説明

インソール

【課題】コンパクトで、面状発熱体の交換および手入れが容易で、実用性およびフィット性に優れた靴のインソールを提供する。
【解決手段】靴内の靴底上に配置され、上面2aに形成された収容凹部2bを有するインソール本体2と、収容凹部2bに収容可能に配置され、電源供給を受けて自己温度制御しながら発熱する面状発熱体3と、面状発熱体3を収容した収容凹部2bに着脱自在に嵌合され、面状発熱体3の熱を通過させるための1つ以上の熱通過孔4bが形成された蓋部材4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソール、より詳細には、面状発熱体を備えた靴のインソールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寒い場所での作業において、寒さを避けて靴内を保温するために、靴下を複数重ね履きしたり、靴内にカイロ等の化学発熱体を入れたりしていた。しかしながら、いずれの場合においても、長時間経過すると靴内の保温効果が無くなるという問題があった。また、靴内に化学発熱体を入れた場合には、一時的に該化学発熱体の温度が上がりすぎて低温火傷を引き起こすという問題もあった。このため、靴内を快適に保温することができなかった。
【0003】
なお、化学発熱体の代わりに、電源供給を受けて発熱するニクロム線等の抵抗発熱体を使用し、コントローラで該抵抗発熱体の温度を調整する方法も考えられる。しかしながら、この方法は、コントローラが大型化して作業時に邪魔なりやすく、実際の使用には不向きである。
【0004】
そこで、電源供給を受けて自己温度制御しながら発熱する面状発熱体を備えた靴が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録3061750号
【特許文献2】実用新案登録3061148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の靴では、靴底内部に面状発熱体が設けられ、該面状発熱体上にインソールが敷かれ、靴のかかと部分に電池等の電源とスイッチとが設けられている。そして、使用者が靴を履いた時に、インソールおよび面状発熱体が押されることによって、スイッチがオンし、面状発熱体が電源供給を受けて所定の温度に発熱するようになっている。
しかしながら、特許文献1記載の靴によれば、インソールが面状発熱体上に直接敷かれているので、例えば長時間にわたる作業や激しい運動を伴う作業等において、面状発熱体がインソールとの摩擦等によって壊れ易くなる。また、使用者が靴を履いた時に、スイッチがインソールおよび面状発熱体を介してオンするようになっているが、例えばつま先で立つような作業等においては、スイッチがオフされることもあり、靴内を快適に保温することができない。このため、特許文献1記載の靴は実際の使用には不向きであると考えられる。
そして、特許文献1には、後述する本願発明のような、面状発熱体を備えた靴のインソールの構造については何ら開示および示唆もされていない。
【0007】
一方、特許文献2記載の靴では、靴底にPTC(正温度係数:Positive Temperture Coeffcient)特性を有する面状発熱体が装着され、該面状発熱体と電源とが電源ラインを介して接続されている。電源は、作業者の腰周り部分等に取り付けられ、面状発熱体への電源供給を行うようになっている。
しかしながら、特許文献2には面状発熱体を靴底に装着することが漠然と記載されているだけであり、どのような構造の面状発熱体を靴底のどの部分にどのようにして装着するのか等の記載は全くなく、その実現に試行錯誤を要する。
まして、特許文献2には特許文献1のものと同様、後述する本願発明のような、面状発熱体を備えた靴のインソールの構造については何ら開示および示唆もされているはずもない。
【0008】
さらに、特許文献1および2記載の靴では、面状発熱体が靴底に一体的に設けられていることから推察すると、故障した面状発熱体を新しいものに交換する場合、靴を分解したり、あるいは、靴自体を交換したりする必要があり、手間と時間を要する。しかも、これらの靴は、面状発熱体を靴底に設けることに主眼がおかれているため、靴内が汚れた場合の手入れ(例えば、洗濯等)の便宜を何ら考慮したものではない。
【0009】
