説明

カテーテル固定具

【課題】固定時に患者にあまり負担をかけずにカテーテルを安定的に固定することができるとともに、省スペースで操作することができるカテーテル固定具を提供すること。
【解決手段】本発明は、管状のカテーテル1を固定するための固定具11に関する。このカテーテル固定具11は、板状の固定具本体21と固定部材41とを備える。板状の固定具本体21は、カテーテル保持溝25が形成された保持部22と一対の翼片23とを有する。固定部材41は、固定具本体21の主面29に垂直な仮想線を中心軸C1として主面29方向に平行に回転させることにより、固定具本体21に対して嵌合可能である。固定部材41の回転嵌合時に、保持部22が固定部材41により押圧されてカテーテル保持溝25が狭められる。その結果、保持部22にカテーテル1が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを患者の皮膚に固定する際に用いられるカテーテル固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場においては、カテーテルを用いた治療や診断が広く実施されている。このようなカテーテルは、使用する際にカテーテル先端部を治療や診断に適した部位に確実に留めておく必要があるため、一般的に皮膚の外に出ている体外部が患者に固定される。
【0003】
患者に固定する手段として、カテーテルを患者の体表に固定する際に用いられるカテーテル固定具が従来提案されている。この種のカテーテル固定具は、例えば、軟質樹脂からなる固定具本体と、固定具本体よりも剛性の高い金属または樹脂からなる固定部材とを備えている。
【0004】
固定具本体には、カテーテルを挿入配置可能な保持部が設けられている。カテーテルを挿入配置した状態では、カテーテルのほぼ全周が保持部により覆われる。固定具本体に対しては、十分な補強効果を付与するために、固定具本体の上方向から固定部材が被せられる。その結果、保持部が締め付けられてカテーテルが確実に固定されるようになっている。
【0005】
なお、このようなカテーテル固定具の従来技術としては他にもいくつか提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。固定具本体と固定部材とは別々に構成されているものがあるほか、互いに連結されて一体化されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−154012号公報
【特許文献2】特開2008−212434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のカテーテル固定具では、固定部材を固定具本体の垂直方向から被せて嵌合させる際に、皮膚に対して押圧力が付加されるため、皮膚が圧迫され、患者に物理的な負担がかかってしまう。また、患者の皮膚は弾力を有するので、カテーテルを保持部に挿入しづらいという欠点がある。
【0008】
ここで、固定部材を固定具本体に被せて嵌合させる際に、固定部材を固定具本体の上方向からではなく横方向からスライドさせてアクセスできれば、皮膚が圧迫されにくくなると考えられる。この場合、最初に固定部材を固定具本体の横方向に大きく張り出させて配置し、その位置からスライドを開始する必要があるため、あらかじめカテーテル固定具の周囲にスペースを確保しておく必要がある。しかし、皮膚は平坦ではなく凹凸があることに加え、カテーテル固定具の周囲に他の医療器具などが取り付けられていることもある。このため、状況によってはスライド操作用のスペースを確保することが必ずしも容易ではない。それゆえ、省スペースであっても着脱操作できるカテーテル固定具の構造が望まれている。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定時に患者にあまり負担をかけずにカテーテルを安定的に固定することができるとともに、省スペースで操作することができるカテーテル固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして上記課題を解決するための手段1〜4を以下に列挙する。
[1]管状のカテーテルを固定するための固定具であって、カテーテル保持溝が形成された保持部と一対の翼片とを有する板状の固定具本体と、前記固定具本体の主面に垂直な仮想線を中心軸として前記主面方向に平行に回転させることにより、前記固定具本体に対して嵌合可能な固定部材とを備え、前記固定部材の回転嵌合時に前記保持部が前記固定部材により押圧されて前記カテーテル保持溝が狭められることを特徴とするカテーテル固定具。
