説明

カップリング、自動車用試験装置

【課題】高回転及び高トルク伝達を両立できるとともに、捩り共振の発生を抑制することができ、コンパクト化をも実現可能なカップリングを提供する。
【解決手段】駆動側回転機器の回転軸に固定する金属製の第1連結フランジ部2と、被駆動側回転機器の回転軸に固定する金属製の第2連結フランジ部5と、一端部を第1連結フランジ部2に一体回転可能に接続した金属製の外筒3と、外筒3の内側に外筒3と同軸上に配置され且つ一端部を第1連結フランジ部2に一体回転可能に接続するとともに他端部に第2連結フランジ部5を一体可能に接続した金属製のカップリング軸4と、第2連結フランジ部5と外筒3との間に介在させた弾性部材6とを備えたカップリング1にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸同士を相互に連結するカップリング、及びカップリングを備えた自動車用試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転軸同士を連結するカップリングとして、両端部にそれぞれ回転軸を連結するためのフランジを設けたものが知られている。ここで、例えば一方の回転軸が駆動軸であり、他方の回転軸が被駆動軸である場合、カップリングを介して駆動軸側の回転トルクを被動軸側に伝達することができる。
【0003】
ところで、カップリングを介して結合した回転軸を回転させるための軸系では、カップリングが捩りバネとして作用し、捩りバネ定数等によって定まる固有振動数と同一の回転速度領域においては軸系全体が他の回転速度領域よりも遥かに大きな振幅で振動する捩り共振現象が発生する。そして、このような軸系を備えた試験装置(例えば自動車用試験装置)で各種性能試験を行った場合、捩り共振が発生することによって正確な測定値(例えばトルク計測値)を得ることができないという不具合がある。
【0004】
そこで、捩りバネ定数等によって定まる固有振動数である共振周波数が高い点に着目して、例えばローパスフィルタによって共振周波数をカットする態様も考えられている。しかしながらフィルタを用いた態様は計算処理が必須となる点で不利である。
【0005】
また、捩り共振の発生を防止・抑制するカップリングとして、ゴムや弾性に富む樹脂等からなる緩衝部材(スパイダーと称される場合がある)によってトルク(動力)を伝達可能に構成した弾性カップリングも開発され、実用化されている。このような弾性カップリングは、弾性の緩衝部材が振動を吸収する減衰性を発揮する。
【0006】
また、本出願人は、内外二重軸構造のカップリングを発明している(下記特許文献1参照)。具体的には、両端に連結フランジ部を備えた剛性の高い円筒状の外側接続軸と、外側接続軸とは異なる捩りばね定数を有し外側接続軸よりも剛性の低い内側接続軸とを備え、外側接続軸と内側接続軸軸の径方向に形成された空隙部に弾性樹脂接着剤を充填し、両接続軸のいずれか一方の軸端部同士を溶接処理で一体に連結した二重筒状のカップリングである。このような二重筒状のカップリングであれば、実質的なトルク伝達(動力伝達)が外側接続軸で行われ、内側接続軸は、外側接続軸の回転に伴って回転し(連れ回り)、外側接続軸に対して「回転おもり」のように作用する。したがって、このような二重筒状のカップリングが、外側接続軸の有する固有振動数と同一の回転速度領域で回転することにより捩り共振して、振幅が急激に大きくなろうとした場合には、外側接続軸とは固有振動数の異なる内側接続軸が「回転おもり」として作用することによって、外側接続軸における捩り共振の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−32031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、弾性カップリングでは、弾性の緩衝部材を構成する材料自体の強度が低く、この強度の低い弾性緩衝部材を介して動力(トルク)を伝達させる構造であるため、高トルク伝達を実現しようとすれば、高速回転させることができず、また高速回転を実現しようとすればトルクを下げざるを得ない。このように、弾性カップリングには、弾性緩衝部材の物理的限界から高速回転及び高トルクを両立できないというデメリットがある。
【0009】
