説明

エネルギー管理システムおよび方法

【課題】法規制に伴うエネルギー管理と企業独自のエネルギー管理とが実施される場合に、管理者の手間を削減する。
【解決手段】エネルギー管理システムは、電気、燃料、熱の使用量を入力する電気・燃料・熱使用量入力部1と、法規制により規定された第1の換算係数を法規制毎およびエネルギー種別毎に設定する換算係数設定部3と、企業独自の第2の換算係数をエネルギー種別毎に設定する換算係数設定部4と、電気、燃料または熱の使用量から、第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量、第2の換算係数に基づくエネルギー使用量、第2の換算係数に基づく温室効果ガス排出量のうち少なくとも1つを算出するエネルギー使用量算出部8および温室効果ガス排出量算出部9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法規制に伴うエネルギー管理と企業独自のエネルギー管理とを個別に、もしくは同時に実施できるようにしたエネルギー管理システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力使用量やガス使用量をエネルギー使用量に換算したり温室効果ガス排出量に換算したりして、例えば新規技術導入によるエネルギーコスト削減効果や温室効果ガス削減効果を評価し、企業や自治体などのような事業者の温暖化対策を支援する温暖化対策計画策定システムが提案されている(特許文献1参照)。この温暖化対策計画策定システムでは、電力使用量やガス使用量をエネルギー使用量に換算するための換算係数あるいは温室効果ガス排出量に換算するための換算係数は、各エネルギー種別に関して一つに決められていた。
【0003】
しかしながら、エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)や地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)など、報告対象となる法規制ごとに算定対象となる事業所やエネルギー種別は異なる。また、同じエネルギー種別であっても、算定のために適用しなければならない換算係数が異なる場合がある。さらに、同一の法規制であっても、換算係数は、毎年、その値が変化する。
【0004】
一方で、企業独自の環境報告書の作成などにおいては、絶対的なエネルギー使用量の大きさを評価するために、複数年にまたがる評価期間において、同一のエネルギー種別に対しては、同一の換算係数でエネルギー使用量を算定する必要がある。また、例えば、東京電力や関西電力などのエネルギー供給会社による換算係数の差異も無くして算定する必要がある。
したがって、換算係数が法規制により変化することは、評価の正確性を維持する上で、エネルギー管理者の多大な手間に繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−65935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシステムでは、事業所などで使用する電気やガスなどの各エネルギー種別に対して換算係数が1エネルギー種別あたり1個なので、エネルギー使用量や温室効果ガス排出量の算定方式が異なる場合には、その都度、換算係数を設定し直さなければならないという問題点があった。例えば省エネ法に対応する換算係数を使用して、温対法に対応する温室効果ガス排出量を算出することはできないので、換算係数を設定し直す必要があり、同様に企業独自の換算係数を使用して、省エネ法や温対法に対応するエネルギー使用量や温室効果ガス排出量を算出することはできないので、換算係数を設定し直す必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、法規制に伴うエネルギー管理と企業独自のエネルギー管理とが実施される場合に、管理者の手間を削減することができるエネルギー管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエネルギー管理システムは、電気、燃料または熱の使用量を入力する使用量入力手段と、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、法規制により規定された第1の換算係数を法規制毎およびエネルギー種別毎に設定する第1の換算係数設定手段と、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、企業独自の第2の換算係数をエネルギー種別毎に設定する第2の換算係数設定手段と、電気、燃料または熱の使用量から、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量、前記第2の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第2の換算係数に基づく温室効果ガス排出量のうち少なくとも1つを算出する算出手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例において、前記第1の換算係数設定手段は、前記第1の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