説明

インターホン機器の水抜き構造

【課題】 デザイン性向上のためにスピーカ放音孔の面積を小さくしても、浸入した雨水等を排出させることができ、しかもケース内に水の流路を設ける必要のないインターホン機器の水抜き構造を提供する。
【解決手段】 ケース1の前面にスピーカ11に合わせて形成した開口部11aを設け、開口部11aの前面をスピーカ11から発せられる音を前方に放音させるための縦長の放音孔3を備えたプレート8で閉塞し、プレート8はケース1前面に密着配置されると共に、開口部11aは防水フィルム16が張設されて閉塞され、防水フィルム16とプレート8との間に隙間を設けた。放音孔3の下部は、開口部11aの下端を越える長さを有してケース1前面と放音孔3に重なり部を設け、放音孔3から浸入してプレート8と防水フィルム16の間に滞留した水が一定の量に達したら、自重により放音孔3の下部から流出するよう形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、来訪者が居住者を呼び出すために屋外に設置されたインターホン子機等の雨水にさらされる可能性のあるインターホン機器の水抜き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
来訪者が居住者を呼び出すために屋外に設置されるインターホン子機においては、スピーカやマイクを内蔵したケースには、スピーカの発する拡声音を放音するための放音孔や、マイクが来訪者の音声を集音するための集音孔が設けられている。これらの孔は、表面張力により孔が塞がれないように、また入り込んだ雨水が確実に外部へ流れ出るように工夫が成されている。例えば、集音孔に関しては、縦長に形成した孔の下端に水抜き溝を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、スピーカの放音のために形成された放音孔は、マイク孔に比べて大きく且つ複数形成されるため、例えば特許文献2に記載されているようにケース内側に排水溝を設けて水が溜まるのを防ぎ、ケース下端から流れ出るように構成したものがある。
また放音孔の場合は、水で塞がれるとハウリングが生じたり、適切な音質を確保できないことがあるため、表面張力が働き難いよう個々の孔を大きく形成することで水が溜まらないようにしたり、孔を多数設けることで放音孔全体が塞がれないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−147737号公報
【特許文献2】特開2009−212583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように従来の放音孔は、個々の孔を大きく形成したり、多数の孔により構成したため、インターホン機器のデザイン性が低下していた。また、浸入した水はケース内側を伝って下端から流れ出る構造となっているため、そのための流路空間を確保しなければならず、ケースの構造においても制約があり、デザイン性の低下に繋がるものであった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、デザイン性向上のためにスピーカ放音孔の面積を小さくしても、浸入した雨水等を排出させることができ、しかもケース内に水の流路を設ける必要のないインターホン機器の水抜き構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ケース前面に音声やガイド音を放音する放音部を設けて、ケース内にスピーカを配置したインターホン機器の水抜き構造であって、放音部は、ケース前面にスピーカに合わせて形成した開口部を有し、開口部前面をスピーカから発せられる音を前方に放音させるための縦長の放音孔を備えたプレートで閉塞して構成され、プレートはケース前面に密着配置されると共に、開口部は防水フィルムが張設されて閉塞され、防水フィルムとプレートとの間は、スピーカから発せられた音により防水フィルムが振動するよう隙間が設けられる一方、放音孔の下部は開口部の下端を越える長さを備えてケース前面との重なり部を有し、放音孔から浸入してプレートと防水フィルムの間に滞留した水が一定の量に達したら、自重により放音孔の下部重なり部から前方に流出可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、放音孔から雨水が浸入しても、ケース開口部は防水フィルムで閉塞されているためスピーカが濡れることがなく、浸入した水がインターホン機器に悪影響を及ぼすことがない。そして、プレートと防水フィルムの間に溜まった水は、自重により表面張力に抗して放音孔の下部から外部へ流出するため、別途流路や水抜き孔をケースに設ける必要もない。