【0011】
従って、手段1に記載の発明によると、固定具本体の主面に垂直な仮想線を中心軸として主面方向に平行に回転させることにより、固定具本体に対して固定部材が嵌合する。その際、固定具本体の保持部が固定部材により押圧され、カテーテル保持溝が狭められる結果、保持部によりカテーテルが締め付けられて安定的に固定される。また、主面方向に平行な回転によって固定部材が嵌合可能なため、皮膚に対して垂直方向に押圧力が付加されにくくなる。よって、患者にあまり負担をかけずにカテーテルを固定することができる。さらに、固定部材をスライドさせて嵌合する方式とは異なり、固定部材を回転させて嵌合する方式であれば、最初に固定部材を固定具本体の横方向に大きく張り出させて配置することが要求されなくなる。よって、カテーテル固定具の周囲に大きな操作用のスペースが不要になり、省スペース化を図ることができる。
【0012】
[2]前記固定部材は平面視で前記固定具本体よりも小さく形成され、前記仮想線は平面視で前記保持部の略中心かつ前記保持部材の略中心に設定されていることを特徴とする手段1に記載のカテーテル固定具。
【0013】
従って、手段2に記載の発明によると、固定部材と固定具本体との大小関係、回転嵌合時の中心軸となる仮想線の位置を上記のように設定することで、回転嵌合動作を開始してから完了するまでの間、固定部材が固定具本体の横方向に張り出さないようにすることができる。ゆえに、確実に省スペース化を図ることができる。
【0014】
[3]前記固定部材は、裏面側を前記保持部の上面に接触させた状態で前記保持部を全体的に覆うカバーであることを特徴とする手段1または2に記載のカテーテル固定具。
【0015】
従って、手段3に記載の発明によると、固定部材であるカバーの裏面と保持部の上面とが接触した状態となるため、カテーテル固定具の全体厚さを確実に抑えることができる。さらに、保持部がカバーにより全体的に覆われることで、保持部及びそこに保持されたカテーテルがドレッシングに直接触れなくなる。このため、ドレッシング剥離に伴うカテーテルのずれ等を防止することができる。
【0016】
[4]前記固定具本体の主面方向に延びるガイド部を前記保持部の外周面に設け、前記ガイド部に係止可能な被ガイド部を前記固定部材の裏面側の外周部に設けたことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載のカテーテル固定具。
【0017】
従って、手段4に記載の発明によると、ガイド部に被ガイド部が係止可能であるため、固定部材を固定具本体の平面方向に沿ってガイドしつつ、スムーズに回転させることができる。また、固定部材が固定具本体に嵌合した状態では、固定部材が固定具本体から外れにくくなる。
【0018】
前記固定具本体及び前記固定部材には、それぞれ位置決め部が設けられていてもよい。
【0019】
従ってこの構成によると、固定具本体及び固定部材に設けられた位置決め部の位置関係をもって、両者の位置決め状態を把握することできる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、固定時に患者にあまり負担をかけずにカテーテルを安定的に固定することができるとともに、省スペースで操作することができるカテーテル固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明を具体化した第1の実施形態におけるカテーテル固定具の固定具本体を示す平面図、(b)は固定具本体を示す正面図、(c)は固定具本体を示す側面図、(d)は固定具本体を示す斜視図。
【図2】(a)は上記カテーテル固定具の固定部材を示す平面図、(b)は固定部材を示す底面図、(c)は固定部材を示す正面図、(d)は(c)のA−A断面図、(e)は固定部材を上側から見たときの斜視図、(f)は固定部材を下側から見たときの斜視図。
【図3】(a)、(b)は上記カテーテル固定具において固定具本体に固定部材を嵌合させる手順を説明するための斜視図。
【図4】(a)は回転嵌合時において固定部材を回転させる前の状態を示す平面図、(b)は同じく正面図、(c)は回転嵌合時において固定部材を回転させた後の状態を示す平面図、(d)は同じく正面図。
【図5】(a)〜(c)は別の実施形態におけるカテーテル固定具の固定部材を示す平面図。
【図6】(a)は別の実施形態におけるカテーテル固定具の固定部材を示す正面図、(b)は回転嵌合時において固定部材を回転させる前の状態を示す平面図、(c)は回転嵌合時において固定部材を回転させた後の状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明を具体化した一実施の形態のカテーテル固定具11を図1〜図4に基づき詳細に説明する。
