オリゴリボヌクレオチドおよび心臓血管疾患の治療のためのその使用法
本発明は、1以上の心血管関連遺伝子の発明が下方制御された二本鎖化合物、好ましくはオリゴリボヌクレオチドに関する。本発明は、また、当該化合物、または当該オリゴリボヌクレオチド化合物の発現が可能なベクター、および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物に関する。本発明は、また、心血管疾患または他の疾患に罹患した患者を治療する方法であって、当該患者をそれにより治療するような治療学的有効量で当該医薬組成物を当該患者に対して投与することを具備する方法を意図する。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本願は、2005年9月9日に申請された米国仮特許出願第60/715414号および2005年10月31日に申請された第60/732188号に対し優先権を主張するとともに、ここに引用して援用する。本願中、特許および科学出版物が引用される。本発明に関する従来の技術をさらに明確に解説するため、これらの出版物の開示内容は、それら全体で参照することにより本願の一部を構成する。
【0002】
発明の背景
siRNAおよびRNA干渉
RNA干渉(RNAi)とは、2本鎖RNA依存の転写後ジーンサイレンシングの現象である。この現象の研究および実験的に哺乳類細胞を操作する試みは元来、長い二本鎖RNA分子に反応して活性化する、活性および非特定抗ウイルス防御機構により、失敗を重ねてきた。Gilら、2000、Apoptosis、5:107−114参照。その後、 21塩基RNAの合成2重鎖は、遺伝子の抗ウイルス防御機構を刺激することなく、哺乳類細胞内で遺伝子特定RNAiを引き起こすことが発見された(ElbashirらNature 2001、411:494−498およびCaplenら、Proc Natl Acad Sci 2001、98:9742−9747)。その結果、短い二本鎖RNAである短い干渉RNA(siRNA)は、遺伝子機能の解明の有力な手段となった。
【0003】
従って、RNA干渉(RNAi)とは、小さな干渉RNA(siRNA)(Fireら、1998、Nature 391, 806)、またはマイクロRNA(miRNA) (Ambros V. Nature 431:7006,350−355(2004);およびBartel DP. Cell. 2004 Jan 23;116(2):281−97 MicroRNAs:genomics, biogenesis, mechanism, and function)によって仲介された哺乳類細胞内の配列特異性転写後ジーンサイレンシングのプロセスのことである。植物でのプロセスは一般に、特異性転写後ジーンサイレンシングまたはRNAサイレンシングとして報告され、真菌では鎮圧現象と報告されている。siRNAは、内因性(細胞)の遺伝子/mRNAの発現を下方制御またはサイレンシング(抑制)する二本鎖RNA分子である。RNA干渉は、特定タンパク質複合体に取り込まれ、そこで相補的細胞RNAを対象としてそれを特異的に分解する機能に基づく現象である。したがって、RNA干渉の反応は、siRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。エンドヌクレアーゼ複合体は、一般的にRN誘導型サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれ、 二重鎖 siRNAのアンチセンス鎖と相補配列を有する一本鎖RNAを切断させる。対象RNAの切断は、 二重鎖 siRNAのアンチセンス鎖との相補部位の真ん中で生じる(Elbashirら、2001、Genes Dev.、15、188)。詳細には、長鎖の二本鎖RNAはIII型RNAsesにより短い(17−29塩基対)二本鎖RNAの断片(短い抑制RNA−「siRNA」とも称される)に切断される(DICER、DROSHA、等、Bernsteinら、Nature、2001、409巻、363−6ページ;Leeら、Nature、2003、425、415−9ページ)。RISCタンパク質複合体は、これらの断片および相補mRNAを認識する。標的mRNAのエンドヌクレアーゼ開裂で全てのプロセスが完結する(McManus&Sharp、Nature Rev Genet、2002、3巻、737−47ページ;Paddison&Hannon、Curr Opin Mol Ther. 2003年6月;5(3):217−24)。これらの用語および機構に関する情報は、Bernstein E.、Denli AM. Hannon GJ:2001 The rest is silence. RNA. I;7(11):1509-21;Nishikura K.:2001 A short primer on RNAi:RNA-directed RNA polymerase acts as a key catalyst. Cell. I 16;107(4):415-8およびPCT出願WO特許第01/36646号(Gloverら)を参照。
【0004】
公知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成については広く報告されている。その例はChalk AM、Wahlestedt C、Sonnhammer EL. 2004 Improved and automated prediction of effective siRNA Biochem. Biophys. Res. Commun. Jun 18;319(1):264-74;Sioud M、Leirdal M.、2004、Potential design rules and enzymatic synthesis of siRNAs、Methods Mol Biol.;252:457-69;Levenkova N、Gu Q、Rux JJ. 2004、Gem specific siRNA selector Bioinformatics. I 12;20(3):430- 2.およびUi-Tei K、Naito Y、Takahashi F、Haraguchi T、Ohki-Hamazaki H、Juni A、Ueda R、Saigo K.、Guidelines for the selection of highly effective siRNA sequences for mammalian and chick RNA interference Nucleic Acids Res. 2004 I 9;32(3):936-48.Se also Liu Y、Braasch DA、Nulf CJ、Corey DR. Efficient and isoform-selective inhibition of cellular gene expression by peptide nucleic acids、Biochemistry、2004 I 24;43(7):1921-7。PCT出願WO特許第2004/015107号(Atugen)およびWO特許第02/44321号(Tuschlら)を参照。また、修飾型/安定型siRNAの生成については、Chiu YL、Rana TM. siRNA function in RNAi: a chemical modification analysis、RNA 2003年9月;9(9):1034-48、I特許第5898031号および第6107094号(Crooke)を参照。
【0005】
細胞内にsiRNAを生成することが可能なDNAベクターの開発を開示している研究者もいる。その方法は一般的に、細胞内にsiRNAを効果的に生成する短いヘアピンRNAの転写を含む。Paddisonら、PNAS 2002、99:1443-1448;Paddisonら、Genes & Dev 2002、16:948-958;Suiら、PNAS 2002、8:5515-5520;およびBrummelkampら、Science 2002、296:550-553。これらの報告書には、多数の内因性および外因性発現遺伝子を特異的に対象とするsiRNAを生成する方法が記載されている。
【0006】
数々の研究がsiRNA治療は、哺乳類動物および人間の生体内において効果的であることを示している。Bitkoらは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ヌクレオカプシドN遺伝子に対する特異的siRNA分子が経鼻的にマウスに投与されると治療効果があると報告した(Bitkoら、「Inhibition of respiratory viruses by nasally administered siRNA」、Nat. Med. 2005、11(1):50-55)。医学でのsiRNAの使用に関する総論が近年Barik SによりJ. Mol. Med(2005)83:764−773)で発表された。さらに、加齢黄斑変性症(AMD)治療のためのVEGFRlレセプターを対象にした短鎖siRNA分子に関する第1相臨床試験が臨床患者を対象として実施された。内眼硝子体内注射により投与されたsiRNA薬は、フォローアップ最長157日後にテストされた14人の患者に効果的であり安全であることがわかった(Boston Globe、2005年1月21日)。
【0007】
心筋梗塞
冠動脈硬化に続く心筋梗塞および関連心筋虚血は、 先進工業国での入院の最も大きな原因である。心臓血管疾患は、相変わらず米国、ヨーロッパおよび日本において主要な死亡原因となっている。心臓血管疾患の罹患率および死亡率は高く、同様に医療システムにおける経済負担も大きい。
【0008】
心筋梗塞は、アテローム性動脈硬化により以前損傷した冠動脈の血栓性閉塞に引き続き、冠血流量が急激に低下した時に起こる。冠動脈疾患は、心筋への不十分な血流を引き起こす冠動脈の病変または閉塞、または狭心症、心組織の壊死(心筋梗塞)などの合併症および急死の原因となる心筋虚血によってしばしば特徴付けられている。多くの場合、動脈硬化性プラークが裂けたり、破裂したりまたは潰瘍化している場合や、血栓が形成されやすい状態にあると、梗塞が起きる。梗塞は、冠動脈塞栓、先天性異常、冠動脈攣縮、その他全身性の特に炎症性疾患により引き起こされる冠動脈閉塞が原因となることも稀にある。心筋梗塞発作を初めて経験した人のうち、血管形成術やステント留置術を含む最大限の医療管理体制にも関わらず発作の翌年心筋梗塞を再発する危険率は10〜14%である。
【0009】
心筋梗塞および冠動脈硬化に伴う心筋虚血は、近年薬物投与や生活や食事の改善により治療されている。その他、血管形成術、レーザー完全切除、アテローム切除術、カテーテル留置法および血管内ステントなどの手法により冠動脈を拡張させることもできる。特定の患者においてのみ、症状を軽減し、寿命を伸ばす治療として、冠動脈バイパス移植術(Coronary Artery Bypass Grafting:CABG)が好ましい。CABGでは、血管セグメントを1本以上の冠動脈へ直接吻合する。
【0010】
結論として、現在のところ心臓血管関連疾患の予防および/または治療に満足いくほどの治療方法はなく、従って、これを目的とした新規化合物の開発が要求されている。本発明の新規化合物は、本願に開示される以外の疾患や症状の治療に利用されてもよい。
【0011】
発明の開示
本発明は、心臓血管関連疾患で上方制御される特定遺伝子の発現を抑制する新規の二本鎖オリゴリボヌクレオチドを提供する。本発明はまた前記オリゴリボヌクレオチドを1つ以上含む医薬組成物およびオリゴリボヌクレオチドの発現が可能なベクターを提供する。本発明はさらに、患者を治療するために、治療上有効な量の医薬組成物として一般的な1つ以上のオリゴリボヌクレオチドを患者に投与することを含む、心臓血管関連疾患の患者の治療法をも提供する。本発明は、前記遺伝子の促進された発現に伴って生じる他の疾患の治療をも考慮する。
【0012】
一実施形態において、本発明は、下記特定遺伝子の発現を抑制する新規の二本鎖オリゴリボヌクレオチドを提供する。ヘパリン結合性EGF様成長因子(HB−EGF(DTR)b)、スペルミジン/スペルミンNl−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT),ステロイド感受性遺伝子1(URB)、転写変異遺伝子1(SSG1)、GTPase活性化タンパク質1を含むIQモチーフ(IQ−GAP)、スフィンゴシン−1−リン酸ホスファターゼ1(SGPP1)、―セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、長鎖塩基サブユニット2(SPTLC2)、シナプトポディン2−類似遺伝子(SYNPO2L)、オルニチンデカルボキシラーゼ1(ODC1)、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレータ5(FXYD5)、pim−1発癌遺伝子(PIM1)。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、通常本発明に従って、心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する化合物、特に 新規の小干渉RNA(siRNA)に関し、さらに心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う様々な疾病および病状の治療における、前記新規siRNAの使用に関する。
【0014】
本発明はさらに、表Oに記載されている心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する化合物および、特に心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および病状に関連する病理の治療における前記化合物の使用に関する。好ましくは、本発明は、表Nに記載されている心臓血管遺伝子の発現を下方制御する化合物および、特に心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および病状に関連する 病理の治療における前記化合物の使用に関する。さらに好ましくは、本発明は、表Aに記載されている心臓血管遺伝子の発現を下方制御する化合物および、特に心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および病状に関連する病理の治療における前記化合物の使用に関する。
【0015】
本発明はさらに、表A、NまたはOに記載されている遺伝子の遺伝子産物のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および疾患に病む患者の回復を推進する組成物を調製するために、表A、NまたはOに記載されている心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する1つ以上の化合物の治療上有効な用量の使用を提供する。
【0016】
本発明は、生体内での特定対象心臓血管関連遺伝子の発現を抑制する方法および組成物を提供する。通常、前記方法は、1つ以上の特定心臓血管関連遺伝子を対象とし、生物学的状況における(細胞内で)mRNAまたは細胞内でsiRNAを生成する核酸物質とハイブリッドしたり相互作用したりする小さな干渉RNA(すなわち、siRNA)などのオリゴリボヌクレオチドをRNA干渉メカニズムによって標的遺伝子の発現を下方制御するのに十分な量投与する方法を含む。特に、本発明の方法は、疾病の治療を目的として特定心臓血管関連遺伝子の発現を抑制するために利用される。
【0017】
本発明に従い、siRNA分子または心臓血管関連遺伝子の抑制剤は、様々な病理の治療薬として、特に前記遺伝子の上方制御に伴う心臓血管疾病および疾患に関連する病理の治療薬として利用される。
【0018】
本発明は、本発明の心臓血管関連遺伝子の発現を抑制する二本鎖オリゴリボヌクレオチド(siRNA)を提供する。本発明のsiRNAは二重鎖オリゴリボヌクレオチドであり、そのセンス鎖は選択された遺伝子のmRNA配列に由来し、アンチセンス鎖は前記センス鎖を相補する。一般的に、標的mRNA配列から若干ずれていても、siRNA活性を抑制することはない。本発明のsiRNAはmRNAを破壊し、あるいは破壊することなく、(Czaudernaら、2003 Nucleic Acids Research 31(11),2705−2716参照)、転写後レベルで遺伝子の発現を抑制する。理論に縛られないとすれば、siRNAは特定の開裂または分解のためにmRNAを対象とするか、あるいは対象とされたメッセージからの翻訳を抑制する。
【0019】
下記の表Aは、本発明に従い、マウスおよびヒトの参照番号を含む選択された11の心臓血管関連遺伝子の詳細を要約したものである。
【表A】
一般的に本発明に使用されるsiRNAは二本鎖構造を持つリボ核酸で構成されるが、そこでこの二本鎖構造は第一鎖および第二鎖から成り、第一鎖は近接するヌクレオチドの第一の伸展を含み、前記第一の伸展はターゲット核酸を少なくとも一部相補し、第二鎖は近接するヌクレオチドの第ニの伸展を含み、前記第ニの伸展はターゲット核酸に少なくとも一部同一である。鎖は糖残基(下記実施形態を参照)および/またはリン酸塩および/または塩基上で修飾されることも、修飾されないこともある。本発明の1つの態様において、前記第一鎖および/または第二鎖は、2’の位置で修飾された複数の修飾ヌクレオチドを含み、ここで鎖内の修飾ヌクレオチドの各群は、ヌクレオチドの隣接群により片側または両側に位置し、ヌクレオチドの隣接群を形成する隣接ヌクレオチドは未修飾ヌクレオチドであるか、または修飾ヌクレオチドの修飾形態とは異なる修飾を有するヌクレオチドである。さらに前記第一鎖および/または第二鎖は、複数の該修飾ヌクレオチドまたは複数の該修飾ヌクレオチド群を含むことがある。
【0020】
修飾ヌクレオチド群および/または隣接ヌクレオチド群は、多数のヌクレオチドから構成されることがあるが、その数は1ヌクレオチドから10ヌクレオチドからなる群から選ばれる。本願で特定される任意の範囲に関連して、各範囲は該範囲を確定する該2個の数字を含む範囲を確定するために用いられる各数字間の整数を示すことは自明である。本願において、前記群は従って1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチドおよび10ヌクレオチドを構成する。
【0021】
前記第一鎖の修飾ヌクレオチドの形態は、第二鎖の修飾ヌクレオチドの形態に対して1つ以上のヌクレオチドによって移行していることがある。
【0022】
上記の修飾は、ヨーロッパ特許EPO第586520号またはEPO第618925B1に開示されている通り、アミノ、フルオロ、メトキシアルコキシ、アルキル、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、イミダゾール、カルボン酸塩、チオエート、C1からC10低アルキル基、置換低アルキル基、アルカリル基またはアラルキル基、OCF3、OCN、O−、S−またはN―アルキル;O−、S−またはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2、N3;ヘテロザイクロアルキル;ヘトロザイクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノまたは置換シリル、を含む群から選択される。
【0023】
siRNAの二本鎖構造は、片側または両側が平滑末端となる。より詳細には、二本鎖構造は、第一鎖の5´末端および第ニ鎖の3´末端によって確定される二本鎖構造側が平滑末端となっている、または二本鎖構造は第一鎖の3´末端および第ニ鎖の5´末端によって確定される二本鎖構造側が平滑末端となっている。
【0024】
さらに、二本鎖の少なくとも一鎖は、5´末端で少なくとも1ヌクレオチドの突出を形成するが、前記突出は少なくとも1デオキシリボヌクレオチドを構成する。前記鎖の少なくとも一鎖は、3´末端に少なくとも1ヌクレオチドの突出を任意で形成する。
【0025】
siRNAの二本鎖の長さは通常17から27塩基、さらに好ましくは19または21塩基である。さらに、該第一鎖の長さおよび/または該第二鎖の長さは約15から約27塩基、17から21塩基および18塩基または19塩基の範囲からなる群からそれぞれ個別に選ばれる。典型的実施例は27塩基である。
【0026】
さらに、該第一鎖とターゲット核酸間の補完性は完全であり、または第一鎖とターゲット核酸間に形成された二重鎖は少なくとも15ヌクレオチドで構成され、ここでは該二本鎖構造を形成する該第一鎖とターゲット核酸間に1つまたは2つのミスマッチを有する。
【0027】
