説明

エンジンの冷却装置

【課題】空気室の容積を適切にするエンジンの冷却装置を提供しようとするものである。
【解決手段】車両用のエンジン2と、エンジン2にサーモスタット3を介して接続されるラジエータ4と、ラジエータ4とサーモスタット3の少なくとも一方に接続され且つ内部に第一空気室17を配する密閉式のリザーバタンク15と、リザーバタンク15に接続され且つ第一空気室17の容積を増やすように第二空気室21を配して形成される密閉式の調整部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にキャブオーバのトラックは、図3に示す如くキャブ(図示せず)の下方に位置するようにシャシフレーム1に搭載される車両用のエンジン2と、エンジン2の車両前方側に配置され且つエンジン2にサーモスタット3を介して接続されるラジエータ4と、ラジエータ4等に接続される密閉式のリザーバタンク(エクスパンションタンク)5とを備えている。
【0003】
ラジエータ4は、キャブのフロアパネル(図示せず)の形状によりエンジン2内の冷却水位より低い位置に配置されている。またラジエータ4の下方側にはウォータポンプ6が配置されており、ウォータポンプ6は、ラジエータ4からエンジン2へ供給管7を介して冷却水を供給するようになっている。
【0004】
サーモスタット3は、ラジエータ4の上方側に位置し、エンジン2を冷却した後の冷却水を、エンジン2から戻り管8を介してラジエータ4に送るか、またはエンジン2からバイパス管9を介して直接ウォータポンプ6に送るようになっている。
【0005】
密閉式のリザーバタンク(エクスパンションタンク)5は、支持部10を介してエンジン2の冷却水位より高い位置に配置されており、リザーバタンク5の上部には、ラジエータ4やサーモスタット3からエアを抜くように、ラジエータ4及びサーモスタット3に連通するエア抜き管11が接続されている。更にリザーバタンク5の下部には、冷却水をエンジン2側へ給水するように、ウォータポンプ6の入口に接続される給水管12が接続されている。更にまたリザーバタンク5内には、冷却水を気液分離するように下側に水層を備えていると共に上側に空気層の空気室13を備えている。またリザーバタンク5には、内部の空気圧を調整し得る圧力弁14を備えている。
【0006】
エンジン2の駆動等により冷却水温が上昇した際には、冷却水が膨張し、膨張した冷却水はリザーバタンク5内で水位が上昇すると共に、空気層の空気室13を圧縮する。ここでリザーバタンク5内の空気室13が所定圧以上になった場合には、圧力弁14により空気を大気中へ放出し、適切な圧力を保持している。一方、寒冷等により冷却水温が低下した際には、冷却水が収縮し、収縮した冷却水はリザーバタンク5内で水位が低下すると共に、空気層の空気室13が膨張する。
【0007】
尚、この種のエンジンの冷却装置に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−210135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トラックのエンジン負荷が大きくなる場合や、トラックの大型化に伴って排気量の大きなエンジン2を搭載した場合には、リザーバタンク5内の水位の変動が大きくなり、空気室13で適切に対応することができないという問題があった。
【0010】
特に空気室13の容積がエンジン全水量に対して小さすぎる場合には、空気室13の湿った空気が圧力弁14を介して頻繁に大気中へ放出されることになり、冷却水が減少するという問題があった。また空気室13の容積がエンジン全水量に対して大きすぎる場合には、リザーバタンク5内の圧を高圧に保つことができず、キャビテーションや冷却水の沸騰を生じるという問題があった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、空気室の容積を適切にするエンジンの冷却装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエンジンの冷却装置は、車両用のエンジンと、該エンジンにサーモスタットを介して接続されるラジエータと、該ラジエータとサーモスタットの少なくとも一方に接続され且つ内部に第一空気室を配する密閉式のリザーバタンクと、該リザーバタンクに接続され且つ第一空気室の容積を増やすように第二空気室を配して形成される密閉式の調整部とを備えるものである。
【0013】
また本発明のエンジンの冷却装置において、調整部を変えて第二空気室の容積を変更可能にすることが好ましい。
【0014】
更に本発明のエンジンの冷却装置において、調整部は、空気層の第二空気室を備えるタンクであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンの冷却装置によれば、リザーバタンクの第一空気室を備えると共に、第一空気室の容積を増やすように調整部の第二空気室を備えるので、トラックのエンジン負荷が大きくなった場合のようにリザーバタンク内の水位の変動が大きい条件下でも、空気室の容積を適切にすることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例のエンジンの冷却装置を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例のエンジンの冷却装置であって調整部を変更した場合を示す概念図である。
【図3】従来のエンジンの冷却装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のエンジンの冷却装置を実施する形態例を図1、図2を参照して説明する。なお、図中、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0018】
実施の形態例におけるエンジンの冷却装置は、キャブの下方に位置するようにシャシフレーム1に搭載される車両用のエンジン2と、エンジン2の車両前方側に配置され且つエンジン2にサーモスタット3を介して接続されるラジエータ4と、ラジエータ4等に接続される密閉式のリザーバタンク(エクスパンションタンク)15と、リザーバタンク15の上部に接続される密閉式の調整部16とを備えている。
【0019】
