説明

インバータ制御装置

【課題】効率のよいモータの運転を可能とするインバータ制御装置を提供する。
【解決手段】本発明のインバータ制御装置は、インバータ1からモータMに供給される3相電流を検出する電流検出器2と、磁化電流と第1目標電流値との偏差をゼロとするための第1電圧指令値を演算する第1電流制御部7と、トルク電流と第2目標電流値との偏差をゼロとするための第2電圧指令値を演算する第2電流制御部8と、第1電圧指令値をゼロとするための磁化電流調整ゲイン値を生成するゲイン生成部11と、磁化電流調整ゲイン値と第2電圧指令値からモータの推定角周波数を算出する乗算器12と、推定角周波数と所定の目標角周波数との偏差をゼロとするための第2目標電流値を演算する速度制御部14と、磁化電流調整ゲイン値と目標ゲイン値との偏差をゼロとするための第1目標電流値を演算するゲイン制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置センサや速度センサを用いることなくモータの回転を効率よく制御するためのインバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同期モータや誘導モータなどの交流モータは、固定子に回転磁界を発生させることにより、ロータを回転させる。ロータに永久磁石を備える永久磁石同期モータは、ロータの永久磁石が発生する磁束と、固定子が発生する回転磁界とのなす角度が90度のときに、最も大きいトルクを発生する。したがって、ロータを効率よく回転させるためには、ロータの磁極位置を検出することが必要とされる。
【0003】
一方、誘導モータは、ロータに永久磁石を使用せず、その原理上、ロータの磁極位置を検出することなく回転させることが可能である。しかしながら、最近では、トルク制御に対する応答性を高めるために、ロータの回転速度を検出する速度センサを用いたベクトル制御技術が開発されている。
【0004】
ロータの磁極位置や回転速度の検出には、ロータリエンコーダ、ホール素子、レゾルバなどの位置センサや速度センサが用いられている。しかしながら、これらのセンサは、一般に高価であり、モータおよびインバータを含む装置全体が高価になってしまう。また、高温下での運転など、モータの使用環境によってはセンサを設置できない場合もある。そこで、位置センサや速度センサを用いることなく、モータを運転する種々のセンサレスモータ駆動方法が提案されている。
【0005】
特許文献1は、インバータからモータに流れる電流に基づき、ロータの位置を検出することなくインバータを制御するインバータ制御装置を開示する。図1は特許文献1に記載された従来のセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。インバータ1からモータMに供給される電流Iu,Iv、Iwは、電流検出器2によって検出され、検出された3相の電流量Iu,Iv、Iwは3相−2相座標変換部5に送られる。
【0006】
この3相−2相座標変換部5では、電流量Iu,Iv、Iwは、3相固定座標系上に電流ベクトルとして表され、これらの電流ベクトルIu,Iv、Iwはα−β座標系(2相固定座標系)上の電流ベクトルIα,Iβに変換される(図2参照)。α−β座標系のα軸はu相の方向と一致し、β軸はα軸と直交する。この3相−2相変換は、既知の公式を用いて実行される。
【0007】
さらに、3相−2相座標変換部5は、電流ベクトルIα,Iβを、推定回転角度θを用いてγ−δ座標系(2相回転座標系)上の電流ベクトルIγ,Iδに変換する(図3参照)。γ−δ座標系のγ軸は、モータMのロータ位置から相差角(後述する)だけ進んだ位相に置かれ、δ軸はγ軸に直交するように置かれる。電流ベクトルIδは、インバータ1の出力電圧と同じ位相を持った有効電流であり、電流ベクトルIγは、インバータ1の出力電圧の位相から90度遅れた位相を持つ無効成分電流である。上記推定回転角度θは、u相からγ軸までの位相差である。図3に示す固定座標系から回転座標系への変換は、既知の公式を用いて実行される。このように固定座標系を回転座標系に変換することにより、ロータから見たときの交流電流を直流電流として取り扱うことができる。
【0008】
3相−2相座標変換部5は、電流量としての値Iγ,Iδを、それぞれ第1電流制御部7および第2電流制御部8に出力する。第1電流制御部7は、電流量Iγと、目標無効成分電流Iγ*との偏差がゼロとなるようにインバータ1への電圧指令値Vγを生成する第2電流制御部8は、電流量Iδと、速度制御部からの目標電流値Iδとの偏差がゼロとなるようにインバータ1への電圧指令値Vδを生成する。
【0009】
ゲイン生成部11は、電圧指令値Vγをゼロに導くように比例ゲインKgを制御する。乗算器12では、ゲイン生成部11によって得られた比例ゲインKgが、第2電流制御部8からの電圧指令値Vδと乗算され、これによりロータの推定角周波数(推定回転速度)ωeが求められる。この推定角周波数ωeは速度制御部14に送られる。速度制御部14は、推定角周波数ωeと所定の目標角周波数(目標速度)ω[rad/sec]との偏差がゼロとなるような目標トルク電流値Iδを生成し、これを第2電流制御部8に送る。
【0010】