いくつかの場合において、前記第一鎖および第二鎖はそれぞれ、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド群および少なくとも1つのヌクレオチド隣接群を構成するが、ここでヌクレオチドの各隣接群は1つ以上のヌクレオチドを含み、第一鎖の修飾ヌクレオチドの各群は第二鎖上のヌクレオチドの隣接群に沿って配列されている、またここで第一鎖の修飾ヌクレオチド各群と隣接第一鎖の5´末端ヌクレオチドのほとんどが修飾ヌクレオチド群のヌクレオチドであり、第二鎖の3´末端ヌクレオチドのほとんどがヌクレオチド隣接群のヌクレオチドである。修飾ヌクレオチド各群は単一ヌクレオチドから成り、および/またはヌクレオチドの隣接群は単一ヌクレオチドから成る。
【0028】
さらに、第一鎖でヌクレオチドの隣接群を形成するヌクレオチドは修飾ヌクレオチド群を形成するヌクレオチドに対応して3’の方向に配列されている未修飾ヌクレオチドであり、第二鎖で修飾ヌクレオチド群を形成するヌクレオチドはヌクレオチドの隣接群を形成するヌクレオチドに対応して5’の方向に配列されている修飾ヌクレオチドであることが可能である。
【0029】
さらにsiRNAの第一鎖は、8から12、好ましくは9から11の修飾ヌクレオチド群を構成し、第二鎖は、7から11、好ましくは8から10の修飾ヌクレオチド群を構成する。
【0030】
第一鎖と第二鎖は、なかでもポリエチレン・グリコールなど非核酸ポリマーから構成されるループ構造で結合している。あるいは、ループ構造は核酸から構成される。
【0031】
さらに、siRNAの第一鎖の5’末端は第二鎖の3’末端に結合している、または第一鎖の3’末端は第二鎖の5’末端に結合しており、該結合は通常10から2000の核酸塩基を有する核酸リンカを通して形成される。
【0032】
詳細には、本発明は構造Aを有する化合物を提供する:
5’(N)x−Z3’(アンチセンス鎖)
3’Z’−(N’)y5’(センス鎖)
式中、NおよびN’のそれぞれが、その糖残基において修飾されていても、または修飾されていなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)xおよび(N’)yは、連続したNまたはN’のそれぞれが次のNまたはN’に共有結合によって連結されたオリゴマーであり、
そこでxおよびyはそれぞれ19から40の間の整数であり、
ZおよびZ’のそれぞれが存在してもしなくてもよく、しかし、存在する場合はdTdTであり、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付着しており、
(N)xの配列は、心臓血管関連遺伝子のmRNA、特に表Oおよび/またはNに列挙された心臓血管関連遺伝子のいずれかにアンチセンス配列を含む、好ましくは表B−Mに見られるアンチセンス配列を1つ以上含む。
【0033】
本発明の化合物が共有結合を通して結合された複数のヌクレオチドから構成されることは当業者に周知である。各共有結合は、各鎖のヌクレオチド配列の長さに沿ったリン酸ジエステル結合、リン酸チオエート結合またはその組み合わせである。その他の可能な骨格修飾はとりわけ米国特許第5,587,361;6,242,589;6,277,967;6,326,358;5,399,676;5,489,677および5,596,086に開示されている。
【0034】
特定の実施例において、xおよびyが好ましくは約19から約27の間の整数、最も好ましくは約19から約25の整数である。本発明の化合物の特定の実施例において、xはyと同等であり(viz.,x=y)、好ましくはx=y=19またはx=y=21である。特に好ましい実施例においては、x=y=19である。
【0035】
本発明の化合物の一実施例においてZおよびZ’は両方とも存在せず、別の実施例においてはZまたはZ’の片方が存在する。
【0036】
本発明の化合物の一実施例において、化合物のリボヌクレオチドは全てその糖残基において修飾されていない。
【0037】
本発明の化合物の好ましい実施例において、少なくとも1つのリボヌクレオチドはその糖残基において修飾されており、好ましくは2’位置で修飾されている。2’位置での修飾により、好ましくはアミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシおよびアルキル基からなる群から選ばれる構成成分が存在することとなる。現在最も好ましい実施例において、2’位置での構成成分はメトキシ基(2’−0−メチル基)である。
【0038】
本発明の好ましい実施例において、代替のリボヌクレオチドは化合物のアンチセンス鎖およびセンス鎖の両方で修飾される。特に、実施例で用いられるsiRNAは、2’O−Me群がアンチセンス鎖の第一、第三、第五、第七、第九、第十一、第十三、第十五、第十七および第十九ヌクレオチドに存在するように修飾されている、この修飾は完全に同一であり、すなわち2’O−Me群がセンス鎖の第二、第四、第六、第八、第十、第十二、第十四、第十六および第十八ヌクレオチドに存在する。さらに、本発明に従った前記核酸の場合には第一の伸展は第一鎖に同一であり、第二の伸展は第二鎖に同一であり、前記核酸は平滑末端を形成することを考慮すべきである。
【0039】
本発明の1つの好ましい実施例に従って、siRNA分子のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、5’末端ではなく、3’末端のみでリン酸化される。本発明の別の好ましい実施例に従って、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、3’末端および5’末端で非リン酸化される。本発明のさらに別の好ましい実施例に従って、センス鎖の5’位置に配列する第一ヌクレオチドは典型的に生体内5’−リン酸化反応を防ぐために修飾される。
【0040】
本発明の化合物の別の実施例において、アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾され、センス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾されない。
【0041】
本発明はさらに、細胞において修飾されていない形態で前記オリゴリボヌクレオチドのいずれかを発現可能なベクターを提供し、その後適切な修飾を行うことができる。
【0042】
本発明はまた、担体内で、好ましくは医薬的に許容可能な担体内で、本発明の1つ以上の化合物からなる組成物を提供する。本組成物は、2つ以上の異なるsiRNAの混合を含んでもよい本組成物は、2つ以上の異なるsiRNAの混合を含んでもよい。
【0043】
また、本発明は、遺伝子および担体の発現を抑制するのに有効な量で、1つ以上の本発明の化合物に共有結合または非共有結合した本発明の上記の化合物を備える組成物を提供する。本発明の1つ以上のオリゴリボヌクレオチドを産生するために、内因性細胞複合体により細胞内に本組成物を生成してもよい。本発明はまた、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子の細胞において発現を下方制御するのに有効な量で、 担体および本発明の1つ以上の化合物を備える組成物を提供し、その化合物は(N)xと本質的に相補配列を備える。
【0044】
さらに、本発明は、本発明の1つ以上の化合物を有する表Aの1つ以上の遺伝子のmRNA転写に接触する方法を備える対照と比較して、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子の発現を少なくとも50%まで下方制御する方法を提供する。
【0045】
一実施例では、オリゴリボヌクレオチドは、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子を下方制御することであり、そのために、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子の下方制御は、遺伝子機能の下方制御、遺伝子ポリペプチドの下方制御および遺伝子mRNA発現の下方制御を備える群から選択される。
【0046】
一実施例では、前記化合物は、コード化されたポリペプチドを下方制御をすることであり、そのため、コード化されたポリペプチドの下方制御は、ポリペプチド機能の下方制御(とりわけ、天然遺伝子/ポリペプチドの既知のインターアクターを伴う、酵素的試験法または結合試験法により検査してもよい)、タンパク質の下方制御(とりわけ、ウエスタンブロット法、ELISAまたは免疫沈降により検査してもよい)およびmRNA発現の下方制御(とりわけ、ノーザンブロット法、定量RT−PCR、in−situハイブリダイゼーションまたはミクロアレイハイブリダイゼーションにより検査してもよい)を備える群から選択される。
【0047】
本発明はまた、患者を治療するために、治療上有効な量の本発明の組成物を患者に投与することを含む、表A、表Nおよび/または表Oに記載されている遺伝子の遺伝子産物のレベル上昇に伴う心臓血管疾病または疾患に病む患者を治療する方法を提供する。
【0048】
また、本発明は、表A、NまたはOに記載されている遺伝子の遺伝子産物のレベル上昇に伴う心臓血管疾病または 疾患に病む患者の回復を推進する組成物の調製のため、本発明の1つ以上の化合物を治療上有効な量で使用することを提供する。
【0049】
用語「心臓血管疾病」または「心臓血管疾患」は、心筋虚血を伴う機能障害、心不全、冠動脈硬化、冠状動脈血栓症、心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群、不安定狭心症、不整脈、心肺停止、冠動脈心疾患、弁疾患、および心臓性胸痛および心臓血管系のいずれの他の疾病または疾患を含む。
【0050】
特に、本発明は、オリゴリボヌクレオチドを提供し、1本鎖は、表B〜Mに記載されている5’から3’の1つ以上の配列またはその相同体を有する連続したヌクレオチドを備える(センス鎖かアンチセンス鎖のいずれか)、各末端領域の最大2つのヌクレオチドには塩基が変化する。
【0051】
オリゴヌクレオチドの末端領域は、19塩基配列の塩基1〜4および/または16〜19および21塩基配列の塩基1〜4および/または18〜21を示す。
【0052】
本発明の現在最も好ましい化合物は、平滑末端となっている19塩基オリゴヌクレオチド、すなわち、x=y=19であり、ZおよびZ’は両方とも存在せず、リボヌクレオチドはの変化は、アンチセンス鎖およびセンス鎖の両方の2’位置で修飾されており、2’位置での構成成分は、メトキシ基(2’−0〜メチル基)であり、アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾され、センス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾されない。
【0053】
本発明の別の側面において、オリゴヌクレオチドは、二本鎖構造を備え、そのため、当該の二本鎖構造は、
第一鎖および第二鎖を備え、
前記第一鎖は、隣接するヌクレオチドの第一の伸展を含み、前記第二鎖は、隣接するヌクレオチドの第ニの伸展を含み、
前記第一の伸展は、表A、表Nおよび/または表Oに記載されている遺伝子の一つに対してコード化された核酸配列に相補的または同一であり、前記第二の伸展は、これらの遺伝子に対してコード化された核酸配列に相補的または同一である。
【0054】
一実施例では、前記第一の伸展および/または前記第二の伸展は、約14から40のヌクレオチド、好ましくは、約18から30のヌクレオチド、さらに好ましくは約19から27のヌクレオチド、最も好ましくは約19から25のヌクレオチド、特に約19から21のヌクレオチドを含む。本実施例では、オリゴヌクレオチドの長さは、約17〜40のヌクレオチドであってもよい。
【0055】
さらに、本発明に従ってさらなる核酸は、表B〜Mのポリヌクレオチドのいずれかの一つの少なくとも14の隣接するヌクレオチドを含み、さらに好ましくは、上記に記載されるように第一の伸展および第二の伸展から成る二本鎖構造のいずれかの末端で、14の隣接するヌクレオチド塩基対を含む。
【0056】
一実施例では、第一の伸展は、オリゴヌクレオチドの少なくとも14の隣接するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴヌクレオチドは、表B〜Mに記載されている群から選択される。
【0057】
さらに、本発明によるさらなる核酸は、表B〜Mに記載されている配列のうちいずれか1つの少なくとも14個の隣接するヌクレオチド、より好ましくは、上記で開示したような第一の伸展および第二の伸展を含む二本鎖構造のいずれかの端に、14個の隣接するヌクレオチド塩基対を含む。本発明による核酸の潜在的な長さ、および特に本発明によるかかる核酸を形成する個々の伸展の長さを前提として、変化が1、2、3、4、5、および6までのヌクレオチドであり、したがって生成される二本鎖核酸分子も本発明の範囲内であるはずであり、それによって各側へのコード配列に関係するかかる変化が可能であることは、当業者によって理解されるであろう。
【0058】
デリバリー:例えば、Shenら(FEBS letters 539:111-114(2003))、Xiaら、Nature Biotechnology 20:1006-1010(2002)、Reichら、Molecular Vision9:210-216(2006)、Sorensenら(J.Mol.Biol.327:761-766(2003)、Lewisら、Nature Genetics 32:107-108(2002)およびSimeoniら、Nucleic Acids Research 31、11:2717-2724(2003)に参照するように、哺乳類へのsiRNAの増強され改善されたデリバリーを目的にデリバリーシステムが開発されている。siRNAは、最近、霊長類での抑制に使用され成功しており、さらなる詳細は、Tolentinoら、Retina 24(1)2004年2月 I 132−138を参照のこと。siRNAに対する呼吸器系の製剤設計は、Davisらの米国特許出願第2004/0063654号に開示されている。コレステロール抱合siRNA(ならびに他のステロイドおよび脂質結合siRNA)は、デリバリーに使用することができ、これに関してはSoutscheckらのNature 432:173-177(2004)Therapeutic of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs;およびLorenzら、Bioorg.Med.Chemistry.Lett.14:4975-4977(2004)Steroid and lipid conjugates of siRNAs to enhance uptake and gene silencing in liver cellsを参照。
【0059】
本発明のsiRNAまたは医薬組成物は、各患者の臨床症状、治療されるべき疾患、投与の部位および方法、投与の予定、患者の年齢、性別、体重、ならびに開業医に知られるその他の要素を考慮し、適正医療実施要項に従って投与され、投薬量が決定される。したがって、本願で目的とする「治療上有効な量」は、当業者に知られているような考慮により、決定される。投与量は、当業者が適切な処置として選択するような、生存率の改善またはより迅速な回復、あるいは症状およびその他の指標の改善または排除を含むが、それに限定されない改善を達成するのに有効な用量でなくてはならない。本発明の 組成物 は任意の従来の投与経路を通して投与される。 組成物は、組成物のまま、または医薬的に許容される塩として投与することができ、単体で、または医薬的に許容される担体、溶剤、希釈液、賦形剤、免疫賦活剤、および媒体と併用する活性成分として投与することができることに注目すべきである。組成物は、くも膜下腔内および点滴技術だけでなく、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、および鼻腔内投与を含む、経口、皮下、非経口的に投与することができる。組成物の移植も有用である。液状物を注射のために調製してもよく、この用語には皮下、経皮、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、およびその他非経口投与経路を含む。液状組成物には、有機共溶媒の存在下および非存在下の水溶液、水溶性または油の懸濁液、食用油入りの乳剤、および同様の医薬媒体を含む。更に、一定の状況下では、本発明の新規治療に使用する組成物を、鼻腔用および類似の投薬用に、エアロゾルとして形成してもよい。治療を受けている患者は温血動物で、特に人を含む哺乳類である。移植担体だけでなく、医薬的に許容される担体、溶剤、希釈液、賦形剤、免疫賦活剤、および媒体も、一般的には本発明の活性成分とは反応しない、不活性、無毒性の固体または液状充填剤、希釈液または封入材料を指し、リポソームおよび微粒子を含む。本発明に有用なデリバリーシステムの例には、米国特許第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959,217号、第4,925,678号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、および第4,475,196号を含む。その他のかかる移植、デリバリーシステム、およびモジュールの多くは、当業者には周知である。本発明の1つの特定の実施例では、局所および経皮製剤が特に好ましい。
【0060】
一般的に、ヒトに対する組成物の活性投与量は、1〜4週間の期間に1日につき1回の投与、あるいは1日につき2回、3回、またはそれ以上の投与計画で、体重に対し1日につき1ng/kgから約20〜100mg/kgの範囲で、好ましくは体重に対し1日につき約0.01mgから約2〜10mg/kgである。本願で開示されるいくつかの適応症の場合にも、多年にわたる長期の治療または生涯の治療まで考えられる。
【0061】
本願で使用される用語「治療」とは、疾病に関連する症状を寛解するか、重症度を和らげる、または疾病を治癒するか、疾病の発生を予防するのに効果的な治療剤の投与を指す。
【0062】
特定の実施例では、投与は静脈内投与を備える。別の特定の実施例では、投与は外用または局所的投与を備える。
【0063】
本発明の一側面には、患者を治療するために、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを含む、心臓血管疾病に病む患者、特に本発明による心臓血管関連遺伝子の上方制御に伴う、心臓血管疾病または疾患に関連する病理を治療する方法がある。
【0064】
本発明の一側面には、患者を治療するために、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者の心臓血管疾病を予防する方法がある。
【0065】
本発明の一側面では、表B〜Mに記載されている上記オリゴリボヌクレオチドのいずれか、またはこれらのオリゴヌクレオチドを発現するベクター、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。本発明の一側面には、本発明による心臓血管関連遺伝子の上方制御に伴う、心臓血管疾病および疾患に病む患者の回復を推進する医薬物の調製のため、上記のオリゴヌクレオチドまたはベクターのいずれかの、治療上有効な量の使用がある。
【0066】
本発明の組成物は、心不全または心筋虚血を伴う機能障害に関連する疾患、例えば、心臓の筋肉組織への不十分な血流、および結果として生じた虚血障害によって引き起こされる疾患のような、心臓血管疾病または疾患のいずれかの治療に使用してもよい。減少する血流は、冠動脈(冠動脈硬化)の狭小化、または血栓による閉塞(冠動脈血栓)が原因の場合もある。心筋組織への血液供給の重篤な妨害が発生し、それが心筋の壊死(心筋梗塞)の原因なる場合、本組成物もまた効果的である。本発明の組成物で治療しうるその他の病状には、脳卒中、急性冠症候群、不安定狭心症、不整脈、心肺停止、冠動脈心疾患、弁疾患、および心臓性胸痛がある。
【0067】
本発明では、医薬組成物を調製するプロセスも提供し、そのプロセスは:
1つ以上の本発明の二本鎖組成物を取得すること、および
前記組成物を医薬的に許容される担体と混合することを備える。
【0068】
本発明では、1つ以上の本発明の組成物を医薬的に許容される担体を混合することを含む、医薬組成物を調製するプロセスも提供する。
【0069】
好ましい実施例では、医薬組成物の調製に使用される組成物を、医薬的に効果的のある投与用量の担体と混合する。特定の実施例では、本発明の組成物を、ステロイド、あるいは、例えばコレステロールのような、脂質または別の適した分子に結合する。
【0070】
ヌクレオチドの修飾または類似体を、ヌクレオチドの治療特性を改良するために導入することができる。改良される特性には、ヌクレアーゼ耐性の増加および/または細胞膜を浸透する能力の増加を含む。
【0071】
従って、本発明は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの機能に、実質的には影響を与えない、本発明のオリゴヌクレオチドの類似体、またはオリゴヌクレオチドへの修飾全ても含む。好ましい実施例では、かかる修飾はヌクレオチドの塩基部分、ヌクレオチドの糖成分、および/またはヌクレオチドのリン酸成分に関連する。
