説明

エンブレム及びその取付構造

【課題】水分浸入を抑制することができるエンブレム及びその取付構造を提供する。
【解決手段】車体側部材7に取り付けられるベース部材2と、ベース部材2の前面22に両面接着テープ51を介在させて被覆された意匠部材3とからなるエンブレム1である。両面接着テープ51は、ベース部材2の意匠部材3と対向する部分の外周縁26に配置されており、その外周縁26には両面接着テープ51に向けて突出する突起部28が形成されている。両面接着テープ52は、ベース部材2におけるボス部25の周縁の車体側部材7と対向するボス周縁27に配置されていて、ボス周縁27には両面接着テープ52に向けて突出する突起部29が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体側部材に取り付けられるエンブレム及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体側部材には、車種、製造メーカの名称などの標章を表示したエンブレムが取り付けられている。かかるエンブレムを車体側部材に取り付けるにあたっては、例えば、特許文献1(特開2004−58762号公報)の図1では、車体側部材(ラジエータグリル1)に形成された凸面を貫通する開口穴に、エンブレム(グリルガーニッシュ3)の端部を挿通支持させるとともに、エンブレムの周縁の係合爪を、車体側部材の係合穴に係合している。
【0003】
しかし、上記特許文献1では、エンブレムと車体側部材との間の隙間を通って開口穴や係合穴から車体側部材の内側に水分が浸入してしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2(特開平8−48190号公報)の図3のように、車体側部材(アウタパネル12)とエンブレム(1)との間に両面接着テープ(11)を介在させて、両者の間をシールすることが考えられる。しかし、この場合には、両面接着テープが、車体側部材とエンブレムとの間で平面的に挟持されているため、両面接着テープの圧縮率が小さく、両面接着テープのシール性が十分でないおそれがある。このため、車体側部材とエンブレムとの間を通って車体側部材の内側に水分が浸入するおそれがある。
【0005】
また、近年、エンブレムは、車体側部材に取り付けるベース部材と、ベース部材の表面に設けられた標章表示用の意匠部材とからなる2部材構成のものが多い。このエンブレムについて、水分浸入防止のため、特許文献2の技術を適用して、ベース部材と意匠部材との間に両面接着テープを介在させることが考えられる。しかし、この場合にも、ベース部材と意匠部材とによって、両面接着テープが平面的に挟持されるにすぎず、両面接着テープのシール性が十分でないおそれがあり、ベース部材と意匠部材との間に水分が浸入するおそれがある。
【特許文献1】特開2004−58762号公報
【特許文献2】特開平8−48190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、水分浸入を抑制することができるエンブレム及びその取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明は、車体側部材に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材の表面に弾性シール材を介在させて被覆した意匠部材とからなるエンブレムであって、前記弾性シール材は、前記ベース部材における前記意匠部材と対向する部分の外周縁に配置されており、前記ベース部材の前記外周縁には、前記弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記弾性シール材は、前記ベース部材の前記外周縁の周方向全体に配置されているとともに、前記突起部は、前記ベース部材の前記外周縁の周方向全体に突出していることが好ましい。前記弾性シール材は、両面接着テープ又は弾性シーラントからなることが好ましい。前記意匠部材は、透明部材であることが好ましい。
【0009】
第2の発明は、車体側部材に形成された取付穴に係合されるボス部をもち前記車体側部材との間に弾性シール材を介在させて前記車体側部材に取り付けられてなるエンブレムの取付構造であって、前記弾性シール材は、前記エンブレムにおける前記ボス部の周縁の前記車体側部材と対向するボス周縁に配置されているとともに、前記ボス周縁には、前記弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記弾性シール材は、前記エンブレムの前記ボス周縁の周方向全体に配置されているとともに、前記突起部は、前記エンブレムの前記ボス周縁の周方向全体に突出していることが好ましい。前記弾性シール材は、両面接着テープ又は弾性シーラントからなることが好ましい。
【0011】