第1の換算係数を設定・変更することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例は、さらに、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第2の換算係数の設定・変更を許可または禁止する換算係数変更許可/禁止設定手段を備え、前記第2の換算係数設定手段は、前記第2の換算係数の設定・変更が許可されているときのみ、前記第2の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第2の換算係数を設定・変更することを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例は、さらに、前記第2の換算係数の設定・変更があったときに、設定・変更履歴情報を含むログファイルを記憶する換算係数変更ログ記憶手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例は、さらに、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、法規制の対象となる事業所を示す事業所情報を入力する事業所情報設定手段を備え、前記算出手段は、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、または前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量の算出を行う場合に、前記事業所情報に基づいて、法規制の対象となる事業所のみ算出を行うことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のエネルギー管理方法は、電気、燃料または熱の使用量を入力する使用量入力ステップと、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、法規制により規定された第1の換算係数を法規制毎およびエネルギー種別毎に設定する第1の換算係数設定ステップと、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、企業独自の第2の換算係数をエネルギー種別毎に設定する第2の換算係数設定ステップと、電気、燃料または熱の使用量から、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量、前記第2の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第2の換算係数に基づく温室効果ガス排出量のうち少なくとも1つを算出する算出ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、法規制により規定された第1の換算係数と企業独自の第2の換算係数とを別々に設定することにより、目的に応じて換算係数を設定し直す必要がなくなるので、換算係数を設定する管理者の手間を省くことができる。また、本発明では、法規制に基づくエネルギー使用量や温室効果ガス排出量と、企業独自の算定方式に基づくエネルギー使用量や温室効果ガス排出量とを同時に算出することができる。
【0012】
また、本発明では、第1の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、第1の換算係数を設定・変更するので、管理者は第1の換算係数の設定の手間を省くことができる。
【0013】
また、本発明では、第2の換算係数の設定・変更が許可されているときのみ、第2の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、第2の換算係数を設定・変更することにより、間違いによる変更や故意による改竄を防止することができる。
【0014】
また、本発明では、第2の換算係数の設定・変更があったときに、設定・変更履歴情報を含むログファイルを記憶することにより、換算係数の設定・変更の責任の所在を明確にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るエネルギー管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るエネルギー管理システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るエネルギー管理システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態において企業が独自に行うエネルギー管理の概要を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における企業が独自に設定した換算係数の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において法規制に伴うエネルギー管理の概要を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態における法規制用の換算係数の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における事業所情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の原理]
