説明

インク受容層形成用組成物及びインク受容層シート

【課題】
顔料インクを用いた場合であっても、こすれによる顔料の脱離が抑制でき、かつインクジェット印刷直後でも顔料の脱離が抑制できるインク受容層形成用組成物及びこれを用いたシートを提供することである。
【解決手段】
無機微粒子(A)と、水溶性バインダー(B)と、水(C)と、酸化ポリオレフィン粒子(D)と、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩10〜99モル%と(メタ)アクリルアミド1〜90モル%とを構成単位とする共重合体(E)とを含むことを特徴とするインク受容層形成用組成物を用いる。酸化ポリオレフィン粒子(D)の体積平均粒子径は2〜25μmが好ましい。無機微粒子(A)はシリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク受容層形成用組成物及びインク受容層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
無機顔料を主成分とし、顕色剤としてフェノール樹脂又は芳香族カルボン酸の金属塩を含有する水分散液に平均粒径が0.8μm以下の固形分散状ワックスを添加して得られる顕色剤分散液を支持体上に塗布してなることを特徴とするインクジェット記録用シート(特許文献1)や、支持体上に少なくとも一方の面に1層以上のインク受理層を塗工してなるインクジェット記録シートにおいて、前記インク受理層表面に、滑り性付与成分としてポリエチレンワックスエマルジョン及びインク定着性付与成分としてアクリルアミドとジアリルアミン塩酸塩の共重合物、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン樹脂、ポリアルキレンポリアミンジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物、蟻酸カルシウムの中から1つ以上選ばれてなるものを含有する滑り層を形成し、かつ、前記滑り性付与成分の乾燥塗布量が0.025g/m〜0.140g/mであり、前記インク定着性付与成分の乾燥塗布量が0.5g/m〜5.0g/mであることを特徴とするインクジェット記録シート(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3699207号公報
【特許文献2】特許第4365524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の高光沢を有するシートでは、インクジェットプリンターで特に顔料インクを印刷した際、乾燥後も摩擦により「こすれ」と称する顔料の脱離を招くという問題が発生する。特にインクジェット印刷直後が顕著であり、印刷直後に印刷部分を指で触ると顔料が付着してしまう場合もある。また大量にかつ高速印刷する用途にて使用する場合、次に印刷した紙の裏側に裏写りしてしまう場合もある。
本発明の目的は、顔料インクを用いた場合であっても、こすれによる顔料の脱離が抑制でき、かつインクジェット印刷直後でも顔料の脱離が抑制できるインク受容層形成用組成物及びこれを用いたシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインク受容層形成用組成物の特徴は、無機微粒子(A)と、水溶性バインダー(B)と、水(C)と、酸化ポリオレフィン粒子(D)と、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩10〜99モル%と(メタ)アクリルアミド1〜90モル%とを構成単位とする共重合体(E)とを含むことを要旨とする。
【0006】
本発明のインク受容層シートの特徴は、上記のインク受容層形成用組成物を支持体に塗工し、乾燥して形成されたインク受容層シートであって、
インク受容層の膜厚が10〜30μmであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインク受容層形成組成物は、顔料インクを用いた場合であっても、こすれによる顔料の脱離が抑制でき、かつインクジェット印刷直後でも顔料の脱離が抑制できる。したがって、インクジェットプリンターで特に顔料インクを印刷した際、乾燥後、摩擦による「こすれ」と称する顔料の脱離を抑制し、耐久性の高いインク受容層を容易に形成できる。
【0008】
本発明のインク受容層シートは、顔料インクを用いた場合であっても、こすれによる顔料の脱離が抑制でき、かつインクジェット印刷直後でも顔料の脱離が抑制できる。したがって、本発明のインク受容層シートは、支持体同士のこすれにより従来損なわれていた顔料インクによるインクジェット印刷特有の鮮明な発色を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
無機微粒子(A)としては、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子等が含まれる。
シリカ微粒子としては、公知の気相法{(1)真空中で金属シリコンを溶融、気化させ、酸化性雰囲気に導入して、シリカ微粒子を得る方法;(2)金属シリコン粉末を、酸素を含む火炎の中で蒸発・酸化させて、シリカ微粒子を得る方法;及び(3)テトラクロロシランを気化し、バーナー火炎中に噴出、酸化して、シリカ微粒子を得る方法(特公昭47−46274号公報等)}、又は公知の液相法{(4)ケイ酸アルカリ金属塩(ケイ酸ナトリウム等)を原料とする水ガラス法;及び(5)アルコキシシラン(テトラエトキシシラン等)を原料とするアルコキシシラン法等}等によって得られるシリカ微粒子等が挙げられる。これらのうち、気相法によって製造されたシリカ微粒子が好ましい。
【0010】
シリカ微粒子は市場から容易に入手でき、たとえば、アエロジルシリーズ{日本アエロジル(株)、「アエロジル」はデグサ アクチエンゲゼルシャフトの登録商標である。}、レオロシールシリーズ{(株)トクヤマ、「レオロシール」は同社の登録商標である。}、WACKER HDKシリーズ{旭化成ワッカー(株)、「WACKER」はワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフトの登録商標である。}及びCab−O−Silシリーズ{Cabot Corporation、「Cab−O−Sil」は同社の登録商標である。}、アデライトシリーズ{(株)ADEKA、「アデライト」は同社の登録商標である。}、カタロイド−Sシリーズ{触媒化成工業(株)、「カタロイド」は同社の登録商標である。}、クォートロンシリーズ{扶桑化学工業(株)、「クォートロン」は同社の登録商標である。}及びスノーテックスシリーズ{日産化学工業(株)}等が挙げられる。
【0011】