【0023】
本実施形態のカテーテル固定具11は、管状のカテーテル1を固定する際に用いる医療機器である。このカテーテル固定具11は、図3,図4に示されるように、基本的に2つの部材(固定具本体21及び固定部材としてのカバー41)により構成されている。
【0024】
図1,図3等に示されるように、固定具本体21は平面視長円形状の板状部材であり、比較的軟質な合成樹脂材料(例えばポリアミド系エラストマー)を用いて形成されている。ポリアミド系エラストマーのほか、例えばポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、軟質ポリウレタン、ポリアミド系エラストマー等といった軟質の合成樹脂材料を選択してもよい。ここで、固定具本体21は直接皮膚に接触する部材であるので、患者に与える違和感を軽減するために可撓性・弾性を有する材料を用いることが好ましい。また、固定具本体21を形成している合成樹脂材料は、カテーテル1の管状体材料よりも軟質であることが望ましい。その理由は、固定具本体21にカテーテル1を保持させて押圧力を付加したときにカテーテル1が変形して内腔が潰れてしまうのを回避するためである。
【0025】
固定具本体21は一対の翼片23を有している。これらの翼片23には円形状の穴24が設けられている。これらの穴24は、縫合糸を挿通させるための貫通穴である。なお、固定具本体21の裏面側には、固定具本体21を皮膚に接着固定するための粘着層が、粘着剤の塗布あるいは粘着シートの貼付により形成されていてもよい。また、使用前の状態においてその粘着層を保護するための離型フィルムが貼着されていてもよい。固定具本体21の主面29側の中央部には、保持部22が突設されている。この保持部22には、カテーテル1を保持可能なカテーテル保持溝25が形成されている。カテーテル保持溝25は、固定具本体21を横断する方向に沿って延びるとともに、固定具本体21の主面29側にて開口している。
【0026】
図1,図3等に示されるように、この保持部22は、円における外周部を2箇所円弧状に切り欠いた平面視形状を有している。保持部22における2つの円弧状切欠部31は、保持部22の中央を横断するカテーテル保持溝25を挟んで対峙する位置関係にある。保持部22の外周面27には、固定具本体21の主面29方向に延びるガイド部としてのガイド溝32が設けられている。ガイド溝32は円弧状切欠部31にて開口するとともに、保持部22の周方向に沿って(即ち主面29方向に対して平行に)延びている。図1(c),(d)に示されるように、このガイド溝32は奥に行くほど狭くなるよう、上側となる面の側に傾斜が設けられている。また、ガイド溝32の途中には、係止突起33が設けられている。なお、固定具本体21の主面29に垂直であって保持部22の中心を通る仮想線は、固定部材としてのカバー41を回転させる際の中心軸C1を意味している。
【0027】
図2,図3等には固定部材としてのカバー41が示されている。このカバー41は、固定具本体21を構成している合成樹脂材料よりも硬質の合成樹脂材料(例えばポリプロピレン)を用いて形成されている。ポリプロピレンのほか、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、硬質ポリウレタン、ABS等といった硬質の合成樹脂材料を選択してもよい。カバー41は、表面42を有するとともに、保持部22の上面26に接触して配置される裏面43を有している。このカバー41は、裏面43側を保持部22の上面26に接触させた状態で保持部22を全体的に覆うことができる程度の大きさを有している。なお、カバー41は保持部22よりも若干大きく、かつ、固定具本体21の半分程度の大きさの円板状部材となっている。
【0028】
カバー41の裏面43側の外周部44には、一対の被ガイド部45が離間した位置にて円弧に沿って突設されている。これら被ガイド部45は、内面側にカバー41の中心方向に向けて突出した被ガイド凸部47を有している。また、この被ガイド凸部47には、保持部22側の係止突起33が係脱可能な半円状の係止凹部46が形成されている。なお、被ガイド凸部47の先端部47aは、カバー41の中心方向に向けた突出量が最も大きい部分となっている。
【0029】
