説明

カッティング装置

【課題】カッティング刃が切断不能の状態であるか否かを、操作者の目視による確認作業等により行う必要がなく、これを自動的に検出することができるカッティングプロッタを提供する。
【解決手段】本発明のカッティング装置においては、カッティング刃によりシート状媒体の一部を切断し、この切断した部分がシート状媒体から完全に切離されたか否かを検出する検出手段を設け、その出力よりカッティング刃交換の要否を判断するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカッティングフィルム等のシート状媒体とカッティング刃とを相対的に移動させることにより、これを所望の形状に切断するカッティング装置に関するものであり、更に詳しくは、摩耗,消耗によりカッティング刃が切断不能となったことを検出するカッティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状媒体を所望の形状で切断するこの種のカッティング装置であるカッティングプロッタとしては、シート状媒体の両端部分を駆動ローラと従動ローラ(ピンチローラ)とで挟持して、駆動ローラを正逆回転させることによりシート状媒体を第1の方向(X軸方向)に移動させるとともに、この第1の方向と直交する第2の方向(Y軸方向)に移動可能に設けられるキャリッジと、このキャリッジに設けられたシート状媒体に対して圧接離反するカッティングペンを移動させることにより、カッティングペンをシート状媒体に対して2次元方向に移動させるとともに選択的に圧接離反させて、所望の形状に切断する被切断媒体駆動型のカッティングプロッタや、平板状のテーブル上にシート状媒体を載置し、この載置テーブルに対して第1の方向に移動可能に設けられるYバーと、このYバーに摺動することにより第1の方向と直交する第2の方向に移動可能に設けられるキャリッジと、このキャリッジに載置テーブル上のシート状媒体に圧接離反するよう設けられたカッティングペンとを設け、Yバーおよびキャリッジを移動制御するとともにカッティングペンをシート状媒体に対して選択的に圧接離反させることにより、これを所望の形状に切断する所謂フラットベッド型のカッティングプロッタが知られている。
【特許文献1】特開平05−154790号公報
【特許文献2】特開平05−253892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のカッティングプロッタにおいては、切断動作に伴ってカッティング刃が摩耗,消耗することとなり、切断不能となるかまたはそれ以前に交換する必要が生じるが、従来はこのカッティング刃の消耗の具合ならびに交換時期の判断については、実際にシート状媒体を切断したその結果を見て操作者自らが確認しなければならなかった。すなわち、上述の特許文献1に開示されるような、実際に切断を行う前段階において切断条件確認のために「ためし切り」を行い、シート状媒体に切断図形を作成して各種切断条件の良否を検査するとともにカッティング刃の状態を確認し、交換の要,不要の判断を操作者の目視により行っていた。したがって、例えば切断形状が複雑でかつ切断動作に長時間を要するといった場合において、その切断動作中にカッティング刃が消耗して切断不能となると、シート状媒体は切断動作途中から切断されなくなって未完成となり、このシート状媒体を無駄にしてしまうとともに、操作者はカッティング刃を交換して切断動作を最初から行わなければならなくなるといった不具合を生じていた。このように、従来は操作者が常にカッティング刃の状態を把握しておく必要があり、これが切断作業の負担となっていた。
本願発明は、これら不具合を解消するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のカッティング装置においては、カッティング刃によりシート状媒体の一部を切断し、この切断した部分がシート状媒体から完全に切離されたか否かを検出する検出手段を設け、その出力よりカッティング刃交換の要否を判断するよう構成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明のカッティングプロッタによれば、カッティング刃が切断不能の状態であるか否かを、操作者の手を煩わせることなく自動で検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
