インクジェット記録装置
【課題】スループット向上と製品寿命の高寿命化とを両立したインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【解決手段】記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、空気流を発生させることにより前記記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストを回収するミスト回収手段と、記録後の記録媒体上に空気流を発生させることで記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、記録後に前記記録媒体の記録面に空気流を発生させて記録媒体上のインクを乾燥する乾燥手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記ミスト回収手段は、前記乾燥手段に対して前記記録媒体の搬送方向上流側に配設され、前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くなるように前記乾燥手段と前記ミスト回収手段を設定する。
【解決手段】記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、空気流を発生させることにより前記記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストを回収するミスト回収手段と、記録後の記録媒体上に空気流を発生させることで記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、記録後に前記記録媒体の記録面に空気流を発生させて記録媒体上のインクを乾燥する乾燥手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記ミスト回収手段は、前記乾燥手段に対して前記記録媒体の搬送方向上流側に配設され、前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くなるように前記乾燥手段と前記ミスト回収手段を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特に乾燥手段を有したインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色味補正を行うインクジェット記録装置では、色味補正を行うための測色用パッチを乾燥してから測色を行うことがある。インクによっては記録直後のインクの色味と乾燥した後のインクの色味が異なることがあり、この色味を定着させるために、乾燥を行うことがある。
【0003】
このように、測色用のパッチを乾燥するインクジェット記録装置では、記録媒体の乾燥時間の短縮を図るために、熱源発生手段を用いて温風を送風する温風乾燥機構を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような熱源発生装置によって温風を発生して記録媒体上に温風を送風することによって、短い時間でインクを乾燥することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−254221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱源を利用した温風乾燥機構を用いる場合熱源発生装置を用いるため、記録装置の構造が複雑化、また大型化し、コストも増加することがある。
【0006】
一方、熱源を用いないで送風のみで乾燥させる場合、乾燥時間を短縮するために乾燥ファンの風速を上げることが必要となる。このような送風のみで乾燥させる乾燥ファンを使用する場合、乾燥時間短縮のためには記録動作終了直後に乾燥ファンを駆動させることがスループット向上に繋がる。
【0007】
しかしながら、記録装置内部に残存したミストが、乾燥ファンの空気流よって巻き上げられ、光学センサなどにミストが付着し製品寿命が低下することがある。また、記録装置内部から測色機側にミストが流出し、測色センサの寿命を低下させることもあった。
【0008】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、スループット向上と製品寿命の高寿命化とを両立したインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、空気流を発生させることにより前記記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストを回収するミスト回収手段と、記録後の記録媒体上に空気流を発生させることで記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、記録後に前記記録媒体の記録面に空気流を発生させて記録媒体上のインクを乾燥する乾燥手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記ミスト回収手段は、前記乾燥手段に対して前記記録媒体の搬送方向上流側に配設され、前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くなるように前記乾燥手段と前記ミスト回収手段を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、記録動作終了後に、記録装置内部におけるミスト回収機構よって完全に回収されずプラテン上部に残留し浮遊しているミストを、記録媒体を乾燥しつつ回収することができる。これにより、スループット向上と製品寿命の高寿命化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の測色装置を備える記録装置を示す側断面図である。
【図2】第1の実施形態のミスト回収機構の構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態の記録装置の右側面から見た概略側面図を示している。
【図4】第1の実施形態の測色装置を示す概略側面図である。
【図5】第1の実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施形態の記録、乾燥、測色の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。
【図8】第1の実施形態のミスト濃度の推移を測定した結果を示す表である。
【図9】第2の実施形態の記録、乾燥、測色の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】図9に示すステップS02からステップS10の流れを示すグラフである。
