説明

カッターナイフ

【課題】カッター刃の後部寸法誤差等に起因した不安定な保持を効果的に回避するとともにカッター刃を静止位置に安定して状態に保ち、カッター刃をケース外に突出させる際の移動をスムースに行えるようにすること。
【解決手段】ケース内12に収容されるとともに前端で出没可能に設けられたカッター刃14と、このカッター刃14を前後方向に移動可能とするスライダ15とを備えたカッターナイフ10において、スライダ15は、カッター刃14の後部側を保持する保持面部46と、カッター刃14の後部面内に形成された穴14A内に受容される突部41と、カッター刃14の後端縁14Bに相対する当接部45とを備え、カッター刃の後部側を保持面部46に保持させたときに、当接部45がカッター刃14の後端縁14Bによって後方に変位するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカッターナイフに係り、更に詳しくは、カッター刃をスライドさせるスライダに対し、カッター刃を安定して保持させることのできるカッターナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のカッターナイフは、前後方向に延びる略C字状のケースと、このケース内で前後方向移動可能に設けられたスライダと、当該スライダに後端側が保持されるカッター刃とを備えて構成されている。このタイプのカッターナイフは、スライダがケース側面側に位置しており、右手利きの人が利用する場合には、右手親指にて容易に操作することができるが、左手利きの人にとっては使い勝手が非常に悪いものとなる。
【0003】
そこで、本出願人は、例えば、特許文献1に記載されているように、ケースの上端部に操作部材を配置して利き手に影響を与えない、いわゆるユニバーサルタイプのカッターナイフを提案した。このカッターナイフは、ケース内に位置するスライダ本体及び当該スライダ本体に前後方向移動可能に組み合わされる操作部材を含むスライダと、スライダ本体とケースとの間に設けられた板ばねをケース側に係脱可能に設けることで、スライダのロック及びロック解除を行うロック機構とを備え、前記板ばねと操作部材とを部分的に係り合わせることで当該操作部材がスライダ本体に対して初期位置に保たれる構成となっている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたカッターナイフにあっては、初期位置にある操作部材がスライダ本体に対して前後にフリーな状態となる、いわゆる「遊び」があり、操作力を付与したときに応答性や、操作力を解除したときの操作部材の初期位置復帰動作の円滑性を改善しながらロック機構の確実性を向上させる余地があることが判明した。
そこで、本出願人は、スライダ本体と操作部材とを前後方向に相対移動可能に組み合わせても、操作部材が常に初期位置を保持することができ、操作部材に操作力を付与したときに、応答性を良好に保ってスライダに操作力を伝達する一方、操作力を解除したときに、スライダ本体に対する操作部材の初期位置復帰を迅速に行うことのできるカッターナイフを提案した(特願2010−215357号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−229076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特願2010−215357号のカッターナイフは、図16、17に概略的に示すように、カッター刃100の後端部領域100Aをスライダ本体101と押さえ部材102との間に挟み込んでカッター刃100を保持する構成となっている。
【0007】
ここで、スライダ本体101は、後端部領域100Aを保持する保持面部105と、この保持面部105の面内に設けられてカッター刃100の後部面内に設けられた穴106内に受容される突部107と、カッター刃100の傾斜後端縁100Bに相対する傾斜隆起部108とを備えて構成されている。
【0008】
図17に示すように、前記突部107の中心C及び傾斜隆起部108間の水平方向距離L1と、中心C及び傾斜後端縁100B間の水平方向距離L2が等しければ、カッター刃100がスライダ本体10に保持された状態で穴106を中心として回転する方向にぐらついてしまうような不都合は生じない。
【0009】
