ウォーク型振動片およびその製造方法
【課題】小型でかつ精度の高いウォーク型振動片およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、圧電基板の表面に耐蝕防止膜を形成する工程と、耐蝕防止膜をパターニングして、圧電基板に梁形成領域を画定する工程と、耐蝕防止膜をマスクとして、圧電基板をエッチングして、梁形成領域の圧電基板を薄くする薄肉化工程と、梁形成領域の圧電基板に、厚み方向の電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、耐蝕防止膜を除去する工程と、梁形成領域の圧電基板をパターニングして、圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、を含み、薄肉化工程および周波数測定工程は、周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。
【解決手段】厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、圧電基板の表面に耐蝕防止膜を形成する工程と、耐蝕防止膜をパターニングして、圧電基板に梁形成領域を画定する工程と、耐蝕防止膜をマスクとして、圧電基板をエッチングして、梁形成領域の圧電基板を薄くする薄肉化工程と、梁形成領域の圧電基板に、厚み方向の電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、耐蝕防止膜を除去する工程と、梁形成領域の圧電基板をパターニングして、圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、を含み、薄肉化工程および周波数測定工程は、周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーク型振動片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動子は、広範な分野の製品に採用されている。圧電振動子は、時計や情報通信機器などでは、たとえば、基準周波数信号を得るための発振器として利用され、また、デジタルカメラや自動車などでは、たとえば、機器の姿勢の制御を行うための力学的センサーとして利用されている。圧電振動子は、いずれの用途においても、精度の向上と、さらなる小型化が要求されている。
【0003】
圧電振動子に搭載される振動片の種類としては、片持ち梁を屈曲振動させる形式のものがある。この種の振動片の典型としては、音叉型振動片がある。音叉型振動片の例としては、たとえば、特開2002−076806号公報に開示された振動片が挙げられる。音叉型振動片の場合、音叉の2本の片持ち梁は開閉するように振動するため、振動の周波数は、音叉を平面的に見たときの片持ち梁の幅と、片持ち梁の長さによって決定される。
【0004】
一方、片持ち梁を屈曲振動させる形式の振動片の他の種類としては、ウォーク型振動片がある。例えば、特開2001−196891号公報には、ウォーク型振動片として、3本の脚を有する振動子が開示されている(特許文献1)。ウォーク型振動片の場合は、各片持ち梁が各片持ち梁を含む平面の面外方向に振動するため、振動の周波数は、各片持ち梁を含む平面に垂直な方向の長さ(厚み)と、片持ち梁の長さによって決定される。
【0005】
これらの振動片の振動の周波数の精度を高めるためには、振動片の各寸法を極めて精密に制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−076806号公報
【特許文献2】特開2001−196891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電振動子を小型化するためには、搭載される振動片を小型化する必要がある。上記のような屈曲振動する形式の振動片を小型化する場合、梁の長さを小さくするとともに、音叉型振動片では梁の幅を小さくする必要があり、ウォーク型振動片では梁の厚みを小さくする必要がある。
【0008】
しかしながら、いずれの振動片においても、振動片の梁の平面的な形状は、通常はフォトリソグラフィーによって形成されるため、小型化が進むにつれ、梁の幅を小さくかつ精度良く形成することには限界が生じてきた。
【0009】
本発明者は、振動片の厚みすべり振動を利用すれば、極めて精度良く厚みを制御できるという知見を得た。そして、厚みすべり振動を利用した振動片の厚みの精度は、フォトリソグラフィーを利用した振動片の形状(幅)の精度よりも、はるかに高いということを見出した。そのため、ウォーク型振動片であれば、フォトリソグラフィーの精度の限界を回避しつつ十分に小型化できるということを見出した。
【0010】
本発明にかかるいくつかの態様の目的の1つは、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるウォーク型振動片の製造方法は、
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板の表面に耐蝕防止膜を形成する工程と、
前記耐蝕防止膜をパターニングして、前記圧電基板に梁形成領域を画定する工程と、
前記耐蝕防止膜をマスクとして、前記圧電基板をエッチングして、前記梁形成領域の前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板に、厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記耐蝕防止膜を除去する工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を含み、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。
【0012】
このようにすれば、非常に小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0013】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
さらに、各前記片持ち梁の上面に薄膜圧電素子を形成する工程を含むことができる。
【0014】
本発明にかかるウォーク型振動片の製造方法は、
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板をエッチングして、前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記圧電基板に厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を有し、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。
【0015】
このようにすれば、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0016】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
さらに、各前記片持ち梁の上面および下面の少なくとも一方に薄膜圧電素子を形成する工程を含むことができる。
【0017】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記耐蝕防止膜は、Cr層およびAu層を積層した金属膜、およびその上面に形成されたレジストから形成されることができる。
【0018】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記薄肉化工程は、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一方により行われることができ、
複数の前記薄肉化工程のうち、少なくとも最後の前記薄肉化工程は、ドライエッチングにより行われることができる。
【0019】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記薄肉化工程は、前記圧電基板の片面側からエッチングすることにより行われることができる。
【0020】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記圧電基板は、水晶基板であることができる。
【0021】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記圧電基板は、ATカットの水晶基板であることができる。
【0022】
本発明にかかるウォーク型振動片は、
互いに直交するX方向およびY方向によって張られるXY平面に展開され、前記XY平面に直交するZ方向に厚みを有する基体と、
前記基体の前記X方向に平行な辺から前記Y方向に突出し、前記X方向に互いに離間して並列して設けられた3本以上の奇数本の片持ち梁と、
前記片持ち梁のそれぞれに設けられ、励振信号が印加されたときに前記Y方向に伸縮成分を有して伸縮する薄膜圧電素子と、
を有し、
前記基体および前記片持ち梁は、前記Z方向に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じるカット角の水晶で形成され、
前記薄膜圧電素子は、前記片持ち梁の前記Z方向に垂直な表面の一方の上に設けられ、
前記薄膜圧電素子に励振信号が印加されたとき、前記片持ち梁は、前記XY平面の面外方向に、かつ、隣合う前記片持ち梁と互いに逆方向に振動する。
【0023】
このようなウォーク型振動片は、小型化が容易である。
【0024】
本発明のウォーク型振動片において、
前記基体の前記Z方向の厚みは、前記片持ち梁の前記Z方向の厚みよりも大きいことができる。
【0025】
本発明のウォーク型振動片において、
前記基体および前記片持ち梁は、カット角がATカットであることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のウォーク型振動片の製造方法によれば、厚みすべり振動を利用して梁を形成するため、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を製造することができる。本発明のウォーク型振動片は、厚みすべりを生じるカット角の水晶で形成された梁を有するため、小型化が容易でかつ精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図2】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図3】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図4】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す底面図。
【図7】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】実施形態にかかるウォーク型振動片の周波数測定工程の模式図。