【図11】第3の実施形態の記録、乾燥、測色の制御手順を示すフローチャートである。
【図12】図11に示すステップS02からステップS10の流れを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の測色装置を備えるインクジェット記録装置を示す側断面図である。インクジェット記録装置01は、例えばロール状に巻きつけられたロール紙82から引き出された記録媒体1を搬送ローラ2によって搬送し、記録ヘッド3によって測色用カラーパッチの記録を行う。測色装置200は、カラーパッチを測色して測色データを取得し、取得した測色データに基づいて色校正を行う。
【0013】
本実施形態の記録装置は、記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ57が主走査方向Xに行う往復運動と、ロール紙82から記録媒体1を所定量ずつ引き出しながら副走査方向Yに搬送する搬送ローラ12の動作とが各々交互に動作することで画像形成を行っている。
【0014】
このような動作で行われる記録媒体に対する記録動作時には、インク吐出時にミストと呼ばれる微小なインク粒子が発生し、このインク粒子がインクジェット記録装置01の内部に飛散する。この記録装置01の内部に飛散したミストがCRエンコーダセンサやリニアスケールなどの光学センサに付着すると、誤動作を引き起こすことがある。そのためミスト回収用のミスト回収機構330をキャリッジ52背面側に通紙幅全域に渡って配設している。
【0015】
図2は、本実施形態のミスト回収機構330の構成を示す斜視図である。ミスト回収機構330は、ミストファン331と連結する吸気ダクト332、排気ダクト333を備えている。吸気ダクト332の先端部にある吸気口336は、キャリッジ52の背面側に通紙幅全域にわたって配設され、搬送方向の下流から上流側へ流れる第一の空気流を発生させて、機内全域のミストを均一に回収する。回収されたミストは、吸気ダクト332を通り、ミストファン331を経由し、排気ダクト333へと流れていく。
【0016】
吸気ダクト332内には、回収したミストをトラップするトラップリブ(不図示)およびフィルタ(不図示)と、液化したミストを保持する吸収体(不図示)が配設されている。また、排気ダクト333内にも回収したミストをトラップするフィルタ334が配設され、フィルタ334の下方には液化ミストを保持する吸収体335が配設されている。本実施形態では、ミスト回収機構330を通紙幅方向に2個並べて配設することで、通紙幅全域にわたって均一にミストを回収できるようにしている。
【0017】
図3は、本実施形態のインクジェット記録装置01の右側面から見た概略側面図を示している。図3(a)は、パッチの記録中の記録装置および乾燥中の記録装置を示し、図3(b)は、パッチの測色中の記録装置を示している。
【0018】
また、図4は、本実施形態の測色装置02を示す概略側面図である。測色装置02は、プラテン21の搬送方向下流側に配設される。測色装置02は、測色CRモータ(不図示)によって、記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ52の走査方向と同じ方向に往復動する測色キャリッジ401を備えている。測色キャリッジ401は、測色センサ(不図示)が着脱自在に装着され、測色キャリッジ401の走査と搬送ローラ12の記録媒体搬送動作によって、測色データを取得するための記録媒体の記録面に記録された測色パッチを読取ることができる。測色キャリッジ401の下方の搬送ガイド403上には、測色時に記録媒体を支持するバッキング404が配設されている。測色キャリッジ401が摺動走査する走査レールと一体となった記録媒体押え板402は、測色時に記録媒体の浮きを低減させるために、バッキング404上の記録媒体を自重で押さえる機能を有している。記録媒体押え板402は、測色キャリッジ401の走査領域の両外側に配設された2枚の内側板405に固定されている。2枚の内側板405は、内側板405のさらに両外側に配設された外側板(不図示)に対して上下方向に移動可能な構成となっており、昇降モータ(不図示)から駆動が伝達された昇降カム(不図示)によって、上下方向に昇降する。2枚の内側板405、記録媒体押え板402、および測色キャリッジ401は上述した構成により一体となって昇降し、記録中および乾燥中(第一のポジション)、測色中(第二のポジション)の2つのポジションを構成する。また、記録媒体押え板402は、機外から機内へ外気を取り入れる外気取り入れ口406部に配設されており、記録媒体押え板402の昇降によって、ミストファン331による機外から機内へ外気の流量および流速を変えることができる。
【0019】
測色キャリッジ401の下流側には、記録後の記録媒体の記録面を乾燥させるために送風を送る乾燥ファン410と、乾燥ファン410と連結した乾燥ダクト411とが配設されている。乾燥ダクト411の送風口413は、記録媒体搬送方向上流側を向いて配設されており、ミスト回収機構330の吸気口336と略対向し、略同一高さに配設されている。これにより、ミストファン331によって発生する第一の空気流と乾燥ファン410によって発生する第二の空気流の干渉が無くなり、ミストファン331により発生する第一の空気流を記録媒体の乾燥にも効率的に利用することができる。
【0020】
バッキング404の下流側に位置する下流搬送ガイド407は、乾燥用送風ファンの空気流をバッキング404上部の外気取り入れ口406に効率的に導く形状とするため、バッキング404面に対して斜め下方向に延在する形状で配設されている。このような形状を構成することで、断面積を小さくした外気取り入れ口部にも乾燥ファン410からの送風を効率的に導くことができる。
【0021】
バッキング404上流側には、バッキング404面に対して略平行でキャリッジ52走査方向全域に渡って記録媒体搬送方向上流側に延在する仕切り板408を配設している。この仕切り板408により、第一の空気流および第二の空気流の流れを、よりバッキング404上部の記録媒体表面に沿わせ記録媒体表面の風速を増加させることができる。
【0022】
図5は、本実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。CPU100は、ROM102に記憶された制御プラグラムに従って測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色全体の制御を行うものである。CPU100には、ホストコンピューター104からパッチの記録データ、記録モード設定情報等が入力インターフェイス106を介して入力される。また、CPU100は、記録データ等をRAM108に書き込んだり、読み出したりするようになっている。CPU100は、ホストコンピューター104からの記録データ、記録モード情報および、記録終了後の経過時間を計測する時間計測部450からの時間情報、測色センサ440からの測色データをもとに、様々な制御を行う。例えば、記録媒体搬送モータ110、ミストファン331、キャリッジモータ114、記録ヘッド51、測色CRモータ420、乾燥ファン410、昇降モータ430の制御を行う。
