を、塗布パッド84及び塗布ローラ85を含む全体が図示しない駆動手段によって図16(a)(b)に示すように記録媒体1に対して接離移動可能に構成するようにし、前記した記録媒体1の種類に応じて光沢液を付与するか否かを自動的に選択する手段を有することも好ましい。
【0154】
記録媒体1の種類を判別する手段としては、図17に示すように、記録媒体1の裏面(記録面と反対側面)にその種類情報を記録したバーコード等の種別コード11を予め設けておくと共に、光沢液付与手段8の上流側、例えば図15に示すように記録ヘッド3の上流側に記録媒体種別判別センサ9を配設し、該センサ9により記録媒体1裏面の上記種別コード11を検出することによって記録媒体1の種類を判別し、その判別結果に応じて光沢液付与手段8を接離移動させて光沢液の付与又は非付与を制御することができる。この記録媒体種別判別センサ9としては、図18に示すように、LED等からなる投光部91と、該投光部91から射出された検出光が記録媒体1裏面に当って反射した反射光を受光するフォトトランジスタ等からなる受光部92とによって構成された光学式センサを用いることができる。
【0155】
図19に、かかる光沢液付与手段8の制御フローを示す。
【0156】
まず、記録媒体種別判別センサ9により記録媒体1の種別コード11を検出して、その種類を判別する(S1)。次いで、判別された記録媒体1の種類が光沢液を付与すべきものであるか否かを判断し(S2)、その結果、記録媒体1に光沢液を付与する必要のない又は付与すべきでない種類であると判断された場合、光沢液付与手段8を図16(b)に示すように記録媒体1から離間させて光沢液を付与しない位置に移動させる(S3)。一方、光沢液を付与する必要がある又は付与することが好ましい種類であると判断された場合、光沢液付与手段8を図16(a)に示すように記録媒体1の記録面に当接させて光沢液を付与する位置に移動させる(S4)。
【0157】
このように記録媒体1の種類に応じて光沢液を付与するか否かを選択的に行う手段を有することで、光沢を付与すべき種類の記録媒体1に対してのみ選択的に光沢を付与することができるようになる。
【0158】
また、記録媒体1に対して光沢液を付与するか否かを任意に選択するための光沢液付与選択手段を有することも好ましい。かかる光沢液付与選択手段としては、例えば光沢液付与スイッチにより構成することができる。この光沢液付与選択手段をオペレータが任意に操作することにより、光沢液付与手段8を図16(a)(b)に示すように記録媒体1に対して当接位置又は離間位置に選択的に変更させる。
【0159】
図20に、光沢液付与選択手段として光沢液付与スイッチを用いた場合の光沢液付与手段8の制御フローを示す。
【0160】
まず、光沢液付与スイッチがON状態にあるか否かを判断し(S5)、その結果、OFF状態であると判断された場合、光沢液付与手段8を図16(b)に示すように記録媒体1から離間させて光沢液を付与しない位置に移動させる(S6)。一方、ON状態であると判断された場合、光沢液付与手段8を図16(a)に示すように記録媒体1の記録面に当接させて光沢液を付与する位置に移動させる(S7)。
【0161】
このように光沢液を付与するか否かを選択する光沢液付与選択手段を有することで、記録媒体1に対して光沢を付与するか否かを、目的に応じて自由に選択することができる。
【0162】
なお、図15、図16に示すように記録媒体1の記録面に光沢液を付与する光沢液付与手段8としては、光沢液が塗布パッド84に含浸されるものについて説明したが、光沢液を図12に示す塗布ローラ81又は図13に示す塗布ベルト82にそれぞれ含浸させ、それら塗布ローラ81又は塗布ベルト82に含浸された光沢液を、図15、図16に示すように塗布ローラ85を介して、又は直接記録媒体1に接触させて塗布するようにしてもよい。
【0163】
また、記録媒体1に対して光沢液を付与するか否かを制御するには、記録媒体種別判別センサ9によって記録媒体1の種別を判別することによって又は光沢液付与選択スイッチを任意操作することによって、図12〜図14にそれぞれ示される塗布ローラ81、塗布ベルト82、塗布パッド83を加熱ローラ41に対して接離移動可能に構成することによって行うようにしてもよい。
【0164】
次に、インクジェット記録装置の制御系の構成について、図20に示すブロック図を用いて説明する。なお、図中、既出の符号については説明を省略する。
【0165】