【0072】
本発明の実施例では、ヌクレオチドは自然発生的なまたは合成的に修飾された塩基から選択することができる。自然発生的な塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルを含む。オリゴヌクレオチドの改変される塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル−、2−プロピル−およびその他アルキル−アデニン、5−ハロウラシル、5-ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、擬似ウラシル、4-チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニンおよびその他8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアミン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニンおよびその他置換グアニン、その他アザおよびデアザアデニン、その他アザおよびデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシルおよび5−トリフルオロシトシンを含む。
【0073】
加えて、ヌクレオチドの類似体は調製することができ、ヌクレオチドの構造は基本的に変化し、治療または実験試薬としてよりよく適する。ヌクレオチドの類似体の例には、ペプチド核酸(PNA)があり、DNA(またはRNA)内のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格は、ペプチド内で見つかる骨格と類似のポリアミド骨格と置換される。PNA類似体は、酵素による分解への耐性、ならびに生体内および生体外での寿命の延長を示している。さらに、PNAは、DNA分子より相補DNA配列へのより強い結合を示している。この観察は、PNA鎖とDNA鎖の間の電荷反発の欠如に起因する。オリゴヌクレオチドに対して行うことのできるその他の修飾には、ポリマー骨格、環状骨格、または非環状骨格を含む。
【0074】
一実施例では、修飾は、修飾されたリン酸成分をホスホチオエートを含む群から選択するリン酸成分の修飾である。
【0075】
本発明の組成物は、リボ核(またはデオキシリボ核)のオリゴヌクレオチドに対して、当該分野で知られるどんな方法によっても合成することができる。かかる合成は、数ある中で、Beaucage S.L.およびIyer R.P.、Tetrahedron 1992;48:2223-2311、Beaucage S.L.およびIyer R.P.、Tetrahedron 1993;49:6123-6194およびCaruthers M.H.ら、Methods Enzymol. 1987;154:287-313で開示され、チオエート合成は、数ある中で、Eckstein F.、Annu. Rev. Biochem. 1985;54:367-402で開示され、RNA分子の合成は、Sproat B., in Humana Press 2005 Herdewijn P.編;Kap. 2:17-31で開示され、個別の下流プロセスは、数ある中で、Pingoud A.ら、IRL Press 1989 Oliver R.W.A.編;Kap. 7:183-208 and Sproat B., in Humana Press 2005 Herdewijn P.編;Kap. 2:17-31(上記参照)に開示されている。
【0076】
その他合成手順で、当該分野で知られているものもあり、その手順はUsmanら、1987、J. Am. Chem. Soc.、109、7845;Scaringeら、1990、Nucleic Acids Res. 、18、5433;Wincottら、1995、Nucleic Acids Res. 23、2677-2684;およびWincottら、1997、Methods MoI. Bio.、74、59、に開示され、これらの手順では、通常の核酸を使用し、5’末端のジメトキシトリチルおよび3’末端のホスホラミダイトのような群を保護および結合してもよい。修飾された(例えば、2’-O-メチル化)ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドを、要望どおり組み入れる。
【0077】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、結紮(Mooreら、1992、Science 256、9923;Draperら、国際PCT公報第WO93/23569号;Shabarovaら、1991、Nucleic Acids Research 19、4247;Bellonら、1997、Nucleosides & Nucleotides、16、951;Bellonら、1997、Bioconjugate Chem. 8、204)、または合成および/または脱保護後のハイブリダイゼーションによって、別々に合成され、後に合成的に結合することができる。
【0078】
市販の機械(とりわけ、Applied Biosystemsから入手可能)を使用することができ、すなわちオリゴヌクレオチドは本願で開示される配列によって調合されることに留意する。化学的に合成される断片の重複する対は、当該分野でよく知られる方法(例えば、米国特許第6,121,426号)を利用して、結紮することができる。鎖を別々に合成し、それから管内でお互いにアニールする。それから二本鎖siRNAを、HPLCでアニールしなかった(例えば、その中の1つの過剰のため)一本鎖オリゴヌクレオチドから分離する。本発明のsiRNAまたはsiRNA断片に関しては、本発明で用いるために、2つ以上のかかる配列を合成し、共に連結することができる。
【0079】
本発明の組成物は、米国特許出願第US2004/0019001号(McSwiggen)に開示されるような、縦に並んだ合成方法論を介し、合成することができる。両方のsiRNA鎖は開裂可能なリンカーによって分離される単一の隣接するオリゴヌクレオチド断片または鎖として合成される。次に、それは開裂され別々のsiRNA断片または鎖を提供する。そして、siRNA断片または鎖はハイブリッドを形成し siRNAの二重鎖を純化させる。 リンカーはポリペプチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーでもある。
【0080】
本発明の組成物は、直接、あるいはウイルスまたは非ウイルスベクターで配達することができる。直接配達する場合は、配列には一般的にヌクレアーゼ耐性が与えられる。あるいは、本願の以下で論じるように、細胞内で配列を発現する発現カセットまたは構成の中に、配列を取り込むことができる。一般的に、構成は適切な制御配列またはプロモーターを含有するので、配列はターゲット細胞内で発現することが可能となる。 本発明の組成物のデリバリーに任意に用いられるベクターは市販されており、当業者に知られる方法によって、本発明の組成物のデリバリーの目的に応じ修飾される。
【0081】
ステム領域が本発明のオリゴヌクレオチドの配列を含む、1つ以上のステムおよびループ構造を含む長いオリゴヌクレオチド(長さで通常25〜500ヌクレオチド)は、担体好ましくは医薬的に許容される担体内でデリバリーされてもよく、内因性細胞複合体によって(例えば、上記で開示したDROSHAおよびDICERによって)、細胞内でプロセスされ、1つ以上の、本発明のオリゴヌクレオチドである、より小さな二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を生成してもよいことも、想定される。このオリゴヌクレオチドは、直列shRNAコンストラクトと名づけることができる。この長いオリゴヌクレオチドは、1つ以上のステムおよびループ構造を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであって、各ステム領域は、選択された遺伝子のセンスおよび対応するアンチセンスsiRNA配列を含むと想定される。特に、このオリゴヌクレオチドは、表B〜Mに描写されるセンスおよびアンチセンスsiRNA配列を含むと想定される。
【0082】
本願で使用われるように、用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドに加え、オリゴぺプチド、ペプチド、および完全なタンパク質を指す。
【0083】
本発明による心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する組成物は、とりわけsiRNA、抗体、好ましくは、一本鎖抗体と、アンチセンスオリゴヌクレオチドと、アンチセンスDNAまたはRNA分子と、タンパク質と、ポリペプチドと、ペプチド模倣薬およびドミナントネガティブを含むペプチドとを含む中和抗体またはその断片、ならびに上記全てを発現する発現ベクターでありうる。追加抑制剤は、一般的に2000ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは500ダルトン未満の分子量である小さな化学分子でありうる。これらの抑制剤は、以下の機能を果たす:小分子は発現および/または活性に影響を与えてもよく、抗体は活性に影響を与えてもよく、全種類のアンチセンスは心臓血管関連遺伝子の発現に影響を与えてもよく、ドミナントネガティブポリペプチドおよびペプチド模倣薬は活性に影響を与えてもよく、発現ベクターはとりわけアンチセンス、あるいはドミナントネガティブポリペプチドまたは抗体のデリバリーに用いられてもよい。
【0084】
表A、NまたはOに記載されている遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成については、既知の方法に基づいて実施することができ、例えば、Yi PeiおよびThomas Tuschl 2006 On the art of identifying effective and specific siRNA、Nature Methods 3巻9番、670-676ヘ゜ーシ゛;Chalk AM、Wahlestedt C、Sonnhammer EL. 2004 Improved and automated prediction of effective siRNA Biochem. Biophys. Res. Commun. 6月18日;319(1):264-74;Sioud M、Leirdal M.、2004、Potential design rules and enzymatic synthesis of siRNAs、Methods Mol Biol.;252:457-69;Levenkova N、Gu Q、Rux JJ. 2004、Gene specific siRNA selector Bioinformatics. I 12; 20(3):430-2およびUi-Tei K、Naito Y、Takahashi F、Haraguchi T、Ohki-Hamazaki H、Juni A、Ueda R、Saigo K.、Guidelines for the selection of highly effective siRNA sequences for mammalian and chick RNA interference Nucleic Acids Res. 2004 I 9;32(3):936-48を参照。Liu Y、Braasch DA、Nulf CJ、Corey DR. Efficient and isoform-selective inhibition of cellular gene expression by peptide nucleic acids、Biochemistry、2004 I 24;43(7):1921-7も参照。
【0085】
抗体産生
本発明に使用される用語「抗体」は、Fab、F(ab’)2、およびFvなどの断片と同様に、ポリおよび単クローンの完全抗体の双方を意味し、エピトピックの決定因子を結合することができる。これらの抗体断片は、その抗原または受容体に選択的に結合する能力を有し、以下のように例示され、とりわけ、
(1)Fab、抗体分子の一価の抗原結合性断片を含む断片は、軽鎖および重鎖の一部を産出するための酵素パパインを備える全抗体の消化により産生することができ、
(2)抗体の断片である(Fab’)2は、後の還元なしで酵素ペプシンを備える全抗体の処置により得ることができ、F(ab’2)は、2つのジスルフィド結合によりまとめた2つのFab断片の二量体であり、
(3)遺伝子操作されている断片として定義されるFvは、2つの鎖として発現する軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含み、
(4)遺伝子操作されている分子として定義される一本鎖抗体(SCA)は、2つの鎖として発現する軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含み、遺伝学的に溶解された一本鎖分子として適切なポリペプチドリンカーにより連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む。
【0086】
抗体機能活性を有する断片は、当業者に知られている方法により調製することができる(例、Birdら、(1988)Science 242:423−426)。
【0087】
好都合なことに、抗体は、免疫原またはその一部、例えば、配列に基づく合成ペプチドに対して調製することができ、またはクローン技術により組み換えによって調製され、自然遺伝子産物および/またはその一部は、免疫原として単離され、使用されてもよい。免疫原は、HarlowおよびLane(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、およびBorrebaeck(1992)、Antibody Engineering-A Practical Guide、ニューヨーク州W.H. Freeman and Co.に一般的に記載されるように、当業者に周知の標準抗体生産技術により抗体を産生するために使用することができる。
【0088】
ポリクローナル抗体を産生するために、ウサギまたはヤギなどの宿主は、免疫原または免疫原断片、一般的に、アジュバントの免疫を持ち、必要であれば、担体に結合し、免疫原の抗体は、血清から収集される。さらに、ポリクローナル抗体は単一特異的であるので吸収することができ、つまり、単一特異的に溶かして精製するために、交差反応性抗体が血清内に保持しないので、関連免疫原に対して血清を吸収することができる。
【0089】
モノクローナル抗体を産生するために、前記技術は、免疫原がある適切なドナー、一般的に、マウスの超免疫化、および脾臓の抗体産生細胞の単離を含む。これらの細胞は、骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合し、不死化であり、必要とされる抗体を分泌する融合細胞ハイブリッドを提供する。その後、細胞は、大量に培養され、モノクローナル抗体は、使用のために培地から採取された。
【0090】
組み換え抗体を産生するために、一般的に、Hustonら(1991)“Protein engineering of single-chain Fv analogs and fusion proteins” in Methods in Enzymology(JJ Langone編集、Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク)203:46-88;JohnsonおよびBird(1991) “Construction of single-chain Fvb derivatives of monoclonal antibodies and their production in Escherichia coli in Methods in Enzymology(JJ Langone編集、Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク)203:88-99;MemaughおよびMernaugh(1995)“An overview of phage-displayed recombinant antibodies” in Molecular Methods In Plant Pathology(RP SinghおよびUS Singh編集;フロリダ州ボーカラトーン、CRC Press Inc.、359-365)を参照。特に、scFv抗体は、WO第2004/007553号(TedescoおよびMarzari)に記載されている。また、動物の抗体を生産するB−リンパ球またはハイブリドーマ細胞からメッセンジャーRNAは、相補的DNA(cDNA)を獲得するために、逆転写することができる。全長または部分的な長さである抗体cDNAは、ファージまたはプラスミドに増幅またはクローン化される。cDNAは、重鎖および軽鎖cDNAの部分的な長さであり、リンカーにより単離または連結することができる。適切な発現系を使用し、組み換え抗体を獲得するために抗体または抗体断片を発現する。また、抗体cDNAは、関連のある発現ライブラリーをスクリーニングすることにより獲得することもできる。
【0091】
抗体は、従来よく知られているように、固体支持基質に結合、または検出可能な部分に接合することができ、または結合または接合の双方であってもよい(蛍光または酵素部分の接合の総括論議に関しては、Johnstone&Thorpe(1982)、Immunochemistry in Practice、オックスフォード、Blackwell Scientific Publicationsを参照)。固体支持基質への抗体の結合はまた、技術的によく知られている(総括論議に関しては、Harlow&Lane (1988) Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Publications、New York;およびBorrebaeck(1992)、Antibody Engineering - A Practical Guide、W.H. Freeman and Co.を参照)。本発明に伴い予期される検出可能な部分は、ビオチン、金、フェリチン、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、フルオレセイン、ローダミン、トリチウム、14Cおよびヨウ素化反応などの蛍光、金属、酵素および放射性マーカーを含むがそれらに限定されない。
【0092】
本発明の一形態は、表Oに記載される遺伝子により発現したポリペプチド/タンパク質への抗体、表Nに記載される遺伝子により発現したポリペプチド/タンパク質への特異な体抗体、表Aに記載される遺伝子により発現したポリペプチド/タンパク質への最も特異な抗体、および1つ以上の抗体および担体を備える薬剤組成を備える。本発明はさらに、患者を治療するために、治療上有効な量の医薬組成物として一般的に1つ以上の抗体を患者に投与することを含む、心臓血管疾患に病む患者の治療法も提供する。
【0093】
不活性化合物のスクリーニング:
本発明のいずれかの化合物および組成は、心臓血管関連遺伝子製品の活性を調節する化合物、特に、心臓血管系ポリペプチドのレベル上昇に伴う心臓血管疾病または疾患を調節する化合物を同定し、単離するためのスクリーニング検定に使用してもよい。スクリーニングされる化合物は、とりわけ、小さな化学分子およびアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの物質を備える。
【0094】
特異的ポリペプチド活性における本発明の化合物の抑制活性または特異的mRNAへの本発明の化合物の結合は、例えば、追加化合物が発現抑制のオリゴヌクレオチドと競い合う場合、または追加化合物が前記抑制を救出する場合、特異的ポリペプチドを伴う追加化合物の相互作用を決定するために使用してもよい。抑制または活性化は、とりわけ、特異的ポリペプチドの活性化製品に対する試験法、または放射性または蛍光競合試験法における特異的ポリペプチドからの化合物の結合の置換などの様々な手段で試験することができる。
【0095】
本発明は、実施例を参照して下記に詳細に示されるが、それに限定されるとは解釈されない。
【0096】
本書にある任意の文書の引用は、承認として意図されず、当該の文書は、関連のある従来技術である、または本願の任意の特許請求の範囲の特許性に対する資料と考慮される。任意の文書の内容または日付に関しての任意の記述は、出願時に申請者が利用可能な情報に基づき、記述の正確さに関して承認にはならない。
【0097】
実施例
分子および細胞生物学における一般的な方法