よって、放音孔の面積を小さくスリット状に細く形成しても水で塞がるような事態を防ぐことができ、放音孔によりインターホン機器デザインの自由度を広げることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、放音孔の左右壁面同士は、一定の間隔で設けた連結片により連結されてなり、連結片の前後方向の厚みは、プレートの2分の1以下の厚みで形成されると共に、プレートの背面に面一になるよう形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、連結片を設けて放音孔形成部のプレート強度を上げても、連結片の厚みはプレートの略2分の1或いはそれ以下であるし、プレート前面から奥まった部位に形成されるため、表面張力の作用を受け難く、放音孔が塞がれるような事態を防止でき、プレートと防水フィルムの間に溜まった水が、自重により下部放音孔下部から外部に流出させる動作を妨げない。
また、放音を良好に実施するために放音孔をスピーカの径に合わせて長く形成しても、連結片により放音孔は複数に分割されているため異物が入るのを防止でき、スピーカを破損するような事態を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プレートと防水フィルムの間に溜まった水は、自重により表面張力に抗して放音孔の下部から外部へ流出するため、別途水抜き孔を設ける必要がない。よって、放音孔の面積を小さくスリット状に細く形成しても、水で塞がるような事態を防ぐことができ、放音孔によりインターホン機器デザインの自由度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の水抜き構造を採用したインターホン機器の1つである集合玄関機の正面図である。
【図2】A−A線断面説明図である。
【図3】プレートを分離した状態を示し、(a)はプレート単体の正面図、(b)はプレートを外した状態の集合玄関機の正面図である。
【図4】B部拡大説明図であり、プレート背部のケース前面を合わせて示している。
【図5】C部拡大図で放音部の構成を示している。
【図6】放音孔に水が侵入した様子を示す説明図であり、(a)は放音孔を正面からみた図、(b)は図2の一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る水抜き構造を採用したインターホン機器の1つである集合玄関機を示し、図1は正面図、図2はA−A線断面説明図を示している。双方の図において、1は集合玄関機のケース、2はケース1に収納されているマイク(図示せず)が来訪者の音声を集音するための集音孔、3はケース1に収納されているスピーカ11が拡声する音声を放音するための放音孔、4は来訪者を撮像するためのカメラ部、5は操作案内表示等をおこなうモニタ、6は来訪者が訪問先の部屋番号を入力するためのテンキー等を備えた操作部、7は図示しないオートドアの電気錠を解錠するためのキー操作部、8はモニタ5の前面を覆うプレートである。
【0012】
図3はプレート8の説明図であり、(a)はプレート8単体の正面図、(b)はプレート8を取り外した集合玄関機の正面図である。プレート8は合成樹脂で形成され、集音孔2及び放音孔3を備えるのに加え、透明のカメラ窓8a及びモニタ窓8bが形成され、それ以外は不透明に形成されている。不透明とすることで、スピーカ11やカメラ周りを隠し、意匠性を高めている。
尚、図3(b)に示すように、ケース1の放音部にはスピーカ11が設けられ、ケース1にはスピーカ11の径に合わせて円形の開口部11aが形成されている。また、カメラ部4にはカメラ12が設けられ、13はプレート8を接着する接着枠を示している。
【0013】
図4はB部拡大図、図5は図2のC部拡大図であり、放音部の構成を示している。尚、図4はケース1の構成も合わせて示している。
図4に示すように、放音孔3は縦長のスリット状に形成され、全体の長さLはスピーカ11の径L1を越える長さを有している。放音孔3の内部は、連結片15が等間隔で複数設けられ、左右壁面が連結されている。この連結片15は、図5に示すようにプレート8の背面とは面一に形成され、プレート前面に対して1段奥まった部位に形成されている。放音孔3の厚み(奥行き)に対して略2分の1と薄く形成されている。
また、図5に示すように、スピーカ11はスピーカ11を放音孔3から浸入する雨水から保護するための防水フィルム16で前面が覆われ、リング状のゴム製パッキン17を介してケース1所定部位の背面に密着するよう取り付けられている。パッキン17とケース1の厚みにより、プレート8と防水フィルム16との間には一定の隙間が形成され、スピーカ11から発せられた音により防水フィルム16が振動して、防水フィルム16を介して前方に拡声音が放音されるよう構成されている。
【0014】
この放音部の水抜き構造を説明すると、まず放音孔3は、図4に示すようにスピーカ11の径L1を越えた長さを有し、下部がケース前面に長さL2に亘り重なっている。具体的な数値を示すと、例えば、L1=46mm、L2=10mm、放音孔3の幅T=1.2mm、プレート8の厚みD=2mm、連結片15の厚み=1mm(D/2)で形成されている。