一方、特許文献1記載のカップリングは、剛性の高い外側接続軸を介してトルク伝達を行う構成であるため、高速回転及び高トルク伝達を両立できる。ところで、小さな振動よりも大きな振動の方が、ダンパや内側接続軸のような回転おもりによって効果的に抑えることが可能であるということが知られている。したがって、特許文献1記載のカップリングにおいて捩り共振を含んだトルクが伝達される剛性の高い外側接続軸の捩りバネ剛性を低く設定すれば、内側接続軸の作用によって捩り共振をより一層効果的に抑制することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1記載のカップリングにおいて高速回転及び高トルク伝達の両立を実現するために強度を高く設定している外側接続軸は、内側(内周側)に配置した内側接続軸の外径よりも大きい外径を有しており、このような外側接続軸の捩りバネ剛性を、素材自体の強度低下を招来することなく低くするには、軸方向のサイズ(長手寸法)を大きく設定せざるを得ず、カップリングの大型化(長尺化)を招来していた。なお、外側接続軸の外径を小さく設定することによって捩りバネ剛性を低くすることは可能であるが、内側接続軸の存在により設計上の制約を受けることから、外側接続軸の小径化には限界がある。
【0011】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、高回転及び高トルク伝達を両立できるとともに、捩り共振の発生を抑制することができ、コンパクト化をも実現可能なカップリング、及びこのようなカップリングを備えた自動車用試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、第1回転軸に固定する金属製の第1連結フランジ部と、第2回転軸に固定する金属製の第2連結フランジ部とを備え、第1回転軸及び第2回転軸を相互に連結するカップリングに関するものである。ここで、本発明のカップリングは、第1回転軸が出力側の回転軸であり、第2回転軸が入力側の回転軸である場合、または第1回転軸が入力側の回転軸であり、第2回転軸が出力側の回転軸である場合、これら何れの場合であっても第1回転軸及び第2回転軸を相互に連結することが可能なものである。
【0013】
そして、本発明に係るカップリングは、一端部を第1連結フランジ部に一体回転可能に接続した金属製の外筒と、外筒の内側に外筒と同軸上に配置され且つ一端部を第1連結フランジ部に一体回転可能に接続するとともに他端部に第2連結フランジ部を一体回転可能に接続した金属製のカップリング軸と、外筒とカップリング軸又は第2連結フランジ部との間に介在させた弾性部材とを備えていることを特徴としている。ここで、本発明のカップリングは、第1連結フランジ部、第2連結フランジ部、外筒、カップリング軸及び弾性部材を備えたものであればよく、金属製のパーツである第1連結フランジ部、第2連結フランジ部、外筒及びカップリング軸は、それぞれ別体のものであってもよいし、2以上のパーツを一体に形成したもの(例えば、第1連結フランジ部及び外筒を一体に形成したもの、第1連結フランジ部、外筒及びカップリング軸を一体に形成したもの、カップリング軸及び第2連結フランジ部を一体に形成したもの等)であっても構わない。
【0014】
このようなカップリングであれば、一方の回転軸が回転すると、そのトルクを、第1連結フランジ部又は第2連結フランジ部の何れか一方の連結フランジ部、カップリング軸、他方の連結フランジ部を通じて他方の回転軸に伝達することができ、トルク伝達作用を奏するこれら第1連結フランジ部、カップリング軸及び第2連結フランジ部を全て金属製にすることによって、高強度の部分でトルク伝達を行うことができ、高トルク及び高回転を両立することができる。
【0015】
さらに、本発明のカップリングであれば、捩り共振を含んだトルクのうち、動力伝達に直接大きく寄与する直流成分は、上述した金属製の部分を通じて伝達する一方、動力伝達には大きく寄与しない共振成分は、カップリング軸又は第2連結フランジ部から弾性部材に伝達し、この弾性部材が外筒を足場として剪断変形することによって共振成分のトルクを減衰させる。その結果、カップリングの固有振動数と同一の回転速度領域において生じ得る捩り共振を効果的に防止・抑制することができる。さらに、本発明のカップリングでは、外筒の内側(内周側)にカップリング軸を配置しているため、外筒をカップリング軸のカバー部材として機能させることができ、カップリング軸が外部環境に直接晒される態様と比較してカップリング軸の損傷等を防止・抑制することができるとともに、カップリング軸の小径化に伴うカップリング軸全体のコンパクト化をも実現することができる。コンパクト化について詳述すると、弾性部材による減衰作用は、捩りバネ剛性が高くて捩れ難いカップリング軸よりも、捩りバネ剛性が低くて捩れ易いカップリング軸の方が効率良く得られることから、本発明に係るカップリングでは、内周側に他の部材を配置する必要がない金属製のカップリング軸の外径を、トルク伝達機能を損なわない範囲で可及的に小さく設定することが可能であり、小径化によってカップリング軸の捩りバネ剛性を低く設定することができる。したがって、弾性部材による減衰作用を得られる範囲内においてカップリング軸の軸方向の寸法を可能な限り短く設定することが可能になり、カップリング全体のコンパクト化を実現できる。