【0023】
図6は、本実施形態の測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色の一連の動作の制御手順を示すフローチャートである。ホストコンピューター104から記録データ、記録モード設定情報等がプリンタに転送されると(ステップS01)、CPU100は、記録モードの設定情報に従って記録制御を決定する。また、ミストファン331の駆動を開始する(ステップS02)。そして、昇降モータ430を駆動し、記録媒体押え板402を第一のポジションに移動させる(ステップS03)。そして、記録を開始する(ステップS04)記録中は乾燥ファン410の駆動を停止させる。これにより、記録ヘッド51から吐出されるインク滴は、乾燥ファン410が発生する空気流によって流され、記録媒体への着弾位置がずれてしまうことを防止し、画質を向上することができる。
【0024】
記録が終了すると(ステップS05)、測色データを取得するための測色パッチの乾燥および測色を、測色パッチ1ラインごとに順次行うことにより測色データを取得するか否かを判断する(ステップS06)。測色データを取得する場合、記録動作終了直後、乾燥ファン410の駆動を開始すると同時にミストファン331の出力をUPさせる(ステップS07)。記録動作終了から所定時間(X秒)は、記録媒体搬送方向に対して逆方向にプラテン21上部を流れる、乾燥ファン410が発生する第二の空気流の風速とミストファン331が発生する第一の空気流の風速は、第二の空気流と同じ方向にプラテン21上部を流れるミストファン331が発生する第一の空気流の風速より弱くなるようにミストファン331の出力を設定する。記録動作終了から所定の時間は、本体内部のミストがミスト回収機構330よって完全に回収されず、プラテン21上部に残留し浮遊している。
【0025】
所定時間(X秒)が経過すると、ミストファンの出力を記録中の出力まで下げる(ステップS09)。そして、記録媒体の乾燥が所定時間行われる(ステップS10)。
【0026】
図7は、図6に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。本グラフは乾燥ファンとミストファンの記録開始から乾燥終了までを示し、縦軸は乾燥ファンとミストファンの出力を示し、横軸は時間を示している。
【0027】
図7において、乾燥ファンは、乾燥中および測色中に一定の出力で駆動をしている。一方、ミストファンは、記録中に一定の出力で駆動し、記録が終了すると、乾燥中および測色中には、一旦X秒間出力を上げて駆動し、X秒経つと、また記録中と同じ出力でミストファンを駆動している。
【0028】
図8は、本実施形態の記録媒体1枚記録したときのプラテン21上部におけるミスト濃度の推移を測定した結果を示す表である。ミスト濃度の測定は、2点間のレーザーを通過する粒子の時間を計ることで粒子径を算出し、粒子径分布をリアルタイムに測定できるTime−Of−Flight原理を用いた測定装置にて計測している。記録装置内部に残存したミストが完全に回収されるまでには、記録動作終了から20秒以上もの時間を要している。
【0029】
仮に、記録動作終了直後の乾燥ファン410のプラテン21上部における風速が、ミストファン331のプラテン21上部での風速より速い場合、ミストファン331によるミスト回収性能が低下する。そして、乾燥ファン410の発生させる第二の空気流によって、本体内部の残存ミストが巻き上げられ、記録媒体各部にミストが飛散し付着してしまう。例えば、リニアスケール61は、ミストの影響を低減させるためにミスト濃度の薄い本体背面側に配設しているが、飛散したミストが本体背面側に巻き上げられ、リニアスケール61にミストが付着する。これにより、リニアスケール61およびCRエンコーダセンサ62の光学性能が劣化し、製品寿命が低下するおそれがある。
【0030】
また、乾燥ファン410の発生させる第二の空気流によって巻き上げられたミストは、記録媒体内部から測色装置02側に流出し、測色センサ440にミストが付着する。これにより、測色センサ440の光学性能が劣化し測色精度および製品寿命が低下するおそれがある。
【0031】
そこで本実施形態では、記録動作終了から所定時間は、乾燥ファン410の発生させる第二の空気流のプラテン21上部における風速が、ミストファン331の発生させる第一の空気流のプラテン21上部での風速より弱くなるように、ミストファン331の出力を設定する。これにより、乾燥ファン410による空気流によって運ばれるミストを確実にミストファン331による空気流で回収し、ミストの巻き上げや飛散による弊害を防止し、製品寿命および測色精度の耐久性を向上させることができる。また、乾燥ファン410による第二の空気流によって、プラテン21上部の残存ミストがミスト回収機構330の吸気口336側に集められるため、ミストファン331単独駆動の場合より、より効率的に短時間で残存ミストを回収することができる。
【0032】
本体内部のミスト量は、記録ヘッド51と記録媒体との距離、記録画像の濃度、記録動作中のキャリッジ52の走査速度により左右される。記録ヘッド51と記録媒体との距離が広い場合には、空気抵抗により記録媒体に着弾しえないミストが多くなり、それにより機内に浮遊するミスト量が増加する。記録画像の濃度が高い場合には、インクの吐出量が増えるため、ミストの発生量そのものが増加する。記録動作中のキャリッジ52の走査速度が速くなると、インクの吐出タイミングが早くなり、結果として記録ヘッド51の温度が上昇し、インクの物性的特性上ミスト発生量が増加する。そのため、記録ヘッド51と記録媒体との距離、記録画像の濃度、記録動作中のキャリッジ52の走査速度の3つのパラメータが変化した場合の、記録装置内部の残存ミストを回収するのに要する時間を各々の条件で決定し制御テーブルを作成する。そして、上述した記録動作終了から所定時間を、あらかじめROM102内に有する制御テーブルをもとに決定する。記録動作終了から所定時間が経過した後は、静音化および省電力化のためにミストファン331の出力は低下させるが、ミストファン331の駆動は継続させる。乾燥時間を短縮するためには記録媒体上面の風速が重要となるが、ミストファン331を乾燥中にも駆動させることにより、ミストファン331によって発生する第一の空気流によって記録媒体上面の風速が増加し、乾燥効率を向上させることができる。
【0033】
