説明

オゾン発生装置を備えた車両用空調装置

【課題】オゾンが車室内に放出されることを防止するともに、通風抵抗及びコストの低減を図り、また、既存のユニットを変更することなく使用することが可能なオゾン発生装置を備えた車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、空調ケース5内に、冷却用熱交換器7と、内気導入口60と外気導入口21との開度を調節する内外気切換ドア25と、吹出用開口部への空気の供給度合いを調節するモードドア(デフベント通路側ドア18、デフベント切換ドア19、フットドア22)と、オゾンを発生させるオゾン発生装置50と、を少なくとも備えている。オゾン発生装置50からオゾンを発生させるときは、モードドア18,19,22を各吹出用開口部14,15,16への空気供給を遮断する位置に設定し空調ユニット3内を殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンを発生させることにより熱交換器等のユニット内部の構成部材を殺菌、消臭するオゾン発生装置を備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置のユニットは、ボックス状に形成されているため、空調装置が作動しないときは内部の通気が悪く、冷却用熱交換器から生じた凝縮水により内部の湿度が高く保持される。
【0003】
このため、除湿を繰り返すエバポレータは凝縮水に覆われるため悪臭のもととなる菌の温床になりやすく、また、ダストの混入を防止するスポンジ状のフィルタも凝縮水を吸収するために悪臭のもととなる菌の温床になりやすい。
【0004】
空調装置の悪臭はこのような部材に増殖した菌が原因であるが、オゾン等によって空調ユニット内を殺菌する場合には、オゾンは乗員に頭痛、眼痛などの影響を与えるため、車室への放出を防止する必要がある。
【0005】
そこで、オゾンが車室に放出されるのを防ぐ装置として、オゾン分解触媒をユニット内に設置することでオゾンを分解することが考えられている。具体的には、エバポレータの上流側に設けられたオゾン発生素子と、エバポレータの表面が凝縮水により濡れていることを検出する湿度センサと、エバポレータの下流側に設けられたオゾン分解触媒と、湿度センサによりエバポレータ表面の濡れが検出されている時、必要な時間区間の間、ブロワの風量を所定値まで低下させると共にオゾン発生素子よりオゾンを発生させる制御部とを有する防臭装置が考えられている(特許文献1参照)。
【0006】
また、送風機、エバポレータ循環通路によって構成されるエバポレータ防臭殺菌循環路を形成し、乗員等の要求によりエバポレータ防臭駆動スイッチが入れられた場合に、エバポレータの上流側に設けたオゾン発生装置により発生したオゾンによってエバポレータの防臭殺菌を行い、残存した未反応のオゾンを循環通路内に設けられた触媒フィルタによって分解する車両用空調装置のエバポレータ防臭殺菌装置も知られている(特許文献2参照)。
【0007】
さらに、ブロアファンを逆回転させることによりユニット内のオゾンを車外に放出することも考えられている。具体的には、自動車用エアコンをオゾンで除菌する自動車用エアコンの除菌装置において、エバポレータの下流側に設けられ該エバポレータの表面除菌時にオゾンを発生するためのオゾン発生器と、該オゾン発生器の作動時にブロワファンを逆回転させることによりオゾンを含む空気を上記エバポレータに通過させた後、車外に強制排気させる回転方向切換手段とを備える自動車用エアコンの除菌装置が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−201245号公報
【特許文献2】実開平04−090413号公報
【特許文献3】特開2002−103959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の装置においては、オゾン分解触媒をユニット内に設置することによって通風抵抗が増大するとともに、コストが増大する不都合がある。特に、特許文献2に記載の防臭殺菌装置は、オゾンをユニット内で循環させるための循環通路が必要になるため、ユニットが大きくなる不都合がある。
【0010】
さらに、特許文献3の除菌装置は、ブロワを逆回転させてオゾンを車外に放出しているが、ブロワを逆回転させても車室側に向かって風が流れることを止めることはできず、また、全ての吹出用開口部を閉塞する吹出モードはなく、少なくとも1つが開放された状態にあるため、オゾンが車室に放出される不都合がある。
【0011】
