説明

カッター付きプリンタ

【課題】簡便な構成で、プラテンローラのセット状態の把握、及び可動刃の初期位置検出を行うことができ、設計の自由度を高めながら低コスト化を図ること。
【解決手段】プラテンローラ10を具備するプラテンユニット2と、発熱素子12aを有するサーマルヘッド12を具備し、プラテンユニットに対して相対的に分離可能に組み合わされるヘッドユニット3と、両ユニットとのうちの一方のユニットに設けられ、固定刃13との間で記録紙を切断する可動刃11と、を備え、一方のユニットには、可動刃のスライド移動に連動してスライド移動すると共に、両ユニットの組み合わせ時に、他方のユニットにおける所定位置に位置合わせされるスライド片26が設けられ、他方のユニットの所定位置には、検出光を利用してスライド片を検出し、可動刃が初期位置に位置していることを検出する検出センサ60が設けられているカッター付きプリンタ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙を切断するカッター機構を具備するカッター付きプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱を加えると発色する記録紙(感熱紙)にサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタは、現在様々な種類のものが数多く提供されている。特に、トナーやインク等を使用せずに滑らかな文字の印刷や多彩なグラフィック印字ができるため、レシートやチケットの印刷に好適に使用されている。
上記サーマルプリンタに代表されるように、印刷された記録紙を切断するカッター機構を備えたカッター付きプリンタは数多く知られており、例えば、キャッシュレジスターや携帯端末装置等に組み込まれて使用されている。
【0003】
ところで、カッター付きプリンタにおいては、サーマルヘッドが設けられたヘッドユニットと、プラテンローラが設けられたプラテンユニットと、が互いに分離可能に組み合わされる分離タイプのものが知られている。
このような場合、通常、紙ジャム等を防止するため、プラテンローラが正常な位置にセットされたか否かを例えばメカニカルスイッチ等のセンサで検出し、該正常な位置検出がなされたときだけプラテンローラを作動させるような構成とされている。
【0004】
また、サーマルヘッド及びプラテンローラを具備する本体ユニットに対して、カッター機構を具備するカッターユニットを分離可能に組み合わせるタイプのものも知られている。この場合であっても、紙ジャム等を防止するため、カッターユニットが本体ユニットに対して正常にセットされたか否かをセンサで検出し、正常にセットされたことが検出されたときだけプラテンローラを作動させるような構成とされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−290778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カッター付きプリンタにおいては、通常、安全性の観点等から可動刃の位置を検出するセンサが設けられている。そのため、可動刃の初期位置(ホームポジション)を検出するセンサと、プラテンローラのセット状態を検出するための上記センサと、をそれぞれ別個に設ける必要があった。
従って、複数のセンサを備える必要があり、部品点数の増加、取付スペースの余分な確保や、回路基板におけるコネクタ数の増加等を招いてしまい、設計の自由度が低下するうえ、コストUPとなり易かった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、簡便な構成で、プラテンローラのセット状態の把握、及び可動刃の初期位置検出を行うことができ、設計の自由度を高めながら低コスト化を図ることができるカッター付きプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るカッター付きプリンタは、記録紙を紙送りするプラテンローラを具備するプラテンユニットと、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドを具備し、前記プラテンユニットに対して相対的に分離可能に組み合わされるヘッドユニットと、前記プラテンユニットと前記ヘッドユニットとのうちの一方のユニットに設けられ、固定刃に対して接近離間自在にスライド移動可能とされ、該固定刃との間で前記記録紙を切断する可動刃と、を備え、前記一方のユニットには、前記可動刃のスライド移動に連動してスライド移動すると共に、前記プラテンユニット及び前記ヘッドユニットの組み合わせ時に、他方のユニットにおける所定位置に位置合わせされるスライド片が設けられ、前記他方のユニットの前記所定位置には、検出光を利用して前記スライド片を検出し、前記可動刃が初期位置に位置していることを検出する検出センサが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るカッター付きプリンタによれば、プラテンユニットとヘッドユニットとを互いに組み合わせた後、プラテンローラを回転させることでサーマルヘッドとの間で記録紙を挟み込みながら紙送りさせることができる。そして、この紙送りと同時に、サーマルヘッドの発熱素子を適宜発熱させることで、紙送りされている記録紙に対して印字を行うことができる。そして、この印字を行った後、可動刃をスライド移動させることで記録紙を固定刃との間で切断でき、レシートやチケット等として使用することができる。