従来知られており、特に記載されない標準分子生物学技術は、一般にSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1989)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John WileyおよびSons、Baltimore、Maryland(1989)およびPerbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley&Sons、ニューヨーク(1988)、およびWatsonら、Recombinant DNA、Scientific American Books、ニューヨーク、およびBirrenら(編集) Genome Analysis:A Laboratory Manual Series、1-4巻 Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998)内の記載、および米国仮特許出願第4,666,828号、4,683,202号、4,801,531号、5,192,659号および5,272,057号に記述されている手法に従い、ここに引用して援用する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、PCRプロトコル:A Guide To Methods And Applications、Academic Press、San Diego, CA(1990)内に一般に実施された。Flow Cytometryと組み合わせて発生部位内(細胞内)PCRが特異的DNAおよびmRNA配列を含む細胞の検出のために使用することができる(Testoniら、1996,Blood 87:3822)。RT−PCRを実施する方法はまた、当業者によく知られている。
【0098】
新生ラット心筋細胞(NRVM)の一次単離
Sprague−DawleyまたはWistar系ラットを新生心筋細胞の単離のために使用することができる。単離工程は、ラットが生後1〜2日である場合、最も成功した。
【0099】
1.箱内のラットにクロロホルムで麻酔する。
【0100】
2.70%エタノールで麻酔したラットを洗浄する。
【0101】
3.心臓を切除し、1%のPen−Strepおよび8U/mlのヘパリン(5’000U/ml原液)およびグルコースを含有するPBSとともに、別のふた付きペトリ皿に入れる。
【0102】
混合(100mlのPBS+1mlのPen/Strep+200μlの50%グルコース)
10μlのヘパリン原液を7mlの(PBS+Pen/Strep+グルコース)混合に添加する。
【0103】
4.PBS/Pen−Strep/ヘパリン内で心臓を洗浄し、PBS/Pen−Strep/グルコースとともに別のペトリ皿に移動する。
【0104】
必要とされる心臓の数が獲得されるまで解剖を繰り返す。
【0105】
心臓は室温で保存され、30〜40分以内ですべての解剖を完了しなければならない。
【0106】
機械分離 鉗子を使用し、PBSから順に各心臓を取り出し、ペトリ皿のひっくり返したふたに置いた。外科用無菌メスで心室を切除し、皿に保持する。
【0107】
心房および付随血管を廃棄する。
【0108】
外科用メスを使用し、組織の個体が識別困難になるまで、細かく心室を分割する。
【0109】
断片を25mlの三角フラスコに磁気撹拌子と供に移動する。
【0110】
酵素分離 RDB酵素(1:50)を含む、PBS/グルコース/Pen−Strep混合内で、撹拌子を使用し、フラスコ内の細分化された組織を4×30分、室温でインキュベートする。(RDBは、植物タンパク質酵素である。)
1400rpmで5分間、すべての段階の上相を遠心分離する。
【0111】
プリプレーティングステップ F12/DMEN培地内で、すべての沈澱物を再度けん濁し、40分間、37°Cで、15cmの塗布されていない皿の上に細胞を培養する。
【0112】
プレーティング 15cmの皿から上清を収集し、再度、遠心分離機で分離し、細胞の数を数え、コラーゲンを塗布した培養皿またはフィブロネクチン塗布ストレッチャーの上で培養する。
【0113】
飢餓 処置前に、血清なしのpen/strep+グルタミンを含んだDMEM−F12培地内に24時間、細胞を欠乏させる。
【0114】
実施例1:活性siRNA化合物に対する塩基配列の生成
専用アルゴリズムおよび標的遺伝子の公知の配列を使用し、多くの潜在siRNAの配列を生成した。下表Bは、11の心臓血管遺伝子への特定siRNAを示し、これらのsiRNAを選択し、化学的に合成し、活性を試験した。
【表B】
下表Cは、本発明に従って選択されたCTTN遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表C】
下表Dは、本発明に従って選択されたFXYD5遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表D】
下表Eは、本発明に従って選択されたHBEGF遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表E】
下表Fは、本発明に従って選択されたIQGAP1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表F】
下表Gは、本発明に従って選択されたODC1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表G】
下表Hは、本発明に従って選択されたPIM1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表H】
下表Iは、本発明に従って選択されたSGPP1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表I】
下表Jは、本発明に従って選択されたSPTLC2遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表J】
下表Kは、本発明に従って選択されたSSAT遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表K】
下表Lは、本発明に従って選択されたSSG1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表L】
下表Mは、本発明に従って選択されたSYNPO2L遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表M】
実施例2: さらなる心臓血管関連遺伝子
本発明に従って、GeneBank登録番号を含む、さらに好ましい心臓血管関連遺伝子を下表Nに記載する。 本発明に従って、GeneBank登録番号を含む、さらに好ましい心臓血管関連遺伝子を下表Oに記載する。
【表N】
【表O】
実施例3: 一次新生ラット心筋細胞(NRVM)におけるsiRNAの試験
一次新生ラット心筋細胞(NRVM細胞)は、特異的siRNA配列を挿入したshRな発現ベクター(pTZ−GFP−H IRNA)に感染した。感染してから72時間後、24時間、細胞を欠乏させ、2時間、伸縮を導入した。遺伝子に対するリアルタイムPCRおよび特異的マーカーは、内因性遺伝子発現抑制の範囲を決定するために実施された。
【0115】
Lentiviral感染法を使用し、NRVM細胞は、以下の遺伝子:SYNPO2L、HB−EGF、IQGAP、SSAT1、SSG1、SGPP1、SPTLC2、FXYD5、CTTN、ODC1およびPIM1(表B)に対応する様々なsiRNA化合物を発現する特異的shRNAに感染した。特異的内因性遺伝子の発現は、伸縮処置の有無に関わらず評価された。 図1〜11に示されるように、選択された内因性遺伝子の発現は、リアルタイムPCR分析により決定される場合、細胞内での伸縮の誘導の後に、著しく増加した。 特異的shRNAの感染は、伸縮前後に選択された内因性遺伝子の発現を著しく抑制した。
【0116】
実施例4: 生体内実験モデル:
心筋梗塞症は、LutgensらによりCardiovasc. Res. (1999) 41:586−59に記載されるように、左冠動脈(Left Coronary Artery:LCA)の永久結紮によりモデル化した。つまり、60mg/kgのペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与によりマウスを麻酔状態にする。 第三肋間腔上の横断皮膚切開および第三と第四肋骨の間の左開胸術を行い、左心耳の先端からLCA周辺の約1mmの遠位に6.0フィラメントを結合した。 呼気終末の陽圧を使用し、胸腔の閉鎖および肺の再拡張した後、梗塞されたマウスは、ウォーミングパッド上で回復することができる。
【0117】
実験中、本発明の化合物(例、オリゴヌクレオチド、ベクターまたは抗体)またはプラシーボを送る浸透圧ミニポンプは、心筋梗塞症の処理後、直ちにマウスの背部に皮下に注入される。 術後から4および24時間、および最高16日の時点で、生理学的血圧値で、腹大動脈を介して0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)内に1%のパラホルムアルデヒドで梗塞を起こしたマウスに麻酔し、かん流する。 固定された心臓を解剖し、組織学のために調製される。 6μmの薄片は、ヘマトキシリン−エオシン染色および心筋梗塞症に対して特異的なマーカーを有する染色のために使用され、プラシーボの治療を受けるまたは治療されていない(心筋梗塞症でない)対照マウスと比較して、マウスにおける本発明の化合物による治療効果を決定する。
【0118】
実施例5: 左冠動脈前下降枝(Left Anterior Descending:LAD)結紮後のin situハイブリダイゼーション分析
C3HeB/FeJマウスは、左前下行枝(Left Anterior Descending:LAD)冠動脈の結紮を設け、心筋の選択遺伝子の発現は、様々な時点(結紮後、0、4時間、24時間および4、8、16および24日)で、in situハイブリダイゼーション分析(ISH)により分析された。 下表Pは、LADの結紮後、典型的な遺伝子とともに得たISHの結果を詳述する。 本表に示されるように、SYNPO2、IQ−GAP、FXYD5、HB−EGF、PIM1、SPTLC2、SSAT1およびSSG1は、LADの結紮後、発現の特異的な上方制御および結果として生じた心筋障害を示す。
【0119】
図12Aは、特に、無傷心筋の血管周囲の心筋細胞内のSynpo2L発現(ISH使用)を示す。 中央のパネルは、蛍光染色を使用するISH分析である。 結紮してから24時間後、梗塞周囲の領域の発現は、図12B(右パネル)に示される。 結紮してから24日後、梗塞周囲の領域の発現は、図12C(右パネル)に示される。 これらの結果は、Synpo2Lの発現が心筋障害後に上方制御されることを示す。
【表P】
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性ヘパリン結合性EGF様成長因子(HB−EGF(DTR)b)の発現に与える影響を示す。
【図2】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性シナプトポディン2に類似遺伝子(SYNPO2L)の発現に与える影響を示す。
【図3】特定siRNA組成物が心筋細胞内のGTPase活性化タンパク質1(IQ−GAP)含有内因性IQモチーフの発現に与える影響を示す。
【図4】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性スペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)の発現に与える影響を示す。
【図5】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性ステロイド感受性遺伝子1(URB)、転写変異遺伝子1(SSG1)の発現に与える影響を示す。
【図6】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性スフィンゴシン−1−リン酸ホスファターゼ1(SGPP1)の発現に与える影響を示す。
【図7】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、長鎖塩基サブユニット2(SPTLC2)の発現に与える影響を示す。
【図8】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレータ5(FXYD5)の発現に与える影響を示す。
【図9】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性コルタクチン(CTTN)の発現に与える影響を示す。
【図10】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC1)の発現に与える影響を示す。
【図11】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性pim発癌遺伝子(PIM1)の発現に与える影響を示す。
【図12】無傷心筋の血管周囲心筋細胞(A)内、連結反応24時間後(B)および24日後(C)の梗塞周囲領域における、SYNPO2L発現(インサイチューハイブリダイゼーション使用)を示す。
【発明の開示】
【0001】
本願は、2005年9月9日に申請された米国仮特許出願第60/715414号および2005年10月31日に申請された第60/732188号に対し優先権を主張するとともに、ここに引用して援用する。本願中、特許および科学出版物が引用される。本発明に関する従来の技術をさらに明確に解説するため、これらの出版物の開示内容は、それら全体で参照することにより本願の一部を構成する。
【0002】
発明の背景
siRNAおよびRNA干渉
RNA干渉(RNAi)とは、2本鎖RNA依存の転写後ジーンサイレンシングの現象である。この現象の研究および実験的に哺乳類細胞を操作する試みは元来、長い二本鎖RNA分子に反応して活性化する、活性および非特定抗ウイルス防御機構により、失敗を重ねてきた。Gilら、2000、Apoptosis、5:107−114参照。その後、 21塩基RNAの合成2重鎖は、遺伝子の抗ウイルス防御機構を刺激することなく、哺乳類細胞内で遺伝子特定RNAiを引き起こすことが発見された(ElbashirらNature 2001、411:494−498およびCaplenら、Proc Natl Acad Sci 2001、98:9742−9747)。その結果、短い二本鎖RNAである短い干渉RNA(siRNA)は、遺伝子機能の解明の有力な手段となった。
【0003】
従って、RNA干渉(RNAi)とは、小さな干渉RNA(siRNA)(Fireら、1998、Nature 391, 806)、またはマイクロRNA(miRNA) (Ambros V. Nature 431:7006,350−355(2004);およびBartel DP. Cell. 2004 Jan 23;116(2):281−97 MicroRNAs:genomics, biogenesis, mechanism, and function)によって仲介された哺乳類細胞内の配列特異性転写後ジーンサイレンシングのプロセスのことである。植物でのプロセスは一般に、特異性転写後ジーンサイレンシングまたはRNAサイレンシングとして報告され、真菌では鎮圧現象と報告されている。siRNAは、内因性(細胞)の遺伝子/mRNAの発現を下方制御またはサイレンシング(抑制)する二本鎖RNA分子である。RNA干渉は、特定タンパク質複合体に取り込まれ、そこで相補的細胞RNAを対象としてそれを特異的に分解する機能に基づく現象である。したがって、RNA干渉の反応は、siRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。エンドヌクレアーゼ複合体は、一般的にRN誘導型サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれ、 二重鎖 siRNAのアンチセンス鎖と相補配列を有する一本鎖RNAを切断させる。対象RNAの切断は、 二重鎖 siRNAのアンチセンス鎖との相補部位の真ん中で生じる(Elbashirら、2001、Genes Dev.、15、188)。詳細には、長鎖の二本鎖RNAはIII型RNAsesにより短い(17−29塩基対)二本鎖RNAの断片(短い抑制RNA−「siRNA」とも称される)に切断される(DICER、DROSHA、等、Bernsteinら、Nature、2001、409巻、363−6ページ;Leeら、Nature、2003、425、415−9ページ)。RISCタンパク質複合体は、これらの断片および相補mRNAを認識する。標的mRNAのエンドヌクレアーゼ開裂で全てのプロセスが完結する(McManus&Sharp、Nature Rev Genet、2002、3巻、737−47ページ;Paddison&Hannon、Curr Opin Mol Ther. 2003年6月;5(3):217−24)。これらの用語および機構に関する情報は、Bernstein E.、Denli AM. Hannon GJ:2001 The rest is silence. RNA. I;7(11):1509-21;Nishikura K.:2001 A short primer on RNAi:RNA-directed RNA polymerase acts as a key catalyst. Cell. I 16;107(4):415-8およびPCT出願WO特許第01/36646号(Gloverら)を参照。
【0004】
公知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成については広く報告されている。その例はChalk AM、Wahlestedt C、Sonnhammer EL. 2004 Improved and automated prediction of effective siRNA Biochem. Biophys. Res. Commun. Jun 18;319(1):264-74;Sioud M、Leirdal M.、2004、Potential design rules and enzymatic synthesis of siRNAs、Methods Mol Biol.;252:457-69;Levenkova N、Gu Q、Rux JJ. 2004、Gem specific siRNA selector Bioinformatics. I 12;20(3):430- 2.およびUi-Tei K、Naito Y、Takahashi F、Haraguchi T、Ohki-Hamazaki H、Juni A、Ueda R、Saigo K.、Guidelines for the selection of highly effective siRNA sequences for mammalian and chick RNA interference Nucleic Acids Res. 2004 I 9;32(3):936-48.Se also Liu Y、Braasch DA、Nulf CJ、Corey DR. Efficient and isoform-selective inhibition of cellular gene expression by peptide nucleic acids、Biochemistry、2004 I 24;43(7):1921-7。PCT出願WO特許第2004/015107号(Atugen)およびWO特許第02/44321号(Tuschlら)を参照。また、修飾型/安定型siRNAの生成については、Chiu YL、Rana TM. siRNA function in RNAi: a chemical modification analysis、RNA 2003年9月;9(9):1034-48、I特許第5898031号および第6107094号(Crooke)を参照。
【0005】
細胞内にsiRNAを生成することが可能なDNAベクターの開発を開示している研究者もいる。その方法は一般的に、細胞内にsiRNAを効果的に生成する短いヘアピンRNAの転写を含む。Paddisonら、PNAS 2002、99:1443-1448;Paddisonら、Genes & Dev 2002、16:948-958;Suiら、PNAS 2002、8:5515-5520;およびBrummelkampら、Science 2002、296:550-553。これらの報告書には、多数の内因性および外因性発現遺伝子を特異的に対象とするsiRNAを生成する方法が記載されている。
【0006】