前記エンブレムは、前記車体側部材に取り付けられるベース部材と、該ベース部材の表面に第2の弾性シール材を介在させて被覆した意匠部材とからなり、前記第2の弾性シール材は、前記ベース部材における前記意匠部材と対向する部分の外周縁に配置されており、前記ベース部材の前記外周縁には、前記第2の弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されていることが好ましい。前記意匠部材は、透明部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前記第1の発明によれば、ベース部材の外周縁には、弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されている。このため、突起部が、ベース部材の突起部以外の部分に比べて、弾性シール部を弾性的に大きく圧縮させる。従って、弾性シール材は、当該圧縮部分において、ベース部材と意匠部材との間を確実にシールすることができ、ベース部材と意匠部材との間への水分の浸入を抑制することができる。
【0013】
また、弾性シール材は、ベース部材の外周縁の突起部で弾性圧縮される。このため、突起部を設けない場合に比べて、高い水分浸入抑制効果を発揮できる。従って、弾性シール材をベース部材の意匠部材と対向する対向部分の全体に介在させる必要はなく、ベース部材の対向部分の中の外周縁のみに介在させるだけで、十分な水分浸入抑制効果を発揮できる。
【0014】
また、弾性シール材を、ベース部材の外周縁の周方向全体に配置するとともに、突起部を、ベース部材の外周縁の周方向全体に突出させた場合には、突起部による弾性シール材の圧縮部分を周方向全体に形成することができる。このため、ベース部材と意匠部材との間のシール性が更に向上し、水分の浸入を確実に抑制することができる。
【0015】
弾性シール材が、両面接着テープ又は弾性シーラントからなる場合には、その弾性によって、弾性シール材が突起部によって弾性圧縮しやすい。ゆえに、弾性シール材の圧縮部分でのシール性が向上する。
【0016】
意匠部材が透明部材である場合にも、突起部は、意匠部材ではなく、意匠部材の裏面側に配置されたベース部材に形成されている。このため、透明な意匠部材を通して突起部が外部から視認されず、エンブレムの外観に影響を及ぼすことはない。
【0017】
前記第2の発明によれば、ベース部材のボス周縁には、弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されている。このため、突起部が、ベース部材の突起部以外の部分に比べて、弾性シール材を弾性的に大きく圧縮させる。このため、弾性シール材は、当該圧縮部分において、ベース部材と車両側部材との間を確実にシールすることができ、車両側部材の取付穴への水分の浸入を抑制することができる。
【0018】
また、弾性シール材は、ベース部材のボス周縁の突起部で弾性圧縮される。このため、突起部を設けない場合に比べて、高い水分浸入抑制効果を発揮できる。従って、弾性シール材をベース部材の車体側部材と対向する対向部分の全体に介在させる必要はなく、ベース部材の対向部分の中のボス外周縁のみに介在させるだけで、十分な水分浸入抑制効果を発揮できる。
【0019】
また、弾性シール材を、ベース部材のボス周縁の周方向全体に配置するとともに、突起部を、ベース部材のボス周縁の周方向全体に突出させた場合には、突起部による弾性シール材の圧縮部分をボス周縁の周方向全体に形成することができる。このため、ベース部材と車体側部材との間を通って取付穴から車体側部材の内側に水分が浸入するのを確実に抑制することができる。
【0020】
弾性シール材が、両面接着テープ又は弾性シーラントからなる場合には、その弾性によって、弾性シール材が突起部によって弾性圧縮しやすい。ゆえに、弾性シール材の圧縮部分でのシール性が向上する。
【0021】
エンブレムがベース部材と意匠部材とからなる場合には、ベース部材と車体側部材との間に弾性シール材を介在させてベース部材の突起部で弾性シール材を圧縮変形させるだけでなく、ベース部材と意匠部材との間にも第2の弾性シール材を介在させてベース部材の突起部で圧縮変形させる。これにより、ベース部材と車体側部材との間への水分の浸入を抑制できるだけでなく、ベース部材と意匠部材との間への水分の浸入も抑制できる。
【0022】
意匠部材が透明部材である場合にも、突起部は、意匠部材ではなく、意匠部材の裏面側に配置されたベース部材に形成されている。このため、透明な意匠部材を通して突起部が外部から視認されず、エンブレムの外観に影響を及ぼすことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の発明)
第1の発明におけるエンブレムは、ベース部材と、ベース部材を被覆する意匠部材とをもつ。意匠部材は、たとえば、その内側の後面に、意匠層が形成されている。この場合、意匠部材は、後面の意匠層が外部から視認し得るように透明であるとよい。また、意匠部材は、その表側の前面に意匠層が形成されていてもよく、この場合の外側基材は、例えば、透明、半透明である。意匠部材は、有色又は無色のいずれでもよく、有色の場合には着色材により着色されている。意匠部材は、たとえば、耐スクラッチ性に優れたアクリル樹脂(メタクリル酸樹脂、ポリメチルメタクリレート、PMMAとも呼ばれる)、ポリカーボネート、COP(シクロオレフィンポリマー)などの樹脂材料を用いて、射出成形などの一般的な方法で形成される。また、意匠部材は、樹脂材料以外のガラス材料からなり、公知の方法で形成されたものであってもよい。意匠層は、スクリーン印刷、金属蒸着、金属めっき、塗装などの既知の方法により形成される。
