カメラ
【目的】本発明は、可変可能な一定の速度で磁気記録媒体を有するフィルムを移動させ、表示される状態の確認しつつ、前記磁気記録媒体とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整できる動作機能を有するカメラを提供することを目的とする。
【構成】本発明は、測光回路2、測距回路3、シャッタ制御機構4、焦点調節機構5、日付等の各種情報を表示する表示回路6、計時回路7、磁気記録するための情報を一時的に記憶する記憶回路(EEPROM)8、磁気情報の記録及び、再生を行う磁気情報制御回路9が中央処理装置(CPU)1に制御され駆動される。データを磁気記録部付フィルム11上の磁気記録部に記録したり再生したりする磁気ヘッド10には、磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構が設けられ、速度が可変可能な一定速度でフィルムを送り出し、調整状態を確認しつつアジマス調整できる動作機能を有するカメラである。
【構成】本発明は、測光回路2、測距回路3、シャッタ制御機構4、焦点調節機構5、日付等の各種情報を表示する表示回路6、計時回路7、磁気記録するための情報を一時的に記憶する記憶回路(EEPROM)8、磁気情報の記録及び、再生を行う磁気情報制御回路9が中央処理装置(CPU)1に制御され駆動される。データを磁気記録部付フィルム11上の磁気記録部に記録したり再生したりする磁気ヘッド10には、磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構が設けられ、速度が可変可能な一定速度でフィルムを送り出し、調整状態を確認しつつアジマス調整できる動作機能を有するカメラである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体を有するフィルムを使用するカメラに係り、特に搭載する磁気ヘッドのアジマス調整機能に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、例えば、磁気テープ等の磁気記録媒体に情報を記録及び再生するために用いられる磁気ヘッドは、該磁気テープから情報信号が最大値で読み取れるようにアジマス調整される。このアジマス調整は、磁気テープと磁気ヘッドのギッャプの角度を90°に調整することであり、テープレコーダ等の場合には、マスターテープを一定速度で駆動しながら信号を再生し、その再生信号の値が最大になるように磁気ヘッドを整調ものとして公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述したテープレコーダ等で行われるアジマス調整は、磁気テープを一定速度で移動させながら行う必要がある。
【0004】しかし、従来のカメラのフィルムの巻上げ・巻き戻し機構は、ビデオカメラを除けば、いかに速くフィルムの必要量を送り出す、或いは速く巻き戻すことを主として設計されており、特別に一定速度でフィルムが移動されるてはいない。従って、カメラの磁気ヘッドと該カメラに装着するフィルムの磁気トラックとのアジマス調整ができない。また、巻き戻しの速度が一定であっても、フィルムの長さが短いため、従来の巻き戻し速度では、アジマス調整に十分な時間が確保できない。
【0005】そこで本発明は、可変可能な一定の速度で磁気記録媒体を有するフィルムを移動させ、表示される状態の確認しつつ、前記磁気記録媒体とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整できる動作機能を有するカメラを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、磁気記録媒体を有するフィルムを使用するカメラにおいて、前記磁気記録媒体のトラックに記録されている信号を読み取る読取手段と、この読取手段の出力信号を撮影者に向けて表示する表示手段と、フィルムを巻上げもしくは巻取り方向に移動させる駆動手段と、フィルムの移動速度に応じた信号を出力するフィルム速度検出手段と、このフィルム速度検出手段の出力を用いて、前記フィルムの移動速度が一定になるように前記駆動手段を制御する制御手段とで構成されるカメラを提供する。
【0007】