ところで、上記したオゾン発生装置は、酸素を含む空気中で無声放電を行うものであり、図11に示すようにオゾンを発生させるときよりも低い2kV付近の電圧を印加することによって、プラスイオン及びマイナスイオンを発生させることが可能である。これらの両イオンは、オゾンのような影響を乗員に与えることなくユニット内を殺菌することが可能であるが、反応性が高いため寿命が短く長時間に渡ってオゾン発生装置を稼動させなければ十分な効果を得ることができない。したがって、イオンのみを利用した殺菌は、バッテリーへの負荷が高いため実用的ではない。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、オゾンが車室内に放出されることを防止するとともに、ユニット内を殺菌することができ、通風抵抗及びコストの低減を図り、また、既存のユニットを変更することなく使用することが可能なオゾン発生装置を備えた車両用空調装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置は、内部に空気流路が形成された空調ケースと、前記空調ケース内に配された送風機と、この送風機を介して導入された空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記空調ケースの最上流側に設けられて内気導入口と外気導入口との開度を調節する内外気切換ドアと、前記空調ケースの前記冷却用熱交換器より下流側に設けられた吹出用開口部への空気の供給度合を調節するモードドアと、オゾンを発生させることが可能なオゾン発生装置とを少なくとも具備する車両用空調装置において、前記オゾン発生装置からオゾンを発生させるオゾン発生モード時に、前記モードドアを前記吹出用開口部への空気供給を遮断する位置に設定することを特徴としている。
【0014】
車両用空調装置は、オゾン発生装置からオゾンを発生させるオゾン発生モード時に、モードドアを吹出用開口部への空気供給を遮断する位置に設定することにより、オゾンが車室内に放出されることを防ぐことが可能となる。また、車室内にオゾンが放出されないため、オゾン分解触媒を配置する必要がなく、通風抵抗及びコストの低減を図ることが可能となる。さらに、オゾンを空調ケースで循環させる循環通路を設けることも不要となるため、既存のユニットを変更することなく使用することが可能となる。
【0015】
また、ユニット内にオゾンが十分に行き渡るように、前記オゾン発生モード時に、前記送風機を停止させると共に、前記内外気切換ドアを前記内気導入口を閉塞する位置に設定することが望ましい。
すなわち、送風機は停止しており、オゾン発生装置を冷却用熱交換器の下流側に配置しているので、エアフィルタやエバポレータが通路抵抗となり、外気導入口から逃げていくオゾンを空調ユニット内にとどめておくことが可能となる。
【0016】
さらに、前述のとおり、エアフィルタやエバポレータは悪臭のもととなる菌の温床になっており、これらの上流でオゾンを発生させると、ほとんどのオゾンがエアフィルタやエバポレータに付着されてしまい空調ケース全体の殺菌が困難となるため、オゾン発生装置を前記冷却用熱交換器の下流側に配置することが望ましい。
【0017】
さらにまた、オゾンの比重は空気よりも重いため、オゾン発生装置を前記冷却用熱交換器の車両上下方向の中心位置よりも高い位置に配置することが望ましい。
【0018】
また、車室内にオゾンの放出を防ぐため、オゾン発生モードの終了後に、前記送風機を作動させ、前記空調ケース内のオゾンを車室外に排出させることが望ましい。
【0019】
ここで、送風機の作動は、前記オゾン発生モードの終了後に、エンジンの始動を検知した場合に所定時間作動させるものであり、前記オゾン発生モードの終了後に、エンジンの始動を検知した場合にオゾンの消滅に要する時間の経過する前において作動させるようにしても、空調ケース内にオゾン濃度を検出するオゾンセンサを設け、前記送風機の作動は、前記オゾン発生モードの終了後に、エンジンの始動を検知した場合に前記オゾンセンサにより検出されたオゾン濃度が所定濃度以下となるまで作動させるようにしてもよい。
尚、空調ケース内のオゾン濃度が所定の濃度以下である場合には、送風機の作動によるオゾンの排出をすることなく、空調装置を稼動させるようにしてもよい。
【0020】
さらにまた上述したオゾンの車室外への排出は、一般的な空調ケースには、冷却用熱交換器から発生する凝縮水を外部へ排出するドレーンを具備しているので、前記オゾン発生モードの終了後に、前記空調ケース内におけるオゾンを前記ドレーンから車室外へ排出するようにしてもよい。
【0021】