上記推定角周波数ωeは、積分器16にも送られ、ここで推定角周波数ωeを所定の周期T[sec]で積分することにより、推定回転角度(推定位相差)θが算出される。この推定回転角度は、上述した3相−2相座標変換部5と、2相−3相座標変換部6に送られる。2相−3相座標変換部6は、第2電流制御部8および第1電流制御部7から出力された電圧指令値Vγ,Vδを上記推定回転角度θを用いてα−β座標系上の電圧ベクトルVα,Vβに変換し、さらに3相固定座標系上の3相電圧ベクトルVu,Vv,Vwに変換する。これらの変換は、既知の公式を用いて実行される。
【0011】
2相−3相座標変換部6は、電圧指令値Vu,Vv,Vwをインバータ1に出力する。インバータ1は、PWM(Pulse Width Modulation)方式の電圧形インバータ1である。インバータ1は、パワートランジスタ、パワーMOS、IGBTなどの電力スイッチング素子を有する。これらの電力スイッチング素子は、例えば6アーム型のブリッジ回路を構成し、電力スイッチング素子をパルス幅変調制御によりスイッチングすることで、電源(図示せず)からの直流電力を任意の周波数および電圧を有する交流電力に変換する。インバータ1は、このようにして電圧指令値Vu,Vv,Vwに対応する3相電圧を生成する。生成された3相電圧はモータMの固定子巻線に印加される。
【0012】
次に、図1に示すインバータ制御装置を用いて永久磁石同期モータを制御するセンサレスベクトル制御について説明する。図4は、電流ベクトルIγ,Iδと、電圧指令値Vγ,Vδと、誘起電圧との関係を示す図である。図4では、γ−δ座標系とd−q座標系とが共存している。d−q座標系は、モータMのロータの向きに従って設定された直交座標系である。より具体的には、d軸は、ロータの磁束方向を示し、q軸はd軸と直交する。したがって、d−q座標系は、モータ軸ということができ、γ−δ座標系は、インバータ軸ということができる。記号Eaは、ロータの回転によって固定子巻線に発生する誘起電圧である。この誘起電圧Eaは、q軸方向に発生する。相差角(負荷角)βは、インバータ1の出力電圧(モータMに印加される電圧)と、誘起電圧Eaとの位相差である。
【0013】
上述した電圧指令値Vγ,Vδは、次の式で表される。
Vγ=RIγ+L(dIγ/dt)−ωLIδ+Easinβ・・・(1)
Vδ=RIδ+L(dIδ/dt)+ωLIγ+Eacosβ・・・(2)
ここで、Rはモータ固有の内部抵抗であり、Lはモータ固有のインダクタンスである。
【0014】
定常状態では、上記式(1)および(2)の微分項はゼロとなるので、次の式が得られる。
Vγ=RIγ−ωLIδ+Easinβ・・・(3)
Vδ=RIδ+ωLIγ+Eacosβ・・・(4)
【0015】
相差角βがゼロに近似するとき、上記式(3)および(4)は次のように表される。
Vγ=RIγ−ωLIδ・・・(5)
Vδ=RIδ+ωLIγ+Ea・・・(6)
【0016】
上述したように、VγおよびIγはゼロとなるように制御されるので、上記式(5)および(6)から、次の式が導かれる。
Vδ=RIδ+Ea・・・(7)
【0017】
さらに、モータMの内部抵抗Rによる電圧降下をゼロとすると、式(7)は次のように表される。
Vδ=Ea・・・(8)
ここで、誘起電圧Eaは、角周波数とロータの磁束との積、すなわちEa=ωψであるので、式(8)から次の式が導かれる。
ω=Vδ/ψ・・・(9)
ここで、1/ψをKgと置くと、
ω=VδKg・・・(10)
【0018】
このように、β、Iγをゼロと置くと、γ−δ座標系とd−q座標系とが一致し、さらに電圧指令値(インバータ1の出力電圧)Vδと電流(インバータ1の出力電流)Iδの位相が一致する。その結果、最終的に図5に示すベクトル図が得られる。このように、ロータは、出力電圧と出力電流の位相が一致した状態で同期回転する。
【0019】
ところが、ロータに加わる負荷の変動などに起因して、ロータの実際の位相がδ軸に対してずれることがある。図6(a)はロータの位相がδ軸に対して遅れている状態を示し、図6(b)はロータの位相がδ軸と一致している状態を示し、図6(c)はロータの位相がδ軸に対して進んでいる状態を示す。図6(a)に示す状態では、Vγ(>0)およびIγ(>0)が発生し、図6(c)に示す状態では、Vγ(<0)およびIγ(<0)が発生する。これに対し、図6(b)に示す状態では、VγおよびIγは発生しない。したがって、ゲイン生成部11によって電圧指令値Vγをゼロに導くように回転速度を制御することにより、ロータの位相および回転速度を推定することができる。
【0020】
しかしながら、このセンサレスベクトル制御には次のような問題がある。図7は永久磁石同期モータが理想状態で運転している状態を示している。この理想状態では、電流Iの方向は、ロータの磁束方向に対して垂直な方向であり、この状態のときにロータのトルクが最大となる。図7に示すように、電流Iの位相は、電圧Vδの位相よりも相差角βだけ遅れている。これは、モータMのインダクタンス成分に起因する位相遅れである。上述のセンサレスベクトル制御では、相差角βがゼロであると仮定して制御を行っているが、実際には相差角βは必ず存在する。さらに上述のセンサレスベクトル制御では、電流Iγがゼロに制御されるため、電流Iと電圧Vδとは同位相となる。したがって、図5のベクトル図は、実際には図8に示すベクトル図として表される。