本発明は、コンパクトで、面状発熱体の交換および手入れが容易で、実用性およびフィット性に優れた靴のインソールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、靴内の靴底上に配置され、上面に形成された収容凹部を有するインソール本体と、前記収容凹部に収容可能に配置され、電源供給を受けて自己温度制御しながら発熱する面状発熱体と、前記面状発熱体を収容した前記収容凹部に着脱自在に嵌合され、前記面状発熱体の熱を通過させるための1つ以上の熱通過孔が形成された蓋部材と、を備えたインソールとしたものである。
この構成によれば、発熱体として自己温度制御可能な面状発熱体が使用され、該面状発熱体および蓋部材がインソール本体の収容凹部に収容されるように構成されている。したがって、本発明に係るインソールによれば、従来技術のような大型化したコントローラが不要となる上、面状発熱体および蓋部材をインソール本体内に収容できるので、コンパクトなインソールを実現できる。また、面状発熱体がインソール本体から着脱可能になっているので、面状発熱体の交換が容易となる。さらに、このインソールは、容易に持ち運べて、様々な靴に使用できるので、実用性に優れている。
【0011】
上記構成において、前記インソール本体は、前記収容凹部の底面から該インソール本体の下面に向けて形成された貫通通路と、該貫通通路に連通するように該インソール本体の下面に形成された溝状通路とを有し、前記面状発熱体に電源供給するための電源ラインが、前記貫通通路内および溝状通路内を通るように配置されていることが好ましい。
この構成によれば、面状発熱体に電源供給するための電源ラインが、インソール本体に形成された貫通通路内および溝状通路内に配置されるように構成されている。したがって、本発明に係るインソールによれば、電源ラインがインソール本体内に収容され、コンパクト性を維持しつつ面状発熱体への電源供給が可能となるので、実用性に優れている。
【0012】
上記構成において、前記熱通過孔は、複数形成されてメッシュ構造またはスノコ構造をなしていることが好ましい。
この構成によれば、熱通過孔がメッシュ構造またはスノコ構造をなすように構成されている。したがって、本発明に係るインソールによれば、蓋部材が、蓋の役割を果たしながら面状発熱体の熱をより効率よく靴内にいきわたらせることができる。
【0013】
上記構成において、前記インソール本体は、前記収容凹部の底面に形成された1つ以上の位置決め用突出部を有し、前記面状発熱体は、前記位置決め用突出部に係合する係合孔を有し、前記蓋部材は、前記位置決め用突出部に係合する係合孔または係合凹部を有し、前記位置決め用突出部が前記面状発熱体の係合孔および前記蓋部材の係合孔または係合凹部と係合することによって、前記面状発熱体および蓋部材が前記インソール本体に対して位置決めされることが好ましい。
この構成によれば、面状発熱体および蓋部材が、収容凹部に形成された位置決め用突出部によって、インソール本体に対して位置決めされるように構成されている。したがって、本発明に係るインソールによれば、長時間にわたる作業や激しい運動を伴う作業等においても、収容凹部内での面状発熱体および蓋部材の動きが制限され、特に面状発熱体が収容凹部との摩擦等により壊れるのを防止することができる。
【0014】
上記構成において、前記面状発熱体は、可撓性材料からなるベース用絶縁性フィルムと、前記ベース用絶縁性フィルム上に導電性インクを用いて印刷形成された一対の電極部と、前記ベース用絶縁性フィルム上の前記電極部間にPTCインクを用いて印刷形成された発熱部と、前記電極部および発熱部を少なくとも被覆するように前記ベース用絶縁性フィルムに貼り合わされる、可撓性材料からなる被覆用絶縁性フィルムとからなることが好ましい。