図中、100はホスト機器であり、インクジェット記録装置において記録すべき画像データ(画像の記録サイズ等のパラメータ、YMCK等に色分解された画像のデータ)を所有しているコンピュータからなる。このホスト機器100から送出される画像データは、インターフェース部101を介してインクジェット記録装置に取り込まれる。
【0166】
102はホスト機器100から取り込んだ画像データを一時格納する画像メモリ、103は画像メモリ102への画像データの書き込みを制御するメモリライトコントローラ、104は画像メモリ102に格納された画像データの読み出しを制御するメモリリードコントローラ、105はメモリリードコントローラ104によって画像メモリ102から読み出された画像データに応じて記録ヘッド3のインクの噴射を駆動制御するヘッドドライバである。
【0167】
106は記録ヘッド3を移動走査させるキャリッジモータ、107は搬送ローラ21を回転駆動させる搬送モータ、108は加熱ローラ41を回転駆動させる加熱ローラモータ、109は光沢液付与選択手段を構成する光沢液付与スイッチである。
【0168】
110は、インターフェース部101、画像メモリ102、メモリライトコントローラ103、メモリライトコントローラ104を制御してホスト機器100から画像データの情報を取り込み、画像データ、温度センサ5からの加熱ローラ温度、記録媒体種別判別センサ9による判別結果に応じてヘッドドライバ105、キャリッジモータ106、搬送モータ107、加熱ローラモータ108、発熱体43を制御すると共に、光沢液付与スイッチ109のオペレータ操作により光沢液の付与を制御するCPUである。
【0169】
次に、加熱加圧手段4の温度制御手段について説明する。
【0170】
加熱加圧手段4は温度制御手段によって所定の温度範囲に保持される。この温度制御手段によって保持される所定の温度範囲は、記録媒体1のインク受容層が透明化するのに必要十分な目標温度(T)に対して一定の変動幅(ΔT)を有することが好ましく、所定の温度範囲をT±ΔTとしたとき、Tは50〜150℃、ΔTは10℃以下であることが好ましい。
【0171】
±ΔTが上記範囲を外れると、記録媒体1を安定して加熱処理するのに必要十分な変動範囲を越えてしまい、良質な画像プリント作成に重要なインク受容層の透明化が良好に行われなくなる。
【0172】
かかる温度制御手段による温度制御の各態様について以下に説明する。なお、以下、加熱加圧手段4に関し「温度」というときは、一定の変動幅を有する温度範囲のことをいう。
【0173】
温度制御の第1の態様は、一定時間画像の記録を行わないときには、温度制御を停止して発熱体43の発熱を停止し(スリープモード)、加熱加圧手段4の加熱を行わないようにすることである。
【0174】
この制御フローについて図22を用いて説明する。
【0175】
まず、装置の電源ONにより起動し(S10)、加熱ローラ41の目標温度を記録媒体1を加熱加圧処理する際の標準温度(Tnormal)に設定し(S11)、次いでタイマを起動させる(S12)。
【0176】
タイマ起動の後、プリント命令の有無を判断し(S13)、プリント命令がない場合、タイマ経過時間がスリープモード開始時間(t)を越えたか否かを判断し(S14)、未だ越えていないときはS13〜S14の処理を繰り返す。
【0177】
S14においてタイマ経過時間がtを越えると、温度制御はスリープモードに切り替わり、加熱ローラ41の発熱体43への通電を停止してOFF状態とする(S15)。これにより温度制御は停止し、加熱ローラ41は非加熱状態となる。温度制御がスリープモードに入って加熱ローラ41の発熱体43がOFF状態となった後は、S13に戻って再度プリント命令の有無を判断し、プリント命令があるまでS13〜S15の処理を繰り返す。
【0178】
S13においてプリント命令があると、加熱ローラ41の目標温度を記録媒体1を加熱加圧処理する際の標準温度(Tnormal)に設定し(S16)、以後、加熱加圧制御フローに従って記録媒体1を加熱加圧処理する。また、S14においてタイマ経過時間がtを越えないうちにプリント命令があった場合も、加熱加圧制御フローに従って記録媒体1を加熱加圧処理する。
【0179】
このように、温度制御手段において、一定時間画像の記録を行わないときには温度制御を停止して加熱加圧手段4の発熱を停止するようにすると、無駄な電力消費が抑えられ、消費電力の節約を図ることができる。
【0180】
次に、S13においてプリント命令があった場合の加熱加圧制御フローについて、同図を用いて説明する。
【0181】
