説明

インターホンシステム

【課題】インターホンの複数の親機と複数の子機が通話する際に、エコーキャンセラのパラメータをトレーニングにより順次学習していくと、機器の構成、通話相手によってはトレーニングを行なっても学習が収束せず、エコーキャンセラの効果が発揮できないことがあった。
【解決手段】各端末にエコーキャンセラを搭載し、子機は外設スピーカの有無等に依存するエコーサプレッサ作動条件、マイクゲイン等の固定パラメータと、固定パラメータ以外の室内空間体積等の周辺環境に主に依存するエコーキャンセラのフィルタ係数等の可変パラメータを事前に登録する記憶部を有し、可変パラメータを初期値として順次学習を行ってパラメータを変更させることで、すべての通話の組み合わせで最良な音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズ除去、通話の切り替わりを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインターホンシステムで、端末にエコーキャンセラを搭載し、通話相手や設置目的などによって、エコーキャンセラのパラメータを変更させることができるインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エコーキャンセラのパラメータ変更に関する技術として、文献1の先行技術に示すような音声会議装置が提案されている。本音声会議装置(特に、段落「0031」を参照。)によれば、会議室の外的ファクターが一定であれば、エコー経路の伝達特性が一定なので、予めトレーニングして最適化させていたフィルタ係数をメモリに記憶し、音声会議装置を使用する都度にそのフィルタ係数をトランスバーサルフィルタにロードすれば、音響エコーキャンセラの適応期間を経ずに、速やかにエコーキャンセル動作を行なうことができる。
【特許文献1】特開平6−350487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、文献1の先行技術をインターホンシステムに適応しようとすると、システム内に複数の種類の端末が接続可能であり、任意の端末と通話可能であることから、すべての通話の組み合わせで通話音量や通話の切り替わり、ノイズ量等が最良な状態になるよう回路設計を行っている。しかしながら、端末の筺体や回路、実際に設置される環境等が機器ごとに異なるため、すべての通話の組み合わせで予めトレーニングしてエコーキャンセラのパラメータを最適化させて通話品質を確保することは難しく、トレーニングが困難となる組み合わせが存在するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記難点を解決するため、各端末にエコーキャンセラを搭載し、子機は設置目的に主に依存するエコーサプレッサ作動条件、マイクゲイン等の固定パラメータと、設置目的以外の室内空間体積等の周辺環境に主に依存するエコーキャンセラのフィルタ係数等の可変パラメータを事前に登録する記憶部を有し、可変パラメータを初期値として順次学習を行ってパラメータを変更させることで、すべての通話の組み合わせで最良な音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズ除去、通話の切り替わりを実現するものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1のインターホンシステムによれば、子機は設置目的に応じたパラメータを事前に登録しており、パラメータは子機の設置目的に依存する固定パラメータと、空間サイズ等の周辺環境によって設定される可変パラメータとからなり、設定された可変パラメータを初期値として順次学習を行うことで、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去及び通話の切り替わりをスムーズに行うことができる。
【0006】
請求項2のインターホンシステムによれば、親機は、子機の設置目的を子機ごとにそれぞれ事前に登録しており、パラメータは子機の設置目的によって設定され、パラメータを初期値として子機ごとにそれぞれ学習を行うことで、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去及び通話の切り替わりをスムーズに行うことができる。
【0007】
請求項3のインターホンシステムによれば、通話相手によってエコーキャンセラのパラメータを変更させることにより、最適な音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去及び通話の切り替わりを実現することができる
【0008】
請求項4のインターホンシステムによれば、子機が呼出を行なうごとに親機へ設置目的情報を送出するため、親機は受信した子機の設置目的によってパラメータを設定し、パラメータを初期値として子機ごとにそれぞれ学習を行うことで、事前に登録を行なっていない子機に対しても音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去及び通話の切り替わりをスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例によるインターホン装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例によるインターホン装置のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明に係るインターホンシステムの一例を示す構成図であり、学校や会社などの入口に設置された玄関子機1と、学校の教室などに設置された室内子機2と、玄関子機1及び室内子機2からの呼出に応答するために、職員室や事務所などに設置された親機3と、玄関子機1、室内子機2及び親機3を制御する制御機4で構成され、玄関子機1、親機3及び制御機4はHUB5を介してIPプロトコルにより映像、音声、データ通信の送受を行っていて、室内子機2は制御機4を介して、玄関子機1及び親機3と映像、音声、データ通信の送受を行っている。1台の制御機4で制御できる範囲がローカルシステムとして構成される。