再び図6を参照して、昇降モータ430を駆動させて、記録媒体押え板402を第二のポジションに移動させる(ステップS11)。この第二のポジションでは、記録媒体押え板402は自重により記録媒体をバッキング404に対して付勢し記録媒体の浮きを押さえる。その後、測色CRモータ420を駆動し測色キャリッジ401を走査させ、測色パッチ1ライン分の測色データを取得し、CPU100にデータを転送する。そして、次ラインの測色パッチを乾燥および測色するために、昇降モータ430を駆動し記録媒体押え板402を第一のポジションに移動させ(ステップS12)、測色パッチ1ライン分 記録媒体を巻き戻す(ステップS13)。そして、再び所定の時間乾燥後、記録媒体押え板402を第二のポジションに移動させ、上述したように測色キャリッジ401を走査させ測色データを取得する。
【0034】
この動作を繰り返し、全測色パッチの測色データを取得しRAM108内に測色情報を保存する(ステップS14)。測色終了後、乾燥ファン410およびミストファン331の駆動を停止する(ステップS15)。そして、記録媒体をカット位置まで搬送し(ステップS16)、キャリッジ52に配設されたカッター80によりカット後、記録媒体をバスケット81内へ排出する(ステップS17)。取得した測色情報は、ホストコンピューター104に送られ、以後の色補正情報として利用される。
【0035】
以上のような構成をとることで、装置の小型化およびコスト低減を図りながら、スループットを向上し、製品寿命を高寿命化することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、静音化および省電力化のために、記録動作終了から所定時間経過後ミストファン331の出力を低下させる制御としたが、静音性および乾燥性能のバランスを考慮して、ミストファン331の出力を低下させない制御方法であってもよい。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、記録が終了したら、ミストファンの出力をアップし、所定時間(X秒)経過後にミストファンの出力をダウンして記録時と同じ出力にした。しかしながら、本実施形態では、ミストファンの出力を変えるのではなく、乾燥ファンの出力を変えるものである。
【0038】
図9は、本実施形態の測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色の一連の動作の制御手順を示すフローチャートである。記録が開始されると同時にミストファン331の駆動を開始させる(ステップS02)。記録中は乾燥ファン410の駆動を停止させる。記録動作終了すると、乾燥ファン410の駆動を開始する(ステップS18)。記録動作終了から所定時間(X秒)は、記録媒体搬送方向に対して逆方向にプラテン21上部を流れる乾燥ファン410の発生させる第二の空気流の風速は、第二の空気流と同じ方向にプラテン21上部を流れるミストファン331の発生させる第一の空気流の風速より弱くなるように乾燥ファン410の出力を設定する。
【0039】
記録動作終了からの所定時間(X秒)は、あらかじめROM102内に有する、記録ヘッド51と記録媒体との距離、記録画像の濃度、記録動作中のキャリッジ52の走査速度をもとにした制御テーブルをもとに決定する。記録動作終了から所定時間(X秒)経過後は、乾燥ファン410の出力を増加させ(ステップS19)、乾燥性能を向上させる。そして、乾燥および測色動作の終了後、ミストファン331および乾燥ファン410の駆動を停止する。
【0040】
図10は、図9に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。本グラフは乾燥ファンとミストファンの記録開始から乾燥終了までを示し、縦軸は乾燥ファンとミストファンの出力を示し、横軸は時間を示している。
【0041】
図10において、ミストファンは、記録中から乾燥中および測色中まで一定の出力で駆動をしている。一方、乾燥ファンは、記録中は駆動しないで、乾燥が始まると所定の時間(X秒)ある出力で駆動し、所定の時間が経過すると出力を上げて乾燥および測色が終わるまで駆動する。
【0042】
(第3の実施形態)
図11は、本実施形態の測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色の一連の動作の制御手順を示すフローチャートである。記録が開始されると同時にミストファン331の駆動を開始させる(ステップS02)。記録中は乾燥ファン410の駆動を停止させる。記録動作終了すると、乾燥ファン410の駆動を開始する(ステップS20)。ミストファン331および乾燥ファンの出力は、記録媒体搬送方向に対して逆方向にプラテン21上部を流れる乾燥ファン410の発生させる第二の空気流の風速は、第二の空気流と同じ方向にプラテン21上部を流れるミストファン331の発生させる第一の空気流の風速より弱くなるように設定する。そして、乾燥および測色動作の終了後、ミストファン331および乾燥ファン410の駆動を停止する。
【0043】
図12は、図11に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。本グラフは乾燥ファンとミストファンの記録開始から乾燥終了までを示し、縦軸は乾燥ファンとミストファンの出力を示し、横軸は時間を示している。
【0044】
図12において、ミストファンは、記録中から乾燥中および測色中まで一定の出力で駆動をしている。また、乾燥ファンは、記録中は駆動しないで、乾燥が始まると一定の出力で駆動をしている。そして、ミストファンも乾燥ファンも乾燥および測色が終わると駆動を止める。
【0045】
以上のように、ミストファン331および乾燥ファン410の出力を常に一定とする構成とすることで、ファンの出力制御用の部品を省くことができコストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
02 測色装置
330 ミスト回収機構
331 ミストファン
401 測色キャリッジ
410 乾燥ファン
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特に乾燥手段を有したインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色味補正を行うインクジェット記録装置では、色味補正を行うための測色用パッチを乾燥してから測色を行うことがある。インクによっては記録直後のインクの色味と乾燥した後のインクの色味が異なることがあり、この色味を定着させるために、乾燥を行うことがある。
【0003】