S13においてプリント命令があると、加熱ローラ41の温度(T)を、記録媒体1を加熱加圧処理する際の目標とする標準温度(Tnormal)に設定する(S16)。次いで、加熱ローラ41の温度が上記標準温度にほぼ達しているか否か(T≒Tnormalか)を判断し(S17)、未だ達していない場合には、次いで加熱ローラ41の温度が記録媒体1を加熱加圧処理する際に必要な最低処理温度(Tmin)を越えているか否か(T≧Tminか)を判断する(S18)。この最低処理温度(Tmin)は、加熱ローラ41の回転速度を最も遅くした場合に記録媒体1のインク受容層中の熱可塑性樹脂粒子を溶融させることのできる最低温度であり、記録媒体1の種類に応じて決定される。
【0182】
S18において、T<Tminの場合はT≧Tminとなるまで待機し、T≧Tminとなったら、加熱ローラ41の回転数及び記録ヘッド3の記録速度を加熱ローラ41の到達温度に応じた値に設定し(S19)、加熱加圧処理時間を相対的に長くして加熱加圧処理し、所定単位、例えば画像1ライン毎、画像1枚毎等の画像記録を行う(S20)。
【0183】
加熱加圧時間を相対的に長くするときは、記録ヘッド3による画像の記録媒体搬送方向の単位長さ当りの記録時間を相対的に長くするようにすることが好ましい。これにより記録ヘッド3による画像の記録速度と加熱加圧手段4による記録媒体1の加熱加圧処理速度とをほぼ同じにすることができるようになり、記録ヘッド3と加熱加圧手段4との間に記録済みの記録媒体1を待機させるための特段の記録媒体収納手段等を設ける必要がなくなる。
【0184】
記録媒体搬送方向の単位長さ当りの記録時間を相対的に長くするには、記録媒体1の搬送方向と略直交する方向に沿って移動走査される往復走査型の記録ヘッド3の場合、記録ヘッド3の移動方向を反転させる際の停止時間を長くすることで調整することができる。このようにすると、記録ヘッド3の駆動周波数と走査速度を何ら変化させずに一定とすることができ、記録ヘッド3のインク射出特性が安定し、また、記録ヘッド3の駆動回路や走査駆動系を単純化することができるために好ましい。
【0185】
また、図25に示すように、記録ヘッドが記録媒体1の幅に相当する長さを有し、該記録媒体1の幅方向に亘って架設され、その記録媒体1の幅全域に亘ってインク吐出ノズルが形成されたライン状記録ヘッド3’により構成されているものであってもよく、かかる記録ヘッド3’の場合において上記の如く記録媒体搬送方向の単位長さ当りの記録時間を相対的に長くするには、該記録ヘッド3’のインク吐出間隔を遅くすることで調整することができる。一般に、ライン状ヘッド3’の場合は、往復走査型の記録ヘッド3よりもインク吐出間隔が長いため、吐出周期を長くなるように変化させてもインク射出特性の変化が少ない。
【0186】
S20において所定単位の画像記録が終了したら、命令された所定のプリント枚数の画像記録が完了したか否かを判断し(S21)、未だ完了していない場合はS17〜S20までの処理を繰り返す。
【0187】
S17において、加熱ローラ41の温度(T)が標準温度(Tnormal)にほぼ達していれば、加熱ローラ41の回転数及び記録ヘッド3の記録速度を標準値に設定し(S22)、命令枚数のプリントが完了するまで画像記録及び加熱加圧処理を行う。
【0188】
このように、加熱加圧手段4の発熱停止からの復帰後、加熱加圧手段4が最低処理温度以上で且つ加熱加圧手段4が所定の温度範囲に達するまでの間は、加熱加圧時間を相対的に長くして記録媒体1の加熱加圧処理を行うようにすることにより、加熱加圧手段4が所定の温度範囲に達するまで待つ必要がなくなり、早期に加熱加圧処理を開始することができ、それだけ画像プリント作成の高速化を図ることができる。
【0189】
S21において所定単位の画像記録が終了したら、S12に戻ってタイマを起動(リセットの後再起動)させ、温度制御手段によるS13以降の前記温度制御を繰り返す。
【0190】
温度制御手段による温度制御の第2の態様について説明する。
【0191】
温度制御の第2の態様は、一定時間画像の記録を行わないときには、温度制御手段により加熱加圧手段4を所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲(省エネモード)に保持することである。
【0192】
この制御フローについて図23を用いて説明する。
【0193】
まず、装置の電源ONにより起動し(S30)、加熱ローラ41の目標温度を記録媒体1を加熱加圧処理する際の標準温度(Tnormal)に設定し(S31)、次いでタイマを起動させる(S32)。
【0194】
