説明

エレベータ装置

【課題】 エレベータかごの昇降を案内するガイド装置5からの振動を低減するためのリニアモータ(電磁アクチュエータ)を小型化すること。
【解決手段】 かごに固定された支持台6にはリニアモータ10の本体部13を固定し、支持台6に固定された支持部30とリニアモータ10の可動部12との間には第1リニアガイド32を設ける。ガイド装置5のローラ9の遥動とともに遥動(C方向)するL型遥動片25と、可動部12に固定されたL型ブラケット31との間には第2リニアガイド33を設ける。これにより、C方向の遥動をD方向とE,F方向の直線運動に変換する。従って、ローラ9が遥動してもコイル10cと磁石10eとの間隔は常に一定に保たれるため、コイル10cと磁石10eとの間隔を小さくしてリニアモータ10を小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータかごの振動を低減する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータかごの振動低減装置の一例を図により説明する。図4はエレベータかごの全体概略図である。図において、1はかご室、2は防振ゴム3や振れ止めゴム4を介してかご室1を弾性支持するかご枠で、これらのかご室1及びかご枠2を主構成要素としてかご(昇降体)1aが構成されている。
【0003】
5はかご枠2の上枠と下枠の左右に取り付けられたガイド装置で、かご枠2に固定された支持台6と,この支持台6に遥動可能に取り付けられたガイドレバー7と、このガイドレバー7に回動自在に設けられ、昇降路壁に立設されたガイドレール8上を転動するローラ9と、ガイドレバー7の駆動を制御してガイドレール8とローラ9との当接状態を調整する電磁アクチュエータ(リニアモータ)10とからなっている。
【0004】
11はかご枠2の上枠と下枠に配置されたセンサで、かご枠2のX方向及びY方向の振動を検出するものである。ここで、図4に示すようにかご1aの昇降方向をZ方向、昇降方向に対して垂直な方向のうち、横方向(ドアの開閉方向)をX方向、前後方向(横方向に垂直な方向)をY方向としている。
【0005】
次にガイド装置5の詳細について説明する。図5は図4のガイド装置5の説明図で、説明を簡単にするためにX−Z平面内を駆動するローラ9を残し、他のローラ9を省略している。図5(a)は側面図(Y方向から見た図)、図5(b)は図5(a)の右側面図(X方向から見た図)である。図6は図5の電磁アクチュエータの断面図で、図6(a)はX−X線断面図、図6(b)はY−Y線断面図である。図7は図5の電磁アクチュエータの動作説明図である。
【0006】
図において、6aは支持台6に立設されたガイドレバー固定部材、6bはガイドレバー7をガイドレバー固定部材6aに枢着する軸、7aはガイドレバー7をガイドレール8側に付勢するばね、7bはガイドレバー7の反ガイドレール8側への移動を制限するストッパ、7cはローラ9が枢着された軸であり、これらの構成により常時ローラ9をガイドレール8に押し付けるようにしている。
【0007】
10aはガイドレバー7に固定されたアーム、10bはアーム10aの下側に固定されたボビン、10cはボビン10bに巻かれたコイルで、これらのアーム10a,ボビン10b,コイル10cによって電磁アクチュエータ10の可動部が構成されている。
10dは支持台6に固定されたヨークで、図6に示すように、内側には互いに対向するように2つの磁石10e,10eが固定されており、これらの磁石10e,10eの間に所定距離を隔ててヨーク10dが配置されている。これらのヨーク10d,磁石10eで電磁アクチュエータ10の固定部が構成されている。
【0008】
ここで、図5(b)に示すように磁石10eは、Y方向に磁界を発生するように配置され、この磁界に対して垂直な方向(Z方向)にコイルの軸中心がくるようにコイル10cが配置されている。
【0009】
次にこの装置の動作について説明する。かごの走行中にガイドレール8の凹凸などにより、ローラ9がX−Z平面内で遥動すると、アーム10aは図5に矢印で示すように遥動する。また、図7に示すように、電磁アクチュエータ10の可動部もX−Z平面内で遥動するので、図6(a)のボビン10bとヨーク10dとの間隔d1,d2を大きくしておく必要がある。これは図7(b)に示すように、電磁アクチュエータ10の可動部が遥動すると間隔d1,d2は、e1〜e4のように変化するため余裕を見ておく必要があるからである。
【0010】
図8は、前記の従来技術に対して、電磁アクチュエータ10を水平面(X−Y平面)内で90度回転して設置したものである。すなわち磁石10eは、X方向に磁界を発生するように配置され、この磁界に対して垂直な方向(Z方向)にコイルの軸中心がくるようにコイル10cが配置されている。またボビン10bも図5とは90度回転した状態でアーム10aに固定されている。
この装置であれば、電磁アクチュエータ10の可動部がX−Z平面内で遥動しても、Y方向におけるボビン10bとヨーク10dとの間隔は変わらない。
【0011】
しかしながら、図8(a)に示す磁石10eとコイル10cとの間隔が変化するため、磁石10eとコイル10cとの間隔を大きくしておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−15815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記の図5の装置では、ボビン10bとヨーク10dとの間隔を大きくしておく必要があるため、ボビン10bやコイル10cを大きくしなければならないという問題がある。
