説明

カテーテル組立体

【課題】カテーテル組立体の弁機構の止血性及び貫通性を向上させる。
【解決手段】カテーテル組立体10は、管状の外針12と、外針12内に連通する流路26を内部に有する外針ハブ14と、流体の流通を遮断する閉塞膜58及び該閉塞膜58を部分的に開閉可能なスリット60を有する止血弁46と、閉塞膜58よりも基端側に配置され先端方向への移動によってスリット60を挿通するプラグ50と、を備える。プラグ50は、先端部から軸方向に延在する一対の切り欠き部70を備え、プラグ50の先端方向への移動にともない、切り欠き部70によって分割された一対の挿通片部72が閉塞膜58に当接して、スリット60に寄るように弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、患者の血管内及び皮膚上に留置され、該患者に対し輸液を可能とするカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、患者に輸液を行う場合は、留置針を患者の血管に穿刺(挿入)して留置し、輸液チューブの先端部と皮膚上に露呈する留置針の基端部を接続することで、輸液ラインを連通させる。そのため、留置針は、輸液チューブとの接続が迅速に行われて、その接続部分を患者の皮膚上に容易に留置できるようにカテーテル組立体として構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているカテーテル組立体は、管状の外針(カテーテル)と、この外針の基端部に接続される外針ハブと、先端に鋭利な針先を有する内針と、この内針の基端部に接続される内針ハブと、を備える。また、外針ハブの内部には、血液の流出を防ぐ止血弁、及び該止血弁のスリットを挿通するプラグ(プッシャ)によって構成される弁機構が配設される。
【0004】
カテーテル組立体を使用する場合は、外針及び内針を一体的に血管内に穿刺した後、内針のみを引き抜いて、外針を血管内に留置させる。この状態では、外針を介して基端側の外針ハブ内の流路に血液が流入されるが、外針ハブ内に収容される止血弁によって該血液の流出が防止される。そして、止血弁の開閉部にプラグを挿通して、輸液チューブを外針ハブの基端側に接続することで、輸液ラインを患者の血管まで連通させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0204648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、カテーテル組立体の弁機構は、上記のように、外針を介して流入してきた血液を精度よく遮断する一方で、カテーテル組立体と輸液チューブの接続において容易且つ確実に接続することが望ましい。すなわち、血液の止血性と、プラグを止血弁に挿通する際の貫通性(容易性、迅速性、確実性等を含む)と、を同時に満たすことが求められる。
【0007】
しかしながら、止血弁とプラグによって構成される弁機構は、止血性を高めようとする場合、止血弁のスリットを簡単に開口しないようにするために、プラグが挿通し難くなり、貫通性が低下する。逆に、貫通性を高めようとする場合、プラグを挿通させ易くするために、止血弁の開閉部が開口し易くなり、止血性が低下する。つまり、カテーテル組立体の弁機構は、止血性と貫通性を共に満たすことが困難となる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成によって、弁機構の止血性及び貫通性を向上させることができ、これにより、弁機構からの血液の流出を低減するとともに、輸液チューブの接続作業の効率化を図ることができるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、管状の挿入部と、前記挿入部の基端側に接続され、該挿入部内に連通する流路を内部に有する保持部と、前記流路上に配設され、流体の流通を遮断する閉塞膜、及び該閉塞膜を部分的に開閉可能な開閉部を有する弁体と、前記閉塞膜よりも基端側に配置され、先端方向への移動によって前記開閉部を挿通する挿通部材と、を備えるカテーテル組立体であって、前記挿通部材の先端部は、軸方向に延在する複数の切り欠き部によって、弾性変形可能な複数の挿通片部に分割されることを特徴とする。
【0010】
上記によれば、挿通部材の先端部が、軸方向に延在する複数の切り欠き部によって、弾性変形可能な複数の挿通片部に分割されることで、挿通部材を先端方向に移動して閉塞膜に当接した場合に、複数の挿通片部が内側に撓んで先端部側が縮径することになり、開閉部内に容易に進入させることができる。すなわち、カテーテル組立体は、挿通部材の貫通性を向上することができる。また、複数の挿通片部の先端部が縮径するように動作することで、該挿通片部が挿通される開閉部を小さく形成することができるため、開閉部が血液を流出させることを抑止することができる。すなわち、カテーテル組立体は、弁体による血液の止血性を向上することができる。
【0011】
また、前記挿通片部は、先端部の外周縁から基端方向に向かって拡径するテーパ部を有することが好ましい。
【0012】
このように、挿通片部の先端部がテーパ部を有することで、止血弁の閉塞膜に挿通片部が当接した場合に、テーパ部に沿って挿通片部の先端部を容易に縮径するように案内することができる。
【0013】