アルミナ微粒子としては、公知の気相法{(1)真空中で金属アルミニウムを溶融、気化させ、酸化性雰囲気に導入して、アルミナ微粒子を得る方法;(2)金属アルミニウム粉末を、酸素を含む火炎の中で蒸発・酸化させて、アルミナ微粒子を得る方法;及び(3)塩化アルミニウムを気化し、バーナー火炎中に噴出、酸化して、アルミナ微粒子を得る方法(特表2005−506269号公報等)等}、又は公知の液相法{(4)アルキルアルミニウム又はアルコキシアルミニウムの加水分解法(化学総説No48,1985、超微粒子(日本化学会編)173頁〜175頁、(株)学会出版センター、1985年発行);(5)アンモニウムミョウバン熱分解法;(6)アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法;(7)アルミニウム塩をアルカリ中和する方法;及び(8)アルミン酸塩を加水分解する方法等}等によって得られるアルミナ微粒子等が挙げられる。これらのうち、気相法によって製造されたアルミナ微粒子が好ましい。
【0012】
アルミナ微粒子は市場から容易に入手でき、たとえば、Aeroxideシリーズ{Alu−c及びAl−65等、デグサ社、「Aeroxide」は同社の登録商標である。}、SpctrAlシリーズ{51、81、100等、キャボット社}、CAB−O−SPERSEシリーズ{SpctrAlシリーズの水分散体、キャボット社、AKPシリーズ{住友化学(株)製、「AKP」は同社の登録商標である。}、タイミクロンシリーズ{大明化学(株)製}、DISPERALシリーズ{Sasol社、「DISPERAL」は同社の登録商標である。}及びDISPALシリーズ{Sasol社、「DISPAL」は同社の登録商標である。}等}等が挙げられる。
【0013】
アルミナ微粒子は公知の分散剤(酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等)によって分散された分散液の形態(たとえば、アルミナゾル)で使用することもできる。
【0014】
アルミナゾルは市場から容易に入手でき、たとえば、カタロイド−Aシリーズ{触媒化成工業(株)製}及びアルミナゾルシリーズ{日産化学工業(株)製}等が挙げられる。
【0015】
無機微粒子(A)としては、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子の他に、公知の無機微粒子(たとえば、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン又は酸化イットリウムの微粒子等)を使用してもよい。
無機微粒子(A)は2種以上の無機微粒子を使用することができる。
【0016】
無機微粒子(A)の個数平均一次粒子径(nm)は、7〜40が好ましく、さらに好ましくは9〜30、特に好ましくは12〜20である。この範囲であると、形成されるインク受容層の光沢がさらに良好となる。
【0017】
なお、個数平均一次粒子径は、JIS Z8901−2006「試験用粉体及び試験用粒子」5.44粒子経分布(c)顕微鏡法に準拠し、振掛け法によって準備した試料を透過型電子顕微鏡で5万〜100万倍に拡大して観察した画像から200個以上の粒子を観察して算出される円相当径の算術平均値である。
【0018】
無機微粒子(A)の体積平均凝集粒子径(nm)は100〜300nmが好ましく、さらに好ましくは110〜250、特に好ましくは120〜200、最も好ましくは140〜180である。この範囲であると、形成されるインク受容層のインクの滲みと光沢のバランスが良好となり好ましい。
【0019】
なお、ここで言う体積平均凝集粒子径は、JIS Z8825−1:2001「粒子径解析−レーザー回折法」に準拠した測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製の商品名SALD−1100型等)で測定される。
【0020】
無機微粒子(A)のBET比表面積(m/g)は、50〜400が好ましく、さらに好ましくは90〜300である。この範囲であるとインクジェット印刷後の発色と塗布適性(特にスクリーン印刷適性)とのバランスがさらに良好となる。
【0021】
なお、BET比表面積は、JIS Z8830−2001「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」及びJIS R1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準拠し、乾燥した状態の無機微粒子を気体吸着法(流動法)にて測定する。キャリアガスとしては窒素−ヘリウムの混合ガスを用いる。そして脱着ピークの値からBET比表面積を算出することができる。
【0022】
水溶性バインダー(B)としては、ポリビニルアルコール等が使用できる。
ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化型ポリビニルアルコール(B1)、部分ケン化型ポリビニルアルコール(B2)、カチオン変性ポリビニルアルコール(B3)、アニオン変性ポリビニルアルコール(B4)及びノニオン変性ポリビニルアルコール(B5)が含まれる。
【0023】
完全ケン化型ポリビニルアルコールとは、ケン化度が98モル%を超えて100モル%以下のポリビニルアルコールを意味する。部分ケン化ポリビニルアルコールとは、ケン化度が70〜98モル%のポリビニルアルコールを意味する。カチオン変性ポリビニルアルコールとは、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニオ基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を必要によりケン化して得られる構造のポリマーを意味する。アニオン変性ポリビニルアルコールとは、カルボキシ基やスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を必要によりケン化して得られる構造のポリマーを意味する。ノニオン変性ポリビニルアルコールとは、メルカプト基やケト基(カルボニル基)を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を必要によりケン化して得られる構造のポリマーを意味する。
【0024】
完全ケン化型ポリビニルアルコール(B1)及び部分ケン化型ポリビニルアルコール(B2)としては、公知のもの(たとえば、特開2006−28233号公報)等が使用できる。カチオン変性ポリビニルアルコール(B3)としては、公知のもの(たとえば、特開平10−119423号公報)等が使用できる。アニオン変性ポリビニルアルコール(B4)としては、公知のもの(たとえば、特開平1−206088号公報、特開昭61−237681号、特開昭63−307979号公報及び特開平7−285265号公報)等が使用できる。ノニオン変性ポリビニルアルコール(B5)としては、公知のもの(たとえば、特開平7−9758号公報及び特開平8−25795号公報)等が使用できる。