ところが、カッター刃100は、穴106と傾斜後端縁100Bの前記距離L2の寸法精度にばらつきがあるのが実状となっている。従って、そのようなばらつきを予め見込み、前記距離L2が距離L1よりも常に小さい状態を維持することのできる条件を満たす位置に傾斜隆起部108を形成し、これにより、カッター刃100の装着ができなくなるといった不都合を未然に防止していた。
【0010】
しかしながら、このような設定により、カッター刃100は突部107を中心として先端が矢印A方向にぐらつきを生じることになり、カッター刃100を図示しないケースの前端から突出させるときに、ケース内面に生ずる段差部分(例えば、図4中符合K参照)にカッター刃100の先端コーナー部分がぶつかってスムースな突出動作を妨げてしまうという不都合が生じた。かかる不都合は、カッター刃100の刃縁が上位となるようにカッターを手に持って、例えば、天井等に向けて切断作業を行う際に顕在的なものとなる。
【0011】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、カッター刃の後部寸法誤差等に起因した不安定な保持を効果的に回避でき、カッター刃を静止位置に安定して状態に保ち、カッター刃をケース外に突出させる際の移動をスムースに行うことのできるカッターナイフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、前後方向に延びる内側空間を備えたケースと、このケース内に収容されるとともに当該ケースの前端で出没可能に設けられたカッター刃と、このカッター刃を保持してケース内で前後方向に移動可能に設けられたスライダとを備えたカッターナイフにおいて、
前記スライダは、前記カッター刃の後部側を保持する保持面部と、カッター刃の後部面内に形成された穴内に受容される突部と、カッター刃の後端縁に相対する当接部とを備えて構成され、
前記突部を穴内に位置させてカッター刃の後部側を保持面部に保持させたときに、前記当接部がカッター刃の後端縁によって後方に変位するように設けられる、という構成を採っている。
【0013】
本発明において、前記当接部は、前記保持面部の一部に切欠部を形成することにより略板ばね状に設けられる、という構成を採ることができる。
【0014】
また、前記突部の中心を通る仮想鉛直線と当接部との距離は、前記穴の中心を通る仮想鉛直線と前記後端縁との距離よりも短く設けられている。
【0015】
更に、前記カッター刃をスライダの所定位置に保持させたときに、前記当接部が後方に弾性変位するように設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カッター刃を保持面部に保持させたときに、カッター刃の後端縁に押されて前記当接部が後方に変位するので、カッター刃は前記突部が穴内に位置した状態で常に前方に押された状態に維持され、これにより常に一定位置に静止した状態に保たれる。このように、当接部に対してカッター刃の後端縁が突き当たるような寸法設定としておくことで、カッター刃に寸法精度誤差があっても支障なく利用することができる。
また、保持面部の一部を切り欠いて当接部が形成できるので、従来タイプを僅かに形状変更するだけでよく、構成を複雑にしてしまうような不都合は生じない
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るカッターナイフの概略斜視図。
【図2】前記カッターナイフの分解斜視図。
【図3】ケースにガイド部材を収容した状態を示す平面図。
【図4】(A)は図3の縦断面図。(B)は図4(A)のA−A線に沿う拡大断面図。
【図5】(A)はガイド部材の平面図、(B)はガイド部材の中央断面図。
【図6】スライダにカッター刃を保持させた状態を示す概略斜視図。
【図7】(A)はスライダ本体の正面図、(B)は同背面図、(C)は同平面図、(D)は同底面図。
【図8】(A)は図7(A)のB−B線断面図、(B)は同C−C線断面図、(C)は同D−D線断面図、(D)は同E−E線断面図。
【図9】(A)は押さえ部材の正面図、(B)は同平面図、(C)は同底面図、(D)は同背面図、(E)は図9(D)のF−F線断面図。
【図10】(A)は操作部材の正面図、(B)は同背面図、(C)は同平面図。