【0024】
ベース部材は、透明、半透明、不透明のいずれでもよく、また有色、無色のいずれでもよい。ベース部材は、例えば、AES(アクリロニトリル・エチレン共重合体・スチレン樹脂)、ABS、PPなどの樹脂材料を用いて、射出成形などの一般的な方法で形成される。また、ベース部材は、樹脂材料以外の材料であってもよく、例えば、金属材料からなり、プレス成形などの方法で形成されたものであってもよい。
【0025】
意匠部材とベース部材との間には、弾性シール材が介在されている。弾性シール材は、両面接着テープ又は弾性シーラントからなるとよい。両面接着テープは、たとえば、ゴム、エラストマー、ウレタンなどからなる弾性基材の両面に、既知の粘着剤からなる粘着層を設けたものである。弾性シーラントは、流動性をもち、反応又は乾燥により弾性を残して非流動化したシール材である。弾性シーラントは、弾性だけでなく、粘性をもつことが好ましい。これにより、ベース部材と意匠部材との間を効果的にシールすることができる。かかる弾性シ−ラントは、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタンなどからなる。弾性シーラントは、たとえば、意匠部材又はベース部材に対して接着材により接着される。また、流動状態の弾性シーラントを直接意匠部材又はベース部材に塗布し、反応又は乾燥により非流動化させて意匠部材又はベース部材に固定してもよい。
【0026】
弾性シール材は、ベース部材における意匠部材と対向する対向部分の外周縁に配置されている。弾性シール材は、ベース部材の外周縁の周方向全体に配置されているとよい。そして、弾性シール材は、ベース部材の外周縁に所定の幅をもって帯状に配置されているとよい。その幅は、2mm以上であるとよい。この場合には、弾性シール材のシール性を確保しつつ、無駄なく配置できる。
【0027】
ベース部材の外周縁には、弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されている。突起部は、先端が尖っていることが好ましい。これにより、弾性シール材を突起部の先端で局部的に大きく圧縮変形させることができ、シール性が更に向上する。このような尖った先端をもつ突起部は、たとえば、断面三角形、先端が尖った長尺状の形状をもつ。
【0028】
弾性シール材が、ベース部材の外周縁の周方向全体に配置されている場合には、突起部は、ベース部材の外周縁の周方向全体に突出しているとよい。この場合、突起部は、例えば、外周縁の周方向に沿って連続的に形成された突状リング、又は外周縁の周方向に沿って配列した複数の突起群であるとよい。突起部は、ベース部材の外周縁の幅方向に1または複数に配列されていてもよい。
【0029】
突起部は、弾性シール材の厚み方向に進入している。弾性シール材の厚みに対する、突起部の弾性シール材への進入長さの比率は、20〜80%であることが好ましく、更には30〜70%、望ましくは40〜60%であるとよい。これにより、弾性シール材を突起部で破断させることなく、弾性シール材を圧縮変形させることができ、シール性が向上する。
【0030】
エンブレムが取り付けられる車体側部材は、車両の車体アウターパネル、ラジエータグリル、バックドアパネル、ガーニッシュ、サイドモールなどがある。
(第2の発明)
第2の発明に係るエンブレムの取付構造は、ボス部をもつエンブレムと、ボス部を係合させる取付穴をもつ車体側部材とからなる。エンブレムは、第1発明における意匠部材とベース部材の2部材構成でもよく、また1部材構成でもよい。2部材構成の場合には、エンブレムは第1発明と同様に、意匠部材の後面又は前面に意匠層を形成することができる。また、エンブレムが1部材構成である場合には、例えば、第1発明の意匠部材と同様に、エンブレムの後面又は前面に意匠層が形成された構成をとることができる。
【0031】
エンブレムが第1発明のように2部材からなる場合には、ベース部材の後面側にボス部が突出している。ボス部は、ベース部材と一体に形成されていてもよく、また意匠部材と一体に形成されていてもよい。エンブレムが1部材からなる場合には、エンブレムの後面側にボス部が形成されている。いずれのボス部も、取付穴に係合されることで、エンブレムが位置決めされる。
【0032】
1部材構成又は2部材構成のいずれのエンブレムでも、エンブレムと車体側部材との間には、第1発明における弾性シール材と同様の弾性シール材が介在している。この弾性シール材は、両面接着テープ又は弾性シーラントからなるとよい。弾性シール材は、エンブレムにおけるボス部の周縁の車体側部材と対向するボス周縁に配置されている。弾性シール材は、エンブレムのボス周縁の周方向全体に配置されているとよい。そして、弾性シール材は、ベース部材のボス周縁に所定の幅をもって帯状に配置されているとよい。その幅は、2mm以上であるとよい。この場合には、弾性シール材のシール性を確保しつつ、無駄なく配置できる。
