説明

エポキシ樹脂組成物

【目的】 耐熱性、耐湿性、機械的強度等に優れ、性能のバランスのとれたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【構成】 フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物および硬化剤としてナフトールアラルキル樹脂および/またはフェノールアラルキル樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、さらに無機充填剤を含有する前記のエポキシ樹脂組成物。
【効果】 耐熱性、耐湿性ともに優れた硬化物を与え、機械的諸物性が高い水準にあるためクラックの発生が少ない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規にして有用なエポキシ樹脂組成物に関する。更に詳細には、耐熱性、耐湿性、接着性、機械的性質等に優れる注型、積層、接着、成形、封止、複合材等の用途に適したエポキシ樹脂組成物に関するものであり、実際に利用されるものとして、具体的には、半導体集積回路(IC)の封止用材料等が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】従来数多くのエポキシ樹脂あるいは硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物がかかる用途に用いられてきた。例えば、エポキシ樹脂の典型としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕から得られる液状ないし固形の各種エポキシ樹脂、ノボラック樹脂から得られるエポキシ樹脂等があり、また高耐熱性エポキシ樹脂としては4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)から得られるエポキシ樹脂等がある。また、硬化剤の典型としては、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン等の脂肪族または芳香族アミン化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸等の酸無水物、フェノールノボラック等のフェノール樹脂、ポリアミド、変成ポリアミン類、イミダゾール類等がある。
【0003】これらのエポキシ樹脂および硬化剤を、各用途に合わせて、様々な組合せで硬化させ、さらには無機充填剤を加えて樹脂組成物として利用してきた。しかしながら、従来用いられてきたエポキシ樹脂や硬化剤を用いて得られるエポキシ樹脂組成物は性能的に一長一短があり、各利用分野における技術の向上に伴って必然的に要求される高い水準の性能を満足し得るものとは言い難く、耐熱性、耐湿性、機械的強度等、各性能がバランス良く高い水準にあるエポキシ樹脂が求められる様になってきている。例えば、o−クレゾールノボラックから得られるエポキシ樹脂とフェノールノボラックの組合せが多く用いられているが、この組合せで得られるエポキシ樹脂組成物は、機械的強度は比較的高い水準にあるが、耐湿性に問題があるため、耐湿性の悪さに起因するクラックの発生があり、また、近年の各産業の発達に伴う発生熱量の増大による耐熱性の不足等、最終的な製品の信頼性に関わる問題が指摘されている。
【0004】この様な問題に対して、近年、エポキシ樹脂組成物の耐熱性、耐湿性を向上させる目的で幾つかのエポキシ樹脂や硬化剤が提案されている。例えば、硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルメタンや4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いたり、あるいはエポキシ主剤としてそれらのエポキシ化物を用いることにより、高耐熱性のエポキシ樹脂組成物を得ている。しかし、これらは構造的に耐湿性に劣るものとなり、問題の解決にはなっていない。また、フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物を用いたエポキシ樹脂組成物が、耐熱性、耐湿性に優れるものであることも知られている(特開昭61−123618、特開昭61−291615、特開昭61−168618、特開昭−61−123618)。例えば、ノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物(特開昭61−291615、特開昭61−293219、特開昭62−246921)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物(特開平1−135858)等が既に公知となっている。しかし、これらは耐熱性の向上に比較して耐湿性の向上が少ないため、全体としての性能のバランスがとれているとはいえず、得られる樹脂組成物は実用的に大きな進歩があるといえるものではない。
【0005】一方、耐湿性に優れたものとして、ナフトールアラルキル樹脂を硬化剤に用いるエポキシ樹脂組成物(特公昭48−10960)、フェノールアラルキル樹脂を硬化剤に用いるエポキシ樹脂組成物(三井東圧化学製:商品名ミレックスXL225)等が見出されており、特に、ナフトールアラルキル樹脂を硬化剤として得られるエポキシ樹脂組成物は、耐熱性においても優れた性能を表すことが示されている。しかし、最終的に得られる樹脂組成物は、主剤となるエポキシ樹脂の持つ特性のため、耐熱性、耐湿性をはじめとする諸性能について、なお満足できるものではなかった。
【0006】このため、各産業分野の技術の発達、それに伴う要求性能のアップに応え得る様な、耐熱性、耐湿性をはじめとする諸性能について、高い水準においてバランスのとれたエポキシ樹脂組成物を与えるエポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせが強く求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、耐湿性、耐熱性、接着性、機械的強度等の性能のバランスの優れたエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに到ったものである。すなわち、本発明はエポキシ樹脂および硬化剤から成るエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂として、一般式(I)(化9)で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂に、
【0009】
【化9】


