説明

カテーテル

【課題】視認性を損なうことなく、カテーテルの識別性を有するカテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】編組3は、第一の方向に螺巻される条体3aと第二の方向に螺巻される条体3bとにより編組され、条体3a、3bは、第一条体31と、第一条体31よりも幅の広い第二条体32とを含み、第一条体31はX線透過性材料を含み、第二条体32はX線不透過性材料を含み、特定の方向に螺巻される条体は第二条体32の間に第一条体31が配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルの視認性を損なうことなく、識別性を有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、目的部位の治療のために人体の体腔に挿入されて、その先端より薬液や治療材料の放出や血液等の吸引等を行うことに用いられる。そのため、人体の目的部位にカテーテルの先端が到達したかどうかの確認のために、カテーテルの先端にX線不透過性材料でマーカーが付される。このようなマーカーではカテーテルの先端部位の位置しか知ることができないので、よりカテーテルの位置を明確に視認するために、内層部と外層部との間に補強層が設けられ、該補強層がタングステン線にて形成されたカテーテルが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−286779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カテーテルの視認性のためにタングステン線のみで補強層を設けたのであっては、カテーテルの先端から基端方向へ延びるカテーテル自体の形状や位置が人体の体腔内で視認しやすくなるが、補強層を形成するタングステン線の編組により、カテーテルの内部を通過するX線不透過性材料からなる留置物の識別や、複数本のカテーテルを用いた際の一方のカテーテルに重なる他方のカテーテルの識別や、カテーテルの裏側に存在する人体の部位の識別をすることができない。また、このような識別性を維持するために、タングステン線の一部をX線透過性のステンレス線に置き換えて用いた場合には、カテーテルそのものとしてのX線不透過性が低下して視認性を損なってしまう。
【0005】
本発明は、カテーテルの視認性を損なうことなく、カテーテルの識別性を有するカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカテーテルは、樹脂製内筒、前記内筒の外側を囲周する編組、および前記編組の外側を囲周する樹脂製外筒を備えたカテーテルにおいて、前記編組は、第一の方向に螺巻される条体と第二の方向に螺巻される条体とにより編組され、前記条体は、第一条体と、前記第一条体よりも幅の広い第二条体とを含み、前記第一条体はX線透過性材料を含み、前記第二条体はX線不透過性材料を含み、特定の方向に螺巻される条体は第二条体の間に第一条体が配置されたことを特徴とする。
【0007】
また、前記第二条体は、X線照射による像が、前記第一条体のX線照射による像に比べて幅が広くなるように配されることが好ましい。
【0008】
また、前記第二条体は、平線、第一条体よりも径の太い丸線または複数の素線を並行かつ隣接させた素線集合体であることが好ましい。
【0009】
また、前記第二条体が前記素線集合体であり、前記素線が前記第一条体の素線径と略同一であることが好ましい。
【0010】
また、前記第一条体がステンレスを含みからなり、前記第二条体がタングステンまたは白金からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカテーテルによれば、第一の方向に螺巻される条体と第二の方向に螺巻される条体とにより編組され、条体は、第一条体と、前記第一条体よりも幅の広い第二条体とを含み、第一条体はX線透過性材料を含み、第二条体はX線不透過性材料を含み、特定の方向に螺巻される条体は第二条体の間に第一条体が配置されることにより、視認性と識別性との両立が可能である。また、単にX線不透過性の条体の間隔を開けるだけでは、強度不足となるが、X線不透過性の第二条体の間にX線透過性材料を含む第一条体が配置されることにより、カテーテルの強度を維持することができる。
【0012】
また、第二条体は、X線照射による像が、第一条体のX線照射による像に比べて幅が広くなるように配されるので、より確実にカテーテルの視認性を有することができる。
【0013】
また、第二条体は、平線、第一条体よりも径の太い丸線または複数の素線を並行かつ隣接させた素線集合体であるので、入手が容易で、製造も容易である。
【0014】
