説明

エアクリーナダクト

【課題】 本発明はエアクリーナダクトに関し、キャブの種類によりインテークダクトとの接続位置にズレがあっても対応可能で、何れのキャブ仕様にも共用できるエアクリーナダクトを提供することを目的とする。
【解決手段】 シャシフレームに装着され、エアクリーナダクト本体の上面に、キャブのキャブバックに取り付くインテークダクトとの接続孔が設けられ、エアクリーナダクト本体の一側面に、シャシフレームに装着されたエアクリーナとの接続孔が設けられたボックス状のエアクリーナダクトに於て、上記一側面に取付孔を開口し、当該取付孔に、その形状に沿って別途設けた調節部材を取付方向を変えて取付可能とすると共に、当該調節部材に、その中心から偏移させてエアクリーナとの接続孔を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気系に使用されるエアクリーナダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
大気をろ過し、清浄な空気をエンジンへ供給する目的で、従来、車両の吸気系にはエアクリーナが装着されている。
そして、キャブの下方にエンジンを搭載したキャブオーバ型トラックに於て、特許文献1及び図8に示すようにシャシフレーム1側にエアクリーナ3を装着し、キャブ5のキャブバック7にインテークダクト9を上下方向に取り付けた構造が広く知られている。そして、エンジンのメンテナンス等の目的でキャブ5をチルトアップさせることから、ボックス状のエアクリーナダクト11をシャシフレーム1側に取り付けて、当該エアクリーナダクト11の一側面に設けたパイプ挿入孔にエアクリーナ3側のパイプ13を挿着すると共に、インテークダクト9の下側に蛇腹状のラバー15を取り付け、当該ラバー15の端部を、エアクリーナダクト11上面の吸気口の周縁部に設けたガイド部材に着脱自在に係合させる構造が一般的である。
【0003】
図9は上記エアクリーナダクト11の背面図、図10はエアクリーナダクト11の底面図を示し、エアクリーナダクト11のエアクリーナダクト本体11aは樹脂を用いてボックス状に成形され、その一側面(正面)17に、周縁部にリング状のシールゴム19がリベット止めされたパイプ挿入孔(接続孔)21が開口し、当該パイプ挿入孔21にパイプ13が気密性を以って挿着されるようになっている。
【0004】
そして、エアクリーナダクト本体11aの上面23に筒状の吸気口(接続孔)25が開口すると共に、当該吸気口25の先端周縁部に、ラバー15の端部を案内するフレーム状のガイド部材27が上方へ突出して取り付けられており、キャブ5をチルトダウンさせた際に当該ガイド部材27に沿ってラバー15の端部が吸気口25に容易に係合して、インテークダクト9がエアクリーナ3にエアクリーナダクト11を介して接続されるようになっている。
【0005】
ところで、トラックの仕様に応じ、キャブには大きく分けて標準的な幅のタイプとこれよりも幅広なタイプのものがあり、キャブバックに取り付くインテークダクトもキャブの種類に応じ取付位置が異なる。
これに対し、従来、エアクリーナはシャシフレーム側の所定位置に固定的に取り付けられているため、キャブの種類(車両レイアウト)によりエアクリーナダクトとインテークダクトの接続位置が相対的に異なることとなって、前記エアクリーナダクト11を共用させることができなかった。
【0006】
このため、従来では、図9に示すようにパイプ挿入孔21と吸気口25をA寸法分ずらしたエアクリーナダクト本体11aと、図11に示すエアクリーナダクト29の如くパイプ挿入孔21と吸気口25をB寸法分(A>B)ずらしたエアクリーナダクト本体29aを別途製造して、これらをキャブの種類毎に使い分けているのが実情であった。
【特許文献1】特公平6−76013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、斯様に2種類のエアクリーナダクト本体を別途製造することで、型投資に費やすコストが高騰してしまう不具合が指摘されており、斯かる不具合の改善が要望されている。
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、キャブの種類によりインテークダクトとの接続位置にズレがあっても対応可能で、何れのキャブ仕様にも共用できるエアクリーナダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、シャシフレームに装着され、エアクリーナダクト本体の上面に、キャブのキャブバックに取り付くインテークダクトとの接続孔が設けられ、エアクリーナダクト本体の一側面に、シャシフレームに装着されたエアクリーナとの接続孔が設けられたボックス状のエアクリーナダクトに於て、上記一側面に取付孔を開口し、当該取付孔に、その形状に沿って別途設けた調節部材を取付方向を変えて取付可能とすると共に、当該調節部材に、その中心から偏移させてエアクリーナとの接続孔を設けたことを特徴とする。