【0021】
図8から分かるように、実際の電流Iは、d軸に沿った電流成分Idと、q軸に沿った電流成分Iqとに分解される。このうち、電流成分Idは、モータMの磁束の向きに平行に流れる電流であり、マイナスの電流である。つまり、電流Iと電圧Vδとが同位相となるように電流Iγをゼロに制御すると、実際にはロータの磁束を打ち消す方向に電流Idを流すことになる。このため、ロータの磁束が弱まることによりトルクが弱まり、ロータと回転磁界との同期が外れやすくなる。さらに、図8に示す電流I’と同じ電流(=トルク)を得るためには、電流Iを大きくする必要がある。つまり、同じ電流(=トルク)を得るためには、電流I’よりも電流Iの方が大きなインバータ出力電流を必要とする。このように、インバータ軸とモータ軸とを同位相としてしまうと、結果としてモータおよびインバータの効率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第4022630号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたもので、効率のよいモータの運転を可能とするインバータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一態様は、モータを駆動するためのインバータを制御するインバータ制御装置であって、前記インバータから前記モータに供給される3相電流を検出する電流検出器と、電流検出器で検出された3相電流を回転座標系の磁化電流およびトルク電流に変換する3相−2相座標変換部と、前記磁化電流と第1目標電流値との偏差をゼロとするための第1電圧指令値を演算する第1電流制御部と、前記トルク電流と第2目標電流値との偏差をゼロとするための第2電圧指令値を演算する第2電流制御部と、前記第1および第2電圧指令値を3相固定座標系上の3相電圧指令値に変換する2相−3相座標変換部と、前記第1電圧指令値をゼロとするための磁化電流調整ゲイン値を生成するゲイン生成部と、前記磁化電流調整ゲイン値と前記第2電圧指令値から前記モータの推定角周波数を算出する乗算器と、前記推定角周波数と所定の目標角周波数との偏差をゼロとするための前記第2目標電流値を演算する速度制御部と、前記磁化電流調整ゲイン値と目標ゲイン値との偏差をゼロとするための前記第1目標電流値を演算するゲイン制御部とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の好ましい態様は、前記磁化電流調整ゲイン値は、前記モータの角周波数と前記モータに印加される電圧から決定される変数であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記目標ゲイン値は、前記モータの電圧−周波数特性から決定される値であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記目標ゲイン値は、前記モータの定格電圧と前記モータの定格周波数とから算出されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記目標ゲイン値は、前記モータに接続された負荷の特性より予め算出された値であることを特徴とする。
【0026】
本発明の好ましい態様は、前記インバータへの出力電圧指令値を算出する出力電圧算出部と、前記出力電圧指令値と所定の出力電圧上限値との偏差をゼロとするための第1目標ゲイン値を算出する目標ゲイン算出部と、前記モータの指令電圧と前記モータの指令周波数とから予め算出された第2目標ゲイン値と、前記第1目標ゲイン値とを比較して、大きい方の値を前記目標ゲイン値として前記ゲイン制御部に出力する比較器とをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記所定の出力電圧上限値は、前記モータの定格電圧および前記インバータの上限出力電圧のいずれか一方であることを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい態様は、前記ゲイン制御部により演算された前記第1目標電流値の下限値を規定する下限リミッタをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ゲイン生成部によって生成された前記磁化電流調整ゲイン値が所定のしきい値に達したときに脱調が起きたと判定する脱調判定部をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ゲイン制御部により演算された前記第1目標電流値と、所定の目標励磁電流値とを比較して、小さい方の値を選択する比較器をさらに備え、前記第1電流制御部は、前記磁化電流と、前記比較器により選択された前記第1目標電流値または前記目標励磁電流値との偏差をゼロとするための前記第1電圧指令値を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、磁化電流をゼロに制御せず、インバータの出力電圧がモータの回転速度に見合った最適値となるように制御される。したがって、効率のよいモータ運転が可能となる。