(式中、nは0〜10の整数を示し、R1 は水素原子、炭素数1〜9のアルキル基を示す)式(II)(化10)で表されるエピクロルヒドリンを
【0010】
【化10】


反応させて得られるエポキシ樹脂、(B)硬化剤として、(a)一般式(III)(化11)で表されるナフトールアラルキル樹脂
【0011】
【化11】


(式中、mは0〜100までの整数を示す)および/または(b)一般式(IV)(化12)で表されるフェノールアラルキル樹脂
【0012】
【化12】


(式中、qは0〜100の整数を示す)を用いるエポキシ樹脂組成物に関するものであり、さらに、無機充填剤を含有する前記のエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0013】本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性、耐湿性、接着性、機械的性質等に優れたエポキシ樹脂組成物である。本発明において、エポキシ樹脂原料として用いられるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂は、特公昭41−14099、特開昭47−35000、61−168624、62−4720、63−99224、米国特許3,336,398等により公知であり、例えば、ジシクロペンタジエン1モルに対し、一般式(V)(化13)
【0014】
【化13】


(式中、R1 は水素原子または炭素数1〜9のアルキル基を示す)で表されるフェノールまたはアルキルフェノールを1〜20モル反応させることにより得ることができる。
【0015】製造法としては種々の方法があるが、無触媒で高温、高圧下において反応を行う方法では得られる樹脂は完全な交互共重合とはならない可能性があること、またルイス酸触媒、特に三ふっ化ほう素およびその錯体を用いる方法は、反応容器の材質に対する腐食性、樹脂中への触媒の混入、樹脂の水洗後の排水の無公害化等の問題があることから、本発明者らが、先に提案したアルカンスルホン酸、パーフルオロアルカンスルホン酸、パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂、スルホン酸型強酸性イオン交換樹脂等を触媒とする方法(特願平2−291872、特願平2−291873、特願平2−295489、特願平2−295490)が望ましい。
【0016】本発明において、一般式(I)のフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂をエポキシ化する方法は、特公昭63−16409等によって示されているような公知慣用の方法が用いられる。すなわち、フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂に、そのヒドロキシル基に対して1〜20倍モル、好ましくは2〜10倍モル、さらに好ましくは3〜8倍モルのエピハロヒドリンを、塩基の存在下に、反応温度20〜120℃、常圧〜20mmHgの範囲において反応させる。硬化剤として使用される (a)ナフトールアラルキル樹脂は、特公昭47−15111、特願平3−165923に記載の方法により製造される。すなわち、このナフトールアラルキル樹脂は、一般式(VI)(化14)
【0017】
【化14】