【0012】
また、HUB5にはインターネット等の汎用ネットワーク6が接続され、汎用ネットワーク6を介して他のローカルシステムを構成する玄関子機1a、室内子機2a、親機3a、制御機4a及びHUB5aが接続されている。
【0013】
玄関子機1には親機3と通話するためのマイク11とスピーカ12を有している。室内子機2には親機3と通話するためのマイク21と本体スピーカ22を有するとともに、外部スピーカ23を接続している。なお、本体スピーカ22と外部スピーカ23はどちらか一方を室内子機2で選択して使用する。親機3は玄関子機1及び室内子機2と通話するためのマイク31とスピーカ32を有している。
【0014】
図2は、本発明に係るインターホンシステムの機器の内部回路構成図であり、玄関子機1は各部の制御及びIPプロトコルを使用した音声、データ通信を行う玄関子機CPU13、当該子機の設置目的、ローカルシステム内に接続される他の機器の情報、及び通話相手ごとのエコーキャンセラのパラメータ設定値を記憶する設定記憶部14、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去、通話の切り替わり制御を行うエコーキャンセラ15で構成される。なお、設置目的とは、子機が教室設置、屋外設置、密閉室設置の何れかであるか、外部スピーカは接続されるか、等の固定された要因であり、この要因をもとにエコーサプレッサの作動条件とマイクゲインを決定する。例えば子機が教室設置であれば、密閉室設置と比較してマイクゲインを3dB増加させ、子機が屋外設置であれば、密閉室設置と比較してマイクゲインを6dB増加させるような初期設定を行なう。また、エコーサプレッサの作動としては、例えば子機に外部スピーカが接続されていれば、エコーの最初の部分で消し残しが発生する可能性が高くなるため、アタック時間を早く設定するとともに、動作閾値を変化させて、全二重性を弱くするとともに残留エコー抑圧強度を強くするような設定を行なう。
【0015】
室内子機2は各部の制御を行う室内子機CPU24、当該子機の設置目的、ローカルシステム内に接続される他の機器の情報、及び通話相手ごとのエコーキャンセラのパラメータ設定値を記憶する設定記憶部25、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去、通話の切り替わり制御を行うエコーキャンセラ26、制御機4との音声通信を行う音声子機I/F27、制御機4とのデータ通信を行う通信I/F28で構成される。
【0016】
親機3は各部の制御及びIPプロトコルを使用した音声、データ通信を行う親機CPU33、ローカルシステム内に接続される機器の情報及び、通話相手ごとのエコーキャンセラのパラメータ設定値を記憶する設定記憶部34、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去、通話の切り替わり制御を行うエコーキャンセラ35で構成される。
【0017】
制御機4は各部の制御及びIPプロトコルを使用した映像、音声、データ通信を行う制御機CPU41、ローカルシステム内に接続される機器の情報及び、通話相手ごとのエコーキャンセラのパラメータ設定値を記憶する設定記憶部42、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去、通話の切り替わり制御を行うエコーキャンセラ43、室内子機2との音声通信を行う音声子機I/F44、室内子機2とのデータ通信を行う通信室内子機I/F45で構成される。
【0018】
このように構成されたインターホンシステムにおいて、以下、動作について説明する。
【0019】
まず、第1の実施例として、ローカルシステム内の玄関子機1と親機3との通話について説明する。玄関子機1から図示しない呼出ボタンによって呼び出しを行うと、呼出操作を検出した玄関子機CPU13は、親機3に対して呼出コマンドを送信する。親機3は親機CPU33で呼出コマンドを受信すると、呼出コマンドと設定記憶部34にある機器情報を照らし合わせ、呼出先が玄関子機1であることを認識する。親機3で通話応答操作を行うと、親機CPU33から玄関子機1に対して、通話応答コマンドを送信するとともに、設定記憶部34から玄関子機1に対応したエコーキャンセラのパラメータを取り出し、エコーキャンセラ35に書きこむとともに、通話路を開成する。また、玄関子機1は親機3からの通話応答コマンドを玄関子機CPU13で受信すると、設定記憶部14から親機3に対応したエコーキャンセラのパラメータを取り出し、エコーキャンセラ15に書きこむとともに、通話路を開成するため、通話が開始される。このとき、マイクゲインについては設置目的に応じたレベルが予め設定されているため、前述した通り固定値として動作する。また、エコーサプレッサの作動条件としても、外部スピーカの有無によって前述の通り作動条件を変化させている。玄関子機1と親機3との通話が開始されると、エコーキャンセラ15とエコーキャンセラ35は通話音声によって学習を開始し、ノイズの除去及び通話の切り替わりをスムーズに行うためにパラメータを調整する。通話終了後は調整されたパラメータを設定記憶部14及び設定記憶部34にそれぞれ書き込むことにより、次回の呼出の際には学習により調整されたパラメータを呼び出すことができる。