また、固定具本体21の主面29において保持部22と穴24との間には、位置決め部としての位置決めマーク34が一対設けられている。これらの位置決めマーク34は、若干湾曲した矢印であって、保持部22の円弧に沿って配置されている。一方、カバー41の表面42の外周部44における2箇所には、位置決め部としての三角形状の位置決めマーク48が設けられている。本実施形態では、カバー41側の位置決めマーク48が、固定具本体21側の矢印状の位置決めマーク34の先端近傍に至ったときに、完全嵌合状態になるように両者の位置関係が設定されている。完全嵌合時においては、被ガイド凸部47の先端部47aがガイド溝32に入り込んで係止した状態となる。このとき、被ガイド凸部47の先端部47aの内面は、ガイド溝32において係止突起33よりも奥側領域の側面に対して2方向から接触し、保持部22の中心方向(即ちカテーテル保持溝25を狭める方向)に押圧力を付加するようになっている。このように被ガイド凸部47の全体ではなくその一部で押圧(つまり比較的小さい面で押圧)する構造には、以下のような利点がある。即ち、カバー41の回転動作時の摺動抵抗を低減して回転しやすさを保ちつつ、完全嵌合状態においてはカテーテル保持溝25の長手方向の一端側と他端側とに十分な押圧力を付加することができる。
【0030】
次に、上記のように構成された本実施形態のカテーテル固定具11を使用してカテーテル1を固定する手順を図3,図4に基づいて説明する。
【0031】
例えば、カテーテル1の先端が経皮的に鎖骨下静脈に導かれ、残余のカテーテル1が患者の前胸部の穿刺部から皮膚の外に導出されているものとする。そして、カテーテル固定具11は、カテーテル1において皮膚の外に導出されている体外部に取り付けられるものとする。
【0032】
まず、カテーテル1の体外部を、固定具本体21の保持部22に形成されたカテーテル保持溝25に挿入する(図3(a)を参照)。挿入後、固定具本体21を皮膚の上に配置する。固定具本体21の裏面側に粘着層がある場合には、この段階で粘着層を介して固定具本体21を皮膚に接着してもよい。
【0033】
次に、カバー41を指で摘まんで固定具本体21の保持部22の真上に配置するとともに、その位置から固定具本体21に対してアクセスし、カバー41を保持部22に被せるようにする(図3(a)参照)。その際、図4(a),図4(b)に示されるように、カバー41側の位置決めマーク48が、固定具本体21側の矢印状の位置決めマーク34の基端近傍に位置するように配置する。この配置状態のときには、ちょうど被ガイド部45が円弧状切欠部31に位置するようになる。そして、平面視で保持部22の中心かつカバー41の中心に設定された中心軸C1を中心として、カバー41を時計回りに回転させると、被ガイド凸部47が徐々にガイド溝32に入り込む。このとき、被ガイド凸部47がガイド溝32によりスムーズにガイドされる。
【0034】
図3(b),図4(c),図4(d)に示されるように、カバー41側の位置決めマーク48が、固定具本体21側の矢印状の位置決めマーク34の先端近傍に至るまでカバー41を回転移動させる。すると、被ガイド凸部47がガイド溝32に完全に入り込んでカバー41がそれ以上回転移動不能となる。また、カバー41側の係止凹部46が、固定具本体21側の係止突起33の位置に到達し、それらが互いに係合する。このとき、術者は指先にクリック感を得るため、完全嵌合状態になったことを触感をもって把握することができる。そして、このような完全嵌合時には、被ガイド凸部47の先端部47aによって保持部22が左右両側から押圧され、保持部22に変形が生じることで、カテーテル保持溝25が狭められる。その結果、保持部22によりカテーテル1の体外部が締め付けられ、カテーテル保持溝25に強固に固定される。なお、完全嵌合状態においては、カバー41の裏面43と保持部22の上面26とが接触状態になるとともに、カバー41により保持部22がほぼ全体的に覆われた状態となる。そしてこの後、必要に応じてカテーテル固定具11及び刺入部にドレッシングを貼り付けて保護するようにしてもよい。
【0035】
そして、カテーテル固定具11による固定を解除してカテーテル1を外したい場合には、上記回転嵌合時のときと逆の動作を行う。ドレッシングを貼り付けてある場合には、まずそのドレッシングを剥離してカテーテル固定具11を露出させる。その際、カテーテル固定具11の上方向に力が加わりやすい反面、カバー41を離脱させる方向には力が加わりにくいため、ドレッシングと一緒にカバー41が外れるリスクが極めて小さくなる。なお、ガイド溝32に被ガイド部45の被ガイド凸部47が係止していることも、カバー41の外れ防止に寄与している。次に、カバー41を反時計周りの方向に回転移動させて、カバー41を固定具本体21から離脱させる。