説明

インサート金具の保持具

【課題】
低価格で利便性にも優れたインサート金具の保持具を提供すること。
【解決手段】
保持具11aを、インサート金具21の胴部22を嵌合可能な筒状体13と、胴部22の内部に入り込む中心体15と、で構成して、中心体15には、型枠Pに打ち込まれる締結具19aを貫通させる。筒状体13は、インサート金具21の下部外周を完全に覆い隠すため、インサート金具21を強固に保持でき、信頼性に優れている。また保持具11aは、筒状体13と中心体15を一体成形して、中心体15に締結具19aを差し込んだ単純な形状であり、製造価格を抑制でき、しかも型枠Pから締結具19aを引き抜くことも容易で、再利用も問題なく実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種コンクリート構造物にインサート金具を埋め込む際に使用する、インサート金具の保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート金具は、建築物やボックスカルバートなど、各種コンクリート構造物に配管や配線を取り付けるために使用され、生コンクリートを打設する際、型枠の内面に固定される。一般的なインサート金具の形状例と使用例を図7に示す。この図のようにインサート金具は、円柱状の胴部の上端面にフランジが形成されている。このインサート金具を型枠の内面に固定する際は、専用の保持具が必要になる。
【0003】
図7のインサート金具は、胴部の下端面に入口穴が形成され、この入口穴の奥に雌ネジが形成されている。またソケットは、様々に着色された筒状の樹脂成型品で、インサート金具の用途を識別するために使用され、その中孔にインサート金具の胴部を圧入することができる。次に保持具は、中孔に差し込まれる軸部と、型枠に密着する裾部と、中心を貫通する釘で構成される。施工の際は、型枠に釘を打ち込んで裾部を据え置いた後、軸部にソケットを差し込み、インサート金具を型枠に固定する。そしてコンクリートが凝固した後、型枠と一体で保持具を撤去すると、コンクリートの表面には、入口穴や雌ネジが露見する。
【0004】
インサート金具については、以下のような特許文献が公開されている。文献1は、型枠とインサート本体との間に吸着具を介在させており、吸着具に磁石を組み込んで型枠に吸着させている。磁石を用いるため型枠には何らの変化も与えず、しかも着脱作業も極めて簡単だが、木製の型枠を使用することはできない。また文献2は、型枠に打ち付ける釘を釘保持部で支えており、釘の打ち込み作業を安定して実施できるほか、型枠を撤去する際、型枠に釘が残ることがなく、型枠の再利用も容易である。さらに文献3は、釘と一体になったネジ軸状本体をインサートの雌ネジに螺合できる構造で、ネジを介して釘がインサートと一体化されるため、型枠を撤去する際、型枠から釘が引き抜かれてインサートの方に残留する。そのため型枠の再利用が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−185125号公報
【特許文献2】特開2008−075395号公報
【特許文献3】特開2008−111277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2008年に勃発したいわゆるリーマン・ショックに端を発する世界的な経済危機のほか、国内では公共事業の削減や少子化といった要因も加わり、建設業界は苦境に立たされている。そのため業界では、受注を確保するため激しいコストダウン競争が繰り広げられており、インサート金具についても、製品単価の引き下げや施工コストの削減が要求されている。特に大規模な建築物では、その使用量も莫大になり、コストダウンの要求も一段と厳しくなる。このような背景から、インサート金具を型枠に固定する際に使用する保持具についても、作業性の改善や製品価格の引き下げなどが要求されている。
【0007】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、低価格で利便性にも優れたインサート金具の保持具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、インサート金具を型枠に固定するために用い、インサート金具の胴部を嵌合可能な有底の筒状体と、該筒状体の底部から突出し且つ胴部の内部に入り込む中心体と、からなり、前記中心体には、型枠に打ち込まれる締結具が貫通していることを特徴とするインサート金具の保持具である。
【0009】
本発明によるインサート金具の保持具は、釘などの締結具を用いて型枠に打ち込む形態で、筒状に形成され底部が塞がれている筒状体と、この筒状体の内周側に位置しており且つ筒状体の底部から突出している中心体と、からなり、これらの材質は自在だが、適度な弾性を有する合成樹脂が最適である。また筒状体は、インサート金具の胴部の外周よりもわずかに小さい内径としてあり、内部に胴部を圧入して双方を密着させることで、インサート金具を保持することができる。なお保持具を型枠に取り付けた際は、筒状体の底部が型枠と面接触する。