空調ケースに、前記オゾン発生装置から発生したオゾンを排出する開閉可能なオゾン排出口を更に設け、前記オゾン発生モードの終了後に、前記空調ケース内におけるオゾンを前記オゾン排出口から車室外に排出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上本発明によれば、車両用空調装置は、オゾン発生装置からオゾンを発生させるオゾン発生モード時に、モードドアを吹出用開口部への空気供給を遮断する位置に設定することにより、オゾンが車室内に放出されることを防ぐことが可能となり、乗員の安全を確保しながらユニット内部の構成部材を殺菌、消臭することができる。また、本車両用空調装置によれば、オゾン分解触媒の配置を必要としないため、通風抵抗及びコストの低減を図ることが可能となり、通風抵抗により生じる風きり音を低減することが可能となる。さらに、オゾンを空調ケース内で循環させる循環通路を設けることも不要となるため、既存の空調ユニットを変更することなく使用することが可能となり、汎用性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施例1にかかる空調ユニットを示す断面図である。
【図2】図2は、(a)は、交流高電圧式のオゾン発生装置の例を示したものであり、(b)は、針状電極を有するオゾン発生装置の例を示したものである。
【図3】図3は、実施例1にかかる車両用空調装置の制御装置の構成を示したブロック図である。
【図4】図4は、本車両用空調装置における空気の流れを示した断面図であり、(a)は冷房時を示すものであり、(b)はオゾン発生時を示すものであり、(c)はオゾン排出時を示すものである。
【図5】図5は、実施例1にかかるオゾン発生装置の制御例を示したフローチャート図である。
【図6】図6は、実施例2にかかる車両用空調装置の制御装置の構成を示したブロック図である。
【図7】図7は、実施例2にかかるオゾン発生装置の制御例を示したフローチャート図である。
【図8】図8は、実施例3にかかる車両用空調装置の制御装置の構成を示したブロック図である。
【図9】図9は、実施例3にかかるオゾン発生装置の制御例を示したフローチャート図である。
【図10】図10は、実施例4にかかる空調ユニットを示す断面図である。
【図11】図11は、オゾン発生装置における電圧とオゾン及びイオンの発生量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に示される車両用空調装置1は、この発明の実施形態の一例で、車両のセンターコンソール部に搭載される縦型フルセンター置きのものである。この車両用空調装置1は、エンジンルームと車室とを区画する隔壁よりも車室側に配されているもので、インテークユニット2と空調ユニット3とで基本的に構成されている。
【0026】
空調ユニット3は、内部に空気流路4が形成された空調ケース5内に、インテークユニット2から空気を下流側に送るための送風機6、この送風機6により送られてきた空気を冷却するエバポレータ等の冷却用熱交換器7、この冷却用熱交換器7の風上側に配置されたエアフィルタ8、前記冷却用熱交換器7で冷却された空気を加熱するヒータコア等の加熱用熱交換器9、前記冷却用熱交換器7の下流側であって前記加熱用熱交換器9の上方に位置し車両前方向の壁面に沿うように配置されたオゾン発生装置50を前記空気流路4に沿って配置するように収納し、また、冷風と温風が混ざり合うエアミックスチャンバ13においては、冷却用熱交換器7を通過した風量を調節する第1エアミックスドア10、加熱用熱交換器9を通過した風量を調節する第2エアミックスドア28がそれぞれ設けられるとともに、加熱用熱交換器9の上流には、加熱用熱交換器9を通過させる風量を調節するサブミックスドア27が設けられている。
【0027】
送風機6は、この実施形態では、遠心式多翼ファン(シロッコファン)と称されるファンと、このファンを駆動するモータとから構成されているもので、図1に示されるように、空調ケース5に対し車両左右方向に開口した開口部を設けて、この開口部から車両の左右方向にモータの駆動軸が沿うように横倒し状態で挿入配置されている。エアフィルタ8及び冷却用熱交換器7は、空気流路4内において導入される全ての空気が通過するように立設されており、このうち、冷却用熱交換器7は例えばコルゲート状フィンとチューブとを交互に複数段積層して形成されチューブの長手方向端にタンクを有するもので、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁等と配管接合されて冷凍サイクルを構成している。送風機6と冷却用熱交換器7とは相対的に近接して、送風機6が冷却用熱交換器7の直近上方に配置されている。
【0028】
また、オゾン発生装置50は、冷却用熱交換器7及びエアフィルタ8の下流側であって第1エアミックスドア10の近接する壁面に沿って配置され、また、冷却用熱交換器7の車両上下方向の中心位置よりも高い位置に設けられたフランジ(図示せず)にボルトによって固定されている。
【0029】