【図9】実施形態にかかるウォーク型振動片の周波数測定工程の模式図。
【図10】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す底面図。
【図15】実施形態にかかるウォーク型振動片100を模式的に示す断面図。
【図16】実施形態にかかるウォーク型振動片100を模式的に示す斜視図。
【図17】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図18】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図19】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図20】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す底面図。
【図21】実施形態にかかるウォーク型振動片200を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。
【0029】
1.第1実施形態
1.1.ウォーク型振動片の製造方法
図1〜図14は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の製造方法を模式的に説明する図である。図1〜図5、図7、および図10〜図13は、本実施形態にかかるウォーク型振動片100の製造工程を模式的に示す断面図である。図6および図14は、本実施形態にかかるウォーク型振動片100の製造工程を模式的に示す底面図である。図8および図9は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の製造方法の周波数測定工程の模式図である。なお、上記の各断面図は、図6のA−A線または図14のB−B線の断面に相当する。図15は、ウォーク型振動片100を模式的に示す断面図であり、図16は、ウォーク型振動片100を模式的に示す斜視図である。
【0030】
本実施形態にかかるウォーク型振動片100の製造方法は、圧電基板10を用意する工程と、金属膜20を形成する工程と、圧電基板10に梁形成領域12を画定する工程と、圧電基板10を薄くする薄肉化工程と、周波数測定工程と、金属膜20を除去する工程と、3本以上の奇数本の片持ち梁30を形成する工程と、を含む。
【0031】
まず、図1に示すように、圧電基板10を用意する。圧電基板10は、厚み方向に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じることができるものを用意する。圧電基板10の厚みは任意である。圧電基板10は、板状の形状を有し、2つの主表面を有する。圧電基板10は、たとえば、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料の基板とすることができる。圧電基板10に水晶基板を選択する場合は、水晶基板の法線方向が水晶の結晶のZ軸となる、いわゆるZ板と称する厚みすべり振動を生じないカット角の基板以外のカット角を有する水晶基板を選択することができる。すなわち、圧電基板10に水晶基板を選択する場合は、該水晶基板の法線方向が、水晶の結晶軸のX軸またはY軸の成分を含むものである限り限定されない。圧電基板10は、厚み方向に電圧信号が印加されたときに、屈曲振動等の他の振動モードを生じるものであってもよい。また、圧電基板10としては、ATカットの水晶基板(以下これをAT板と称することがある。)や、BTカットの水晶基板(以下これをBT板と称することがある。)を選択することができる。圧電基板10に、AT板や、BT板を選択すれば、厚み方向に電圧信号を印加することにより、より容易に厚みすべり振動を発生させることができ、加工時の温度変動による厚みのバラツキをより少なくすることができる。
【0032】
なお、圧電基板10にAT板を選択した場合など、厚み方向に電圧信号が印加されたときに屈曲振動等の他の振動モードを生じにくいカット角の水晶基板を圧電基板10として用いる場合は、必要に応じて、薄膜圧電素子等の励振素子を形成することができる(後述する)。
【0033】
次に、図2に示すように、圧電基板10の主表面に金属膜20を形成する。本工程は、たとえば、蒸着、スパッタ等によって行うことができる。金属膜20は、圧電基板10をエッチングする際のマスク(耐蝕防止膜)としての機能を有することができる。本明細書において、耐蝕防止膜というとき、エッチング対象をエッチャント等から保護する機能を有する膜のことを指す。金属膜20は、図示の例のように、たとえば、圧電基板10側から、Cr層22およびAu層24が積層した構造とすることができる。金属膜20がCr層22およびAu層24の積層構造であれば、圧電基板10と金属膜20との密着性を高めることができる。
【0034】
次に、圧電基板10に梁形成領域12を画定する。本工程では、金属膜20をパターニングし、金属膜20を除去した領域を梁形成領域12として画定する。まず、金属膜20は、図3および図4に示すように、レジストマスクを利用してパターニングされる。具体的には、図2に示すように、金属膜20の上に、レジスト層40を形成し、フォトリソグラフィー等によってレジスト層40をパターニングし(図3)、次いで金属膜20をエッチングしてパターニングする(図4)。金属層20のエッチングは、たとえば、ウエットエッチングやドライエッチングにより行うことができる。本工程を経て、金属膜20が除去された領域が、圧電基板10の梁形成領域12となる。なお、金属膜20をパターニングした後のレジスト層40(マスク)は、除去してもしなくてもよい。
【0035】
梁形成領域12は、圧電基板10に複数画定されてもよい。梁形成領域12は、ウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100の片持ち梁30がパターニングによって形成される領域を含む領域である。梁形成領域12の外周の形状は、図6の例では、平面視において矩形であるが、これに限定されない。梁形成領域12の内側には、片持ち梁30を整列させることができる辺が形成される。このような辺は、梁形成領域12の外周と一致してもよいし、梁形成領域12の内側に形成されてもよい。なお、図6は、金属層20およびレジスト層40を省略して描いてある。
【0036】
次に、梁形成領域12の圧電基板10を薄くする薄肉化工程を行う。図5および図6に示すように、本工程では、上述の金属膜20に金属膜20をパターニングした後のレジスト層40が積層したものをマスク(耐蝕防止膜)として、上述の梁形成領域12の圧電基板10を薄くする。本工程は、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一方によって行われる。ここで、一般に、ウエットエッチングは、エッチング速度が大きく、ドライエッチングは、エッチング速度が小さい。そのため、後述する梁形成領域12の厚みの調整において、少なくとも最後に行われる薄肉化工程は、ドライエッチングで行われることがより好ましい。このようにすれば、梁形成領域12の厚みの微調整をより容易に行うことができる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、梁形成領域12の厚みを該領域以外の厚みよりも小さくする。そのため、ウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100を小型化するために、片持ち梁30の厚みが非常に薄く設計された場合でも、圧電基板10の全体を薄くする場合に比べて、圧電基板10の取り扱いを容易にすることができる。すなわち、圧電基板10全体が非常に薄くなる(数μm程度)と、圧電基板10を運搬することが困難となる場合があるが、本実施形態の製造方法では、圧電基板10の梁形成領域12のみを薄く(数μm)することで、該領域以外の厚みを厚く(数十μm以上)維持することができるため、圧電基板10の取り扱いを容易にすることができる。
【0038】
図5に示す例では、圧電基板10は、下面側からのみエッチングされ薄化されているが、下面側および上面側からエッチングされて薄化されてもよい。圧電基板10の下面および上面からエッチングする場合は、梁形成領域12を画定する工程で金属膜20のパターンを圧電基板10の両面に形成して、梁形成領域12を画定すればよい。圧電基板10に水晶基板を選択した場合において、本工程をウエットエッチングで行うときのエッチャントとしては、たとえば、HF溶液、NH4HF2溶液などを用いることができる。また同場合において、本工程をドライエッチングするときは、たとえば、CF4ガス、C2F6ガス、C4F8ガス等を導入したプラズマエッチングにより行うことができる。
【0039】
次に、周波数測定工程を行う。本工程は、梁形成領域12において圧電基板10の厚み方向に電圧信号を印加して、該梁形成領域12の圧電基板10に厚みすべり振動を発生させ、その厚みすべり振動の周波数を測定する工程である。一般に、ATカットの水晶基板の厚みすべり振動の周波数fと、該基板の厚みtとは、f(MHz)=1670/t(μm)の関係が成り立つとされている。本実施形態においては、このような関係を、必要に応じ係数などを補正して利用することにより、測定される周波数から梁形成領域12の厚みを測定する。なお、厚みすべり振動の周波数は、上記関係からも理解されるように厚みに敏感であり、かつ、周波数の測定精度は、一般的な測定方法を用いても、十分に高くすることが可能である。したがって、本工程では、極めて精密に梁形成領域12の圧電基板10の厚みを測定することができる。
【0040】
上述のように、周波数測定工程で測定された周波数は、梁形成領域12の圧電基板10の厚みに換算することができる。したがって、本工程を経ると、梁形成領域12の圧電基板10の厚みが、あらかじめ設計した厚みに達したかどうかを判断することができる。
【0041】
図8は、周波数測定工程の一例を示す模式図である。図8は、測定プローブ50を用いて、梁形成領域12の圧電基板10に電圧信号を印加している状態を示している。この例は、本工程が、図7に示すように、圧電基板10から、金属膜20およびレジスト層40が除去された後に行われる場合を示している。測定プローブ50は、図示せぬ測定回路(測定機器)に接続されている。測定プローブ50は、導電性を有しており、梁形成領域12の圧電基板10の両面に対向するように接触あるいは極近に接近させることができる。測定プローブ50に電圧信号を印加すると、図に模式的に示したように、圧電基板10の測定プローブ50に挟まれた領域に厚みすべり振動を発生させることができる。そして、該厚みすべり振動の周波数を、測定回路により測定することができる。
【0042】
なお、周波数測定工程は、図9に示すように、圧電基板10に形成されている金属膜20を利用して行うこともできる。すなわち、図5に示す薄肉化工程の後、レジスト層40を除去し、金属膜20が電圧信号を印加する一方の電極として機能するようにすることができる。図9の例では、圧電基板10の電極(金属膜20)が形成されていない側の面に、測定プローブ52を接触あるいは極近に接近させて、該電極と測定プローブ50が対向する領域に厚みすべり振動を発生させている。この場合、金属膜20は、任意の位置に設けられた配線54等に接続されている。このようにして該厚みすべり振動の周波数を、測定回路により測定して、梁形成領域12の圧電基板10の厚みを測定することができる。
