説明

オイルキャップおよびオイルキャップの製造方法

【課題】現場でオイルの注入を不要にし、かつアンカ頭部の挿着前にエア抜き孔からオイルが流れ出すことのないオイルキャップおよびオイルキャップの製造方法を得ること。
【解決手段】一端を開放部とした容器形状のキャップ本体を用意して(ステップS101)、防錆材を封入した袋体をこれに挿入する(ステップS102)。そして、袋体を必要によりキャップ内壁に固定して(ステップS103)、開放部を開口可能な状態で封止する(ステップS104)。開放部からアンカ頭部を挿入してキャップ本体を固定するときこの挿入によって袋体が破壊される。袋体内のオイルはキャップ内部をほぼ満たす量となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばコンクリート擁壁から突出したアンカ頭部を保護するために用いるオイルキャップに係わり、特にキャップ本体内のオイルの収容に工夫したオイルキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
オイルキャップは、アンカ頭部におけるアンカボルトのヘッドとこれに螺合させたナットを保護する釣鐘状等の形状をした金属容器である。オイルキャップの内部にはオイルを満たすようにしている。これによりアンカボルトとナットの間の錆付きを防止して、コンクリート擁壁のずれが生じたような所定の場合に、アンカボルトに対するナットの締め付けの調整を可能にしている。
【0003】
従来では施工現場でオイルキャップをアンカ頭部に被せる際に、グリース等のオイルを目分量で缶から移してキャップ本体に詰め込んでいた。この作業は施工現場等の足場が安定しない場所で行われる場合も多く、また、作業の行われる場所までオイルの入った大きな缶をオイルキャップと共に作業者が携行する必要があった。
【0004】
そこで、本発明に関連する技術として、オイルキャップの頭部に防錆剤を封入した球体状の袋体を現場で挿入することが提案されている(たとえば特許文献1参照)。この第1の提案で作業者はオイルキャップと、袋体を入れた下げ袋を現場まで持っていく。
【0005】
第1の提案では、オイルキャップの開口部近傍の内壁部分には、アンカボルトと螺合するナットを弾性体を介して取り付けるための円筒形状の支持体が予め嵌入されている。袋体はこの支持体の中央に開いた円形の穴からオイルキャップの内部に挿入されるようになっている。このため、袋体自体はこの穴を貫通させるためにオイルキャップの高さの3分の1程度の直径の比較的小さなサイズとなっている。
【0006】
この第1の提案で作業者は、オイルキャップにこの袋体を現場で挿入した後に、アンカボルトの頭部を支持体に指示されたナットに螺合させる。この状態で、袋体はオイルキャップの上部の空間に球体形状で保持されている。そこで、作業者はアンカボルトをオイルキャップに取り付け完了後、オイルキャップの最上部に開けられた小孔から内部に針を突き刺して袋体を破裂させる。これにより、グリース等のオイルがアンカボルトの頭部とナットの螺合部に降りかかり、防錆効果が発揮される。
【0007】
ところが、この第1の提案では、袋体が支持体の穴を通ってオイルキャップに挿入されるので、そのサイズが小さく、オイルの量に限界がある。したがって、袋体の破裂時にアンカボルトの頭部にオイルが均一に塗布されないおそれがある。
【0008】
また、オイルの塗布が均一に行われたとしても、袋体から流れ出したオイルの量はナットの下部にわずかに溜まる程度の量しかない。したがって、時間が経過するとアンカボルトの頭部からオイルがなくなってしまい、この部分から錆が発生する可能性がある。更に、オイルは長い年月を経ると蒸発してオイルキャップ内の量が減少していく。これにより、アンカボルトの頭部とナットの螺合部分だけでなくキャップ内のその他の部分にも錆が発生し、将来、ナットの螺合を再調整しようとしてもこれができなくなるおそれが大きい。
【0009】
そこで、オイルキャップのアンカボルトの頭部挿着用の開放部から防錆材を予め十分な量だけ収容した後で、この開放部を開口可能に塞いでおくことが関連技術として提案されている(たとえば特許文献2参照)。この第2の提案のポイントは、開放部の他端側にエア抜き孔を設けておくことと、アンカキャップとアンカ頭部との間に形成される空間とほぼ同量の防錆材をキャップ内に直接に収容しておくということである。防錆材をこのような量に調整することでアンカ頭部をオイルキャップ内に完全に挿着した状態で、キャップ内がオイルで満たされる。したがって、オイルの不足を起因とする第1の提案による不具合が解消される。