法規制に伴うエネルギー管理では、法規制ごとに算定対象となるエネルギー種別や換算係数が異なることや毎年のように換算係数が更新されることに対し、エネルギー管理システムの提供者(法規制に対応できる専門家側)からトップダウン的に換算係数の変更を受けられるのが、手間を削減するためには好ましい。一方、企業独自のエネルギー管理では、法規制に影響されずに独自の換算係数を自由に設定できる状態にあることが好ましい。すなわち、発明者は、目的の異なるエネルギー管理が複数実施されるにも拘わらず、システム上に用意されている換算係数が1エネルギー種別あたり1つだけであることが、エネルギー管理者の多大な手間に繋がる一要因であることに着眼した。
【0017】
そして、発明者は、法規制のようにユーザが自由に換算係数を設定すべきではないものと、環境報告のようにユーザがある程度自由に換算係数を設定すべきものとを分けて、1エネルギー種別あたり複数の換算係数を扱えるようにすることに想到した。この場合、換算係数が誤って変更されることを防ぐために、変更操作が可能な操作者が限定されるように構成しておくことが好ましい。
これにより、年毎に変化しない統一した換算係数を使用することで、省エネルギーに対する当該企業の取組みや努力の成果を確認することができ、省エネルギー施策の推進や対策改善が促進できる。
【0018】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るエネルギー管理システムの構成を示すブロック図である。エネルギー管理システムは、電気、燃料、熱の使用量を入力する電気・燃料・熱使用量入力部1と、電気、燃料、熱の使用量を記憶する電気・燃料・熱使用量記憶部2と、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、法規制により規定された換算係数を法規制毎およびエネルギー種別毎に設定する換算係数設定部3と、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、企業独自の換算係数をエネルギー種別毎に設定する換算係数設定部4と、換算係数を記憶する換算係数記憶部5と、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、企業独自の換算係数の設定・変更を許可または禁止する換算係数変更許可/禁止設定部6と、企業独自の換算係数の設定・変更があったときに、設定・変更履歴情報を含むログファイルを記憶する換算係数変更ログ記憶部7と、電気、燃料または熱の使用量からエネルギー使用量を算出するエネルギー使用量算出部8と、電気、燃料または熱の使用量から温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出部9と、算出結果を出力する算出結果出力部10と、法規制の対象となる事業所を示す事業所情報を入力する事業所情報設定部11と、事業所情報を記憶する事業所情報記憶部12と、エネルギー管理システムの運用責任者が使用する端末装置13と、電気、燃料、熱の使用量を入力する者が使用する端末装置14と、企業独自の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザである換算係数設定者が使用する端末装置15と、法規制により規定された換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザであるエネルギー管理の専門家が使用する端末装置16と、企業の一般社員が使用する端末装置17と、社員以外の一般ユーザが使用する端末装置18とから構成される。
【0019】
以下、本実施の形態のエネルギー管理システムの動作を説明する。図2、図3はエネルギー管理システムの動作を説明するフローチャートである。なお、図2のA,Bは、それぞれ図3のA,Bと接続されていることは言うまでもない。
まず、電気・燃料・熱使用量入力部1は、企業の事業所ごとのエネルギー入力担当者が使用する端末装置14または事業所ごとに設けられた使用量送信システム(不図示)から電気の使用量、石油やガスなどの燃料の使用量、蒸気や冷温水などの熱の使用量の情報を受け取って電気・燃料・熱使用量記憶部2に格納する(図2ステップS100)。
【0020】
次に、本実施の形態のエネルギー管理システムを使用してエネルギー管理を実行する場合で(ステップS101においてYES)、かつ企業が独自に行うエネルギー管理の場合(ステップS102においてYES)、エネルギー使用量算出部8は、企業の独自設定の換算係数を使用して、電気・燃料・熱使用量記憶部2に記憶された電気、燃料、熱の使用量からエネルギー使用量を算出する(ステップS103)。ここで、エネルギー使用量算出部8が使用する換算係数は、換算係数記憶部5に記憶されている複数種類の換算係数のうち、エネルギー使用量の算出のためにエネルギー種別毎および年度毎に企業が独自に設定した値であり、電気の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数、燃料の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数、または熱の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数である。