【0043】
金属膜20を除去する工程は、上記したように、薄肉化工程の後、または、周波数測定工程の後に行われることができる。金属膜20の除去は、たとえば、酸を用いたウエットエッチングにより行うことができる。また、金属膜20の上に、レジスト層40が形成されている場合は、レジスト層40を除去した後に、金属層20を除去することができる。
【0044】
金属膜20が、最初の薄肉化工程が行われた後に除去される場合は、2回目以降の薄肉化工程(後述)は、図7に示すような金属膜20を有さない圧電基板10に対して行われることになる。このとき、梁形成領域12以外の圧電基板10も同時に薄肉化されることになるが、このことは、梁形成領域12の薄肉化を妨げるものではない。すなわち、梁形成領域12およびそれ以外の領域の圧電基板10が、ほぼ同じ速度で薄肉化されることになる。また、金属膜20が、周波数測定工程が行われた後に除去される場合は、2回目以降の薄肉化工程(後述)においても梁形成領域12のみが薄肉化されることになる。
【0045】
薄肉化工程および周波数測定工程は、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。すなわち、周波数測定工程で換算された梁形成領域12の厚みが設計した厚みよりも大きい場合は、再度薄肉化工程を行う。そして、再度周波数測定工程を行って、梁形成領域12の厚みを評価する。このような操作を梁形成領域12の厚みが設計した厚みに達するまで繰り返す。薄肉化工程および周波数測定工程を上記のように繰り返すことにより、梁形成領域12が薄肉化された圧電基板10の一例を図10に示す。
【0046】
このような薄肉化工程および周波数測定工程の繰り返しにおいては、製造工程の効率と、梁形成領域12の厚みの精度を考慮して適した薄肉化工程を自由に選ぶことができる。たとえば、梁形成領域12の設計厚みが、最初の圧電基板10の厚みの10%の厚みである場合、まず、薄肉化工程で、エッチング速度の大きいウエットエッチングによって、梁形成領域12の厚みを、最初の圧電基板10の厚みの12%の厚み程度まで薄くし、周波数測定工程を行う。そして、残りの2%程度をエッチング速度の小さいドライエッチングによって行うことができる。このようにすれば、エッチング速度の大きいウエットエッチングによって、工程が短時間化され、かつエッチング速度の小さいドライエッチングによって、厚みを設計厚みに近づけるためのエッチング精度を向上させることができる。
【0047】
次に、片持ち梁30を形成する工程を行う。本工程では、梁形成領域12の圧電基板10をパターニングして、圧電基板10から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の本数の片持ち梁30を形成する。梁形成領域12の圧電基板10のパターニングは、たとえば、金属膜26をマスクとしたエッチングによって行うことができる。金属膜26は、上述の金属膜20と同様のものとすることができる。本工程は、まず、金属膜26を圧電基板10の全面に形成した後、図11に示すように、レジスト層42を利用して金属膜26をパターニングする。次いで、図12に示すように、金属膜26およびレジスト層42からなる耐蝕膜をマスクとして、梁形成領域12の圧電基板10をエッチングして除去することによって行うことができる。各エッチングのエッチャントは既述したものと同様とすることができる。その後、金属膜26、およびレジスト層42を除去することにより、図13および図14に示すような3本以上の奇数本の本数の片持ち梁30が形成される。
【0048】
片持ち梁30は、3本以上の奇数本、形成される。図示の例では、各片持ち梁30は、圧電基板10に連続し、梁形成領域12の端から突出した形状を有している。また、各片持ち梁30は、梁形成領域12内で、圧電基板10に連続して形成された支持部(図示せず)に連続し、該支持部から突出した形状であってもよい。すなわち、梁形成領域12内に圧電基板10を残してパターニングし、該残った圧電基板10を支持部として、各片持ち梁30が、該支持部に接続するように形成されてもよい。図14に示す例では、片持ち梁30は、中央の1本の片持ち梁32および中央の片持ち梁32に離間して両側に平行に配列された2本の片持ち梁34の合計3本が、梁形成領域12に形成され、梁形成領域12の外側の圧電基板10に支持される構成となっている。また、各片持ち梁30の支持端は、図示の例のように一直線上に配置されることが好ましい。このようにすれば、圧電基板10への振動漏れをさらに抑制することができる。
【0049】
片持ち梁30は、ウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100の振動部となる。本実施形態のウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100において、片持ち梁30は、いずれも、圧電基板10に平行な面に対して面外方向に変位の成分を有して振動する。各片持ち梁30は、隣り合う片持ち梁30とは逆方向に変位して振動する(図16および図18参照)。そのため、各片持ち梁30が振動するとき、圧電基板10の厚み方向(面外方向)への質量の変位が互いに相殺されて、圧電基板10への振動漏れが抑制される。また、片持ち梁30の本数が3本以上の奇数本(3本、5本、7本等)であるため、片持ち梁30の延びる方向の軸の周りのモーメントが、中央の片持ち梁30(32)に対して対称に配置された2本の片持ち梁30(34)によって、互いに相殺され、圧電基板10への振動漏れが抑制される。
【0050】
以上の工程を経ることによって、図13および図14に示すような形状に圧電基板10を加工することができる。
【0051】
本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、さらに、薄膜圧電素子70を形成する工程を有することができる。
【0052】
薄膜圧電素子70は、各片持ち梁30の上面に形成することができる。薄膜圧電素子70は、たとえば、下部電極72、圧電体層74、および上部電極76が積層された、薄膜構造とすることができる。薄膜圧電素子70を形成する方法としては、たとえば、以下の方法を例示することができる。
【0053】
薄膜圧電素子70は、下部電極72を形成する工程と、上部電極76および圧電体層74を形成する工程と、によって形成することができる。
【0054】
まず、各片持ち梁30の上面の所望の位置に、下部電極72を形成する。下部電極72は、たとえば、Au、Cr、Al、Ti、Mo、Pt等の導電材料で形成される。下部電極72は、たとえば、スパッタ法、真空蒸着、CVD法などの方法で全面に導電層を形成した後、パターニングして、形成することができる。このパターニングにおいて、下部電極72から引き出される配線(図示せず)も形成することができる。下部電極72が形成される位置は、任意であるが、片持ち梁30の支持端付近に形成されることが好ましい。下部電極層72のエッチングは、フォトリソグラフィー等の方法で行うことができる。
【0055】
次に、圧電体層74および上部電極76を形成する工程を行う。まず、圧電体層74を片持ち梁30の上面および下部電極72の上に形成する。圧電体層74の材質としては、たとえば酸化亜鉛、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸鉛などを挙げることができる。圧電体層74は、スパッタ法、蒸着法、ゾルゲル法やCVD法などによって形成されることができる。たとえば、ゾルゲル法においては、原料溶液塗布、予備加熱、結晶化アニールの一連の作業を複数回繰り返して所望の膜厚にしてもよい。次いで、圧電体層74の上に上部電極76を形成する。上部電極76は、下部電極72と同じ材質とすることができる。なお、圧電体層74の結晶化アニールは、上部電極76を形成した後に行ってもよい。次に、上部電極76および圧電体層74をパターニングすることにより、薄膜圧電素子70が形成される。本工程は、フォトリソグラフィー等の方法を用いマスク等を形成して行うことができる。本工程のエッチングは、たとえば公知のドライエッチング等の方法により行うことができる。以上のようにすれば、薄膜圧電素子70を形成することができる。
【0056】
本実施形態の製造方法において、上記の薄膜圧電素子70を形成する工程と、必要に応じて個片化する工程を行うことにより、図15および図16に示すようなウォーク型振動片100を製造することができる。なお、個片化する工程は、ダイシング等によって行われることができ、たとえば、梁形成領域12を圧電基板10が包囲するように個片化されてもよいし、図16に示すように圧電基板10の一辺から各片持ち梁30が突出するように個片化されてもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、厚みすべり振動の周波数を測定して精密な厚みを測定する周波数測定工程を有するとともに、薄肉化工程および周波数測定工程が、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。これにより、ウォーク型振動片の片持ち梁30の厚みを精度良く形成することができる。したがって、非常に小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0058】
1.2.ウォーク型振動片
図16は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の一例であるウォーク型振動片100を模式的に示す斜視図である。図16には、X方向、Y方向、およびZ方向および各符号を説明の便宜上書き加えた。以下の説明において、「1.1.ウォーク型振動片の製造方法」で述べた事項と同様の事項は、説明を省略する。
【0059】
本実施形態のウォーク型振動片100は、基体80と、3本以上の奇数本の片持ち梁30と、薄膜圧電素子70と、を有する。
【0060】
基体80は、互いに直交するX方向およびY方向によって張られるXY平面に展開され、XY平面に直交するZ方向に厚みを有する。基体80は、「1.1.ウォーク型振動片の製造方法」で述べた圧電基板10の梁形成領域12以外の部分と実質的に同様である。基体80は、ウォーク型振動片100の支持部として機能することができる。基体80の形状は、任意であり、図示のような直方体の形状であってもよく、片持ち梁30を包囲するフレーム状の形状であってもよい。また、基体80は、片持ち梁30を支持するための支持部を有していてもよい。該支持部としては、たとえば、基体80の厚みよりも小さい厚みを有して、基体80から延出した形状を有するものが挙げられる。
【0061】