【0010】
このように、インサート金具の胴部を筒状体で直接保持することで、図7に示すソケットが不要になるほか、胴部の下部全体が筒状体で覆い隠されるため、インサート金具を強固に保持でき、生コンクリートを流し込む際の流動圧に耐え抜き、インサート金具を所定の位置に誤差なく埋め込むことができる。
【0011】
中心体は、筒状体の内周側に配置され、釘などの締結具を挿通するための機能を有する。そのため中心体の中心には、軸方向に貫通する縦孔が形成されている。なお、差し込まれた締結具が縦孔から容易に離脱しないよう、縦孔の内径は、締結具の外径よりもわずかに小さくする等の対策を講じることが好ましい。また中心体と筒状体は同心で配置され、原則としてこれらは一体で成形される。さらに中心体の大きさは、嵌合するインサート金具の内部形状に応じて決める必要がある。
【0012】
締結具は、型枠に保持具全体を固定するために使用され、本発明では、一個の保持具について一個だけが使用され、製造段階で中心体の縦孔に差し込まれて、以降、中心体と一体化する。したがって通常の使用状態において、締結具が保持具から離脱することはない。また締結具の具体例としては、平頭釘やネジ釘のほか、型枠が鋼板の場合、孔あけとネジ加工が同時にできるドリルネジなどが挙げられる。
【0013】
請求項2記載の発明は、中心体の形状に関するもので、中心体の先端部には、断面を縮小した小径部を設けたことを特徴とする。中心体は、インサート金具の胴部の中に収容される軸状の部位だが、本発明による小径部は、この中心体の先端部の断面を縮小した部位である。
【0014】
保持具は、コンクリートが凝固して型枠を撤去した後も、釘などの締結具によって型枠と一体化しているが、その後、保持具を型枠から取り外して、再利用することもできる。その際、締結具が単純な平頭釘であれば、汎用の釘抜きを使用すればよいが、本発明による保持具は、締結具(平頭釘)が中心体と一体化しており、釘の頭部を釘抜きで引っ掛けることが難しい場合がある。しかし細部を設けることで、頭部の外縁部が開放され、釘抜きが支障なく使用できるようになる。なお中心体は、強度を確保する必要があり、全体を小径化することは難しい。
【0015】
請求項3記載の発明は、筒状体の形状に関するもので、筒状体の底部には、表裏面を貫通する空気抜き孔を設けたことを特徴とする。本発明において、インサート金具の胴部の外周面と筒状体の内周面は、隙間なく密着する。そのため、インサート金具を筒状体に差し込む際、胴部の中の空気の逃げ道がなく、差し込みが進むに連れて内圧が高くなり、作業性が悪化することがある。この課題を解決するため、本発明のように底部に空気抜き孔を設けて、内圧が高くならないようにすることもできる。
【0016】
請求項4記載の発明は、保持具の利便性を向上するためのもので、末広がり状で且つ筒状体の外周面に摺動自在な頸部を有するカラーを組み込み、筒状体の外周面には、頸部の移動を規制する凸条が円周方向に形成してあることを特徴とする。
【0017】
本発明は、保持具にカラーを組む込むことを特徴としている。カラーは、保持具とは別途に製造され、インサート金具と共にコンクリート中に残されるもので、インサート金具の用途に応じてその色彩を変えることで、配管作業などを円滑に実施できるようになる。具体的には、赤色のカラーを組み込んだインサート金具は電気配線用、青色のカラーは水道配管用などと決めておけば、配線や配管の施工者は、用途に応じたインサート金具を迷うことなく選択でき、作業の円滑な遂行に寄与することができる。
【0018】
カラーは、横断面が「八」の字状の末広がりで、筒状体の外周を覆うように組み込まれ、上部(断面径が小さい部分)は、筒状体の外径とほぼ等しい内径の頸部となっており、頸部の下は末広がりになっている。したがって頸部に筒状体を差し込むと、双方は摺動しながら自在に移動できる。また凸条は、筒状体の外周面を取り囲むように突出した部位であり、カラーの自在な移動を規制する機能を有しており、保持具を型枠に固定した際、カラーは凸条と型枠の間に挟み込まれる。
【0019】
なお凸条は、単にカラーの移動を規制できればよいのではなく、大きな外力が作用した際には弾性変形して、カラーの頸部の中を通過できる程度の大きさとする必要がある。このように凸条の変形を許容することで、コンクリートが凝固して型枠を撤去する際、保持具全体がカラーの中を通過して、カラーだけをコンクリートの表面に残すことができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明で示したカラーと同様の効果を得るためのもので、筒状体の下部外周に円盤状のリングを設け、該リングと前記筒状体は、外力によって破断可能な複数の脆弱片を介して一体化していることを特徴とする。リングは、型枠とほぼ平行に展開する円盤状で、筒状体の下部の外周に位置しており、保持具を型枠に固定した際、リングは型枠に面接触する。そしてコンクリートが凝固して型枠を撤去する際、リングは、保持具から切り離されてコンクリートの表面に残留する。そのためリングの色彩をインサート金具の用途に応じて変えておけば、先のカラーと同様の効果を得られる。