さらに、前記開閉部は、前記閉塞膜に1本のスリット状に貫通形成され、少なくとも2つの前記挿通片部は、正面視で、前記開閉部の延在方向と直交する方向に対向配設されるとよい。
【0014】
このように、開閉部が閉塞膜に1本のスリット状に貫通形成されることで、開閉部を小さくすることができ、血液の止血性を一層向上することができる。また、2つの挿通片部が、正面視で、開閉部の延在方向と直交する方向に対向配設されることで、2つの挿通片部の弾性変形の方向に沿って、スリット状の開閉部を容易に開口させることができ、貫通性を一層向上することができる。
【0015】
この場合、前記切り欠き部は、前記テーパ部よりも基端側に延在していることが好ましい。
【0016】
これにより、切り欠き部によって分割された複数の挿通片部が弾性変形しやすくなり、各挿通片部を開閉部内に容易に進入させることができる。
【0017】
また、カテーテル組立体は、前記挿入部内に挿通される内針と、前記内針の基端側に固着され、前記保持部の基端側に接続可能な内針ハブと、を有していてもよい。
【0018】
これにより、カテーテル組立体を使用する場合に、内針ハブを把持及び操作することで、挿入部及び内針を容易に穿刺することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成によって、弁体と挿通部材によって構成される弁機構の止血性及び貫通性を向上させることができ、これにより、弁機構からの血液の流出を低減するとともに、輸液チューブの接続作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係るカテーテル組立体を示す全体斜視図である。
【図2】図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
【図3】図1のカテーテル組立体の側面断面図である。
【図4】図3のカテーテル組立体から内針及び内針ハブを引き抜いた状態を示す部分側面断面図である。
【図5】図4のV−V線の断面図である。
【図6】図4のカテーテル組立体からプラグを途中まで前進させた状態を示す部分側面断面図である。
【図7】図6のカテーテル組立体からプラグを前進させて止血弁を挿通した状態を示す部分側面断面図である。
【図8】本発明に係るカテーテル組立体の変形例を示す部分側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るカテーテル組立体10を示す全体斜視図であり、図2は、図1のカテーテル組立体10の分解斜視図であり、図3は、図1のカテーテル組立体10の側面断面図である。なお、以下の説明では、図1におけるカテーテル組立体10の図示に基づき、図中左側を先端(前方)と呼び、図中右側を基端(後方)と呼ぶ。
【0023】
本実施の形態に係るカテーテル組立体10は、管状の外針12(挿入部)と、この外針12の基端部に接続される外針ハブ14(保持部)と、先端に鋭利な針先16aを有する内針16と、この内針16の基端部に接続される内針ハブ18と、を備える。このカテーテル組立体10は、外針12と内針16を重ね合わせた(内針16の周囲を外針12で覆った)状態で患者の静脈(血管)に穿刺した後、内針16を内針ハブ18とともに抜去する。これにより、外針12の先端側を静脈内に挿入した状態で、外針12の基端側及び外針ハブ14を患者の皮膚上に留置させる。そして、外針ハブ14の基端側に図示しない輸液チューブを接続することで、この輸液チューブから患者に輸液剤(薬液)の供給が可能となる。なお、カテーテル組立体10の使用前には、外針12及び内針16の不用意な穿刺を防ぐため、プロテクタ20(図2参照)が装着される。
【0024】
カテーテル組立体10の外針12は、可撓性を有する管状(筒状)の部材(カテーテル)として構成される。外針12の構成材料としては、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適である。この場合、例えば、ポリテトラフルオロエテレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエテレン共重合体(ETFE)、ベルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレンー酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0025】
また、外針12は、その全部又は一部が内部を視認できるように、透明性を有する樹脂で構成されることが好ましい。これにより、外針12が静脈内に挿入及び留置された場合に、血液が外針12の内腔22(図3参照)を通って外針ハブ14に流入する現象(フラッシュバックとも呼ばれる)を目視で確認することができる。
【0026】
また、外針12の構成材料中に、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸ビスマス、タングステン酸のようなX線造影剤を配合させることで、造影機能を持たせることもできる。
【0027】
図2に示すように、外針12の基端部は、例えば、かしめ、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着等の方法によって、外針ハブ14の先端部に液密に固着される。本実施の形態に係るカテーテル組立体10では、かしめピン24を用いて、外針12を外針ハブ14に固定保持している(図3及び図4も参照)。