【0016】
また、本発明のカップリングでは、少なくとも一方のフランジ部に膜板を付帯させることができる。これにより、各連結フランジ部を対応する回転軸にそれぞれ固定した際に、膜板が適宜に弾性変形することによって、本発明のカップリングを介して相互に結合する回転軸同士が同一軸線上に位置付けられていない現象(ミスアライメントや芯ずれと称される現象)の発生を防止・抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係る自動車用試験装置は、上述した構成を有するカップリングと、カップリングの第1連結フランジ部又は第2連結フランジ部のうち何れか一方の連結フランジ部に回転軸を固定した回転供試体と、他方の連結フランジ部に回転軸を固定した擬似負荷又は擬似駆動源とを備えていることを特徴としている。ここで、回転供試体としては、例えば電気自動車用か否かに拘わらず、電動機や発電機、又は変速機等を挙げることができる。
【0018】
このような自動車用試験装置であれば、上述したカップリングの構成に基づき、高速回転及び高トルク伝達を両立することができるとともに、捩り共振を防止・抑制することも可能であるため、回転供試体に関する各種性能試験を行う場合に、捩り共振の影響を排除した正確な試験結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明であれば、両端部を金属製の第1連結フランジ部、第2連結フランジ部にそれぞれ一体回転可能に接続した金属製のカップリング軸を通じてトルク伝達するとともに、トルクのうち共振成分を弾性部材によって減衰させる構成を採用したことによって、高速回転及び高トルク伝達を両立できるとともに、捩り共振の発生を抑制することができ、さらに、コンパクト化をも実現可能なカップリング、及びこのようなカップリングを備えた自動車用試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るカップリングを適用した自動車用試験装置の全体概略図。
【図2】同実施形態に係るカップリングの断面図。
【図3】同実施形態に係るカップリングを一部破断して示す外観図。
【図4】同実施形態に係るカップリングの一変形例の図2対応図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係るカップリング1は、例えば図1に示す自動車用試験装置Xに適用可能なものである。自動車試験装置Xは、例えば自動車エンジン等の回転供試体Eと、例えばダイナモメータ等の擬似負荷Dと、回転供試体Eの回転軸E1と擬似負荷Dの回転軸D1とを連結するカップリング1とを備えたものである。なお、図1では、回転供試体Eの回転軸E1及び擬似負荷Dの回転軸D1をカップリング1に直接連結した態様を例示したが、回転軸D1,E1とカップリング1との間にトルク検出器など、適宜の検出器や測定器を介在させることもできる。また、回転供試体E及び擬似負荷Dは、共通の支持台Bに支持されている。
【0023】
カップリング1は、図2及び図3に示すように、回転供試体Eの回転軸E1に接続可能な金属製の第1連結フランジ部2と、一端部を第1連結フランジ部2に一体回転可能に接続した金属製の外筒3と、外筒3の内側に外筒3と同軸上に配置され且つ一端部を第1連結フランジ部2に一体回転可能に接続した金属製のカップリング軸4と、カップリング軸4の他端部に一体回転可能に設けた金属製の第2連結フランジ部5と、カップリング軸4と外筒3との間に介在させた弾性部材6とを備えたものである。
【0024】
第1連結フランジ部2は、後述する外筒本体31の第1ディスク部32に接触可能なリング状の第1連結フランジ本体21と、第1連結フランジ本体21の内側に配置されてカップリング軸4の一端部を固定するための第1カップリング軸固定部22と、第1連結フランジ本体21と第1カップリング軸固定部22との間に設けた第1膜板23とを備えたものである。本実施形態では、これら第1連結フランジ本体21、第1カップリング軸固定部22及び第1膜板23を一体に有する金属製の第1連結フランジ部2を適用している。
【0025】