【0009】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のエアクリーナダクトに於て、取付孔及び調節部材は、夫々、平面視長円形に成形され、当該調節部材に、その中心から長径方向へ偏移させて平面視円形状の接続孔が設けられていることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のエアクリーナダクトに於て、調節部材はエアクリーナダクト本体と同一材料で成形され、エアクリーナとの接続孔の周縁部にシールゴムが取り付けられていることを特徴とし、請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のエアクリーナダクトに於て、調節部材はゴムで成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
各請求項に係る発明によれば、取付方向を変えて取付孔に調節部材を取り付けることで、インテークダクトの取付位置の異なるキャブの仕様に対処できるため、従来の如く2種類のダクト本体を別途製造する必要がなくなり、型投資に費やすコストの削減が可能となる。
そして、請求項3に係る発明によれば、従来のシールゴムをそのまま使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、図8以下に示す従来例と同一のものは同一符号を付してそれらの構造説明は省略する。
図1に於て、31は請求項1乃至請求項3の一実施形態に係るエアクリーナダクトを示し、当該エアクリーナダクト31は、図9のエアクリーナダクト11と同様、シャシフレーム1の所定位置に装着される。
【0012】
而して、エアクリーナダクト31のエアクリーナダクト本体(以下、「ダクト本体」という)31aは、既述したダクト本体11aと同一材料を用いて同一寸法に成形され、その上面33に筒状の吸気口25が開口すると共に、当該吸気口25の先端周縁部に、インテークダクト9の下側に取り付けたラバー15の端部を案内するガイド部材27が上方へ突出して取り付けられており、キャブ5をチルトダウンさせた際に、当該ガイド部材27に沿ってラバー15の端部が吸気口25に容易に係合するようになっている。
【0013】
そして、ダクト本体31aの一側面(正面)35の上部には、その左右方向に沿って平面視長円形の取付孔37が開口している。
また、図1中、39は取付孔37の形状に沿って別途成形した板状の調節部材で、当該調節部材39はダクト本体31aと同一材料で成形され、図2に示すようにその周縁部が取付孔37の外側周縁部に沿ってリベット(図示せず)または接着剤等で固着されている。
【0014】
そして、上記調節部材39には、エアクリーナ3側のパイプ13が挿入可能な平面視円形状のパイプ挿入孔21が、調節部材39の中心から長径方向へ偏移して設けられており、図1及び図4の如くパイプ挿入孔21がダクト本体31aの左側に位置するように調節部材39を取付孔37の外側周縁部に沿ってリベットで固着すると、図9のエアクリーナダクト11と同様、パイプ挿入孔21と吸気口25がA寸法分ずれるようになっている。
【0015】
また、調節部材39の表裏を反転させ、或いは調節部材39を180°回転させることによりその取付方向を変えて、図3の如くパイプ挿入孔21がダクト本体31aの右側に位置するように調節部材39を取付孔37の外側周縁部に沿ってリベット等で固着すると、図11のエアクリーナダクト29と同様、パイプ挿入孔21と吸気口25がB寸法分ずれるようになっている。
【0016】
そして、従来と同様、パイプ挿入孔21の周縁部には、気密性を確保するためにリング状のシールゴム19が係合している。
本実施形態はこのように構成されているから、エアクリーナダクト31をシャシフレーム1に装着するに当たり、インテークダクト9の取付位置の異なるキャブ5の仕様に応じ、調節部材39の取付方向を図3または図4の如く選択して取付孔37に固着した後、エアクリーナ3のパイプ13をパイプ挿入孔21に挿着してエアクリーナダクト31をシャシフレーム1に装着すればよい。そして、キャブ5をチルトダウンさせると、ガイド部材27に沿ってラバー15の端部が吸気口25に係合して、インテークダクト9がエアクリーナダクト31を介してエアクリーナ3に接続される。
【0017】
また、キャブ5をチルトアップさせると、ラバー15と吸気口25との係合状態が解除されてインテークダクト9がエアクリーナダクト31から離間する。
このように本実施形態は、パイプ挿入孔21を設けた調節部材39の取付方向を変えることで、インテークダクト9の取付位置の異なるキャブ5の仕様に対処できるため、従来の如く2種類のダクト本体を別途製造する必要がなくなり、この結果、型投資に費やすコストの削減が可能となった。
【0018】
而も、本実施形態によれば、従来使用していたシールゴム19をそのまま用いることができる。
図5乃至図7は請求項1,請求項2及び請求項4の一実施形態に係るエアクリーナダクトに用いる調節部材を示し、以下、本実施形態を図面に基づき詳細に説明するが、図1の実施形態及び図8以下の従来例と同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
【0019】
而して、本実施形態は、前記調節部材39に代え、調節部材41全体をシールゴム19と同一材料を用いて前記取付孔37の形状に沿った平面視長円形に成形したもので、図6及び図7に示すように調節部材41は一側面35(ダクト本体31a)よりも肉厚に成形されている。そして、調節部材41の周縁部には、取付孔37の周縁部に係合可能な係合溝43が全周に亘って設けられており、当該係合溝43に取付孔37の周縁部を係合させて調節部材41が取付孔37に取り付くと共に、調節部材41の表裏を反転させ、或いは調節部材41を180°回転させてその取付方向を変えても、調節部材41が取付孔37に取り付くようになっている。