【0028】
図1〜図3に示すように、外針ハブ14は、外針12よりも硬い材質からなる樹脂材料によって、先端方向に先細りとなる筒状に成形される。外針ハブ14は、外針12の基端部を固定保持することで、外針12の操作(穿刺)を容易にし、且つ外針12と輸液チューブ間の連通を容易にする。なお、外針ハブ14は、外針12の静脈への進出手技(穿刺)を容易にするために、軸方向中間部の外周面上に外側に突出するタブ14aを備える。
【0029】
また、外針ハブ14の内部は、輸液を流通可能な流路26として機能し、この流路26は、外針ハブ14の基端部で開口するとともに、外針ハブ14の先端部に固着される外針12の内腔22に接続(連通)される。具体的に、外針ハブ14の流路26は、先端側から基端側に向かって、外針接続部28、先端案内部30、弁体配置部32、及びコネクタ接続部34を有する(図3参照)。
【0030】
外針接続部28は、外針ハブ14の先端部において、外針12の外径に略一致する壁部36(内径)を有する。この外針接続部28には、外針12の基端部が挿入される。
【0031】
また、先端案内部30は、先端側が外針接続部28に連なることで、基端側から供給される輸液剤を外針12に導く機能を有する。先端案内部30を構成する壁部38は、先端寄りの内径が基端方向に向かって漸増するテーパ面38aを有し、さらにテーパ面38aに連なる中間部から基端までは略平行に形成される。
【0032】
弁体配置部32は、先端側が先端案内部30に連なるとともに、該先端案内部30の壁部38よりも拡径した壁部40によって構成される。したがって、先端案内部30と弁体配置部32の間には段差部分が形成される。この弁体配置部32には、後述する止血弁46及びシール部材48が配設される。
【0033】
コネクタ接続部34は、先端側が弁体配置部32に連なり基端方向に延在する。このコネクタ接続部34には、輸液チューブのコネクタ44(図6及び図7参照)が嵌め込み可能となっている。なお、図3中では、コネクタ接続部34を構成する壁部42は軸方向に平行に形成されているが、このコネクタ接続部34の壁部42は、その内径が基端方向に向かって漸増したテーパ状をなしていてもよい。これにともない、コネクタ44の先端部を、対応するテーパ状(テーパ角度)に形成することで、コネクタ接続部34の基端側にコネクタ44の先端部を容易に挿入して接続することができる。このように接続すれば、コネクタ接続部34の壁部42とコネクタ44の外周面との密着性が増し、一層液密に接続することが可能となる。
【0034】
図4は、図3のカテーテル組立体10から内針16及び内針ハブ18を引き抜いた状態を示す部分側面断面図であり、図5は、図4のV−V線の断面図である。
【0035】
図2〜図4に示すように、外針ハブ14の流路26には、先端側からかしめピン24、止血弁46(弁体)、シール部材48、プラグ50(挿通部材)が順に収容される。このうち、止血弁46及びプラグ50は、カテーテル組立体10において血液の遮断及び輸液剤の供給を可能とする弁機構45として機能する。
【0036】
かしめピン24は、上述したように、外針12と外針ハブ14を接続固定させるための部材であり、先端側に管状の円管部52と、この円管部52から基端側に向けて直径が漸増するテーパ部54と、を有する。このかしめピン24は、円管部52が外針ハブ14(流路26)の外針接続部28に収容され、テーパ部54が外針ハブ14の先端案内部30の先端側に収容される。
【0037】
円管部52は、外径が外針12の内腔22と略一致するように形成され、軸方向に所定長さ延設される。カテーテル組立体10は、外針ハブ14の外針接続部28に外針12を挿入した状態で、円管部52が外針接続部28に挿入されてかしめられる。これにより、外針接続部28の壁部36とかしめピン24の円管部52によって外針12を狭持し、外針12が外針ハブ14に固定保持される。なお、かしめピン24は、円管部52で外針12と外針ハブ14をかしめるため、金属製又は硬質の樹脂製とするのが好ましい。
【0038】
また、かしめピン24のテーパ部54は、外針ハブ14の先端案内部30のテーパ面38aに対応して、先端側から基端側に向けて外径が漸増するように形成される。したがって、かしめピン24は、テーパ部54とテーパ面38aが密着した状態で流路26に収容される。このテーパ部54は、基端側から輸液剤が流入されると、外針12に向けてこれをスムーズに流出させることができる。
【0039】
なお、外針12と外針ハブ14の固定が融着や接着剤によって行われる場合は、かしめピン24を用いなくてもよいことは勿論である。この場合は、外針ハブ14の先端案内部30がテーパ面38aに形成されていることで、基端側から輸液剤が流入された場合に、外針12に向けて輸液剤をスムーズに流出させることができる。
【0040】
止血弁46は、外針ハブ14の流路26を塞ぐように配設される部材であり、流体(血液)の流出を遮断する機能を有する。具体的に、止血弁46は、有底筒状に形成され、側周壁56が外針ハブ14の弁体配置部32の壁部40に密着して配置される。また、止血弁46は、底部が輸液剤の流通を遮断する閉塞膜58として構成され、この閉塞膜58の中央部には該閉塞膜58を貫通するスリット60(開閉部)が形成される。
【0041】