この構成によれば、電極部および発熱部が、可撓性材料からなるベース用絶縁性フィルム上にそれぞれ導電性インクおよびPTCインクを用いて印刷形成され、さらに、印刷形成された電極部および発熱部が、可撓性材料からなる被覆用絶縁性フィルムによって被覆されるように構成されている。したがって、本発明に係るインソールによれば、面状発熱体の厚みを非常に薄くすることができるため、面状発熱体を収容したインソールを薄くして軽量化することができる。また、このインソールによれば、電極部および発熱部が、ベース用絶縁性フィルムと被覆用絶縁性フィルムによって密閉された構造となっているので、漏電や断線等の心配もない上、面状発熱体が汚れた場合の手入れ(例えば、洗濯等)も容易となる。さらに、このインソールによれば、ベース用絶縁性フィルムおよび被覆用絶縁性フィルムが可撓性を有しているので、面状発熱体を曲げたりして様々な形状とすることができ、様々な靴に対する優れたフィット性を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンパクトで、面状発熱体の交換および手入れが容易で、実用性およびフィット性に優れた靴のインソールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例による、靴のインソールの分解斜視図である。
【図2】(A)は図1の面状発熱体の全体を示す正面図、(B)は図1のインソール本体の底面図、(C)は図1のA−A’線に沿った断面図、(D)は図1のB−B’線に沿った断面図である。
【図3】(A)は図1の面状発熱体の正面図、(B)は(A)のC−C’線に沿った断面図、(C)は(A)のD−D’線に沿った断面図である。
【図4】面状発熱体の発熱原理を説明する図であり、(A)は温度が低い場合の発熱部の内部変化を説明する図、(B)は温度が高い場合の発熱部の内部変化を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施例による、靴のインソールの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例による靴のインソールの分解斜視図である。図2(A)は図1の面状発熱体の全体を示す正面図、(B)は図1のインソール本体の底面図、(C)は図1のA−A’線に沿った断面図、(D)は図1のB−B’線に沿った断面図である。
図1および図2(A)〜(D)に示すように、インソール1は、インソール本体2と、面状発熱体3と、蓋部材4とを備える。
【0019】
インソール本体2は、靴内の靴底上に配置されるものであり、例えば、断熱性を有する、弾性材または非弾性材からなる。インソール本体2は、収容凹部2bと、貫通通路2dと、溝状通路2eとを有する。収容凹部2bは、インソール本体2の上面2aに形成されている。貫通通路2dは、収容凹部2bの底面2cからインソール本体2の下面2fに向けて形成されている。溝状通路2eは、インソール本体2の下面2fに形成されている。溝状通路2eの一端は貫通通路2dに連通し、他端はインソール本体2の下面2fの縁(例えば、かかと側の縁)までのびている。
面状発熱体3に電源供給するための電源ラインLが、貫通通路2d内および溝状通路2e内を通るように配置されている。電源ラインLの一端は、後述する面状発熱体3の発熱部に接続され、その他端は電源(図示しない)に接続されている。電源は、靴内に配置されるよりも靴外に配置されるのが好ましく、例えば、作業者の腰周りに取り付けられる。電源としては、乾電池や充電式電池などの汎用簡易電源(数V〜数10V程度の低電圧を出力するもの)が使用される。
【0020】
面状発熱体3は、収容凹部2bに収容可能に配置され、電源供給を受けて自己温度制御しながら発熱するものである。次に、面状発熱体3の構造および発熱原理について説明する。
【0021】
図3は面状発熱体3の構造を説明する図であり、(A)は図1の面状発熱体の正面図、(B)は(A)のC−C’線に沿った断面図、(C)は(A)のD−D’線に沿った断面図である。
図3(A)、(B)に示すように、面状発熱体3は、ベース用絶縁性フィルム3aと、一対の電極部3b、3cと、発熱部3dと、被覆用絶縁性フィルム3eとからなる。
ベース用絶縁性フィルム3aは、例えばウレタンフィルム等の可撓性材料からなる。一対の電極部3b、3cは、ベース用絶縁性フィルム3a上に導電性インクを用いて印刷形成されている。発熱部3dは、ベース用絶縁性フィルム3a上の電極部3b、3c間に、PTCインク3dを用いて印刷形成されている。ここで、PTCインク3dは、PTC特性(温度上昇に伴って抵抗値が上昇し、所定温度に達すると抵抗値が急激に増加するという抵抗温度特性)を有する公知のインクである。発熱部3dは、マトリックス物質(例えば、半導体粒子等)3gと導電性物質(例えば、金属粉末、カーボンブラック、グラファイト等)3hの混合物からなる。