【0020】
そして、この調節部材41にも、エアクリーナ3側のパイプ13が挿入可能な平面視円形状のパイプ挿入孔45が、調節部材41の中心から長径方向へ偏移して設けられており、図示しないが図4の前記実施形態と同様、パイプ挿入孔45がダクト本体31aの左側に位置するように調節部材41を取付孔37に取り付けると、図9のエアクリーナダクト11と同様、パイプ挿入孔45と吸気口25がA寸法分ずれ、また、調節部材41の取付方向を変えて図3と同様、パイプ挿入孔45がダクト本体31aの右側に位置するように調節部材41を取付孔37に取り付けると、図11のエアクリーナダクト29と同様、パイプ挿入孔45と吸気口25がB寸法分ずれるようになっている。
【0021】
本実施形態はこのように構成されているから、エアクリーナダクトをシャシフレーム1に装着するに当たり、インテークダクト9の取付位置の異なるキャブ5の仕様に応じ、調節部材41の取付方向を上述の如く選択して取付孔37に固着した後、エアクリーナ3のパイプ13をパイプ挿入孔45に挿着してエアクリーナダクトをシャシフレーム1に装着すればよい。そして、キャブ5をチルトダウンさせると、ガイド部材27に沿ってラバー15の端部が吸気口25に係合して、インテークダクト9がエアクリーナダクトを介してエアクリーナ3に接続される。
【0022】
また、キャブ5をチルトアップさせると、ラバー15と吸気口25との係合状態が解除されてインテークダクト9がエアクリーナダクトから離間する。
このように本実施形態によっても、パイプ挿入孔45を設けた調節部材41の取付方向を変えることで、インテークダクト9の取付位置の異なるキャブ5の仕様に対処できるため、従来の如く2種類のダクト本体を別途製造する必要がなくなり、この結果、型投資に費やすコストの削減が可能となった。
【0023】
尚、上述した各実施形態では、調節部材39,41を平面視長円形に成形したが、調節部材を平面視楕円形状に成形してもよく、表裏を反転させ、或いは上述の如く180°回転させてその取付方向を変えてダクト本体に取付け可能な形状であれば、調節部材の外形形状は如何なるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】請求項1乃至請求項3の一実施形態に係るエアクリーナダクトの一部切欠き背面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示すエアクリーナダクトの概略正面図である。
【図4】図1に示すエアクリーナダクトの概略正面図である。
【図5】請求項1,請求項2及び請求項4の一実施形態に係るエアクリーナダクトに用いる調節部材の正面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】取付方向を代えた図5の調節部材の断面図である。
【図8】エアクリーナダクト,インテークダクト及びエアクリーナの取付状態を説明するキャブオーバ型トラックの概略側面図である。
【図9】従来のエアクリーナダクトの背面図である。
【図10】図9に示すエアクリーナダクトの底面図である。
【図11】従来の他のエアクリーナダクトの背面図である。
【符号の説明】
【0025】
21,45 パイプ挿入孔
25 吸気口
27 ガイド部材
31 エアクリーナダクト
31a ダクト本体
35 一側面
37 取付孔
39,41 調節部材
43 係合溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシフレームに装着され、エアクリーナダクト本体の上面に、キャブのキャブバックに取り付くインテークダクトとの接続孔が設けられ、エアクリーナダクト本体の一側面に、シャシフレームに装着されたエアクリーナとの接続孔が設けられたボックス状のエアクリーナダクトに於て、
上記一側面に取付孔を開口し、当該取付孔に、その形状に沿って別途設けた調節部材を取付方向を変えて取付可能とすると共に、当該調節部材に、その中心から偏移させてエアクリーナとの接続孔を設けたことを特徴とするエアクリーナダクト。
【請求項2】
取付孔及び調節部材は、夫々、平面視長円形に成形され、当該調節部材に、その中心から長径方向へ偏移させて平面視円形状の接続孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナダクト。
【請求項3】
調節部材はエアクリーナダクト本体と同一材料で成形され、エアクリーナとの接続孔の周縁部にシールゴムが取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアクリーナダクト。
【請求項4】
調節部材は、全体がゴムで成形されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアクリーナダクト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−15813(P2006−15813A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193328(P2004−193328)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】