【0033】
エンブレムのボス周縁には、弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されている。突起部は、第1発明における突起部と同様に、先端が尖った形状であるとよい。
【0034】
弾性シール材が、エンブレムのボス周縁の周方向全体に配置されている場合には、突起部は、ボス周縁の周方向全体に突出しているとよい。この場合、突起部は、ボス周縁の周方向に沿って連続的に形成された突状リングがよく、またはボス周縁の周方向に沿って配列した複数の突起群であってもよい。突起部は、ボス周縁の幅方向に1または複数に配列されていてもよい。
【0035】
弾性シール材の厚みに対する、突起部の弾性シール材への進入量の比率は、第1発明と同様に、20〜80%であることが好ましく、更には30〜70%、望ましくは40〜60%であるとよい。
【0036】
エンブレムが2部材構成の場合には、ベース部材の前側に、意匠部材と対向する部分の外周縁に弾性シール材を配置するとともに、ベース部材の前面に、弾性シール材に向けて突出する突起部を設け、且つベース部材の後側に車体側部材と対向する部分のボス周縁に第2の弾性シール材を配置するとともに、ベース部材の後面に、第2の弾性シール材に向けて突出する突起部を設けてもよい。
【0037】
この場合、図3及び図5の点P1に示すように、ベース部材2の後面21のボス周縁27に形成されている突起部29は、ベース部材2の前面22の外周縁26に形成されている突起部28と平面視で同じ位置に配置されていてもよい。また、図3の点P2及び図5の点P3に示すように、ベース部材2の後面21のボス周縁27に形成されている突起部29は、ベース部材2の前面22の外周縁26に形成されている突起部28と平面視で異なった位置に配置されていてもよい。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
本発明のエンブレム及びその取付構造について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、エンブレムの平面図であり、図2は、図1のA−A矢視線断面図であり、図3は、エンブレムの要部拡大断面図である。図1、図2に示すように、エンブレム1は、車体側部材7に取り付けられるベース部材2と、ベース部材2の表面に両面接着テープ51を介在させて被覆された意匠部材3とからなる。
【0039】
ベース部材2は、楕円形状であり、不透明で、着色材で着色されている。ベース部材2は、AESを射出成形することで形成される。ベース部材2の後面21には、長径方向の両端部24に、ボス部25が突出している。ボス部25は、車体側部材7に開口する取付穴71に挿入されている。ベース部材2の前面22には、後述の意匠層及び両面接着テープ51を介在させて意匠部材3が配設されている。
【0040】
意匠部材3は、ベース部材2と同様の楕円形状を呈しており、透明であり、着色されていない。意匠部材3は、アクリル樹脂を射出成形することで形成される。図3に示すように、意匠部材3の後面31は、ベース部材2の前面22に沿った形状の一般部32と、一般部32よりも前側に窪む凹部33とをもつ。意匠部材3の後面31には、文字意匠部61と、文字意匠部61を囲む背景意匠部62とからなる意匠面6が形成されている。
【0041】
図4の二点鎖線の右上がり斜面部分に示すように、両面接着テープ51は、ベース部材2における意匠部材3と対向する部分の外周縁26に、その周方向全体に幅(H1)2〜4mmの帯状に配置されている。また、図5の二点鎖線の左上がり斜面部分に示すように、ベース部材2におけるボス部25の周縁の車体側部材と対向するボス周縁27にも、両面接着テープ52が、配置されている。ボス周縁27に配置されている両面接着テープ52は、ボス周縁27の周方向全体にわたって幅(H2)2〜4mmの帯状に配置されている。両面接着テープ51,52は、いずれも0.8mmの厚みであり、ゴムからなる弾性基材の両面に粘着剤を塗布して形成されたものである。両面接着テープ51、52は、その粘着性によって、ベース部材2に対して意匠部材3及び車体側部材7を固定している。
【0042】
ベース部材2の外周縁26及びボス周縁27には、それぞれ両面接着テープ51,52に向けて突出する突起部28,29が形成されている。一方の突起部28は、意匠部材3と対向するベース部材2の前面22の外周縁26に形成されており、両面接着テープ51の幅方向の略中央に向けて突出している。また、図4に示すように、突起部28は、リング状の両面接着テープ51の周方向、即ちベース部材2の外周縁26の周方向に沿ってリング状に連続的に形成されたリング状突起である。図3に示すように、突起部28は、第1、第2の意匠層61,62の外周側に位置しており当該意匠層には重なっておらず、第3の意匠層63及び保護層64には重なっている。