その際、保持部22を押圧することで狭められていたカテーテル保持溝25が拡がり、カテーテル1の固定が解除されてカテーテル1を抜くことが可能となる。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施形態のカテーテル固定具11の構成によれば、固定具本体21の主面29に垂直な仮想線を中心軸C1として主面29方向に平行に回転させることにより、固定具本体21に対してカバー41が嵌合する。その際、固定具本体21の保持部22がカバー41により押圧され、カテーテル保持溝25が狭められる結果、保持部22によりカテーテル1が締め付けられて安定的に固定される。また、主面29方向に平行な回転によってカバー41が嵌合可能なため、皮膚に対して垂直方向に押圧力が付加されにくくなる。よって、患者にあまり負担をかけずにカテーテル1を固定することができる。さらに、ドレッシングを剥がすときでも、カバー41を離脱させる方向に力が加わりにくいので、一緒にカバー41が外れる等といった不意の事態が起きにくくなる。
【0038】
(2)本実施形態では、カバー41をスライドさせて嵌合する方式とは異なり、カバー41を回転させて嵌合する方式であるため、最初にカバー41を固定具本体21の横方向に大きく張り出させて配置することが要求されなくなる。しかも本実施形態では、カバー41が平面視で固定具本体21よりも小さく形成された円形板状部材であることに加え、中心軸C1が平面視で保持部22の中心かつカバー41の中心に設定されている。従って、回転嵌合動作を開始してから完了するまでの間、カバー41が固定具本体21の横方向に張り出さないようにすることができる。ゆえに、カテーテル固定具11の周囲に大きな操作用のスペースが不要になり、確実に省スペース化を図ることができる。
【0039】
(3)本実施形態のカテーテル固定具11では、固定部材であるカバー41の裏面43と保持部22の上面26とが接触した状態となるため、カテーテル固定具11の全体厚さを確実に抑えることができる。さらに、保持部22がカバー41により全体的に覆われることで、保持部22及びそこに保持されたカテーテル1がドレッシングに直接触れなくなる。このため、ドレッシング剥離に伴うカテーテル1のずれ等を防止することができる。
【0040】
(4)本実施形態のカテーテル固定具11の場合、固定具本体21及びカバー41に、それぞれ位置決めマーク34,48が設けられている。従ってこの構成によると、位置決めマーク34,48の相互の位置関係をもって、固定具本体21及びカバー41の位置決め状態を視覚を通じて容易に把握することできる。
【0041】
(5)本実施形態では、カバー41が固定具本体21よりも硬質な合成樹脂材料からなるため、相対的に軟質の合成樹脂材料からなる保持部22が効率よく押圧される。従って、保持部22が確実に変形してカテーテル保持溝25が確実に狭められる。このため、保持部22によってカテーテル1がより強く締め付けられて固定される。また、本実施形態では、固定具本体21及びカバー41がともに合成樹脂材料製であって金属材料を使用していないことから、核磁気共鳴画像法(MRI)を用いた検査の際でも特に取り外す必要がないという利点がある。
【0042】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・固定部材としてのカバー41を例えば以下のように構成してもよい。図5(a)に示す別の実施形態のカバー41Aでは、外周面に滑り止め用の凸部51を多数設けている。また、図5(b)に示す別の実施形態のカバー41Bでは、外周面における離間した2箇所に半円状の指掛け部52を突設している。また、図5(c)に示す別の実施形態のカバー41Cでは、平面視で多角形状(ここでは八角形状)を呈したものとなっている。そして、これらの構成によると、術者がカバー41A〜41Cの回動操作を行う際にカバー41の外周部44に指が引掛りやすくなり、回転操作を容易に行うことができる。
【0044】
・上記実施形態では、固定部材であるカバー41,41A〜41Cは、大きさが固定具本体21の大きさの半分程度であり、かつ固定具本体21の中央部に配置されるようになっていたが、これに限定されない。例えば、図6に示す別の実施形態のカテーテル固定具11Dのカバー41Dのような構成を採用してもよい。このカバー41Dは、固定具本体21と同じく長円形状を呈していて、固定具本体21より若干小さく形成されている。また、カバー41Dの両端部には、それぞれ透孔55が設けられている。これらの透孔55は、固定具本体21側の穴24の位置に対応しており、穴24よりも若干大径に形成されている。
【0045】