閉塞膜58は、所定の膜厚からなり、流路26に流入される血液を受ける弁としての機能を有する。すなわち、閉塞膜58は、スリット60が容易に開いて、血液が該止血弁46の基端側に流れ込まないよう所定の弾性力をもって構成される。
【0042】
スリット60は、この閉塞膜58を正面視で1本の線状として貫通することで、1つの平面状に存在するように形成される。具体的に、スリット60は、正面視(図5参照)で、閉塞膜58の中心点を通る幅方向に、比較的短い範囲で切り込み形成される。このスリット60は、内針16及びプラグ50が挿脱可能となっており、内針16及びプラグ50の未挿入状態では自己閉塞するように形成される。このように、止血弁46は、1本のスリット60を短く形成することで、閉塞力が高まり、血液をより確実に遮断することができる。
【0043】
止血弁46は、血流(血圧)によってスリット60が容易に開口しない硬さを有する弾性材料で構成されることが好ましい。止血弁46を弾性材料で構成することにより、スリット60をプラグ50によって簡単に挿通させることもできる。止血弁46を構成する弾性材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の各種弾性材料が挙げられ、これらの弾性材料の中でも、特に、イソプレンゴムを用いるのが好ましい。弁体の構成材料にイソプレンゴムを用いた場合には、圧縮永久歪みが小さく、製品の使用可能期間が長くなるという利点がある。
【0044】
図3〜図5に示すように、止血弁46が配設される弁体配置部32の壁部40には、外針ハブ14の先端案内部30と弁体配置部32の基端側を連通させる複数の内周溝部66が設けられている。内周溝部66は、その先端部が先端案内部30と弁体配置部32の間の段差部分を切り欠くようにして形成され、この先端部から弁体配置部32の壁部40に沿って軸方向に延設される。
【0045】
内周溝部66は、外針12及び内針16を患者の静脈に穿刺し、内針16を抜去した後に、外針ハブ14の先端案内部30内に気体(空気)が残留することを防ぐために設けられる。すなわち、止血弁46よりも先端側にある空気は、内針16を抜去した際に、流路26内に流入してきた血液に押されて内周溝部66を通過し基端側に導かれる。なお、内周溝部66の形状は、先端側から基端側にかけて外針ハブ14の壁部40に直線状に形成するだけでなく、例えば、波形や螺旋を描くように形成してもよい。また、内周溝部66の深さは、外針ハブ14及び止血弁46の形状にもよるが、例えば、約5〜20μmに設定すると好適である。さらに、内周溝部66は、外針ハブ14の壁部40(内周面)に形成するだけでなく、止血弁46の側周壁56に形成してもよい。
【0046】
また、本実施の形態に係るカテーテル組立体10は、止血弁46の基端側に、内周溝部66を塞ぐようにシール部材48を配置している。このシール部材48は、筒状に形成されており、気体を通過させ、且つ液体を通過させないシール性を有し、止血弁46と密着し且つ内周溝部66を塞ぐようにして配設される。シール部材48は、止血弁46との密着性を向上させるため、先端部が止血弁46の基端側開口部に嵌合される筒状凸部48aに形成される。また、シール部材48は、融着や接着剤等の方法によって外針ハブ14(弁体配置部32)の壁部40に固着させることができる。止血弁46とシール部材48は、外針ハブ14の弁体配置部32によって先端側及び基端側の変位が抑制される。従って、内針16やプラグ50を挿脱しても止血弁46の配設位置が維持されるため、スリット60の開閉動作をスムーズに行うことができる。
【0047】
シール部材48は、気体を通過させることはできるが液体は通過させ難いものを用いる。このようなシール部材48として、例えば、ポリエチレン製の焼結体等の多孔質体で形成したものを好適に用いることができる。多孔質体のシール部材48は製造も簡単で、精度よく製造できる点でも好適である。
【0048】
一方、止血弁46とともに弁機構45を構成するプラグ50は、硬質性を有する樹脂材料によって略筒状に形成される。このプラグ50は、外針ハブ14の流路26上で閉塞膜58よりも基端側に配設され、外針ハブ14の軸方向に進出自在とされている。プラグ50の内腔68は、輸液剤を流通させるための流路として機能する。このプラグ50は、所定の操作(輸液チューブ接続時のコネクタ44の押し込み動作)によって、外針ハブ14の先端方向に進出移動することで、止血弁46のスリット60を挿通し、外針ハブ14の先端案内部30(流路26)と内腔68を連通させる。
【0049】
図2及び図4に示すように、本実施の形態に係るプラグ50は、先端部から軸方向に向かって切り欠かれた一対の切り欠き部70を有する。この切り欠き部70は、プラグ50の周方向に比較的大きな幅(例えば、0.2mm〜2mm程度)で切り欠かれ、軸方向に所定長さ(例えば、2〜3mm程度)延在する。プラグ50の先端部は、この一対の切り欠き部70によって、軸方向に延出する一対の挿通片部72に分割される。この一対の挿通片部72は、切り欠き部70側に向かって互いに近接するように弾性変形することができる。すなわち、一対の挿通片部72は、その間にある一対の切り欠き部70によって、基端側の分割部分(胴部73との連結部分)から傾斜して、プラグ50の軸心側に寄る(プラグ50の先端部が縮径する)ように変形可能とされている。
【0050】