また、図8の装置では、磁石10eとコイル10cとの間隔を大きくしておく必要があるため、ヨーク10dを大きくしなければならないだけでなく、電磁アクチュエータ10の出力が小さくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、昇降路内に設けられたガイドレールに沿って昇降する昇降体と、この昇降体に取り付けられ昇降体の昇降を案内するガイド装置と、昇降体に取り付けられたリニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方と、ガイド装置の遥動部に連結され、リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方に対して相対移動されるリニアモータ可動部又は本体部の他方とを備え、リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方には磁石を設け、他方には磁石の磁界の影響を受けるように配置されたコイルを設け、このコイルに電流を流して発生するローレンツ力によって昇降体の振動を抑制するエレベータ装置において、リニアモータ本体部とリニアモータ可動部とをリニアガイドで連結し、リニアガイドによって前記リニアモータ可動部が前記リニアモータ本体部に対して一方向に相対移動する構成としたものである。
【0015】
また本発明は、リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は昇降体に固定され、リニアモータ可動部又は本体部の他方は遥動部に枢着されているものである。
更に本発明は、リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は昇降体に枢着され、リニアモータ可動部又は本体部の他方は遥動部に枢着されているものである。
【0016】
また本発明は、リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は昇降体にリニアガイドを介して連結されており、他方は遥動部に枢着されており、リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方はリニアガイドによって昇降体に対して、リニアモータ可動部又は本体部の他方の移動方向と直角方向に動く構成になっているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電磁アクチュエータ(リニアモータ)を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるガイド装置を示す側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態によるガイド装置を示す側面図である。
【図4】従来のエレベータかごの全体概略図である。
【図5】図4のガイド装置の概略側面図である。
【図6】図5のアクチュエータの断面図である。
【図7】図5の電磁アクチュエータの動作説明図である。。
【図8】従来の他のガイド装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図1,図2により説明する。図1は図8(a)に相当する図、図2は図1のA−A線断面図であり、各図において図8と同一符号は同一のものを示している。
【0020】
図において、ボビン10bとコイル10cとでリニアモータ(電磁アクチュエータ)10の可動部12を構成し、ヨーク10dと磁石10eとでリニアモータ10の本体部13を構成している。20は一端が軸21によって支持台6に枢着されたガイドレバーであり、他端にはアーム22の一端が固定され、中間には軸23によってローラ9が枢着されている。アーム22の他端にはベアリングを備えた軸24が設けられ、この軸24にはL型の遥動片25が固定されている。これらのローラ9,ガイドレバー20,アーム22,軸23,24,遥動片25によりガイド装置5の遥動部26を構成している。30は支持台6に固定された支持部、31はボビン10bに固定されたL型ブラケットである。
【0021】
32は支持部30とL型ブラケット31との間に設置された第1リニアガイドで、支持部30に対してL型ブラケット31を図1の上下方向(Z方向)にのみスライド可能(相対移動可能)に支持し、X方向及びY方向には相対移動不可能とするものである。
33はL型遥動片25とL型ブラケット31との間に設置された第2リニアガイドで、L型遥動片25に対してL型ブラケット31を図1の左右方向(X方向)にのみスライド可能(相対移動可能)に支持し、Y方向及びZ方向には相対移動不可能とするものである。
【0022】
次に本構成の動作について説明する。かごの走行中にガイドレール8の凹凸などがあると、ローラ9は軸21を中心に矢印B方向に遥動する。これに伴いアーム22の軸24は軸21を中心に矢印C方向に遥動し、L型遥動片25,第2リニアガイド33を介してL形ブラケット31を矢印C方向に遥動させようとする。
【0023】
このC方向の遥動力はX方向の成分とZ方向の成分に分けられる。
X方向の成分は第2リニアガイド33によって、L型遥動片25とL型ブラケット31との間で、X方向のすべり(矢印D)となるため、L型ブラケット31はX方向に遥動することはない。
Z方向の成分は、第2リニアガイド33を介してL型ブラケット31を上下(Z方向)に遥動する。このL型ブラケット31は第1リニアガイド32によって支持部30に対して上下(Z方向)にのみ遥動し(矢印E)、これに伴いボビン10bも上下にのみ遥動する(矢印F)。これにより、コイル10cは、磁石10eと一定の間隔を保持しながら上下(矢印F方向)にのみ移動することができる。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、コイル10cと磁石10eとは常に一定の間隔を保持することができるため、従来のようにコイル10cと磁石10eとの間隔や、ボビン10bとヨーク10dとの間隔を大きくしておく必要がない。そのため、リニアモータ10の大型化や出力低下を防止することができる。
尚、本実施の形態においては、第2リニアガイド33は軸24によりアーム22に枢着されているが、ガイドレバー20などガイド装置5の遥動部26に枢着されておればよい。