切断動作の前段階において、カッティング刃によりシート状媒体の一部を切断し、検出手段により切断された部分がシート状媒体より完全に切離されたか否かを検出し、完全に切離されていないことを検出した場合はカッティング刃が切断不能の状態であると判断し、カッティング装置を待機状態とするとともに、カッティング刃の交換を操作者に促すよう構成した。
【実施例1】
【0007】
以下図面に基づいて、本発明のカッティング装置を説明する。
図1は本発明のカッティング装置の一例である被切断媒体駆動型カッティングプロッタの構成を示す図であり、図において1はカッティング装置であるカッティングプロッタ本体、2は切断手段であるカッティングペン、3はキャリッジ、4はYバー、5は駆動機構、6はロール状に巻回されたシート状媒体、7は制御部、8は反射型光センサよりなる検出手段、9は表示部である。
駆動機構5の駆動ローラ51は、図示しない駆動モータの正逆方向の回転駆動力が伝達されて回転駆動するように、カッティングプロッタ本体1に支持されており、また、ピンチローラ52は、シート状媒体6を介してこの駆動ローラ51に押圧されており、駆動ローラ51の正逆回転に従動して回転駆動する。被切断媒体であるシート状媒体6は、その両端部分がこの駆動ローラ51およびピンチローラ52に挟持され、駆動ローラ51の回転駆動により図のX軸方向に駆動するよう設けられている。
ペンブロック3は、図示しない移動機構によりプロッタ本体1上を上記X軸方向と直交するY軸方向に延設されるYバー4に摺動して移動可能に設けられるとともに、カッティングペン2を保持し、これをアクチュエータにより降下,上昇させることにより、シート状媒体6に選択的に圧接,離反するよう設けられる。
制御手段7は、コンピュータ等の上位装置より送信される切断すべき形状のカットデータに基づいて、駆動ローラ51を駆動制御してシート状媒体6を図のX軸方向に移動させるとともに、ペンブロック3をYバー4に摺動(Y軸方向に移動)させて、カッティングペン2をシート状媒体6に対して相対的に2次元方向に移動させ、更にカッティングペン2を選択的にシート状媒体6に圧接,離反させることにより、これを所望の形状で切断するよう構成されている。
反射型光センサ8はシート状媒体6の搬送経路上のカッティングプロッタ本体1に設けられ、これによりシート状媒体6の図のX軸方向の端部を検出するよう構成されている。
【0008】
次に、本発明のカッティング装置によるカッティング刃の状態検出動作を説明する。
このカッティング刃の状態検出動作は、カッティング装置の電源投入時,シート状媒体のセット時或いは切断動作の前段階等といったタイミングで行われ、本動作においては先ず、シート状媒体6の搬送経路方向、すなわち図におけるX軸方向の端部を検出するとともに、これを検出手段8の直上に位置付ける動作を行う。制御部7は、検出手段である反射型光センサ8の出力を検出し、その出力が「L」、すなわちセンサ8上にシート状媒体6が存在するか否かを検出する(STEP1)。
センサ8の出力が「L」ではない、すなわちセンサ8上にシート状媒体6が存在していると判断した場合は、制御部7は駆動ローラ51を図の負の方向へ回転させ、シート状媒体6を−X軸方向に所定量搬送し(STEP2)、STEP1に復帰する。
STEP1においてセンサ8の出力が「L」、すなわちセンサ8上にシート状媒体6がないことを検出すると、STEP3に移行して、制御部7は駆動ローラ51を正方向に回転させてシート状媒体6を+X軸方向に搬送してSTEP4に移行し、センサ8の出力が「L」から「H」となったか否か、すなわちシート状媒体6のX軸方向の端部がセンサ8の直上に位置付けられたか否かを検出する。
STEP4において、シート状媒体6の端部がセンサ8の上にないと判断した場合は、STEP3に復帰して更にシート状媒体6を+X方向に搬送し、その端部がセンサ8の直上に位置付けられたことを検出すると、STEP5に移行してシート状媒体6を所定量−X軸方向(図3に示す距離「C」)に搬送し、カッティング刃状態検出のための切断動作を行う。このカッティング刃状態検出のための切断動作においては、シート状媒体6をX軸方向の端部から所定量(図3に示す「D」)Y軸方向に切断し、これを切離す。すなわち、駆動ローラ51とカッティング刃2の刃先までのX軸方向の距離(A)およびこの刃先からセンサ8までのX軸方向の距離(B)はカッティング装置1の固有且つ既知の値であり、上記STEP5において所定量「C」(CはB以下)搬送し、シート状媒体6を所定量「D」(D=B−C)だけ切断して、この切断した領域「D」を切離す(STEP6)。この切離し動作としては、上述の特許文献2に開示されるように、X軸方向の端部からの距離がDとなる位置において切断手段2によりこれをY軸方向に切断した後、駆動機構5によりシート状媒体6に対して自重に抗する方向、すなわち図の−X軸方向に高加速度で駆動して、領域Dの部分を切離すようにして行われる。