片持ち梁30は、基体80のY方向に平行な辺からY方向に突出し、X方向に互いに離間して並列して設けられる。片持ち梁30は、上述した基体80の支持部から突出していてもよい。片持ち梁30の本数は、3本以上の奇数本である。片持ち梁30は、後述の薄膜圧電素子70に励振信号が印加されたとき、XY平面の面外方向に、かつ、隣合う片持ち梁30と互いに逆方向に振動する。ここで、XY平面の面外方向に振動するとは、図16に矢印で示すように、各片持ち梁30の屈曲振動における変位が、Z方向の成分を有していることを指す。
【0062】
基体80および片持ち梁30は、厚み方向(Z方向)に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じるカット角の水晶で形成される。基体80および片持ち梁30は、このようなカット角の水晶のうち、基体80および片持ち梁30は、ATカットの水晶で形成されることもできる。基体80および片持ち梁30がATカットの水晶で形成される場合は、片持ち梁30の寸法精度をさらに高めることができる。また、基体80のZ方向の厚みは、片持ち梁30のZ方向の厚みよりも大きく形成されていてもよい。このようにすれば、片持ち梁30が非常に薄い場合でもウォーク型振動片100の取り扱いを容易にすることができる。
【0063】
薄膜圧電素子70は、片持ち梁30のそれぞれに設けられる。薄膜圧電素子70は、励振信号が印加されたときにY方向に伸縮成分を有して伸縮する。薄膜圧電素子70は、片持ち梁30のZ方向に垂直な表面の少なくとも一方の上に設けられる。したがって、薄膜圧電素子70が駆動したときに、片持ち梁30の厚み方向に変位の大きさの分布が生じ、片持ち梁30に厚み方向(Z方向)の屈曲を生じさせることができる。薄膜圧電素子70は、たとえば、下部電極72、圧電体層74、および上部電極76が積層された、薄膜構造とすることができる。
【0064】
以上のようなウォーク型振動片100は、片持ち梁30のZ方向の厚みの精度が高い。そのため、片持ち梁30のY方向の長さを小さくしたときに、屈曲振動の周波数を決定する片持ち梁30の厚みを設計に極めて近付けることができる。そのため、このようなウォーク型振動片100は、容易に小型化することができる。
【0065】
2.第2実施形態
2.1.ウォーク型振動片の製造方法
図17〜図20は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の製造方法を模式的に説明する図である。図17〜図19は、本実施形態にかかるウォーク型振動片200の製造工程を模式的に示す断面図である。図20は、本実施形態にかかるウォーク型振動片200の製造工程を模式的に示す底面図である。なお、上記の各断面図は、図20のC−C線の断面に相当する。図21は、ウォーク型振動片200を模式的に示す斜視図である。
【0066】
本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、梁形成領域を設けず、片持ち梁と、圧電基板の厚みを同じ厚みで形成する以外は、第1実施形態で述べたウォーク型振動片の製造方法と同様である。したがって、第1実施形態で述べたと実質的に同様の事項、および同じ符号を付した部材については説明を省略する。
【0067】
本実施形態のウォーク型振動片200の製造方法は、圧電基板10を用意する工程と、圧電基板10を薄くする薄肉化工程と、周波数測定工程と、3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、を有する。
【0068】
まず、圧電基板10を用意する。本工程は、第1実施形態の圧電基板10を用意する工程と同様である。
【0069】
次に、本実施形態では、圧電基板10を薄くする薄肉化工程を行う。本工程は、研磨、化学機械研磨、ラッピング、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一種によって行われることができる。本実施形態では、圧電基板10は、全面が薄肉化される。圧電基板10は、片面側から、または両面側から薄肉化されることができる。ここで、一般に、ドライエッチングは、エッチング速度が小さい。そのため、後述する圧電基板10の厚みの調整において、少なくとも最後に行われる本工程は、ドライエッチングで行われることがより好ましい。このようにすれば、圧電基板10の厚みの微調整をより容易に行うことができる。
【0070】
次に、周波数測定工程を行う。本工程は、圧電基板10の厚み方向に電圧信号を印加して、圧電基板10に厚みすべり振動を発生させ、その厚みすべり振動の周波数を測定する工程である。本工程では、第1実施形態で述べたと同様に、極めて精密に圧電基板10の厚みを測定することができる。したがって、本工程を経ると、あらかじめ設計した圧電基板10の厚みに達したかどうかを判断することができる。また、本工程は、たとえば、第1実施形態で述べた測定プローブ50を用いて行うことができる。
【0071】
本実施形態においても、薄肉化工程および周波数測定工程は、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。この事項は、第1実施形態で述べたと同様である。
【0072】
次に、片持ち梁を形成する工程を行う。本工程は、第1実施形態で、梁形成領域12の圧電基板10に対して行った工程と同様である。本工程を経ると、図22に示されるような片持ち梁30が形成される。
【0073】
次に、各片持ち梁30の上に薄膜圧電素子70を設ける。薄膜圧電素子70は、第1実施形態と同様にして設けることができる。この後、適宜ダイシングして個片化する工程を行って、図21に示す本実施形態のウォーク型振動片200が完成する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、厚みすべり振動の周波数を測定して精密な厚みを測定する周波数測定工程を有するとともに、薄肉化工程および周波数測定工程が、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。これにより、ウォーク型振動片の片持ち梁の厚みを精度良く形成することができる。したがって、非常に小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0075】
2.2.ウォーク型振動片
図21は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の一例であるウォーク型振動片200を模式的に示す斜視図である。本実施形態のウォーク型振動片200は、基体80および片持ち梁30のZ方向の厚みが同じである以外は、第1実施形態で述べたウォーク型振動片100と同様である。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明にかかるウォーク型振動片の製造方法によれば、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を製造することができる。また、本発明にかかるウォーク型振動片は、小型化が容易である。したがって、広範な分野の製品に用いられる圧電振動子に本発明のウォーク型振動片を搭載すれば、より小型で高性能な製品を提供できる。
【符号の説明】
【0078】
10…圧電基板、12…梁形成領域、20,26…金属膜、22…Cr層、
24…Au層、30,32,34…片持ち梁、40,42…レジスト層、
50,52…測定プローブ、54…配線、60…電極、70…薄膜圧電素子、
72…下部電極、74…圧電体層、76…上部電極、80…基体、
100,200…ウォーク型振動片
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーク型振動片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動子は、広範な分野の製品に採用されている。圧電振動子は、時計や情報通信機器などでは、たとえば、基準周波数信号を得るための発振器として利用され、また、デジタルカメラや自動車などでは、たとえば、機器の姿勢の制御を行うための力学的センサーとして利用されている。圧電振動子は、いずれの用途においても、精度の向上と、さらなる小型化が要求されている。
【0003】
圧電振動子に搭載される振動片の種類としては、片持ち梁を屈曲振動させる形式のものがある。この種の振動片の典型としては、音叉型振動片がある。音叉型振動片の例としては、たとえば、特開2002−076806号公報に開示された振動片が挙げられる。音叉型振動片の場合、音叉の2本の片持ち梁は開閉するように振動するため、振動の周波数は、音叉を平面的に見たときの片持ち梁の幅と、片持ち梁の長さによって決定される。
【0004】
一方、片持ち梁を屈曲振動させる形式の振動片の他の種類としては、ウォーク型振動片がある。例えば、特開2001−196891号公報には、ウォーク型振動片として、3本の脚を有する振動子が開示されている(特許文献1)。ウォーク型振動片の場合は、各片持ち梁が各片持ち梁を含む平面の面外方向に振動するため、振動の周波数は、各片持ち梁を含む平面に垂直な方向の長さ(厚み)と、片持ち梁の長さによって決定される。
【0005】
これらの振動片の振動の周波数の精度を高めるためには、振動片の各寸法を極めて精密に制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−076806号公報
【特許文献2】特開2001−196891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電振動子を小型化するためには、搭載される振動片を小型化する必要がある。上記のような屈曲振動する形式の振動片を小型化する場合、梁の長さを小さくするとともに、音叉型振動片では梁の幅を小さくする必要があり、ウォーク型振動片では梁の厚みを小さくする必要がある。
【0008】
しかしながら、いずれの振動片においても、振動片の梁の平面的な形状は、通常はフォトリソグラフィーによって形成されるため、小型化が進むにつれ、梁の幅を小さくかつ精度良く形成することには限界が生じてきた。
【0009】
本発明者は、振動片の厚みすべり振動を利用すれば、極めて精度良く厚みを制御できるという知見を得た。そして、厚みすべり振動を利用した振動片の厚みの精度は、フォトリソグラフィーを利用した振動片の形状(幅)の精度よりも、はるかに高いということを見出した。そのため、ウォーク型振動片であれば、フォトリソグラフィーの精度の限界を回避しつつ十分に小型化できるということを見出した。
【0010】
本発明にかかるいくつかの態様の目的の1つは、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるウォーク型振動片の製造方法は、
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板の表面に耐蝕防止膜を形成する工程と、
前記耐蝕防止膜をパターニングして、前記圧電基板に梁形成領域を画定する工程と、