【0010】
ところで、両ユニットのうちの一方のユニットには、可動刃、及び該可動刃に連動してスライド移動するスライド片が設けられており、両ユニットが組み合わされた際に、スライド片が他方のユニットにおける所定位置に対して位置合わせされる。そして、この他方のユニットの所定位置には、検出センサが設けられている。
そのため、両ユニットが確実に組み合わされる場合には、検出センサが検出光を利用してスライド片を検出する。これにより、プラテンローラが確実にセットされ、該プラテンローラに対してサーマルヘッドが押し付けられた印刷可能状態になったことを把握することができる。また、これと同時に、検出センサはスライド片を検出することで可動刃が初期位置(ホームポジション)に位置していることを検出する。
【0011】
このように、1つの検出センサを利用するだけの簡便な構成で、プラテンローラのセット状態の把握と可動刃の初期位置検出とを同時に行うことができる。従って、検出センサに関連する部品点数を削減でき低コスト化を図り易い。また、部品点数を削減できる分、検出センサの取付スペースを確保し易くなるので、設計の自由度を高め易い。
【0012】
(2)上記本発明に係るカッター付きプリンタにおいて、前記スライド片には、前記可動刃のスライド移動に伴って前記検出光を通過させるスリットが少なくとも1つ形成され、前記検出センサは、前記スリットによる前記検出光の受光変化に基づいて、前記可動刃のスライド位置を把握することが好ましい。
【0013】
この場合には、可動刃の初期位置検出だけでなく、可動中における可動刃のスライド位置を把握することができる。これにより、可動刃が正しく可動しているか否かを把握でき、作動信頼性を高めることができる。
特に、可動刃のスライド位置を把握できるので、例えば可動刃の噛み込みが発生した場合において、可動刃が固定刃側にどの程度飛び出して噛み込んでいるか等を推測できる。そのため、両ユニットを分離できるか否か、或いは、メンテナンスが必要であるか否かを判断し易く、使い易く利便性に優れたプリンタとすることができる。
【0014】
(3)上記本発明に係るカッター付きプリンタにおいて、前記可動刃及び前記スライド片は、前記プラテンユニットに設けられ、前記検出センサは、前記ヘッドユニットに設けられていることが好ましい。
【0015】
この場合には、可動刃及びスライド片がプラテンローラと同じユニットに設けられているので、スライド片とプラテンローラとの相対的な位置関係に誤差が生じ難い。そのため、検出センサによるスライド片の検出によって、プラテンローラがより確実にセットされていることを把握できる。
【0016】
(4)上記本発明に係るカッター付きプリンタにおいて、前記スライド片は、前記可動刃を支持すると共に該可動刃をスライド移動させる可動刃フレームに設けられていることが好ましい。
【0017】
この場合には、スライド片が可動刃フレームに設けられているので、スライド片と可動刃との相対的な位置関係に誤差が生じ難い。そのため、検出センサによるスライド片の検出によって、可動刃の初期位置検出をより高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るカッター付きプリンタによれば、簡便な構成で、プラテンローラのセット状態の把握、及び可動刃の初期位置検出を行うことができ、設計の自由度を高めながら低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施形態を説明するための図であり、ケーシング内にサーマルプリンタが組み込まれた状態の全体断面図である。
【図2】図1に示す状態から蓋体を閉じた状態を示す断面図である。
【図3】図1に示すサーマルプリンタの外観斜視図であって、ヘッドユニットとプラテンユニットとが分離している状態を示す図である。
【図4】図3に示す状態において視点を変えた斜視図である。
【図5】図3に示す状態から、ヘッドユニットとプラテンユニットとを組み合わせた状態を示す図である。
【図6】プラテンユニット側のスライド片とヘッドユニット側の検出センサとの関係を示した斜視図である。
【図7】ヘッドユニットとプラテンユニットとの組み合わせに伴う、スライド片と検出センサとの関係を示す図である。