第1連結フランジ本体21には、外筒3を固定する際に用いる第1ネジ孔21aと、回転供試体Eの回転軸E1に連結する際に用いる第1ボルト挿通孔21bとを形成している。本実施形態では、第1ネジ孔21aと第1ボルト挿通孔21bを第1連結フランジ本体21の周方向に交互に所定ピッチで形成している(図3参照)。
【0026】
第1カップリング軸固定部22は、カップリング軸4の一端部を収容可能な第1カップリング軸収容孔22aを中央に形成したリング状をなし、カップリング軸固定用ボルトT1が挿入可能な第1カップリング軸固定用孔22bを周方向に所定ピッチで形成したものである。
【0027】
第1膜板23は、第1連結フランジ本体21と第1カップリング軸固定部22との間に形成した膜厚を例えば0.数mmに設定した薄肉リング状のものである。第1膜板23の外周縁部は第1連結フランジ本体21に連続し、第1膜板23の内周縁部は第1カップリング軸固定部22に連続している。本実施形態では、この第1膜板23が所定値以上の外力を受けた場合に適度に弾性変形し得るように、第1膜板23の厚み方向に貫通する丸孔231を径方向に所定ピッチで形成している。
【0028】
外筒3は、外筒本体31と、外筒本体31の一端部からラジアル方向に延伸して第1連結フランジ部2と同じ外径を有する第1ディスク部32と、外筒本体31の他端部からラジアル方向に延伸し第1ディスク部32よりも小さい外径を有する第2ディスク部33とを一体に備えた金属製のものである。また、第1ディスク部32には、第1連結フランジ本体21の第1ネジ孔21aに連通する第1ディスク側ボルト挿通孔32aと、第1連結フランジ本体21の第1ボルト挿通孔21bに連通し、図2に模式的に示すボルトT3の頭部を収容可能な第1ボルト収容孔21bを形成している。第2ディスク部33にも、第1ディスク部32の第1ディスク側ボルト挿通孔32a及び第1ボルト収容孔21bにそれぞれ相当する第2ディスク側ボルト挿通孔33aと第2ボルト収容孔33bを形成している。また、本実施形態では、第2ディスク部33の厚み寸法を第1ディスク部32の厚み寸法よりも大きく設定している。これにより、後述する弾性部材6の配置スペースを、カップリング1内部の限られたスペースにおいて最大限大きく確保できるようにしている。また、本実施形態のカップリング1は、外筒本体31の第1ディスク部32のうち軸方向Aにおいて第1連結フランジ部2の第1膜板23と対面する部分には、第1膜板23との接触を回避するために段部32dを形成している。同様に、外筒本体31の第2ディスク部33のうち軸方向Aにおいて後述する第2膜板53と対面する部分には、第2膜板53との接触を回避するために段部33dを形成している。
【0029】
そして、外筒3(第1ディスク部32)の第1ディスク側ボルト挿通孔32aに挿入したフランジ固定用ボルトT2を第1連結フランジ部2(第1連結フランジ本体21)の第1ネジ孔21aに螺合することによって、外筒3の一端部に第1連結フランジ部2を固定することができ、この固定状態では第1連結フランジ部2及び外筒3は一体回転可能である。
【0030】
カップリング軸4は、カップリング軸本体41と、カップリング軸本体41の両端部近傍に設けた鍔部(第1鍔部42、第2鍔部43)とを備えたものである。本実施形態では、筒状のカップリング軸本体41と鍔部(第1鍔部42、第2鍔部43)を一体に形成した金属製のカップリング軸4を適用している。第1鍔部42には、第1連結フランジ部2の第1カップリング軸固定部22に形成した第1カップリング軸固定用孔22bに連通する第1カップリング軸固定用ネジ孔42aを形成し、第2鍔部43には、後述する第2連結フランジ部5の第2カップリング軸固定部52に形成した第1カップリング軸固定用孔52bに連通する第2カップリング軸固定用ネジ孔43aを形成している。
【0031】
そして、カップリング軸4(カップリング軸本体41)の一端部を第1連結フランジ部2(第1カップリング軸固定部22)の第1カップリング軸収容孔22aに収容して、カップリング軸4の第1鍔部42を第1カップリング軸固定部22に接触させた状態で、第1連結フランジ部2(第1カップリング軸固定部22)の第1カップリング軸固定用孔22bに挿入したカップリング軸固定用ボルトT1を第1連結フランジ部2(第1カップリング軸固定部22)の第1カップリング軸固定用ネジ孔42aに螺合することによって、カップリング軸4の一端部を第1連結フランジ部2に固定することができる。
【0032】