また、第二条体が素線集合体であり、素線が第一条体の素線径と略同一であるので、複数持ちの素線集合体とすることで、さらに可撓性が良好で、押し込み強度も良好となる。
【0015】
また、第一条体がステンレスからなり、第二条体がタングステンまたは白金からなることにより、入手が容易で、製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のカテーテルの一実施の形態における構造を示す斜視図である。
【図2】本発明のカテーテルの他の実施形態である第一条体および第二条体の配置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のカテーテルにX線を照射したときの、第二条体の像を示す図である。
【図4】本発明のカテーテルの製造工程のうち、内筒を形成する工程を説明するための図である。
【図5】本発明のカテーテルの製造工程のうち、編組を形成する工程を説明するための図である。
【図6】本発明のカテーテルの製造工程のうち、外筒を形成する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明のカテーテルを詳細に説明する。
【0018】
本発明のカテーテル1は、図1に示す一実施の形態においては、樹脂製内筒2、内筒2の外側を囲周する編組3、および編組3の外側を囲周する樹脂製外筒4を備えている。
【0019】
内筒2は、図1に示すように、ガイドワイヤの挿入や、薬液や造影剤などを注入するための内腔を有している。内筒2の材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド等の樹脂、またはこれらのうち少なくとも2種以上の混合物を用いることができる。
【0020】
内筒2の外側には、内筒2の外周に部分的に条体3a、3bがコイル状に螺巻された編組3が施され、編組3はカテーテル1の押し込み力が、医師等が操作する基端側から、患部側である先端側に確実に伝達されるようにするための補強層として機能する。条体3a、3bは、内筒2の外周に螺巻され、編組3を構成する金属製の細長い部材をいい、条体3a、3bは1本持ちだけに限られることはなく、2本持ち、3本持ち等、複数本持ちのものも含まれる。また、本明細書において「条体3a、3b」という場合は、その断面形状は特に限定されるものではなく、円形以外に、楕円形、平板状であっても構わない。そして、編組3の外側は、編組3を外周側から囲周するように、合成樹脂製の外筒4により被覆されている。外筒4の材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種エラストマー等の樹脂やこれらの2以上を組み合わせたものを用いることができる。
【0021】
編組3は、図1に示すように、第一の方向に螺巻される条体3aと第二の方向に螺巻される条体3bとにより編組され、条体3a、3bが交差するように、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、内筒2の外側を、図1中、右端部から見て時計回りに螺旋状に巻き付けられる複数の条体3aと、当該時計回りに螺旋状に巻き付けられる条体3aとは反対の、図1中、右端部から見て反時計回りに螺旋状に巻き付けられる複数の条体3bとが編組され、編組3がカテーテル1の補強層として機能する。なお、「内筒2の外側を囲周する編組3」とは、内筒2の外周全面を取り囲むのではなく、部分的に取り囲むことをいうものである。
【0022】
図1においては、条体3a、3bは、第一条体31と、第一条体31よりも幅の広い第二条体32とを含んでいる。なお、本発明のカテーテル1は、条体3a、3bのうち、いずれか一方側(いずれか一方の回転方向に巻かれた側)が第一条体31、第二条体32の両方を含んでいればよいが、条体3a、3bの両方が第一条体31、第二条体32の両方を含むことにより、カテーテル1を回転させたときの、回転方向による性能の偏りを無くすことができる。
【0023】
第一条体31はX線透過性材料を含み、その材料としては、例えばステンレスなどが用いられる。また、第二条体32は、X線不透過性材料を含み、X線不透過性の第二条体32の材質としては、タングステン、白金やこれらの合金を用いることができる。第一条体31にステンレスを用い、第二条体32にタングステン、白金を用いる場合、いずれも入手が容易であり、カテーテル1の製造も容易となる。
【0024】