【0020】
次にローカルシステム内の室内子機2と親機3との通話を説明する。基本動作は前述した玄関子機1と親機3との通話と同様であるが、室内子機2から呼び出しを行い、親機3で呼出コマンドを受信すると、呼出コマンドから呼び出し機器番号と設定記憶部34にある機器の情報を照らし合わせ、呼出先が室内子機2であることを認識するとともに、室内子機2に外部スピーカが接続されている情報も設定記憶部34に記憶されていることから、外部スピーカに対応したエコーキャンセラのパラメータを取り出し、エコーキャンセラ35に書きこむ。
【0021】
次に、第2の実施例として、親機3と、汎用ネットワークを介した他のローカルシステムの玄関子機1aとの通話について説明する。玄関子機1aから図示しない呼出ボタンによって呼び出しを行うと、呼出操作を検出した玄関子機CPU13は、HUB5、汎用ネットワーク6、HUB5aを介して制御機4aに対して親機3の接続情報を要求して取得する。次に、玄関子機CPU13は、親機3に対して、呼出コマンドとともに、機器情報を呼出コマンドとともに送信する。親機3は親機CPU33で呼出コマンドを受信すると、呼出コマンドから他のローカルシステムの玄関子機1aからの呼出であることを認識する。他のローカルシステムの機器情報は設定記憶部34に記憶されていないため、呼出コマンドとともに送信された機器情報をもとに、呼出先が玄関子機1であることを認識し、対応したエコーキャンセラのパラメータを取り出す。以後の動作については第1の実施例と同様となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
なお、本実施例では、室内子機2は制御機4に接続されているが、これに限らず、HUB5に直接接続してもよい。また、本実施例では、玄関子機、室内子機、親機はローカルシステム内にいずれも1台ずつとして説明したが、それぞれ複数存在しても同様の効果を奏する。なお、玄関子機、室内子機が複数存在する場合には、親機3の設定記憶部34のエコーキャンセラのパラメータは、それぞれの玄関子機、室内子機ごとに記憶されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1、1a 玄関子機
14 設定記憶部
15 エコーキャンセラ
2、2a 室内子機
25 設定記憶部
26 エコーキャンセラ
3、3a 親機
34 設定記憶部
35 エコーキャンセラ
4、4a 制御機
6 汎用ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPプロトコル等の汎用通信プロトコルを用い、インターネット等の汎用ネットワークを介して映像、音声、データ通信を行うことができることを特徴とする、インターホンシステムであって、
学校や会社などの入口や教室などに設置された子機と、前記子機からの呼出に応答するために、職員室や事務所などに設置された親機と、前記子機及び前記親機を制御する制御機を有したインターホンシステムにおいて、
前記子機は当該子機が教室設置か密閉室設置か、外部スピーカは接続されるか、等の設置目的を記憶する記憶部を有し、
前記子機、親機及び制御機は各々エコーキャンセラを搭載しており、前記子機は前記設置目的に主に依存するエコーサプレッサ作動条件、マイクゲイン等の固定パラメータと、前記設置目的以外の室内空間体積等の周辺環境に主に依存する前記エコーキャンセラのフィルタ係数等の可変パラメータを前記記憶部に事前に登録しておき、前記可変パラメータを初期値として順次学習を行うことで、音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去及び通話の切り替わりをスムーズに行えることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記親機は前記子機の設置目的を接続される子機ごとにそれぞれ記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記子機、親機及び制御機は通話相手によってエコーキャンセラの可変パラメータをそれぞれ変更することで、最適な音響エコー及びラインエコーの打ち消し、ノイズの除去及び通話の切り替わりを実現することができることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記子機は、呼出コマンド内に機器の設置目的の情報を組み込こむようにし、前記親機は、受信したコマンドから機器の設置目的の情報を読み込み、どの機器から呼び出しをされたか判断し、エコーキャンセラのパラメータを変更することができることを特徴とする請求項1または請求項3記載のインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−46239(P2013−46239A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182800(P2011−182800)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】