【0010】
この第2の提案では、オイルキャップに予め収容しておくオイルの量が多すぎた場合には、アンカ頭部の挿着時にエア抜き孔から過剰のオイルが外部に溢れ出し、環境を汚染するおそれがある。また、オイルが少ない場合には、第1の提案と同様の問題が発生する。そこで、オイルキャップ本体に、防錆材としてのオイルを規定量正確に収容しておくことが必要とされる。
【0011】
このため、第2の提案では、膜状の蓋の付いた容器にオイルを入れておいて、製造時にこの膜を破ってオイルをキャップ本体に収容することを1つの手法として提案している。このような容器を使用することで、規定量のオイルをオイルキャップに注ぎ入れることができる。
【0012】
この第2の提案の提唱者は、オイルを入れた袋体等の容器そのものをオイルキャップ内に収容することを提案の主旨に副わないものと主張されている。このように容器自体をオイルキャップに挿入するようにすると、第1の提案のように開放部に設けられた部品を避けて容器を内部に挿入する関係でオイルの収容量が少なくなり、アンカキャップとアンカ頭部との間に形成される空間とほぼ同量の防錆材をキャップ内に収容するという第2の提案を実現できないというのがその理由である。
【特許文献1】特開平9−31978号公報(第0012段落、第0041段落、図1)
【特許文献2】特開2002−145389号公報(特許第3895637号)(第0010段落、削除された第0016段落、図3および平成9月22日提出の意見書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この第2の提案では、オイルキャップの開放部を開口可能に塞いでおくことにしている。そして、内部に防錆材としてのオイルを規定量だけ工場で直接収容した後に作業者が現場まで持ち運ぶことになる。開放部の直径はオイルキャップのサイズにもよるが、たとえば10センチメートル程度であり、この部分をアルミニウム等のシート状部材で封止することで内部に収容したオイルが外部に漏れ出さないようにしている。
【0014】
しかしながら、オイルキャップの保管中、あるいは現場への運搬の途中で、開放部を覆うシート状部材が他の部品との接触で傷ついたり、不注意によってこのシート状部材に小さな穴を開けてしまったり、あるいはシート状部材の端が部分的に捲れるような場合がある。このような場合、第2の提案ではオイルキャップそのものにオイルを収容することにしているので、オイルが開放部から外部に流れ出してしまう場合があった。このように使用開始前にオイルが部分的に流れ出したオイルキャップは、オイルが規定量に満たなくなる可能性が高い。そこで、このようなオイルキャップは、アンカ頭部の健全性を確保できないものとして、現場での使用が排除されることになった。
【0015】
また、第2の提案のオイルキャップにはその頂部にエア抜き孔が設けられており、アンカ頭部の挿着時に内部のエアを外部に放出しながらオイルの液面を上昇させるようにしている。しかしながら、防錆材として使用されるオイルはグリースのように粘性が非常に高いものが多い。このようなオイルは比較的大きな空気の泡をその内部に巻き込んだ状態で存在している場合も多い。このようなオイルキャップの場合、その底部の開放部側からアンカ頭部を挿着していくと、圧縮されたエアがオイルを弾き飛ばすようにしながらエア抜き孔から排出される現象が生じる場合がある。このような現象が頻繁に生じると、キャップ内のオイルがかなり減少し、第1の提案と同様にオイル不足による不具合を発生させることになった。
【0016】
更に、第2の提案のオイルキャップでは、内部に収容したオイルが現場に到達する前に流れ出さないように、エア抜き孔にボルトを螺合して閉塞状態して工場出荷を行っている。そして、現場ではこのボルトを外してからアンカ頭部に挿着することにしている。しかしながら、実際には現場でエア抜き孔からボルトを外した後、アンカ頭部に挿着するまで、特に地盤が水平でないような場所ではキャップ本体を横倒しにしておく場合があった。第2の提案のオイルキャップはオイルキャップを横倒しにすると、エア抜き孔からオイルが少しずつ流れ出してしまう。このため、作業が昼休みを挟んだような場合のようにアンカ頭部の挿着までの作業が迅速に行われない場合では、これによるオイルキャップ内のオイルの減少量が多くなるという問題があった。
【0017】