【図8】可動刃と固定刃とにより記録紙を切断している状態を示す斜視図である。
【図9】可動刃のスライド移動に伴う、スライド片と検出センサとの関係を示す図である。
【図10】スライド片に形成されたスリットの変形例を示す図である。
【図11】スライド片に形成されたスリットの別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、カッター付きプリンタの一例として、プラテンローラと可動刃とが同じユニットに設けられ、サーマルヘッドと固定刃とが同じユニットに設けられたサーマルプリンタを例に挙げて説明する。
【0021】
(サーマルプリンタの構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ1は、互いに分離可能に組み合わされるプラテンユニット2及びヘッドユニット3を備え、記録紙Pが巻回されたロール紙Rを収容するいわゆるクラムシェル型のケーシング4内に組み込まれている。
【0022】
ケーシング4は、上記ロール紙Rを投入する投入口5aが上面に形成され、該ロール紙Rを載置するための円弧状のロール紙収納部5bが形成されたケーシング本体5と、このケーシング本体5に対してヒンジ部7を介して開閉可能に連結された蓋体6と、を備えている。
これらケーシング本体5と蓋体6の先端部との間には、紙送りされた記録紙Pを外部に排出させる排出口8が形成されている。
【0023】
上記プラテンユニット2は、ロール紙Rから引き出された記録紙Pをケーシング4外に紙送りするプラテンローラ10と、可動刃11と、を主に具備しており、蓋体6の先端側の内面に設けられている。このため、プラテンユニット2は、蓋体6の開閉動作に伴って移動することで、ヘッドユニット3に対して分離可能に組み合わせ可能とされている。
【0024】
上記ヘッドユニット3は、プラテンローラ10に対して適度な押圧力で押し付けられるサーマルヘッド12と、固定刃13と、を主に具備しており、ケーシング本体5に配置されている。具体的には、ロール紙収納部5bに隣接して一体的に形成された内部プレート5c上に固定されている。
【0025】
なお、蓋体6が閉まることでプラテンユニット2とヘッドユニット3とが組み合わされたときに、図2に示すように、プラテンローラ10に対してサーマルヘッド12が押し付けられると共に、固定刃13に対して可動刃11が重なり合う。なお、可動刃11と固定刃13とでカッター機構14を構成している。
【0026】
以下、サーマルプリンタ1の構成を詳細に説明する。
(プラテンユニット)
図3〜図5に示すように、プラテンユニット2は、プラテンローラ10、可動刃11、及び可動刃11を支持すると共に該可動刃11を固定刃13に対して接近離間自在にスライド移動させる可動刃フレーム20を備えている。
【0027】
プラテンローラ10は、記録紙Pの紙幅方向に沿って延在し、図示しないプラテンフレームに回転可能に支持されたプラテン軸部30と、ゴム等の弾性材料で形成され、プラテン軸部30に外装されたローラ部31と、プラテン軸部30の両端部にそれぞれ被せられた円筒状の軸受32と、該軸受32を挟んでプラテン軸部30の一端部に固定されたプラテン用歯車33と、を備えている。
【0028】
上記プラテン用歯車33は、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが組み合わされた際、ヘッドユニット3側の後述するプラテン駆動用歯車49に噛合して、回転力が伝達される歯車とされている。これにより、プラテンローラ10の全体が回転し、サーマルヘッド12との間で記録紙Pを挟み込みながら紙送りすることが可能とされている。
【0029】
一方、プラテン軸部30の他端部側に被せられた軸受32には可動刃駆動用歯車35が固定されている。そのため、この可動刃駆動用歯車35は、プラテンローラ10の回転に伴って共回りすることがなく、また自身の回転がプラテンローラ10の回転に影響を与えることがない歯車とされている。
【0030】
可動刃11は、根元側から刃先11aまでの長さが幅方向両端から幅方向中央部に向かって漸次短くなるように形成された平面視V字型の板状の刃とされている。そして、この可動刃11は、根元側が幅方向の全長に亘って上記可動刃フレーム20上に固定されている。
【0031】
可動刃フレーム20は、可動刃11の幅方向に沿って延在し、該可動刃11の根元側を支持する支持フレーム21と、該支持フレーム21の両端部に連設され、可動刃11の幅方向両側において該可動刃11の刃先11a方向に延在したサイドフレーム22、23と、で平面視コの字状に形成された板状のフレームとされている。この際、サイドフレーム22、23は、上記したプラテン用歯車33及び可動刃駆動用歯車35の上方に位置する程度延在している。
【0032】