オゾン発生装置50は、例えば図2(a)で示されるように、セラミックプレート51を挟持するように設けられる一対の電極52、59に高圧交流電源54から高圧交流電圧を印加してセラミックプレート51にプラズマ放電を発生させることによって、それぞれの電極からオゾンを発生させるとともに、正イオンを有するクラスタと、陰イオンを有するクラスタを発生させる交流放電式のものが望ましい。また、図2(b)で示すように、高圧電源に対して針状陽極放電電極55と、針状陰極放電電極56とを有し、それぞれがアース電極57に対して放電し、オゾンを発生させるとともに、正イオンを有するクラスタと、負イオンを有するクラスタとを発生させるタイプのものであっても良い。
【0030】
オゾン発生装置50は、図11に示すように、印加電圧にともなってオゾン発生量及びイオンの発生量が変化するものである。すなわち、イオンは印加電圧が2kV付近で発生するが、オゾンは、印加電圧が3kVを超えるまでは、発生しない。したがって、オゾン発生装置50を用いてオゾンを発生させるときは、電圧を3〜4kVに設定して稼動させ、また、イオンのみを発生させるときは、2kV付近に設定して稼動させることが望ましい。
【0031】
また、空調ユニット3は、空調ケース5内に、加熱用熱交換器9に対し上方側にて、空気流路4の一部として加熱用熱交換器9で加熱された空気が通過する温風通路11が形成されていると共に、冷却用熱交換器7の下流側から第1エアミックスドア10の回転軸に対しやや斜め下方にかけて空気流路4の一部として冷風通路12が形成されている。さらに、冷風通路12の最下部であって車両後方の壁面には冷却用熱交換器7に生じた凝縮水を車外に排出するためのドレーン80が設けられている。
【0032】
加熱用熱交換器9は、例えばコルゲート状フィンとチューブとを交互に複数段積層して形成されチューブの長手方向端にタンクを有するものである。また、第1エアミックスドア10は、図1にも示されるようにこの実施形態ではバタフライ式のものである。
【0033】
空調ユニット3の温風通路11と冷風通路12とが合流するエアミックスチャンバ13よりも下流側において、デフロスト吹出用開口部14、ベント吹出用開口部15、フット吹出用開口部16が、車室に臨むように空調ケース5に適宜開口している。尚、ベント吹出用開口部15よりも風下側において図示しないがサイドベント吹出用開口部を空調ケース5に対し所定の位置で開口させても良い。
【0034】
また、これらの実施形態では、加熱用熱交換器9の下流側からフット吹出用開口部16まで空気を案内するエアガイド壁17が形成されてエアミックスチャンバ13とフット吹出用開口部16とを連通するフット側通路36がエアミックスチャンバ13に接続されている。さらに、空気流路4の下流においては、エアミックスチャンバ13とデフロスト吹出用開口部14及びベント吹出用開口部15を連通するデフベント側通路37がエアミックスチャンバ13に接続されている。
【0035】
このエアガイド壁17の上端部のエアミックスチャンバ13領域に面して、フット側通路36に向かう風量を調節するバタフライ式のフットドア22が回動可能に配置されている。
【0036】
また、第1エアミックスドア10及びエアガイド壁17の上端部よりも車両上方となるエアミックスチャンバ13領域において、デフベント通路側ドア18が回動可能に配置されている。このデフベント通路側ドア18は、少なくともデフベント側通路37に向う空気量を調整するためのもので、デフベント側通路37に向う空気量が無くなる略水平の位置から、デフベント側通路37へ向かう空気量が最大となる略垂直の位置までの範囲で回動する。尚、デフベント通路側ドア18は、この実施形態では第1エアミックスドア10と同様バタフライ式のものである。
【0037】
デフロスト吹出用開口部14及びベント吹出用開口部15は、ベント吹出用開口部15の開口部周縁に揺動可能に配置されたデフベント切換ドア19により適宜選択開閉される。デフベント切換ドア19は、回転軸とこの回転軸の径方向に延びるドア本体とからなる片持ち式のものである。
したがって、上述したフットドア22と、デフベント通路側ドア18と、デフベント切換ドア19により、各吹出用開口部14,15,16への空気供給度合いを調整するモードドアが構成されている。
【0038】
これに対し、インテークユニット2は、空調ユニット3に対し車両幅方向に沿って左右のいずれか一方に配置されているもので、空調ケース5に形成された空気取入口(図示せず)を介して空調ユニット3と連通しており、この空気取入口は、送風機6のファンの空気取入口と対峙している。
【0039】
また、インテークユニット2は、外気導入口21と内気導入口60とが空調ケース5に開口し、各導入口21、60は空調ケース5に形成された空気取入口に向かって延びる通路26、20を有している。このうち、外気導入口21は、車両進行方向の前方に向かって開口し、内気導入口60は、外気導入口21の下方において車両進行方向の前方斜め下方に向かって開口している。そして、外気導入(FRESH)モードと内気循環(REC)モードとのモード切換制御は、例えばロータリ式の内外気切換ドア25を適宜回動することにより行う。