(式中、R2 はハロゲン原子、水酸基または炭素数1〜4の低級アルコキシ基を示す)
【0018】で表されるアラルキルハライドまたはアラルキルアルコール誘導体に、酸触媒の存在下に、1.1倍モル以上のα−ナフトールまたはβ−ナフトールを反応させ、必要により、未反応ナフトールを留去することにより得ることができる。
【0019】また、硬化剤として用いられる (b)フェノールアラルキル樹脂は、特公昭47−15111、特願昭62−70282等に記載の方法により製造される。すなわち、一般式(VI)で表されるアラルキルハライドまたはアラルキルアルコール誘導体に、酸触媒の存在下、1.1倍モル以上のフェノール類を反応させ、必要により、未反応フェノール類を留去することにより得ることができる。
【0020】本発明において用いられるエポキシ樹脂と硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し、硬化剤中のヒドロキシル基が0.5〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.2当量の範囲である。
【0021】本発明において、二種類の硬化剤を併用する場合、単に硬化時に同時に配合する方法でも良いが、好ましくはあらかじめ任意の割合で均一に混合したものを用いる方がより好ましい。
【0022】本発明のエポキシ樹脂組成物は、また、無機充填剤を配合して用いることができる。使用される無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、タルク、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、チタンホワイト等の粉体、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維体が挙げられる。これらの中で熱膨張率と熱伝導率の点から、結晶性シリカおよび/または溶融性シリカが好ましい。更に樹脂組成物の成形時の流動性を考えると、その形状は球形、または球形と不定型の混合物が好ましい。無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂および硬化剤の総重量に対して100〜900重量%であることが必要であり、好ましくは200〜600重量%である。
【0023】本発明においては、さらに、機械的強度、耐熱性向上の点から各種の添加剤を配合してもよい。例えば、樹脂と無機充填剤との接着性向上の目的でカップリング剤を併用してもよく、かかるカップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましく、特にエポキシ樹脂と反応する官能基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、予め無機充填剤の表面に吸着あるいは反応により固定化されているのが好ましい。
【0024】本発明において、樹脂組成物を硬化させるにあたっては、硬化促進剤を使用することが望ましい。かかる硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾ−ル等のイミダゾ−ル類、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7およびその誘導体がある。これらの硬化促進剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよく、また、これら硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂および硬化剤の合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲である。本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記の各成分の他、必要に応じて、脂肪酸、脂肪酸塩、ワックス等の離型剤、ブロム化合物、アンチモン、りん等の難燃剤、カ−ボンブラック等の着色剤、各種シリコ−ンオイル等を配合し、混合、混練して成形材料とすることができる。
【0025】
【実施例】次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。なお、実施例中の部は重量部を表す。
合成例 1攪拌器、温度計および冷却器を装着した反応装置に、フェノール705g(7.5モル)とトリフロロメタンスルホン酸0.6gを装入し、40〜50℃において攪拌を行いながら、ジシクロペンタジエン198g(1.5モル)を3.5時間で滴下した。同温度で1時間攪拌を続けた後、1時間で140℃まで昇温し、140〜150℃で3時間反応を行った。反応終了後、未反応フェノールを減圧蒸留により除去し、一般式(I)の構造を持つ435gのフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂を得た。高速液体クロマトグラフィーによる樹脂の組成は、Area%で、n=0が49.7%、n=1が26.5%、n=2が10.8%、n≧3が13.0%であった。この樹脂のヒドロキシ当量は、172.5g/eqであり、軟化点は103℃であった( JIS K-2548 環球法、以下同じ)。
【0026】合成例 2攪拌器、温度計、ディーンスターク共沸トラップおよび冷却器を装着した反応装置に、合成例1で製造したフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂150g、エピクロルヒドリン402.4g(4.35モル)を装入し、攪拌を行いながら60℃に加熱し、完全に溶解させた。引き続き、攪拌を続けながら、45%水酸化ナトリウム水溶液85.0gを2時間で滴下した。滴下中、反応温度は60〜65℃に保ちながら系内を110〜130mmHgに減圧して、共沸されてくるエピクロルヒドリンは系内に戻し、水は系外へ除去した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下が終了した後、水の留出がなくなるまで反応を続けた。反応終了後、室温まで冷却し副生した無機塩を濾過した。濾過液からエピクロルヒドリンを減圧蒸留し、フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂の粗エポキシ化物を187.1g得た。この粗エポキシ化物を900gのメチルイソブチルケトンに溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液50gを加え、60℃において30分間攪拌した。静置した後下層にくる水層を排出し、有機層が中性になるまで水で洗浄した後、メチルイソブチルケトンを減圧蒸留して除去した。このようにして、フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂の精エポキシ樹脂182.5gを得た。このもののエポキシ当量は270.7g/eqであり、軟化点は88℃であった。