【0025】
これらのポリビニルアルコールのうち、形成されるインク受容層の塗膜強度の観点から、部分ケン化型ポリビニルアルコール(B2)及び完全ケン化型ポリビニルアルコール(B1)が好ましく、さらに好ましくは部分ケン化型ポリビニルアルコール(B2)、特に好ましくはケン化度が72〜96{好ましくは77〜95、特に好ましくは78〜90}モル%の部分ケン化型ポリビニルアルコールである。
【0026】
なお、ケン化度は、JIS K6726−1994「ポリビニルアルコール試験法 3.5ケン化度」に準拠して測定される。
【0027】
ポリビニルアルコール(B)の平均重合度は、1000〜6000が好ましく、さらに好ましくは2000〜5500、特に好ましくは2400〜5000である。この範囲であると、形成されるインク受容層の寸法安定性がさらに良好となる。
【0028】
なお、平均重合度は、JIS K6726−1994「ポリビニルアルコール試験法」3.7平均重合度に準拠して測定される。なお、カチオン変性ポリビニルアルコールの平均重合度は、特許第3434055号公報に記載された方法によって測定される。
【0029】
水溶性バインダー(B)として、ポリビニルアルコール以外に、公知の親水性高分子が使用できる。
公知の親水性高分子としては、特開2003−063131号公報等に記載の親水性重合体等を使用することができる。
【0030】
水溶性バインダー(B)の含有量(重量%)は、無機微粒子(A)の重量に基づいて、5〜55が好ましく、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは15〜45、最も好ましくは18〜40である。この範囲であるとインクジェット印刷後の発色性とバインダー強度とのバランスがさらに良好となり、形成されるインク受容層にクラックが発生しにくくなる。
【0031】
水(C)は、イオン交換水、蒸留水、超純水、水道水及び工業用水等が使用できる。
【0032】
水(C)の含有量(重量%)は、無機微粒子(A)の重量に基づいて、150〜900が好ましく、さらに好ましくは200〜850、特に好ましくは220〜800、最も好ましくは250〜700である。この範囲であると、平滑性に優れた塗膜が得られ、乾燥後の塗膜の光沢がさらに良好となる。
【0033】
酸化ポリオレフィン粒子(D)としては、エチレン、プロピレン及び他のα−オレフィン(炭素数4〜10のα−オレフィン等)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーの(共)重合体(ポリオレフィン)の酸化体からなる粒子であれば制限なく使用でき、酸化ポリエチレン粒子、酸化ポリプロピレン粒子、炭素数4〜10のα−オレフィンを構成単位とする酸化ポリオレフィン粒子等及びこれらの混合物が含まれる。
【0034】
なお、酸化ポリオレフィン粒子(D)には、上記の(共)重合体(ポリオレフィン)を酸素、有機パーオキシド又はヒドロパーオキシド等で酸化処理したものからなる粒子、及び上記のモノマーの重合の際、不飽和カルボン酸(マレイン酸、アクリル酸等)等で酸変成したものからなる粒子の両方を含む。
【0035】
酸化ポリオレフィン粒子(D)の体積平均粒子径(μm)は、2〜25が好ましく、さらに好ましくは3〜20、特に好ましくは6〜10である。この範囲であると、顔料インクを用いた場合であっても、こすれによる顔料の脱離をさらに抑制できる。
【0036】
酸化ポリオレフィン粒子(D)は市場から容易に入手でき、たとえば、サンワックスシリーズ、ビスコールシリーズ、ユーメックスシリーズ{三洋化成工業(株)製、「サンワックス」、「ビスコール」及び「ユーメックス」は同社の登録商標である。};フロービーズシリーズ{住友精化(株)製、「フロービーズ」は同社の登録商標である。}及びケミパールシリーズ{三井化学(株)製、「ケミパール」は同社の登録商標である。}等が挙げられる。
【0037】
酸化ポリオレフィン粒子(D)は分散液の形態で使用することもできる。
【0038】
酸化ポリオレフィン粒子分散液は市場から容易に入手でき、たとえばSNダルアクト1001W及びSNコート950{サンノプコ(株)製、「SNダルアクト」は同社の登録商標である。}等が挙げられる。
【0039】
酸化ポリオレフィン粒子(D)の含有量(重量%)は、無機微粒子(A)及び水溶性バインダー(B)の重量に基づいて、0.5〜3が好ましく、さらに好ましくは0.7〜2.5、特に好ましくは1〜2である。この範囲であると形成されるインク受容層の塗膜光沢を維持しつつこすれによる顔料の脱離をさらに抑制できる。
【0040】
ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩10〜99モル%と(メタ)アクリルアミド1〜90モル%とを構成単位とする共重合体(E)において、ジアリルアミン塩及びアルキルジアリルアミン塩には、鉱酸(塩酸、硫酸及び硝酸等)塩、有機酸(酢酸等)塩が含まれる。
【0041】
ジアルキルジアリルアンモニウム塩としては、ジアルキルジアリルアンモニウムイオンと、ハロゲン(フッ素、塩素等)イオン、硝酸イオン、硫酸イオン又は有機酸(酢酸)イオンとの塩が含まれる。
【0042】
アルキルジアリルアミン塩及びジアルキルジアリルアンモニウム塩のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基(メチル、エチル、イソプロピル及びノルマルブチル等)が含まれる。これらのうち、メチル及びエチルが好ましい。
【0043】
ジアリルアミン塩としては、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン硝酸塩及びジアリルアミン酢酸塩等が挙げられる。
【0044】
アルキルジアリルアミン塩としては、メチルジアリルアミン塩酸塩、エチルジアリルアミン塩酸塩、メチルジアリルアミン硫酸塩、エチルジアリルアミン硝酸塩及びメチルジアリルアミン酢酸塩等が挙げられる。
【0045】
ジアルキルジアリルアンモニウム塩としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド及びジアリルメチルアンモニウムアセテート等が含まれる。
【0046】
ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩からなる構成単量体単位の含有量は、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩及び(メタ)アクリルアミドからなる構成単量体単位の合計モル数に基づいて、10〜99モル%であり、好ましくは50〜99モル%、さらにに好ましくは80〜98モル%である。この範囲であると塗膜の耐水性がさらに向上する。
【0047】
