説明

エレベータ装置

【課題】 保守運転時に、かご2やカウンターウェイト3が所定以上下降することを阻止する下降阻止装置20を、緩衝器15に設置するものにおいて、簡単且つ確実に下降阻止装置20を緩衝器15に取り付けること。
【解決手段】 下降阻止装置20の嵩上げパイプ22を緩衝器15の頂部15aに置く。次に締結具24をストッパ26に当たるまで時計方向に90度回転することにより、締結具24に螺合されているブラケット25はその一部が水平面上で緩衝器頂部15aと重なる位置にくる。そして更に締結具24を時計方向に回すと、ブラケット25は上昇して緩衝器頂部15aの下面に接し、嵩上げパイプ22の下面とブラケット25とで緩衝器頂部15aを上下から挟む。これによって下降阻止装置20は緩衝器15に固定される。外すときは、締結具24を逆方向に回す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごやカウンターウェイトの昇降体の下方に緩衝器が設置されたエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のエレベータ装置を示す概略図である。図において、1はエレベータの昇降路、2はかご、3はカウンターウェイト、4は昇降路1に設けられた最上階の乗場の床、5は同じく最下階の乗場の床、6は昇降路1の上部に設置された吊車、7は吊車6を介してかご2とカウンターウェイト3とを連結した主ロープ、8はかご上に乗った保守員である。
【0003】
9は昇降路1の底部に設けられてカウンターウェイト3に対向して配置されたカウンターウェイト用緩衝器、10は同じくかご用緩衝器、11はカウンターウェイト下降阻止装置で、保守時にカウンターウェイト用緩衝器9の頂部に、複数のボルト12によって締め付け固定される。13はかご下降阻止装置で、保守時にかご用緩衝器10の頂部に、複数のボルト12によって締め付け固定される。14は昇降路1の底部にいる保守員である。
図4では、カウンターウェイト用緩衝器9はカウンターウェイト3の荷重を受けて全圧縮している状態を示し、かご用緩衝器10はかご2の荷重を受けず、かご下降阻止装置13の荷重しか受けておらず伸びている状態を示している。
【0004】
カウンターウェイト下降阻止装置11は、カウンターウェイト3の下降をカウンターウェイト用緩衝器9よりも上方位置、即ち、通常の下降位置よりも上方の所定位置で阻止する。このカウンターウェイト3の下降阻止により、かご2の上昇が通常の上昇位置よりも下方の所定位置で制限される。
【0005】
保守時に、かご上に乗った保守員8が誤ってかご2を上昇させ続けると、破線で示すように、保守員8が昇降路1の天井に頭をぶつける可能性がある。これを防止するために、かご上に乗って保守をする場合には、まずカウンターウェイト下降阻止装置11をカウンターウェイト用緩衝器9に取り付け、カウンターウェイト3がカウンターウェイト用緩衝器9より先にカウンターウェイト下降阻止装置11に当たるようにして、かご2が物理的に所定位置以上に上昇できないようにする。
このときのカウンターウェイト下降阻止装置11の寸法は、かご上に乗った保守員8が昇降路1の天井で頭を打たないだけの長さに設定してあるので保守員8の安全が確保される。
【0006】
また、保守員14が昇降路1の底部にいる場合、かご下降阻止装置13はかご2の下降をかご用緩衝器10よりも上方位置、即ち、通常の下降位置よりも上方の所定位置で阻止するので、保守員14がかご2に衝突することはない。同様に、カウンターウェイト下降阻止装置11によって、カウンターウェイト3の下降を通常の下降位置よりも上方の所定位置で阻止するので、保守員14がカウンターウェイト3に衝突することもない。
【0007】
ところが、前記の装置は、各緩衝器9,10に各下降阻止装置11,13をボルト12で締め付け固定する構成のため、ボルト取付位置合わせやボルト締め・外しの作業に多くの時間が掛かるという問題がある。
そこで、各緩衝器への各下降阻止装置の取り付けをより簡単化したものが考えられている。
【0008】
この例を図5,図6により説明する。図5は下降阻止装置を緩衝器に取り付けた説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図、図6は下降阻止装置の斜視図であり、かご用及びカウンターウェイト用とも同一の構成となる。
図において、15はかご2又はカウンターウェイト3用の緩衝器、15aは鍔状の緩衝器頂部である。16は下降阻止装置であり、かご2やカウンターウェイト3の下面が当たる下面当たり板16a、嵩上げパイプ16b、緩衝器15に取り付ける取付部16c、挿入穴16dから構成されている。取付部16cは緩衝器頂部15aと嵌め合うように断面C字状に形成されている。17は位置決め,外れ止め用ボルトである。
【0009】
下降阻止装置16を緩衝器15に取り付ける場合には、取付部16cを緩衝器頂部15aに合わせて水平にスライドさせて取り付け、位置決め,外れ止め用ボルト17を挿入穴16dに装着する。これにより、装着されたボルト17が緩衝器頂部15aの外側に係止し、下降阻止装置16が緩衝器15に取り付けられる。
