説明

オートレンジ電流分路

【課題】
高い電流レンジの切替を高い速度で行うことができ、低い電流レンジの切替を大きなトランジェントを生じることなく行うことができるようにすること。
【解決手段】
レンジ切替え回路12は、直列関係にある複数の目盛り付きインピーダンス24、26、28、30、32、34のアレイを備え、これらのインピーダンスのうちの一つのインピーダンスの両端間の電圧検知用兼電圧制限用スイッチ、例えば、バックツーバックのツェナーダイオード36が設けられる。このスイッチは、このスイッチが検知した電圧に応じて前記の1つのインピーダンスの両端にわたって電圧を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気測定装置に関し、特に、レンジ切替え回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気測定装置では、所望のレンジの測定値を出力するためにレンジ選択回路を設けることは一般的である。
【0003】
最も単純な形態では、所望のレンジを出力するために、単に、セレクタスイッチを使用するだけである。更に複雑なレンジ切替え回路は、測定装置の測定値によって制御されるリレーを使用して、望ましいレンジ内に上記測定値を配置するレンジを選択することがある。さらに広いレンジ、精度および速度を所望すると、このプロセスは、更に複雑なものになる。従来、これらのファクタは、所望のレベルと性能とを生成するために、より多くの回路構成並びにより複雑な構成を必要としていた。
【0004】
図1を参照すると、例示の従来技術による測定装置1は、電圧制御モード(電源電圧、測定電流)でのソース測定ユニット(SMU)である。エラー増幅器A1は、QOUTを制御する。(最低レンジを除く)一連の電流検知エレメントとスイッチとが並列に接続され、これらは、レンジ切替えを行うために、負荷抵抗器と直列となっている。差動増幅器は、RLOADの両端間を検知し、電圧フィードバック値VFBを出力する。フィードバック抵抗Rは、VFBとVDACとを比較して対応するエラー電圧をA1に表す。
【0005】
スイッチS乃至Sは、スイッチによる漏出をなくすために、付随ブートストラッピング成分を有する電気機械的リレーまたはソリッドステートスイッチであってもよい。すべてのスイッチは、マイクロプロセッサが選択した電流検知エレメントで測定された電圧に応じてマイクロプロセッサにより制御される。従って、マイクロプロセッサによって所望のレンジの選択が行われることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイッチが負荷に対して直列であるため、(スイッチのターンオンによる)RSENSEの瞬間的変動によって出力側にトランジェントが生じることになる。ソリッドステートスイッチの場合、一般に「ランピング」回路を使用して、古いエレメントと並列に配置された新しいエレメント内で「フェード」を行って、ループの利得帯域によるグリッチの最小化が可能になる。抵抗器の広いダイナミックレンジに起因して、ランプのタイミングが厄介な問題となることがあり、通常このタイミングの結果としてトレードオフが生じ、その場合、必要な速度よりも低い速度でより高い電流レンジの切替えが行われ、一方、低い電流レンジは、より大きなトランジェントを生じる可能性がある。これらのグリッチとトランジェントとは、通常、出力の安定後同時に発生し、A/Dコンバータにより行われる測定に対応する。異なるレンジが必要になる場合、レンジ選択を行う対応処理では、低電流で安定するのに100msかかる場合もあるトランジェントが生じる可能性がある。多くの場合、果てしなく続く一連のグリッチが存在する「ハンティング」がノイズによって引き起こされる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって課題を解決すべきレンジ切替え回路は、直列関係にある複数の目盛り付きインピーダンスのアレイと、前記インピーダンスのうちの一つのインピーダンスの両端間に設けられた電圧検知用兼電圧制限用スイッチとを備えている。このスイッチが検知した電圧に応じて、スイッチは、上記の一つのインピーダンスの両端間の電圧を制限する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2を参照して述べると、測定装置10は、レンジ切替え回路12を含んでいる。増幅器14が作動すると、トランジスタ18、電源20及び回路12を介して負荷16の両端間に電圧VDACが印加される。バッファ22は、バッファ済みバージョンの電圧が電圧フィードバックループに供給する。
【0009】
回路12は、例えば、インピーダンスにラベル付けされた目盛り付き(graduated)インピーダンス24、26、28、30、32、34のアレイを含む。これらのインピーダンスの各インピーダンスの両端間には、例えば4ボルトのツェナー電圧を有するバックツーバック(背合わせ)のツエナーダイオード36が設けられる。
【0010】
増幅器38とスイッチ40、42とは、回路12の両端間に現れる電圧を検知するためのピックオフポイントを供給する。スイッチ40は、測定を目的とする回路12の電圧を検知するのを可能とし、一方、スイッチ42は、負荷16に電流を強制的に流す際に、制御回路へのフィードバックを可能とする。ピックオフポイントが上記2つの目的のために独立して選択される場合に、回路12の直列性は、ソーシングと測定との分離を可能とすること留意すべきである。
【0011】
この実施例では、インピーダンス24、26、28、30、32、34の各々によって20の電流がカバーされる。例えば、10TΩの値を有する負荷16に1ボルトが印加されると、100pAの電流が流れ、0.4ボルトがインピーダンス34の両端間に現れる。
【0012】