また、本発明によれば、温度によって変動するモータの巻線抵抗値や負荷によって変動するモータのインダクタンス値などのモータ固有のパラメータを用いていないので、モータ駆動中に運転特性が変化しない。さらに、モータ固有のパラメータを用いていないので、これらのパラメータを予め測定する必要がなく、また運転状態によってパラメータを変更する必要もない。
また、本発明によれば、磁化電流は、同期モータの場合には磁束軸電流として、誘導モータの場合には励磁電流としてモータに流すことができるため、モータの種類を選ばずにインバータを制御することができる。
また、本発明によれば、モータを可変速駆動する際に、全可変速範囲において出力電圧を常時監視して、モータの周波数に見合った出力電圧となるようにインバータを制御しているので、安定したモータ駆動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。
【図2】3相固定座標系上の電流ベクトルを2相固定座標系上の電流ベクトルに変換する様子を説明するための図である。
【図3】2相固定座標系上の電流ベクトルを2相回転座標系上の電流ベクトルに変換する様子を説明するための図である。
【図4】電流ベクトルIγ,Iδと、電圧指令値Vγ,Vδと、誘起電圧との関係を示す図である。
【図5】従来のベクトル制御方法によって生成されるベクトルを示す図である。
【図6】図6(a)はロータの位相がδ軸に対して遅れている状態を示し、図6(b)はロータの位相がδ軸と同期している状態を示し、図6(c)はロータの位相がδ軸に対して進んでいる状態を示す図である。
【図7】永久磁石同期モータが理想状態で運転している状態を示す図である。
【図8】電流値Iγがゼロとなるように制御したときのモータおよびインバータを含めた実際のベクトルを表した図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。
【図10】図10(a)および図10(b)は、磁化電流値Iγを制御することによって、出力電圧Vδの大きさが変化する様子を示した図である。
【図11】磁化電流調整ゲイン値Pvfが理想値から外れた場合のモータ特性の変化を示すグラフである。
【図12】本発明の他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。本明細書および図面では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。本実施形態に係るインバータ制御装置のベクトル制御は、図7に示すベクトル図に従って行われる。
【0031】
図9に示すように、本実施形態に係るインバータ制御装置は、インバータ1からモータMに供給される3相電流Iu,Iv、Iwを検出する電流検出器(例えば、DC Current Transformerやシャント抵抗)2と、電流検出器2で検出された3相電流Iu,Iv、Iwを回転座標系の電流ベクトルIγ,Iδに変換する3相−2相座標変換部5と、磁化電流である電流量Iγと目標電流値Iγ*との偏差をゼロとするための電圧指令値Vγを演算する第1電流制御部7と、有効電流(トルク電流)である電流量Iδと目標電流値Iδ*との偏差をゼロとするための電圧指令値Vδを演算する第2電流制御部8と、第2電流制御部8および第1電流制御部7から出力された電圧指令値Vγ,Vδを3相固定座標系上の3相電圧ベクトル(3相電圧指令値)Vu,Vv,Vwに変換する2相−3相座標変換部6とを備えている。第1電流制御部7および第2電流制御部8は、それぞれPI制御部を有している。ここで、磁化電流は、永久磁石型同期モータの場合は磁束軸電流を意味し、誘導モータの場合は励磁電流を意味する。
【0032】
インバータ制御装置は、さらに、電圧指令値Vγをゼロとするための磁化電流調整ゲイン値Pvfを生成するゲイン生成部11を有している。ゲイン生成部11には、目標磁化電圧Vγ*としてゼロの値が入力される。磁化電流調整ゲイン値Pvfは、モータMの電圧−周波数特性から導かれる変数であり、モータMの角周波数とモータMに印加される電圧(すなわち、電圧指令値Vδ)との比(Pvf=ω/Vδ)として表される。
【0033】
モータの電圧−周波数特性とは、例えば、モータの定格電圧とモータの定格周波数との関係を意味する。モータが定格周波数で回転しているときに定格電圧がモータに印加されると、モータの運転効率が最もよくなる。
【0034】
このモータ駆動において、モータMの周波数とモータMに印加される電圧との比が、常に磁化電流調整ゲイン値Pvfの理論値(理想値)を維持するように電流量Iγを制御すれば、モータMを効率よく運転させることができる。したがって、磁化電流調整ゲイン値Pvfの理論値は、モータMが最も効率よく運転するときの周波数と電圧との関係を示すゲイン値ということができる。
【0035】