【0043】
もう一方の突起部29は、車体側部材7に対向するベース部材2の後面21のボス周縁27に形成されており、両面接着テープ52の幅方向の略中央に向けて突出している。また、図5に示すように、突起部29は、リング状の両面接着テープ52の周方向、即ちベース部材2のボス周縁27の周方向に沿ってリング状に連続的に形成されたリング状突起である。
【0044】
図3に示すように、いずれの突起部28,29も、先端が鋭角に尖った断面三角形をなす。突起部28,29の突出量H3,H4は、いずれも、0.4mmであり、両面接着テープ51,52の厚みの50%である。図3及び図5の点P1に示すように、突起部28,29は、エンブレム1を平面視したとき、エンブレム1の長径方向の両端部24で、互いに一部が同じ位置に配置されている。突起部28,29は、突起部28,29に対応する形状の溝部を成形面にもつベース部材成型用の金型を準備し、この金型を用いて射出成形することでベース部材とともに形成される。
【0045】
車体側部材7は、車体アウタパネルであり、エンブレム1はその略中央に取り付けられている。エンブレム1を車体側部材7に取り付けるにあたっては、ベース部材2の前面22の外周縁26及び後面21のボス周縁27に、それぞれ両面接着テープ51,52を貼着する。次に、ベース部材2の前面22に、意匠面6を対向させた状態で意匠部材3を配置する。そして、ベース部材2の前面22に貼着された両面接着テープ51に意匠部材3を押し付けて、ベース部材2に意匠部材3を固定する。次に、ベース部材2の後面21に突出するボス部25を、車体側部材7の取付穴71に係合してエンブレム1を車体側部材7に対して位置決めする。そして、車体側部材7に対してエンブレム1を押し付けて、両面接着テープ52によりエンブレム1を車体側部材7に対して固定する。
【0046】
本例においては、ベース部材2の前面22の両面接着テープ51と対向する部分に、両面接着テープ51に向けて突出する突起部28が形成されている。このため、突起部28が、ベース部材2の突起部以外の部分に比べて、両面接着テープ51を弾性的に大きく圧縮させる。このため、両面接着テープ51は、当該圧縮部分において、ベース部材2と意匠部材3との間を確実にシールすることができ、水分の浸入を確実に抑制することができる。したがって、両面接着テープ51よりも中央に形成された意匠面6が水分に晒されず、意匠面6の変色を抑制し、意匠耐久性に優れる。また、ベース部材2に突起部28、29を形成しているため、透明な意匠部材3を通して突起部28、29が外部から視認されず、意匠性を損なうこともない。
【0047】
また、両面接着テープ51を、ベース部材2の外周縁26の周方向全体に配置するとともに、突起部28を、ベース部材2の外周縁26の周方向全体に突出させている。このため、突起部28による両面接着テープ51の圧縮部分を周方向全体に形成することができる。それゆえ、ベース部材2と意匠部材3との間のシール性が更に向上し、水分浸入を確実に抑制することができる。
【0048】
また、ベース部材2におけるボス部25の周縁の車体側部材7と対向するボス周縁27には、両面接着テープ52に向けて突出する突起部29が形成されている。このため、突起部29が、ベース部材2の突起部29以外の部分に比べて、両面接着テープ52を弾性的に大きく圧縮させる。このため、両面接着テープ52は、当該圧縮部分において、ベース部材2と車両側部材7との間を確実にシールすることができ、車両側部材7の取付穴71への水分の浸入を確実に抑制することができる。
【0049】
また、両面接着テープ52は、ベース部材2のボス周縁27の周方向全体に配置されているとともに、突起部29は、ボス周縁27の周方向全体に突出している。このため、突起部29による両面接着テープ52の圧縮部分を周方向全体に形成することができる。それゆえ、ベース部材2と車体側部材7との間から取付穴71へ水分が浸入するのを確実に抑制することができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図6に示すように、実施例1の両面接着テープに代えて、弾性シーラント53、54を用いた点が、実施例1と相違する。弾性シーラント53,54は、ベース部材2の前面22の外周縁26及び後面21のボス周縁27に配設される。弾性シーラント53,54は、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタンなどからなる。弾性シーラント53,54は、意匠部材3又はベース部材2に対して接着材により接着される。また、流動状態の弾性シーラント53,54を直接意匠部材3又はベース部材2に塗布し、反応又は乾燥により非流動化させて意匠部材又はベース部材に固定してもよい。弾性シーラント53,54の厚みは、いずれも0.8mmである。突起部28,29の突出量は、いずれも0.4mmである。弾性シーラント53,54の厚みの50%に突起部28,29が進入している。
【0051】