ラジエータ4は、キャブのフロアパネル等の形状によりエンジン2内の冷却水位より低い位置に配置されており、サーモスタット3は、ラジエータ4の上方側に配置されている。またラジエータ4の下方側にはウォータポンプ6が配置されている。
【0020】
密閉式のリザーバタンク(エクスパンションタンク)15は、支持部10を介してエンジン2の冷却水位より高い位置に配置されている。またリザーバタンク15の上部には、ラジエータ4やサーモスタット3からエアを抜くように、ラジエータ4とサーモスタット3の少なくとも一方に連通するエア抜き管11が接続されている(図1、図2ではラジエータ4とサーモスタット3の両方にエア抜き管11が接続されている場合を示す)。更にリザーバタンク15の下部には、ウォータポンプ6の入口に接続される給水管12が接続されている。またリザーバタンク15内には、冷却水を気液分離するように下側に水層を備えていると共に上側に空気層の第一空気室17を備えている。更にリザーバタンク15の上部には、内部の空気圧を調整し得る圧力弁18を備えている。ここでリザーバタンク15の位置は、エンジン2の冷却水位よりも高い位置ならば、車両前方側でも良いし、他の位置でも良い。またエア抜き管11は、ラジエータ4のみに接続されても良いし、サーモスタット3のみに接続されても良い。
【0021】
密閉式の調整部16は、支持部19を介してリザーバタンク15の水層よりも高い位置に配置されている。また調整部16は、連結管20によりリザーバタンク15の上部に接続され且つリザーバタンク15の第一空気室17の容積を増やすように第二空気室21を配して形成されている。ここで調整部16は、第二空気室21のみを備えるタンクであることが好ましいが、第二空気室21を備えるならば他の容器や構造体でも良い。また密閉式の調整部16は、図2に示す如く第二空気室21の容積を変更可能にするように他の調整部16aを設置しても良い。なお図2の調整部16aは、図1の第二空気室21の容積よりも小さな容積の第二空気室21aを備えている。
【0022】
以下本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0023】
エンジン2の駆動により冷却水温が上昇した際には、冷却水が膨張し、膨張した冷却水はリザーバタンク15内で水位が上昇すると共に、リザーバタンク15の第一空気室17と調整部16の第二空気室21を圧縮する。ここでリザーバタンク15内の第一空気室17が所定圧以上になった場合には、圧力弁18により空気を大気中へ放出し、リザーバタンク15の第一空気室17と調整部16の第二空気室21を適切な圧力に保持している。一方、寒冷等により冷却水温が低下した際には、冷却水が収縮し、収縮した冷却水はリザーバタンク15内で水位が低下すると共に、リザーバタンク15の第一空気室17及び調整部16の第二空気室21が膨張する。
【0024】
而して、このように実施の形態例によれば、リザーバタンク15の第一空気室17を備えると共に、第一空気室17の容積を増やすように調整部16の第二空気室21を備えるので、トラックのエンジン負荷が大きくなる場合や排気量の大きなエンジン2を搭載する場合のようにリザーバタンク15内の水位の変動が大きい条件下でも、第一空気室17及び第二空気室21による全体の空気室の容積を適切にして水位の変動に好適に対応することができる。
【0025】
また調整部16の第二空気室21を備えることにより、リザーバタンク15の第一空気室17の容積がエンジン全水量に対して小さすぎる場合であっても、適切な容積にし、空気室の湿った空気が圧力弁18を介して頻繁に大気中へ放出されることを防止し、冷却水の減水を抑制することができる。更に第一空気室17及び第二空気室21の容積がエンジン全水量に対して大きすぎる場合であっても、第二空気室21の容積を小さなものにすることにより、リザーバタンク15内の圧を高圧に保ち、キャビテーションや冷却水の沸騰を防止することができる。
【0026】
実施の形態例において、調整部16を変えて第二空気室21の容積を変更可能にするので、トラックのエンジン負荷が大きくなる場合や排気量の大きなエンジン2を搭載する場合のように種々の条件の場合であっても、第一空気室17及び第二空気室21による全体の空気室の容積を適切にすることができる。また調整部16を変更し得るので、一種類のリザーバタンク15で、エンジン全水量が異なる種々のエンジン2に対応することが可能となり、結果的にリザーバタンク15の設置における自由度を高め、更に開発コストを低減することができる。
【0027】
実施の形態例において、調整部16は、空気層の第二空気室21を備えるタンクであると、調整部16を容易に配置し得るので、リザーバタンク15及び調整部16の設置における自由度を高めることができる。
【0028】
尚、本発明のエンジンの冷却装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
2 エンジン
3 サーモスタット
4 ラジエータ
15 リザーバタンク
16 調整部
16a 調整部
17 第一空気室
21 第二空気室
21a 第二空気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のエンジンと、該エンジンにサーモスタットを介して接続されるラジエータと、該ラジエータとサーモスタットの少なくとも一方に接続され且つ内部に第一空気室を配する密閉式のリザーバタンクと、該リザーバタンクに接続され且つ第一空気室の容積を増やすように第二空気室を配して形成される密閉式の調整部とを備えたことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
調整部を変えて第二空気室の容積を変更可能にしたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
調整部は、空気層の第二空気室を備えるタンクであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−24200(P2013−24200A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162123(P2011−162123)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)