本実施形態に係るインバータ制御装置は、さらに、ゲイン生成部11から出力された磁化電流調整ゲイン値Pvfに、第2電流制御部8からの電圧指令値Vδを掛けてロータの推定回転速度ω[rad/sec]を出力する乗算器12と、推定回転速度ωeと目標速度ω*との偏差をゼロとするための目標トルク電流値Iδ*を演算する速度制御部14と、推定回転速度ωeを所定の周期T[sec]で積分することにより推定回転角度θを算出する積分器16と、ゲイン生成部11から出力された磁化電流調整ゲイン値Pvfと、目標ゲイン値Pvf*との偏差をゼロとするための目標電流値(目標磁化電流値)Iγ*を算出するゲイン制御部20とを備えている。
【0036】
ゲイン制御部20に入力される目標ゲイン値Pvf*は、モータMに接続される負荷特性におけるモータMの電圧−周波数特性が既知の場合、その電圧−周波数特性から目標ゲイン値Pvf*が決定される。しかし、モータMに接続される負荷が未知の場合、負荷特性に対する目標ゲイン値Pvf*が決定できない。よって、負荷特性が未知の場合は、モータMの電圧−周波数特性から目標ゲイン値Pvf*を決定する。
【0037】
本インバータ制御装置では、温度によって変動するモータMの巻線抵抗値や負荷によって変動するモータMのインダクタンス値などのモータ固有のパラメータを必要とせず、モータMに表示されている定格電圧と定格周波数のみから目標ゲイン値Pvf*を決定する。具体的には、モータMの定格電圧をVconst、モータMの定格周波数をFconstとしたとき、目標ゲイン値Pvf*は、式(11)のように求められる。
Pvf*=2π×Fconst/Vconst・・・(11)
【0038】
ゲイン生成部11は、PI制御またはPLL(Phase-Locked Loop)の手法を用いて、電圧指令値Vγをゼロとするための磁化電流調整ゲイン値Pvfを生成する。例えば、上述の定格電圧および定格周波数を持つモータMの場合、インバータ1の出力電流Iの位相がq軸と一致しているとき(すなわちId=0のとき)、または電圧の理想値と実際の出力電圧が一致しているときは、ゲイン生成部11から出力される磁化電流調整ゲイン値Pvfは理論値(理想値)である。インバータ1の出力電流Iの位相がq軸より遅れているとき(すなわちId>0のとき)、または電圧の理想値よりも実際の出力電圧が大きいときは、ゲイン生成部11から出力される磁化電流調整ゲイン値Pvfは理論値(理想値)よりも小さくなる。この場合、ゲイン制御部20は、目標ゲイン値Pvf*と磁化電流調整ゲイン値Pvfとの偏差がゼロとなるように目標電流値Iγ*を算出する。その結果、目標電流値Iγ*が小さくなり、インバータ1の出力電圧が小さくなる。インバータ1の出力電流Iの位相がq軸より進んでいるとき(すなわちId<0のとき)、または電圧の理想値よりも実際の出力電圧が小さいときは、ゲイン生成部11から出力される磁化電流調整ゲイン値Pvfは理論値(理想値)よりも大きくなる。この場合、ゲイン制御部20は、目標ゲイン値Pvf*と磁化電流調整ゲイン値Pvfとの偏差がゼロとなるように目標電流値Iγ*を算出する。その結果、目標電流値Iγ*が大きくなり、インバータ1の出力電圧が大きくなる。
【0039】
図10(a)および図10(b)は、磁化電流値Iγを制御することによって、電圧指令値Vδの大きさが変化する様子を示した図である。図10(a)では、磁化電流値Iγが適当に指令されている。このため、インバータ出力電流Iは、ロータに対して垂直に流れている。すなわち、モータ軸の推定が的確にできており、モータMの電圧−周波数特性に従って電圧指令値Vδが出力される。一方、図10(b)に示すように、磁化電流値Iγが適当に指令されていないとき、インバータ出力電流I’はロータに対して垂直に流れず、トルク電流Iqと磁化電流Idとに分割されてしまう。すなわち、モータ軸の推定にずれが生じ、ロータのd軸にマイナス方向の電流が流れ、−ωLIdの成分が発生する。その結果、モータMの電圧−周波数特性から決定される理想電圧よりも小さい電圧指令値Vδが出力される。
【0040】
具体的には、モータ軸の推定にずれがあるとき、次の式(13)の第3項ωLIdがマイナス方向(すなわちId<0)になるため、電圧指令値Vδが小さくなる。
Vγ=RId+L(dId/dt)−ωLIq+Easinβ・・・(12)
Vδ=RIq+L(dIq/dt)+ωLId+Eacosβ・・・(13)
つまり、磁化電流調整ゲイン値PvfがモータMの電圧−周波数特性より予め算出された目標ゲイン値Pvf*になるように、磁化電流値Iγを制御することによって、モータ軸であるd軸およびq軸を推定することができる。したがって、モータMを効率よく駆動させることができる。
【0041】
ゲイン生成部11から出力された磁化電流調整ゲイン値Pvfと、目標ゲイン値Pvf*との偏差がゼロになるように目標電流値Iγ*を制御すると、電圧指令値Vγはゼロに収束する。すなわち、モータMがある回転速度で回転しているときのインバータ1の出力電圧を、モータMの電圧−周波数特性から決定される電圧の理想値に一致させるように磁化電流値Iγが制御される。よって、モータMの回転速度に見合った最も効率のよい電圧指令値がインバータ1に入力され、インバータ1はモータMを効率よく駆動させることができる。
【0042】