共重合体(E)の重量平均分子量としては、3000〜100万が好ましく、特に好ましくは5000〜70万、さらに好ましくは5万〜30万である。この範囲であると、インク受容層形成用組成物の塗工性がさらに良好となる。
【0048】
なお、重量平均分子量は、分子量既知のポリエチレグリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される(カラム温度40℃、溶離液:0.5mol/L酢酸:0.5mol/L酢酸ナトリウム水溶液=1:1(モル比)、流速1.0ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液。)。
【0049】
(メタ)アクリルアミド単位の含有量は、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩及び(メタ)アクリルアミドからなる構成単量体単位の合計モル数に基づいて、1〜90モル%であり、好ましくは1〜50モル%、さらにに好ましくは2〜20モル%である。この範囲であると塗膜の耐水性が向上し好ましい。
【0050】
共重合体(E)には、他の単量体を構成単位として含有してもよい。他の単量体としては、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩と(メタ)アクリルアミドと共重合できる公知の単量体(アリルモノマー、アクリルモノマー等)が含まれる。
【0051】
共重合体(E)としては、公知のラジカル共重合法等によって製造でき、たとえば、特公平6−104790号公報に記載の方法等と同様にして製造できる。
【0052】
共重合体(E)の含有量(重量%)としては、無機微粒子(A)の重量に基づいて、1〜20が好ましく、さらに好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜7である。この範囲であるとこすれによる顔料の脱離が抑制でき好ましい。
【0053】
本発明のインク受容層形成用組成物には、さらに顔料固着剤(F)を含むことが好ましい。顔料固着剤(F)を含むと、無機微粒子(A)と顔料インクの顔料との固着が進み、こすれによる顔料の脱離の抑制がさらに良好となる。
【0054】
顔料固着剤(F)としては、公知のもの(たとえば、特開平10−264511号公報)等が使用できる。これらのうち、印刷画像の発色性の観点から、アリルアミン又はその塩の重合体、アルキルジアリルアミン(アルキル基の炭素数1〜4)又はその塩の重合体及びジアルキルジアリルアンモニウム塩(アルキル基の炭素数1〜4)の重合体が好ましく、さらに好ましくはアルキルジアリルアミン(アルキル基の炭素数1〜4)又はその塩の重合体及びジアルキルジアリルアンモニウム塩(アルキル基の炭素数1〜4)の重合体、特に好ましくはジアルキルジアリルアンモニウム塩(アルキル基の炭素数1〜4)の重合体である。
【0055】
顔料固着剤(F)を含む場合、顔料固着剤(F)の含有量(重量%)としては、無機微粒子(A)の重量に基づいて、1〜20が好ましく、さらに好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜7である。この範囲であると発色が良好となり、さらに無機微粒子(A)と顔料インクの顔料との固着が進み、こすれによる顔料の脱離の抑制がさらに良好となり好ましい。
【0056】
無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)、水(C)、酸化ポリオレフィン粒子(D)、共重合体(E)及び顔料固着剤(F)は、それぞれ、1種でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
【0057】
本発明のインク受容層形成用組成物には、必要に応じて、添加剤{分散剤(G)、酸化防止剤(H)、紫外線吸収剤(J)及び架橋剤(K)等}を添加できる。添加剤は、それぞれ、2種以上を混合しても使用できる。
【0058】
分散剤(G)としては、公知のもの(たとえば、特開2006−231596号公報に記載されたカチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物及び界面活性剤等;特開2006−169321号公報に記載された低分子カチオン性分子;並びに特開2003−251918号公報に記載された有機酸及び無機酸等)等が使用できる。
【0059】
これらのうち、無機微粒子(A)としてシリカ微粒子を用いる場合、有機酸、無機酸、カチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物及び低分子カチオン性分子が好ましく、さらに好ましくは乳酸、ギ酸、酢酸、塩酸、硝酸カチオン性ポリマー及び低分子カチオン性分子、特に好ましくは乳酸、酢酸、硝酸、低分子カチオン性分子である。また、無機微粒子(A)としてアルミナ微粒子を用いる場合、有機酸及び無機酸が好ましく、さらに好ましくは乳酸、ギ酸、酢酸、塩酸及び硝酸、特に好ましくは乳酸、酢酸及び硝酸である。
【0060】
酸化防止剤(H)としては、公知のもの{たとえば、特開2001−26178号公報}等が使用できる。これらのうち、印刷画像の発色性の観点から、ヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。
【0061】
紫外線吸収剤(J)としては、公知のもの{たとえば、特開2000−42614号公報に記載された紫外線吸収剤、及び特開2004−42614号公報に記載された高分子型紫外線吸収剤等}等が使用できる。これらのうち、印刷画像の発色性の観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0062】
架橋剤(K)としては、水溶性バインダー(B)を架橋できる化合物であれば制限なく使用でき、公知のもの(たとえば、特開2000−335087号公報)等が使用できる。これらのうち、架橋反応速度の観点から、ホウ素化合物及び金属含有化合物が好ましく、さらに好ましくは硼砂、ホウ酸、ホウ酸塩、酢酸ジルコニウム及び硝酸ジルコニウム、特に好ましくは硼砂、ホウ酸、酢酸ジルコニウム及び硝酸ジルコニウムである。
【0063】
分散剤(G)を含有する場合、この含有量(重量%)は、無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)及び水(C)の重量に基づいて、0.001〜2が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1、特に好ましくは0.1〜0.5である。
【0064】
酸化防止剤(H)を含有する場合、この含有量(重量%)は、無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)及び水(C)の重量に基づいて、0.001〜2が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1、特に好ましくは0.1〜0.5である。