電流が1nAを越えると、直ちに、インピーダンス34の両端間のツエナーダイオードがクランプして電圧を4ボルトに制限する。次に、インピーダンス32の両端間に追加の4ボルトが現れると、100nAまで負荷電流を許容できるようになる。VDACが上昇するにつれて、クランプは、レンジが不飽和状態になるまでターンオンする。100mAでは、アレイの両端間に20ボルトが生じることになるが、インピーダンス26のタップのみは飽和されることはない。インピーダンスの両端間の電圧は、アースSと関連して測定される。このようにして、回路12は、実際の測定装置からまったく命令を受けることなく、レンジを「自動的に」切り替えることがわかる。
【0013】
バックツーバックの態様でダイオード36が配置されると、両極測定を可能とするが、バックツーバックの態様でない場合、個々のレンジ用の単一ダイオードでもよいことが指摘されるべきである。
【0014】
図3を参照して述べると、他のレンジ切替え回路12’が示され、この回路12’は、ツエナーダイオードに代えてMOSFET44を使用している。両抵抗器46、48の両端間の電圧がMOSFET44のしきい値電圧に達するまで、電流が両抵抗器46、48を流れる。このとき、MOSFET44は、インピーダンス48と平行して電流の流れを開始する。電流が増加すると、インピーダンス46の両端間の電圧降下も増加し、この電圧降下の増加によってMOSFET44の導通の増加が引き起こされて、インピーダンス48の両端間の電圧を減少することになる。この結果、インピーダンス46、48の組み合わせの両端間の総電圧は、インピーダンス46の両端間に電流の増加が発生する量分だけ増加することになる。
【0015】
図4を参照して述べると、更に他のレンジ切替え回路12’’が示され、この回路12’’は、バイアス電圧源50を付加してMOSFET44のしきい値電圧を制御するようにしている。
【0016】
図5を参照して述べると、更に他のレンジ切替え回路12’’’が示され、この回路12’’’は、増幅器52、ダイオード54および保護インピーダンス56を付加している。これらの3つの付加エレメントは、非常に低い電流の測定の場合に、測定されるMOSFETからの漏出を防止する保護として作用する。
【0017】
図6を参照して述べると、更に他の別のレンジ切替え回路12’’’’が示され、この回路12’’’’は、関連するバイアス電圧源60とダイオード62と共に、バックツーバックMOSFET58を付加して、この回路12’’’’の作動を双極性としている。
【0018】
本発明のレンジ切替え回路は、コントローラからのコマンドを必要とせず「自動的に」レンジを変えるものであった。1つ又はそれ以上の目盛り付きインピーダンスは、その両端間に、電圧検知スイッチを有すると効果的であり、この電圧検知スイッチは、電圧を検知し、レンジインピーダンスの電圧降下を制限する。この電圧検知スイッチは、回路構成を単純化し、小型化する。その上、レンジ切替えは、一層滑らかで、信頼性も一層高くなる。
【0019】
電流を強制的に流す場合、レンジインピーダンス短絡を設けて、一層高い値の検知エレメントを作動不能にし、これら検知エレメントをアレイから除去するほうが望ましい場合もある。
【0020】
本明細書の記載は、例示的であり、この明細書に含まれる教示の正しい範囲から逸脱することなく、細部の追加、修正または除去を行うことにより種々の変更を行うことができるとは自明である。従って、特許請求の範囲によって必然的に限定されている範囲を除いて、本発明は、この明細書の特定の細部に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術の装置の系統図である。
【図2】本発明による例示装置の系統図である。
【図3】本発明による他の例示装置の系統図である。
【図4】本発明による基づく追加の例示装置の系統図である。
【図5】本発明による更に他の例示装置の系統図である。
【図6】本発明による更に他の例示装置の系統図である。
【符号の説明】
【0022】
10 測定装置
12、12’、12’’’、12’’’’ レンジ切替え回路
14 増幅器
16 負荷
18 トランジスタ
20 電源
22 バッファ
24、26、28、30、32、34 目盛り付きインピーダンス
36 ツエナーダイオード
38 増幅器
40、42 スイッチ
44 MOSFET
46、48 抵抗器
50 バイアス電圧源
52 増幅器
54 ダイオード
56 保護インピーダンス
58 バックツーバックMOSFET
60 バイアス電圧源
62 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列関係にある複数の目盛り付きインピーダンスのアレイと、前記インピーダンスのうちの一つのインピーダンスの両端間に設けられた電圧検知用兼電圧制限用スイッチとを備え、前記スイッチは、該スイッチによって検知された電圧に応じて、前記一つのインピーダンスの両端間の電圧を制限するレンジ切替え回路。
【請求項2】
請求項1に記載のレンジ切替え回路であって、前記スイッチは、ツエナーダイオードを含むレンジ切替え回路。
【請求項3】
請求項1に記載のレンジ切替え回路であって、前記スイッチがMOSFETを含むレンジ切替え回路。
【請求項4】
請求項1に記載のレンジ切替え回路であって、前記スイッチがツエナーダイオードのバックツーバックペアを備えたレンジ切替え回路。
【請求項5】
請求項1に記載のレンジ切替え回路であって、前記スイッチがMOSFETのバックツーバックペアを含むレンジ切替え回路。
【請求項6】
請求項3に記載のレンジ切替え回路であって、前記MOSFETのチャネルがバイアス電圧と直列状態にあり、前記バイアス電圧が前記電圧制限値を決定するレンジ切替え回路。
【請求項7】
請求項1に記載のレンジ切替え回路であって、前記スイッチが保護されているレンジ切替え回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−242937(P2006−242937A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339092(P2005−339092)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(505436014)キースリー インストルーメンツ インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】