そこで本発明の目的は、現場でオイルの注入を不要にし、かつアンカ頭部の挿着前にエア抜き孔からオイルが過剰に流れ出すことのないオイルキャップおよびオイルキャップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、(イ)一端を開放部とした容器形状のキャップ本体と、(ロ)このキャップ本体の内部にアンカ頭部を完全に挿着したときの内部空間の体積とほぼ等しい体積の防錆材としてのオイルを収容し、このキャップ本体内部に収容された袋体と、(ハ)キャップ本体の開放部をアンカ頭部の挿着時に開口可能な状態で封止する封止用部材とをオイルキャップに具備させる。
【0019】
すなわち本発明では、キャップ本体内に防錆材としてのオイルを収容した袋体を収容する。この後に、必要に応じて支持体等の付属物を取り付けて、封止用部材を用いてキャップ本体の開放部をアンカ頭部の挿着時に開口可能な状態で封止するようにしている。このため、袋体(容器を含む。)はキャップ本体の開放部のそのままのサイズよりも小さければこの内部に挿入することができ、第1の提案のような一回り小さな袋体を用意する必要がない。このため、袋体にはキャップ本体の内部にアンカ頭部を完全に挿着したときの内部空間の体積とほぼ等しい体積の防錆材としてのオイルを収容することが可能になる。
【0020】
また、本発明では、(イ)一端を開放部とした容器形状のキャップ本体の内部に、アンカ頭部をこのキャップ本体に完全に挿着したときの内部空間の体積とほぼ等しい体積の防錆材としてのオイルを収容した袋体を収容する袋体収容ステップと、(ロ)この袋体収容ステップでキャップ本体の内部に袋体を収容した後、キャップ本体の開放部からアンカ頭部を挿入するときに開口可能な状態でこの開放部を所定の部材で塞ぐ開放部封止ステップとをオイルキャップの製造方法に具備させる。
【0021】
すなわち本発明では、袋体収容ステップでキャップ本体内に防錆材としてのオイルを収容した袋体をまず収容する。この後に、必要に応じて支持体等の付属物を取り付けて、封止用部材を用いてキャップ本体の開放部をアンカ頭部の挿着時に開口可能な状態で封止する。このため、袋体(容器を含む。)はキャップ本体の開放部のそのままのサイズよりも小さければこの内部に挿入することができ、第1の提案のような一回り小さな袋体を用意する必要がない。このため、袋体にはキャップ本体の内部にアンカ頭部を完全に挿着したときの内部空間の体積とほぼ等しい体積の防錆材としてのオイルを収容することが可能になる。この後、開放部封止ステップで、キャップ本体の開放部からアンカ頭部を挿入するときに開口可能な状態でこの開放部を所定の部材で塞ぐことになる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、キャップ本体内に防錆材としてのオイルを収容した袋体をまず収容する構造あるいは方法となっている。これにより、袋体のサイズをキャップ本体の開放部に合わせて大きくできるだけでなく、装着時に開放部近傍の部品を介してキャップ内に挿入する必要がないので、これらの部品に引っ掛かって袋体が破損する危険がない。また、キャップ本体内でオイルは袋体内に収容された状態にあるので、オイルキャップを長期間使用しなくても、オイルが蒸発して少なくなったり、空気中に発散してオイル成分の臭いを周囲に付着させるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の一実施例におけるオイルキャップの製造方法の工程を表わしたものである。まず、ステップS101として空のオイルキャップ本体を用意する。
【0025】
図2は、空のオイルキャップとしてのオイルキャップ本体を示したものである。オイルキャップ本体201の頂部には、エア抜き孔202と、オイル注入孔203が配置されており、それぞれボルト204、205が螺入されている。エア抜き孔202は、この図に示していないアンカ頭部の挿着時に内部のエア206を外部に放出するためのものである。オイル注入孔203は、必ずしも必要としないが、必要により外部からオイルキャップ本体201内にオイルを注入する際に使用する。ボルト204、205を螺入することで、これらの孔は封止される。オイルキャップ本体201の円形の開放部207の周囲の内面は、螺刻部201Aを形成している。
【0026】
ステップS101で空のオイルキャップ本体を用意したら、防錆材として使用されるオイルを所定量注入した袋体をこの内部に挿入する(ステップS102)。そして、袋体の所定位置を接着剤や両面テープでオイルキャップ本体内部の頭部に比較的近い位置に固定する(ステップS103)。ただし、この固定は必須の要件ではない。
【0027】