このシート状媒体6の一部切断ならびに切断領域の切離し動作を行った後、STEP7に移行して、制御部7は駆動機構5を駆動制御して上記切断領域Dがセンサ8の直上に位置付けられるように、シート状媒体6を搬送する(STEP7)。
切断領域(図の「D」の部分)をセンサ8の直上に位置付けた後、制御部7はセンサ8の出力を検出する(STEP8)。上記STEP6の一部切断,切離し動作によりシート状媒体6の切断が良好に行われている場合は、センサ8の直上にはシート状媒体6が存在しておらず、センサ8の出力は「L」となるので、これを検出した場合制御部7はカッティング刃2の刃先は切断可能な状態であると判断し、続く切断動作へ移行するか、または切断待機モードに移行する。
また、STEP8においてセンサ8の出力が「H」である、すなわちセンサ8の直上にシート状媒体6が存在していることを検出した場合、上記STEP6によるシート状媒体6の切断,切離し動作によってもシート状媒体6が切離されておらず、カッティング刃2が切断不能状態にあると判断し、切断動作への移行を不可とするとともに、表示手段9にカッティング刃2が切断不能であるため交換が必要である旨の表示を行い(STEP9)、カッティング装置を待機状態とする。
【0009】
以上詳述したとおり、本願発明のカッティング装置においては、切断動作の前段階においてカッティング刃による切断を行い、これにより切断された部分がシート状媒体より完全に切離されたか否かを検出することにより、カッティング刃の状態を検出するよう設けたので、操作者の目視による確認作業を行うことなく、切断動作に入る前に、カッティング刃が切断不能な状態であるか否かを検出することが可能となる。
本実施例においては、検出手段8として反射型光センサを用いた例を示したが、シート状媒体6に接触することによりこれを検出する機械的スイッチ、例えば図4に示すような可動部であるレバー部がシート状媒体6に接触して回動し、その有無を検出するリミットスイッチなどを用いてもよい。すなわち、上記カッティング刃状態検出動作によりシート状媒体6が正常に切り離された場合には、図4に示すようにセンサ8の直上にはシート状媒体6が存在しないこととなり、リミットスイッチのレバー部は起立した状態となる。逆にカッティング刃状態検出動作によりシート状媒体6が切り離されない、すなわちカッティング刃2が切断不納状態にある場合は、上記STEP7において切断領域をセンサ8上に位置付けても、図4右上図に示されるように切り離されていないシート状媒体6がリミットスイッチ8のレバー部と接触したままこれを回動させたままの状態となる。制御部7は、このリミットスイッチ8の出力を検出することにより、カッティング刃2が切断不能か否かを検知するよう構成される。
【実施例2】
【0010】
次に図5を参照して本発明のカッティング装置の第2実施例を説明する。
図5は本発明の第2実施例を示す図であり、上述の実施例との相違点は、検出手段8が回転駆動可能に設けられる切り離しローラ81およびシート状媒体6を介してこの切り離しローラ81に押圧されるとともにその回転状況を出力するロータリーエンコーダ(図示せず)が設けられる検出ローラ82により構成されている点である。
この第2実施例においては、カッティング刃の状態検出動作として、シート状媒体6をこの検出手段8の位置、すなわち切り離しローラ81と検出ローラ82に当接するまで搬送し、この状態で制御部7はキャリッジ3を駆動制御してシート状媒体6の切断を行う。この切断動作後、駆動機構5の停止を維持することによりシート状媒体6を把持するとともに、切り離しローラ81を図の矢印方向に回転駆動して、上記切断したシート状媒体6の切り離しを行う。
この切り離し動作において、制御部7は検出ローラ82に設けられたロータリーエンコーダの出力を監視し、上記切断動作によりシート状媒体6の切断が良好に行われている場合には、切り離されたシート状媒体6が切り離しローラ81の回転駆動により搬送されるとともに、これに押圧される検出ローラ82も回転することとなり、これに接続されるロータリーエンコーダより所定のパルスが出力され、これを検出することにより、制御部7はカッティング刃2の刃先は切断可能な状態であると判断する。