【0065】
紫外線吸収剤(J)を含有する場合、この含有量(重量%)は、無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)及び水(C)の重量に基づいて、0.001〜2が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1、特に好ましくは0.1〜0.5である。
【0066】
架橋剤(K)を含有する場合、この含有量(重量%)は、無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)及び水(C)の重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.02〜5、特に好ましくは0.05〜1である。
【0067】
本発明のインク受容層形成用組成物には、脂肪族アルコール(M)を含むことが好ましい。脂肪族アルコール(M)を含有すると、本発明の組成物を塗工する際、塗工適性がさらに向上すると共に、塗工時の泡かみをさらに抑制できる。
【0068】
脂肪族アルコール(M)としては、炭素数3〜6の脂肪族モノアルコール及び炭素数2〜6の脂肪族多価アルコールが含まれる。
【0069】
脂肪族モノアルコールとしては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール及び4−メチル−2−ペンタノール等が挙げられる。
【0070】
脂肪族多価アルコールとしては、ジオール{たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等}、3〜4価の多価アルコール{グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール及びジグリセリン等}が挙げられる。
【0071】
脂肪族アルコール(M)は、1種でもよいし、2種以上の混合物でもよい。これらの脂肪族アルコールのうち、形成されるインク受容層の光沢の観点から、脂肪族モノアルコールが好ましく、さらに好ましくは1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール及び3−メチル−2−ブタノール、特に好ましくは、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール及び3−メチル−1−ブタノール、最も好ましくは1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール及び1−ペンタノールである。
【0072】
脂肪族アルコール(M)を含む場合、脂肪族アルコール(M)の含有量(重量%)は、無機微粒子(A)の重量に基づいて、5〜600が好ましく、さらに好ましくは10〜500、特に好ましくは35〜320、最も好ましくは100〜200である。この範囲であるとインクジェット印刷後の発色と塗布適性とのバランスがさらに良好となる。
【0073】
炭素数4〜6の脂肪族アルコール(M)と水(C)との重量比(M/C)は、0.01〜0.9が好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.75、特に好ましくは0.03〜0.5、最も好ましくは0.05〜0.3である。この範囲であると、形成されるインク受容層の光沢がさらに良好となる。
【0074】
本発明のインク受容層形成用組成物は、無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)、水(C)、酸化ポリオレフィン(D)及び共重合体(E)並びに必要に応じて顔料固着剤(F)、添加剤{分散剤(G)、酸化防止剤(H)、紫外線吸収剤(J)及び架橋剤(K)等}及び/又は脂肪族アルコール(M)が均一混合されていれば製造方法に制限はないが、以下の製造方法により得ることが好ましい。
【0075】
<製造方法(1)>
無機微粒子(A)の水分散体と共重合体(E)とを均一混合した後、この混合物と水溶性バインダー(B)の水溶液とを均一混合し、酸化ポリオレフィン粒子(D)を均一混合してインク受容層形成用組成物を得る製造方法(1)。
【0076】
<製造方法(2)>
水溶性バインダー(B)の水溶液と共重合体(E)とを均一混合した後、この混合物と無機微粒子(A)とを均一混合し、酸化ポリオレフィン粒子(D)を均一混合してインク受容層形成用組成物を得る製造方法(2)。
【0077】
顔料固着剤(F)を含有する場合、製造方法(1)においては、無機微粒子(A)の水分散体に顔料固着剤(F)の水溶液を添加しておくことが好ましい。製造方法(2)においては水溶性バインダー(B)の水溶液に顔料固着剤(F)を予め均一混合しておくことが好ましい。
【0078】
均一混合には、公知の分散機{たとえば、圧力式分散機(高圧ホモジナイザー等)、ボールミル、サンドミル、ロールミル、ビーズミル、各種汎用攪拌モーター、遊星型混分散機及び3軸遊星型ミキサー等}等が使用できる。これらの分散機のうち、遊星型混合分散機及び3軸遊星型ミキサーが好ましく、さらに好ましくは3軸遊星型ミキサーである。なお、3軸遊星型ミキサーは、遊星運動を行う2枚のブレードと高速回転翼の3軸から構成される。2枚のブレードは自転及び公転し、この自公転に同期しながら高速回転翼は自転する構造をとる分散機である(たとえば、登録実用新案第3026043号)。
【0079】
均一混合温度は特に制限ないが、10〜50℃が好ましく、さらに好ましくは20〜45℃、特に好ましくは25〜35℃である。この範囲であると保存安定性がさらに良好となる。
【0080】
均一混合時間は特に制限ないが、製造方法(1)においては15分〜24時間が好ましく、さらに好ましくは0.5〜12時間である。これらの範囲であると溶け残りによる異物発生がなく、得られるインク受容層の光沢がさらに良好となる。また、製造方法(2)においては、0.5時間〜24時間が好ましく、さらに好ましくは1時間〜12時間である。この範囲であると得られるインク受容層の光沢がさらに良好となる。
【0081】
添加剤{分散剤(G)、酸化防止剤(H)、紫外線吸収剤(J)及び架橋剤(K)等}を含有する場合、添加剤は任意の段階で添加混合することができる。
【0082】
脂肪族アルコール(M)を含有する場合、脂肪族アルコールは任意の段階で添加混合することができるが、無機微粒子(A)、水溶性バインダー(B)及び水(C)を均一混合した後に添加すると、無機微粒子(A)の凝集による異物発生がなく、得られるインク受容層の光沢がさらに良好となり好ましい。
【0083】
本発明の水性インク受容層形成用組成物は、支持体に塗布し、乾燥してインク受容層シートを形成することができる。
支持体に形成されるインク受容層の膜厚(μm)は、10〜30が好ましく、さらに好ましくは11〜28、特に好ましくは12〜25である。この範囲であると、塗膜のクラックとインクの滲みのバランスがさらに良好となる。