このように、測色用のパッチを乾燥するインクジェット記録装置では、記録媒体の乾燥時間の短縮を図るために、熱源発生手段を用いて温風を送風する温風乾燥機構を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような熱源発生装置によって温風を発生して記録媒体上に温風を送風することによって、短い時間でインクを乾燥することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−254221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱源を利用した温風乾燥機構を用いる場合熱源発生装置を用いるため、記録装置の構造が複雑化、また大型化し、コストも増加することがある。
【0006】
一方、熱源を用いないで送風のみで乾燥させる場合、乾燥時間を短縮するために乾燥ファンの風速を上げることが必要となる。このような送風のみで乾燥させる乾燥ファンを使用する場合、乾燥時間短縮のためには記録動作終了直後に乾燥ファンを駆動させることがスループット向上に繋がる。
【0007】
しかしながら、記録装置内部に残存したミストが、乾燥ファンの空気流よって巻き上げられ、光学センサなどにミストが付着し製品寿命が低下することがある。また、記録装置内部から測色機側にミストが流出し、測色センサの寿命を低下させることもあった。
【0008】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、スループット向上と製品寿命の高寿命化とを両立したインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、空気流を発生させることにより前記記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストを回収するミスト回収手段と、記録後の記録媒体上に空気流を発生させることで記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、記録後に前記記録媒体の記録面に空気流を発生させて記録媒体上のインクを乾燥する乾燥手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記ミスト回収手段は、前記乾燥手段に対して前記記録媒体の搬送方向上流側に配設され、前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くなるように前記乾燥手段と前記ミスト回収手段を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、記録動作終了後に、記録装置内部におけるミスト回収機構よって完全に回収されずプラテン上部に残留し浮遊しているミストを、記録媒体を乾燥しつつ回収することができる。これにより、スループット向上と製品寿命の高寿命化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の測色装置を備える記録装置を示す側断面図である。
【図2】第1の実施形態のミスト回収機構の構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態の記録装置の右側面から見た概略側面図を示している。
【図4】第1の実施形態の測色装置を示す概略側面図である。
【図5】第1の実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施形態の記録、乾燥、測色の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。
【図8】第1の実施形態のミスト濃度の推移を測定した結果を示す表である。
【図9】第2の実施形態の記録、乾燥、測色の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】図9に示すステップS02からステップS10の流れを示すグラフである。
【図11】第3の実施形態の記録、乾燥、測色の制御手順を示すフローチャートである。
【図12】図11に示すステップS02からステップS10の流れを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の測色装置を備えるインクジェット記録装置を示す側断面図である。インクジェット記録装置01は、例えばロール状に巻きつけられたロール紙82から引き出された記録媒体1を搬送ローラ2によって搬送し、記録ヘッド3によって測色用カラーパッチの記録を行う。測色装置200は、カラーパッチを測色して測色データを取得し、取得した測色データに基づいて色校正を行う。
【0013】
本実施形態の記録装置は、記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ57が主走査方向Xに行う往復運動と、ロール紙82から記録媒体1を所定量ずつ引き出しながら副走査方向Yに搬送する搬送ローラ12の動作とが各々交互に動作することで画像形成を行っている。
【0014】
このような動作で行われる記録媒体に対する記録動作時には、インク吐出時にミストと呼ばれる微小なインク粒子が発生し、このインク粒子がインクジェット記録装置01の内部に飛散する。この記録装置01の内部に飛散したミストがCRエンコーダセンサやリニアスケールなどの光学センサに付着すると、誤動作を引き起こすことがある。そのためミスト回収用のミスト回収機構330をキャリッジ52背面側に通紙幅全域に渡って配設している。
【0015】
図2は、本実施形態のミスト回収機構330の構成を示す斜視図である。ミスト回収機構330は、ミストファン331と連結する吸気ダクト332、排気ダクト333を備えている。吸気ダクト332の先端部にある吸気口336は、キャリッジ52の背面側に通紙幅全域にわたって配設され、搬送方向の下流から上流側へ流れる第一の空気流を発生させて、機内全域のミストを均一に回収する。回収されたミストは、吸気ダクト332を通り、ミストファン331を経由し、排気ダクト333へと流れていく。
【0016】
吸気ダクト332内には、回収したミストをトラップするトラップリブ(不図示)およびフィルタ(不図示)と、液化したミストを保持する吸収体(不図示)が配設されている。また、排気ダクト333内にも回収したミストをトラップするフィルタ334が配設され、フィルタ334の下方には液化ミストを保持する吸収体335が配設されている。本実施形態では、ミスト回収機構330を通紙幅方向に2個並べて配設することで、通紙幅全域にわたって均一にミストを回収できるようにしている。
【0017】
図3は、本実施形態のインクジェット記録装置01の右側面から見た概略側面図を示している。図3(a)は、パッチの記録中の記録装置および乾燥中の記録装置を示し、図3(b)は、パッチの測色中の記録装置を示している。
【0018】
