説明

エンジン作業機

【課題】防油堤が傾いても、油分を防油堤内に保持しておくことができるエンジン作業機を提供する。
【解決手段】作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収容したケーシング12の下部に、矩形の底板13aと、該底板13aの四方を囲む長側板13b,13bと短側板13c,13cとを備えた上方が開口した箱形の防油堤13を設ける。短側板13cの上縁部と、短側板13cの両側に連続する両長側板13bの短側板側の一部の上縁部とに囲まれた範囲の開口部を覆う状態で、開口の一部を塞ぐ被覆板16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン作業機に関し、詳しくは、作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収容したケーシングの下部に、外部への油分の漏洩を遮断する防油堤(オイルガード)を備えたエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンによって発電機やコンプレッサ、油圧ユニットなどの作業機を駆動するエンジン作業機では、防音構造を有するケーシング内に、前記作業機と、前記ディーゼルエンジンと、該ディーゼルエンジンの燃料を貯留する燃料タンクとを収容するとともに、エンジンや燃料タンクから燃料や潤滑油が漏洩したとしても、これらの油分が外部へ流出することを防止するための防油堤を前記ケーシングの下部に設けるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−144679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7乃至図9に示されるように、一般的なエンジン作業機の防油堤21は、長方形状の底板21aと、該底板21aの四方を囲む長尺の側板21b,21b及び短尺の側板21c,21cとで箱形に形成され、上部が開口していることから、エンジン作業機が何らかの理由で傾斜した場合、図9(e),(f)に示すように、防油堤21も傾いた状態になるため、低くなった側板21c側から外部に油分が溢れる虞があった。
【0005】
そこで本発明は、防油堤が傾いても、油分を防油堤内に保持しておくことができるエンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収容したケーシングの下部に、矩形の底板と該底板の四方を囲む側板とで上方が開口した箱形の防油堤を備えたエンジン作業機において、前記側板の上縁部から開口内方に突出して前記開口の一部を塞ぐ被覆板を設けたことを特徴としている。
【0007】
また、前記防油堤は、長方形状の底板と、該底板の対向する長辺部にそれぞれ立設した一対の長側板と、前記底板の対向する短辺部にそれぞれ立設した一対の短側板とで形成され、前記被覆板は、前記短側板の上縁部と、該短側板の両側に連続する両長側板の短側板側の一部の上縁部とに囲まれた範囲の前記開口部を覆う状態で設けられていることが好ましく、さらに、前記長側板は、長さ方向の中央部が底板と平行な一定の高さに形成され、前記短側板は、長側板の前記中央部の高さよりも高く形成されるとともに、長側板における前記中央部の短側板側には、高さが高く形成された短側板の上縁に向かって漸次高さが高くなる傾斜部が形成され、前記被覆板は、高さが高く形成された短側板の上縁部と、該短側板の両側に連続する両長側板の傾斜部の上縁部とに囲まれた範囲の前記開口部を覆う状態で設けられているものでも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンジン作業機によれば、側板の上縁部から開口内方に突出して前記開口の一部を塞ぐ被覆板を設けたことにより、エンジン作業機が傾斜して防油堤が傾いた状態になっても、被覆板によって防油堤内の油分が外部に溢れ出ることを防止できる。特に、長方形状の防油堤が傾斜したときに液位が上昇しやすい短側板側、すなわち、防油堤の長手方向両側部の上部開口部を覆うように被覆板を設けることにより、エンジン作業機の僅かな傾斜で防油堤内の油分が外部に流出することを、より確実に防止できる。
【0009】
さらに、長側板の長さ方向両側に短側板に向かって漸次高さが高くなる傾斜部を形成し、該傾斜部の部分に被覆板を設けることにより、防油堤の長手方向両側部の容量が増大し、エンジン作業機が傾斜したときの油分の流出を更に確実に防止することができるとともに、被覆板上に流下した油分を、被覆板の傾斜に伴って防油堤の開口部側に案内することができ、エンジンや燃料タンクから漏洩した燃料や潤滑油を防油堤内に確実に流下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1形態例を示すエンジン作業機の正面図である。
【図2】同じく防油堤の平面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】同じくエンジン作業機が傾斜した際の防油堤の説明図である。
【図5】本発明の第2形態例を示すエンジン作業機の正面図である。
【図6】同じくエンジン作業機が傾斜した際の防油堤の説明図である。
【図7】従来の防油堤の平面図である。
【図8】図7のVIII-VIII断面図である。
【図9】同じくエンジン作業機が傾斜した際の防油堤の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図4は、本発明のエンジン作業機の第1形態例を示すもので、このエンジン作業機11は、防音構造を有するケーシング12内に、発電機やコンプレッサ、油圧ユニットなどの作業機と、該作業機を駆動するディーゼルエンジンとを収容したものであって、ケーシング12の下部には、該ケーシング12の下部を密閉し、エンジンから漏洩した燃料などの油分が外部に流出することを防止するための防油堤13が設けられている。
【0012】
防油堤13は、長方形状の底板13aと、該底板13aの四方を囲む側板として、底板13aの対向する長辺部にそれぞれ立設した一対の長側板13b,13bと、底板13aの対向する短辺部にそれぞれ立設した一対の短側板13c,13cとを備えており、上部開口13dを有する箱形に形成されている。