【図11】(A)は操作部材の左側面図、(B)は図10(B)のG−G線断面図、(C)は同H−H線拡大断面図。
【図12】(A)は板ばねの平面図、(B)は同正面図、(C)は図12(B)のI−I線断面図、(D)は板ばねの背面図。
【図13】スライダ本体にカッター刃を装着する作用説明図。
【図14】押さえ部材でカッター刃を押さえ付けた状態を示す作用説明図。
【図15】スライダ本体に板ばね部材を装着した状態を示す作用説明図。
【図16】従来の不都合を説明するための要部概略分解斜視図。
【図17】従来の不都合を説明するための要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において、「前」とは、カッター刃の先端が位置する側について用いられる一方、「後」とは、その反対側について用いられる。
【0019】
図1及び図2において、カッターナイフ10は、前後方向に延びる内側空間S(図4(B)参照)を有するケース12と、このケース12内に収容されたガイド部材13と、当該ガイド部材13に沿って前後方向に移動可能に設けられてケース12の前端から出没可能となるカッター刃14と、このカッター刃14を保持するとともに当該カッター刃14と共にガイド部材13に沿って移動可能に設けられたスライダ15と、当該スライダ15とケース12との間に設けられるとともに、前記ケース12側に係脱可能に設けられてスライダ15のロック及びその解除を許容する板ばね17とを備えて構成されている。
【0020】
前記ケース12は前後方向に延びて手の平に握ることのできる細長い形状とされている。このケース12は、前後方向に延びる底壁20と、当該底壁20の短寸幅方向に連なる一対の側壁面21と、これら側壁面21の上部間に連なる頂壁22とを含む。ケース12の前端及び後端は開放形状とされ、前端にはキャップ23が、後端には尾栓25が着脱自在に取り付けられる。頂壁22には、図3及び図4(B)に示されるように、一方の側壁面21側に幾分シフトした位置に、前記内側空間Sに連なるスリット27が後端から前端部手前位置まで形成されている。また、キャップ23の前端面には、前記ガイド部材13の先端部領域を突出させるための縦穴28が形成されている。前記側壁面21及びキャップ23の側面間に跨る領域には、前後方向に延びる窓穴29が形成されており、当該窓穴29を通じて内部に位置するカッター刃14の残存長さを視認できるようになっている。
【0021】
図4に示されるように、前記底壁20の後端部上面側は一段低い後部底壁20Aとされており、当該後部底壁20Aの領域内における前記側壁面21の相対面には、前後方向に延びる溝部30が形成され、当該溝部30に前記尾栓25に形成された突部31が嵌合可能となっている。尾栓25は、後端が湾曲した閉塞面となっており、上端面は、前記頂壁22に形成されたスリット27に連なるスリット32が形成されている。
【0022】
前記カッター刃14は、先端及び後端が刃縁の延出方向に対して傾斜して平面視略平行四辺形の板状をなし、後部に円形穴14Aを備えた公知のカッター刃と同一の構造のものが用いられている。
【0023】
前記ガイド部材13は、図5に示されるように、前記ケース12の底壁20及び側壁面21に略平行に相対するベース面34、及び、当該ベース面34の短寸幅方向両側に連なって略鉛直上方に向けられるとともに、前記カッター刃14と略平行な面を形成する一対の側壁面35とを含む。側壁面35の前端側は、相互離間幅が次第に狭くなる傾斜面部35Aと、当該傾斜面部35Aの前端に連なってカッター刃14の通過を鉛直面内で略直線上に案内する隙間に設定された平行面部35Bとされ、当該平行面部35Bが前記ケース12の前壁23に形成された縦穴28を貫通して前方に突出するようになっている。
【0024】
前記一対の側壁面35における一方の側壁面35の上端部には、前後方向に沿って定ピッチで配置された切欠部37が形成され、更に前方位置には、後方上向きに突出する舌片部38が連設されている。この舌片部38は、ガイド部材13をケース12内の後端から挿入した際の挿入限を決定するようになっている。なお、側壁面35の前部領域には、前後方向に延びて前記ケース12の窓穴29にオーバーラップする内側窓穴39が形成されている。
【0025】