第2連結フランジ部5は、外筒本体31の第2ディスク部33と所定の隙間を介して軸方向Aに対面し得るリング状の第2連結フランジ本体51と、第2連結フランジ本体51の内側に配置されてカップリング軸4の他端部を固定するための第2カップリング軸固定部52と、第2連結フランジ本体51と第2カップリング軸固定部52との間に設けた第2膜板53とを備えたものである。本実施形態では、これら第2連結フランジ本体51、第2カップリング軸固定部52及び第2膜板53を一体に有する金属製の第2連結フランジ部5を適用している。
【0033】
第2連結フランジ本体51には、第2ディスク部33の第2ディスク側ボルト挿通孔33aに連通する第2ネジ孔51aと、第2ディスク部33の第2ボルト収容孔33bに連通する第2ボルト挿通孔51bを形成している。また、第2連結フランジ本体51の外径は第2ディスク部33の外径よりも大きく、第2連結フランジ本体51の外縁部には、第2ディスク部33を外周縁側から被覆して、第2ディスク部33との間に弾性部材6を充填するための空間を形成し得る突片部51tを設けている。
【0034】
第2カップリング軸固定部52は、カップリング軸4の他端部を収容可能な第2カップリング軸収容孔52aを中央に形成したリング状をなし、カップリング軸固定用ボルトT1が挿入可能な第2カップリング軸固定用孔52bを周方向に所定ピッチで形成したものである。
【0035】
第2膜板53は、第2連結フランジ本体51と第2カップリング軸固定部52との間に形成したリング状をなし、膜厚を例えば0.数mmに設定したものである。第2膜板53の外周縁部は第2連結フランジ本体51に連続し、第2膜板53の内周縁部は第2カップリング軸固定部52に連続している。本実施形態では、第2膜板53が所定値以上の外力を受けた場合に適度に弾性変形し得るように、第2膜板53の厚み方向に貫通する丸孔531を径方向に所定ピッチで形成している。
【0036】
そして、カップリング軸4(カップリング軸本体41)の他端部を第2連結フランジ部5(第2カップリング軸固定部52)の第2カップリング軸収容孔52aに収容して、カップリング軸4の第2鍔部43を第2カップリング軸固定部52に接触させた状態で、第2連結フランジ部5(第2カップリング軸固定部52)の第2カップリング軸固定用孔52bに挿入したカップリング軸固定用ボルトT1を第2連結フランジ部5(第2カップリング軸固定部52)の第2カップリング軸固定用ネジ孔43aに螺合することによって、カップリング軸4の他端部に第2連結フランジ部5を固定することができる。
【0037】
以上の構成により、本実施形態に係るカップリング1は、両端部をそれぞれ連結フランジ部(第1連結フランジ部2、第2連結フランジ部5)に固定したカップリング軸4と、一端部のみを連結フランジ部(第1連結フランジ部2)に固定した外筒3とを備え、外筒3のうち連結フランジ部に固定していない自由端である他端または他端部近傍領域と、第2連結フランジ部5との間に弾性部材6を配置している。ここで、他端部を自由端に設定している外筒3は、第1連結フランジ部2から第2連結フランジ部5へトルクを伝達する機能は発揮しないものであり、トルク伝達用の「軸」ではない。すなわち、本実施形態に係るカップリング1において「トルク伝達機能を発揮する軸」はカップリング軸4のみである。
【0038】
本実施形態では、第2連結フランジ本体51の外縁部に設けた突片部51tと、第2ディスク部33の外周縁との間に形成される隙間に弾性部材6を充填している。この充填処理は、例えば第2ディスク部33の外縁部近傍に形成した注入口33c(図3参照)から注入した例えば液状の樹脂を、第2連結フランジ本体51の突片部51tと第2ディスク部33の外周縁との隙間全体に行き渡らせて硬化する処理によって実現できる。このような充填処理によって形成される本実施形態の弾性部材6はリング状の部材となる。
【0039】
このような構成を有する本実施形態のカップリング1は、第1連結フランジ部2(第1連結フランジ本体21)の第1ボルト挿通孔21b及び外筒3(第1ディスク部32)の第1ボルト収容孔21bに挿通したボルト(図3で想像線で示すT3)を第1回転軸E1のフランジ部E2に形成したネジ孔(図示省略)に螺合することによって、第1連結フランジ部2を第1回転機器Eの第1回転軸E1に連結することができるとともに、外筒3(第2ディスク部33)の第2ボルト収容孔33b及び第2連結フランジ部5(第2連結フランジ本体51)の第2ボルト挿通孔51bに挿通したボルト(図3で想像線で示すT3)を第2回転軸D1のフランジ部D2に形成したネジ孔(図示省略)に螺合することによって、第2連結フランジ部5を第2回転機器Dの第2回転軸D1に連結することができる。この連結処理によってミスアライメント(回転軸E1,D1同士の芯ずれ)が生じ得るが、本実施形態のカップリング1は、第1膜板23及び第2膜板53が弾性変形することによってミスアライメントを吸収することができる。