ここで、第一条体31よりも幅の広い第二条体32は、第二条体32のX線照射による像が、第一条体31のX線照射による像に比べて幅が広くなるように配されていればよい。すなわち、第二条体32と第一条体31の実際の幅との関係ではなく、X線照射時における第二条体32の像と第一条体31の像との関係をいうものである。後述の他の実施形態についての説明図である図2に示すように、内筒2の周方向において幅が第一条体31よりも広くなるように配することにより、X線透過性材料の第一条体31は、X線照射により像として映りにくく、X線不透過性材料を含む第二条体32は、X線照射により像として写りやすいため、X線照射時に、幅の広い第二条体32の像が、第一条体31による像よりも幅の広い像として映り、第二条体32により形成される像により、カテーテル1の視認性を高めることができる。なお、第一条体31は、第二条体32よりも幅が狭く、X線照射時の像が第二条体32よりも幅が狭く映るものであれば、その形状は特に限定されるものではなく、丸線、平線であってもよく、素線の2本持ち等、複数本持ちの第一条体31としてもよい。
【0025】
また、条体3a、3bは、条体3a、3bを構成する第一条体31、第二条体32が複数組から構成される場合、すなわち、図2に示すように、第一条体31が4組、第二条体32が4組あるような実施形態とすることもできる。なお、第一状体31と第二条体32とは、それぞれの第一条体31A、31B、31C、31D、およびそれぞれの第二条体32A、32B、32C、32Dを異なる材料、異なる外径とすることもできる。また、図2では、第一条体が4組、第二条体32が4組として図示しているが、第一条体31および第二条体32の組数は、特に限定されるものではない。
【0026】
第二条体32は、第一条体31よりも幅が広いものであれば、その構造は特に限定されるものではないが、例えば、第一条体31の幅よりも大きい平線、第一条体31よりも径の太い丸線、または複数の素線(図2においては、2本の素線)を並行かつ隣接させた素線集合体とすることができる。第二条体32に、第一条体31の幅よりも大きい平線、第一条体31よりも径の太い丸線、または複数の素線を並行かつ隣接させた素線集合体を用いることにより、いずれも入手が容易で、カテーテル1の製造も容易となる。
【0027】
また、図2に示すように、第二条体32を並行かつ隣接させた素線集合体とし、それぞれの素線の素線径を第一条体31の素線径と略同一とした場合、複数持ちの素線集合体とすることで、さらに可撓性が良好で、押し込み強度も良好なカテーテル1とすることができる。
【0028】
本発明のカテーテル1は、図1および2に示すように、特定の方向に螺巻される条体(すなわち、第一の方向に螺巻された条体3a、または第二の方向に螺巻された条体3b、または条体3a、3bの両方)は、第二条体32の間に第一条体31が配置されている。なお、図1の実施形態においては、カテーテル1の側面から見た状態では、第一の方向に螺巻された条体3aは、第二条体32の間に第一条体31が1本配置され、第二の方向に螺巻された条体3bも、第二条体32の間に第一条体31が1本配置された構成となっている。
【0029】
また、図2の実施形態においては、カテーテル1の軸心を挟んで対向する一対の第二条体32A、32Cがそれぞれ同方向(第一の方向)に螺巻され、他の一対の第二条体32B、32Dは、第二条体32A、32Cと交差するように、第二条体32A、32Cとは異なる方向(第二の方向)に螺巻されている。図2において、カテーテル1の軸心を挟んで対向する一対の第一条体31A、31Cがそれぞれ同方向(第一の方向)に螺巻され、他の一対の第一条体31B、31Dは、第一条体31A、31Cと交差するように、第一条体31A、31Cとは異なる方向(第二の方向)に螺巻されている。
【0030】
図1および図2のいずれにおいても、X線不透過性であって、第一条体31より幅広である第二条体32の間に、X線透過性の第一条体31が配置されていることにより、視認性と識別性との両立が可能である。すなわち、図3に示すように、X線不透過性の幅の広い第二条体32の間に、第一条体31を配置すると、X線照射により写る像は、幅の広い第二条体32の像32Iである(X線透過性である第一条体31については、像が形成されないため、破線で示している)。図3に示すように、第二条体32は幅が広いため、カテーテル1の全体としての視認性が向上するとともに、X線照射時に、複数の第二条体32の間に形成された空間により、X線透過スペースSが形成される。そして、このX線透過スペースSは、X線不透過性の条体の間隔をあけるだけでは、強度不足となるが、第二条体32の間にX線透過性の第一条体31を配置することにより、カテーテル1の強度を維持しながら、大きくすることが可能となる。したがって、カテーテル1の強度を維持しながら、X線照射時に、カテーテル1の背後にある別のカテーテルを識別すること、カテーテル1の背後にある目標部位を識別すること、カテーテル1の背後にあるステント、コイル等の体内への留置物を識別すること、カテーテル1の内部にあるステント、コイル等の位置を識別することが可能となる。
【0031】
つぎに、本発明のカテーテル1の製造方法を図4〜6を用いて説明する。