前記スライダ15は、前記カッター刃14を着脱可能に保持するように構成されている。このスライダ15は、図2に示されるように、カッター刃14の後部に形成された円形穴14A内に収まる突部41を備えたスライダ本体42と、当該スライダ本体42と相互に作用してカッター刃14の後端部を挟み込むように設けられた押さえ部材43と、前記スライダ本体42に対して前後方向に相対移動可能に組み合わされる操作部材44とを含む。
【0026】
前記スライダ本体42は、カッター刃14の面と略平行に位置して前後方向に延びる平面視略板状をなす外形に設けられている。このスライダ本体42は、図6ないし図8に示されるように、カッター刃14の後端部における一方の面に沿って位置するとともに前記突部41が一体に設けられた保持面部46と、この保持面部46の後部に連なって操作部材44の取り付け領域を形成する取付部47とからなる。保持面部46と取付部47との間における内面側には傾斜隆起部46Aが形成されており、この傾斜隆起部46Aの上部、すなわち、突部41の中心を通る仮想水平線よりも上部に、カッター刃14の後端縁に接するように設けられた当接部45が設けられている。この当接部45は、保持面部46の一部を略コ字状に切除した切欠部49を設けることによって構成され、当接部45の上端部は、図7(A)中手前側に突き出た頭部45Aを備えた形状に設けられている。この当接部45は、頭部45A側が前後方向に変位可能な略板ばね状に設けられている。
【0027】
スライダ本体42において、図7(A)中、前記突部41の中心を通る仮想鉛直線から当接部45の頭部45Aまでの距離L1は、カッター刃14を配置したときの穴14Aの中心を通る仮想鉛直線から後端縁14Bまでの距離L2(図6参照)よりも短くなるように設けられている。つまり、距離L2に関し、製造誤差であるばらつきがあることを見込んでおき、距離L2の範囲内に当接部45が位置するように設けられ、これにより、カッター刃14Aを保持面部46に保持させたときに、当接部45が後方に弾性変位し、カッター刃14Aに対し、後方から前方に向かう当接力を常に付与し得るようになっている。
この際、カッター刃14の後部上縁14Cは上部水平部46Bの下平面46B1に常に押し当たり、カッター刃14は安定して保持される。
なお、保持面部46の上下両側には上部水平部46B及び下部水平部46C、及び上部水平部46の後端に連なる後端46Dが形成され、傾斜隆起部46Aより後方位置の上下水平部46B、46Cには前記押さえ部材43を揺動自在に支持する軸受部48が形成されている。
【0028】
前記取付部47は、保持面部46の後部に連なる上面部49及び下面部50と、これら上面部49及び下面部50間の正面部51とを含む。上面部49には、その中央部の前後方向にばね装着部52が上向きに突設されているとともに後端部に立ち上がり部53が設けられている。この一方、正面部50の面内には、前後方向二箇所に前後方向に向けられたスロット穴55が設けられている。ばね装着部52は、図7(A)中手前側となる内側の面内中央部に凹陥部56が形成されているとともに、当該凹陥部56内に突起58が形成され、また、凹陥部56よりも右側(後方)位置には、前後方向に延びる爪片状の凸部59が形成されている。正面部51の図7(A)中手前側面の下部には板厚を部分的に薄くする湾曲凹部51Aが形成されている。
【0029】
前記押さえ部材43は、図2及び図9に示されるように、前記保持面部46及び取付部47に跨って位置する本体面63と、この本体面63の図9(A)中右側に細長く連なる押圧操作面64とを含む。本体面63の図9(A)中左端側は、スライダ本体42の突部41の略半分を受け入れる切欠部63Bが形成された押さえ面63Aとされ、本体面63の中央部には、図9(D)に示されるように、スライダ本体42に設けられた軸受部48に嵌合する上下一対の突軸65が設けられているとともに、その右側には、カッター刃14の後端傾斜縁に対応する隆起傾斜部66が形成されている。また、前記押圧操作面64は、本体面63の面に対して傾斜した方向に延びているとともに、先端(後端)に屈曲端部64Aを備えた形状とされている。屈曲端部64Aは、スライダ本体42の取付部47に当接し、押圧操作面64は、取付部47に設けられた湾曲凹部51Aに相対する位置で当該湾曲凹部51Aとの間に押圧代となる隙間を形成するようになっている。