また、一対の挿通片部72の先端部の外周面には、半径方向外方に突出し周方向に延在した2つの鍔部(第1鍔部72a、第2鍔部72b)が軸方向に並べられている。この場合、第1及び第2鍔部72a、72bは、先端部から基端方向に向かって漸増するテーパ状(テーパ部)に形成される。
【0051】
第1鍔部72bは、テーパ状となっていることで、プラグ50が閉塞膜58に当接した場合に、閉塞膜58からの押圧力を斜め方向から受けて、挿通片部72の先端部を縮径させることができる。
【0052】
また、第2鍔部72bは、プラグ50がスリット60を貫通(挿通)した状態で、止血弁46のスリット60に係合する係合部として機能する。すなわち、プラグ50の第2鍔部72bが止血弁46のスリット60に係合することにより、プラグ50が不本意に基端方向に移動するのが防止され、外針ハブ14の流路26とプラグ50の内腔68との連通状態が確実に維持される。なお、本実施の形態では、2つの鍔部(第1及び第2鍔部72a、72b)を示したが、1つもしくは3つ以上でもよい。
【0053】
さらに、プラグ50は、切り欠き部70及び挿通片部72に連なる胴部73と、この胴部73に連なる基端拡径部74と、を有する。胴部73は、基端方向に所定長さ延在し、外針ハブ14の流路26に収容した状態では、弁体配置部32からコネクタ接続部34にかけて配置される。
【0054】
基端拡径部74は、この胴部73の基端側に連設されることで、外針ハブ14のコネクタ接続部34に配置される。基端拡径部74の基端寄りの外周面には、半径方向外方に突出し且つ周方向に延在するフランジ部74aが形成されていてもよく、このフランジ部74aは、外針ハブ14のコネクタ接続部34の壁部42(内径)に略一致する外径に形成される。したがって、プラグ50が進出移動する際には、フランジ部74aがコネクタ接続部34の壁部42を摺動することになり、その移動が安定して行われる。
【0055】
プラグ50の進出前は、プラグ50がスリット60よりも基端側にあるため、スリット60が自己閉塞性によって閉じ、流路26が遮断されている。そして、プラグ50が進出移動することで、先端部がスリット60を貫通して止血弁46よりも先端側に移動し、プラグ50の内腔68と流路26が接続される。すなわち、カテーテル組立体10は、プラグ50を流路26の軸方向に沿って進出移動させて先端部を止血弁46のスリット60に挿入させることによって、流路26とプラグ50の内腔68との連通を行う(図7参照)。
【0056】
ここで、本実施の形態に係るプラグ50は、図5に示すように、一対の挿通片部72が、正面視で、スリット60の延在方向と直交する方向に対向配設される。これにより、挿通片部72は、スリット60に対し直交方向に弾性変形することになり、スリット60が開口しやすい方向(延在方向に対し直交する方向)と弾性変形の方向を一致させることができる。
【0057】
図3に戻り、カテーテル組立体10の内針16は、基端部が内針ハブ18に固定され、該基端部から先端部に向かって外針12及び外針ハブ14を貫通可能な長さに形成される。カテーテル組立体10を組み立てた状態では、内針16は、外針12、外針ハブ14、止血弁46及びプラグ50内を挿通する。これにより、外針12の先端開口部から内針16の鋭利な針先16aが突出するように構成され、この針先16aにより、生体表面を簡単に穿刺することが可能となる。内針16の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料があげられる。
【0058】
なお、内針16の外周部には、内針16の軸方向に沿って図示しない溝を設けてもよい。この溝は、外針12及び内針16を血管に穿刺した際に、血液を外針12の内腔22に導入する導入路として機能させることができる。溝から導入された血液は、外針12と内針16との隙間に流入する。これにより、血液のフラッシュバックを早期から確実に確認することができる。
【0059】
内針ハブ18は、内針16を基端側で操作可能なケース76を有し、このケース76の内部には内針16を固定保持する固定ブロック78が設けられる。このケース76は、片手で把持し易い細長い形状に成形される。また、内針ハブ18は、外針ハブ14の基端側と接続可能となっている。これにより、外針12及び内針16の穿刺を、内針ハブ18を操作することで容易に行うことができる。
【0060】
カテーテル組立体10は、既述したように、外針12及び内針16を患者の静脈に穿刺した後に、外針12に挿入されている内針16を引き抜く(抜去する)操作が実施される。カテーテル組立体10の使用者は、この内針16を引き抜く際に内針ハブ18(ケース76)を把持して引き抜くことで、簡単に外針12から内針16を脱抜することができる。
【0061】
外針ハブ14及び内針ハブ18の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等の各種樹脂材料があげられる。また、プラグ50も同じ材料によって構成することで、製造コストの低減を図ることもできる。
【0062】
図6は、図4のカテーテル組立体10からプラグ50を途中まで進出させた状態を示す部分側面断面図であり、図7は、図6のカテーテル組立体10からプラグ50を進出させて止血弁46を挿通した状態を示す部分側面断面図である。
【0063】