【0015】
図6は、こうして形成された放音孔3に水が入り込んだ様子を示し、(a)は正面説明図、(b)は縦断面説明図である。入り込んだ水Wをハッチングで示している。図6に示すように、水が放音孔3から浸入するとスピーカ11の前面を覆っている防水フィルム16とプレート8の間に溜まる。放音孔3は比較的小さいため、表面張力により一定水位までは水が流れ出ることなく滞留する。
尚、溜まった水はパッキン17の作用により、スピーカ11の周囲からケース1内に入り込むことがない。
【0016】
そして、一定水位を超えると、表面張力と水の重さとのバランスが崩れ、水が放音孔3の最下部から流れ出る。これは、放音孔3の下部を開口部11aを越える部位まで形成することで、放音孔3の下部は背部がケース1に接した形となるため、上部の背部に空間を備えた部位に比べて表面張力が小さくなるためで、一定水位以上に水が溜まると図6に示すように放音孔3の下端から前方に流れ出ることになる。こうして、いったん水が排出され始めると、それにひっぱられるように全ての水が流れ出る。
【0017】
このように、放音孔3から雨水が浸入しても、ケース1のスピーカ11が組み付けられた開口部11aは防水フィルム16で閉塞されているため、スピーカ11が濡れることがなく、浸入した水がインターホン機器に悪影響を及ぼすことがない。そして、プレート8と防水フィルム16の間に溜まった水は、自重により表面張力に抗して放音孔3の下部から外部へ流出されるため、別途流路や水抜き孔を設ける必要もない。
よって、放音孔3の面積を小さくスリット状に細く形成しても、全体が水で塞がるような事態を防ぐことができ、放音孔3によりインターホン機器デザインの自由度を広げることができる。尚、放音孔3は、1本のスリットだけでもスピーカ11の径と同程度の長さとすることで良好に放音できる。
また、連結片15を設けて放音孔3形成部のプレート8の強度を上げても、連結片15は厚みがプレート8の略2分の1であるし、プレート8前面から奥まった部位に形成されるため、表面張力の作用で放音孔3全体が塞がれるような事態を防止でき、プレート8と防水フィルム16の間に溜まった水が、自重により放音孔3の下部から外部に流出させる動作を妨げない。
更に、放音を良好に実施するために放音孔3をスピーカ11の径に合わせて長く形成しても、連結片15により放音孔3は複数に分割されているため、異物が入るのを防止できスピーカ11を破損するような事態を防止できる。
【0018】
尚、上記実施形態は集合玄関機の水抜き構造を説明したが、戸建住宅において屋外に設置される玄関子機においてもこの水抜き構造は良好に適用できるし、水が掛かりやすい環境に設置されるような居室親機に対しても適用できるものである。
また、連結片15の厚みをプレート8の厚みの2分の1としているが、薄ければ薄いほど表面張力を削減でき好ましい。
【符号の説明】
【0019】
1・・ケース、3・・放音孔、8・・プレート、11・・スピーカ、11a・・開口部、15・・連結片、16・・防水フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース前面に音声やガイド音を放音する放音部を設けて、ケース内にスピーカを配置したインターホン機器の水抜き構造であって、
前記放音部は、ケース前面に前記スピーカに合わせて形成した開口部を有し、前記開口部前面を前記スピーカから発せられる音を前方に放音させるための縦長の放音孔を備えたプレートで閉塞して構成され、
前記プレートは前記ケース前面に密着配置されると共に、前記開口部は防水フィルムが張設されて閉塞され、
当該防水フィルムと前記プレートとの間は、前記スピーカから発せられた音により前記防水フィルムが振動するよう隙間が設けられる一方、
前記放音孔の下部は前記開口部の下端を越える長さを備えて前記ケース前面との重なり部を有し、
前記放音孔から浸入して前記プレートと前記防水フィルムの間に滞留した水が一定の量に達したら、自重により前記放音孔の下部重なり部から前方に流出可能としたことを特徴とするインターホン機器の水抜き構造。
【請求項2】
前記放音孔の左右壁面同士は、一定の間隔で設けた連結片により連結されてなり、
前記連結片の前後方向の厚みは、前記プレートの2分の1以下の厚みで形成されると共に、前記プレートの背面に面一になるよう形成されて成ることを特徴とする請求項1記載のインターホン機器の水抜き構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−70262(P2013−70262A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207715(P2011−207715)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】