前記押さえ部材43は、押圧操作面64の外面側を指先で押圧することにより、本体面63が突軸65の軸線を回転中心として揺動可能となっている。従って、本体面63の前端側すなわち切欠部63Aが形成されている押さえ面63A側がスライダ本体42の保持面部46に対して離間接近する方向に変位することで、カッター刃14の着脱が可能となる。
【0030】
前記操作部材44は、図10及び図11に示されるように、前記ケース12の頂壁22に沿って前後方向に延びる操作用平面72と、この操作用平面72の短寸幅方向一端側の上面に連設されるとともに、ケース12のスリット27を貫通する状態に位置する連結片73と、当該連結片73を介して略片持ち姿勢で連設された指当て部74と、前記操作用平面72の短寸幅方向他端側に連設されて前記スライダ本体42の取付部47に相対する相対面としての垂下面76と、この垂下面76の面内における前後二箇所に設けられるとともに、前記スライダ本体42のスロット穴55内に脱落不能に挿入される挿入片部77とを含む。前記垂下面76の後端は、図10(C)に示されるように、操作用平面72の後端よりも後方に位置する長さを有し、その後端に後端壁部78が設けられている。また、挿入片部77の前後方向長さは、スロット穴55の長さよりも小さい長さとされており、これにより、操作部材44がスライダ本体42に対して前後方向に沿って相対移動可能に組み合わせ可能となっている。ここで、挿入片部77の長さとスロット穴55の長さとの差は、操作部材44をスライダ本体42に組み合わせて操作部材44が初期位置に保たれたときの、当該操作部材44の先端とスライダ本体42の上部水平部46Bに連なる後端46Dとの間の距離に略等しくなっている。
前記垂下面76において、前記挿入片部77間の上方位置には、前後方向に延びるスロット部80が形成され、当該スロット部80にスライダ本体42の突部59が前後方向移動可能に嵌合可能となっている。また、このスロット部80よりも後方位置には受容部としての穴81が形成され、当該穴81に、板ばね17の後述する屈曲部が受容可能となっている。この穴81は、図11(B)に示されるように、内面側(同図中上面側)の開口幅が大きく外面側(同図中下面側)の開口幅が狭くなる状態で相対する一対の傾斜面81A、81Bに設けられている。また、垂下面76の前端部内面側には、前後方向に二箇所に設けられた前部突起82A及び後部突起82Bが形成されている。
【0031】
前記板ばね17は、図2及び図12に示されるように、前後方向に延びるばね本体83と、このばね本体83の前端側(図12(A)中左端側)に設けられた前部屈曲部85と、後端側に設けられた位置規制部としての屈曲部86と、ばね本体83の中央部に設けられた折り曲げ片部87とを含む。ばね本体83は、スライダ本体42に取り付けられたときに、略鉛直面内に位置するようになっている。このばね本体83は、折り曲げ片部87が設けられている位置よりも後方が、スライダ15を組み立てたときに、操作部材44の垂下面76側に向けられる方向に屈曲するシフト領域79とされている。
前部屈曲部85は、折り曲げ長さの長い中央屈曲部85Aと、その前後両側に位置する一対の補強屈曲部85Bとを含む。また、位置規制部として作用する屈曲部86は、平面視で略L字状に折り曲げて形成され、屈曲部86の中央部となる屈曲縁86Aが前記垂下面76に形成された穴81側に位置するように形成されている。ここにおいて、屈曲部86と、前記穴81とにより、操作部材44の初期位置保持機構が構成される。
また、前記折り曲げ片部87は、図12(C)に示されるように、平面部87Aと、当該平面部87Aの先端から下方に向けられた側面部87Bとからなり、側面部87Bの面内には、角穴87Cが形成されている。この折り曲げ片部87は、スライダ本体42におけるばね装着部52の上面側を回り込むように配置され、前記角穴87C内にスライダ本体42の突起58が嵌合可能となっている。
【0032】
なお、本実施形態におけるカッターナイフ10は、カッター刃14Aを保持する部位若しくは領域を除く他の構成部品が、既提案の特願2010−215357号と実質的に同様の構成となっている。
【0033】
次に本実施形態におけるカッター刃の保持要領について説明する。ここで、カッターナイフ10の組み立て方法と使用方法は、前記特願2010−215357号(先願)と同一であるので説明を省略する。
【0034】