発熱部3dのPTC特性は、例えば、マトリックス物質3gおよび導電性物質3hの各種類、含有量、印刷面積等によって決定される。被覆用絶縁性フィルム3eは、ベース用絶縁性フィルム3aと同様に、例えばウレタンフィルム等の可撓性材料からなる。被覆用絶縁性フィルム3eは、電極部3b、3cおよび発熱部3dを少なくとも被覆するようにベース用絶縁性フィルム3aに貼り合わされている。なお、ベース用絶縁性フィルム3aと被覆用絶縁性フィルム3eの貼り合わせによって、密閉部3iが形成されている。この密閉部3iによって、発熱部3dの各物質3g、3hが外部に漏れなくなり、電極部3b、3cからの漏電が防止される。ベース用絶縁性フィルム3a、電極部3b、3c、発熱部3dおよび被覆用絶縁性フィルム3eの各厚みは、いずれも任意の厚みに適宜調整されうるが、適切な所定温度を得るために数μm〜数mmの範囲にあるのが好ましい。このように、面状発熱体3の厚みは、従来の化学発熱体や抵抗発熱体の厚みに比べて、かなり薄いものとなる。
図3(C)に示すように、電源ラインLは、ベース用絶縁性フィルム3aと、一対の電極部3b、3cと、被覆用絶縁性フィルム3eとからなり、発熱部3dから電源までのびている。
【0022】
図4は面状発熱体の発熱原理を説明する図であり、(A)は温度が低い場合の面状発熱体の発熱部の内部変化を説明する図、(B)は温度が高い場合の面状発熱体の発熱部の内部変化を説明する図である。
図4(A)に示すように、温度が低い場合、発熱部3dの導電性物質3hが連鎖状につながり易くため、抵抗値が下がり、電流が流れ易くなる。一方、図4(B)に示すように、温度が高い場合、発熱部3dのマトリックス物質3gが膨張して導電性物質3hの連鎖を断ち切るため、抵抗値が急激に大きくなり、電流が流れにくくなる。したがって、面状発熱体3は、所定温度(導電性物質3hの連鎖を断ち切られたときの温度)に達すると、それ以上に温度が上昇しなくなる。
【0023】
蓋部材4は、図1に示すように、面状発熱体3を収容した収容凹部2bに着脱自在に嵌合される。蓋部材4には、外枠部(縁部)4aの内側に1つ以上の熱通過孔4bが形成されている。面状発熱体3の熱は、熱通過孔4bを通過して、靴内にいきわたるようになっている。熱通過孔4aは、この実施例では複数形成されてメッシュ構造をなしている。このメッシュ構造により、蓋部材4が、蓋の役割を果たしながら面状発熱体3の熱をより効率よく靴内にいきわたらせることができる。なお、メッシュ構造の代わりに、熱通過孔4aは複数形成されてスノコ構造をなしていてもよい。
【0024】
(実験例)
上記のインソールを次のような手順で製作して靴内の靴底上に配置し、靴内の温度を測定した。
まず、ベース用絶縁性フィルム3aとして厚み70μmのウレタンフィルムを使用し、このベース用絶縁性フィルム3a上に銀ペーストを印刷して、櫛型状の一対の電極部3b、3cを形成するとともに、電極部3b、3c間にPTCインク3dを印刷して、約25cmの大きさの発熱部3dを形成した。次に、被覆用絶縁性フィルム3eとして厚み70μmのウレタンフィルムを使用し、電極部3b、3cおよび発熱部3dを被覆するように、この被覆用絶縁性フィルム3eをベース用絶縁性フィルム3aに貼り合わせて、面状発熱体3を製作した。そして、この面状発熱体3を収容凹部2bに収容し、電源ラインLを貫通通路2d内および溝状通路2e内を通して充電式電池からなる電源と接続し、さらに蓋部材4を収容凹部2bに嵌合して、インソール1を製作した。製作したインソール1に、12Vの電源を供給し、蓋部材4の熱通過孔4aの上側開口部の温度を測定した。
この結果、靴内において約10時間以上(長時間)40℃の温度を一定に保つことができた。
【0025】
このインソール1によれば、自己温度制御可能な面状発熱体3が使用され、面状発熱体3および蓋部材4が収容凹部2bに収容される。したがって、従来技術のような大型化したコントローラが不要となり、コンパクトなインソールを実現できる。また、面状発熱体1がインソール本体2から着脱可能になっているので、面状発熱体1の交換が容易となる。さらに、このインソール1は容易に持ち運べて、様々な靴に使用することができるので、実用性に優れている。
また、電源ラインLが、貫通通路2d内および溝状通路2e内に配置されてインソール本体内に収容されるので、コンパクト性を維持しつつ面状発熱体2への電源供給が可能になる。