【0013】
長側板13bは、短側板13cと平行に設置された2本の機器支持部材12aの間に位置する長さ方向の中央部13eが底板13aと平行な一定の高さに形成され、前記短側板13cは、長側板13bの中央部13eの高さよりも高く形成されている。さらに、長側板13bにおける前記中央部13eの両側で、機器支持部材12aの短側板13c側には、前記短側板13cの上縁に向かって漸次高さが高くなる傾斜部13fが形成されている。
【0014】
そして、前記短側板13cの上縁と、該短側板13cの両側に連続する両長側板13bの各傾斜部13fの上縁とに囲まれた矩形状の部分には、防油堤13の上部開口13dの一部を塞ぐ被覆板14が設けられ、各上縁部に液密状態で接合されている。これにより、防油堤13の上部開口13dは、長側板13bの中央部13eに対応する部分が開口した状態で残され、防油堤13の長手方向両側部は、被覆板14によって覆われ、短側板13cと、該短側板13cの両側の傾斜部13fに対応した各長側板13bと、被覆板14とにより、短側板13c側が高くなった断面横向き台形状の密閉空間部が形成される。
【0015】
図3に示すように、長側板13bにおける前記中央部13eの高さは、満タン状態の燃料タンクから燃料が全量漏れ出して防油堤13内に流下した場合でも、燃料が防油堤13から溢れて外部に流出しない十分な高さに設定されており、通常の使用で、エンジン作業機11が水平状態を保っている際には、エンジン作業機11の外部に油分が流出することはない。また、エンジンなどから漏洩した油分が被覆板14の上に流下した場合は、被覆板14の傾斜によって上部開口部13d側に油分が流動するので、開口部13eを通って防油堤13内に流下する。
【0016】
一方、図4に示すように、エンジン作業機11の一方の短側板13c側を下にして、エンジン作業機11を傾斜地に設置した状態で油分が漏洩したときや、防油堤13内に油分が溜まっている状態でエンジン作業機11を傾けてしまったときには、長側板13bの一方を下にしてエンジン作業機11を傾斜させた場合に比べて傾斜方向下側の液位が大きく上昇するが、防油堤13内の油分が被覆板14の下方の空間部に流入して保持されるので、防油堤13を超えて油分が外部に流出することを防止できる。
【0017】
図5及び図6は、本発明の第2形態例を示すもので、前記第1形態例に示したエンジン作業機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0018】
本形態例に示す防油堤15は、前記第1形態例と同様に、長方形状の底板15aと、該底板15aの四方を囲む長側板15b,15bと短側板15c,15cとを備えており、上部開口13dを有する箱形に形成されている。長側板15b及び短側板15cは、同じ高さを有するものであって、前記同様に、燃料タンク内の燃料が全量漏れ出した場合でも、防油堤13内に保持できる十分な高さに形成されている。
【0019】
そして本形態例では、両側の前記機器支持部材12aの短側板13c側端部の上部開口13dを覆うようにして被覆板16,16をそれぞれ設けている。これにより、前記第1形態例と同様に、図6に示すように、エンジン作業機11が傾斜した状態になっても、被覆板16に覆われた部分に油分を保持しておくことができるので、油分が外部に流出することを防止できる。
【0020】
なお、上記各形態例では、機器支持部材より短側板側端部に被覆板を設けるようにしているが、被覆板は、機器支持部材に関係なく任意の位置に設けることができる。また、防油堤の短辺側だけでなく、長辺側に設けることもでき、防油堤の平面視が正方形に近い場合は、各側板の内側にそれぞれ設けるようにしてもよい。さらに、前記第1形態例で示した被覆板を傾斜させたものと、前記第2形態例で示した水平方向の被覆板とを組み合わせることもできる。
【0021】
また、従来の防油堤において、側板の上端にケーシング連結用の突片を内側に突出させたものがあるが、このような突片は、連結用としてのものであって、本発明のように、防油堤が傾斜したときの油分の流出防止を考慮したものとは全く異なる。
【符号の説明】
【0022】
11…エンジン作業機、12…ケーシング、12a…機器支持部材、13…防油堤、13a…底板、13b…長側板、13c…短側板、13d…上部開口、13e…中央部、13f…傾斜部、14…被覆板、15…防油堤、15a…底板、15b…長側板、15c…短側板、16…被覆板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収容したケーシングの下部に、矩形の底板と該底板の四方を囲む側板とで上方が開口した箱形の防油堤を備えたエンジン作業機において、前記側板の上縁部から開口内方に突出して前記開口の一部を塞ぐ被覆板を設けたことを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記防油堤は、長方形状の底板と、該底板の対向する長辺部にそれぞれ立設した一対の長側板と、前記底板の対向する短辺部にそれぞれ立設した一対の短側板とで形成され、前記被覆板は、前記短側板の上縁部と、該短側板の両側に連続する両長側板の短側板側の一部の上縁部とに囲まれた範囲の前記開口部を覆う状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記長側板は、長さ方向の中央部が底板と平行な一定の高さに形成され、前記短側板は、長側板の前記中央部の高さよりも高く形成されるとともに、長側板における前記中央部の短側板側には、高さが高く形成された短側板の上縁に向かって漸次高さが高くなる傾斜部が形成され、前記被覆板は、高さが高く形成された短側板の上縁部と、該短側板の両側に連続する両長側板の傾斜部の上縁部とに囲まれた範囲の前記開口部を覆う状態で設けられていることを特徴とする請求項2記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68151(P2013−68151A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206981(P2011−206981)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)