なお、上記目標ゲイン値Pvf*は、目標ゲイン入力部31からゲイン制御部20に発信される所定の値である。上記目標速度ω*は、目標速度入力部32から速度制御部14に発信される所定の値である。上記目標磁化電圧Vγ*は、目標磁化電圧入力部33からゲイン生成部11に発信される所定の値(本実施形態ではゼロ)である。目標ゲイン入力部31、目標速度入力部32、目標磁化電圧入力部33は、上記所定の値を記憶する記憶部をそれぞれ有してもよく、また、モータMの運転状態に合わせて演算により求めてもよい。
【0043】
図11は、モータMの指令速度がFdemandであるときの、磁化電流調整ゲイン値Pvfが理想値から外れた場合のモータ特性の変化を示すグラフである。モータMに接続された負荷特性が未知で、モータMの定格電圧をVconst、定格周波数をFconstとしたとき、目標ゲイン値Pvf*は上述の式(11)より算出される。ここで、式(11)より算出された理想目標ゲイン値をPvf*Aとして図11中に示す。また、図11中のPvf_Bは、ゲイン生成部11から出力された磁化電流調整ゲイン値Pvfが理想目標ゲイン値Pvf*Aよりも高い場合を示している。つまり、Pvf_Bの場合は、モータMの電圧−周波数特性における理想電圧指令値よりも低い電圧指令値Vδがインバータ1に出力されていることを意味する。したがって、ゲイン制御部20が磁化電流調整ゲイン値Pvfを理想目標ゲイン値Pvf*Aに近づけるために、磁化電流値Iγを大きくするように制御することにより、電圧指令値Vδが高くなる。一方、図11中のPvf_Cは、ゲイン生成部11から出力された磁化電流調整ゲイン値Pvfが理想目標ゲイン値Pvf*Aよりも低い場合を示している。つまり、Pvf_Cの場合は、モータMの電圧−周波数特性における理想電圧指令値よりも高い電圧指令値Vδがインバータ1に出力されていることを意味する。したがって、ゲイン制御部20が磁化電流調整ゲイン値Pvfを理想目標ゲイン値Pvf*Aに近づけるために、磁化電流値Iγを小さくするように制御することにより、電圧指令値Vδが低くなる。このように、モータMの特性に従って、目標速度に見合った電圧指令値Vδが得られるので、モータMを効率よく運転することが可能となる。
【0044】
第1電流制御部7および第2電流制御部8によって算出された電圧指令値Vγ,Vδは、2相−3相座標変換部6に送られ、ここで、電圧指令値Vγ,Vδは3相の電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換される。2相−3相座標変換部6は、電圧指令値Vu,Vv,Vwをインバータ1に出力する。インバータ1は、PWM(Pulse Width Modulation)方式の電圧形インバータ1である。インバータ1は、直流電源(図示せず)からの直流電圧をスイッチング素子のON−OFF動作によりパルス電圧に変換し、電圧指令値Vu,Vv,Vwに対応する3相電圧を生成する。生成された3相電圧はモータMの固定子巻線に印加される。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態について図12を参照して説明する。図12は、本発明の他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0046】
モータMを高速で回転させる必要がある場合、モータMの端子電圧(すなわち、モータMの誘起電圧)が上がってしまうため、インバータ制御装置から出力される電圧指令値がモータMの定格電圧またはインバータ1に予め設定されている上限出力電圧を超える場合がある。そこで、本実施形態に係るインバータ制御装置は、モータMの定格電圧またはインバータ1の上限出力電圧を超えるような電圧指令値が算出された場合に、モータMの端子電圧がモータMの定格電圧またはインバータ1に設定された上限出力電圧以下になるように目標電流値Iγ*を制御する。
【0047】
図12に示すように、本実施形態に係るインバータ制御装置は、電圧指令値Vγと電圧指令値Vδとからインバータ1への出力電圧指令値Voutを算出する出力電圧算出部22と、出力電圧指令値Voutと予め設定された出力電圧上限値との偏差をゼロとするための第1目標ゲイン値Pvf*1を算出する目標ゲイン算出部24と、モータMの指令電圧および指令周波数(例えば、定格電圧および定格周波数)から予め算出された第2目標ゲイン値(定格ゲイン値)Pvf*2と目標ゲイン算出部24によって算出された第1目標ゲイン値Pvf*1とを比較して、大きい方をゲイン制御部20の目標ゲイン値Pvf*として選択する比較器23とをさらに備えている。
【0048】
出力電圧算出部22は、次の式から出力電圧指令値Voutを算出する。
Vout=(Vγ+Vδ1/2
なお、出力電圧算出部22は、回転座標上の電圧指令値Vγ,Vδに限らず、固定座標上の電圧指令値から出力電圧指令値Voutを算出してもよく、パルストランスなどのハードウェアを用いて出力電圧指令値Voutを算出してもよい。
【0049】
目標ゲイン算出部24に入力される所定の出力電圧上限値とは、モータMの定格電圧およびインバータ1に設定された上限出力電圧のうち小さい方の値である。比較器23で選択された目標ゲイン値Pvf*は、上述したゲイン制御部20に入力される。ゲイン制御部20は、比較器23を経由して入力された目標ゲイン値Pvf*と、ゲイン生成部11から出力された磁化電流調整ゲイン値Pvfとの偏差がゼロになるように目標電流値Iγ*を制御する。