【0027】合成例 3攪拌器、温度計、ディーンスターク共沸トラップおよび冷却器を装着した反応装置に、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン249g(1.5モル)とβ−ナフトール648g(4.5モル)、トリフロロメタンスルホン酸0.45gを装入し、攪拌を行いながら150〜160℃で4時間反応を行った。生成するメタノールは、順次トラップし、系外へ除去した。反応終了後、未反応ナフトールを減圧蒸留により除去し、一般式(III)の構造を持つ465gのβ−ナフトールアラルキル樹脂を得た。高速液体クロマトグラフィーによる樹脂の組成は、Area%で、m=0が51.0%、m=1が25.7%、m=2が12.7%、m≧3が10.6%であった。この樹脂のヒドロキシ当量は、232.5g/eqであり、軟化点は98℃であった。
【0028】合成例 4攪拌器、温度計、ディーンスターク共沸トラップおよび冷却器を装着した反応装置に、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン249g(1.5モル)とα−ナフトール432g(3.0モル)、トリフロロメタンスルホン酸0.15gを装入し、攪拌を行いながら150〜160℃で4時間反応を行った。生成するメタノールは、順次トラップし、系外へ除去した。反応終了後、未反応ナフトールを減圧蒸留により除去し、一般式(III)の構造を持つ454gのα−ナフトールアラルキル樹脂を得た。高速液体クロマトグラフィーによる樹脂の組成は、Area%で、m=0が32.8%、m=1が23.5%、m=2が15.2%、m≧3が28.5%であった。この樹脂のヒドロキシ当量は、234.1g/eqであり、軟化点は96℃であった。
【0029】合成例 5攪拌器、温度計、ディーンスターク共沸トラップおよび冷却器を装着した反応装置に、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン249g(1.5モル)とフェノール425g(4.5モル)、メタンスルホン酸0.34gを装入し、攪拌を行いながら140〜150℃で4時間反応を行った。生成するメタノールは、順次トラップし、系外へ除去した。反応終了後、未反応フェノールを減圧蒸留により除去し、一般式(IV)の構造を持つ303gのフェノールアラルキル樹脂を得た。高速液体クロマトグラフィーによる樹脂の組成は、Area%で、q =0が50.8%、q =1が24.3%、q=2が11.6%、q ≧3が13.3%であった。この樹脂のヒドロキシ当量は、168.5g/eqであり、軟化点は52℃であった。
【0030】実施例 1合成例3において合成したβ−ナフトールアラルキル樹脂を、合成例2において合成したフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物の硬化剤として、表−1(表1)に示す割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−1にその結果を示した。尚、物性測定用の試験片は、樹脂混合物を用いて、フラットパッケージ型半導体装置用リードフレームの素子搭載部に、試験用素子(10mm×10mm角)を搭載した後、トランスファー成形(180℃、30kg/cm2 ,3min)により、試験用半導体装置を得た。
【0031】実施例 2合成例4において合成したα−ナフトールアラルキル樹脂を、合成例2において合成したフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物の硬化剤として、表−1に示す割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を、実施例1と同様に測定した。表−1にその結果を示した。
【0032】実施例 3合成例5において合成したフェノールアラルキル樹脂を、合成例2において合成したフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物の硬化剤として、表−1に示す割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−1にその結果を示した。
【0033】実施例 4合成例3において合成したβ−ナフトールアラルキル樹脂50部と合成例5において合成したフェノールアラルキル樹脂50部を、150℃において溶融混合した。得られる混合樹脂のヒドロキシ当量は200.5g/eqであった。この混合樹脂を合成例2において合成したフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物の硬化剤として、表−1に示す割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−1に結果を示した。
【0034】比較例 1フェノールノボラック樹脂を合成例2において合成したフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物の硬化剤として、表−1に示す割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−1に結果を示した。
【0035】比較例 2エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名;エピコート828、油化シェル化学製)、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(商品名;BRG#558,昭和高分子製)を用い、表−1の様な割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−1に結果を示した。
【0036】比較例 3比較例2における硬化剤を4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(商品名;スミキュアS、住友化学製)に代え、同様にして得られる硬化物の物性を測定した。表−1に結果を示した。
【0037】比較例 4比較例2におけるエポキシ樹脂をo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名;EOCN−102S、日本化薬製)に代え、同様にして得られる硬化物の物性を測定した。表−1に結果を示した。
【0038】実施例 5〜8実施例1〜4と同様の樹脂を用い、さらに無機充填剤、その他各種添加剤を表−2(表2)の様な割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−2に結果を示した。
【0039】比較例 5〜8比較例1〜4と同様の樹脂を用い、さらに無機充填剤、その他各種添加剤を表−2の様な割合で配合し、その混合物を注型加工して得られる硬化物の物性を測定した。表−2に結果を示した。
【0040】比較例 9実施例8において、無機充填剤の配合量をエポキシ樹脂と硬化剤の総重量の80%となる様に配合し、得られる硬化物の物性を測定した。表−2に結果を示した。但し、全体の重量は等しくなる様に配合量を調整した。
【0041】
【表1】


