説明

カメラの角度調整構造

【課題】 カメラの角度調整作業を容易にする。
【解決手段】 カメラ2が実装された取付部材15の支持部18,19には、ガイドねじ20が螺合する第1のねじ孔18a,19aと被支持片18b,19bとが設けられている。被支持片18b,19bを支持ブラケット23,24の支持溝28,36に挿入し、ガイドねじ20の先端部を長孔29,37に嵌入させることにより、カメラユニット4が支持ブラケット23,24に揺動自在に支持される。一方の支持ブラケット23の第2のねじ孔30aに螺合させた角度調整ねじ32の先端に、カメラ2の自重により揺動習性が付与されたカメラユニット4の当接片18cが当接する。角度調整ねじ32を進退させることにより、カメラ2の角度が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等の角度をカメラを設置する以前に調整するカメラの角度調整構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のカメラの角度調整構造としては、ケースに固定される回転座に突出面が曲面形成された突出部材が設けられ、カメラ側に突出部材の突出面に摺接する曲面が形成された湾曲部材が設けられ、湾曲部材を突出部材の突出面に摺接させながらカメラの角度を調整し、湾曲部材に形成した挿通孔に挿通させたねじを突出部材のねじ孔にねじ込むことにより、カメラを固定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−167922号公報(段落〔0027〕〜〔0029〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来のカメラの角度調整構造においては、角度調整を行う際には、湾曲部材を突出部材の突出面に摺接させながらカメラの角度を調整する作業と、湾曲部材の挿通孔にねじを挿通させ、そのねじを突出部材のねじ孔にねじ込む作業を同時に行わなければならないため、作業が煩雑となる。特に、カメラを設置空間の天井に取り付ける場合は、カメラの落下にも気を付けなければならないので、より一層作業が煩雑となるという問題があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、カメラの角度調整作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、カメラが取り付けられる取付部材と、この取付部材を揺動自在に支持する一対の支持ブラケットとを備え、前記取付部材を、カメラが取り付けられる取付部とこの取付部の両端に互いに対向するように設けられた一対の支持部とによって断面コ字状に形成し、前記両支持部に第1のねじ孔および被支持片を設け、少なくとも一方の支持部に当接片を設け、前記支持ブラケットに、前記被支持片が挿入され挿入された被支持片を揺動中心として前記取付部材を揺動自在に支持する支持溝と、この支持溝を中心として円弧状に形成されかつ前記第1のねじ孔に螺合されたガイドねじが挿通されこのガイドねじとの協働で前記取付部材の揺動動作をガイドする長孔とを設けるとともに、一方の前記支持ブラケットに、前記当接片に先端が当接する角度調整ねじが螺合する第2のねじ孔を設け、前記カメラの自重により、常時前記当接片が前記角度調整ねじの先端に当接する方向に前記取付部材に揺動習性が付与されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明は、前記発明において、前記支持ブラケットが固定されるベースを備え、前記ベースがカメラが設置される設置空間の天井に取り付けられ、前記角度調整ねじが鉛直方向を指向していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カメラが取付部材を介して支持ブラケットに揺動自在に支持され、支持ブラケットからの脱落を規制された状態で、角度調整ねじを進退させることにより、カメラの角度が調整されるため角度調整が容易になる。また、カメラの自重により取付部材に揺動習性が付与されているため、揺動習性を付与するためのスプリング等が不要になるため、部品点数や組付け工数が削減され、構造が簡素化される。
【0009】
前記発明のうちの一つの発明によれば、カメラが設置空間の天井から落下することなく、かつ角度調整ねじを鉛直方向に進退させることにより、カメラの角度を調整することができるから角度調整の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るカメラの角度調整構造を採用したカメラ装置の全体の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るカメラの角度調整構造を採用したカメラ装置を分解して示す斜視図である。
【図3】本発明に係るカメラの角度調整構造の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るカメラの角度調整構造の要部を示す底面図である。
【図5】本発明に係るカメラの角度調整構造において、角度の調整の方法を説明するための図4におけるV-V 線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。図2に全体を符号1で示すカメラ装置は、カメラ2を覆うケース3と、カメラ2が実装されたカメラユニット4と、カメラユニット4を揺動自在に支持する支持ユニット5とによって構成されている。