【0021】
リングは、型枠を撤去する際、筒状体から切り離される必要があり、これを実現するため、リングと筒状体は、脆弱片を介して一体化してある。脆弱片は、各種樹脂成型品のゲートに類似したもので、断面積が絞り込まれた棒状であり、一定の外力で破断されることを想定している。本発明では、型枠を撤去する際の外力で無理なく破断されるよう、その断面形状や数量を決めている。
【0022】
請求項6記載の発明は、リングの詳細に関するもので、リングの上面には、上方に突出する棒状または帯状の埋没片を設けたことを特徴とする。リングは前記のように、型枠を撤去する際、コンクリートの表面に残留させる必要があり、リングとコンクリートは、分離不能に一体化させることが好ましい。そのため、リングの上面から棒状または帯状に突出する埋没片を設けることがある。埋没片は、全周がコンクリートに取り囲まれて拘束され、リングを強固に保持することができる。なおリングの上面とは、型枠と接触する面の反対側を意味する。また上方とは、型枠に対して背を向ける方向である。そのほか埋没片の形状は、単純に上方に突出するもののほか、斜め上方に突出するものや、途中で横方向に屈曲するものなど、自在に選択可能である。
【0023】
請求項7記載の発明も、リングの詳細に関するもので、リングの外周には、上方に突出する外筒体を設け、該外筒体の上端には、ツバ状の埋没環を設けたことを特徴とする。外筒体は、リングの外周から上方に突出する円筒状または円錐状のもので、筒状体を取り囲むように配置される。さらに外筒体の上端には、ツバ状の埋没環を設けている。ツバ状とは、外筒体の外周にせり出す円盤状であることを意味する。よって埋没環は、リングのさらに外側に位置しているが、外筒体の高さ分だけ段差が生じている。そのため保持具を型枠に固定した際、リングは型枠に接触するが、埋没環は、外筒体の高さ分だけ型枠から離れており、埋没環の両面にコンクリートが流れ込み、強固に保持される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明のように、保持具を筒状体と中心体で構成して、筒状体の中にインサート金具の胴部を圧入して保持することで、保持具の形状が極めて単純になり、製造価格を抑制でき、建設会社などからのコストダウンの要求に応えることができる。しかも本発明による保持具は、型枠から引き抜いて再利用も容易であり、建設費用の抑制や廃棄物の削減にも貢献する。さらに本発明は、筒状体によってインサート金具の下部を完全に覆い隠すことから、インサート金具を強固に保持でき、信頼性にも問題はない。
【0025】
請求項2記載の発明のように、中心体の先端部に小径部を設けることで、保持具を型枠から取り外す際、釘(締結具)の頭部が広く露出するため、釘抜きなどの工具を容易に引っ掛けられるようになる。そのため、型枠から保持具を取り外す際の作業性が向上して、時間短縮による費用の削減が期待できる。
【0026】
請求項3記載の発明のように、筒状体の底部に空気抜き孔を設けることで、インサート金具を筒状体に差し込む際、胴部の中の空気の逃げ道が確保され、内圧が上昇しない。そのため、インサート金具が押し戻されるなどの不具合を回避でき、利便性が向上する。
【0027】
請求項4記載の発明のように、保持具にカラーを組み込み、しかも筒状体に適切な大きさの凸条を設けることで、凝固したコンクリートの表面付近にカラーを残留させることができる。そして埋め込まれたインサート金具の用途に応じてカラーの色彩を変えることで、配線や配管の施工者は、本来のインサート金具を迷うことなく選択でき、作業が円滑に進行して、施工時の利便性の向上や費用の削減が期待できる。なおカラーは単純な形状であり、コストにはほとんど影響を与えない。
【0028】
請求項5記載の発明のように、保持具にリングを設けた上、脆弱片を介して筒状体とリングを一体化することで、型枠を撤去する際、リングが保持具から切り離されてコンクリートの表面に残留する。そのため、組み込まれたインサート金具の用途に応じてリングの色彩を変えておくことで、請求項4記載の発明で示したカラーと同様の効果を得ることができる。なお、この発明では、リングを保持具と一体成型することができ、流通段階や施工段階での取り扱いが容易になる。
【0029】