図6及び図7に示すように、カテーテル組立体10は、内針16の抜去後に、外針ハブ14のコネクタ接続部34に筒状のコネクタ44が挿入される。このコネクタ44は、コネクタ接続部34の壁部42(内径)に略一致する外径に形成されており、コネクタ接続部34への挿入によって外針ハブ14に嵌合してその接続状態が保持される。外針ハブ14にコネクタ44を接続した状態では、コネクタ44の先端面がプラグ50の基端拡径部74に当接し、プラグ50の内腔68とコネクタ44の内腔44aが連通される。
【0064】
また、コネクタ44の基端部には、図示しない輸液チューブの先端部が予め接続されており、この輸液チューブの基端部には、輸液剤が充填された図示しない輸液バッグが接続されている。したがって、カテーテル組立体10は、輸液バッグ、輸液チューブ、コネクタ44を介して輸液剤が供給され、さらにプラグ50の内腔68を通して外針ハブ14の流路26、外針12の内腔22に該輸液剤を導くことができる。
【0065】
なお、輸液剤の供給を確実に行うため、外針ハブ14及びコネクタ44には、接続状態を維持するロック機構(図示せず)が設けられるとよい。また、コネクタ44の先端部は、その外径が、基端方向に向かって漸増するテーパ状に形成されていてもよい。これにより、コネクタ44を接続する際に、外針ハブ14の基端側に容易に挿入でき、輸液剤の供給後に外針ハブ14から容易に離脱させることができる。
【0066】
また、プラグ50は、基端拡径部74の内径が、コネクタ44の内径と同じか、それよりも大きく設定してもよい。このようにすれば、コネクタ44を外針ハブ14の基端部に接続した場合に、コネクタ44からプラグ50への輸液剤の流入を容易且つ確実に行わせることができる。
【0067】
本実施の形態に係るカテーテル組立体10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にこのカテーテル組立体10を使用した場合の動作及び効果について説明する。
【0068】
カテーテル組立体10は、その使用前には、図2に示される各部材が組み付けられた状態で提供される。すなわち、図3に示すように、外針12の基端部が外針ハブ14に固定されて先端方向に突き出しており、この外針ハブ14の内部(流路26)には、かしめピン24、止血弁46、シール部材48、プラグ50がそれぞれ所定位置に配設されている。また、内針16の基端部が内針ハブ18に固定されて、外針ハブ14内を挿通し、さらに外針12の内腔22を挿通して、その針先16aが外針12の先端部から露出している。この内針16は、外針ハブ14の流路26内では、止血弁46のスリット60及びプラグ50の内腔68を貫通して内針ハブ18と接続されている。また、カテーテル組立体10は、外針ハブ14の先端から外針12及び内針16を覆うようにしてプロテクタ20(図2参照)が装着されている。
【0069】
したがって、カテーテル組立体10の使用においては、先ずプロテクタ20を取り外して、カテーテル組立体10を患者の所望位置(穿刺位置)に位置決めする。次いで、内針ハブ18を把持して、患者の静脈に内針16及び外針12を穿刺する。外針12及び内針16が静脈に挿入されると、血圧によって血液が外針12と内針16の間を通って基端方向へ流入する。この際、外針12又は外針ハブ14が透明性を有する材料で形成されているため、血液の流入を視認することができる。
【0070】
外針ハブ14内に流入した血液は、流路26の先端案内部30まで流入されて、止血弁46によりそれ以上基端側に流入することが遮断される。この血液の流入において、先端案内部30に存在していた空気は、内周溝部66を通り、気体を透過可能なシール部材48を介して、外針ハブ14の基端側に排気される。
【0071】
血液の流入を視認した後、さらにカテーテル組立体10を微小距離だけ先端方向へ進める。具体的には、外針ハブ14のタブ14aに指をかけて、静脈に対し外針12及び内針16を所定量進出させる。外針12を進出させた後は、外針12又は外針ハブ14を一方の手で固定し、他方の手で内針ハブ18を把持して基端方向へ引っ張り、内針16を外針12から抜去する。これにより、カテーテル組立体10は、外針12及び外針ハブ14が患者に留置された状態となる。なお、抜去された内針16は不要となるため、廃棄処分に供される。
【0072】
図4及び図5に示すように、カテーテル組立体10は、内針16が抜去された状態では、止血弁46のスリット60が閉じた状態となり、流路26(先端案内部30)に流入されている血液が、外針ハブ14の基端側から外部に流出(漏出)されることを防止することができる。この場合、スリット60が1本且つ幅が短く形成されていることで、外針ハブ14の流路26に流入されている血液から押圧力(血圧)がかかっても、血液が閉塞膜58の基端側に流出することが抑止される。すなわち、止血弁46は、閉塞膜58によって確実に血液を押し留める(遮断する)ことができる。
【0073】
内針16を抜去した後は、外針ハブ14を粘着テープ等により患者の皮膚上に固定し、図6に示すように、外針ハブ14の基端側から輸液チューブのコネクタ44を挿入する。このコネクタ44の挿入にともない、外針ハブ14の流路26内に収納されていたプラグ50がコネクタ44に押圧されて先端方向に移動し、該プラグ50が止血弁46の閉塞膜58を押し込んでいく。
【0074】