ところで、上記サイドフレーム22、23のうち可動刃駆動用歯車35の上方に位置する一方のサイドフレーム22は、プラテン用歯車33の上方に位置する他方のサイドフレーム23よりも可動刃11の刃先11a方向に向けて突出している。そして、この一方のサイドフレーム22の下面には、該可動刃駆動用歯車35に噛合するラック25が一体的に形成されている。
これにより、可動刃フレーム20は、可動刃駆動用歯車35の正逆回転に伴って往復移動させられる。それによって、可動刃11を固定刃13に対して接近離間する方向にスライド移動させることが可能とされている。
【0033】
また、上記サイドフレーム22の下面には、上記ラック25に隣接してスライド片26が一体的に形成されている。このスライド片26は、ラック25と同程度の高さまで下方に突出した板片であり、サイドフレーム22の先端部まで延在している。なお、このスライド片26は、サイドフレーム22に設けられているので、可動刃11のスライド移動に連動してスライド移動する部材とされている。
また、このスライド片26は、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わされた際に、ヘッドユニット3を構成する後述するユニットフレーム40の天板部(所定位置)40aの上方に必ず位置合わせがなされる。
【0034】
(ヘッドユニット)
次に、ヘッドユニット3について説明する。
ヘッドユニット3は、図3〜図5に示すように、サーマルヘッド12、固定刃13、及びこれらを支持するユニットフレーム40で主に構成されている。
ユニットフレーム40は、金属や樹脂等によって概略箱状に形成されたフレームであって、その天板部40aに固定刃13が設けられている。
【0035】
固定刃13は、記録紙Pの紙幅方向に延びた板状の刃であり、可動刃11と協働して記録紙Pを切断するカッター機構14を構成する。そして、この固定刃13は、根元側を中心として刃先13aが上下(可動刃11のスライド方向に略直交する方向)に揺動可能とされた状態で、ユニットフレーム40の天板部40aに保持されている。この際、固定刃13は、ユニットフレーム40の天板部40aに固定されたコイルバネ41によって刃先13aが上方に持ち上がるように付勢されている。
これにより、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わされた際に、固定刃13の刃先13aと可動刃11の刃先11aとが適度な接触圧で重なるように構成されている。
【0036】
サーマルヘッド12は、記録紙Pの紙幅方向に沿ってライン状に並んだ複数の発熱素子12aを有するラインサーマルヘッドであって、ユニットフレーム40の内部に設けられた内壁部に固定され、プラテンローラ10に対して対向配置されている。なお、サーマルヘッド12は図示しないコイルバネ等によってプラテンローラ10側に付勢されている。これにより、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わされた際に、プラテンローラ10との間で記録紙Pを確実に挟み込み、該記録紙Pに対してサーマルヘッド12を押し付けることが可能とされている。
【0037】
また、ユニットフレーム40の内壁部には、サーマルヘッド12の下方に位置する部分に、記録紙Pを滑らかに引き込めるように湾曲形成されたガイド台40bが設けられている。そして、ユニットフレーム40におけるガイド台40b及びサーマルヘッド12の左右両側に位置する側壁部には、プラテン軸部30の両端部に被せられた軸受32がそれぞれ嵌合される嵌合孔40cが形成されている。
これにより、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わされた際に、プラテンローラ10とサーマルヘッド12とが互いに位置ずれすることなく組み合わされ、両者の間に記録紙Pが確実に挟み込まれる。
【0038】
また、ユニットフレーム40の一方の側壁部には、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わされた際に、プラテンユニット2の可動刃駆動用歯車35に噛合する3番歯車45が軸支されていると共に、この噛合する2番歯車46が軸支されている。なお、この2番歯車46は、ユニットフレーム40内に配設された可動刃駆動用モータ47の出力軸に固定されたピニオンギア48に対しても噛合している。
【0039】
これにより、可動刃駆動用モータ47を適宜正逆回転させることで、その回転力を2番歯車46、3番歯車45及び可動刃駆動用歯車35からなる輪列を介してラック25に伝えることができ、該ラック25を介して可動刃11をスライド移動させることが可能とされている。
なお、上記した可動刃駆動用歯車35、3番歯車45、2番歯車46及びピニオンギア48は、一方の側壁部に被せられた図示しないカバーによって保護されている。
【0040】