図3は、オイルキャップ本体にオイルを所定量注入した袋体を収容し、これを壁面に固定した状態を表わしたものである。袋体211は、可撓性に富むビニール等の薄い素材であってもよいし、オイルキャップ本体201の内壁の形状に合わせた薄い円筒状の容器であってもよい。また、容器の場合にはその底部が薄くなっているか、圧力によってその一部が破壊されるような、部分的に薄くなった溝が形成されたようなものであってもよい。
【0028】
また、袋体211はオイルキャップ本体201の底部側に開放部207を備え、この開放部をアルミニウムの薄膜等のシート状部材で蓋をしたような構造のものであってもよい。要は、オイルキャップ本体201の開放部212側からこの図に示していないアンカ頭部を挿入していった所定の時点で、その圧力によって袋体211が破壊されるものであればよい。破壊は、袋体211の頂部側でなく底部側で生じるのが好ましいが、特にこれに限定されない。
【0029】
袋体211はその一部がオイルキャップ本体201の内壁に接着剤213によって接着されている。前記したようにこのような接着は不要であるが、接着により後の作業が容易になる利点がある。また、オイルキャップ本体201を持ち運ぶときに、袋体211が内部で安定して保持される。また、開放部207から、この図は示していないアンカ頭部を進入させたときの破壊のタイミングをある程度正確に設定することができる。
【0030】
オイルキャップ本体201に袋体211を収容し、接着したら、本実施例ではこのまま開放部212をアルミニウムの薄膜等のシート状部材214で封止する(ステップS104)。これによりオイルキャップ215の製造は終了する。シート状部材214は将来のアンカ頭部(図示せず)の挿入のために開口可能な状態となっていることはもちろんである。
【0031】
図4〜図6は、オイルキャップにアンカ頭部を挿着する状態の一例を時間の経過と共に示したものである。このうち図4はオイルキャップ本体201の開放部を封止したシート状部材214の一部をアンカ頭部222が破るようにして内部にわずかに進入した状態を表わしている。
【0032】
アンカ頭部222は螺刻されており、コンクリート面223から垂直に突出している。コンクリート面223には、ネジ付リング224がアンカ頭部222を貫通した状態で載置され、そのすり鉢状の凹部に、球面ワッシャ225の凸部を介してナット226がネジ止めされている。ネジ付リング224はその周囲が螺刻部224Aを形成しており、この部分がオイルキャップ本体201の螺刻部201Aと螺合することになる。
【0033】
図4に示した状態で、作業者がエア抜き孔202からボルト204(図2参照)を外した状態で、オイルキャップ本体201を手に持って垂直に下方に移動させる。そして、シート状部材214の中央部をアンカ頭部222に押し当てて貫通させ、更にナット226の頭部もこのシート状部材214を貫通させる。ただし、図4に示した状態では、アンカ頭部222が袋体211の底部まで到達していない。
【0034】
図5は、オイルキャップ本体201を更に下方に移動させて、ネジ付リング224の螺刻部224Aにオイルキャップ本体201の内面に形成された螺刻部201Aが螺合を開始した初期段階を示したものである。オイルキャップ本体201の下端部をネジ付リングの上端部と接触する位置まで下降させたら、この状態で作業者はオイルキャップ本体201をネジ付リング224に螺入させる方向に回転させる。これにより、ネジ付リングの螺刻部224Aにオイルキャップ本体201の螺刻部201Aが螺合を開始して、アンカ頭部222に対してオイルキャップ本体201が次第に下降していく。
【0035】
これと共に、袋体211は押し下げられていく。そして、袋体211の底部はアンカ頭部222およびナット226の押圧力によって大きく変形して破壊の直前の状態となる。
【0036】
図6は、図5に示した状態から更にオイルキャップ本体201が下降する方向に回転させてオイルキャップ本体201の下面をコンクリート面223に圧接させた状態を表わしたものである。図5に示した直後の状態で袋体211の底部が、接触箇所の圧力により破壊される。すると、その内部に収容されたオイル228が下方に向けて溢れ出して、ネジ付リング224の上部に位置するオイルキャップ本体201の内部空間を満たしていくことになる。
【0037】