【0012】
ケース3は、背面側が開口された箱状に形成されており、前面部にはカメラ2のレンズ部が露呈される二つの窓11が設けられ、両側部にはケース3を後述する支持ブラケット23,24に固定するための固定ねじ12が挿通される挿通孔13が形成されている。
【0013】
カメラユニット4を構成する取付部材15は、二つのカメラ2が下板16を介して取り付けられる扁平で細長い長方形に形成された取付部17と、この取付部17の両端部に互いに対向するように折曲形成された支持部18,19とによって断面コ字状に形成されている。
【0014】
両支持部18,19には、互いに対向する位置にガイドねじ20が螺合される第1のねじ孔18a,19aが形成されているとともに、互いに反対方向に(両支持部18,19の外側に向かって)突設された被支持片18b,19bが折曲形成されている。一方の支持部18には、被支持部18bと同じ向き(支持部18の外側)に突設された当接片18cが折曲形成されている。
【0015】
支持ユニット5は、カメラ装置1が設置される設置空間の天井7(図5参照)に四隅に設けたねじ孔22aを介して取り付けられるベース22と、このベース22に固定される支持ブラケット23,24とからなる。
【0016】
一方の支持ブラケット23は、互いに対向する支持壁25,26と、これら支持壁25,26間を連結する連結部27とによって断面コ字状に形成されている。一方の支持壁25の連結部27と反対側の端部には、上記した取付部材15の被支持片18bが挿入される支持溝28が設けられており、この支持溝28は、図5に示すように支持壁25の端部(図中下端)から連結部27側に向かって末広がりの台形状に形成されている。したがって、この支持溝28に挿入された被支持片18bは、同図(B)、(C)に示すように、支持溝28の開口部28aを揺動中心として、図中左右方向に角度αの範囲で揺動自在に支持される。
【0017】
また、支持壁25には、図2に示すように支持溝28の開口部28aを中心とした円弧状に形成された長孔29が設けられている。さらに、支持壁25には、当該支持壁25と直交する折曲片30が折曲形成されており、この折曲片30には角度調整ねじ32が螺合する第2のねじ孔30aが設けられている。また、他方の支持壁26の連結部27と反対側の端部には、当該支持壁26と直交する台座部31が折曲形成されており、この台座部31には、上記した固定ねじ12が螺合する第3のねじ孔31aが設けられている。
【0018】
他方の支持ブラケット24は、互いに対向する支持壁33,34と、これら支持壁33,34間を連結する連結部35とによって断面コ字状に形成されている。一方の支持壁33の連結部35と反対側の端部には、上記した取付部材15の被支持片19bが挿入される支持溝36が設けられており、この支持溝36は上記した支持溝28と同じ形状である末広がりの台形状に形成されている。したがって、この支持溝36に挿入された被支持片19bは、上記した支持溝28に挿入された被支持片18bと同様に、支持溝36の開口部36aを揺動中心として、角度αの範囲で揺動自在に支持されている。
【0019】
また、支持壁33には、上記した長孔29と同様に、支持溝36の開口部36aを中心とした円弧状に形成された長孔37が設けられている。さらに、他方の支持壁34の先端部には、当該支持壁34と直交する台座部38が折曲形成されており、この台座部38には、上記した固定ねじ12が螺合する第3のねじ孔38aが設けられている。
【0020】
これら支持ブラケット23,24は、互いの支持壁25,33が対向するように連結部27,35を介してベース22に取り付けられている。取り付けられた支持壁25,33の互いの支持溝28,36が対向するとともに、互いの長孔29,37が対向する。
【0021】
次に、このように構成されたカメラ装置において、カメラの組立方法について説明する。先ず、図2において、カメラ2が実装された取付部材15の被支持片18b,19bのそれぞれを、ベース板22に取り付けられた支持ブラケット23,24の支持溝28,36のそれぞれに挿入する。この状態で、図4に示すように、取付部材15の両支持部18,19のそれぞれの外面が、支持ブラケット23,24の支持壁25,33のそれぞれの内面に対接される。
【0022】
次いで、二つのガイドねじ20,20のそれぞれを、図2に示すように取付部材15の第1のねじ孔18a,19aのそれぞれに螺合させて仮締めし、これらガイドねじ20の先端部を支持ブラケット23,24の長孔29,37に嵌入させる。このガイドねじ20の長孔29,37への嵌入によって、カメラユニット4が支持ブラケット23,24に支持されて支持ブラケット23,24からの脱落を規制される。同時に、支持溝28,36に挿入された被支持片18b,19bが支持溝28,36内で図5(B)、(C)において揺動可能なため、ガイドねじ20と長孔29,37との協働により、カメラユニット4が被支持片18b,19b(支持溝28の開口部28a)を揺動中心として、支持ブラケット23,24に図中左右方向に角度αの範囲で揺動自在に支持される。揺動自在に支持されたカメラユニット4(取付部材15)は、カメラ2の自重により同図(A)において時計方向に回動習性が付与されている。