【0050】
出力電圧算出部22により算出された出力電圧指令値VoutがモータMの定格電圧またはインバータ1の上限出力電圧を上回ったときは、比較器23は第1目標ゲイン値Pvf*1をゲイン制御部20に出力する。したがって、ゲイン制御部20の目標ゲイン値Pvf*が引き上げられる。その結果、モータMの高速回転を許容しつつ、インバータ1の出力電圧が上記出力電圧上限値以下に維持される。このように、本実施形態によれば、モータMを高速で回転させる場合であっても、目標ゲイン値Pvf*を制御することにより、モータMの端子電圧を所定の上限値以下に維持することができる。
【0051】
なお、上記出力電圧上限値は、出力電圧上限値入力部34から目標ゲイン算出部24に発信される所定の値である。上記第2目標ゲイン値Pvf*2は、目標ゲイン入力部35から比較器23に発信される所定の値である。出力電圧上限値入力部34および目標ゲイン入力部35は、上記所定の値を記憶する記憶部をそれぞれ有してもよく、また、モータMの運転状態に合わせて演算により求めてもよい。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態について図13を参照して説明する。図13は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、図9に示す上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0053】
図13に示すように、ゲイン制御部20と第1電流制御部7との間には、下限リミッタ25が設けられている。この下限リミッタ25は、ゲイン制御部20からの目標電流値Iγ*の下限値を規定する。この下限リミッタ25を設けることにより、下限値以上の磁化電流Iγが常に流れることになる。その結果、d軸方向の電流ベクトルIdが常に存在するので、低速域などの電流が小さい領域においても、ロータの位置が推定しやすくなる。したがって、低速域での制御性が良くなる。
【0054】
なお、上記下限値は、下限値入力部38から下限リミッタ25に発信される所定の値である。下限値入力部38は、上記所定の値を記憶する記憶部を有してもよく、また、モータMの運転状態に合わせて演算により求めてもよい。
【0055】
次に、本発明の他の実施形態について図14を参照して説明する。図14は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、図9に示す上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0056】
図14に示すように、本実施形態に係るインバータ制御装置は、ゲイン生成部11に接続された脱調判定部27をさらに備えている。この脱調判定部27は、ゲイン生成部11によって生成された磁化電流調整ゲイン値Pvfが所定のしきい値に達したことを検知することにより、ロータの回転速度と固定子が発生する回転磁界の回転速度との同期が外れたことを判定する。脱調が起きたと判定されたときは、モータMの運転が停止される。したがって、モータMの脱調により発生する異常電流が流れることに起因するインバータ1の破壊およびモータMの異常動作を防止することができる。
【0057】
なお、上記しきい値は、しきい値入力部39から脱調判定部27に発信される所定の値である。しきい値入力部39は、上記所定の値を記憶する記憶部を有してもよく、また、モータMの運転状態に合わせて演算により求めてもよい。
【0058】
次に、本発明の他の実施形態について図15を参照して説明する。図15は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置を示すブロック図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、図9に示す上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0059】
上述した実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置は、同期モータおよび誘導モータのいずれの駆動にも適用できるが、本実施形態に係るセンサレス型インバータ制御装置は、特に誘導モータの駆動に好適に適用することができる。誘導モータを駆動する場合、励磁電流をモータに流さなければならない。そこで、目標電流値iγ*をゼロよりも大きい値に設定することにより、誘導モータを駆動する。
【0060】
図15に示すように、ゲイン制御部20と第1電流制御部7との間には、比較器29が設けられている。この比較器29は、所定の目標励磁電流値iγ*1と、ゲイン制御部20からの目標電流値iγ*2とを比較し、いずれか小さい方を第1電流制御部7の目標電流値iγ*として選択する。目標励磁電流値iγ*1はゼロよりも大きい値である。選択された目標電流値iγ*は第1電流制御部7に入力される。
【0061】