図6を図5と対比してみると分かるように、オイルキャップ本体201の下降にしたがって、ネジ付リング224の上端位置が相対的に上昇する。これと共に、オイルキャップ本体201の内部に入っていたエア206(図5)は袋体211の上端部とキャップ内壁の隙間を通って、エア抜き孔202から外部に放出されていく。そして、袋体211の内部に収容されていたオイル228の全量が、オイルキャップ本体201の内壁面とネジ付リング224の上面により形成された領域内部の体積から、ネジ付リング224の上面よりも上の領域におけるアンカ頭部222、ナット226および球面ワッシャ225の体積を差し引いた値よりも多い場合、オイルキャップ本体201の下降と共にオイル228のこの余剰分がエア抜き孔202から排出される。
【0038】
すなわち、袋体211の内部に収容されていたオイル228の全量が、オイルキャップ本体201の内壁面とネジ付リング224の上面により形成された領域内部の体積から、ネジ付リング224の上面よりも上の領域におけるアンカ頭部222、ナット226および球面ワッシャ225の体積を差し引いた値と等しかったとする。この場合、オイルキャップ本体201が図6に示した位置関係となったときキャップ内はオイル228によってちょうど満たされることになる。また、袋体211内にこれによりわずかに多いオイル228が存在した場合には、この余剰分がエア抜き孔202から排出されることになる。
【0039】
オイルキャップ本体201の内部で袋体211の破壊によって流出したオイル228は、アンカ頭部222とナット226の螺合部およびネジ付リング224の螺刻部224Aとオイルキャップ本体201の内面に形成された螺刻部201Aの螺合部を共に浸すことになる。しかも、このオイル228はネジ付リング224の上部領域とコンクリート面223との接触領域(この領域にオイル228の透過や拡散を遮蔽する適宜の遮蔽材を介在させてもよい。)によって外部への流失を防止される構造となっている。
【0040】
以上のようにしてアンカ頭部222の周囲をオイルキャップ215で固定したら、エア抜き孔202から流れ出たオイル228を拭き取って、図2に示したボルト204をエア抜き孔202に螺合させて、すべての作業を終了する。なお、年月を経てオイルキャップ215の内部のオイル228の減少が確認されたような場合には、ボルト204を外し、オイル注入孔203側から不足分のオイルを注入すればよい。このとき、ボルト202も一時的に外せば、オイル注入孔203からのオイル228の注入が容易になる。
【0041】
以上説明したように本実施例によれば、アンカ頭部222への挿着前のオイルキャップ本体201を現場に横倒しにしておいても、この状態で内部の袋体211は破壊されていないので、エア抜き孔202からオイル228が流出することはない。また、アンカ頭部222への挿着前のオイルキャップ本体201の開放部を封止したアルミニウムの薄膜等のシート状部材214が部分的に破れていたり、開放部の端部から一部が捲れているような状態が生じていても、この開放部から何らかの部材を挿入して内部の袋体211を破壊しない限り、同様にオイル228が外部に流出することはない。したがって、オイルキャップ215の取り扱いに特に神経質になる必要がない。
【0042】
しかも袋体211は工場でアンカ頭部222の種類に応じて、オイル228の量を正確に測定して製造され、オイルキャップ本体201に挿着される。したがって、オイルキャップ本体201に挿着したときのその体積がアンカ頭部222の種類によって各種異なっても、袋体211を使い分けることで、必要とするオイルの量に簡単に対応させることができる。
【0043】
また、従来の第2の提案を採用した場合、作業者によってはエア抜き孔からボルトを外す作業を忘れて、オイルキャップにアンカ頭部を挿着してしまう場合がある。この場合に途中で気がついてエア抜き孔からボルトを外すと、内部の圧縮したエアがオイルと共にエア抜き孔から噴出して、危険であった。また、この際にオイルが多量に漏れ出すおそれもあった。本実施例でも同様にエア抜き孔からボルトを外す作業を忘れる場合があり得る。しかしながら本発明の実施例の場合には、エア抜き孔202とオイルの間には袋体211の上部のシート状部材が初期的に存在して、オイルの流出を防止する弁の作用をしている。すなわち、エアはこのシート状部材とオイルキャップ本体201上部の内壁との隙間を通ってエア抜き孔202から外部に初期的に放出されることになり、第2の提案のようにエアと共にオイルが噴出す事態を防止することができる。
【0044】