また、図4は、本実施形態の測色装置02を示す概略側面図である。測色装置02は、プラテン21の搬送方向下流側に配設される。測色装置02は、測色CRモータ(不図示)によって、記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ52の走査方向と同じ方向に往復動する測色キャリッジ401を備えている。測色キャリッジ401は、測色センサ(不図示)が着脱自在に装着され、測色キャリッジ401の走査と搬送ローラ12の記録媒体搬送動作によって、測色データを取得するための記録媒体の記録面に記録された測色パッチを読取ることができる。測色キャリッジ401の下方の搬送ガイド403上には、測色時に記録媒体を支持するバッキング404が配設されている。測色キャリッジ401が摺動走査する走査レールと一体となった記録媒体押え板402は、測色時に記録媒体の浮きを低減させるために、バッキング404上の記録媒体を自重で押さえる機能を有している。記録媒体押え板402は、測色キャリッジ401の走査領域の両外側に配設された2枚の内側板405に固定されている。2枚の内側板405は、内側板405のさらに両外側に配設された外側板(不図示)に対して上下方向に移動可能な構成となっており、昇降モータ(不図示)から駆動が伝達された昇降カム(不図示)によって、上下方向に昇降する。2枚の内側板405、記録媒体押え板402、および測色キャリッジ401は上述した構成により一体となって昇降し、記録中および乾燥中(第一のポジション)、測色中(第二のポジション)の2つのポジションを構成する。また、記録媒体押え板402は、機外から機内へ外気を取り入れる外気取り入れ口406部に配設されており、記録媒体押え板402の昇降によって、ミストファン331による機外から機内へ外気の流量および流速を変えることができる。
【0019】
測色キャリッジ401の下流側には、記録後の記録媒体の記録面を乾燥させるために送風を送る乾燥ファン410と、乾燥ファン410と連結した乾燥ダクト411とが配設されている。乾燥ダクト411の送風口413は、記録媒体搬送方向上流側を向いて配設されており、ミスト回収機構330の吸気口336と略対向し、略同一高さに配設されている。これにより、ミストファン331によって発生する第一の空気流と乾燥ファン410によって発生する第二の空気流の干渉が無くなり、ミストファン331により発生する第一の空気流を記録媒体の乾燥にも効率的に利用することができる。
【0020】
バッキング404の下流側に位置する下流搬送ガイド407は、乾燥用送風ファンの空気流をバッキング404上部の外気取り入れ口406に効率的に導く形状とするため、バッキング404面に対して斜め下方向に延在する形状で配設されている。このような形状を構成することで、断面積を小さくした外気取り入れ口部にも乾燥ファン410からの送風を効率的に導くことができる。
【0021】
バッキング404上流側には、バッキング404面に対して略平行でキャリッジ52走査方向全域に渡って記録媒体搬送方向上流側に延在する仕切り板408を配設している。この仕切り板408により、第一の空気流および第二の空気流の流れを、よりバッキング404上部の記録媒体表面に沿わせ記録媒体表面の風速を増加させることができる。
【0022】
図5は、本実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。CPU100は、ROM102に記憶された制御プラグラムに従って測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色全体の制御を行うものである。CPU100には、ホストコンピューター104からパッチの記録データ、記録モード設定情報等が入力インターフェイス106を介して入力される。また、CPU100は、記録データ等をRAM108に書き込んだり、読み出したりするようになっている。CPU100は、ホストコンピューター104からの記録データ、記録モード情報および、記録終了後の経過時間を計測する時間計測部450からの時間情報、測色センサ440からの測色データをもとに、様々な制御を行う。例えば、記録媒体搬送モータ110、ミストファン331、キャリッジモータ114、記録ヘッド51、測色CRモータ420、乾燥ファン410、昇降モータ430の制御を行う。
【0023】
図6は、本実施形態の測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色の一連の動作の制御手順を示すフローチャートである。ホストコンピューター104から記録データ、記録モード設定情報等がプリンタに転送されると(ステップS01)、CPU100は、記録モードの設定情報に従って記録制御を決定する。また、ミストファン331の駆動を開始する(ステップS02)。そして、昇降モータ430を駆動し、記録媒体押え板402を第一のポジションに移動させる(ステップS03)。そして、記録を開始する(ステップS04)記録中は乾燥ファン410の駆動を停止させる。これにより、記録ヘッド51から吐出されるインク滴は、乾燥ファン410が発生する空気流によって流され、記録媒体への着弾位置がずれてしまうことを防止し、画質を向上することができる。
【0024】
記録が終了すると(ステップS05)、測色データを取得するための測色パッチの乾燥および測色を、測色パッチ1ラインごとに順次行うことにより測色データを取得するか否かを判断する(ステップS06)。測色データを取得する場合、記録動作終了直後、乾燥ファン410の駆動を開始すると同時にミストファン331の出力をUPさせる(ステップS07)。記録動作終了から所定時間(X秒)は、記録媒体搬送方向に対して逆方向にプラテン21上部を流れる、乾燥ファン410が発生する第二の空気流の風速とミストファン331が発生する第一の空気流の風速は、第二の空気流と同じ方向にプラテン21上部を流れるミストファン331が発生する第一の空気流の風速より弱くなるようにミストファン331の出力を設定する。記録動作終了から所定の時間は、本体内部のミストがミスト回収機構330よって完全に回収されず、プラテン21上部に残留し浮遊している。
【0025】
所定時間(X秒)が経過すると、ミストファンの出力を記録中の出力まで下げる(ステップS09)。そして、記録媒体の乾燥が所定時間行われる(ステップS10)。
【0026】
図7は、図6に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。本グラフは乾燥ファンとミストファンの記録開始から乾燥終了までを示し、縦軸は乾燥ファンとミストファンの出力を示し、横軸は時間を示している。
【0027】
図7において、乾燥ファンは、乾燥中および測色中に一定の出力で駆動をしている。一方、ミストファンは、記録中に一定の出力で駆動し、記録が終了すると、乾燥中および測色中には、一旦X秒間出力を上げて駆動し、X秒経つと、また記録中と同じ出力でミストファンを駆動している。