また、意匠部材3の後面31には、ボス部35が突出している。ボス部35は、ベース部材2に開口する貫通穴20に挿通され、その先端を車体側部材7の取付穴71に係合させている。ボス部35の先端には、鈎部36が形成されている。鈎部36が、取付穴71の周縁に係止されることで、意匠部材3をベース部材2とともに車体側部材7に対して固定している。本例において、弾性シーラント53が配設されているボス周縁27は、ボス部35が貫挿されているベース部材2の貫通穴20の後面22側の周縁である。もう一方の弾性シーラント54が配設されている外周縁26は、ベース部材2の前面22の意匠部材3と対向している部分の外周縁である。
【0052】
その他は、実施例1と同様である。本例においても、弾性シーラント53,54は、突起部28,29によって圧縮変形されて、高いシール効果を発揮でき、水分の浸入を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1のエンブレムの平面図である。
【図2】図1のA−A矢視線断面図である。
【図3】実施例1のエンブレムの取付構造の要部拡大断面図である。
【図4】実施例1のベース部材の前面側の平面図である。
【図5】実施例1のベース部材の後面側の平面透視図である。
【図6】実施例2のエンブレムの取付構造の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1:エンブレム、2:ベース部材、3:意匠部材、6:意匠面、7:車体側部材、21:後面、22:前面、25,35:ボス部、26:外周縁、27:ボス周縁、28、29:突起部、31:後面、51,52:両面接着テープ、53,54:弾性シーラント、61:第1の意匠層、62:第2の意匠層、63:第3の意匠層、64:保護層、71:取付穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部材に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材の表面に弾性シール材を介在させて被覆した意匠部材とからなるエンブレムであって、
前記弾性シール材は、前記ベース部材における前記意匠部材と対向する部分の外周縁に配置されており、
前記ベース部材の前記外周縁には、前記弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とするエンブレム。
【請求項2】
前記弾性シール材は、前記ベース部材の前記外周縁の周方向全体に配置されているとともに、前記突起部は、前記ベース部材の前記外周縁の周方向全体に突出していることを特徴とする請求項1記載のエンブレム。
【請求項3】
前記弾性シール材は、両面接着テープ又は弾性シーラントからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンブレム。
【請求項4】
前記意匠部材は、透明部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のエンブレム。
【請求項5】
車体側部材に形成された取付穴に係合されるボス部をもち前記車体側部材との間に弾性シール材を介在させて前記車体側部材に取り付けられてなるエンブレムの取付構造であって、
前記弾性シール材は、前記エンブレムにおける前記ボス部の周縁の前記車体側部材と対向するボス周縁に配置されているとともに、前記ボス周縁には、前記弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とするエンブレムの取付構造。
【請求項6】
前記弾性シール材は、前記エンブレムの前記ボス周縁の周方向全体に配置されているとともに、前記突起部は、前記エンブレムの前記ボス周縁の周方向全体に突出していることを特徴とする請求項5記載のエンブレムの取付構造。
【請求項7】
前記弾性シール材は、両面接着テープ又は弾性シーラントからなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のエンブレムの取付構造。
【請求項8】
前記エンブレムは、前記車体側部材に取り付けられるベース部材と、該ベース部材の表面に第2の弾性シール材を介在させて被覆した意匠部材とからなり、
前記第2の弾性シール材は、前記ベース部材における前記意匠部材と対向する部分の外周縁に配置されており、
前記ベース部材の前記外周縁には、前記第2の弾性シール材に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項にエンブレムの取付構造。
【請求項9】
前記意匠部材は、透明部材であることを特徴とする請求項8記載のエンブレムの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−120122(P2009−120122A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298463(P2007−298463)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】