請求項6記載の発明のように、リングから突出する埋没片を設けることで、埋没片の全周がコンクリートに取り囲まれて拘束され、リングとコンクリートが強固に一体化する。そのためリングがコンクリートから脱落することがなく、信頼性の向上に寄与する。また請求項7記載の発明のように、リングの外周に段違いの埋没環を設けることでも、同様にリングの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるインサート金具の保持具の形状例を示しており、(A)は構成要素を並べた斜視図で、(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面図で、(C)はインサート金具をコンクリートに埋め込んだ後の断面図である。
【図2】図1とは異なるインサート金具の保持具の形状を示しており、(A)構成要素を並べた斜視図で、(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面図で、(C)はインサート金具をコンクリートに埋め込んだ後の断面図である。
【図3】図1に示す保持具を改良して、筒状体の外周にカラーを組み込む保持具を示しており、(A)は構成要素を並べた斜視図で、(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面図で、(C)はインサート金具をコンクリートに埋め込んだ後の断面図である。
【図4】図3に示す保持具の詳細な断面図である。
【図5】筒状体の外周にリングを設けて、さらにリングの上面に埋没片を設けた保持具を示しており、(A)は保持具の平面図と斜視図で、(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面図で、(C)はインサート金具をコンクリートに埋め込んだ後の断面図で、(D)は帯状の埋没片を設けた保持具の斜視図である。
【図6】筒状体の外周にリングを設けて、さらにリングの外周に埋没環を設けた保持具を示しており、(A)は保持具の平面図と斜視図で、(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面図で、(C)はインサート金具をコンクリートに埋め込んだ後の断面図である。
【図7】一般的なインサート金具の形状例と使用例を示す斜視図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明によるインサート金具21の保持具11aの形状例を示しており、図1(A)は構成要素を並べたもので、図1(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面で、図1(C)はインサート金具21をコンクリートCに埋め込んだ後の断面である。図1(A)のようにインサート金具21は、円柱状の胴部22の上部にフランジ23が形成されており、コンクリートCに埋め込まれた際、軸線方向に作用する荷重をコンクリートCに伝達でき、引き抜き強度に優れている。また胴部22の中には入口穴24と雌ネジ25が形成され、胴部22の下端面から差し込まれたボルトを螺合することができる。
【0032】
保持具11aは、型枠Pにインサート金具21を固定するために使用され、図1(A)のように円筒状であり、一端面が底部12で塞がれた筒状体13と、筒状体13の内部に配置され底部12から突出する中心体15と、が合成樹脂を材料として一体成形され、筒状体13と中心体15との境界にあたる差込溝14に、インサート金具21の胴部22を差し込むことができる。なお筒状体13の内径は、胴部22の外径よりもわずかに小さく、インサート金具21が差し込まれた際、筒状体13が弾性変形することで双方が密着して、インサート金具21を強固に保持できる。さらに保持具11aが型枠Pに密着した際の安定性を向上するため、この図のように、筒状体13の下部にツバ状の裾部36を設ける場合もある。
【0033】
また中心体15は、保持具11aを型枠Pに固定する締結具19aを差し込むためのもので、円柱状の外観だが、締結具19aを通過させるため、縦孔16が軸線方向に貫通している。なお保持具11aの取り扱い性を向上するため、締結具19aは中心体15と一体化することが好ましく、縦孔16の内径は締結具19aの外径よりもわずかに小さくしてあり、通常の使用状態において、締結具19aが中心体15から離脱することはない。さらに中心体15は単純な円柱状ではなく、その先端部は、断面が縮小された小径部17となっている。そのほか底部12は、全面的に型枠Pと接触するのではなく、その外縁部以外に逃げ部18を設けて、接触面積を抑制している。型枠Pの表面は微細な凹凸が連続しており、底部12が不安定になる場合があるが、このように逃げ部18を設けて安定性を確保している。
【0034】