さらに、電極部3b、3cおよび発熱部3dが、ベース用絶縁性フィルム3a上にそれぞれ導電性インクおよびPTCインクを用いて印刷形成され、印刷形成された電極部3b、3cおよび発熱部3dが被覆用絶縁性フィルム3eによって被覆されている。したがって、面状発熱体3の厚みを非常に薄くすることもでき、面状発熱体3を収容したインソール1を薄くして軽量化することもできる。また、電極部3b、3cおよび発熱部3dが、ベース用および被覆用の絶縁性フィルム3a、3eによって密閉された構造となっているので、漏電や断線等の心配もない上、面状発熱体3が汚れた場合の手入れ(例えば、洗濯等)も容易となる。さらに、ベース用および被覆用の絶縁性フィルム3a、3eがともに可撓性を有しているので、面状発熱体3を曲げたりして様々な形状とすることができ、様々な靴に対する優れたフィット性を実現できる。
【0026】
(第2実施例)
ところで、第1実施例によるインソール1は、足裏(つま先側の足裏部分)を部分的に温めるものであり、足裏全体を温めるものではない。また、第1実施例によるインソール1では、長時間にわたる作業や激しい運動を伴う作業等において、収容凹部内で面状発熱体や蓋部材が動いてしまう場合がある。そこで、第2実施例によるインソールは、これらの点を解決するために、インソール本体、面状発熱体および蓋部材の構造を変えたものである。
図5は、本発明の第2実施例による靴のインソールの分解斜視図である。第2実施例によるインソール10は、インソール本体20、面状発熱体30および蓋部材40の各形状、インソール本体20が位置決め用突出部20fを備えている点、面状発熱体30および蓋部材40がそれぞれ係合孔30f、40fを備えている点、ならびに熱通過孔40bの形状が、第1実施例によるインソール1と異なっている。よって、これらの点に関してのみ説明する。
【0027】
インソール本体20は、足裏の形状に対応させた、第1実施例のものより大きな収容凹部20bと、2つの位置決め用突出部20fとを有する。位置決め用突出部20fは、収容凹部20bの底面20cに形成されている。位置決め用突出部20fの高さは、任意に決定されるが、収容凹部20bの深さと同等あるいはそれ未満であることが好ましい。
【0028】
面状発熱体30は、足裏の形状に対応させた比較的大きな電極部30b、30cおよび発熱部30dを有する。また、面状発熱体30は、2つの係合孔30fをさらに有する。各係合孔30fは、それぞれ対応する位置決め用突出部20f上に配置され、位置決め用突出部20fと係合する。なお、この面状発熱体30においても、第1実施例のインソールと同様、ベース用絶縁性フィルム30aと被覆用絶縁性フィルム30eの貼り合わせによって、密閉部30iが形成されている。この密閉部30iによって、電極部30b、30cからの漏電が防止される。
【0029】
蓋部材40は、第1実施例のものよりも個数は少ないが開口面積の大きな熱通気孔40bを有する。また、蓋部材40は、2つの係合孔40fをさらに有する。各係合孔40fは、それぞれ対応する位置決め用突出部20f上に配置され、位置決め用突出部20fと係合する。
【0030】
したがって、このインソール10によれば、位置決め用突出部20fが面状発熱体30および蓋部材40の各係合孔30f、40fと係合することによって、面状発熱体30および蓋部材40がインソール本体10に対して位置決めされる。このため、長時間にわたる作業や激しい運動を伴う作業等においても、収容凹部20b内での面状発熱体30および蓋部材40の動きが制限され、特に面状発熱体30が収容凹部20bとの摩擦等により壊れるのを防止することができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0032】
インソール本体、面状発熱体および蓋部材の各構造は、インソール本体に面状発熱体および蓋部材を収容できる構成であれば、何ら限定されるものではない。
【0033】
足裏の様々な部分を温めるために、インソール本体に収容凹部を複数設け、面状発熱体および蓋部材を複数用意して、各収容凹部にそれぞれ面状発熱体および蓋部材を収容するようにしてもよい。
【0034】
貫通通路および溝状通路は、インソール本体の任意の位置に設けられ、それぞれ複数設けられてもよい。また、貫通通路および溝状通路の構造に限定されるものではなく、電源ラインをインソール本体に収容できるものであれば、例えば、電源ラインが収容凹部の側面からインソール本体の側面に形成された貫通通路内に配置されるような構造にしてもよい。