【0021】
温室効果ガス排出量算出部9は、企業の独自設定の換算係数を使用して、電気・燃料・熱使用量記憶部2に記憶された電気、燃料、熱の使用量からCO2排出量などの温室効果ガス排出量を算出する(ステップS104)。ここで、温室効果ガス排出量算出部9が使用する換算係数は、換算係数記憶部5に記憶されている複数種類の換算係数のうち、温室効果ガス排出量の算出のためにエネルギー種別毎および年度毎に企業が独自に設定した値であり、電気の使用量を温室効果ガス排出量に換算する換算係数、燃料の使用量を温室効果ガス排出量に換算する換算係数、または熱の使用量を温室効果ガス排出量に換算する換算係数である。
【0022】
算出結果出力部10は、エネルギー使用量算出部8の算出結果と温室効果ガス排出量算出部9の算出結果とを企業の環境報告情報として出力する(ステップS105)。ここでの出力方法としては、環境報告情報を企業の社員が使用する端末装置17に表示させる方法や、環境報告情報を企業のホームページにアップロードすることで社員以外の一般ユーザが端末装置18を使って環境報告情報を閲覧できるようにする方法などがある。こうして、環境報告情報を作成して閲覧できるようにすることで、企業は独自のエネルギー管理を実現することができる。
【0023】
図4は企業が独自に行うエネルギー管理の概要を説明する図、図5は企業が独自に設定した換算係数の例を示す図である。
上記のとおり、電気、燃料、熱の使用量の情報は、企業の事業所ごとのエネルギー入力担当者が使用する端末装置14または事業所ごとに設けられた使用量送信システム(不図示)から入力され、電気・燃料・熱使用量記憶部2に格納される。
【0024】
図5は、電気A、電気B、ガスA、ガスB、ガスCというエネルギーの種別毎および年度毎に、電気の使用量をCO2排出量に換算する換算係数、およびガスの使用量をCO2排出量に換算する換算係数の例を示している。このような企業の独自設定の換算係数がエネルギー種別毎および年度毎に換算係数記憶部5に設定されている。
【0025】
なお、図5の例では、エネルギー供給会社や年度による換算係数の差異を無くして、実質的なエネルギー使用量を評価しようとしているため、エネルギー供給会社や年度に関係なく同一の換算係数が設定されている。例えば電気A、電気Bの2009年度〜2011年度の換算係数は0.000555(t−CO2/kWh)、ガスA、ガスB、ガスCの2009年度〜2011年度の換算係数は0.002277(t−CO2/m3)である。
【0026】
エネルギー使用量算出部8は、例えばエネルギー種別が電気Aで、対象となる年度が2010年度である場合、このエネルギー種別および年度に対応するエネルギー使用量算出用の換算係数を用いて、2010年度の電気Aの使用量をエネルギー使用量に換算する。また、エネルギー使用量算出部8は、例えばエネルギー種別がガスAで、対象となる年度が2010年度である場合、このエネルギー種別および年度に対応するエネルギー使用量算出用の換算係数を用いて、2010年度のガスAの使用量をエネルギー使用量に換算する。
【0027】
温室効果ガス排出量算出部9は、エネルギー種別が電気Aで、対象となる年度が2010年度である場合、このエネルギー種別および年度に対応するCO2排出量算出用の換算係数を用いて、2010年度の電気Aの使用量をCO2排出量に換算する。また、温室効果ガス排出量算出部9は、エネルギー種別がガスAで、対象となる年度が2010年度である場合、このエネルギー種別および年度に対応するCO2排出量算出用の換算係数を用いて、2010年度のガスAの使用量をCO2排出量に換算する。
【0028】
次に、企業が独自に行うエネルギー管理で使用する換算係数は、企業が自由に設定できるようになっていることが望ましい。また、間違いによる変更や故意による改竄を防止するために、換算係数の変更を禁止できるようになっていることが好ましい。
【0029】
具体的には、エネルギー管理システムの運用責任者が端末装置13を使ってシステムにログインし、このログインの目的が換算係数の変更許可設定または変更禁止設定である場合(図2ステップS106においてYES)、換算係数変更許可/禁止設定部6は、運用責任者が操作する端末装置13からの指示に従って、換算係数の変更許可設定または変更禁止設定を行う(ステップS107)。変更禁止設定がなされると、換算係数を設定・変更できる権限を有するユーザであっても、換算係数の設定・変更を行うことができない。
【0030】
次に、企業の社員が端末装置15を使ってシステムにログインし、この社員が換算係数を設定・変更できる権限を有する換算係数設定者であり、このログインの目的が換算係数の設定・変更である場合(図3ステップS108においてYES)、換算係数設定部3は、換算係数の変更が許可されているかどうかを確認する(ステップS109)。換算係数設定部3は、換算係数変更許可/禁止設定部6による変更禁止設定がなされている場合(ステップS109においてNO)、換算係数の設定・変更ができない旨を換算係数設定者に伝えて処理を終了する。
【0031】