【0025】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。図3は図1に相当する図であり、図1と同一符号は同一のものを示している。図において、40はL型ブラケット31をアーム22に枢着する軸であり、これらのローラ9,ガイドレバー20,アーム22,軸23,40によりガイド装置5の遥動部27を構成している。41はヨーク10dを支持台6に枢着する軸である。また本実施の形態では、ヨーク10dとL型ブラケット31との間に第1リニアガイド32が配置されている。従って、ボビン10b,コイル10c及びL型ブラケット31は、第1リニアガイド32を介してヨーク10dに対してE方向にのみ移動可能である。即ち、コイル10cは、磁石10eと一定の間隔を保持しながらF方向にのみ移動することができる。
【0026】
次に本構成の動作について説明する。かごの走行中にガイドレール8の凹凸などがあると、ローラ9は軸21を中心に矢印B方向に遥動する。これに伴いアーム22の軸40は矢印C方向に遥動する。
このC方向の力は、軸41を中心とした矢印G方向の力と、矢印E,F方向の力に分けられる。矢印G方向の力はリニアモータ10が矢印G方向に遥動することで吸収される。また矢印E,F方向の力は、ボビン10bを矢印F方向にのみ移動させる。これにより、コイル10cは、磁石10eと一定の間隔を保持しながら矢印F方向にのみ移動することになる。
【0027】
このように、本実施の形態においても、コイル10cと磁石10eとは常に一定の間隔を保持することができるため、リニアモータ10の大型化や出力低下を防止することができる。
【0028】
尚、本実施の形態においては、L型ブラケット31は軸40によりアーム22に枢着されているが、ガイドレバー22などガイド装置5の遥動部27に枢着されておればよい。
また、本実施の形態において、ヨーク10dを軸41によって支持台6に枢着しているが、軸41の代わりにリニアガイドを配置し、ヨーク10dが支持台6に対してX方向にスライド可能な構成にすることもできる。
【0029】
前記の各実施の形態では、磁石10eは、ローラ9の遥動面と同一方向(X方向)に磁界を発生するようにリニアモータ10を配置しているが、磁石10eの磁界が、ローラ9の遥動面と直角方向(Y方向)に磁界を発生するように配置することもできる。
またコイル10cは概ねZ方向に移動するようにリニアモータ10を配置しているが、コイル10cがX方向に移動するように配置することもできる。
更に、軸21,23,24,40,41は、枢着軸としての機能があれば、どのような種類のものでもよい。
【0030】
更に、遥動部26,27側にコイル10c、支持台6側に磁石10eを配置しているが、逆の配置であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1a かご(昇降体)
5 ガイド装置
8 ガイドレール
9 ローラ
10 リニアモータ(電磁アクチュエータ)
10b ボビン
10c コイル
10d ヨーク
10e 磁石
12 リニアモータの可動部
13 リニアモータの本体部
20 ガイドレバー
21,23,24,40,41 軸
22 アーム
26,27 ガイド装置の遥動部
30 支持部
31 L型ブラケット
32 第1リニアガイド
33 第2リニアガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設けられたガイドレールに沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に取り付けられ前記昇降体の昇降を案内するガイド装置と、前記昇降体に取り付けられたリニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方と、前記ガイド装置の遥動部に連結され、前記リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方に対して相対移動されるリニアモータ可動部又は本体部の他方とを備え、
前記リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方には磁石を設け、他方には前記磁石の磁界の影響を受けるように配置されたコイルを設けており、前記コイルに電流を流して発生するローレンツ力によって前記昇降体の振動を抑制するエレベータ装置において、
前記リニアモータ本体部と前記リニアモータ可動部とをリニアガイドで連結し、該リニアガイドによって前記リニアモータ可動部が前記リニアモータ本体部に対して一方向に相対移動する構成としたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は前記昇降体に固定され、前記リニアモータ可動部又は本体部の他方は前記遥動部に枢着されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は前記昇降体に枢着され、前記リニアモータ可動部又は本体部の他方は前記遥動部に枢着されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は、前記昇降体にリニアガイドを介して連結されており、前記リニアモータ可動部又は本体部の他方は、前記遥動部に枢着されており、
前記リニアモータ可動部又は本体部のいずれか一方は、前記リニアガイドによって、前記昇降体に対して、前記リニアモータ可動部又は本体部の他方の移動方向と直角方向に動く構成になっていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86950(P2013−86950A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231489(P2011−231489)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000112705)フジテック株式会社 (138)
【Fターム(参考)】