【0035】
蓋部材の熱通過孔の個数、形状および配置レイアウトは、収容凹部の面状発熱体の熱を靴内にいきわたらせることができるのであれば、何ら限定されるものではない。
【0036】
第2実施例のインソールにおいては蓋部材が係合孔を有している構造を示したが、係合孔の代わりに、蓋部材が下面に形成された係合凹部を有し、この係合凹部に位置決め用突出部が係合するような構造としてもよい。
また、位置決め用突出部および係合孔(係合凹部)の個数や形状は、面状発熱体および蓋部材がインソール本体に位置決めされるような構成であれば、何ら限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1、10 インソール
2、20 インソール本体
2a、20a 上面
2b、20b 収容凹部
2c、20c 底面
2d、20d 貫通通路
2e、20e 溝状通路
2f 下面
3、30 面状発熱体
3a、30a ベース用絶縁性フィルム
3b、3c、30b、30c 電極部
3d、30d 発熱部
3e、30e 被覆用絶縁性フィルム
3g マトリックス物質
3h 導電性物質
3i、30i 密閉部
4、40 蓋部材
4a 外枠部
4b、40b 熱通過孔
20f 位置決め用突出部
30f 係合孔
40f 係合孔
L 電源ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴内の靴底上に配置され、上面に形成された収容凹部を有するインソール本体と、
前記収容凹部に収容可能に配置され、電源供給を受けて自己温度制御しながら発熱する面状発熱体と、
前記面状発熱体を収容した前記収容凹部に着脱自在に嵌合され、前記面状発熱体の熱を通過させるための1つ以上の熱通過孔が形成された蓋部材と、を備えたインソール。
【請求項2】
前記インソール本体は、前記収容凹部の底面から該インソール本体の下面に向けて形成された貫通通路と、該貫通通路に連通するように該インソール本体の下面に形成された溝状通路とを有し、
前記面状発熱体に電源供給するための電源ラインが、前記貫通通路内および溝状通路内を通るように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
前記熱通過孔は、複数形成されてメッシュ構造またはスノコ構造をなしていることを特徴とする請求項1または2に記載のインソール。
【請求項4】
前記インソール本体は、前記収容凹部の底面に形成された1つ以上の位置決め用突出部を有し、
前記面状発熱体は、前記位置決め用突出部に係合する係合孔を有し、
前記蓋部材は、前記位置決め用突出部に係合する係合孔または係合凹部を有し、
前記位置決め用突出部が前記面状発熱体の係合孔および前記蓋部材の係合孔または係合凹部と係合することによって、前記面状発熱体および蓋部材が前記インソール本体に対して位置決めされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインソール。
【請求項5】
前記面状発熱体は、可撓性材料からなるベース用絶縁性フィルムと、前記ベース用絶縁性フィルム上に導電性インクを用いて印刷形成された一対の電極部と、前記ベース用絶縁性フィルム上の前記電極部間にPTCインクを用いて印刷形成された発熱部と、前記電極部および発熱部を少なくとも被覆するように前記ベース用絶縁性フィルムに貼り合わされる、可撓性材料からなる被覆用絶縁性フィルムとからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインソール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75740(P2012−75740A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224846(P2010−224846)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(391015627)日本ダム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】