【0023】
同時に、カメラユニット4の当接片18cが、図3に示すように一方の支持ブラケット23の折曲片30に対向する。この状態で、角度調整ねじ32を折曲片30の第2のねじ孔30aに螺合させ、角度調整ねじ32の先端を折曲片30から突出させる。この状態で、カメラユニット4がカメラ2の自重により図5(A)において、支持溝28の開口部28aを回動中心として時計方向に回動習性が付与されているため、角度調整ねじ32の先端に当接片18cが当接し、カメラユニット4の回動が規制される。
【0024】
次いで、カメラユニット4が支持ブラケット23,24を介して実装されたベース板22を、カメラの設置空間の天井7に取付孔22aを挿通させたねじ(図示せず)によって取り付ける。この状態で、角度調整ねじ32は、鉛直方向(図中上下方向)を指向する。
【0025】
角度調整ねじ32を回動操作し、折曲片30から進出させると、同図(B)に示すように当接片18cを介してカメラユニット4が支持溝28の開口部28aを回動中心として反時計方向へ回動するため、カメラ2の光軸40が鉛直方向よりも角度αだけ反時計方向へ傾く。一方、角度調整ねじ32を回動操作し、折曲片30内に後退させると、同図(C)に示すように当接片18cを介してカメラユニット4が、カメラ2の自重により支持溝28の開口部28aを回動中心として時計方向へ回動するため、カメラ2の光軸40が鉛直方向よりも角度αだけ時計方向へ傾く。カメラ2の角度調整が終了したら、ガイドねじ20,20のそれぞれを、第1のねじ孔18a,19aのそれぞれに本締めし、カメラユニット4を支持ブラケット23,24に固定する。
【0026】
この調整では、上述したようにカメラユニット4が支持ブラケット23,24からの脱落を規制された状態で行われるため、調整作業が容易となる。しかも、角度調整ねじ32が鉛直方向を指向しているため、角度調整ねじ32の直下で作業する作業者にとって、角度調整ねじ32の進退作業の作業性が向上する。また、カメラ2の自重によりカメラユニット4に回動習性を付与させているため、回動習性を付与するためのスプリング等が不要になるため、部品点数や組付け工数が削減され、構造が簡素化される。
【0027】
カメラ2の角度調整が終了したら、図2に示すようにケース3によってカメラユニット4を覆い、挿通孔13を挿通させた固定ねじ12を支持ブラケット23,24の第3のねじ孔31a,38aに螺合させることにより、図1に示すようにケース3を取り付ける。
【0028】
なお、本実施の形態においては、角度調整ねじ32を一方の支持ブラケット23側に設けたが、他方のブラケット24側に設けるようにしてもよく、あるいは両支持ブラケット23,24の両方に設けるようにしてもよい。また、カメラ2の角度調整の終了後に、ガイドねじ20,20のそれぞれを、第1のねじ孔18a,19aのそれぞれに本締めし、カメラユニット4を支持ブラケット23,24に固定するようにしたが、カメラ2を設置する設置空間にがたつき等がない場合は、ガイドねじ20を仮締めしたままの状態としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…カメラ装置、2…カメラ、4…カメラユニット、7…天井、15…取付部材、17…取付部、18,19…支持部、18a,19a…第1のねじ孔、18b,19b…被支持片、18c…当接片、20…ガイドねじ、22…ベース板、23,24…支持ブラケット、25,33…支持壁、28,36…支持溝、29,37…長孔、30a…第2のねじ孔、32…角度調整ねじ、40…光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラが取り付けられる取付部材と、この取付部材を揺動自在に支持する一対の支持ブラケットとを備え、
前記取付部材を、カメラが取り付けられる取付部とこの取付部の両端に互いに対向するように設けられた一対の支持部とによって断面コ字状に形成し、前記両支持部に第1のねじ孔および被支持片を設け、少なくとも一方の支持部に当接片を設け、
前記支持ブラケットに、前記被支持片が挿入され挿入された被支持片を揺動中心として前記取付部材を揺動自在に支持する支持溝と、この支持溝を中心として円弧状に形成されかつ前記第1のねじ孔に螺合されたガイドねじが挿通されこのガイドねじとの協働で前記取付部材の揺動動作をガイドする長孔とを設けるとともに、一方の前記支持ブラケットに、前記当接片に先端が当接する角度調整ねじが螺合する第2のねじ孔を設け、
前記カメラの自重により、常時前記当接片が前記角度調整ねじの先端に当接する方向に前記取付部材に揺動習性が付与されている
ことを特徴とするカメラの角度調整構造。
【請求項2】
前記支持ブラケットが固定されるベースを備え、
前記ベースがカメラが設置される設置空間の天井に取り付けられ、前記角度調整ねじが鉛直方向を指向している
ことを特徴とする請求項1記載のカメラの角度調整構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83740(P2013−83740A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222561(P2011−222561)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】