また、換算係数設定部3は、換算係数の変更が許可されている場合(ステップS109においてYES)、換算係数設定者が操作する端末装置15からの指示に従って、換算係数の設定・変更を行う(ステップS110)。こうして、新たな換算係数が換算係数記憶部5に設定されたり、換算係数記憶部5に既に設定されている換算係数が変更されたりする。なお、ここで設定・変更の対象となる換算係数は、上記のとおり企業の独自設定の換算係数であることは言うまでもない。
【0032】
そして、換算係数設定部3は、換算係数が設定・変更されると、対象となった換算係数、換算係数を設定・変更した日時および換算係数設定者名などの設定・変更履歴情報を含むログファイルを換算係数変更ログ記憶部7に記録する(ステップS111)。こうして、ログファイルを換算係数変更ログ記憶部7に記録しておくことにより、例えば運用責任者が端末装置13を使ってログファイルを参照することができるので、換算係数の設定・変更の責任の所在を明確にすることができる。
【0033】
次に、法規制に伴うエネルギー管理について説明する。法規制に伴うエネルギー管理の場合(図2ステップS112においてYES)、エネルギー使用量算出部8は、法規制により規定された換算係数を使用して、電気・燃料・熱使用量記憶部2に記憶された電気、燃料、熱の使用量からエネルギー使用量を算出する(ステップS113)。ここで、エネルギー使用量算出部8が使用する換算係数は、換算係数記憶部5に記憶されている複数種類の換算係数のうち、エネルギー使用量の算出のために法規制毎、エネルギー種別毎および年度毎に規定された値であり、電気の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数、燃料の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数、または熱の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数である。
【0034】
温室効果ガス排出量算出部9は、法規制により規定された換算係数を使用して、電気・燃料・熱使用量記憶部2に記憶された電気、燃料、熱の使用量からCO2排出量などの温室効果ガス排出量を算出する(ステップS114)。ここで、温室効果ガス排出量算出部9が使用する換算係数は、換算係数記憶部5に記憶されている複数種類の換算係数のうち、温室効果ガス排出量の算出のために法規制毎、エネルギー種別毎および年度毎に規定された値であり、電気の使用量を温室効果ガス排出量に換算する換算係数、燃料の使用量を温室効果ガス排出量に換算する換算係数、または熱の使用量を温室効果ガス排出量に換算する換算係数である。
【0035】
ステップS105の処理は上記のとおりである。企業が独自に行うエネルギー管理の場合と同様に、環境報告情報を作成して閲覧できるようにすることで、企業は法規制に則ったエネルギー管理を実現することができる。
【0036】
図6は法規制に伴うエネルギー管理の概要を説明する図、図7は法規制用の換算係数の例を示す図である。
図7には、省エネ法に関してエネルギー種別毎および年度毎に、電気の使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数、およびガスの使用量をエネルギー使用量に換算する換算係数の例が記載されている。省エネ法の場合、例えば電気Aの2009年度の換算係数は9.76(MJ/kWh)、ガスAの2009年度の換算係数は45(MJ/m3)である。また、図7には、温対法に関してエネルギー種別毎および年度毎に、電気の使用量をCO2排出量に換算する換算係数、およびガスの使用量をCO2排出量に換算する換算係数の例が記載されている。温対法の場合、例えば電気Aの2009年度の換算係数は0.000555(t−CO2/kWh)、ガスAの2009年度の換算係数は0.002632(t−CO2/m3)である。このような法規制により規定された換算係数が法規制毎、エネルギー種別毎および年度毎に換算係数記憶部5に設定されている。
【0037】
図8は法規制の対象となる事業所を示す事業所情報の例を示す図である。図8の例では、省エネ法、温対法という法規制毎および年度毎に事業所情報が設定されている。「○」印の事業所情報は法規制の対象となる事業所であることを示しており、「×」印の事業所情報は法規制の対象外の事業所であることを示している。
【0038】
エネルギー使用量算出部8は、例えば対象となる法規制が省エネ法で、エネルギー種別が電気A、年度が2010年度、算出したい事業所が当該年度に省エネ法の対象となる事業所Aである場合、このエネルギー種別、年度および省エネ法に対応する換算係数を用いて、2010年度の事業所Aの電気Aの使用量をエネルギー使用量に換算する。また、エネルギー使用量算出部8は、対象となる法規制が省エネ法で、エネルギー種別がガスA、年度が2010年度、算出したい事業所が事業所Aである場合、このエネルギー種別、年度および省エネ法に対応する換算係数を用いて、2010年度の事業所AのガスAの使用量をエネルギー使用量に換算する。
【0039】
温室効果ガス排出量算出部9は、例えば対象となる法規制が温対法で、エネルギー種別が電気A、年度が2010年度、算出したい事業所が当該年度に温対法の対象となる事業所Bである場合、このエネルギー種別、年度および温対法に対応する換算係数を用いて、2010年度の事業所Bの電気Aの使用量をCO2排出量に換算する。また、温室効果ガス排出量算出部9は、対象となる法規制が温対法で、エネルギー種別がガスA、年度が2010年度、算出したい事業所が事業所Bである場合、このエネルギー種別、年度および温対法に対応する換算係数を用いて、2010年度の事業所BのガスAの使用量をCO2排出量に換算する。