【0084】
支持体としては、紙{サイジングが施された紙、無サイズ紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、紙の片面あるいは両面が樹脂(ポリオレフィン等)で被覆された樹脂被覆紙等}、樹脂フィルム(シートを含む意味である){ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネート等からなるフィルム、及びこれらの金属蒸着フィルム、無機物の充填又は微細な発泡により不透明化されたフィルムからなる合成紙等}、ディスク状の光記録メディア、ガラス板、金属板、布及び皮革等が挙げられる。これらのうち、紙、樹脂フィルム及びディスク状の光記録メディアに好適である。
【0085】
本発明のインク受容層形成用組成物を、支持体に塗布して塗布層を形成する工程の前に、支持体のインク受容層を形成する面に、支持体とインク受容層との密着性を向上させる目的で、予め密着処理する工程、又は接着処理する工程を追加してもよい。特に、支持体として樹脂被覆紙、樹脂フィルム、又は合成紙を用いる場合、その表面にコロナ放電処理すること、あるいはゼラチン等によるアンダーコート層を設けることが好ましい。
【0086】
本発明のインク受容層形成用組成物を支持体に塗布して塗布層を形成する工程において、本発明のインク受容層形成用組成物は、スクリーン印刷法、ダイコーター法、ロールコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、バーコーター法又はスピンコーター法等を用いて塗布できる。
【0087】
本発明のインク受容層形成用組成物を塗布した後、形成された塗布層を乾燥することによってインク受容層が形成される。
塗布層を乾燥してインク受容層を形成する工程において、乾燥は、30〜150℃、0.5〜30分間の条件が好ましく、さらに好ましくは40〜125℃、1〜20分間、特に好ましくは45〜100℃、3〜15分間、最も好ましくは50〜95℃、4〜10分間の条件である。
【0088】
インク受容層を形成した後(塗布・乾燥の後)、養生工程を経ることが好ましい。養成工程を経ると、塗膜強度がさらに増し、クラック発生がさらに抑制される。養生は、100〜180℃、8〜36時間の条件が好ましく、さらに好ましくは120〜160℃、12〜24時間である。
【0089】
インク受容層シートへの画像形成は、インクジェットプリンター、熱転写プリンター、レーザープリンター、オフセット印刷及び筆記用具(フェルトペン等)等により行うことができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に言及しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0091】
<合成例1>
還流冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌装置及びガス導入管を備えた反応器(容量1L)に、ジアリルアミン塩酸塩{東京化成工業(株)製、試薬特級}の60%水溶液500部、アクリルアミド5.2部{東京化成工業(株)製、試薬特級}及び水48部を入れ、窒素ガスを流入させながら系内温度を80℃に昇温した。攪拌下で滴下ロートを用いて重合開始剤{三菱ガス化学(株)製過硫酸アンモニウム}の25%水溶液30部を4時間にわたり滴下した。滴下終了後、1時間反応を続け粘稠な淡黄色液状物を得た。これを50g採り、500mLのアセトン中に注ぐと白色の沈澱を生じた。沈澱を濾別しさらに2回100mLのアセトンでよく洗浄した後、真空乾燥して、ジアリルアミン塩酸塩97モル%/アクリルアミド3モル%の共重合体(e1)の白色固体22.0gを得た。
【0092】
<合成例2>
ジアリルアミン塩酸塩の60%水溶液の使用量を「500部」から「413部」に変更したこと、アクリルアミドの使用量を「5.2部」から「33部」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、ジアリルアミン塩酸塩80モル%/アクリルアミド20モル%の共重合体(e2)の白色固体21.5gを得た。
【0093】
<合成例3>
還流冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌装置及びガス導入管を備えた反応器(容量1L)に、ジアリルアミン塩酸塩{東京化成工業(株)製、試薬特級}の60%水溶液258部、アクリルアミド27部{東京化成工業(株)製、試薬特級}及び水236部を入れ、窒素ガスを流入させながら系内温度を60℃に昇温した。攪拌下で重合開始剤{2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、東京化成工業(株)製、試薬特級}の10%水溶液40部を2時間おきに4回に分けて加えた。最初の開始剤の水溶液を加えて1.5時間後から滴下ロートでアクリルアミドの18%水溶液306部を4時間にわたり滴下した。開始剤の水溶液の添加終了後2時間反応を続け粘稠な淡黄色液状物を得た。これを50g採り、500mLのアセトン中に注ぐと白色の沈澱を生じた。沈澱を濾別しさらに2回100mLのアセトンでよく洗浄した後、真空乾燥して、ジアリルアミン塩酸塩50モル%/アクリルアミド50モル%の共重合体(e3)白色固体11.5gを得た。
【0094】
<合成例4>
「ジアリルアミン塩酸塩の60%水溶液500部」を「ジアリルアミン硫酸塩{東京化成工業(株)製、試薬特級}の60%水溶液732部」へ変更したこと以外、合成例1と同様にして、ジアリルアミン硫酸塩97モル%/アクリルアミド3モル%の共重合体(e4)の白色固体21.0gを得た。
【0095】
<合成例5>
「ジアリルアミン塩酸塩の60%水溶液500部」を「メチルジアリルアミン塩酸塩{東京化成工業(株)製、試薬特級}の60%水溶液552部」へ変更したこと以外、合成例1と同様にして、メチルジアリルアミン塩酸塩97モル%/アクリルアミド3モル%の共重合体(e4)の白色固体21.5gを得た。
【0096】
<実施例1>
水(c1){イオン交換水}30部に、水溶性バインダー(b1){J−POVAL JP−45、日本酢ビポバール(株)製、ポリビニルアルコール、ケン化度89モル%、重合度4500}5部を空気雰囲気下、15℃で分散した後、大気圧(約1013hPa)下で45分かけて80℃まで昇温し、80℃で6時間撹拌して水溶性バインダー(b1)水溶液35部を得た。
【0097】