前記耐蝕防止膜をマスクとして、前記圧電基板をエッチングして、前記梁形成領域の前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板に、厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記耐蝕防止膜を除去する工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を含み、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。
【0012】
このようにすれば、非常に小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0013】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
さらに、各前記片持ち梁の上面に薄膜圧電素子を形成する工程を含むことができる。
【0014】
本発明にかかるウォーク型振動片の製造方法は、
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板をエッチングして、前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記圧電基板に厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を有し、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。
【0015】
このようにすれば、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0016】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
さらに、各前記片持ち梁の上面および下面の少なくとも一方に薄膜圧電素子を形成する工程を含むことができる。
【0017】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記耐蝕防止膜は、Cr層およびAu層を積層した金属膜、およびその上面に形成されたレジストから形成されることができる。
【0018】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記薄肉化工程は、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一方により行われることができ、
複数の前記薄肉化工程のうち、少なくとも最後の前記薄肉化工程は、ドライエッチングにより行われることができる。
【0019】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記薄肉化工程は、前記圧電基板の片面側からエッチングすることにより行われることができる。
【0020】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記圧電基板は、水晶基板であることができる。
【0021】
本発明のウォーク型振動片の製造方法において、
前記圧電基板は、ATカットの水晶基板であることができる。
【0022】
本発明にかかるウォーク型振動片は、
互いに直交するX方向およびY方向によって張られるXY平面に展開され、前記XY平面に直交するZ方向に厚みを有する基体と、
前記基体の前記X方向に平行な辺から前記Y方向に突出し、前記X方向に互いに離間して並列して設けられた3本以上の奇数本の片持ち梁と、
前記片持ち梁のそれぞれに設けられ、励振信号が印加されたときに前記Y方向に伸縮成分を有して伸縮する薄膜圧電素子と、
を有し、
前記基体および前記片持ち梁は、前記Z方向に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じるカット角の水晶で形成され、
前記薄膜圧電素子は、前記片持ち梁の前記Z方向に垂直な表面の一方の上に設けられ、
前記薄膜圧電素子に励振信号が印加されたとき、前記片持ち梁は、前記XY平面の面外方向に、かつ、隣合う前記片持ち梁と互いに逆方向に振動する。
【0023】
このようなウォーク型振動片は、小型化が容易である。
【0024】
本発明のウォーク型振動片において、
前記基体の前記Z方向の厚みは、前記片持ち梁の前記Z方向の厚みよりも大きいことができる。
【0025】
本発明のウォーク型振動片において、
前記基体および前記片持ち梁は、カット角がATカットであることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のウォーク型振動片の製造方法によれば、厚みすべり振動を利用して梁を形成するため、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を製造することができる。本発明のウォーク型振動片は、厚みすべりを生じるカット角の水晶で形成された梁を有するため、小型化が容易でかつ精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図2】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図3】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図4】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す底面図。
【図7】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】実施形態にかかるウォーク型振動片の周波数測定工程の模式図。
【図9】実施形態にかかるウォーク型振動片の周波数測定工程の模式図。
【図10】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す底面図。
【図15】実施形態にかかるウォーク型振動片100を模式的に示す断面図。
【図16】実施形態にかかるウォーク型振動片100を模式的に示す斜視図。
【図17】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図18】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図19】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す断面図。
【図20】実施形態にかかるウォーク型振動片の製造工程を模式的に示す底面図。
【図21】実施形態にかかるウォーク型振動片200を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。
【0029】
1.第1実施形態
1.1.ウォーク型振動片の製造方法
図1〜図14は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の製造方法を模式的に説明する図である。図1〜図5、図7、および図10〜図13は、本実施形態にかかるウォーク型振動片100の製造工程を模式的に示す断面図である。図6および図14は、本実施形態にかかるウォーク型振動片100の製造工程を模式的に示す底面図である。図8および図9は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の製造方法の周波数測定工程の模式図である。なお、上記の各断面図は、図6のA−A線または図14のB−B線の断面に相当する。図15は、ウォーク型振動片100を模式的に示す断面図であり、図16は、ウォーク型振動片100を模式的に示す斜視図である。
【0030】
本実施形態にかかるウォーク型振動片100の製造方法は、圧電基板10を用意する工程と、金属膜20を形成する工程と、圧電基板10に梁形成領域12を画定する工程と、圧電基板10を薄くする薄肉化工程と、周波数測定工程と、金属膜20を除去する工程と、3本以上の奇数本の片持ち梁30を形成する工程と、を含む。
【0031】
まず、図1に示すように、圧電基板10を用意する。圧電基板10は、厚み方向に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じることができるものを用意する。圧電基板10の厚みは任意である。圧電基板10は、板状の形状を有し、2つの主表面を有する。圧電基板10は、たとえば、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料の基板とすることができる。圧電基板10に水晶基板を選択する場合は、水晶基板の法線方向が水晶の結晶のZ軸となる、いわゆるZ板と称する厚みすべり振動を生じないカット角の基板以外のカット角を有する水晶基板を選択することができる。すなわち、圧電基板10に水晶基板を選択する場合は、該水晶基板の法線方向が、水晶の結晶軸のX軸またはY軸の成分を含むものである限り限定されない。圧電基板10は、厚み方向に電圧信号が印加されたときに、屈曲振動等の他の振動モードを生じるものであってもよい。また、圧電基板10としては、ATカットの水晶基板(以下これをAT板と称することがある。)や、BTカットの水晶基板(以下これをBT板と称することがある。)を選択することができる。圧電基板10に、AT板や、BT板を選択すれば、厚み方向に電圧信号を印加することにより、より容易に厚みすべり振動を発生させることができ、加工時の温度変動による厚みのバラツキをより少なくすることができる。
【0032】
なお、圧電基板10にAT板を選択した場合など、厚み方向に電圧信号が印加されたときに屈曲振動等の他の振動モードを生じにくいカット角の水晶基板を圧電基板10として用いる場合は、必要に応じて、薄膜圧電素子等の励振素子を形成することができる(後述する)。
【0033】
次に、図2に示すように、圧電基板10の主表面に金属膜20を形成する。本工程は、たとえば、蒸着、スパッタ等によって行うことができる。金属膜20は、圧電基板10をエッチングする際のマスク(耐蝕防止膜)としての機能を有することができる。本明細書において、耐蝕防止膜というとき、エッチング対象をエッチャント等から保護する機能を有する膜のことを指す。金属膜20は、図示の例のように、たとえば、圧電基板10側から、Cr層22およびAu層24が積層した構造とすることができる。金属膜20がCr層22およびAu層24の積層構造であれば、圧電基板10と金属膜20との密着性を高めることができる。
【0034】
次に、圧電基板10に梁形成領域12を画定する。本工程では、金属膜20をパターニングし、金属膜20を除去した領域を梁形成領域12として画定する。まず、金属膜20は、図3および図4に示すように、レジストマスクを利用してパターニングされる。具体的には、図2に示すように、金属膜20の上に、レジスト層40を形成し、フォトリソグラフィー等によってレジスト層40をパターニングし(図3)、次いで金属膜20をエッチングしてパターニングする(図4)。金属層20のエッチングは、たとえば、ウエットエッチングやドライエッチングにより行うことができる。本工程を経て、金属膜20が除去された領域が、圧電基板10の梁形成領域12となる。なお、金属膜20をパターニングした後のレジスト層40(マスク)は、除去してもしなくてもよい。