数々の研究がsiRNA治療は、哺乳類動物および人間の生体内において効果的であることを示している。Bitkoらは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ヌクレオカプシドN遺伝子に対する特異的siRNA分子が経鼻的にマウスに投与されると治療効果があると報告した(Bitkoら、「Inhibition of respiratory viruses by nasally administered siRNA」、Nat. Med. 2005、11(1):50-55)。医学でのsiRNAの使用に関する総論が近年Barik SによりJ. Mol. Med(2005)83:764−773)で発表された。さらに、加齢黄斑変性症(AMD)治療のためのVEGFRlレセプターを対象にした短鎖siRNA分子に関する第1相臨床試験が臨床患者を対象として実施された。内眼硝子体内注射により投与されたsiRNA薬は、フォローアップ最長157日後にテストされた14人の患者に効果的であり安全であることがわかった(Boston Globe、2005年1月21日)。
【0007】
心筋梗塞
冠動脈硬化に続く心筋梗塞および関連心筋虚血は、 先進工業国での入院の最も大きな原因である。心臓血管疾患は、相変わらず米国、ヨーロッパおよび日本において主要な死亡原因となっている。心臓血管疾患の罹患率および死亡率は高く、同様に医療システムにおける経済負担も大きい。
【0008】
心筋梗塞は、アテローム性動脈硬化により以前損傷した冠動脈の血栓性閉塞に引き続き、冠血流量が急激に低下した時に起こる。冠動脈疾患は、心筋への不十分な血流を引き起こす冠動脈の病変または閉塞、または狭心症、心組織の壊死(心筋梗塞)などの合併症および急死の原因となる心筋虚血によってしばしば特徴付けられている。多くの場合、動脈硬化性プラークが裂けたり、破裂したりまたは潰瘍化している場合や、血栓が形成されやすい状態にあると、梗塞が起きる。梗塞は、冠動脈塞栓、先天性異常、冠動脈攣縮、その他全身性の特に炎症性疾患により引き起こされる冠動脈閉塞が原因となることも稀にある。心筋梗塞発作を初めて経験した人のうち、血管形成術やステント留置術を含む最大限の医療管理体制にも関わらず発作の翌年心筋梗塞を再発する危険率は10〜14%である。
【0009】
心筋梗塞および冠動脈硬化に伴う心筋虚血は、近年薬物投与や生活や食事の改善により治療されている。その他、血管形成術、レーザー完全切除、アテローム切除術、カテーテル留置法および血管内ステントなどの手法により冠動脈を拡張させることもできる。特定の患者においてのみ、症状を軽減し、寿命を伸ばす治療として、冠動脈バイパス移植術(Coronary Artery Bypass Grafting:CABG)が好ましい。CABGでは、血管セグメントを1本以上の冠動脈へ直接吻合する。
【0010】
結論として、現在のところ心臓血管関連疾患の予防および/または治療に満足いくほどの治療方法はなく、従って、これを目的とした新規化合物の開発が要求されている。本発明の新規化合物は、本願に開示される以外の疾患や症状の治療に利用されてもよい。
【0011】
発明の開示
本発明は、心臓血管関連疾患で上方制御される特定遺伝子の発現を抑制する新規の二本鎖オリゴリボヌクレオチドを提供する。本発明はまた前記オリゴリボヌクレオチドを1つ以上含む医薬組成物およびオリゴリボヌクレオチドの発現が可能なベクターを提供する。本発明はさらに、患者を治療するために、治療上有効な量の医薬組成物として一般的な1つ以上のオリゴリボヌクレオチドを患者に投与することを含む、心臓血管関連疾患の患者の治療法をも提供する。本発明は、前記遺伝子の促進された発現に伴って生じる他の疾患の治療をも考慮する。
【0012】
一実施形態において、本発明は、下記特定遺伝子の発現を抑制する新規の二本鎖オリゴリボヌクレオチドを提供する。ヘパリン結合性EGF様成長因子(HB−EGF(DTR)b)、スペルミジン/スペルミンNl−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT),ステロイド感受性遺伝子1(URB)、転写変異遺伝子1(SSG1)、GTPase活性化タンパク質1を含むIQモチーフ(IQ−GAP)、スフィンゴシン−1−リン酸ホスファターゼ1(SGPP1)、―セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、長鎖塩基サブユニット2(SPTLC2)、シナプトポディン2−類似遺伝子(SYNPO2L)、オルニチンデカルボキシラーゼ1(ODC1)、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレータ5(FXYD5)、pim−1発癌遺伝子(PIM1)。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、通常本発明に従って、心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する化合物、特に 新規の小干渉RNA(siRNA)に関し、さらに心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う様々な疾病および病状の治療における、前記新規siRNAの使用に関する。
【0014】
本発明はさらに、表Oに記載されている心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する化合物および、特に心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および病状に関連する病理の治療における前記化合物の使用に関する。好ましくは、本発明は、表Nに記載されている心臓血管遺伝子の発現を下方制御する化合物および、特に心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および病状に関連する 病理の治療における前記化合物の使用に関する。さらに好ましくは、本発明は、表Aに記載されている心臓血管遺伝子の発現を下方制御する化合物および、特に心臓血管遺伝子のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および病状に関連する病理の治療における前記化合物の使用に関する。
【0015】
本発明はさらに、表A、NまたはOに記載されている遺伝子の遺伝子産物のレベル上昇に伴う心臓血管疾病および疾患に病む患者の回復を推進する組成物を調製するために、表A、NまたはOに記載されている心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する1つ以上の化合物の治療上有効な用量の使用を提供する。
【0016】
本発明は、生体内での特定対象心臓血管関連遺伝子の発現を抑制する方法および組成物を提供する。通常、前記方法は、1つ以上の特定心臓血管関連遺伝子を対象とし、生物学的状況における(細胞内で)mRNAまたは細胞内でsiRNAを生成する核酸物質とハイブリッドしたり相互作用したりする小さな干渉RNA(すなわち、siRNA)などのオリゴリボヌクレオチドをRNA干渉メカニズムによって標的遺伝子の発現を下方制御するのに十分な量投与する方法を含む。特に、本発明の方法は、疾病の治療を目的として特定心臓血管関連遺伝子の発現を抑制するために利用される。
【0017】
本発明に従い、siRNA分子または心臓血管関連遺伝子の抑制剤は、様々な病理の治療薬として、特に前記遺伝子の上方制御に伴う心臓血管疾病および疾患に関連する病理の治療薬として利用される。
【0018】
本発明は、本発明の心臓血管関連遺伝子の発現を抑制する二本鎖オリゴリボヌクレオチド(siRNA)を提供する。本発明のsiRNAは二重鎖オリゴリボヌクレオチドであり、そのセンス鎖は選択された遺伝子のmRNA配列に由来し、アンチセンス鎖は前記センス鎖を相補する。一般的に、標的mRNA配列から若干ずれていても、siRNA活性を抑制することはない。本発明のsiRNAはmRNAを破壊し、あるいは破壊することなく、(Czaudernaら、2003 Nucleic Acids Research 31(11),2705−2716参照)、転写後レベルで遺伝子の発現を抑制する。理論に縛られないとすれば、siRNAは特定の開裂または分解のためにmRNAを対象とするか、あるいは対象とされたメッセージからの翻訳を抑制する。
【0019】
下記の表Aは、本発明に従い、マウスおよびヒトの参照番号を含む選択された11の心臓血管関連遺伝子の詳細を要約したものである。
【表A】
一般的に本発明に使用されるsiRNAは二本鎖構造を持つリボ核酸で構成されるが、そこでこの二本鎖構造は第一鎖および第二鎖から成り、第一鎖は近接するヌクレオチドの第一の伸展を含み、前記第一の伸展はターゲット核酸を少なくとも一部相補し、第二鎖は近接するヌクレオチドの第ニの伸展を含み、前記第ニの伸展はターゲット核酸に少なくとも一部同一である。鎖は糖残基(下記実施形態を参照)および/またはリン酸塩および/または塩基上で修飾されることも、修飾されないこともある。本発明の1つの態様において、前記第一鎖および/または第二鎖は、2’の位置で修飾された複数の修飾ヌクレオチドを含み、ここで鎖内の修飾ヌクレオチドの各群は、ヌクレオチドの隣接群により片側または両側に位置し、ヌクレオチドの隣接群を形成する隣接ヌクレオチドは未修飾ヌクレオチドであるか、または修飾ヌクレオチドの修飾形態とは異なる修飾を有するヌクレオチドである。さらに前記第一鎖および/または第二鎖は、複数の該修飾ヌクレオチドまたは複数の該修飾ヌクレオチド群を含むことがある。
【0020】
修飾ヌクレオチド群および/または隣接ヌクレオチド群は、多数のヌクレオチドから構成されることがあるが、その数は1ヌクレオチドから10ヌクレオチドからなる群から選ばれる。本願で特定される任意の範囲に関連して、各範囲は該範囲を確定する該2個の数字を含む範囲を確定するために用いられる各数字間の整数を示すことは自明である。本願において、前記群は従って1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチドおよび10ヌクレオチドを構成する。
【0021】
前記第一鎖の修飾ヌクレオチドの形態は、第二鎖の修飾ヌクレオチドの形態に対して1つ以上のヌクレオチドによって移行していることがある。
【0022】
上記の修飾は、ヨーロッパ特許EPO第586520号またはEPO第618925B1に開示されている通り、アミノ、フルオロ、メトキシアルコキシ、アルキル、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、イミダゾール、カルボン酸塩、チオエート、C1からC10低アルキル基、置換低アルキル基、アルカリル基またはアラルキル基、OCF3、OCN、O−、S−またはN―アルキル;O−、S−またはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2、N3;ヘテロザイクロアルキル;ヘトロザイクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノまたは置換シリル、を含む群から選択される。
【0023】
siRNAの二本鎖構造は、片側または両側が平滑末端となる。より詳細には、二本鎖構造は、第一鎖の5´末端および第ニ鎖の3´末端によって確定される二本鎖構造側が平滑末端となっている、または二本鎖構造は第一鎖の3´末端および第ニ鎖の5´末端によって確定される二本鎖構造側が平滑末端となっている。
【0024】
さらに、二本鎖の少なくとも一鎖は、5´末端で少なくとも1ヌクレオチドの突出を形成するが、前記突出は少なくとも1デオキシリボヌクレオチドを構成する。前記鎖の少なくとも一鎖は、3´末端に少なくとも1ヌクレオチドの突出を任意で形成する。
【0025】
siRNAの二本鎖の長さは通常17から27塩基、さらに好ましくは19または21塩基である。さらに、該第一鎖の長さおよび/または該第二鎖の長さは約15から約27塩基、17から21塩基および18塩基または19塩基の範囲からなる群からそれぞれ個別に選ばれる。典型的実施例は27塩基である。
【0026】
さらに、該第一鎖とターゲット核酸間の補完性は完全であり、または第一鎖とターゲット核酸間に形成された二重鎖は少なくとも15ヌクレオチドで構成され、ここでは該二本鎖構造を形成する該第一鎖とターゲット核酸間に1つまたは2つのミスマッチを有する。
【0027】
いくつかの場合において、前記第一鎖および第二鎖はそれぞれ、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド群および少なくとも1つのヌクレオチド隣接群を構成するが、ここでヌクレオチドの各隣接群は1つ以上のヌクレオチドを含み、第一鎖の修飾ヌクレオチドの各群は第二鎖上のヌクレオチドの隣接群に沿って配列されている、またここで第一鎖の修飾ヌクレオチド各群と隣接第一鎖の5´末端ヌクレオチドのほとんどが修飾ヌクレオチド群のヌクレオチドであり、第二鎖の3´末端ヌクレオチドのほとんどがヌクレオチド隣接群のヌクレオチドである。修飾ヌクレオチド各群は単一ヌクレオチドから成り、および/またはヌクレオチドの隣接群は単一ヌクレオチドから成る。
【0028】
さらに、第一鎖でヌクレオチドの隣接群を形成するヌクレオチドは修飾ヌクレオチド群を形成するヌクレオチドに対応して3’の方向に配列されている未修飾ヌクレオチドであり、第二鎖で修飾ヌクレオチド群を形成するヌクレオチドはヌクレオチドの隣接群を形成するヌクレオチドに対応して5’の方向に配列されている修飾ヌクレオチドであることが可能である。
【0029】
さらにsiRNAの第一鎖は、8から12、好ましくは9から11の修飾ヌクレオチド群を構成し、第二鎖は、7から11、好ましくは8から10の修飾ヌクレオチド群を構成する。
【0030】
第一鎖と第二鎖は、なかでもポリエチレン・グリコールなど非核酸ポリマーから構成されるループ構造で結合している。あるいは、ループ構造は核酸から構成される。
【0031】
さらに、siRNAの第一鎖の5’末端は第二鎖の3’末端に結合している、または第一鎖の3’末端は第二鎖の5’末端に結合しており、該結合は通常10から2000の核酸塩基を有する核酸リンカを通して形成される。
【0032】
詳細には、本発明は構造Aを有する化合物を提供する:
5’(N)x−Z3’(アンチセンス鎖)
3’Z’−(N’)y5’(センス鎖)
式中、NおよびN’のそれぞれが、その糖残基において修飾されていても、または修飾されていなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)xおよび(N’)yは、連続したNまたはN’のそれぞれが次のNまたはN’に共有結合によって連結されたオリゴマーであり、
そこでxおよびyはそれぞれ19から40の間の整数であり、
ZおよびZ’のそれぞれが存在してもしなくてもよく、しかし、存在する場合はdTdTであり、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付着しており、
(N)xの配列は、心臓血管関連遺伝子のmRNA、特に表Oおよび/またはNに列挙された心臓血管関連遺伝子のいずれかにアンチセンス配列を含む、好ましくは表B−Mに見られるアンチセンス配列を1つ以上含む。
【0033】
本発明の化合物が共有結合を通して結合された複数のヌクレオチドから構成されることは当業者に周知である。各共有結合は、各鎖のヌクレオチド配列の長さに沿ったリン酸ジエステル結合、リン酸チオエート結合またはその組み合わせである。その他の可能な骨格修飾はとりわけ米国特許第5,587,361;6,242,589;6,277,967;6,326,358;5,399,676;5,489,677および5,596,086に開示されている。
【0034】
特定の実施例において、xおよびyが好ましくは約19から約27の間の整数、最も好ましくは約19から約25の整数である。本発明の化合物の特定の実施例において、xはyと同等であり(viz.,x=y)、好ましくはx=y=19またはx=y=21である。特に好ましい実施例においては、x=y=19である。
【0035】
本発明の化合物の一実施例においてZおよびZ’は両方とも存在せず、別の実施例においてはZまたはZ’の片方が存在する。
【0036】
本発明の化合物の一実施例において、化合物のリボヌクレオチドは全てその糖残基において修飾されていない。
【0037】
本発明の化合物の好ましい実施例において、少なくとも1つのリボヌクレオチドはその糖残基において修飾されており、好ましくは2’位置で修飾されている。2’位置での修飾により、好ましくはアミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシおよびアルキル基からなる群から選ばれる構成成分が存在することとなる。現在最も好ましい実施例において、2’位置での構成成分はメトキシ基(2’−0−メチル基)である。
【0038】
本発明の好ましい実施例において、代替のリボヌクレオチドは化合物のアンチセンス鎖およびセンス鎖の両方で修飾される。特に、実施例で用いられるsiRNAは、2’O−Me群がアンチセンス鎖の第一、第三、第五、第七、第九、第十一、第十三、第十五、第十七および第十九ヌクレオチドに存在するように修飾されている、この修飾は完全に同一であり、すなわち2’O−Me群がセンス鎖の第二、第四、第六、第八、第十、第十二、第十四、第十六および第十八ヌクレオチドに存在する。さらに、本発明に従った前記核酸の場合には第一の伸展は第一鎖に同一であり、第二の伸展は第二鎖に同一であり、前記核酸は平滑末端を形成することを考慮すべきである。
【0039】
本発明の1つの好ましい実施例に従って、siRNA分子のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、5’末端ではなく、3’末端のみでリン酸化される。本発明の別の好ましい実施例に従って、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、3’末端および5’末端で非リン酸化される。本発明のさらに別の好ましい実施例に従って、センス鎖の5’位置に配列する第一ヌクレオチドは典型的に生体内5’−リン酸化反応を防ぐために修飾される。
【0040】
本発明の化合物の別の実施例において、アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾され、センス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾されない。
【0041】
本発明はさらに、細胞において修飾されていない形態で前記オリゴリボヌクレオチドのいずれかを発現可能なベクターを提供し、その後適切な修飾を行うことができる。
【0042】
本発明はまた、担体内で、好ましくは医薬的に許容可能な担体内で、本発明の1つ以上の化合物からなる組成物を提供する。本組成物は、2つ以上の異なるsiRNAの混合を含んでもよい本組成物は、2つ以上の異なるsiRNAの混合を含んでもよい。
【0043】
また、本発明は、遺伝子および担体の発現を抑制するのに有効な量で、1つ以上の本発明の化合物に共有結合または非共有結合した本発明の上記の化合物を備える組成物を提供する。本発明の1つ以上のオリゴリボヌクレオチドを産生するために、内因性細胞複合体により細胞内に本組成物を生成してもよい。本発明はまた、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子の細胞において発現を下方制御するのに有効な量で、 担体および本発明の1つ以上の化合物を備える組成物を提供し、その化合物は(N)xと本質的に相補配列を備える。
【0044】
さらに、本発明は、本発明の1つ以上の化合物を有する表Aの1つ以上の遺伝子のmRNA転写に接触する方法を備える対照と比較して、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子の発現を少なくとも50%まで下方制御する方法を提供する。
【0045】
一実施例では、オリゴリボヌクレオチドは、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子を下方制御することであり、そのために、表A、表Nおよび/または表Oの遺伝子の下方制御は、遺伝子機能の下方制御、遺伝子ポリペプチドの下方制御および遺伝子mRNA発現の下方制御を備える群から選択される。
【0046】
一実施例では、前記化合物は、コード化されたポリペプチドを下方制御をすることであり、そのため、コード化されたポリペプチドの下方制御は、ポリペプチド機能の下方制御(とりわけ、天然遺伝子/ポリペプチドの既知のインターアクターを伴う、酵素的試験法または結合試験法により検査してもよい)、タンパク質の下方制御(とりわけ、ウエスタンブロット法、ELISAまたは免疫沈降により検査してもよい)およびmRNA発現の下方制御(とりわけ、ノーザンブロット法、定量RT−PCR、in−situハイブリダイゼーションまたはミクロアレイハイブリダイゼーションにより検査してもよい)を備える群から選択される。
【0047】