【0028】
図8は、本実施形態の記録媒体1枚記録したときのプラテン21上部におけるミスト濃度の推移を測定した結果を示す表である。ミスト濃度の測定は、2点間のレーザーを通過する粒子の時間を計ることで粒子径を算出し、粒子径分布をリアルタイムに測定できるTime−Of−Flight原理を用いた測定装置にて計測している。記録装置内部に残存したミストが完全に回収されるまでには、記録動作終了から20秒以上もの時間を要している。
【0029】
仮に、記録動作終了直後の乾燥ファン410のプラテン21上部における風速が、ミストファン331のプラテン21上部での風速より速い場合、ミストファン331によるミスト回収性能が低下する。そして、乾燥ファン410の発生させる第二の空気流によって、本体内部の残存ミストが巻き上げられ、記録媒体各部にミストが飛散し付着してしまう。例えば、リニアスケール61は、ミストの影響を低減させるためにミスト濃度の薄い本体背面側に配設しているが、飛散したミストが本体背面側に巻き上げられ、リニアスケール61にミストが付着する。これにより、リニアスケール61およびCRエンコーダセンサ62の光学性能が劣化し、製品寿命が低下するおそれがある。
【0030】
また、乾燥ファン410の発生させる第二の空気流によって巻き上げられたミストは、記録媒体内部から測色装置02側に流出し、測色センサ440にミストが付着する。これにより、測色センサ440の光学性能が劣化し測色精度および製品寿命が低下するおそれがある。
【0031】
そこで本実施形態では、記録動作終了から所定時間は、乾燥ファン410の発生させる第二の空気流のプラテン21上部における風速が、ミストファン331の発生させる第一の空気流のプラテン21上部での風速より弱くなるように、ミストファン331の出力を設定する。これにより、乾燥ファン410による空気流によって運ばれるミストを確実にミストファン331による空気流で回収し、ミストの巻き上げや飛散による弊害を防止し、製品寿命および測色精度の耐久性を向上させることができる。また、乾燥ファン410による第二の空気流によって、プラテン21上部の残存ミストがミスト回収機構330の吸気口336側に集められるため、ミストファン331単独駆動の場合より、より効率的に短時間で残存ミストを回収することができる。
【0032】
本体内部のミスト量は、記録ヘッド51と記録媒体との距離、記録画像の濃度、記録動作中のキャリッジ52の走査速度により左右される。記録ヘッド51と記録媒体との距離が広い場合には、空気抵抗により記録媒体に着弾しえないミストが多くなり、それにより機内に浮遊するミスト量が増加する。記録画像の濃度が高い場合には、インクの吐出量が増えるため、ミストの発生量そのものが増加する。記録動作中のキャリッジ52の走査速度が速くなると、インクの吐出タイミングが早くなり、結果として記録ヘッド51の温度が上昇し、インクの物性的特性上ミスト発生量が増加する。そのため、記録ヘッド51と記録媒体との距離、記録画像の濃度、記録動作中のキャリッジ52の走査速度の3つのパラメータが変化した場合の、記録装置内部の残存ミストを回収するのに要する時間を各々の条件で決定し制御テーブルを作成する。そして、上述した記録動作終了から所定時間を、あらかじめROM102内に有する制御テーブルをもとに決定する。記録動作終了から所定時間が経過した後は、静音化および省電力化のためにミストファン331の出力は低下させるが、ミストファン331の駆動は継続させる。乾燥時間を短縮するためには記録媒体上面の風速が重要となるが、ミストファン331を乾燥中にも駆動させることにより、ミストファン331によって発生する第一の空気流によって記録媒体上面の風速が増加し、乾燥効率を向上させることができる。
【0033】
再び図6を参照して、昇降モータ430を駆動させて、記録媒体押え板402を第二のポジションに移動させる(ステップS11)。この第二のポジションでは、記録媒体押え板402は自重により記録媒体をバッキング404に対して付勢し記録媒体の浮きを押さえる。その後、測色CRモータ420を駆動し測色キャリッジ401を走査させ、測色パッチ1ライン分の測色データを取得し、CPU100にデータを転送する。そして、次ラインの測色パッチを乾燥および測色するために、昇降モータ430を駆動し記録媒体押え板402を第一のポジションに移動させ(ステップS12)、測色パッチ1ライン分 記録媒体を巻き戻す(ステップS13)。そして、再び所定の時間乾燥後、記録媒体押え板402を第二のポジションに移動させ、上述したように測色キャリッジ401を走査させ測色データを取得する。
【0034】
この動作を繰り返し、全測色パッチの測色データを取得しRAM108内に測色情報を保存する(ステップS14)。測色終了後、乾燥ファン410およびミストファン331の駆動を停止する(ステップS15)。そして、記録媒体をカット位置まで搬送し(ステップS16)、キャリッジ52に配設されたカッター80によりカット後、記録媒体をバスケット81内へ排出する(ステップS17)。取得した測色情報は、ホストコンピューター104に送られ、以後の色補正情報として利用される。
【0035】
以上のような構成をとることで、装置の小型化およびコスト低減を図りながら、スループットを向上し、製品寿命を高寿命化することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、静音化および省電力化のために、記録動作終了から所定時間経過後ミストファン331の出力を低下させる制御としたが、静音性および乾燥性能のバランスを考慮して、ミストファン331の出力を低下させない制御方法であってもよい。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、記録が終了したら、ミストファンの出力をアップし、所定時間(X秒)経過後にミストファンの出力をダウンして記録時と同じ出力にした。しかしながら、本実施形態では、ミストファンの出力を変えるのではなく、乾燥ファンの出力を変えるものである。
【0038】
図9は、本実施形態の測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色の一連の動作の制御手順を示すフローチャートである。記録が開始されると同時にミストファン331の駆動を開始させる(ステップS02)。記録中は乾燥ファン410の駆動を停止させる。記録動作終了すると、乾燥ファン410の駆動を開始する(ステップS18)。記録動作終了から所定時間(X秒)は、記録媒体搬送方向に対して逆方向にプラテン21上部を流れる乾燥ファン410の発生させる第二の空気流の風速は、第二の空気流と同じ方向にプラテン21上部を流れるミストファン331の発生させる第一の空気流の風速より弱くなるように乾燥ファン410の出力を設定する。