【0040】
以上のような車両用空調装置1は、空調制御を行うコントロールユニット(C/U)40によって空調制御の一環として制御されることが望ましい。具体的には図3に示すように、この(C/U)40には、空調装置の温度設定スイッチからなる温度設定手段31、空調装置の吹出モードを設定するスイッチからなるモード設定手段32、車室内及び外気の温度を検出するセンサからなる温度検出手段33が接続され、さらには走行用エンジンの制御を行うエンジンコントロールユニット(ECU)30からの信号が少なくとも入力されるように構成されている。これにより(C/U)40は、入力された各種信号に基づき第1エアミックスドア10、サブミックスドア27、第2エアミックスドア28、デフベント通路側ドア18、デフベント切換ドア19、フットドア22、送風機6及びオゾン発生装置50の稼動を制御する。
【0041】
例えば、図4(a)に示すように、ベント(VENT)モードにおいて冷房を使用する場合は、サブミックスドア27、第2エアミックスドア28及びフットドア22を閉位置に設定する一方で、デフベント通路側ドア18を、全開位置に設定し、デフベント切換ドア19を、ベント吹出用開口部15を開口する位置(デフロスト吹出用開口部14を閉鎖する位置)に設定する。
【0042】
また、図4(b)に示すように、オゾンを発生させて空調ユニット3を殺菌する場合は、車室に空気が漏れないように内外気切換ドア25を内気導入口60を閉位置に設定する一方で、フットドア22及びデフベント通路側ドア18を各吹出側通路36,37に流入する空気を遮断するように全閉位置に設定し、オゾン発生装置50からオゾンを発生させる。
【0043】
さらに、図4(c)に示すように、(C/U)40は、オゾンを空調ユニット3から車外に排気する場合は、上記の車室に通じる各ドアを閉じた状態で送風機6を作動し、オゾンをドレーン80から排気させる。
【0044】
以上の構成により、オゾン発生装置50は、(C/U)40により例えば図5のフローチャートに示すように制御される。先ず、(C/U)40は、ECU30からエンジンが始動したことを示す信号の受信に基づいて、エンジンが始動したか否かを判断し(S101)、エンジンが始動しない場合(S101:No)には、この判定が繰り返される。また、ステップS101の判定においてエンジンが始動したことを判断すると(S101:Yes)、車両用空調装置1がONにされたか否か判断し(S102)、始動しない場合(S102:No)にはこの判定が繰り返される。
これに対して、ステップS102の判断において車両用空調装置1の始動を判断すると(S102:YES)、オゾン発生装置50を低電圧で始動させてイオン発生モードを開始する(S103)。このイオン発生モードは、主として空調装置の稼動時に始動するモードであり、印加電圧を2〜3kVに設定することでオゾン発生装置50からプラスイオン及びマイナスイオンを継続的に発生させる制御モードである。
【0045】
このイオン発生モードによるオゾン発生装置50の稼働は、ステップS104において空調装置の停止が判定されるまで継続され、エンジンが停止と判定した場合には(S104:YES)、電源を走行用エンジンのジェネレータからバッテリー電源に切り替えステップS105に進んでデフベント通路側ドア18及びフットドア22を閉じ、内外気切換ドア25を外気導入位置に切り換え(S106)、オゾン発生装置50を高電圧(3kV以上)で始動させてオゾン発生モードを開始する(S107)。
【0046】
このオゾン発生モードは、空調装置の停止時に始動するモードであり、オゾン発生装置50の印加電圧を3〜4kVに設定してオゾンを予め定めた所定時間(2〜3分程度)発生させる制御モードである。エンジンが始動せず(S108:No)、オゾン発生装置50を稼動させてから所定時間が経過したと判断したときは(S109:YES)、オゾン発生モードを終了する(S110)。そして、エンジンが停止状態である場合は、デフベント通路側ドア18及びフットドア22は閉じた状態が維持される。そのため、オゾン発生モード時に空調ユニット3内に放出されたオゾンを空調ユニット3内にとどめておくことができ、内部の構成部材を長時間にわたり殺菌、消臭することができる。
その後、再びエンジンが始動したことを判断すると(S111:YES)、送風機6を低速で作動させて空調ケース5内のオゾンをドレーン80から排出する(S112)。
【0047】