本発明はまた、患者を治療するために、治療上有効な量の本発明の組成物を患者に投与することを含む、表A、表Nおよび/または表Oに記載されている遺伝子の遺伝子産物のレベル上昇に伴う心臓血管疾病または疾患に病む患者を治療する方法を提供する。
【0048】
また、本発明は、表A、NまたはOに記載されている遺伝子の遺伝子産物のレベル上昇に伴う心臓血管疾病または 疾患に病む患者の回復を推進する組成物の調製のため、本発明の1つ以上の化合物を治療上有効な量で使用することを提供する。
【0049】
用語「心臓血管疾病」または「心臓血管疾患」は、心筋虚血を伴う機能障害、心不全、冠動脈硬化、冠状動脈血栓症、心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群、不安定狭心症、不整脈、心肺停止、冠動脈心疾患、弁疾患、および心臓性胸痛および心臓血管系のいずれの他の疾病または疾患を含む。
【0050】
特に、本発明は、オリゴリボヌクレオチドを提供し、1本鎖は、表B〜Mに記載されている5’から3’の1つ以上の配列またはその相同体を有する連続したヌクレオチドを備える(センス鎖かアンチセンス鎖のいずれか)、各末端領域の最大2つのヌクレオチドには塩基が変化する。
【0051】
オリゴヌクレオチドの末端領域は、19塩基配列の塩基1〜4および/または16〜19および21塩基配列の塩基1〜4および/または18〜21を示す。
【0052】
本発明の現在最も好ましい化合物は、平滑末端となっている19塩基オリゴヌクレオチド、すなわち、x=y=19であり、ZおよびZ’は両方とも存在せず、リボヌクレオチドはの変化は、アンチセンス鎖およびセンス鎖の両方の2’位置で修飾されており、2’位置での構成成分は、メトキシ基(2’−0〜メチル基)であり、アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾され、センス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドはその糖残基において修飾されない。
【0053】
本発明の別の側面において、オリゴヌクレオチドは、二本鎖構造を備え、そのため、当該の二本鎖構造は、
第一鎖および第二鎖を備え、
前記第一鎖は、隣接するヌクレオチドの第一の伸展を含み、前記第二鎖は、隣接するヌクレオチドの第ニの伸展を含み、
前記第一の伸展は、表A、表Nおよび/または表Oに記載されている遺伝子の一つに対してコード化された核酸配列に相補的または同一であり、前記第二の伸展は、これらの遺伝子に対してコード化された核酸配列に相補的または同一である。
【0054】
一実施例では、前記第一の伸展および/または前記第二の伸展は、約14から40のヌクレオチド、好ましくは、約18から30のヌクレオチド、さらに好ましくは約19から27のヌクレオチド、最も好ましくは約19から25のヌクレオチド、特に約19から21のヌクレオチドを含む。本実施例では、オリゴヌクレオチドの長さは、約17〜40のヌクレオチドであってもよい。
【0055】
さらに、本発明に従ってさらなる核酸は、表B〜Mのポリヌクレオチドのいずれかの一つの少なくとも14の隣接するヌクレオチドを含み、さらに好ましくは、上記に記載されるように第一の伸展および第二の伸展から成る二本鎖構造のいずれかの末端で、14の隣接するヌクレオチド塩基対を含む。
【0056】
一実施例では、第一の伸展は、オリゴヌクレオチドの少なくとも14の隣接するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴヌクレオチドは、表B〜Mに記載されている群から選択される。
【0057】
さらに、本発明によるさらなる核酸は、表B〜Mに記載されている配列のうちいずれか1つの少なくとも14個の隣接するヌクレオチド、より好ましくは、上記で開示したような第一の伸展および第二の伸展を含む二本鎖構造のいずれかの端に、14個の隣接するヌクレオチド塩基対を含む。本発明による核酸の潜在的な長さ、および特に本発明によるかかる核酸を形成する個々の伸展の長さを前提として、変化が1、2、3、4、5、および6までのヌクレオチドであり、したがって生成される二本鎖核酸分子も本発明の範囲内であるはずであり、それによって各側へのコード配列に関係するかかる変化が可能であることは、当業者によって理解されるであろう。
【0058】
デリバリー:例えば、Shenら(FEBS letters 539:111-114(2003))、Xiaら、Nature Biotechnology 20:1006-1010(2002)、Reichら、Molecular Vision9:210-216(2006)、Sorensenら(J.Mol.Biol.327:761-766(2003)、Lewisら、Nature Genetics 32:107-108(2002)およびSimeoniら、Nucleic Acids Research 31、11:2717-2724(2003)に参照するように、哺乳類へのsiRNAの増強され改善されたデリバリーを目的にデリバリーシステムが開発されている。siRNAは、最近、霊長類での抑制に使用され成功しており、さらなる詳細は、Tolentinoら、Retina 24(1)2004年2月 I 132−138を参照のこと。siRNAに対する呼吸器系の製剤設計は、Davisらの米国特許出願第2004/0063654号に開示されている。コレステロール抱合siRNA(ならびに他のステロイドおよび脂質結合siRNA)は、デリバリーに使用することができ、これに関してはSoutscheckらのNature 432:173-177(2004)Therapeutic of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs;およびLorenzら、Bioorg.Med.Chemistry.Lett.14:4975-4977(2004)Steroid and lipid conjugates of siRNAs to enhance uptake and gene silencing in liver cellsを参照。
【0059】
本発明のsiRNAまたは医薬組成物は、各患者の臨床症状、治療されるべき疾患、投与の部位および方法、投与の予定、患者の年齢、性別、体重、ならびに開業医に知られるその他の要素を考慮し、適正医療実施要項に従って投与され、投薬量が決定される。したがって、本願で目的とする「治療上有効な量」は、当業者に知られているような考慮により、決定される。投与量は、当業者が適切な処置として選択するような、生存率の改善またはより迅速な回復、あるいは症状およびその他の指標の改善または排除を含むが、それに限定されない改善を達成するのに有効な用量でなくてはならない。本発明の 組成物 は任意の従来の投与経路を通して投与される。 組成物は、組成物のまま、または医薬的に許容される塩として投与することができ、単体で、または医薬的に許容される担体、溶剤、希釈液、賦形剤、免疫賦活剤、および媒体と併用する活性成分として投与することができることに注目すべきである。組成物は、くも膜下腔内および点滴技術だけでなく、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、および鼻腔内投与を含む、経口、皮下、非経口的に投与することができる。組成物の移植も有用である。液状物を注射のために調製してもよく、この用語には皮下、経皮、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、およびその他非経口投与経路を含む。液状組成物には、有機共溶媒の存在下および非存在下の水溶液、水溶性または油の懸濁液、食用油入りの乳剤、および同様の医薬媒体を含む。更に、一定の状況下では、本発明の新規治療に使用する組成物を、鼻腔用および類似の投薬用に、エアロゾルとして形成してもよい。治療を受けている患者は温血動物で、特に人を含む哺乳類である。移植担体だけでなく、医薬的に許容される担体、溶剤、希釈液、賦形剤、免疫賦活剤、および媒体も、一般的には本発明の活性成分とは反応しない、不活性、無毒性の固体または液状充填剤、希釈液または封入材料を指し、リポソームおよび微粒子を含む。本発明に有用なデリバリーシステムの例には、米国特許第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959,217号、第4,925,678号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、および第4,475,196号を含む。その他のかかる移植、デリバリーシステム、およびモジュールの多くは、当業者には周知である。本発明の1つの特定の実施例では、局所および経皮製剤が特に好ましい。
【0060】
一般的に、ヒトに対する組成物の活性投与量は、1〜4週間の期間に1日につき1回の投与、あるいは1日につき2回、3回、またはそれ以上の投与計画で、体重に対し1日につき1ng/kgから約20〜100mg/kgの範囲で、好ましくは体重に対し1日につき約0.01mgから約2〜10mg/kgである。本願で開示されるいくつかの適応症の場合にも、多年にわたる長期の治療または生涯の治療まで考えられる。
【0061】
本願で使用される用語「治療」とは、疾病に関連する症状を寛解するか、重症度を和らげる、または疾病を治癒するか、疾病の発生を予防するのに効果的な治療剤の投与を指す。
【0062】
特定の実施例では、投与は静脈内投与を備える。別の特定の実施例では、投与は外用または局所的投与を備える。
【0063】
本発明の一側面には、患者を治療するために、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを含む、心臓血管疾病に病む患者、特に本発明による心臓血管関連遺伝子の上方制御に伴う、心臓血管疾病または疾患に関連する病理を治療する方法がある。
【0064】
本発明の一側面には、患者を治療するために、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者の心臓血管疾病を予防する方法がある。
【0065】
本発明の一側面では、表B〜Mに記載されている上記オリゴリボヌクレオチドのいずれか、またはこれらのオリゴヌクレオチドを発現するベクター、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。本発明の一側面には、本発明による心臓血管関連遺伝子の上方制御に伴う、心臓血管疾病および疾患に病む患者の回復を推進する医薬物の調製のため、上記のオリゴヌクレオチドまたはベクターのいずれかの、治療上有効な量の使用がある。
【0066】
本発明の組成物は、心不全または心筋虚血を伴う機能障害に関連する疾患、例えば、心臓の筋肉組織への不十分な血流、および結果として生じた虚血障害によって引き起こされる疾患のような、心臓血管疾病または疾患のいずれかの治療に使用してもよい。減少する血流は、冠動脈(冠動脈硬化)の狭小化、または血栓による閉塞(冠動脈血栓)が原因の場合もある。心筋組織への血液供給の重篤な妨害が発生し、それが心筋の壊死(心筋梗塞)の原因なる場合、本組成物もまた効果的である。本発明の組成物で治療しうるその他の病状には、脳卒中、急性冠症候群、不安定狭心症、不整脈、心肺停止、冠動脈心疾患、弁疾患、および心臓性胸痛がある。
【0067】
本発明では、医薬組成物を調製するプロセスも提供し、そのプロセスは:
1つ以上の本発明の二本鎖組成物を取得すること、および
前記組成物を医薬的に許容される担体と混合することを備える。
【0068】
本発明では、1つ以上の本発明の組成物を医薬的に許容される担体を混合することを含む、医薬組成物を調製するプロセスも提供する。
【0069】
好ましい実施例では、医薬組成物の調製に使用される組成物を、医薬的に効果的のある投与用量の担体と混合する。特定の実施例では、本発明の組成物を、ステロイド、あるいは、例えばコレステロールのような、脂質または別の適した分子に結合する。
【0070】
ヌクレオチドの修飾または類似体を、ヌクレオチドの治療特性を改良するために導入することができる。改良される特性には、ヌクレアーゼ耐性の増加および/または細胞膜を浸透する能力の増加を含む。
【0071】
従って、本発明は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの機能に、実質的には影響を与えない、本発明のオリゴヌクレオチドの類似体、またはオリゴヌクレオチドへの修飾全ても含む。好ましい実施例では、かかる修飾はヌクレオチドの塩基部分、ヌクレオチドの糖成分、および/またはヌクレオチドのリン酸成分に関連する。
【0072】
本発明の実施例では、ヌクレオチドは自然発生的なまたは合成的に修飾された塩基から選択することができる。自然発生的な塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルを含む。オリゴヌクレオチドの改変される塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル−、2−プロピル−およびその他アルキル−アデニン、5−ハロウラシル、5-ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、擬似ウラシル、4-チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニンおよびその他8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアミン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニンおよびその他置換グアニン、その他アザおよびデアザアデニン、その他アザおよびデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシルおよび5−トリフルオロシトシンを含む。
【0073】
加えて、ヌクレオチドの類似体は調製することができ、ヌクレオチドの構造は基本的に変化し、治療または実験試薬としてよりよく適する。ヌクレオチドの類似体の例には、ペプチド核酸(PNA)があり、DNA(またはRNA)内のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格は、ペプチド内で見つかる骨格と類似のポリアミド骨格と置換される。PNA類似体は、酵素による分解への耐性、ならびに生体内および生体外での寿命の延長を示している。さらに、PNAは、DNA分子より相補DNA配列へのより強い結合を示している。この観察は、PNA鎖とDNA鎖の間の電荷反発の欠如に起因する。オリゴヌクレオチドに対して行うことのできるその他の修飾には、ポリマー骨格、環状骨格、または非環状骨格を含む。
【0074】
一実施例では、修飾は、修飾されたリン酸成分をホスホチオエートを含む群から選択するリン酸成分の修飾である。
【0075】
本発明の組成物は、リボ核(またはデオキシリボ核)のオリゴヌクレオチドに対して、当該分野で知られるどんな方法によっても合成することができる。かかる合成は、数ある中で、Beaucage S.L.およびIyer R.P.、Tetrahedron 1992;48:2223-2311、Beaucage S.L.およびIyer R.P.、Tetrahedron 1993;49:6123-6194およびCaruthers M.H.ら、Methods Enzymol. 1987;154:287-313で開示され、チオエート合成は、数ある中で、Eckstein F.、Annu. Rev. Biochem. 1985;54:367-402で開示され、RNA分子の合成は、Sproat B., in Humana Press 2005 Herdewijn P.編;Kap. 2:17-31で開示され、個別の下流プロセスは、数ある中で、Pingoud A.ら、IRL Press 1989 Oliver R.W.A.編;Kap. 7:183-208 and Sproat B., in Humana Press 2005 Herdewijn P.編;Kap. 2:17-31(上記参照)に開示されている。
【0076】
その他合成手順で、当該分野で知られているものもあり、その手順はUsmanら、1987、J. Am. Chem. Soc.、109、7845;Scaringeら、1990、Nucleic Acids Res. 、18、5433;Wincottら、1995、Nucleic Acids Res. 23、2677-2684;およびWincottら、1997、Methods MoI. Bio.、74、59、に開示され、これらの手順では、通常の核酸を使用し、5’末端のジメトキシトリチルおよび3’末端のホスホラミダイトのような群を保護および結合してもよい。修飾された(例えば、2’-O-メチル化)ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドを、要望どおり組み入れる。
【0077】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、結紮(Mooreら、1992、Science 256、9923;Draperら、国際PCT公報第WO93/23569号;Shabarovaら、1991、Nucleic Acids Research 19、4247;Bellonら、1997、Nucleosides & Nucleotides、16、951;Bellonら、1997、Bioconjugate Chem. 8、204)、または合成および/または脱保護後のハイブリダイゼーションによって、別々に合成され、後に合成的に結合することができる。
【0078】
市販の機械(とりわけ、Applied Biosystemsから入手可能)を使用することができ、すなわちオリゴヌクレオチドは本願で開示される配列によって調合されることに留意する。化学的に合成される断片の重複する対は、当該分野でよく知られる方法(例えば、米国特許第6,121,426号)を利用して、結紮することができる。鎖を別々に合成し、それから管内でお互いにアニールする。それから二本鎖siRNAを、HPLCでアニールしなかった(例えば、その中の1つの過剰のため)一本鎖オリゴヌクレオチドから分離する。本発明のsiRNAまたはsiRNA断片に関しては、本発明で用いるために、2つ以上のかかる配列を合成し、共に連結することができる。
【0079】
本発明の組成物は、米国特許出願第US2004/0019001号(McSwiggen)に開示されるような、縦に並んだ合成方法論を介し、合成することができる。両方のsiRNA鎖は開裂可能なリンカーによって分離される単一の隣接するオリゴヌクレオチド断片または鎖として合成される。次に、それは開裂され別々のsiRNA断片または鎖を提供する。そして、siRNA断片または鎖はハイブリッドを形成し siRNAの二重鎖を純化させる。 リンカーはポリペプチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーでもある。
【0080】
本発明の組成物は、直接、あるいはウイルスまたは非ウイルスベクターで配達することができる。直接配達する場合は、配列には一般的にヌクレアーゼ耐性が与えられる。あるいは、本願の以下で論じるように、細胞内で配列を発現する発現カセットまたは構成の中に、配列を取り込むことができる。一般的に、構成は適切な制御配列またはプロモーターを含有するので、配列はターゲット細胞内で発現することが可能となる。 本発明の組成物のデリバリーに任意に用いられるベクターは市販されており、当業者に知られる方法によって、本発明の組成物のデリバリーの目的に応じ修飾される。
【0081】
ステム領域が本発明のオリゴヌクレオチドの配列を含む、1つ以上のステムおよびループ構造を含む長いオリゴヌクレオチド(長さで通常25〜500ヌクレオチド)は、担体好ましくは医薬的に許容される担体内でデリバリーされてもよく、内因性細胞複合体によって(例えば、上記で開示したDROSHAおよびDICERによって)、細胞内でプロセスされ、1つ以上の、本発明のオリゴヌクレオチドである、より小さな二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を生成してもよいことも、想定される。このオリゴヌクレオチドは、直列shRNAコンストラクトと名づけることができる。この長いオリゴヌクレオチドは、1つ以上のステムおよびループ構造を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであって、各ステム領域は、選択された遺伝子のセンスおよび対応するアンチセンスsiRNA配列を含むと想定される。特に、このオリゴヌクレオチドは、表B〜Mに描写されるセンスおよびアンチセンスsiRNA配列を含むと想定される。
【0082】
本願で使用われるように、用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドに加え、オリゴぺプチド、ペプチド、および完全なタンパク質を指す。
【0083】