3軸遊星型ミキサ(浅田鉄工(株)製、プラネタリDESPA)に水(c2){イオン交換水}52部、乳酸0.2部{東京化成(株)製、試薬1級}、濃硝酸0.1部{東京化成(株)製、試薬1級}、共重合体(e1)の50%水溶液1.8部、顔料固着剤(f1){シャロールDC−902P、第一工業製薬(株)製、「シャロール」は同社の登録商標である。N、N’−ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体}1.6部及び無機微粒子(a1){シリカ微粒子、日本アエロジル(株)製、気相法シリカ、一次粒径12nm、BET比表面積200m/g}13部を仕込み、25〜30℃に保持し、分散機の攪拌機の出力を80パーセントに固定して1時間攪拌してから、上記で調製した水溶性バインダー(b1)水溶液35部及び脂肪族アルコール(m1){1−ブタノール、NBO、チッソ(株)製}14部を仕込み、再び分散機の攪拌機の出力を80パーセントに固定して1時間攪拌した後、酸化ポリオレフィン分散液(d1){酸化ポリエチレン粒子40重量%水分散液、SNダルアクト1001W、サンノプコ(株)製}を0.9部仕込み、分散機の攪拌機の出力を20%に固定して30分攪拌し、本発明のインク受容層形成用組成物(1)を得た。
【0098】
<実施例2〜7>
「共重合体(e1)の50%水溶液」を表1に記載した物質及び使用量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインク受容層形成用組成物(2)〜(7)を得た。
【0099】
<実施例8〜14>
「酸化ポリエチレン(d1)分散液0.9部」を表2に記載した物質及び使用量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインク受容層形成用組成物(8)〜(14)を得た。
【0100】
<実施例15〜20>
「無機微粒子(a1)13部」、「顔料固着剤(f1)1.6部」、「脂肪族アルコール(m1)14部」を表3に記載した物質及び使用量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインク受容層形成用組成物(15)〜(20)を得た。
【0101】
<実施例21〜24>
「無機微粒子(a1)13部」、「水溶性バインダー(b1)5部」、「水(c2){52部」を表4に記載した使用量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインク受容層形成用組成物(21)〜(24)を得た。
【0102】
【表1】


【0103】
【表2】


【0104】
【表3】


【0105】
【表4】


【0106】
なお、表1〜4中の各含有成分に対応する数値は重量部を表し、各略号の意味は以下の通りである。
また、「E%」は無機微粒子(A)の重量に基づく共重合体(E)の含有量(重量%)を、「DA%」は、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩及び(メタ)アクリルアミドからなる構成単量体単位の合計モル数に基づくジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩からなる構成単量体単位の含有量(重量%)を、「AA%」はジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩及び(メタ)アクリルアミドからなる構成単量体単位の合計モル数に基づく(メタ)アクリルアミド単位の含有量(重量%)を、「D%」は無機微粒子(A)及び水溶性バインダー(B)の重量に基づく酸化ポリオレフィン粒子(D)の含有量(重量%)を、「B%」は無機微粒子(A)の重量に基づく水溶性バインダー(B)の含有量(重量%)を、「C%」は無機微粒子(A)の重量に基づく水(C)の含有量(重量%)を、「BET」は用いた無機微粒子(A)のBET比表面積をを示す。
【0107】
a1;アエロジル200{シリカ微粒子、日本アエロジル(株)製、気相法シリカ、一次粒径12nm、BET比表面積200m/g}
a2;アエロジル90G{シリカ微粒子、日本アエロジル(株)製、気相法シリカ、一次粒子径20nm、BET比表面積90m/g}
a3;アエロジル300{シリカ微粒子、日本アエロジル(株)製、気相法シリカ、一次粒径7nm、BET比表面積300m/g}
a4;Aeroxide Alu−c{アルミナ微粒子、デグサ社製、気相法アルミナ、一次粒子径13nm、BET比表面積100m/g}
a5;NanoTek TiO{二酸化チタン微粒子、シーアイ化成(株)製、二酸化チタン、一次粒径36nm、BET比表面積50m/g}
【0108】
b1;{J−POVAL JP−45、日本酢ビポバール(株)製、ケン化度89モル%、重合度4500}
b2;{J−POVAL JP−24、日本酢ビポバール(株)製、ケン化度89モル%、重合度2400}
【0109】
c1、c2;イオン交換水
【0110】
d1;{酸化ポリエチレン粒子の40%分散液、SNダルアクト1001W、サンノプコ(株)製、体積平均粒子径10μm}
d2;{酸化ポリエチレン粒子の40%分散液、ケミパールW200、三井化学(株)製、体積平均粒子径6μm}
d3;{酸化ポリエチレン粒子の40%分散液、SNコート950、サンノプコ(株)製、体積平均粒子経、20μm}
d4;{酸化ポリエチレン粒子の40%分散液、ケミパールW500、三井化学(株)製、体積平均粒子径2.5μm}
d5;{酸化ポリプロピレン粒子、ユーメックス2000P、三洋化成工業(株)製、体積平均粒子径85μm}
【0111】
e1水溶液:合成例1で合成した共重合体の50%水溶液、重量平均分子量5万
e2水溶液:合成例2で合成した共重合体の50%水溶液、重量平均分子量5.3万
e3水溶液:合成例3で合成した共重合体の50%水溶液、重量平均分子量28万
e4水溶液:合成例4で合成した共重合体の50%水溶液、重量平均分子量5.5万
e5水溶液:合成例5で合成した共重合体の50%水溶液、重量平均分子量5万
e6水溶液:PAS−J−81{ジアリルアミンジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体の25%水溶液、日東紡績(株)製}、重量平均分子量20万{この共重合体(e6)は、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド約90モル%/アクリルアミド約10モル%の共重合体であると推定される。}
【0112】
f1;N,N’−ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体{シャロールDC−902P、第一工業製薬(株)製}
【0113】
m1;1−ブタノール{NBO、チッソ(株)製}
【0114】
<比較例1>(特許文献1の実施例1に準拠)
水(c1)36部に、ポリビニルアルコール(b3){PVA117、(株)クラレ製、ケン化度88モル%、重合度1700}4部を空気雰囲気下、15℃で分散した後、大気圧(約1013hPa)下で45分かけて90℃まで昇温し、90℃で6時間撹拌してポリビニルアルコール(b3)水溶液40部を得た。