この例では、図4の場合のようにボルト12を締め付け固定する必要がないため、簡単に下降阻止装置16を緩衝器15に取り付けることができる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−151432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記の装置では、下降阻止装置16を緩衝器15の緩衝器頂部15aに合わせて水平にスライドさせ、位置決め,外れ止め用ボルト17を挿入穴16dに装着するだけのため、簡単に取り付けることができるが、図4の場合のようにボルトで締め付けていないため、取り付けが不安定となる。そのため、下降阻止装置16にかご2やカウンターウェイト3が落下すると、その衝撃で下降阻止装置16が緩衝器15からずれたり外れる可能性も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かごやカウンターウェイトからなる昇降体の下方に緩衝器が配置されるとともに、保守時などに前記昇降体が所定以上に下降しないように阻止する下降阻止装置が前記緩衝器に取り付けられるエレベータ装置において、前記下降阻止装置は、回動可能な締結具と、該締結具に連結され所定量回動可能なブラケットとを有し、前記緩衝器の頂部に前記下降阻止装置を配置した状態において、前記締結具は一方向に回転すると前記ブラケットが所定量回転した後上昇して前記緩衝器の頂部に下方から接することによって、前記下降阻止装置が前記緩衝器の頂部に固定され、逆方向に回転すると前記ブラケットが前記と逆方向に所定量回転した後下降して前記緩衝器の頂部から離れることによって、前記下降阻止装置が前記緩衝器の頂部から離脱可能となる構成としたものである。
【0013】
また本発明は、前記下降阻止装置は、前記緩衝器の頂部に載置される嵩上げパイプと、該嵩上げパイプの下方に固定された取付板と、螺子部を有し前記取付板に回動自在に設けられた締結具と、該締結具の螺子部に螺合する螺子部を有し前記締結具の回転とともに所定量回転するブラケットと、該ブラケットの回転を阻止するストッパとを備え、前記ブラケットの回転が阻止された状態で前記締結具を回転すると前記ブラケットが上方又は下方に移動する構成としたものである。
【0014】
また本発明は、前記ブラケットは一方向に回転するとその一部が水平面上で前記緩衝器の頂部と重なる位置になり、逆方向に回転すると水平面上で前記緩衝器の頂部と重ならない位置にくる構成であることを特徴としたものである。
更に本発明は、前記締結具をアイボルトとしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単且つ確実に下降阻止装置を緩衝器に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態による下降阻止装置を緩衝器に取り付けた説明図である。
【図2】図1のB−B断面に相当する説明図である。
【図3】本発明の実施の形態による下降阻止装置を緩衝器に着脱する手順を示す説明図である。
【図4】従来のエレベータ装置を示す概略図である。
【図5】従来の下降阻止装置を緩衝器に取り付けた説明図である。
【図6】従来の下降阻止装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1〜図3により説明する。図1は下降阻止装置を緩衝器に取り付けた説明図であり図5に相当する図で、図1(a)は一部を断面で表した正面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。図2は図1のB−B断面に相当する説明図、図3は下降阻止装置を緩衝器に着脱する手順を示す説明図である。
【0018】
図において、20は緩衝器15に着脱される下降阻止装置、21はかご2やカウンターウェイト3の下面が当たる下面当たり板で、嵩上げパイプ22の上端に固定されている。23は嵩上げパイプ22の下方に固定された取付板、24は取付板23の4箇所に回動自在に設けたアイボルトからなる締結具、25はタップ穴(図示省略)を備えこのタップ穴に締結具24の螺子部が螺合されたブラケットで、図2に示すようにその上片の一部に締結具24を中心として円弧部25aとこの円弧部25aの両隣に長辺部25bと短辺部25cが形成されている。26は各締結具25の近辺に配置されたストッパで、ブラケット25の回転を阻止するものである。これらの下面当たり板21〜ストッパ26によって下降阻止装置20を構成している。
【0019】
本安全装置の着脱手順について説明する。図1は下降阻止装置20が緩衝器15に固定された状態を示しており、図3(C)と同じ状態である。図3(A)は下降阻止装置20が緩衝器15に固定される前の状態である。
【0020】
下降阻止装置20を緩衝器15に取り付ける場合は、図3の(A)⇒(B)⇒(C)の順になる。まず図3(A)に示すように、緩衝器頂部15aに嵩上げパイプ22を載せる。このときブラケット25は図2(b)に示すように水平面上で緩衝器頂部15aと重ならない状態になっている。
次に図3(B)に示すように。締結具24を時計方向に回すと、ブラケット25も一緒に時計方向に回る。これを下方から見ると図2(a)に矢印で示すように、ブラケット25は締結具24を中心に反時計方向に90度回転し、図2(b)の位置から図2(a)の位置へ至り、ブラケット25の長辺部25bがストッパ26に当たると回転を止める。これによりブラケット25はその一部が水平面上で緩衝器頂部15aと重なる位置にくる。
【0021】
そして更に締結具24を時計方向に回すと、図3(B),(C)に示すように、ブラケット25は上昇して緩衝器頂部15aの下面に接し、嵩上げパイプ22の下面とブラケット25とで緩衝器頂部15aを上下から挟む。これによって下降阻止装置20は緩衝器15に固定される。