【作用】以上のような構成のカメラによれば、磁気記録部を有するフィルムの移動速度が通常の速度より減速された一定の速度に設定され、カメラの表示部に表示される調整状態を確認しつつ、特別な調整用治具を必要とせず、前記磁気記録部とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整が実施される。
【0008】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1には、本発明による実施例としてのカメラの概略的な構成を示し説明する。
【0009】このカメラにおいて、カメラの構成部材を制御する中央処理装置(CPU)1が設けられる。このCPU1には、公知の構成からなる測光回路2、測距回路3、シャッタ制御機構4及び焦点調節機構5が接続されている。さらに、前記CPU1には、撮影情報や日付等の各種情報を表示するための表示回路6、日付データを形成するための計時回路7、磁気記録するための情報を一時的に記憶する記憶回路(EEPROM)8、磁気情報の記録、再生を行う磁気情報制御回路9が接続されている。
【0010】この磁気情報制御回路9に接続された磁気ヘッド10は、磁気情報記録再生回路9からのデータを磁気記録部付フィルム11上の磁気記録部に記録したり、フィルム上の磁気記録部に記録された信号を読出して、磁気情報記録再生回路9に供給するためのものである。前記磁気ヘッド10には後述する磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構(図示せず)が設けられている。そして、フィルム給送機構14は、駆動回路13からの駆動制御信号に基いて、磁気記録部付フィルム11を給送するためのものである。
【0011】また、前記CPUには、複数のスイッチが設けられ、そのうちレリーズスイッチ(REL)15がオンすると、CPU1が露出動作させる。裏ブタ検知スイッチ(BK)16は、裏ブタの開閉を検知するためのスイッチである。リワインドスイッチ(REW)17は、オンするとCPU1がフィルムをパトローネへ巻き戻し動作させる。アジャストスイッチ(ADJ)18は磁気ヘッドのアジマス調整を行なう時に操作するスイッチである。パワースイッチ(PW)19は、カメラの電源に連動したスイッチであり、スイッチがオンしている時のみカメラが動作する。
【0012】図2には、フィルム給送機構を後方より透視した構成を示し説明する。この構成は、フィルムパトローネをカメラ本体に装填した直後の状態である。図3にはフィルムパトローネの構成を示す。
【0013】このカメラの本体に設けられたフィルム巻上・巻戻モータ21(M1)の出力軸には、ピニオンギヤ23が設けられており、このピニオンギヤ23は、太陽ギヤ24と噛合している。更にこの太陽ギヤ24は、遊星ギヤ25と噛合しており、該遊星ギヤ25はギヤアーム26を介して太陽ギヤ24の回転軸周りに公転されるように支持されている。
【0014】またカメラ本体の後方より向って右側に設けられたフィルム巻取室には、フィルムを巻き取るための巻取スプール27が回転自在に設けられており、該巻取スプール27の上端面には、前記遊星ギヤ25が反時計方向に公転した際に、該遊星ギヤ25と噛合するスプールギヤ27aが一体的に設けられている。さらに巻取スプール27の下方外周面より、後述するフィルムのパーフォレーションに係合するパーフォレーション係止爪27bが突出している。
【0015】前記遊星ギヤ25が時計方向に公転した際に、該遊星ギヤ25と噛合する位置にアイドルギヤ37が設けられており、この際遊星ギヤ25はアイドルギヤ37、36、35、32を介し、後述するカプラーギヤ33に連結される。
【0016】カメラ本体の後方より向かって右側には、パトローネを収納するためのパトローネ収納室がある。この収納室の上方には、先端が「−」状に突出して形成されたカプラー34を有するカプラーギヤ33が回転自在に設けられている。このカプラー34は、図3に示すように、フィルムパトローネ70に設けられた給送スプール71の上端面に設けられた溝に篏合し、給送スプール71と軸周りに一体にされる。
【0017】カメラ本体には、フィルム送出しモータ22(M2)が設けられている。このフィルム送出しモータ22の出力軸にはピニオンギヤ28が設けられており、このピニオンギヤ28は、太陽ギヤ29と噛合している。さらに、この太陽ギヤ29は、遊星ギヤ30と噛合しており、該遊星ギヤ30はギヤアーム31を介して太陽ギヤ29の回転軸周りに公転されるように支持されている。前記ギヤアーム31には、前記バネ41の張力が働くため、フィルム送出しモータ22(M2)が反時計方向に回転した時のみ、遊星ギヤ30とアイドルギヤ32が噛合う。