【0035】
梁形成領域12は、圧電基板10に複数画定されてもよい。梁形成領域12は、ウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100の片持ち梁30がパターニングによって形成される領域を含む領域である。梁形成領域12の外周の形状は、図6の例では、平面視において矩形であるが、これに限定されない。梁形成領域12の内側には、片持ち梁30を整列させることができる辺が形成される。このような辺は、梁形成領域12の外周と一致してもよいし、梁形成領域12の内側に形成されてもよい。なお、図6は、金属層20およびレジスト層40を省略して描いてある。
【0036】
次に、梁形成領域12の圧電基板10を薄くする薄肉化工程を行う。図5および図6に示すように、本工程では、上述の金属膜20に金属膜20をパターニングした後のレジスト層40が積層したものをマスク(耐蝕防止膜)として、上述の梁形成領域12の圧電基板10を薄くする。本工程は、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一方によって行われる。ここで、一般に、ウエットエッチングは、エッチング速度が大きく、ドライエッチングは、エッチング速度が小さい。そのため、後述する梁形成領域12の厚みの調整において、少なくとも最後に行われる薄肉化工程は、ドライエッチングで行われることがより好ましい。このようにすれば、梁形成領域12の厚みの微調整をより容易に行うことができる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、梁形成領域12の厚みを該領域以外の厚みよりも小さくする。そのため、ウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100を小型化するために、片持ち梁30の厚みが非常に薄く設計された場合でも、圧電基板10の全体を薄くする場合に比べて、圧電基板10の取り扱いを容易にすることができる。すなわち、圧電基板10全体が非常に薄くなる(数μm程度)と、圧電基板10を運搬することが困難となる場合があるが、本実施形態の製造方法では、圧電基板10の梁形成領域12のみを薄く(数μm)することで、該領域以外の厚みを厚く(数十μm以上)維持することができるため、圧電基板10の取り扱いを容易にすることができる。
【0038】
図5に示す例では、圧電基板10は、下面側からのみエッチングされ薄化されているが、下面側および上面側からエッチングされて薄化されてもよい。圧電基板10の下面および上面からエッチングする場合は、梁形成領域12を画定する工程で金属膜20のパターンを圧電基板10の両面に形成して、梁形成領域12を画定すればよい。圧電基板10に水晶基板を選択した場合において、本工程をウエットエッチングで行うときのエッチャントとしては、たとえば、HF溶液、NH4HF2溶液などを用いることができる。また同場合において、本工程をドライエッチングするときは、たとえば、CF4ガス、C2F6ガス、C4F8ガス等を導入したプラズマエッチングにより行うことができる。
【0039】
次に、周波数測定工程を行う。本工程は、梁形成領域12において圧電基板10の厚み方向に電圧信号を印加して、該梁形成領域12の圧電基板10に厚みすべり振動を発生させ、その厚みすべり振動の周波数を測定する工程である。一般に、ATカットの水晶基板の厚みすべり振動の周波数fと、該基板の厚みtとは、f(MHz)=1670/t(μm)の関係が成り立つとされている。本実施形態においては、このような関係を、必要に応じ係数などを補正して利用することにより、測定される周波数から梁形成領域12の厚みを測定する。なお、厚みすべり振動の周波数は、上記関係からも理解されるように厚みに敏感であり、かつ、周波数の測定精度は、一般的な測定方法を用いても、十分に高くすることが可能である。したがって、本工程では、極めて精密に梁形成領域12の圧電基板10の厚みを測定することができる。
【0040】
上述のように、周波数測定工程で測定された周波数は、梁形成領域12の圧電基板10の厚みに換算することができる。したがって、本工程を経ると、梁形成領域12の圧電基板10の厚みが、あらかじめ設計した厚みに達したかどうかを判断することができる。
【0041】
図8は、周波数測定工程の一例を示す模式図である。図8は、測定プローブ50を用いて、梁形成領域12の圧電基板10に電圧信号を印加している状態を示している。この例は、本工程が、図7に示すように、圧電基板10から、金属膜20およびレジスト層40が除去された後に行われる場合を示している。測定プローブ50は、図示せぬ測定回路(測定機器)に接続されている。測定プローブ50は、導電性を有しており、梁形成領域12の圧電基板10の両面に対向するように接触あるいは極近に接近させることができる。測定プローブ50に電圧信号を印加すると、図に模式的に示したように、圧電基板10の測定プローブ50に挟まれた領域に厚みすべり振動を発生させることができる。そして、該厚みすべり振動の周波数を、測定回路により測定することができる。
【0042】
なお、周波数測定工程は、図9に示すように、圧電基板10に形成されている金属膜20を利用して行うこともできる。すなわち、図5に示す薄肉化工程の後、レジスト層40を除去し、金属膜20が電圧信号を印加する一方の電極として機能するようにすることができる。図9の例では、圧電基板10の電極(金属膜20)が形成されていない側の面に、測定プローブ52を接触あるいは極近に接近させて、該電極と測定プローブ50が対向する領域に厚みすべり振動を発生させている。この場合、金属膜20は、任意の位置に設けられた配線54等に接続されている。このようにして該厚みすべり振動の周波数を、測定回路により測定して、梁形成領域12の圧電基板10の厚みを測定することができる。
【0043】
金属膜20を除去する工程は、上記したように、薄肉化工程の後、または、周波数測定工程の後に行われることができる。金属膜20の除去は、たとえば、酸を用いたウエットエッチングにより行うことができる。また、金属膜20の上に、レジスト層40が形成されている場合は、レジスト層40を除去した後に、金属層20を除去することができる。
【0044】
金属膜20が、最初の薄肉化工程が行われた後に除去される場合は、2回目以降の薄肉化工程(後述)は、図7に示すような金属膜20を有さない圧電基板10に対して行われることになる。このとき、梁形成領域12以外の圧電基板10も同時に薄肉化されることになるが、このことは、梁形成領域12の薄肉化を妨げるものではない。すなわち、梁形成領域12およびそれ以外の領域の圧電基板10が、ほぼ同じ速度で薄肉化されることになる。また、金属膜20が、周波数測定工程が行われた後に除去される場合は、2回目以降の薄肉化工程(後述)においても梁形成領域12のみが薄肉化されることになる。
【0045】
薄肉化工程および周波数測定工程は、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。すなわち、周波数測定工程で換算された梁形成領域12の厚みが設計した厚みよりも大きい場合は、再度薄肉化工程を行う。そして、再度周波数測定工程を行って、梁形成領域12の厚みを評価する。このような操作を梁形成領域12の厚みが設計した厚みに達するまで繰り返す。薄肉化工程および周波数測定工程を上記のように繰り返すことにより、梁形成領域12が薄肉化された圧電基板10の一例を図10に示す。
【0046】
このような薄肉化工程および周波数測定工程の繰り返しにおいては、製造工程の効率と、梁形成領域12の厚みの精度を考慮して適した薄肉化工程を自由に選ぶことができる。たとえば、梁形成領域12の設計厚みが、最初の圧電基板10の厚みの10%の厚みである場合、まず、薄肉化工程で、エッチング速度の大きいウエットエッチングによって、梁形成領域12の厚みを、最初の圧電基板10の厚みの12%の厚み程度まで薄くし、周波数測定工程を行う。そして、残りの2%程度をエッチング速度の小さいドライエッチングによって行うことができる。このようにすれば、エッチング速度の大きいウエットエッチングによって、工程が短時間化され、かつエッチング速度の小さいドライエッチングによって、厚みを設計厚みに近づけるためのエッチング精度を向上させることができる。
【0047】
次に、片持ち梁30を形成する工程を行う。本工程では、梁形成領域12の圧電基板10をパターニングして、圧電基板10から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の本数の片持ち梁30を形成する。梁形成領域12の圧電基板10のパターニングは、たとえば、金属膜26をマスクとしたエッチングによって行うことができる。金属膜26は、上述の金属膜20と同様のものとすることができる。本工程は、まず、金属膜26を圧電基板10の全面に形成した後、図11に示すように、レジスト層42を利用して金属膜26をパターニングする。次いで、図12に示すように、金属膜26およびレジスト層42からなる耐蝕膜をマスクとして、梁形成領域12の圧電基板10をエッチングして除去することによって行うことができる。各エッチングのエッチャントは既述したものと同様とすることができる。その後、金属膜26、およびレジスト層42を除去することにより、図13および図14に示すような3本以上の奇数本の本数の片持ち梁30が形成される。
【0048】
片持ち梁30は、3本以上の奇数本、形成される。図示の例では、各片持ち梁30は、圧電基板10に連続し、梁形成領域12の端から突出した形状を有している。また、各片持ち梁30は、梁形成領域12内で、圧電基板10に連続して形成された支持部(図示せず)に連続し、該支持部から突出した形状であってもよい。すなわち、梁形成領域12内に圧電基板10を残してパターニングし、該残った圧電基板10を支持部として、各片持ち梁30が、該支持部に接続するように形成されてもよい。図14に示す例では、片持ち梁30は、中央の1本の片持ち梁32および中央の片持ち梁32に離間して両側に平行に配列された2本の片持ち梁34の合計3本が、梁形成領域12に形成され、梁形成領域12の外側の圧電基板10に支持される構成となっている。また、各片持ち梁30の支持端は、図示の例のように一直線上に配置されることが好ましい。このようにすれば、圧電基板10への振動漏れをさらに抑制することができる。
【0049】