以上のように、上記車両用空調装置1は、通常のオゾン発生装置50の制御に加えて、エンジン停止後に、所定時間、空調装置を密閉状態でオゾン発生装置50を稼働させて、車両用空調装置1内の殺菌、消臭を実行するものであり、オゾン発生モード時にフットドア22及びデフベント通路側ドア18を閉じることにより車室内にオゾンが放出されるのを防止して、乗員の安全を確保しながらユニット内部の構成部材を殺菌、消臭することができる。また、本オゾン発生装置を備えた車両用空調装置1は、オゾン分解触媒を設けないで利用することが可能となるため、空調ユニット3の通気抵抗を低減するとともに、コストを削減することが可能となる。さらに、循環通路等も必要としないため、既存の空調ユニット3のサイズを変更することなく実施することが可能である。
【0048】
また、イオン発生モードを利用する場合においては、オゾン発生装置50が冷却用熱交換器7及びエアフィルタ8よりも下流側に設けられているため、これらの部材に付着することなく車室内に放出することが可能となる。
さらに、オゾン発生装置50が冷却用熱交換器7の車両上下方向の中心位置よりも高い位置に設けられているため、オゾンが空気よりも比重が重いことを利用して冷却用熱交換器7の全体にオゾンを行き渡らせて殺菌することが可能となる。
【実施例2】
【0049】
また、上記の空調ユニット3におけるオゾン排気は、オゾン発生装置50の稼動から所定時間(オゾンの消滅に要する時間)の経過に基づいて行われるものでもよい。すなわち、オゾンは時間の経過とともに酸素に分解されて徐々に消滅するため、発生から数日経過すると空調ユニット3内のオゾンがすでに消滅している場合がある。このような場合には、オゾン排気を行わずに空調装置を稼動させるようにしてもよい。
以下、実施例1と同様の構成については同符号で示して説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、(C/U)40は、接続されたタイマ90に基づいてオゾン発生モードが終了してからオゾンが消滅する所定時間を経過したか否か判断しオゾン排気を行う。
【0051】
具体的には、図7に示すように、(C/U)40は、オゾン発生モード終了(S209)の後、エンジン始動を検知すると(S210:YES)、オゾン発生モード終了から所定時間が経過したか判断し(S211)、所定時間が経過していないときは(S211:NO)、送風機6を低速で作動させることによりドレーン80からオゾンを排気させる(S212)。
【0052】
このように、オゾン発生モードの終了から所定時間経過して、オゾンが消滅しているような場合にはオゾン排気を省略することが可能となり、迅速に車両用空調装置1を稼動させることが可能となる。
【実施例3】
【0053】
また、上記のオゾン発生モード終了後の空調ユニット3のオゾン排気は、空調ユニット3におけるオゾンの濃度によって行われるものでもよい。
【0054】
図8に示すように、(C/U)40は、接続されたオゾンセンサ58が検知した空調ユニット3のオゾン濃度に基づいてオゾン排気を行う。
【0055】
具体的には、図9に示すように、(C/U)40は、オゾン発生モードの終了後(S309)、空調ユニット3におけるオゾン濃度が所定値以下か判断し(S311)、所定値を超えているときは(S311:NO)、送風機6を低速で作動させることによりドレーン80からオゾンを排気し(S312)、オゾン濃度が所定値以下であると判断した場合に(S311:YES)、オゾン排気を終了する。
【0056】
このように、オゾンセンサ58が検知したオゾン濃度に基づいてオゾン排気をすることで、車室内にオゾンが放出されることを確実に防止することが可能となるとともに、オゾン濃度が所定値を下回っているときは、オゾン排気を省略することで迅速なエアコンの起動が可能となる。
【実施例4】
【0057】
なお、上述の実施例においては、ドレーン80からオゾンを排気するように構成したが、別途オゾン排気口を設けて実施してもよい。
【0058】
具体的には、図10に示すように、空気流路4の下部であって、加熱用熱交換器9とサブミックスドア27との間の壁面にオゾン排気口85と排気口ドア86とが空調ユニット3に設けられている。また(C/U)40は、オゾンを車外に排気させるときは、排気口ドア86を開放するとともに送風機6を低速で作動させることによりオゾン排気口85からオゾンを排気させる。
【0059】
このように、オゾン排気口85からオゾンを排気させることにより、オゾンの排気に要する時間を短縮することが可能である。
【0060】
なお、上述のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置1の構成及び制御は一例であり、オゾン発生装置の稼動は、たとえば、乗員のボタン操作により開始させてもよい。さらに、インテークユニット2においては、外気導入口21及び内気導入口60を両方閉じることが可能に構成してもよく、この場合には、発生させたオゾンを外部に漏らすことなく殺菌を行うことが可能となる。