なお、実施例では、アンカ頭部222をオイルキャップ本体201に完全に挿着したとき、エア抜き孔202あるいはオイル注入孔203からオイル223が流れ出る場合、すなわちオイル223が多少多い場合について説明したが、これに限るものではない。たとえばオイルキャップ本体201内にエア206がある程度残った状態であっても、アンカ頭部222がオイル228中に埋没するような量であれば、このような量は今まで実現不可能であったのであり、アンカ頭部222等の各部の錆の発生を有効に防止することができる。したがって、袋体211内のオイル223の量がこのようなものについても、本発明の当然の適用範囲となる。
【0045】
また、実施例ではアンカ頭部222にエア抜き孔202とオイル注入孔203の双方を配置したが、最低限、エア抜き孔202が配置されていればよい。また、オイル注入孔203のみでも足りるものである。また、エア抜き孔は必ずしもその封止用のボルトは必要としない。
【0046】
更に実施例では、オイルキャップ本体201を釣鐘状の容器としたが、一端に開放部が備えられていれば、その形状は各種のものが可能である。また、開放部近辺のナットを支持する構造についても各種のものが可能であることはいうまでもない。
【0047】
また、実施例では図4〜図6でオイルキャップ外部にアンカ頭部を固定するナットを配置した例を示したが、オイルキャップ内部の開放部に近い部位にこれらの部品の一部を配置するような構造であってもよい。この場合にも、袋体をオイルキャップ本体に挿入してからオイルキャップ内部の開放部に近い部位にナットやその支持体を配置する。したがって、袋体のオイルの収容量を実施例と同様に十分な量とすることができる。また、オイルキャップ内部の開放部に近い部位の構造上の工夫によって、アンカ頭部の挿入時における袋体の破壊の際のオイルの開放部からの漏れを防止することができるようにすることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例におけるオイルキャップの製造方法の工程を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施例として空のオイルキャップ本体の断面図である。
【図3】本実施例でオイルキャップ本体に袋体を収容し、これを壁面に固定した状態を表わした断面図である。
【図4】本実施例でオイルキャップにアンカ頭部を少し挿入した状態を表わした断面図である。
【図5】本実施例でオイルキャップにアンカ頭部を袋体の破裂直前の状態まで挿入した状態を表わした断面図である。
【図6】本実施例で袋体が破裂し、オイルキャップの全域にオイルが充填された状態を表わした断面図である。
【符号の説明】
【0049】
201 オイルキャップ本体
202 エア抜き孔
206 エア
207 開放部
211 袋体
213 接着剤
214 シート状部材(封止部材)
215 オイルキャップ
222 アンカ頭部
224 ネジ付リング
226 ナット
228 オイル(防錆材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を開放部とした容器形状のキャップ本体と、
このキャップ本体の内部にアンカ頭部を完全に挿着したときの内部空間の体積の減少分とほぼ等しい体積の防錆材としてのオイルを収容し、このキャップ本体内部に収容された袋体と、
前記キャップ本体の前記開放部を前記アンカ頭部の挿着時に開口可能な状態で封止する封止用部材
とを具備することを特徴とするオイルキャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の頂上部にはエア抜き孔が少なくとも配置されていることを特徴とする請求項1記載のオイルキャップ。
【請求項3】
前記袋体は、前記キャップ本体内壁に接着されていることを特徴とする請求項1記載のオイルキャップ。
【請求項4】
一端を開放部とした容器形状のキャップ本体の内部に、アンカ頭部をこのキャップ本体に完全に挿着したときの内部空間の体積の減少分とほぼ等しい体積の防錆材としてのオイルを収容した袋体を収容する袋体収容ステップと、
この袋体収容ステップで前記キャップ本体の内部に袋体を収容した後、キャップ本体の開放部から前記アンカ頭部を挿入するときに開口可能な状態でこの開放部を所定の部材で塞ぐ開放部封止ステップ
とを具備することを特徴とするオイルキャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−274714(P2008−274714A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122636(P2007−122636)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(507148102)
【Fターム(参考)】