ここで、本実施の形態に係るプラグ50は、先端部が一対の切り欠き部70によって分割された一対の挿通片部72として延出している。一対の挿通片部72を閉塞膜58に押し当てると、閉塞膜58の中央部分が先端方向に変位し全体的に弓なりに撓んでいき、これと同時に、一対の挿通片部72が閉塞膜58から反力(押圧力)を受けることで、軸心方向に変形していく。これにより、閉塞膜58に形成されたスリット60が開口していくとともに、一対の挿通片部72が互いに近接していく。その結果、一対の挿通片部72の先端部が縮径していき、スリット60に寄ることになり、該一対の挿通片部72をスリット60内に容易に進入させることができる。
【0075】
これにより、図7に示すように、プラグ50の挿通片部72を、閉塞膜58のスリット60に挿入することができる。よって、プラグ50の押込み量(閉塞膜58の変形量)が少ない段階でプラグ50をスリット60に挿通することが可能となり、輸液チューブの接続にかかる押圧力(差込力)を低減することができる。その結果、輸液チューブの接続作業を短時間に行うことができ、しかも止血弁46にプラグ50をより確実に貫通させることが可能となる。また、弾性変形される止血弁46の負担も軽減される。
【0076】
このように、弁機構45は、プラグ50の挿入における貫通性が向上し、プラグ50がスムーズに止血弁46に挿通されることで、閉塞膜58の基端側への血液の流出を防ぐことができる。すなわち、カテーテル組立体10はプラグ50の挿入時の止血性も向上する。
【0077】
止血弁46のスリット60に対して、プラグ50を第2鍔部72bまで挿通すると、この第2鍔部72bがスリット60の縁部に引っ掛かることになり、プラグ50の抜けが防止される。これにより、外針ハブ14の流路26(先端案内部30)とプラグ50の内腔68が連通し、輸液チューブから外針12まで輸液を導くことが可能となる。
【0078】
次に、輸液バックから輸液剤の供給が開始される。輸液チューブ及びコネクタ44を順に通過した輸液剤は、プラグ50の内腔68の開口部から流出され、流路26全体に満たされる(プライミングされる)。さらに、輸液剤は、外針ハブ14の流路26から外針12の内腔22を介して患者の静脈内に導かれる。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係るカテーテル組立体10によれば、プラグ50が、先端部から軸方向に延在する2つの切り欠き部70を備え、該プラグ50の先端方向への移動にともない、切り欠き部70によって分割された一対の挿通片部72が閉塞膜58に当接して、その先端部側が縮径するように弾性変形することで、一対の挿通片部72を、該スリット60内に容易に進入させることができる。すなわち、カテーテル組立体10は、プラグ50の貫通性を向上することができる。また、一対の挿通片部72の先端部が縮径するように動作することで、止血弁46のスリット60を小さく形成することができるため、スリット60が血液を流出させることを抑止することができる。すなわち、カテーテル組立体10は、止血弁46による血液の止血性を向上することができる。
【0080】
また、挿通片部72が先端部に第1鍔部72a(テーパ部)を有することで、止血弁46の閉塞膜58に挿通片部72が当接した場合に、第1鍔部72aに沿って挿通片部72を容易にスリット60に寄るように案内することができる。
【0081】
さらに、切り欠き部70は、鍔部72a、72bよりも基端側へ長く延在している。これにより、切り欠き部70によって分割された一対の挿通片部72が弾性変形しやすくなり、一対の挿通片部72を、スリット60内に容易に進入させることができる。
【0082】
またさらに、一対の挿通片部72が、正面視で、スリット60の延在方向と直交する方向に対向配設されることで、該一対の挿通片部72の先端部を縮径する(スリット60に寄る)ように弾性変形すると、一対の挿通片部72の弾性変形の方向に沿って、スリット60を容易に開口させることができ、貫通性を一層向上することができる。
【0083】
なお、止血弁46に形成されるスリット60は、1本の線状に限定されるものではなく、血液の止血性を充分に保障する限りで、十字状やY字状(卜字状)等としてもよい。この場合、スリット60の形状に合せて、プラグ50の切り欠き部70を形成してもよい。
【0084】
また、プラグ50に形成される切り欠き部70は、幅方向に並べて一対(2つ)設けるだけでなく、2つよりも多く形成してよいことは勿論である。例えば、3つの切り欠き部70をプラグ50の周方向に120°間隔で形成してもよく、4つの切り欠き部70をプラグ50の周方向に90°間隔で形成してもよい。このように、複数の切り欠き部70を等間隔で形成することで、該切り欠き部70によって分割される複数の挿通片部72が同形状に形成することができ、弾性変形する際の変形量が均一化され、スリット60に容易に挿通させることが可能となる。勿論、複数の切り欠き部70を等間隔に形成せず、また複数の挿通片部72を同じ形状に形成しなくてもよい。
【0085】
〔変形例〕
図8は、本発明に係るカテーテル組立体10Aの変形例を示す部分側面断面図である。なお、変形例に係るカテーテル組立体10Aにおいて、上記の実施の形態に係るカテーテル組立体10と同一の構成又は同一の機能を奏する構成には、同じ符号を付すこととし、その詳細な説明については省略する。
【0086】