図4に示すように、製造するカテーテル1の内径と略同一の外径を有する金属芯線Cを送りだし、押出機5により内筒2となる合成樹脂を押出被覆形成する。合成樹脂が被覆された内筒2は、図5に示すように、内筒2の外側に編組3を施すために、編組機6に送られる。編組機6は互いに逆方向に回転する回転機構6a、6bを有している。内筒2が回転機構6a、6bに送り込まれ、回転機構6a、6bが互いに逆方向に回転すると同時に、回転機構6a、6bに取り付けられ、内筒2を被覆する素線が巻きつけられたボビン7が内筒2に対して近づく動作と離れる動作を交互に繰り返すことにより編組3が施される。
【0032】
図5においてボビン7はそれぞれの回転機構6a、6bに4つずつ設けられているが、図5では、回転機構6aのボビン7のうち、第一条体31用のボビン7が2つ設けられ、第二条体32用のボビン7が2つ設けられる。したがって、回転機構6aの4つのボビン7のうち、2つのボビン7には、X線不透過性の第二条体32が巻き付けられ、残りの2つのボビン7には、X線透過性の第一条体31が巻き付けられる。同様に、回転機構6bの4つのボビン7のうち、2つのボビン7には、X線不透過性の第二条体32が巻き付けられ、残りの2つのボビン7には、X線透過性の第一条体31が巻き付けられる。
【0033】
図5におけるそれぞれの回転機構6a、6bに設けられるボビン7の数は、4つに限られることはなく、内筒2の外側に螺巻する第一条体31、第二条体32の本数において、適宜変更することができる。また、第二条体32を図2に示すように、2本持ちとする場合や3本持ちとする場合には、ボビン7に2本または3本の素線を一緒に巻くことにより、2本持ち、3本持ち等、素線の複数本持ちの第二条体32を編むことができる。
【0034】
図5の編組機6において、第一条体31および第二条体32が、第二条体32の間に第一条体31が配置されるように編組され、内筒2の外側に編組3が形成される。編組3は、その外側を合成樹脂により被覆するために、図6に示す押出機8に送り込まれる。押出機8により、外筒4となる合成樹脂を押出被覆形成する。編組3の外側に外筒4となる合成樹脂が被覆された後、金属芯線Cの両端を引っ張ることにより、金属芯線Cの外径を小さくし、金属芯線Cを内筒2から引き抜き、所望の長さに切断することにより、カテーテル1が得られる。
【0035】
なお、上記製造方法はあくまで一例であって、内筒2、編組3、外筒4の3層構造のカテーテル1を製造することができ、X線不透過性の第二条体32の間にX線透過性の第一条体31を配置できるものであれば、特にその製造方法は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 カテーテル
2 内筒
3 編組
3a、3b 条体
31、31A、31B、31C、31D 第一条体
32、32A、32B、32C、32D 第二条体
32I 像
4 外筒
5、8 押出機
6 編組機
6a、6b 回転機構
7 ボビン
C 金属芯線
S X線透過スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製内筒、前記内筒の外側を囲周する編組、および前記編組の外側を囲周する樹脂製外筒を備えたカテーテルにおいて、
前記編組は、第一の方向に螺巻される条体と第二の方向に螺巻される条体とにより編組され、
前記条体は、第一条体と、前記第一条体よりも幅の広い第二条体とを含み、
前記第一条体はX線透過性材料を含み、
前記第二条体はX線不透過性材料を含み、
特定の方向に螺巻される条体は第二条体の間に第一条体が配置された
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記第二条体は、X線照射による像が、前記第一条体のX線照射による像に比べて幅が広くなるように配された請求項1記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第二条体は、平線、第一条体よりも径の太い丸線または複数の素線を並行かつ隣接させた素線集合体である請求項1または2記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第二条体が前記素線集合体であり、前記素線が前記第一条体の素線径と略同一である請求項3記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第一条体がステンレスを含みからなり、前記第二条体がタングステンまたは白金からなる請求項1〜4のいずれかに記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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