・上記実施形態では、カバー41を不透明樹脂材料からなるものとしたが、透明樹脂材料からなるものとしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、三角形状の位置決めマーク48及び矢印状の位置決めマーク34の組み合わせで位置決め状態を把握するようにしたが、これらとは異なる図形等からなる位置決めマークを採用してもよい。また、特に必要がない場合には位置決めマークを省略してもよい。ちなみに、図6に示したカテーテル固定具11Dでは、位置決めマークを省略しているが、穴24に対する透孔55の位置をもって、位置決め状態を把握することができるようになっている。
【0047】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定具本体及び前記固定部材はともに樹脂製であること。
(2)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材は不透明樹脂材料からなること。
(3)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材の完全嵌合時に前記固定部材の前記被ガイド部に形成された係止凹部が係止可能な係止突起を前記保持部に設けたこと。
(4)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材は、前記固定具本体よりも硬質な材料からなること。
(5)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定具本体及び前記固定部材には、それぞれ位置決めマークが設けられていること。
(6)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材は、前記回転嵌合動作中及び回転嵌合完了時に前記固定具本体からはみ出さないこと。
(7)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材は円形板状の部材であること。
(8)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材は回転嵌合完了時に前記翼片に設けられた穴を覆わないこと。
(9)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定部材は前記固定具本体と別体で構成されていること。
(10)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記固定具本体は皮膚に固定可能であること。
【符号の説明】
【0048】
1…カテーテル
11,11D…カテーテル固定具
21…固定具本体
22…保持部
23…翼片
25…カテーテル保持溝
27…(保持部の)外周面
32…ガイド部としてのガイド溝
41,41A,41B,41C,41D…固定部材としてのカバー
45…被ガイド部
C1…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のカテーテルを固定するための固定具であって、
カテーテル保持溝が形成された保持部と一対の翼片とを有する板状の固定具本体と、前記固定具本体の主面に垂直な仮想線を中心軸として前記主面方向に平行に回転させることにより、前記固定具本体に対して嵌合可能な固定部材とを備え、前記固定部材の回転嵌合時に前記保持部が前記固定部材により押圧されて前記カテーテル保持溝が狭められることを特徴とするカテーテル固定具。
【請求項2】
前記固定部材は平面視で前記固定具本体よりも小さく形成され、前記仮想線は平面視で前記保持部の略中心かつ前記固定部材の略中心に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル固定具。
【請求項3】
前記固定部材は、裏面側を前記保持部の上面に接触させた状態で前記保持部を全体的に覆うカバーであることを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテル固定具。
【請求項4】
前記固定具本体の主面方向に延びるガイド部を前記保持部の外周面に設け、前記ガイド部に係止可能な被ガイド部を前記固定部材の裏面側の外周部に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカテーテル固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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