締結具19aは、保持具11aを型枠Pに固定できるならば、その形状等は自在に決めることができる。この図の型枠Pは木板を想定しているため、締結具19aとして単純な平頭釘を使用している。型枠Pに打ち込まれた保持具11aを再利用するには、釘抜きなどの工具を使用して、平頭釘19aを型枠Pから引き抜く必要がある。この作業を容易に実施できるよう、中心体15の先端部は断面が縮小された小径部17となっており、必然的に平頭釘19aの頭部との直径差が大きくなり、釘抜きの引っ掛けが容易になる。なお中心体15の全体の断面を縮小すると、強度も低下するため、この図のように先端部だけを小径部17とすることが好ましい。
【0035】
平頭釘19aを型枠Pに打ち付けて保持具11aを固定した後、筒状体13の中にインサート金具21を圧入すると、図1(B)のような状態になる。インサート金具21の胴部22の先端は底部12に密着しており、また筒状体13と胴部22も密着している。ただし中心体15と入口穴24とは隙間が確保されている。このように中心体15は、インサート金具21の内部に収容可能な大きさとする必要がある。そしてコンクリートCが凝固した図1(C)の段階では、インサート金具21がコンクリートC中に埋め込まれており、雌ネジ25が外部に露出する。さらに、コンクリートCから引き離された型枠Pには、保持具11aが固定されているが、これは釘抜きなどを用いて容易に引き抜くことができる。
【0036】
図2は、図1とは異なるインサート金具21の保持具11bの形状を示しており、図2(A)構成要素を並べたもので、図2(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面で、図2(C)はインサート金具21をコンクリートCに埋め込んだ後の断面である。この図の型枠Pは鋼板であり、締結具19として図1に示す平頭釘19aは使用できず、その代替としてドリルネジ19bを使用している。ドリルネジ19bは、電動ドライバーなどを使用して、鋼板の孔あけとネジの形成が同時に行える特徴を有しており、この図のように、鋼板の型枠Pに保持具11bを固定する際に適している。
【0037】
ドリルネジ19bを使用する場合、保持具11bを型枠Pから取り外す際も電動ドライバーなどを使用する。そのため図1に示す小径部17は不要で、中心体15の長さも縮小されている。そのほか、筒状体13の内周面で胴部22を保持するなどの基本的な構成は、図1と何ら変わりはないが、型枠Pは鋼板で表面の凹凸が少ないため、底部12の下面に逃げ部18を設けておらず、全面が型枠Pと接触する。
【0038】
図3は、図1に示す保持具11aを改良して、筒状体13の外周面にカラー32を組み込む保持具11cを示しており、図3(A)は構成要素を並べたもので、図3(B)は各構成要素を組み上げた状態の断面で、図3(C)はインサート金具21をコンクリートCに埋め込んだ後の断面である。カラー32は、保持具11cとは別途に製造され、様々に着色された合成樹脂を一体成形したもので、コンクリートCの内部に残され、インサート金具21の用途を識別するために使用される。なお保持具11cにはカラー32を組み込むため、図1に示す裾部36(保持具11aの下部外周に形成)は省略している。
【0039】
カラー32の横断面は、末広がりの「八」の字形状で、その上部の頸部33は、筒状体13の外周面と隙間がなく、しかも自在に摺動可能な内径している。ただしコンクリートCが凝固する前、カラー32が筒状体13から抜け落ちることを防止するため、筒状体13の外周面には、環状に突出する凸条30を形成してあり、図3(B)のように、カラー32は、凸条30と型枠Pの間に挟み込まれる。その後、コンクリートCが凝固して型枠Pを撤去する際、カラー32はコンクリートCに付着しているため、凸条30は、押し潰されるように弾性変形して、頸部33の中を通過する。そのため凸条30は、突出量を抑制している。
【0040】
図4は、図3に示す保持具11cの詳細な断面形状を示している。インサート金具21を受け入れる差込溝14の奥は、底部12で塞がれているが、この箇所には、表裏面(差込溝14側と逃げ部18側)を貫く空気抜き孔35を設けている。空気抜き孔35は、インサート金具21が差し込まれる際、胴部22の中の空気を外部に逃がすための機能を有しており、この図では、小径のものを一箇所だけ設けている。なお、型枠Pに固定された保持具11cにインサート金具21を差し込む場合、底部12の外縁が型枠Pと密着しており、逃げ部18に入り込んだ空気を外部に放出できない。そこで底部12の下面外縁には、トンネル状の切欠部38を一箇所だけ設けており、通気性を確保している。
【0041】
図5は、筒状体13の外周にリング42を設けて、さらにリング42の上面に埋没片46を設けた保持具11d、11eを示している。図5(A)のようにリング42は、筒状体13の下部を取り囲む円盤状で、その底面が型枠Pと接触できるよう配慮されている。さらにリング42は平面図のように、計三箇所の脆弱片43を介して筒状体13と一体化しており、過大な外力が作用すると脆弱片43が破断して、リング42は筒状体13から離脱する。なお脆弱片43を設けたため、筒状体13とリング42との間には、三箇所のスリット44が形成されている。そのほかリング42の上面には、丸棒状で上方に突出する埋没片46を四箇所に設けている。