【0040】
そして、本実施形態のカップリング1は、第1回転軸E1から第2回転軸D1へ動力(トルク)を伝達する機能を発揮する。詳述すると、回転供試体Eの回転軸E1が回転すると、そのトルクは、カップリング1のうち第1連結フランジ部2、カップリング軸4、第2連結フランジ部5を通じて擬似負荷Dの回転軸D1に伝達される。本実施形態のカップリング1は、トルク伝達作用を奏する第1連結フランジ部2、カップリング軸4及び第2連結フランジ部5を全て金属製にしているため、強度が高く、高トルク及び高速回転を両立することができる。
【0041】
また、カップリング1(特にカップリング軸4)の固有振動数と同一の回転速度領域において捩り共振現象が生じ得るが、本実施形態のカップリング1であれば、以下の示す作用によって捩り共振現象の発生を防止・抑制することができる。つまり、捩り共振を含んだトルクは直流成分と共振成分(交流成分)に分けられ、直流成分は動力伝達に直接大きく寄与するものであるが、共振成分は動力伝達には大きく寄与しないものであることに着目し、本実施形態のカップリング1は、捩り共振を含んだトルクを直流成分と共振成分に分離すべく、直流成分については第1連結フランジ部2、カップリング軸4、第2連結フランジ部5を通じて伝達する一方で、共振成分は第2連結フランジ部5から弾性部材6に伝達し、この弾性部材6が外筒3を足場として剪断変形することによって共振成分のトルクを減衰させるように構成した。特に、本実施形態では、弾性部材6を、カップリング1の回転中心(カップリング軸4の回転中心)から径方向へ大きく離れた箇所(具体的には外筒3の第2ディスク部33の外周縁部と、この外周縁部と径方向に対面する第2連結フランジ部5の外縁部に設けた突片部51tとの間のスペース)に配置しているため、弾性部材6をカップリング1の回転中心(カップリング軸4の回転中心)に近い位置に配置した場合と比較して、弾性部材6を大きく剪断変形させることができ、トルクの共振成分をより一層効率良く減衰させることができる。
【0042】
このように、本実施形態に係るカップリング1は、両端部にそれぞれ金属製の連結フランジ部2,5を一体回転可能に固定した強度の高い金属性のカップリング軸4を用いてトルクを伝達するため、高回転及び高トルク伝達を両立できるとともに、トルクのうち捩り共振現象の発生を招来する共振成分を第2連結フランジ部5と外筒3との間に介在させた弾性部材6によって減衰させる構成であるため、捩り共振の発生を効果的に抑制することができる。
【0043】
また、弾性部材による減衰作用は、捩りバネ剛性が高く捩れ難いカップリング軸よりも、捩りバネ剛性が低く捩れ易いカップリング軸の方が効率良く得られる(言い換えれば、大きい振動の方が弾性部材で減衰させ易い)ことが知られている。この点に着目し、本実施形態におけるカップリング1は、カップリング軸4を外筒3の内側に配置し、カップリング軸4の内側には他の部材を配置しない構成を採用することによって、カップリング軸4の外径を高トルク伝達に耐え得る範囲内においてできるだけ小さく設定することが可能となり、捩りバネ剛性が低く、捩れ易いトーションバーとして機能するカップリング軸4を実現できる。したがって、本実施形態に係るカップリング1は、カップリング軸4を伝達するトルク成分のうち共振成分を弾性部材6で効率良く減衰させることができる。さらに、本実施形態のカップリング1は、弾性部材6による減衰作用を効果的に得られる範囲内において、カップリング軸4の軸方向Aの寸法を可及的に短く設定しているため、カップリング1全体のコンパクト化をも実現できる。加えて、本実施形態のカップリング1は、外筒3がカップリング軸4のカバー部材として機能し、カップリング軸4が外部環境に直接晒される態様と比較してカップリング軸4の損傷や劣化等を防止・抑制することができる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、第1連結フランジ部、外筒、カップリング軸及び第2連結フランジ部をそれぞれ別体で構成し、ボルト等の適宜の固定手段によって、外筒の一端部及びカップリング軸の一端部を第1連結フランジ部に接続するとともに、カップリングの他端部を第2連結フランジ部に接続した態様を例示したが、図4に示すように、これら各部(第1連結フランジ部102、外筒103、カップリング軸104、第2連結フランジ部105)を一体に有するカップリング101であってもよい。なお、同図はカップリング101の簡略化した模式図であり、図2に対応させて弾性部材106も示している。また、図示しないが、第1連結フランジ部、外筒及びカップリング軸を一体に有し、これらとは別体の第2連結フランジ部にカップリング軸の他端部を適宜の固定手段によって接続したカップリングや、第1連結フランジ部及び外筒を一体に有するとともに、カップリング軸及び第2連結フランジ部を一体に有し、カップリング軸の一端部を第1連結フランジ部に適宜の固定手段によって接続したカップリングであってもよく、どの部分(パーツ)同士を一体品にするかは任意に設定することができる。