また、ユニットフレーム40の他方の側壁部には、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わされた際に、プラテンユニット2のプラテン用歯車33に噛合するプラテン駆動用歯車49が軸支されている。このプラテン駆動用歯車49は、図示しないプラテン用輪列機構を介してユニットフレーム40内に配設されたプラテン駆動用モータ50からの回転力が伝達される歯車とされている。
これにより、プラテン駆動用モータ50を適宜回転させることで、その回転力をプラテン用輪列機構、及びプラテン駆動用歯車49を介してプラテン用歯車33に伝えることができ、プラテンローラ10を回転させることが可能とされている。
なお、上記したプラテン駆動用歯車49、及びプラテン用輪列機構は、他方の側壁部に被せられたカバー51によって保護されている。
【0041】
ところで、ユニットフレーム40の天板部40a上には、図3〜図6に示すように、検出光Lを利用してプラテンユニット2のスライド片26を検出する検出センサ60が設けられている。
この検出センサ60は、図6に示すように、上記検出光Lを照射する検出部61が組み込まれた検出壁部60aと、検出光Lを受光する受光部62が組み込まれた受光壁部60bと、が間隔を開けて向かい合った側面視コの字状の透過型センサとされている。そして、図5に示すように、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わさった際、検出壁部60aと受光壁部60bとの間にスライド片26が位置するようにスライド片26と検出センサ60との位置関係が対応付けられている。
【0042】
これにより、図7に示すように、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに組み合わさった場合には、スライド片26が上記検出光Lを途中で遮断することになり、これによって検出センサ60がスライド片26の検出を行うことが可能とされている。
つまり、逆に言い換えると、検出センサ60がスライド片26を検出することで、プラテンユニット2とヘッドユニット3とが互いに確実に組み合わさったことを検出することが可能とされている。しかも、可動刃11が、初期位置(ホームポジション)に位置していることも同時に検出することが可能とされている。
【0043】
更に、上記スライド片26には、可動刃11のスライド移動に伴って上記検出光Lを通過させるスリット26aが形成されている。これにより、検出センサ60は、スリット26aによる検出光Lの受光変化に基づいて、可動刃11のスライド位置を把握することが可能とされている。
【0044】
(サーマルプリンタの作用)
次に、上記のように構成されたサーマルプリンタ1の作動について説明する。
図2に示すように、ロール紙Rを投入口5aからケーシング4内に投入した後、蓋体6を閉じると、プラテンローラ10の軸受32がヘッドユニット3側の嵌合孔40cに嵌り込んで嵌合される。これにより、プラテンユニット2がヘッドユニット3に装着されて、両ユニット2、3が組み合わさった状態となる。
これにより、可動刃11が固定刃13に対して適度な接触圧で重なると共に、記録紙Pがプラテンローラ10とサーマルヘッド12との間に挟まれた状態となる。また、この記録紙Pは、可動刃11と固定刃13との間を通過した後、排出口8からケーシング4の外側に引き出された状態となる。
【0045】
上記したように、蓋体6を閉めて両ユニット2、3を組み合わせた後、プラテン駆動用モータ50を駆動させて、その回転力をプラテンユニット2のプラテン用歯車33に伝達させる。これにより、プラテンローラ10を回転させることができ、サーマルヘッド12との間で記録紙Pを挟み込みながら紙送りさせることができる。また、この紙送りと同時に、サーマルヘッド12の発熱素子12aを適宜発熱させることで、紙送りされる記録紙Pに対して各種の文字や図形等を明瞭に印字することができる。
【0046】
上記したように、印字された記録紙Pは固定刃13と可動刃11との間を通過する。そして、記録紙Pが所定の長さ通過した後、可動刃駆動用モータ47を駆動させて、その回転力をプラテンユニット2のラック25に伝達させる。これにより、可動刃フレーム20と共に可動刃11を固定刃13に向けてスライドさせることができ、図8に示すように、固定刃13と可動刃11との間で記録紙Pを切断できる。その結果、切断した記録紙Pを、レシートやチケット等として使用することができる。
【0047】
ところで、蓋体6を閉めて両ユニット2、3を組み合わせた際、図5及び図7に示すように、プラテンユニット2のスライド片26がヘッドユニット3側の検出センサ60における検出壁部60aと受光壁部60bとの間に位置し、検出光Lを途中で遮断する。
これにより、検出センサ60はスライド片26を検出することができ、この検出によって両ユニット2、3がガタツキ少なく確実に組み合わされたことを把握できる。つまり、プラテンローラ10が確実にセットされ、プラテンローラ10に対してサーマルヘッド12が押し付けられた印刷可能状態に移行したことを正確に把握することができる。従って、紙ジャム等の発生を抑制した状態で印刷を開始することができる。