片持ち梁30は、ウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100の振動部となる。本実施形態のウォーク型振動片100またはウォーク型振動片100において、片持ち梁30は、いずれも、圧電基板10に平行な面に対して面外方向に変位の成分を有して振動する。各片持ち梁30は、隣り合う片持ち梁30とは逆方向に変位して振動する(図16および図18参照)。そのため、各片持ち梁30が振動するとき、圧電基板10の厚み方向(面外方向)への質量の変位が互いに相殺されて、圧電基板10への振動漏れが抑制される。また、片持ち梁30の本数が3本以上の奇数本(3本、5本、7本等)であるため、片持ち梁30の延びる方向の軸の周りのモーメントが、中央の片持ち梁30(32)に対して対称に配置された2本の片持ち梁30(34)によって、互いに相殺され、圧電基板10への振動漏れが抑制される。
【0050】
以上の工程を経ることによって、図13および図14に示すような形状に圧電基板10を加工することができる。
【0051】
本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、さらに、薄膜圧電素子70を形成する工程を有することができる。
【0052】
薄膜圧電素子70は、各片持ち梁30の上面に形成することができる。薄膜圧電素子70は、たとえば、下部電極72、圧電体層74、および上部電極76が積層された、薄膜構造とすることができる。薄膜圧電素子70を形成する方法としては、たとえば、以下の方法を例示することができる。
【0053】
薄膜圧電素子70は、下部電極72を形成する工程と、上部電極76および圧電体層74を形成する工程と、によって形成することができる。
【0054】
まず、各片持ち梁30の上面の所望の位置に、下部電極72を形成する。下部電極72は、たとえば、Au、Cr、Al、Ti、Mo、Pt等の導電材料で形成される。下部電極72は、たとえば、スパッタ法、真空蒸着、CVD法などの方法で全面に導電層を形成した後、パターニングして、形成することができる。このパターニングにおいて、下部電極72から引き出される配線(図示せず)も形成することができる。下部電極72が形成される位置は、任意であるが、片持ち梁30の支持端付近に形成されることが好ましい。下部電極層72のエッチングは、フォトリソグラフィー等の方法で行うことができる。
【0055】
次に、圧電体層74および上部電極76を形成する工程を行う。まず、圧電体層74を片持ち梁30の上面および下部電極72の上に形成する。圧電体層74の材質としては、たとえば酸化亜鉛、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸鉛などを挙げることができる。圧電体層74は、スパッタ法、蒸着法、ゾルゲル法やCVD法などによって形成されることができる。たとえば、ゾルゲル法においては、原料溶液塗布、予備加熱、結晶化アニールの一連の作業を複数回繰り返して所望の膜厚にしてもよい。次いで、圧電体層74の上に上部電極76を形成する。上部電極76は、下部電極72と同じ材質とすることができる。なお、圧電体層74の結晶化アニールは、上部電極76を形成した後に行ってもよい。次に、上部電極76および圧電体層74をパターニングすることにより、薄膜圧電素子70が形成される。本工程は、フォトリソグラフィー等の方法を用いマスク等を形成して行うことができる。本工程のエッチングは、たとえば公知のドライエッチング等の方法により行うことができる。以上のようにすれば、薄膜圧電素子70を形成することができる。
【0056】
本実施形態の製造方法において、上記の薄膜圧電素子70を形成する工程と、必要に応じて個片化する工程を行うことにより、図15および図16に示すようなウォーク型振動片100を製造することができる。なお、個片化する工程は、ダイシング等によって行われることができ、たとえば、梁形成領域12を圧電基板10が包囲するように個片化されてもよいし、図16に示すように圧電基板10の一辺から各片持ち梁30が突出するように個片化されてもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、厚みすべり振動の周波数を測定して精密な厚みを測定する周波数測定工程を有するとともに、薄肉化工程および周波数測定工程が、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。これにより、ウォーク型振動片の片持ち梁30の厚みを精度良く形成することができる。したがって、非常に小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0058】
1.2.ウォーク型振動片
図16は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の一例であるウォーク型振動片100を模式的に示す斜視図である。図16には、X方向、Y方向、およびZ方向および各符号を説明の便宜上書き加えた。以下の説明において、「1.1.ウォーク型振動片の製造方法」で述べた事項と同様の事項は、説明を省略する。
【0059】
本実施形態のウォーク型振動片100は、基体80と、3本以上の奇数本の片持ち梁30と、薄膜圧電素子70と、を有する。
【0060】
基体80は、互いに直交するX方向およびY方向によって張られるXY平面に展開され、XY平面に直交するZ方向に厚みを有する。基体80は、「1.1.ウォーク型振動片の製造方法」で述べた圧電基板10の梁形成領域12以外の部分と実質的に同様である。基体80は、ウォーク型振動片100の支持部として機能することができる。基体80の形状は、任意であり、図示のような直方体の形状であってもよく、片持ち梁30を包囲するフレーム状の形状であってもよい。また、基体80は、片持ち梁30を支持するための支持部を有していてもよい。該支持部としては、たとえば、基体80の厚みよりも小さい厚みを有して、基体80から延出した形状を有するものが挙げられる。
【0061】
片持ち梁30は、基体80のY方向に平行な辺からY方向に突出し、X方向に互いに離間して並列して設けられる。片持ち梁30は、上述した基体80の支持部から突出していてもよい。片持ち梁30の本数は、3本以上の奇数本である。片持ち梁30は、後述の薄膜圧電素子70に励振信号が印加されたとき、XY平面の面外方向に、かつ、隣合う片持ち梁30と互いに逆方向に振動する。ここで、XY平面の面外方向に振動するとは、図16に矢印で示すように、各片持ち梁30の屈曲振動における変位が、Z方向の成分を有していることを指す。
【0062】
基体80および片持ち梁30は、厚み方向(Z方向)に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じるカット角の水晶で形成される。基体80および片持ち梁30は、このようなカット角の水晶のうち、基体80および片持ち梁30は、ATカットの水晶で形成されることもできる。基体80および片持ち梁30がATカットの水晶で形成される場合は、片持ち梁30の寸法精度をさらに高めることができる。また、基体80のZ方向の厚みは、片持ち梁30のZ方向の厚みよりも大きく形成されていてもよい。このようにすれば、片持ち梁30が非常に薄い場合でもウォーク型振動片100の取り扱いを容易にすることができる。
【0063】
薄膜圧電素子70は、片持ち梁30のそれぞれに設けられる。薄膜圧電素子70は、励振信号が印加されたときにY方向に伸縮成分を有して伸縮する。薄膜圧電素子70は、片持ち梁30のZ方向に垂直な表面の少なくとも一方の上に設けられる。したがって、薄膜圧電素子70が駆動したときに、片持ち梁30の厚み方向に変位の大きさの分布が生じ、片持ち梁30に厚み方向(Z方向)の屈曲を生じさせることができる。薄膜圧電素子70は、たとえば、下部電極72、圧電体層74、および上部電極76が積層された、薄膜構造とすることができる。
【0064】
以上のようなウォーク型振動片100は、片持ち梁30のZ方向の厚みの精度が高い。そのため、片持ち梁30のY方向の長さを小さくしたときに、屈曲振動の周波数を決定する片持ち梁30の厚みを設計に極めて近付けることができる。そのため、このようなウォーク型振動片100は、容易に小型化することができる。
【0065】
2.第2実施形態
2.1.ウォーク型振動片の製造方法
図17〜図20は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の製造方法を模式的に説明する図である。図17〜図19は、本実施形態にかかるウォーク型振動片200の製造工程を模式的に示す断面図である。図20は、本実施形態にかかるウォーク型振動片200の製造工程を模式的に示す底面図である。なお、上記の各断面図は、図20のC−C線の断面に相当する。図21は、ウォーク型振動片200を模式的に示す斜視図である。
【0066】
本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、梁形成領域を設けず、片持ち梁と、圧電基板の厚みを同じ厚みで形成する以外は、第1実施形態で述べたウォーク型振動片の製造方法と同様である。したがって、第1実施形態で述べたと実質的に同様の事項、および同じ符号を付した部材については説明を省略する。
【0067】
本実施形態のウォーク型振動片200の製造方法は、圧電基板10を用意する工程と、圧電基板10を薄くする薄肉化工程と、周波数測定工程と、3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、を有する。
【0068】
まず、圧電基板10を用意する。本工程は、第1実施形態の圧電基板10を用意する工程と同様である。
【0069】
次に、本実施形態では、圧電基板10を薄くする薄肉化工程を行う。本工程は、研磨、化学機械研磨、ラッピング、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一種によって行われることができる。本実施形態では、圧電基板10は、全面が薄肉化される。圧電基板10は、片面側から、または両面側から薄肉化されることができる。ここで、一般に、ドライエッチングは、エッチング速度が小さい。そのため、後述する圧電基板10の厚みの調整において、少なくとも最後に行われる本工程は、ドライエッチングで行われることがより好ましい。このようにすれば、圧電基板10の厚みの微調整をより容易に行うことができる。
【0070】
次に、周波数測定工程を行う。本工程は、圧電基板10の厚み方向に電圧信号を印加して、圧電基板10に厚みすべり振動を発生させ、その厚みすべり振動の周波数を測定する工程である。本工程では、第1実施形態で述べたと同様に、極めて精密に圧電基板10の厚みを測定することができる。したがって、本工程を経ると、あらかじめ設計した圧電基板10の厚みに達したかどうかを判断することができる。また、本工程は、たとえば、第1実施形態で述べた測定プローブ50を用いて行うことができる。
【0071】
本実施形態においても、薄肉化工程および周波数測定工程は、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。この事項は、第1実施形態で述べたと同様である。
【0072】
次に、片持ち梁を形成する工程を行う。本工程は、第1実施形態で、梁形成領域12の圧電基板10に対して行った工程と同様である。本工程を経ると、図22に示されるような片持ち梁30が形成される。
【0073】