本発明による心臓血管関連遺伝子の発現を下方制御する組成物は、とりわけsiRNA、抗体、好ましくは、一本鎖抗体と、アンチセンスオリゴヌクレオチドと、アンチセンスDNAまたはRNA分子と、タンパク質と、ポリペプチドと、ペプチド模倣薬およびドミナントネガティブを含むペプチドとを含む中和抗体またはその断片、ならびに上記全てを発現する発現ベクターでありうる。追加抑制剤は、一般的に2000ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは500ダルトン未満の分子量である小さな化学分子でありうる。これらの抑制剤は、以下の機能を果たす:小分子は発現および/または活性に影響を与えてもよく、抗体は活性に影響を与えてもよく、全種類のアンチセンスは心臓血管関連遺伝子の発現に影響を与えてもよく、ドミナントネガティブポリペプチドおよびペプチド模倣薬は活性に影響を与えてもよく、発現ベクターはとりわけアンチセンス、あるいはドミナントネガティブポリペプチドまたは抗体のデリバリーに用いられてもよい。
【0084】
表A、NまたはOに記載されている遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成については、既知の方法に基づいて実施することができ、例えば、Yi PeiおよびThomas Tuschl 2006 On the art of identifying effective and specific siRNA、Nature Methods 3巻9番、670-676ヘ゜ーシ゛;Chalk AM、Wahlestedt C、Sonnhammer EL. 2004 Improved and automated prediction of effective siRNA Biochem. Biophys. Res. Commun. 6月18日;319(1):264-74;Sioud M、Leirdal M.、2004、Potential design rules and enzymatic synthesis of siRNAs、Methods Mol Biol.;252:457-69;Levenkova N、Gu Q、Rux JJ. 2004、Gene specific siRNA selector Bioinformatics. I 12; 20(3):430-2およびUi-Tei K、Naito Y、Takahashi F、Haraguchi T、Ohki-Hamazaki H、Juni A、Ueda R、Saigo K.、Guidelines for the selection of highly effective siRNA sequences for mammalian and chick RNA interference Nucleic Acids Res. 2004 I 9;32(3):936-48を参照。Liu Y、Braasch DA、Nulf CJ、Corey DR. Efficient and isoform-selective inhibition of cellular gene expression by peptide nucleic acids、Biochemistry、2004 I 24;43(7):1921-7も参照。
【0085】
抗体産生
本発明に使用される用語「抗体」は、Fab、F(ab’)2、およびFvなどの断片と同様に、ポリおよび単クローンの完全抗体の双方を意味し、エピトピックの決定因子を結合することができる。これらの抗体断片は、その抗原または受容体に選択的に結合する能力を有し、以下のように例示され、とりわけ、
(1)Fab、抗体分子の一価の抗原結合性断片を含む断片は、軽鎖および重鎖の一部を産出するための酵素パパインを備える全抗体の消化により産生することができ、
(2)抗体の断片である(Fab’)2は、後の還元なしで酵素ペプシンを備える全抗体の処置により得ることができ、F(ab’2)は、2つのジスルフィド結合によりまとめた2つのFab断片の二量体であり、
(3)遺伝子操作されている断片として定義されるFvは、2つの鎖として発現する軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含み、
(4)遺伝子操作されている分子として定義される一本鎖抗体(SCA)は、2つの鎖として発現する軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含み、遺伝学的に溶解された一本鎖分子として適切なポリペプチドリンカーにより連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む。
【0086】
抗体機能活性を有する断片は、当業者に知られている方法により調製することができる(例、Birdら、(1988)Science 242:423−426)。
【0087】
好都合なことに、抗体は、免疫原またはその一部、例えば、配列に基づく合成ペプチドに対して調製することができ、またはクローン技術により組み換えによって調製され、自然遺伝子産物および/またはその一部は、免疫原として単離され、使用されてもよい。免疫原は、HarlowおよびLane(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、およびBorrebaeck(1992)、Antibody Engineering-A Practical Guide、ニューヨーク州W.H. Freeman and Co.に一般的に記載されるように、当業者に周知の標準抗体生産技術により抗体を産生するために使用することができる。
【0088】
ポリクローナル抗体を産生するために、ウサギまたはヤギなどの宿主は、免疫原または免疫原断片、一般的に、アジュバントの免疫を持ち、必要であれば、担体に結合し、免疫原の抗体は、血清から収集される。さらに、ポリクローナル抗体は単一特異的であるので吸収することができ、つまり、単一特異的に溶かして精製するために、交差反応性抗体が血清内に保持しないので、関連免疫原に対して血清を吸収することができる。
【0089】
モノクローナル抗体を産生するために、前記技術は、免疫原がある適切なドナー、一般的に、マウスの超免疫化、および脾臓の抗体産生細胞の単離を含む。これらの細胞は、骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合し、不死化であり、必要とされる抗体を分泌する融合細胞ハイブリッドを提供する。その後、細胞は、大量に培養され、モノクローナル抗体は、使用のために培地から採取された。
【0090】
組み換え抗体を産生するために、一般的に、Hustonら(1991)“Protein engineering of single-chain Fv analogs and fusion proteins” in Methods in Enzymology(JJ Langone編集、Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク)203:46-88;JohnsonおよびBird(1991) “Construction of single-chain Fvb derivatives of monoclonal antibodies and their production in Escherichia coli in Methods in Enzymology(JJ Langone編集、Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク)203:88-99;MemaughおよびMernaugh(1995)“An overview of phage-displayed recombinant antibodies” in Molecular Methods In Plant Pathology(RP SinghおよびUS Singh編集;フロリダ州ボーカラトーン、CRC Press Inc.、359-365)を参照。特に、scFv抗体は、WO第2004/007553号(TedescoおよびMarzari)に記載されている。また、動物の抗体を生産するB−リンパ球またはハイブリドーマ細胞からメッセンジャーRNAは、相補的DNA(cDNA)を獲得するために、逆転写することができる。全長または部分的な長さである抗体cDNAは、ファージまたはプラスミドに増幅またはクローン化される。cDNAは、重鎖および軽鎖cDNAの部分的な長さであり、リンカーにより単離または連結することができる。適切な発現系を使用し、組み換え抗体を獲得するために抗体または抗体断片を発現する。また、抗体cDNAは、関連のある発現ライブラリーをスクリーニングすることにより獲得することもできる。
【0091】
抗体は、従来よく知られているように、固体支持基質に結合、または検出可能な部分に接合することができ、または結合または接合の双方であってもよい(蛍光または酵素部分の接合の総括論議に関しては、Johnstone&Thorpe(1982)、Immunochemistry in Practice、オックスフォード、Blackwell Scientific Publicationsを参照)。固体支持基質への抗体の結合はまた、技術的によく知られている(総括論議に関しては、Harlow&Lane (1988) Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Publications、New York;およびBorrebaeck(1992)、Antibody Engineering - A Practical Guide、W.H. Freeman and Co.を参照)。本発明に伴い予期される検出可能な部分は、ビオチン、金、フェリチン、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、フルオレセイン、ローダミン、トリチウム、14Cおよびヨウ素化反応などの蛍光、金属、酵素および放射性マーカーを含むがそれらに限定されない。
【0092】
本発明の一形態は、表Oに記載される遺伝子により発現したポリペプチド/タンパク質への抗体、表Nに記載される遺伝子により発現したポリペプチド/タンパク質への特異な体抗体、表Aに記載される遺伝子により発現したポリペプチド/タンパク質への最も特異な抗体、および1つ以上の抗体および担体を備える薬剤組成を備える。本発明はさらに、患者を治療するために、治療上有効な量の医薬組成物として一般的に1つ以上の抗体を患者に投与することを含む、心臓血管疾患に病む患者の治療法も提供する。
【0093】
不活性化合物のスクリーニング:
本発明のいずれかの化合物および組成は、心臓血管関連遺伝子製品の活性を調節する化合物、特に、心臓血管系ポリペプチドのレベル上昇に伴う心臓血管疾病または疾患を調節する化合物を同定し、単離するためのスクリーニング検定に使用してもよい。スクリーニングされる化合物は、とりわけ、小さな化学分子およびアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの物質を備える。
【0094】
特異的ポリペプチド活性における本発明の化合物の抑制活性または特異的mRNAへの本発明の化合物の結合は、例えば、追加化合物が発現抑制のオリゴヌクレオチドと競い合う場合、または追加化合物が前記抑制を救出する場合、特異的ポリペプチドを伴う追加化合物の相互作用を決定するために使用してもよい。抑制または活性化は、とりわけ、特異的ポリペプチドの活性化製品に対する試験法、または放射性または蛍光競合試験法における特異的ポリペプチドからの化合物の結合の置換などの様々な手段で試験することができる。
【0095】
本発明は、実施例を参照して下記に詳細に示されるが、それに限定されるとは解釈されない。
【0096】
本書にある任意の文書の引用は、承認として意図されず、当該の文書は、関連のある従来技術である、または本願の任意の特許請求の範囲の特許性に対する資料と考慮される。任意の文書の内容または日付に関しての任意の記述は、出願時に申請者が利用可能な情報に基づき、記述の正確さに関して承認にはならない。
【0097】
実施例
分子および細胞生物学における一般的な方法
従来知られており、特に記載されない標準分子生物学技術は、一般にSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1989)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John WileyおよびSons、Baltimore、Maryland(1989)およびPerbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley&Sons、ニューヨーク(1988)、およびWatsonら、Recombinant DNA、Scientific American Books、ニューヨーク、およびBirrenら(編集) Genome Analysis:A Laboratory Manual Series、1-4巻 Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998)内の記載、および米国仮特許出願第4,666,828号、4,683,202号、4,801,531号、5,192,659号および5,272,057号に記述されている手法に従い、ここに引用して援用する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、PCRプロトコル:A Guide To Methods And Applications、Academic Press、San Diego, CA(1990)内に一般に実施された。Flow Cytometryと組み合わせて発生部位内(細胞内)PCRが特異的DNAおよびmRNA配列を含む細胞の検出のために使用することができる(Testoniら、1996,Blood 87:3822)。RT−PCRを実施する方法はまた、当業者によく知られている。
【0098】
新生ラット心筋細胞(NRVM)の一次単離
Sprague−DawleyまたはWistar系ラットを新生心筋細胞の単離のために使用することができる。単離工程は、ラットが生後1〜2日である場合、最も成功した。
【0099】
1.箱内のラットにクロロホルムで麻酔する。
【0100】
2.70%エタノールで麻酔したラットを洗浄する。
【0101】
3.心臓を切除し、1%のPen−Strepおよび8U/mlのヘパリン(5’000U/ml原液)およびグルコースを含有するPBSとともに、別のふた付きペトリ皿に入れる。
【0102】
混合(100mlのPBS+1mlのPen/Strep+200μlの50%グルコース)
10μlのヘパリン原液を7mlの(PBS+Pen/Strep+グルコース)混合に添加する。
【0103】
4.PBS/Pen−Strep/ヘパリン内で心臓を洗浄し、PBS/Pen−Strep/グルコースとともに別のペトリ皿に移動する。
【0104】
必要とされる心臓の数が獲得されるまで解剖を繰り返す。
【0105】
心臓は室温で保存され、30〜40分以内ですべての解剖を完了しなければならない。
【0106】
機械分離 鉗子を使用し、PBSから順に各心臓を取り出し、ペトリ皿のひっくり返したふたに置いた。外科用無菌メスで心室を切除し、皿に保持する。
【0107】
心房および付随血管を廃棄する。
【0108】
外科用メスを使用し、組織の個体が識別困難になるまで、細かく心室を分割する。
【0109】
断片を25mlの三角フラスコに磁気撹拌子と供に移動する。
【0110】
酵素分離 RDB酵素(1:50)を含む、PBS/グルコース/Pen−Strep混合内で、撹拌子を使用し、フラスコ内の細分化された組織を4×30分、室温でインキュベートする。(RDBは、植物タンパク質酵素である。)
1400rpmで5分間、すべての段階の上相を遠心分離する。
【0111】
プリプレーティングステップ F12/DMEN培地内で、すべての沈澱物を再度けん濁し、40分間、37°Cで、15cmの塗布されていない皿の上に細胞を培養する。
【0112】
プレーティング 15cmの皿から上清を収集し、再度、遠心分離機で分離し、細胞の数を数え、コラーゲンを塗布した培養皿またはフィブロネクチン塗布ストレッチャーの上で培養する。
【0113】
飢餓 処置前に、血清なしのpen/strep+グルタミンを含んだDMEM−F12培地内に24時間、細胞を欠乏させる。
【0114】
実施例1:活性siRNA化合物に対する塩基配列の生成
専用アルゴリズムおよび標的遺伝子の公知の配列を使用し、多くの潜在siRNAの配列を生成した。下表Bは、11の心臓血管遺伝子への特定siRNAを示し、これらのsiRNAを選択し、化学的に合成し、活性を試験した。
【表B】
下表Cは、本発明に従って選択されたCTTN遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表C】
下表Dは、本発明に従って選択されたFXYD5遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表D】
下表Eは、本発明に従って選択されたHBEGF遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表E】
下表Fは、本発明に従って選択されたIQGAP1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表F】
下表Gは、本発明に従って選択されたODC1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表G】
下表Hは、本発明に従って選択されたPIM1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表H】
下表Iは、本発明に従って選択されたSGPP1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表I】
下表Jは、本発明に従って選択されたSPTLC2遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表J】
下表Kは、本発明に従って選択されたSSAT遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表K】
下表Lは、本発明に従って選択されたSSG1遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表L】
下表Mは、本発明に従って選択されたSYNPO2L遺伝子に対して特異的なさらなるsiRNA化合物を示す。
【表M】
実施例2: さらなる心臓血管関連遺伝子
本発明に従って、GeneBank登録番号を含む、さらに好ましい心臓血管関連遺伝子を下表Nに記載する。 本発明に従って、GeneBank登録番号を含む、さらに好ましい心臓血管関連遺伝子を下表Oに記載する。
【表N】
【表O】
実施例3: 一次新生ラット心筋細胞(NRVM)におけるsiRNAの試験
一次新生ラット心筋細胞(NRVM細胞)は、特異的siRNA配列を挿入したshRな発現ベクター(pTZ−GFP−H IRNA)に感染した。感染してから72時間後、24時間、細胞を欠乏させ、2時間、伸縮を導入した。遺伝子に対するリアルタイムPCRおよび特異的マーカーは、内因性遺伝子発現抑制の範囲を決定するために実施された。
【0115】
Lentiviral感染法を使用し、NRVM細胞は、以下の遺伝子:SYNPO2L、HB−EGF、IQGAP、SSAT1、SSG1、SGPP1、SPTLC2、FXYD5、CTTN、ODC1およびPIM1(表B)に対応する様々なsiRNA化合物を発現する特異的shRNAに感染した。特異的内因性遺伝子の発現は、伸縮処置の有無に関わらず評価された。 図1〜11に示されるように、選択された内因性遺伝子の発現は、リアルタイムPCR分析により決定される場合、細胞内での伸縮の誘導の後に、著しく増加した。 特異的shRNAの感染は、伸縮前後に選択された内因性遺伝子の発現を著しく抑制した。
【0116】
実施例4: 生体内実験モデル:
心筋梗塞症は、LutgensらによりCardiovasc. Res. (1999) 41:586−59に記載されるように、左冠動脈(Left Coronary Artery:LCA)の永久結紮によりモデル化した。つまり、60mg/kgのペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与によりマウスを麻酔状態にする。 第三肋間腔上の横断皮膚切開および第三と第四肋骨の間の左開胸術を行い、左心耳の先端からLCA周辺の約1mmの遠位に6.0フィラメントを結合した。 呼気終末の陽圧を使用し、胸腔の閉鎖および肺の再拡張した後、梗塞されたマウスは、ウォーミングパッド上で回復することができる。
【0117】