他方、上記切断動作によりシート状媒体6が切り離されていない場合は、この切り離し動作において切り離しローラ81を回転駆動してもシート状媒体6の搬送は行われず、これに当接する検出ローラ82も回転しないので、ロータリーエンコーダからはパルスが出力されず、制御部7はこれを検出することによりカッティング刃2の刃先が切断不能状態であると判断し、表示手段9にその旨表示する。
【実施例3】
【0011】
上述の実施例においては、何れもシート状媒体を第1の方向に移動するとともに切断手段をこれと直交する第2の方向に移動させて切断を行う媒体駆動型のカッティングプロッタにより本願発明のカッティング装置を説明したが、シート状媒体を平板状に載置し、これに対して第1の方向に移動可能に設けられたYバー、ならびにこのYバーに摺動して第2の方向に移動するキャリッジによりシート状媒体の切断を行うフラットベッド型のカッティングプロッタにも適用することが可能である。
図6はこの種のフラットベッド型のカッティングプロッタの構成を示す図であり、上述の実施例と同等な構成については同一の符号が付与されている。
このフラット型のカッティングプロッタにおいては、図示しないシート状媒体送り手段によりロール状に巻回されたシート状媒体61より切断を行う1頁分のシート状媒体6をカッティングプロッタ本体1である平板状の載置台11上に載置するとともに、シート状媒体6を切断手段2により切離し部12上で切断することにより、シート状媒体6を1ページ分の大きさとして切断するよう構成されている。
このフラット型のカッティングプロッタを本願発明の切断装置として用いる場合は、制御部7は切断動作前にカッティング刃2を上記切り離し部12の直上に位置付けるようキャリッジ3およびYバー4を駆動させ、シート状媒体6をこの切離し部12において図のY軸方向に切断する。その後、シート状媒体6が図の−X軸方向に搬送されるように、ロール状に巻回されたシート状媒体61に回転駆動力を伝達し、同時にこのロール状に巻回されたシート状媒体61の回転を検出するよう設けられた検出手段8の出力を検出する(具体的には、ロール状媒体61の回転に応じた数のパルスを発生する手段を設け、この出力されるパルスをカウントする手段によりシート状媒体6の搬送状態を検出する等構成される)。
このとき、シート状媒体6に付与する回転駆動力と、検出手段8より得られるシート状媒体6の搬送状態とを比較し、付与する回転駆動力に応じたシート状媒体6の搬送量が得られていないことを検出した場合には、上記切離し動作によってもシート状媒体6が切離されておらず、カッティング刃2が切断不能状態にあると判断し、切断動作への移行を不可とするとともに、表示手段9にカッティング刃2が切断不能であるため交換が必要である旨の表示を行い、カッティング装置を待機状態とするよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカッティング装置の構成を示す図である。
【図2】本発明のカッティング装置によるカッティング刃の状態検出動作を説明する図である。
【図3】本発明のカッティング装置によるカッティング刃の状態検出動作を説明する図である。
【図4】検出手段8の別の実施例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例のカッティング装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3実施例のカッティング装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1 カッティング装置本体
2 切断手段
3 キャリッジ
4 Yバー
5 (媒体)駆動機構
6 シート状媒体
7 制御部
8 検出手段
9 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状媒体とカッティング刃とを相対的に移動させて、シート状媒体を所望の形状に切断するカッティング装置において、
上記カッティング刃によりシート状媒体の一部を切断し、当該部分がシート状媒体から完全に切離されたか否かを検出する検出手段を有し、当該検出手段の出力よりカッティング刃交換の要否を判断することを特徴とするカッティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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