また、内外気切換ドアは内気と外気のいずれかに切換えるドアでなくてもよく、外気と内気の導入と閉塞を独立して制御可能なドアでも実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用空調装置
3 空調ユニット
4 空気流路
7 冷却用熱交換器
10 第1エアミックスドア
11 温風通路
12 冷風通路
13 エアミックスチャンバ
18 デフベント側通路ドア
19 デフベント切換ドア
22 フットドア
25 内外気切換ドア
27 サブミックスドア
28 第2エアミックスドア
50 オゾン発生装置
58 オゾンセンサ
60 内気導入口
80 ドレーン
85 オゾン排気口
86 排気口ドア
90 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気流路が形成された空調ケースと、前記空調ケース内に配された送風機と、この送風機を介して導入された空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記空調ケースの最上流側に設けられて内気導入口と外気導入口との開度を調節する内外気切換ドアと、前記空調ケースの前記冷却用熱交換器より下流側に設けられた吹出用開口部への空気の供給度合を調節するモードドアと、オゾンを発生させることが可能なオゾン発生装置とを少なくとも具備する車両用空調装置において、
前記オゾン発生装置からオゾンを発生させるオゾン発生モード時に、前記モードドアを前記吹出用開口部への空気供給を遮断する位置に設定することを特徴とするオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項2】
前記オゾン発生モード時に、前記送風機を停止させると共に、前記内外気切換ドアを前記内気導入口を閉塞する位置に設定することを特徴とする請求項1のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項3】
前記オゾン発生装置を前記冷却用熱交換器の下流側に配置したことを特徴とする請求項1又は2のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項4】
前記オゾン発生装置を前記冷却用熱交換器の車両上下方向の中心位置よりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項5】
前記オゾン発生モードの終了後に、前記送風機を作動させ、前記空調ケース内のオゾンを車室外に排出させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項6】
前記送風機の作動は、前記オゾン発生モードの終了後に、エンジンの始動を検知した場合に所定時間を作動させるものであることを特徴とする請求項5記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項7】
前記送風機の作動は、前記オゾン発生モードの終了後に、オゾンの消滅に要する時間の経過する前において作動させるものであることを特徴とする請求項5に記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項8】
前記空調ケース内にオゾン濃度を検出するオゾンセンサを設け、前記送風機の作動は、前記オゾン発生モードの終了後に、エンジンの始動を検知した場合に前記オゾンセンサにより検出されたオゾン濃度が所定濃度以下となるまで作動させるものであることを特徴とする請求項5に記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項9】
前記空調ケースは、前記冷却用熱交換器から発生する凝縮水を外部へ排出するドレーンを備え、
前記オゾン発生モードの終了後に、前記空調ケース内におけるオゾンを前記ドレーンから車室外へ排出することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。
【請求項10】
前記空調ケースは、前記オゾン発生装置から発生したオゾンを排出する開閉可能なオゾン排出口を更に備え、
前記オゾン発生モードの終了後に、前記空調ケース内におけるオゾンを前記オゾン排出口から車室外に排出することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のオゾン発生装置を備えた車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−17006(P2012−17006A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155107(P2010−155107)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオジャパン (282)
【Fターム(参考)】