【0022】
逆に、下降阻止装置20を緩衝器15から外す場合は、前記とは逆に、図3の(C)⇒(D)⇒(A)の順になる。図3(C)の状態(図1(a)(b)も同じ)から、締結具24を反時計方向に回すと、ブラケット25も一緒に反時計方向に回る。これを下方から見ると図2(b)に矢印で示すように、ブラケット25は締結具24を中心に時計方向に90度回転し、図2(a)の位置から図2(b)の位置へ至り、ブラケット25の短辺部25cがストッパ26に当たると回転を止める。これによりブラケット25は水平面上で緩衝器頂部15aと重ならない位置にくる。
【0023】
そして更に締結具24を反時計方向に回すと、図3(D)に示すように、ブラケット25は下降して緩衝器頂部15aの下面から離れ、図3(A)の状態に戻る。これにより、下降阻止装置20を緩衝器15から取り外すことができる。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、アイボルトからなる締結具24を回すだけで、緩衝器15への下降阻止装置20の着脱が容易に行える。しかも取付板23とブラケット25とで緩衝器15の頂部15aを挟み付けているため強固に取り付けられる。
【0025】
前記の実施の形態では、ブラケット25にタップ穴を設けているが、タップ穴の代わりにナット溶接にすることもできる。また、締結具24,ブラケット25は4箇所に設けているが、3箇所以上に設ければ安定した取り付けが行える。更に締結具24を時計方向に回転することによって緩衝器15に下降阻止装置20を取り付け、締結具24を反時計方向に回転することによって緩衝器15から下降阻止装置20を外しているが、この回転方向は逆にしてもよい。
【0026】
また、ブラケット25は90度回転する構成となっているが、90度回転に限ることはなく、水平面上で緩衝器頂部15aに重なる位置と重ならない位置のいずれかを選ぶことができる構成であればよい。
更に締結具24としてアイボルトを使用しているが、蝶ボルトなど他のボルトを使用することもできる。
【0027】
更に本下降阻止装置はかご及びカウンターウェイトの両方の緩衝器に設置できるが、必要に応じてかご又はカウンターウェイトのいずれか一方にのみ設置することもできる。また、カウンターウェイトを有しない巻動式や間接式油圧エレベータなどのエレベータにも適用することができる。
更にまた本下降阻止装置は、保守時のみならず、修理や据付時の調整など色々な場面で使用することができる。
【符号の説明】
【0028】
2 かご
3 カウンターウェイト
15 緩衝器
15a 緩衝器頂部
20 下降阻止装置
21 下面当たり板
22 嵩上げパイプ
23 取付板
24 締結具
25 ブラケット
26 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごやカウンターウェイトからなる昇降体の下方に緩衝器が配置されるとともに、保守時などに前記昇降体が所定以上に下降しないように阻止する下降阻止装置が前記緩衝器に取り付けられるエレベータ装置において、
前記下降阻止装置は、回動可能な締結具と、該締結具に連結され所定量回動可能なブラケットとを有し、前記緩衝器の頂部に前記下降阻止装置を配置した状態において、前記締結具は一方向に回転すると前記ブラケットが所定量回転した後上昇して前記緩衝器の頂部に下方から接することによって、前記下降阻止装置が前記緩衝器の頂部に固定され、逆方向に回転すると前記ブラケットが前記と逆方向に所定量回転した後下降して前記緩衝器の頂部から離れることによって、前記下降阻止装置が前記緩衝器の頂部から離脱可能となる構成であることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記下降阻止装置は、前記緩衝器の頂部に載置される嵩上げパイプと、該嵩上げパイプの下方に固定された取付板と、螺子部を有し前記取付板に回動自在に設けられた締結具と、該締結具の螺子部に螺合する螺子部を有し前記締結具の回転とともに所定量回転するブラケットと、該ブラケットの回転を阻止するストッパとを備え、前記ブラケットの回転が阻止された状態で前記締結具を回転すると前記ブラケットが上方又は下方に移動する構成であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記ブラケットは一方向に回転するとその一部が水平面上で前記緩衝器の頂部と重なる位置になり、逆方向に回転すると水平面上で前記緩衝器の頂部と重ならない位置にくる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記締結具はアイボルトであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のエレベータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−95556(P2013−95556A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240365(P2011−240365)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000112705)フジテック株式会社 (138)
【Fターム(参考)】