タイマ起動の後、プリント命令の有無を判断し(S33)、プリント命令がない場合、タイマ経過時間が省エネモード開始時間(t)を越えたか否かを判断し(S34)、未だ越えていないときはS33〜S34の処理を繰り返す。
【0195】
S34においてタイマ経過時間がtを越えると、温度制御は省エネモードに切り替わり、加熱ローラ41の目標温度(T)を標準温度(Tnormal)よりも低い温度(Tlow)に設定する(S35)。これにより加熱ローラ41の温度は所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に制御される。温度制御が省エネモードに切り替わって加熱ローラ41の温度がTlowに設定された後は、S33に戻って再度プリント命令の有無を判断し、プリント命令があるまでS33〜S35の処理を繰り返す。
【0196】
S33においてプリント命令があると、加熱ローラ41の目標温度を記録媒体1を加熱加圧処理する際の標準温度(Tnormal)に設定し(S16)、以後、加熱加圧制御フローに従って記録媒体1を加熱加圧処理する。また、S34においてタイマ経過時間がtを越えないうちにプリント命令があった場合も、加熱加圧制御フローに従って記録媒体1を加熱加圧処理する。以後の加熱加圧処理の制御フローは、図22に示すS16〜S22と同一であるため説明は省略する。
【0197】
このように、温度制御手段において、一定時間画像の記録を行わないときには、加熱加圧手段4の温度を所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に制御するようにすると、消費電力の節約を図ることができる上に、加熱加圧処理開始時には加熱ローラ41を標準温度まで速やかに加熱させることができるため、短時間で加熱加圧処理を再開させることが可能となる。
【0198】
また、この第2の態様における加熱加圧処理では、加熱加圧手段4の第2の温度範囲からの復帰後、加熱加圧手段4が最低処理温度以上で且つ加熱加圧手段4が所定の温度範囲に達するまでの間は、加熱加圧時間を相対的に長くして記録媒体1の加熱加圧処理を行うようにすることにより、加熱加圧手段4が所定の温度範囲に達するまで待つ必要がなくなり、早期に加熱加圧処理を開始することができ、それだけ画像プリント作成の高速化を図ることができる。
【0199】
温度制御手段による温度制御の第3の態様について説明する。
【0200】
温度制御の第3の態様は、一定時間画像の記録を行わないときには、加熱加圧手段4を所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲(省エネモード)に保持し、更に一定時間画像の記録を行わないときには、温度制御を停止して加熱加圧手段4の発熱を停止する(スリープモード)ことである。
【0201】
この制御フローについて図24を用いて説明する。
【0202】
まず、装置の電源ONにより起動し(S40)、加熱ローラ41の目標温度を記録媒体1を加熱加圧処理する際の標準温度(Tnormal)に設定し(S41)、次いでタイマを起動させる(S42)。
【0203】
タイマ起動の後、プリント命令の有無を判断し(S43)、プリント命令がない場合、タイマ経過時間が省エネモード開始時間(t)を越えたか否かを判断し(S44)、未だ越えていないときはS43〜S44の処理を繰り返す。
【0204】
S44においてタイマ経過時間がtを越えると、次いでタイマ経過時間がスリープモード開始時間(t)を越えたか否かを判断する(S45)。なお、省エネモード開始時間(t)とスリープモード開始時間(t)との関係は、t<tである。その結果、タイマ経過時間がtは越えたがtは未だ越えていない場合、温度制御は省エネモードに切り替わり、加熱ローラ41の目標温度(T)を標準温度(Tnormal)よりも低い温度(Tlow)に設定する(S46)。これにより加熱ローラ41の温度は所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に制御される。温度制御が省エネモードに入って加熱ローラ41の温度がTlowに設定された後は、S43に戻って再度プリント命令の有無を判断し、プリント命令があるまでS43以降の処理を繰り返す。
【0205】
S45においてタイマ経過時間がtをも越えた場合、温度制御はスリープモードに切り替わり、加熱ローラ41の発熱体43への通電を停止してOFF状態とする(S47)。これにより温度制御を停止し、加熱ローラ41は非加熱状態となる。温度制御がスリープモードに切り替わって加熱ローラ41の発熱体43がOFF状態となった後は、S43に戻って再度プリント命令の有無を判断し、プリント命令があるまでS43以降の処理を繰り返す。