【0039】
記録動作終了からの所定時間(X秒)は、あらかじめROM102内に有する、記録ヘッド51と記録媒体との距離、記録画像の濃度、記録動作中のキャリッジ52の走査速度をもとにした制御テーブルをもとに決定する。記録動作終了から所定時間(X秒)経過後は、乾燥ファン410の出力を増加させ(ステップS19)、乾燥性能を向上させる。そして、乾燥および測色動作の終了後、ミストファン331および乾燥ファン410の駆動を停止する。
【0040】
図10は、図9に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。本グラフは乾燥ファンとミストファンの記録開始から乾燥終了までを示し、縦軸は乾燥ファンとミストファンの出力を示し、横軸は時間を示している。
【0041】
図10において、ミストファンは、記録中から乾燥中および測色中まで一定の出力で駆動をしている。一方、乾燥ファンは、記録中は駆動しないで、乾燥が始まると所定の時間(X秒)ある出力で駆動し、所定の時間が経過すると出力を上げて乾燥および測色が終わるまで駆動する。
【0042】
(第3の実施形態)
図11は、本実施形態の測色を行うためのパッチの記録、乾燥、測色の一連の動作の制御手順を示すフローチャートである。記録が開始されると同時にミストファン331の駆動を開始させる(ステップS02)。記録中は乾燥ファン410の駆動を停止させる。記録動作終了すると、乾燥ファン410の駆動を開始する(ステップS20)。ミストファン331および乾燥ファンの出力は、記録媒体搬送方向に対して逆方向にプラテン21上部を流れる乾燥ファン410の発生させる第二の空気流の風速は、第二の空気流と同じ方向にプラテン21上部を流れるミストファン331の発生させる第一の空気流の風速より弱くなるように設定する。そして、乾燥および測色動作の終了後、ミストファン331および乾燥ファン410の駆動を停止する。
【0043】
図12は、図11に示すステップS02からステップS10までの流れを示すグラフである。本グラフは乾燥ファンとミストファンの記録開始から乾燥終了までを示し、縦軸は乾燥ファンとミストファンの出力を示し、横軸は時間を示している。
【0044】
図12において、ミストファンは、記録中から乾燥中および測色中まで一定の出力で駆動をしている。また、乾燥ファンは、記録中は駆動しないで、乾燥が始まると一定の出力で駆動をしている。そして、ミストファンも乾燥ファンも乾燥および測色が終わると駆動を止める。
【0045】
以上のように、ミストファン331および乾燥ファン410の出力を常に一定とする構成とすることで、ファンの出力制御用の部品を省くことができコストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
02 測色装置
330 ミスト回収機構
331 ミストファン
401 測色キャリッジ
410 乾燥ファン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、空気流を発生させることにより前記記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストを回収するミスト回収手段と、記録後の記録媒体上に空気流を発生させることで記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、記録後に前記記録媒体の記録面に空気流を発生させて記録媒体上のインクを乾燥する乾燥手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
前記ミスト回収手段は、前記乾燥手段に対して前記記録媒体の搬送方向上流側に配設され、
前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くなるように前記乾燥手段と前記ミスト回収手段を設定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記乾燥手段は、前記記録媒体の搬送方向の下流から上流側へ流れる空気流を発生させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記ミスト回収手段は、前記記録媒体の搬送方向の下流から上流側へ流れる空気流を発生させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くするのは、記録が終わってから所定の時間であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、空気流を発生させることにより前記記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストを回収するミスト回収手段と、記録後の記録媒体上に空気流を発生させることで記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、記録後に前記記録媒体の記録面に空気流を発生させて記録媒体上のインクを乾燥する乾燥手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
前記ミスト回収手段は、前記乾燥手段に対して前記記録媒体の搬送方向上流側に配設され、
前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くなるように前記乾燥手段と前記ミスト回収手段を設定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記乾燥手段は、前記記録媒体の搬送方向の下流から上流側へ流れる空気流を発生させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記ミスト回収手段は、前記記録媒体の搬送方向の下流から上流側へ流れる空気流を発生させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記乾燥手段の空気流を、前記ミスト回収手段の空気流よりも弱くするのは、記録が終わってから所定の時間であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−111752(P2013−111752A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256931(P2011−256931)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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