【0045】
また、弾性部材を外筒とカップリング軸との間に介在させたカップリングにすることもできる。このような態様であっても、捩り共振を含んだトルクのうち共振成分をカップリング軸から弾性部材に伝達し、弾性部材が外筒を足場として剪断変形することによってトルクのうち共振成分を減衰させることができ、捩り共振を防止・抑制することが可能である。弾性部材を外筒とカップリング軸との間に介在させる場合、弾性部材を外筒とカップリング軸との隙間全体に介在させてもよいし、軸方向に複数の弾性部材を配置するように設定することも可能である。
【0046】
弾性部材としては、樹脂材料からなるものの他、ゴム材料からなるものや、粒子を流体で混成させた粘土状物質からなるものを適用することができる。また、カップリング内に配置する前の時点で既に所定の形状(例えばリング状)に形成された弾性部材を適用してもよい。なお、弾性部材は損失係数が高いほど減衰効果が優れたものになる。
【0047】
カップリング軸として、筒状ではなく中実の軸を適用することもできる(図4参照)。
【0048】
また、膜板を何れか一方の連結フランジ部にのみ付帯させたカップリングや、膜板を何れの連結フランジ部にも付帯させていないカップリングであってもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る自動車用試験装置は、回転供試体として、エンジン以外の供試体、例えば電動機又は変速機等を適用したり、擬似負荷に代えて擬似駆動源を適用することもできる。
【0050】
さらに、本発明のカップリングは第1連結フランジ部を出力側の回転軸に一体回転可能に接続して、第2連結フランジ部を入力側の回転軸に一体回転可能に接続した態様で使用することも可能である。
【0051】
また、本発明のカップリングは、自動車用試験装置以外の装置における回転軸同士の結合に適用することも可能である。
【0052】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1、101…カップリング
2、102…第1連結フランジ部
3、103…外筒
4、104…カップリング軸
5、105…第2連結フランジ部
6、106…弾性部材
23,53…膜板(第1膜板,第2膜板)
D…第2回転機器
D1…第2回転軸
E…第1回転機器
E1…第1回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸に固定する金属製の第1連結フランジ部と、第2回転軸に固定する金属製の第2連結フランジ部とを備え、前記第1回転軸及び第2回転軸を相互に連結するカップリングであり、
一端部を前記第1連結フランジ部に一体回転可能に接続した金属製の外筒と、
前記外筒の内側に前記外筒と同軸上に配置され且つ一端部を前記第1連結フランジ部に一体回転可能に接続するとともに他端部に前記第2連結フランジ部を一体回転可能に接続した金属製のカップリング軸と、
前記外筒と前記カップリング軸又は前記第2連結フランジ部との間に介在させた弾性部材とを備えていることを特徴とするカップリング。
【請求項2】
少なくとも一方のフランジ部に膜板を付帯させている請求項1に記載のカップリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカップリングと、
前記カップリングの前記第1連結フランジ部又は前記第2連結フランジ部のうち何れか一方の連結フランジ部に回転軸を固定した回転供試体と、
他方の連結フランジ部に回転軸を固定した擬似負荷又は擬似駆動源とを備えていることを特徴とする自動車用試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61028(P2013−61028A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200533(P2011−200533)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)