【0048】
また、これと同時に、検出センサ60はスライド片26を検出することで、可動刃11がホームポジションに位置していることを検出する。従って、カッター機構14により記録紙Pの切断を安全且つ確実に行うことができる。
【0049】
特に、1つの検出センサ60を利用するだけの簡便な構成で、プラテンローラ10のセット状態の把握と、可動刃11の初期位置検出と、を行うことができる。従って、検出センサ60に関連する部品点数を削減でき、低コスト化を図り易い。また、部品点数を削減できる分、検出センサ60の取付スペースを確保し易くなるので、設計の自由度を高め易い。
【0050】
更に、本実施形態によれば、スライド片26にスリット26aが形成されているので、可動刃11の初期位置検出だけでなく、可動中における可動刃11のスライド位置を把握できる。
この点、詳細に説明する。
両ユニット2、3を組み合わせた後、可動刃11を固定刃13に向けてスライド移動させると、可動刃フレーム20に設けられているスライド片26が可動刃11に連動してスライド移動する。そのため、図9(a)に示すように、スリット26aが検出センサ60に移動し、検出光Lを受光壁部60b側に通過させる。そして、図8に示すように、可動刃11のさらなるスライド移動によって可動刃11が固定刃13側に完全に移動して記録紙Pを切断する段階では、図9(b)に示すように、スリット26aが検出センサ60を通過するので、検出光Lが再度遮断される。
【0051】
そして、記録紙Pの切断後、可動刃11は固定刃13から離間するように逆方向にスライド移動するので、図9(c)に示すように、再びスリット26aが検出センサ60に移動し、検出光Lを受光壁部60b側に通過させる。そして、可動刃11がスライド移動によってホームポジションに復帰すると、図9(d)に示すようにスリット26aが検出センサ60を通過するので、検出光Lが再度遮断される。
【0052】
このように、可動刃11のスライド移動に伴って検出光Lの受光状態が変化し、検出信号に変化が生じる。従って、この検出信号の変化を予め記憶させておくこと等により、可動刃11が正しく可動しているか否かを把握でき、作動信頼性を格段に高めることができる。
【0053】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態において、図10に示すようにスリット26aをラック25側に向けて、長尺に形成しても構わない。具体的には、可動刃11がスライド移動してホームポジションから外れている間、検出光Lを受光壁部60b側に通過させるスリット長さとする。
【0055】
この場合には、可動刃11がスライド移動によってホームポジションから移動し、切断終了後、再度ホームポジションに復帰するまでの間、検出光Lが検出され続ける。従って、この場合であっても、これに応じた受光信号の変化を予め記憶させておく等により、可動刃11が初期位置状態にあることを検出できることに加え、可動刃11が可動中であることも検出することができる。特に、この場合には、検出信号の変化が少ないので、検出制御を簡便に行える。
なお、検出光Lが検出されている時間が一定時間以上である場合には、蓋体6がオープンして、両ユニット2、3が分離したと判断するようにプログラムしても構わない。
【0056】
更には、図11に示すように、スリット26aを複数(図示の例では2つ)形成しても構わない。こうすることで、検出センサ60をスリット26aが何回通過したかを検出することで、可動中の可動刃11のスライド位置をより正確に把握することが可能である。従って、例えば可動刃11の噛み込み(カッタージャム)が発生した場合において、可動刃11が固定刃13側にどの程度飛び出して噛み込んでいるか等を把握できる。そのため、両ユニット2、3を分離できるか否か、或いは、メンテナンスが必要あるか否かを判断し易く、使い易い利便性に優れたプリンタとすることができる。
なお、スリット26aを複数設けるほど、可動刃11のスライド位置をより細かく正確に把握し易い。
【0057】
また、上記実施形態では、ロール紙Rを投入してロール紙収納部5b上に置くドロップイン方式のサーマルプリンタ1としたが、この方式ではなく、ケーシング4の内部にロール紙Rを軸支(回転可能に支持)する軸支機構を設けた軸支式のサーマルプリンタとしても構わない。
【0058】
また、上記実施形態では、プラテンユニット2を蓋体6側に設け、ヘッドユニット3をケーシング本体5側に設けた構成としたが、これとは逆にプラテンユニット2をケーシング本体5側に設け、ヘッドユニット3を蓋体6側に設けても構わない。
【0059】