次に、各片持ち梁30の上に薄膜圧電素子70を設ける。薄膜圧電素子70は、第1実施形態と同様にして設けることができる。この後、適宜ダイシングして個片化する工程を行って、図21に示す本実施形態のウォーク型振動片200が完成する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態のウォーク型振動片の製造方法は、厚みすべり振動の周波数を測定して精密な厚みを測定する周波数測定工程を有するとともに、薄肉化工程および周波数測定工程が、周波数測定工程で測定される厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される。これにより、ウォーク型振動片の片持ち梁の厚みを精度良く形成することができる。したがって、非常に小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を容易に製造することができる。
【0075】
2.2.ウォーク型振動片
図21は、本実施形態にかかるウォーク型振動片の一例であるウォーク型振動片200を模式的に示す斜視図である。本実施形態のウォーク型振動片200は、基体80および片持ち梁30のZ方向の厚みが同じである以外は、第1実施形態で述べたウォーク型振動片100と同様である。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明にかかるウォーク型振動片の製造方法によれば、小型でかつ精度の高いウォーク型振動片を製造することができる。また、本発明にかかるウォーク型振動片は、小型化が容易である。したがって、広範な分野の製品に用いられる圧電振動子に本発明のウォーク型振動片を搭載すれば、より小型で高性能な製品を提供できる。
【符号の説明】
【0078】
10…圧電基板、12…梁形成領域、20,26…金属膜、22…Cr層、
24…Au層、30,32,34…片持ち梁、40,42…レジスト層、
50,52…測定プローブ、54…配線、60…電極、70…薄膜圧電素子、
72…下部電極、74…圧電体層、76…上部電極、80…基体、
100,200…ウォーク型振動片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板の表面に耐蝕防止膜を形成する工程と、
前記耐蝕防止膜をパターニングして、前記圧電基板に梁形成領域を画定する工程と、
前記耐蝕防止膜をマスクとして、前記圧電基板をエッチングして、前記梁形成領域の前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板に、厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記耐蝕防止膜を除去する工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を含み、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、各前記片持ち梁の上面に薄膜圧電素子を形成する工程を含む、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項3】
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板をエッチングして、前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記圧電基板に厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を有し、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
さらに、各前記片持ち梁の上面および下面の少なくとも一方に薄膜圧電素子を形成する工程を含む、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記金属膜は、Cr層およびAu層を積層して形成される、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記薄肉化工程は、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一方により行われ、
複数の前記薄肉化工程のうち、少なくとも最後の前記薄肉化工程は、ドライエッチングにより行われる、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記薄肉化工程は、前記圧電基板の片面側からエッチングすることにより行われる、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記圧電基板は、水晶基板である、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
前記圧電基板は、ATカットの水晶基板である、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項10】
互いに直交するX方向およびY方向によって張られるXY平面に展開され、前記XY平面に直交するZ方向に厚みを有する基体と、
前記基体の前記X方向に平行な辺から前記Y方向に突出し、前記X方向に互いに離間して並列して設けられた3本以上の奇数本の片持ち梁と、
前記片持ち梁のそれぞれに設けられ、励振信号が印加されたときに前記Y方向に伸縮成分を有して伸縮する薄膜圧電素子と、
を有し、
前記基体および前記片持ち梁は、前記Z方向に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じるカット角の水晶で形成され、
前記薄膜圧電素子は、前記片持ち梁の前記Z方向に垂直な表面の一方の上に設けられ、
前記薄膜圧電素子に励振信号が印加されたとき、前記片持ち梁は、前記XY平面の面外方向に、かつ、隣合う前記片持ち梁と互いに逆方向に振動する、ウォーク型振動片。
【請求項11】
請求項10において、
前記基体の前記Z方向の厚みは、前記片持ち梁の前記Z方向の厚みよりも大きい、ウォーク型振動片。
【請求項12】
請求項10または請求項11において、
前記基体および前記片持ち梁は、カット角がATカットである、ウォーク型振動片。
【請求項1】
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板の表面に耐蝕防止膜を形成する工程と、
前記耐蝕防止膜をパターニングして、前記圧電基板に梁形成領域を画定する工程と、
前記耐蝕防止膜をマスクとして、前記圧電基板をエッチングして、前記梁形成領域の前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板に、厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記耐蝕防止膜を除去する工程と、
前記梁形成領域の前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を含み、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、各前記片持ち梁の上面に薄膜圧電素子を形成する工程を含む、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項3】
厚み方向に電圧信号が印加されたとき厚みすべり振動を発生する圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板をエッチングして、前記圧電基板を薄くする薄肉化工程と、
前記圧電基板に厚み方向の前記電圧信号を印加して厚みすべり振動を発生させ、当該厚みすべり振動の周波数を測定する周波数測定工程と、
前記圧電基板をパターニングして、前記圧電基板から突出し互いに離間して並列された3本以上の奇数本の片持ち梁を形成する工程と、
を有し、
前記薄肉化工程および前記周波数測定工程は、前記周波数測定工程で測定される前記厚みすべり振動の周波数が所定の値に達するまで、交互に繰り返される、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
さらに、各前記片持ち梁の上面および下面の少なくとも一方に薄膜圧電素子を形成する工程を含む、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記金属膜は、Cr層およびAu層を積層して形成される、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記薄肉化工程は、ウエットエッチングおよびドライエッチングの少なくとも一方により行われ、
複数の前記薄肉化工程のうち、少なくとも最後の前記薄肉化工程は、ドライエッチングにより行われる、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記薄肉化工程は、前記圧電基板の片面側からエッチングすることにより行われる、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記圧電基板は、水晶基板である、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
前記圧電基板は、ATカットの水晶基板である、ウォーク型振動片の製造方法。
【請求項10】
互いに直交するX方向およびY方向によって張られるXY平面に展開され、前記XY平面に直交するZ方向に厚みを有する基体と、
前記基体の前記X方向に平行な辺から前記Y方向に突出し、前記X方向に互いに離間して並列して設けられた3本以上の奇数本の片持ち梁と、
前記片持ち梁のそれぞれに設けられ、励振信号が印加されたときに前記Y方向に伸縮成分を有して伸縮する薄膜圧電素子と、
を有し、
前記基体および前記片持ち梁は、前記Z方向に電圧信号が印加されたときに厚みすべり振動を生じるカット角の水晶で形成され、
前記薄膜圧電素子は、前記片持ち梁の前記Z方向に垂直な表面の一方の上に設けられ、
前記薄膜圧電素子に励振信号が印加されたとき、前記片持ち梁は、前記XY平面の面外方向に、かつ、隣合う前記片持ち梁と互いに逆方向に振動する、ウォーク型振動片。
【請求項11】
請求項10において、
前記基体の前記Z方向の厚みは、前記片持ち梁の前記Z方向の厚みよりも大きい、ウォーク型振動片。
【請求項12】
請求項10または請求項11において、
前記基体および前記片持ち梁は、カット角がATカットである、ウォーク型振動片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−187059(P2010−187059A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28198(P2009−28198)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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