【0040】
なお、事業所Cは省エネ法の対象外であるので、エネルギー使用量算出部8は、事業所Cについてはエネルギー使用量を算出しない。また、事業所A,Cは温対法の対象外であるので、温室効果ガス排出量算出部9は、事業所A,CについてはCO2排出量を算出しない。
【0041】
次に、法規制により規定される換算係数は、法規制に対応できるエネルギー管理の専門家によって設定される。
具体的には、端末装置16を使ってシステムにログインした人が換算係数を設定・変更できる権限を有するエネルギー管理の専門家であり、このログインの目的が換算係数の設定・変更である場合(図3ステップS115においてYES)、換算係数設定部4は、エネルギー管理の専門家が操作する端末装置16からの指示に従って、換算係数の設定・変更を行う(ステップS116)。
【0042】
こうして、省エネ法や温対法に対応する新たな換算係数が換算係数記憶部5に設定されたり、換算係数記憶部5に既に設定されている換算係数が変更されたりする。エネルギー管理システムの運用責任者としては、ASP(Application Service Provider)サービスによって、専門家が換算係数を適宜設定してくれるので、換算係数の設定の手間を省くことができる。なお、エネルギー管理の専門家以外の人は、法規制により規定される換算係数を参照することはできるが、変更することはできない。
【0043】
次に、エネルギー管理システムの運用責任者が端末装置13を使ってシステムにログインし、このログインの目的が事業所情報の設定・変更である場合(ステップS117においてYES)、事業所情報設定部11は、運用責任者が操作する端末装置13からの指示に従って、事業所情報の設定・変更を行う(ステップS118)。こうして、新たな事業所情報が事業所情報記憶部12に設定されたり、事業所情報記憶部12に既に設定されている事業所情報が変更されたりする。
【0044】
次に、企業独自のエネルギー管理と法規制に伴うエネルギー管理とを同時に行う場合(図2ステップS112においてNO)、エネルギー使用量算出部8は、ステップS103の処理とステップS113の処理とを同時に行えばよく(ステップS119)、温室効果ガス排出量算出部9は、ステップS104の処理とステップS114の処理とを同時に行えばよい(ステップS120)。
こうして、企業が独自の環境報告書などで使用するエネルギー使用量およびCO2排出量と、法規制に則ったエネルギー使用量およびCO2排出量という算定方式が異なる量を同時に算出することができる。
【0045】
本実施の形態で説明したエネルギー管理システムは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。また、1台のコンピュータでなく、例えば電気、燃料、熱の使用量を記憶するコンピュータと、換算係数を記憶するコンピュータと、ログファイルを記憶するコンピュータと、エネルギー使用量および温室効果ガス排出量を算出するコンピュータと、事業所情報を記憶するコンピュータといったように複数台のコンピュータに分かれていてもよい。
また、本実施の形態では、エネルギー使用量と温室効果ガス排出量(CO2排出量)の両方を算出しているが、どちらか一方だけを算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、エネルギー使用量または温室効果ガス排出量を算出する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…電気・燃料・熱使用量入力部、2…電気・燃料・熱使用量記憶部、3,4…換算係数設定部、5…換算係数記憶部、6…換算係数変更許可/禁止設定部、7…換算係数変更ログ記憶部、8…エネルギー使用量算出部、9…温室効果ガス排出量算出部、10…算出結果出力部、11…事業所情報設定部、12…事業所情報記憶部、13〜18…端末装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気、燃料または熱の使用量を入力する使用量入力手段と、
エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、法規制により規定された第1の換算係数を法規制毎およびエネルギー種別毎に設定する第1の換算係数設定手段と、
エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、企業独自の第2の換算係数をエネルギー種別毎に設定する第2の換算係数設定手段と、
電気、燃料または熱の使用量から、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量、前記第2の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第2の換算係数に基づく温室効果ガス排出量のうち少なくとも1つを算出する算出手段とを備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項2】