カッター刃14を保持する場合には、図13〜図15からも理解できるように、スライダ本体42に押さえ部材43、板ばね17及び操作部材44を組み合わせてスライダ15を完成させておき、この状態で、押さえ部材43の押圧操作面64を押圧して当該押さえ部材43とスライダ本体42との間にカッター刃14を挟み込んで保持させることとなる。すなわち、押圧操作面64を押圧することで保持面部46に対して押さえ面63Aを離間させて隙間を形成し、その隙間にカッター刃14の後部領域を差し込む。そして、カッター刃14の穴14A内に突部41を位置させる。このとき、カッター刃14の後端縁14Bが当接部45に突き当たり、当該当接部45を後方に弾性変位させ、これにより、カッター刃14は後端縁14Bから前向きの弾発力が付与された状態でスライダ本体42と押さえ部材43との間に挟持されることとなる。
【0035】
スライダ15にカッター刃14を保持させた状態のユニットは、カッター刃14の先端側を差し込み方向先端側として、前記ケース12内に挿入される。この際、操作部材44を片持ち姿勢で支持する連結片73は、ケース本体12のスリット27を上下に貫通する状態で位置し、頂壁22上に指当て部74が位置することとなる。そして、ケース12の後端部に尾栓25を差し込んで嵌合させ、これにより、カッターナイフ10の組み立てを完了することができる。
【0036】
カッター刃14をケース12の前端から突出させる動作及びケース内に収める動作は先願と同一であるので省略する。
【0037】
従って、このような実施形態によれば、カッター刃14の後部側に寸法的な製造誤差があっても、カッター刃14の後端縁14Bに当接部45が常に突き当たる結果、突部41を中心としたカッター刃14の回転移動が規制されるので、カッター刃14をケース12前端から突出させるべくスライダ15を前方に移動させたときに、ケース前方の段差部分Kにカッター刃14がぶつかってしまうような不都合は生じない。従って、例えば、ケース12の上下を反転させてカッター刃14を前端から突出させる作業に際しても、カッター刃14をスムースに出すことが可能となる。
【0038】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 カッターナイフ
12 ケース
14 カッター刃
14A 穴
14B 後端縁
14A 穴
14B 後端縁
15 スライダ
41 突部
42 スライダ本体
45 当接部
46 保持面部
49 切欠部
S 内側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる内側空間を備えたケースと、このケース内に収容されるとともに当該ケースの前端で出没可能に設けられたカッター刃と、このカッター刃を保持してケース内で前後方向に移動可能に設けられたスライダとを備えたカッターナイフにおいて、
前記スライダは、前記カッター刃の後部側を保持する保持面部と、カッター刃の後部面内に形成された穴内に受容される突部と、カッター刃の後端縁に相対する当接部とを備えて構成され、
前記突部を穴内に位置させてカッター刃の後部側を保持面部に保持させたときに、前記当接部がカッター刃の後端縁によって後方に変位するように設けられていることを特徴とするカッターナイフ。
【請求項2】
前記当接部は、前記保持面部の一部に切欠部を形成することにより略板ばね状に設けられていることを特徴とする請求項1記載のカッターナイフ。
【請求項3】
前記突部の中心を通る仮想鉛直線と当接部との距離は、前記穴の中心を通る仮想鉛直線と前記カッター刃の後端縁との距離よりも短く設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のカッターナイフ。
【請求項4】
前記カッター刃をスライダに保持させたときに、前記当接部が後方に弾性変位することを特徴とする請求項1、2又は3記載のカッターナイフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−228330(P2012−228330A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97778(P2011−97778)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】