実験中、本発明の化合物(例、オリゴヌクレオチド、ベクターまたは抗体)またはプラシーボを送る浸透圧ミニポンプは、心筋梗塞症の処理後、直ちにマウスの背部に皮下に注入される。 術後から4および24時間、および最高16日の時点で、生理学的血圧値で、腹大動脈を介して0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)内に1%のパラホルムアルデヒドで梗塞を起こしたマウスに麻酔し、かん流する。 固定された心臓を解剖し、組織学のために調製される。 6μmの薄片は、ヘマトキシリン−エオシン染色および心筋梗塞症に対して特異的なマーカーを有する染色のために使用され、プラシーボの治療を受けるまたは治療されていない(心筋梗塞症でない)対照マウスと比較して、マウスにおける本発明の化合物による治療効果を決定する。
【0118】
実施例5: 左冠動脈前下降枝(Left Anterior Descending:LAD)結紮後のin situハイブリダイゼーション分析
C3HeB/FeJマウスは、左前下行枝(Left Anterior Descending:LAD)冠動脈の結紮を設け、心筋の選択遺伝子の発現は、様々な時点(結紮後、0、4時間、24時間および4、8、16および24日)で、in situハイブリダイゼーション分析(ISH)により分析された。 下表Pは、LADの結紮後、典型的な遺伝子とともに得たISHの結果を詳述する。 本表に示されるように、SYNPO2、IQ−GAP、FXYD5、HB−EGF、PIM1、SPTLC2、SSAT1およびSSG1は、LADの結紮後、発現の特異的な上方制御および結果として生じた心筋障害を示す。
【0119】
図12Aは、特に、無傷心筋の血管周囲の心筋細胞内のSynpo2L発現(ISH使用)を示す。 中央のパネルは、蛍光染色を使用するISH分析である。 結紮してから24時間後、梗塞周囲の領域の発現は、図12B(右パネル)に示される。 結紮してから24日後、梗塞周囲の領域の発現は、図12C(右パネル)に示される。 これらの結果は、Synpo2Lの発現が心筋障害後に上方制御されることを示す。
【表P】
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性ヘパリン結合性EGF様成長因子(HB−EGF(DTR)b)の発現に与える影響を示す。
【図2】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性シナプトポディン2に類似遺伝子(SYNPO2L)の発現に与える影響を示す。
【図3】特定siRNA組成物が心筋細胞内のGTPase活性化タンパク質1(IQ−GAP)含有内因性IQモチーフの発現に与える影響を示す。
【図4】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性スペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)の発現に与える影響を示す。
【図5】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性ステロイド感受性遺伝子1(URB)、転写変異遺伝子1(SSG1)の発現に与える影響を示す。
【図6】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性スフィンゴシン−1−リン酸ホスファターゼ1(SGPP1)の発現に与える影響を示す。
【図7】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、長鎖塩基サブユニット2(SPTLC2)の発現に与える影響を示す。
【図8】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレータ5(FXYD5)の発現に与える影響を示す。
【図9】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性コルタクチン(CTTN)の発現に与える影響を示す。
【図10】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC1)の発現に与える影響を示す。
【図11】特定siRNA組成物が一次心筋細胞内の内因性pim発癌遺伝子(PIM1)の発現に与える影響を示す。
【図12】無傷心筋の血管周囲心筋細胞(A)内、連結反応24時間後(B)および24日後(C)の梗塞周囲領域における、SYNPO2L発現(インサイチューハイブリダイゼーション使用)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を持つ化合物であって、
5’(N)x−Z3’(アンチセンス鎖)
3’Z’−(N’)y5’(センス鎖)
式中、NおよびN’のそれぞれが、その糖残基において修飾されていても、または修飾されていなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)xおよび(N’)yは、連続したNまたはN’のそれぞれが次のNまたはN’に共有結合によって連結されたオリゴマーであり、
各xおよびyが19から40の間の整数であり、
ZおよびZ’のそれぞれが存在してもしなくてもよく、
しかし、存在する場合はdTdTであり、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付着しており、
(N)xの配列が、表A、NまたはO中のいかなる遺伝子のcDNAにアンチセンス配列を含む化合物。
【請求項2】
(N)xの配列が、表B〜M中に示される一つ以上のアンチセンス配列を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記共有結合がホスホジエステル結合である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
x=y、好ましくはx=y=19である、請求項1〜3に記載の化合物。
【請求項5】
ZおよびZ’が両方とも存在しない、請求項1,2,3、または4に記載の化合物。
【請求項6】
ZまたはZ’のどちらか一つが存在する、1,2,3、または4に記載の化合物。
【請求項7】
すべてのリボヌクレオチドがそれらの糖残基において修飾されていない、請求項1〜6に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも一つのリボヌクレオチドがその糖残基において修飾された、請求項1〜6に記載の化合物。
【請求項9】
前記糖残基の修飾が2’位置の修飾を含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2’位置の修飾によって、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ、およびアルキル基を含むグループから選択された部分が生じる、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
2’位置の部分がメトキシ(2’−O−メチル)である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
アンチセンスおよびセンス鎖の両方において、交互に並ぶリボヌクレオチドが修飾された、請求項1〜6、または8〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
アンチセンス鎖の5’および3’末端のリボヌクレオチドが、それらの糖残基において修飾されており、センス鎖の5’および3’末端のリボヌクレオチドが、それらの糖残基において修飾されていない、請求項1〜6、または8〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
前記アンチセンスおよびセンス鎖が、3’および5’末端で非リン酸化されている、または、アンチセンスおよびセンス鎖が、3’末端でリン酸化された、請求項1〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の発現が可能なベクター。
【請求項16】
表A、N、またはOに列挙される遺伝子のいずれかを抑制するために有効な量の、請求項1〜14のいずれかに記載の一つ以上の化合物、または、請求項15に記載のベクターと、担体とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
表B〜M中に列挙されるアンチセンス配列を有する、請求項2に記載のオリゴリボヌクレオチドのいずれか、および、医薬的に許容される担体を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
患者を治療するために、表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の抑制剤を一つ以上含む、治療上有効な量の組成物を患者に投与することを含む、疾患に病む患者の治療法。
【請求項19】
前記抑制剤がsiRNA化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抑制剤が抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が請求項16に記載の組成物である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
抑制剤が請求項1〜14のいずれかに記載の化合物を一つ以上、または、請求項15に記載のベクターを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
疾患が心臓血管疾患である、または、疾患が表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の上昇する発現レベルを伴う、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
各幹領域が、表Aに列挙された遺伝子のセンスsiRNA配列および対応するアンチセンスsiRNA配列を含む、一つ以上の幹部と環状部を有する構造を含む一本鎖のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
前記センスおよびアンチセンスsiRNA配列が表B〜M中に示される、請求項24に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の発現を抑制するために有効な量において、共有結合的に、または非共有結合劇に一つ以上の前記請求項1に記載の化合物に連結する、請求項1に記載の前記化合物を含む組成物。
【請求項27】
心臓血管疾患が、心筋虚血を伴う機能障害、冠動脈硬化症、冠動脈血栓症、心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群、不安定狭心症、不整脈、心肺停止、弁疾患、心臓性胸痛から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の発現上昇を伴う心臓血管疾病または疾患に病む患者の回復を促進する薬物の調整のために、表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の一つ以上の抑制剤の治療上有効な量の使用。
【請求項29】
前記抑制剤が、請求項1〜14のいずれかに記載のオリゴリボヌクレオチド、または、請求項15に記載のベクターである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抑制剤が抗体である、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の心臓血管関連遺伝子の発現を、オリゴヌクレオチドを用いて、遺伝子のmRNAの収縮を含む対照と比較して少なくとも50%下方制御する方法。
【請求項32】
オリゴヌクレオチドが請求項1〜14のいずれかに記載されている、請求項31に記載の方法。
【請求項1】
以下の構造を持つ化合物であって、
5’(N)x−Z3’(アンチセンス鎖)
3’Z’−(N’)y5’(センス鎖)
式中、NおよびN’のそれぞれが、その糖残基において修飾されていても、または修飾されていなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)xおよび(N’)yは、連続したNまたはN’のそれぞれが次のNまたはN’に共有結合によって連結されたオリゴマーであり、
各xおよびyが19から40の間の整数であり、
ZおよびZ’のそれぞれが存在してもしなくてもよく、
しかし、存在する場合はdTdTであり、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付着しており、
(N)xの配列が、表A、NまたはO中のいかなる遺伝子のcDNAにアンチセンス配列を含む化合物。
【請求項2】
(N)xの配列が、表B〜M中に示される一つ以上のアンチセンス配列を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記共有結合がホスホジエステル結合である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
x=y、好ましくはx=y=19である、請求項1〜3に記載の化合物。
【請求項5】
ZおよびZ’が両方とも存在しない、請求項1,2,3、または4に記載の化合物。
【請求項6】
ZまたはZ’のどちらか一つが存在する、1,2,3、または4に記載の化合物。
【請求項7】
すべてのリボヌクレオチドがそれらの糖残基において修飾されていない、請求項1〜6に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも一つのリボヌクレオチドがその糖残基において修飾された、請求項1〜6に記載の化合物。
【請求項9】
前記糖残基の修飾が2’位置の修飾を含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2’位置の修飾によって、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ、およびアルキル基を含むグループから選択された部分が生じる、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
2’位置の部分がメトキシ(2’−O−メチル)である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
アンチセンスおよびセンス鎖の両方において、交互に並ぶリボヌクレオチドが修飾された、請求項1〜6、または8〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
アンチセンス鎖の5’および3’末端のリボヌクレオチドが、それらの糖残基において修飾されており、センス鎖の5’および3’末端のリボヌクレオチドが、それらの糖残基において修飾されていない、請求項1〜6、または8〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
前記アンチセンスおよびセンス鎖が、3’および5’末端で非リン酸化されている、または、アンチセンスおよびセンス鎖が、3’末端でリン酸化された、請求項1〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の発現が可能なベクター。
【請求項16】
表A、N、またはOに列挙される遺伝子のいずれかを抑制するために有効な量の、請求項1〜14のいずれかに記載の一つ以上の化合物、または、請求項15に記載のベクターと、担体とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
表B〜M中に列挙されるアンチセンス配列を有する、請求項2に記載のオリゴリボヌクレオチドのいずれか、および、医薬的に許容される担体を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
患者を治療するために、表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の抑制剤を一つ以上含む、治療上有効な量の組成物を患者に投与することを含む、疾患に病む患者の治療法。
【請求項19】
前記抑制剤がsiRNA化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抑制剤が抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が請求項16に記載の組成物である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
抑制剤が請求項1〜14のいずれかに記載の化合物を一つ以上、または、請求項15に記載のベクターを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
疾患が心臓血管疾患である、または、疾患が表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の上昇する発現レベルを伴う、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
各幹領域が、表Aに列挙された遺伝子のセンスsiRNA配列および対応するアンチセンスsiRNA配列を含む、一つ以上の幹部と環状部を有する構造を含む一本鎖のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
前記センスおよびアンチセンスsiRNA配列が表B〜M中に示される、請求項24に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の発現を抑制するために有効な量において、共有結合的に、または非共有結合劇に一つ以上の前記請求項1に記載の化合物に連結する、請求項1に記載の前記化合物を含む組成物。
【請求項27】
心臓血管疾患が、心筋虚血を伴う機能障害、冠動脈硬化症、冠動脈血栓症、心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群、不安定狭心症、不整脈、心肺停止、弁疾患、心臓性胸痛から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の発現上昇を伴う心臓血管疾病または疾患に病む患者の回復を促進する薬物の調整のために、表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の遺伝子の一つ以上の抑制剤の治療上有効な量の使用。
【請求項29】
前記抑制剤が、請求項1〜14のいずれかに記載のオリゴリボヌクレオチド、または、請求項15に記載のベクターである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抑制剤が抗体である、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
表A、N、またはO中に列挙された一つ以上の心臓血管関連遺伝子の発現を、オリゴヌクレオチドを用いて、遺伝子のmRNAの収縮を含む対照と比較して少なくとも50%下方制御する方法。
【請求項32】
オリゴヌクレオチドが請求項1〜14のいずれかに記載されている、請求項31に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−507484(P2009−507484A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529781(P2008−529781)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001036
【国際公開番号】WO2007/029249
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(502337583)クアーク・ファーマスーティカルス、インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Quark Pharmaceuticals,Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001036
【国際公開番号】WO2007/029249
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(502337583)クアーク・ファーマスーティカルス、インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Quark Pharmaceuticals,Inc.
【Fターム(参考)】
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