変形例に係るカテーテル組立体10Aは、カテーテル組立体10のプラグ50が有する切り欠き部70よりも、軸方向に長く延設された一対の切り欠き部80が形成されたプラグ90を備える。また、プラグ90は、切り欠き部80にともない一対の挿通片部82も長く延出するように形成される。さらに、プラグ90は、基端部(基端拡径部84)又はその近傍にプラグ90の内外を貫通する輸液排出部86が形成される。この輸液排出部86は、プラグ90を外針ハブ14のコネクタ接続部34に配置した状態で、プラグ90の内腔88と外針ハブ14の流路26(コネクタ接続部34)とを連通させる。
【0087】
本変形例に係るカテーテル組立体10Aは、外針12及び内針16を患者の静脈に穿刺して、内針16を抜去した後、輸液チューブのコネクタ44を接続するまでの動作は、上記したカテーテル組立体10と同じ過程で行うことができる。すなわち、カテーテル組立体10Aとコネクタ44の接続時には、コネクタ44によりプラグ90を押し込むことで、止血弁46の閉塞膜58に一対の挿通片部82が当接し、閉塞膜58を先端方向に変形させていく。一対の挿通片部82は、このときの閉塞膜58からの押圧力によって、スリット60に寄るように弾性変形され、スリット60内に容易に進入する。したがって、変形例に係るカテーテル組立体10Aであっても、プラグ90の貫通性を向上することができる。また、カテーテル組立体10Aは、カテーテル組立体10と同一の止血弁46を適用することで、止血性も向上することができる。
【0088】
変形例に係るカテーテル組立体10Aは、外針ハブ14の流路26とプラグ90の内腔88が連通した状態で、輸液チューブからコネクタ44を介して輸液剤が供給されると、該輸液剤はプラグ90の内腔88を通過する第1ルートR1を採る一方で、輸液排出部86から外針ハブ14の流路26(コネクタ接続部34)に流出させることができる。この輸液排出部86から流出した輸液剤は、コネクタ接続部34からシール部材48の内部を通って、止血弁46の筒内に流れ込み、さらにプラグ90の切り欠き部80から内腔88に戻る第2ルートR2を通ることができる。
【0089】
このように、変形例のプラグ90を用いることで、第1及び第2ルートR1、R2という2つのルートで輸液剤を供給することができ、該輸液剤の供給力を向上させることができる。また、第2ルートR2を通る輸液剤は、例えば、内周溝部66(図5参照)及びシール部材48を介して、外針ハブ14の基端側に流出(漏出)した血液を、輸液剤と共に流路26の先端側に導くことができる。これにより、外針ハブ14内に血液が付着することが回避され、カテーテル組立体10Aを視認した場合に、外針ハブ14が透明性を有していても、血液を視認することがない。すなわち、カテーテル組立体10Aの外観性を向上させることができる。
【0090】
なお、本発明に係るカテーテル組立体10、10Aは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0091】
10…カテーテル組立体 12…外針
14…外針ハブ 16…内針
18…内針ハブ 26…流路
44…コネクタ 45…弁機構
46…止血弁 50、90…プラグ
58…閉塞膜 60…スリット
70、80…切り欠き部 72、82…挿通片部
72a、82a…第1鍔部 72b、82b…第2鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の挿入部と、
前記挿入部の基端側に接続され、該挿入部内に連通する流路を内部に有する保持部と、
前記流路上に配設され、流体の流通を遮断する閉塞膜、及び該閉塞膜を部分的に開閉可能な開閉部を有する弁体と、
前記閉塞膜よりも基端側に配置され、先端方向への移動によって前記開閉部を挿通する挿通部材と、を備えるカテーテル組立体であって、
前記挿通部材の先端部は、軸方向に延在する複数の切り欠き部によって、弾性変形可能な複数の挿通片部に分割される
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテル組立体において、
前記挿通片部は、先端部の外周縁から基端方向に向かって拡径するテーパ部を有する
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項3】
請求項2記載のカテーテル組立体において、
前記開閉部は、前記閉塞膜に1本のスリット状に貫通形成され、
少なくとも2つの前記挿通片部は、正面視で、前記開閉部の延在方向と直交する方向に対向配設される
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項4】
請求項2又は3記載のカテーテル組立体において、
前記切り欠き部は、前記テーパ部よりも基端側に延在している
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のカテーテル組立体において、
前記挿入部内に挿通される内針と、
前記内針の基端側に固着され、前記保持部の基端側に接続可能な内針ハブと、を有する
ことを特徴とするカテーテル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70870(P2013−70870A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213049(P2011−213049)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】