なお、上記目標励磁電流値iγ*は、目標励磁電流入力部40から比較器29に発信される所定の値である。目標励磁電流入力部40は、上記所定の値を記憶する記憶部を有してもよく、また、モータMの運転状態に合わせて演算により求めてもよい。
【0062】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0063】
1 インバータ
2 電流検出器
5 3相−2相座標変換部
6 2相−3相座標変換部
7 第1電流制御部
8 第2電流制御部
11 ゲイン生成部
12 乗算器
14 速度制御部
16 積分器
20 ゲイン制御部
22 出力電圧算出部
23 比較器
24 目標ゲイン算出部
25 下限リミッタ
27 脱調判定部
29 比較器
31 目標ゲイン入力部
32 目標速度入力部
33 目標磁化電圧入力部
34 出力電圧上限値入力部
35 目標ゲイン入力部
38 下限値入力部
39 しきい値入力部
40 目標励磁電流入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するためのインバータを制御するインバータ制御装置であって、
前記インバータから前記モータに供給される3相電流を検出する電流検出器と、
電流検出器で検出された3相電流を回転座標系の磁化電流およびトルク電流に変換する3相−2相座標変換部と、
前記磁化電流と第1目標電流値との偏差をゼロとするための第1電圧指令値を演算する第1電流制御部と、
前記トルク電流と第2目標電流値との偏差をゼロとするための第2電圧指令値を演算する第2電流制御部と、
前記第1および第2電圧指令値を3相固定座標系上の3相電圧指令値に変換する2相−3相座標変換部と、
前記第1電圧指令値をゼロとするための磁化電流調整ゲイン値を生成するゲイン生成部と、
前記磁化電流調整ゲイン値と前記第2電圧指令値から前記モータの推定角周波数を算出する乗算器と、
前記推定角周波数と所定の目標角周波数との偏差をゼロとするための前記第2目標電流値を演算する速度制御部と、
前記磁化電流調整ゲイン値と目標ゲイン値との偏差をゼロとするための前記第1目標電流値を演算するゲイン制御部とを備えことを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
前記磁化電流調整ゲイン値は、前記モータの角周波数と前記モータに印加される電圧から決定される変数であることを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記目標ゲイン値は、前記モータの電圧−周波数特性から決定される値であることを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記目標ゲイン値は、前記モータの定格電圧と前記モータの定格周波数とから算出されることを特徴とする請求項3に記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
前記目標ゲイン値は、前記モータに接続された負荷の特性より予め算出された値であることを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
前記インバータへの出力電圧指令値を算出する出力電圧算出部と、
前記出力電圧指令値と所定の出力電圧上限値との偏差をゼロとするための第1目標ゲイン値を算出する目標ゲイン算出部と、
前記モータの指令電圧と前記モータの指令周波数とから予め算出された第2目標ゲイン値と、前記第1目標ゲイン値とを比較して、大きい方の値を前記目標ゲイン値として前記ゲイン制御部に出力する比較器とをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項7】
前記所定の出力電圧上限値は、前記モータの定格電圧および前記インバータの上限出力電圧のいずれか一方であることを特徴とする請求項6に記載のインバータ制御装置。
【請求項8】
前記ゲイン制御部により演算された前記第1目標電流値の下限値を規定する下限リミッタをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項9】
前記ゲイン生成部によって生成された前記磁化電流調整ゲイン値が所定のしきい値に達したときに脱調が起きたと判定する脱調判定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項10】
前記ゲイン制御部により演算された前記第1目標電流値と、所定の目標励磁電流値とを比較して、小さい方の値を選択する比較器をさらに備え、
前記第1電流制御部は、前記磁化電流と、前記比較器により選択された前記第1目標電流値または前記目標励磁電流値との偏差をゼロとするための前記第1電圧指令値を演算することを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−172167(P2010−172167A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14522(P2009−14522)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(000140111)株式会社荏原電産 (51)
【Fターム(参考)】