【0042】
【表2】


表−1、2の注・エピコート828 ;ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル化学製)
・EOCN−102 S;o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)
・BRG#558 ;フェノールノボラック樹脂(昭和高分子製)
・スミキュアS;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(住友化学製)
・C11Z;2−ウンデシルイミダゾール(四国ファインケミカル製)
・無機充填剤;球形溶融シリカ(ハリミックS−CO,(株)マイクロン製)50重量部と不定型溶融シリカ(ヒューズレックスRD−8 (株)龍森製)50重量部との混合物・シランカップリング剤;(SZ−6083,東レダウコーニングシリコーン(株)製)
・ガラス転移温度;TMA法(島津 TMA−システムDT−30で測定)
・曲げ強度、弾性率;JIS K−6911・煮沸吸水率;100℃の沸騰水中で2時間煮沸後の重量増加を測定。
・V.P.Sテスト;試験用の半導体装置を65℃、95%の恒温恒湿槽に168時間放置した後、直ちに215℃のフロナート液(住友スリーエム(株)製、FC−70)に投入し、パッケージ樹脂にクラックが発生した半導体装置の数を数えた。試験値を分数で示し、分子はクラックの発生した半導体装置の数、分母は試験に供した半導体装置の数である。
【0043】表−1に示される様に、本発明において得られるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂のエポキシ化物とナフトールアラルキル樹脂およびまたはフェノールアラルキル樹脂から選ばれる樹脂から得られる硬化物は、その耐熱性、耐湿性、機械的性質が全般にわたり高い水準にあり、性能のバランスがとれていると言える。これに対し、比較例1〜3で示される従来のエポキシ樹脂と硬化剤の組合せから得られる硬化物は、各性能の水準にバラツキがみられ、特に耐熱性と耐湿性は他方を犠牲にした上に得られる場合がほとんどである。
【0044】また、表−2において無機充填剤およびその他の添加剤をも用いて得られる硬化物の物性を示した。実施例5〜8および比較例5〜8はそれぞれ表−1における実施例1〜4、比較例1〜4に対応するものであるが、この表−2より無機充填剤を添加することにより耐水性、機械的性質が大幅に向上することがわかる。比較例9において、無機充填剤の使用量が本発明の範囲である樹脂の総重量の100%以下であると、その効果は無いに等しいものであることがわかる。これらのことから、本発明により耐熱性、耐湿性、機械的強度等に優れ、且つ性能のバランスのとれたエポキシ樹脂組成物が得ることができる。このことは、表−2におけるV.P.Sテスト(クラック発生テスト)におけるクラックの発生率により証明されている。
【0045】
【発明の効果】本発明により提供されるエポキシ樹脂組成物は、耐熱性と耐湿性に優れ、更に機械的性質、接着性、耐クラック性、作業性に優れているため、各種マトリックス樹脂として極めて有用性が高いものである。このことは、特に、従来性能的に一長一短があるために使用が制限されていた半導体封止剤分野において理想的な材料を提供するものであり、その貢献するところは大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エポキシ樹脂および硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂として、一般式(I)(化1)で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂に、
【化1】


(式中、nは0〜10の整数を示し、R1 は水素原子、炭素数1〜9のアルキル基を示す)式(II)(化2)で表されるエピクロルヒドリンを
【化2】


反応させて得られるエポキシ樹脂、(B)硬化剤として、(a)一般式(III)(化3)で表されるナフトールアラルキル樹脂
【化3】


(式中、mは0〜100までの整数を示す)および/または(b)一般式(IV)(化4)で表されるフェノールアラルキル樹脂
【化4】


(式中、qは0〜100の整数を示す)を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】 エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂として、一般式(I)(化5)で表されるフェノール−ジシクロペンタジエン樹脂に、
【化5】


(式中、nは0〜10の整数を示し、R1 は水素原子、炭素数1〜9のアルキル基を示す)式(II)(化6)で表されるエピクロルヒドリンを
【化6】


反応させて得られるエポキシ樹脂、(B)硬化剤として、(a)一般式(III)(化7)で表されるナフトールアラルキル樹脂
【化7】


(式中、mは0〜100までの整数を示す)および/または(b)一般式(IV)(化8)で表されるフェノールアラルキル樹脂、
【化8】


(式中、qは0〜100の整数を示す)
(C)無機充填剤を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。