【0115】
3軸遊星型ミキサ(浅田鉄工社製、プラネタリDESPA)に水(c2)230部、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液5部、炭酸カルシウム(Brilliant −15、平均粒径0.5μm、白石工業社製)120部、活性白土30部及び酸化亜鉛40部を仕込み、25〜30℃に保持し、分散機の攪拌機の出力を80パーセントに固定して1時間攪拌してから、ポリビニルアルコール(b3)水溶液40部、3,5−ジ−(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛分散液(固形分濃度30%)6部を加え、これに融点68℃のパラフィンワックス分散物(平均粒径0.8μm、固形分濃度30%)2.8部を加えた後、固形分濃度が20%となるように加水調整して比較用のインク受容層形成用組成物(R1)を得た。
【0116】
実施例及び比較例で得たインク受容層形成用組成物は、以下のようにして評価し、これらの結果を表5に記載した。
<塗工フィルムの作製>
アクリサンデー(株)製硬質塩化ビニール板(品番200白)上にインク受容層形成用組成物をバーコーター#8にて塗布し、70枚の塗工フィルムを得た。引き続き、塗工フィルムを80±5℃の熱風乾燥機中で10分間乾燥させて、70枚のインク受容層シートを得た。
【0117】
<光沢度>
インク受容層シートを20℃、65%RHの環境下で24時間調湿した後、JIS K5600−4−7:1999、塗料一般試験方法、第4部:塗膜の視覚特性、第7節:鏡面光沢度に準拠して、グロスチェッカIG−320{(株)堀場製作所社製}を用いて、黒フエルトの上に置いたインク受容層シート表面の60度鏡面光沢度を測定し、70枚の算術平均値を光沢度とした。
【0118】
<顔料の脱離具合(こすれによる顔料の脱離の程度)>
インク受容層シートを20℃、65%RHの環境下で24時間調湿した後、インクジェットプリンター(商品名:MP800、キヤノン(株)製 )で、顔料黒インク(キャノン(株)純正インク)にてベタ印字を行ない、20℃、65%RHの環境下で1分以内に、ラビングテスター(商品名:IMC−150C、(株)井元製作所製)に不織布(商品名:BEMCOT M−3II)を装着し、5往復させた後、JIS P8148:2001、「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して、分光色彩・白度計PF−10{日本電色工業(株)製}を用いて、白色度を測定し、10枚の算術平均値を算出して、これを顔料の脱離具合とした。
【0119】
【表5】


【0120】
本発明のインク受容層形成用組成物(実施例1〜24)を用いたインク受容層シートは、比較用のインク受容層形成用組成物(比較例1)を用いたインク受容層シートに比較して、光沢度、顔料の脱離具合(こすれによる顔料の脱離抑制)について著しく優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のインク受容層形成用組成物は、水性インク受容層形成用として好適である。本発明のインク受容層形成用組成物は、種々の支持体に塗工でき、そして、この支持体に水性インキによる印刷適性を付与することができる。支持体としては、皮、布、樹脂成形体、紙、金属、段ボール及び陶磁器が含まれ、本発明の水性インク受容層形成用組成物が適用された支持体は、インクジェット印刷対応紙、インクジェット印刷対応産業用広告フィルム、プリペイドカード、光記録メディア(CD−R、CD−RW、DVD、BD等)、ICカード、磁気カード、電気機器用アクリル樹脂シート、建材用ポリカーボネート板、看板、表示パネル、表札、銘板、包装容器及び袋等として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子(A)と、水溶性バインダー(B)と、水(C)と、酸化ポリオレフィン粒子(D)と、ジアリルアミン塩、アルキルジアリルアミン塩及び/又はジアルキルジアリルアンモニウム塩10〜99モル%と(メタ)アクリルアミド1〜90モル%とを構成単位とする共重合体(E)とを含むことを特徴とするインク受容層形成用組成物。
【請求項2】
酸化ポリオレフィン粒子(D)の体積平均粒子径が2〜25μmである請求項1に記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項3】
無機微粒子(A)がシリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子である請求項1又は2に記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項4】
無機微粒子(A)の個数平均一次粒子径が7〜40nmである請求項1〜3のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項5】
無機微粒子(A)の体積平均凝集粒子径が100〜300nmである請求項1〜4のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項6】
無機微粒子(A)のBET比表面積が50〜400m/gである請求項1〜5のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項7】
無機微粒子(A)が気相法によって製造されたシリカ微粒子及び/又は気相法によって製造されたアルミナ微粒子である請求項1〜6のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項8】
酸化ポリオレフィン粒子(D)の含有量が、無機微粒子(A)及び水溶性バインダー(B)の重量に基づいて、0.5〜3重量%である請求項1〜7のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項9】
共重合体(E)の含有量が、無機微粒子(A)の重量に基づいて、1〜20重量%である請求項1〜8のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項10】
さらに、顔料固着剤(F)を含む請求項1〜9のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のインク受容層形成用組成物を支持体に塗工し、乾燥して形成されたインク受容層シートであって、
インク受容層の膜厚が10〜30μmであることを特徴とするインク受容層シート。

【公開番号】特開2012−206274(P2012−206274A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71819(P2011−71819)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】