請求項1記載のエネルギー管理システムにおいて、
前記第1の換算係数設定手段は、前記第1の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第1の換算係数を設定・変更することを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のエネルギー管理システムにおいて、
さらに、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第2の換算係数の設定・変更を許可または禁止する換算係数変更許可/禁止設定手段を備え、
前記第2の換算係数設定手段は、前記第2の換算係数の設定・変更が許可されているときのみ、前記第2の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第2の換算係数を設定・変更することを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエネルギー管理システムにおいて、
さらに、前記第2の換算係数の設定・変更があったときに、設定・変更履歴情報を含むログファイルを記憶する換算係数変更ログ記憶手段を備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエネルギー管理システムにおいて、
さらに、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、法規制の対象となる事業所を示す事業所情報を入力する事業所情報設定手段を備え、
前記算出手段は、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、または前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量の算出を行う場合に、前記事業所情報に基づいて、法規制の対象となる事業所のみ算出を行うことを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項6】
電気、燃料または熱の使用量を入力する使用量入力ステップと、
エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、法規制により規定された第1の換算係数を法規制毎およびエネルギー種別毎に設定する第1の換算係数設定ステップと、
エネルギー使用量または温室効果ガス排出量の算出に用いる、企業独自の第2の換算係数をエネルギー種別毎に設定する第2の換算係数設定ステップと、
電気、燃料または熱の使用量から、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量、前記第2の換算係数に基づくエネルギー使用量、前記第2の換算係数に基づく温室効果ガス排出量のうち少なくとも1つを算出する算出ステップとを備えることを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項7】
請求項6記載のエネルギー管理方法において、
前記第1の換算係数設定ステップは、前記第1の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第1の換算係数を設定・変更することを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項8】
請求項6または7記載のエネルギー管理方法において、
さらに、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第2の換算係数の設定・変更を許可または禁止する換算係数変更許可/禁止設定ステップを備え、
前記第2の換算係数設定ステップは、前記第2の換算係数の設定・変更が許可されているときのみ、前記第2の換算係数を設定・変更できる権限を持つユーザからの指示に応じて、前記第2の換算係数を設定・変更することを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のエネルギー管理方法において、
さらに、前記第2の換算係数の設定・変更があったときに、設定・変更履歴情報を含むログファイルを記憶する換算係数変更ログ記憶ステップを備えることを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載のエネルギー管理方法において、
さらに、企業内のシステム運用責任者の権限を持つユーザからの指示に応じて、法規制の対象となる事業所を示す事業所情報を入力する事業所情報設定ステップを備え、
前記算出ステップは、前記第1の換算係数に基づくエネルギー使用量、または前記第1の換算係数に基づく温室効果ガス排出量の算出を行う場合に、前記事業所情報に基づいて、法規制の対象となる事業所のみ算出を行うことを特徴とするエネルギー管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50754(P2013−50754A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186769(P2011−186769)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)