【0042】
保持具11dを型枠Pに固定した際は、図5(B)の断面図のように、リング42が型枠Pに接触する。なお脆弱片43は、筒状体13の最下部からわずかだが上寄りに設けている。そのためリング42の外周側は型枠Pに接触するが、内周側はある程度の空間が確保されている。この空間にスリット44からコンクリートCが流れ込むことで、リング42を挟み込むように固定することができる。
【0043】
コンクリートCが凝固して型枠Pを撤去した際は、図5(C)のように、リング42が筒状体13から切り離される。そのためリング42だけがコンクリートCの表面に残留して、その色彩を容易に視認できる。また埋没片46は、コンクリートC中に埋没しており、リング42の脱落を防止している。なお埋没片46は、図5(A)などに示す単純な棒状のもののほか、図5(D)の保持具11eのように、幅広の帯状とすることもできる。さらに埋没片46は、この図のように屈曲させてもよい。
【0044】
図6は、筒状体13の外周にリング42を設けて、さらにリング42の外周に埋没環48を設けた保持具11fを示している。この保持具11fは、図5と同様にリング42を設けており、さらにリング42がコンクリートCから脱落しないよう、埋没環48を設けている。埋没環48は、両面がコンクリートCに挟み込まれる必要があり、図6(A)や図6(B)のように、リング42と埋没環48との間に外筒体47を設けている。そしてコンクリートCが凝固して型枠Pを撤去した際は、図6(C)のように、脆弱片43が破断されてリング42だけがコンクリートCの表面に露見するが、埋没環48はコンクリートC中に埋め込まれており、リング42の脱落を防止している。
【符号の説明】
【0045】
11a、11b、11c、11d、11e、11f 保持具
12 底部
13 筒状体
14 差込溝
15 中心体
16 縦孔
17 小径部
18 逃げ部
19a 締結具(平頭釘)、 19b 締結具(ドリルネジ)
21 インサート金具
22 胴部
23 フランジ
24 入口穴
25 雌ネジ
30 凸条
32 カラー
33 頸部
35 空気抜き孔
36 裾部
38 切欠部
42 リング
43 脆弱片
44 スリット
46 埋没片
47 外筒体
48 埋没環
C コンクリート
P 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート金具(21)を型枠(P)に固定するために用い、
インサート金具(21)の胴部(22)を嵌合可能な有底の筒状体(13)と、該筒状体(13)の底部(12)から突出し且つ胴部(22)の内部に入り込む中心体(15)と、からなり、前記中心体(15)には、型枠(P)に打ち込まれる締結具(19)が貫通していることを特徴とするインサート金具の保持具。
【請求項2】
前記中心体(15)の先端部には、断面を縮小した小径部(17)を設けたことを特徴とする請求項1記載のインサート金具の保持具。
【請求項3】
前記筒状体(13)の底部(12)には、表裏面を貫通する空気抜き孔(35)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のインサート金具の保持具。
【請求項4】
末広がり状で且つ前記筒状体(13)の外周面に摺動自在な頸部(33)を有するカラー(32)を組み込み、
前記筒状体(13)の外周面には、前記頸部(33)の移動を規制する凸条(30)が円周方向に形成してあることを特徴とする請求項1、2または3記載のインサート金具の保持具。
【請求項5】
前記筒状体(13)の下部外周に円盤状のリング(42)を設け、該リング(42)と前記筒状体(13)は、外力によって破断可能な複数の脆弱片(43)を介して一体化していることを特徴とする請求項1、2または3記載のインサート金具の保持具。
【請求項6】
前記リング(42)の上面には、上方に突出する棒状または帯状の埋没片(46)を設けたことを特徴とする請求項5記載のインサート金具の保持具。
【請求項7】
前記リング(42)の外周には、上方に突出する外筒体(47)を設け、該外筒体(47)の上端には、ツバ状の埋没環(48)を設けたことを特徴とする請求項5記載のインサート金具の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−174356(P2011−174356A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82749(P2010−82749)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(507227278)リープ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】