更に、可動刃11、及びスライド片26が設けられた可動刃フレーム20をプラテンローラ10と同じプラテンユニット2に設け、固定刃13をサーマルヘッド12と同じヘッドユニット3に設けたが、可動刃11、及びスライド片26が設けられた可動刃フレーム20をサーマルヘッド12と同じヘッドユニット3に設け、固定刃13をプラテンローラ10と同じプラテンユニット2に設けても構わない。
この場合には、検出センサ60をプラテンユニット2側に設ければ良い。つまり、プラテンユニット2とヘッドユニット3とのうちの一方のユニットに、可動刃11及びスライド片26が設けられた可動刃フレーム20を具備させ、他方のユニットに検出センサ60を設けても構わない。
【0060】
このように構成した場合であっても、同様の作用効果を奏効することができる。但し、可動刃11及びスライド片26が設けられた可動刃フレーム20をプラテンユニット2に設けることで、スライド片26とプラテンローラ10との相対的な位置関係に誤差が生じ難い。そのため、検出センサ60によるスライド片26の検出によって、プラテンローラ10がより確実にセットされていることを把握できるので、より好ましい。
【0061】
また、上記実施形態では、スライド片26を可動刃フレーム20に一体的に設けた構成としたが、この場合に限られるものではなく、可動刃11のスライド移動に連動してスライド可能とされていれば構わない。但し、スライド片26を可動刃フレーム20に一体的に形成することで、スライド片26と可動刃11との相対的な位置関係に誤差が生じ難い。そのため、検出センサ60によるスライド片26の検出によって、可動刃11の初期位置検出をより高精度に行うことができるので、より好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、検出センサ60を透過型センサとしたが、スライド片26で反射した検出光Lを受光する反射型センサとしても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏効することができる。
【符号の説明】
【0063】
P…記録紙
1…サーマルプリンタ(カッター付きプリンタ)
2…プラテンユニット
3…ヘッドユニット
10…プラテンローラ
11…可動刃
12…サーマルヘッド
12a…発熱素子
13…固定刃
20…可動刃フレーム
26…スライド片
26a…スリット
60…検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を紙送りするプラテンローラを具備するプラテンユニットと、
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドを具備し、前記プラテンユニットに対して相対的に分離可能に組み合わされるヘッドユニットと、
前記プラテンユニットと前記ヘッドユニットとのうちの一方のユニットに設けられ、固定刃に対して接近離間自在にスライド移動可能とされ、該固定刃との間で前記記録紙を切断する可動刃と、を備え、
前記一方のユニットには、前記可動刃のスライド移動に連動してスライド移動すると共に、前記プラテンユニット及び前記ヘッドユニットの組み合わせ時に、他方のユニットにおける所定位置に位置合わせされるスライド片が設けられ、
前記他方のユニットの前記所定位置には、検出光を利用して前記スライド片を検出し、前記可動刃が初期位置に位置していることを検出する検出センサが設けられていることを特徴とするカッター付きプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のカッター付きプリンタにおいて、
前記スライド片には、前記可動刃のスライド移動に伴って前記検出光を通過させるスリットが少なくとも1つ形成され、
前記検出センサは、前記スリットによる前記検出光の受光変化に基づいて、前記可動刃のスライド位置を把握することを特徴とするカッター付きプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカッター付きプリンタにおいて、
前記可動刃及び前記スライド片は、前記プラテンユニットに設けられ、
前記検出センサは、前記ヘッドユニットに設けられていることを特徴とするカッター付きプリンタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のカッター付きプリンタにおいて、
前記スライド片は、前記可動刃を支持すると共に該可動刃をスライド移動させる可動刃フレームに設けられていることを特徴とするカッター付きプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−95045(P2013−95045A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239414(P2011−239414)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】