【0206】
S43においてプリント命令があると、加熱ローラ41の目標温度を記録媒体1を加熱加圧処理する際の標準温度(Tnormal)に設定し(S16)、以後、加熱加圧制御フローに従って記録媒体1を加熱加圧処理する。また、S44においてタイマ経過時間がtを越えないうちにプリント命令があった場合も、加熱加圧制御フローに従って記録媒体1を加熱加圧処理する。以後の加熱加圧処理の制御フローは、図22に示すS16〜S22と同一であるため説明は省略する。
【0207】
このように、温度制御手段において、一定時間画像の記録を行わないときには、加熱加圧手段4の温度を所定の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に制御し、更に一定時間画像の記録を行わないときには、加熱加圧手段の温度制御を停止して加熱加圧手段の発熱を停止するようにすると、長時間に亘る無駄な電力消費が抑えられ、消費電力の節約を図ることができる上に、比較的短時間の記録休止の後に画像記録を再開したときには加熱ローラ41を標準温度まで速やかに加熱させることができるため、短時間で加熱加圧処理を再開させることができる。
【0208】
また、この第3の態様における加熱加圧処理では、加熱加圧手段4の発熱停止又は第2の温度範囲からの復帰後、加熱加圧手段4が最低処理温度以上で且つ加熱加圧手段4が所定の温度範囲に達するまでの間は、加熱加圧時間を相対的に長くして記録媒体1の加熱加圧処理を行うようにすることにより、加熱加圧手段4が所定の温度範囲に達するまで待つ必要がなくなり、早期に加熱加圧処理を開始することができ、それだけ画像プリント作成の高速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0209】
1 記録媒体
2 記録媒体搬送手段
3 (往復走査型)記録ヘッド
3’ (ライン状)記録ヘッド
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラ
42 圧着ローラ
43 発熱体
47、47a、47b ベルト部材
46a〜46g ベルト部材を懸架するためのローラ
5 温度センサ
6 清掃手段
7 転写防止液付与手段
8 光沢液付与手段
9 記録媒体種別判別センサ
109 光沢液付与選択手段(光沢液付与選択スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段と、を有するインクジェット記録装置であって、
前記加熱加圧手段は、前記記録媒体の記録面側に接触し、且つ2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材と、該ベルト部材の、記録媒体剥離箇所よりも記録媒体搬送方向上流側を加熱する発熱体と、該ベルト部材に対し記録媒体を挟んで対向して配置されたローラと、を含み構成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層と、該インク受容層の内側に隣接した顔料インク溶媒吸収層とを有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段と、を有するインクジェット記録装置であって、
前記加熱加圧手段は、前記記録媒体の記録面側に接触し、且つ2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材と、該ベルト部材の、記録媒体剥離箇所よりも記録媒体搬送方向上流側を加熱する発熱体と、該ベルト部材に対し記録媒体を挟んで対向して配置された2つ以上のローラ間に懸架されたベルト部材を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−260363(P2010−260363A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179235(P2010−179235)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【分割の表示】特願2000−265947(P2000−265947)の分割
【原出願日】平成12年9月1日(2000.9.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】