【0018】フォトリフレクタ39は、フィルムのパーフォレーションを検出するために設けられている。磁気ヘッド20はフィルムの磁気トラックからデータを再生するためと、磁気トラックへデータを記録するために設けられている。
【0019】図4(a)には、本実施例に装着される磁性帯付フィルムの走行方向に対する磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構の概念的な構成を示す。また同図(b)には、前記磁気ヘッド近辺の正面図を示し、同図(c)にはヘッド指示部材の上面図を示す。
【0020】前記ギャップ傾き角調整機構の基板54aには、支軸57を中心に磁気ヘッド62と反対側にバネ56とソレノイド等のアクチュエータ55が配置され、バネ56の引っ張り力により磁気ヘッド62を磁性帯付フィルム53に当接させ、前記アクチュエータ55により磁気ヘッド62が退避される。
【0021】この磁気ヘッド62には、ヘッド支持部材60が溶着されている。前記ヘッド支持部材60は、磁気ヘッド62がフィルム52の磁性帯部に当接するように支軸B61と偏芯ピン59によって、基板54aに取りつけられている。ヘッド支持部材60は、バネ58の張力により支軸B61を中心に(アジマス調整用)偏芯ピン59に付勢する。
【0022】前記偏芯ピン59を回転することで、ヘッドギャップの傾きが調整される。前記偏芯ピン59は、カメラ外部から調整出来る長さをもつ。前記磁気ヘッド62よりフィルム巻き取り側には、フィルム幅に対して、やや広いフィルム上下方向の位置規制部材54b,54cが配置されている。さらに、磁気ヘッド62と対向させ、磁性帯付フィルム52を挟んで圧着パット63が配置されている。
【0023】以上の構成で、基準信号が標準書き込み機により記録された磁性帯付マスターフィルムを、本実施例のカメラに装填して巻上げながら磁気ヘッド62により再生する。その時、フィルム位置規制部材54b,54cである程度フィルム走行の上下位置を規制し、圧着パッド63によりフィルム52のあおりを抑え、アジマス調整することにより、磁性帯付フィルム52と磁気ヘッド62のギャップが90°になり、正確な書き込み及び再生が可能になる。また、カメラで記録された情報を他の機械例えばラボラトリ機で再生するような時の互換性の面でも非常に有効である。次に図5には、図1に示した駆動回路13と磁気情報制御回路9の具体的な構成を示し説明する。まず、CPU1には、フィルム移動速度を設定するために使用されるD/Aコンバータ65a,65bが設けられる。
【0024】前記CPU1が決定したフィルム移動速度は、アナログ信号に変換され前記D/Aコンバータ65aから、差動増幅器66の一方の入力端子へ出力される。前記差動増幅器66の他方の入力端子には、f/v変換器67が出力するアナログ信号が入力される。
【0025】前記f/v変換器67には、フォトリフレクタ68が出力する信号を波形成形回路69により変換したクロック信号が入力される。このクロック信号は、フォトリフレクタ68の前方をフィルム81のパーフォレーション70が通過する毎に前記波形成形回路69から出力される。このクロック信号の周波数はフィルムの移動速度に比例する。前記クロック信号はCPU1へも出力される。前記CPU1は、このクロック信号をカウントすることで、フィルム移動量を検出する。
【0026】従って、前記差動増幅器66は、前記D/Aコンバータ65aの出力とf/v変換器67の出力との差、つまりフィルム移動速度の誤差信号をコンパレータ71へ出力する。コンパレータ71は、差動増幅器66からの誤差信号を判定レベルとして三角波発振器72の出力と比較し、PWM(パルス幅変調)信号を生成する。
【0027】そしてPWM信号によりトランジスタQ1をオン/オフ制御する。このトランジスタQ1を通って、電池73から出力される電力は、ダイオード74、チョークコイル75、コンデンサ76より構成される平滑化回路Aを通してフィルム巻上げ・巻戻しモータ(M1)77を駆動するためのトランジスタQ2,Q3,Q4,Q5からなるブリッジBへ供給される。
【0028】前記平滑化回路Aの出力電圧は、前記トランジスタQ1のオン/オフ比に比例している。そしてトランジスタQ6,Q7,Q8,Q9からなるブリッジCは、フィルム送出しモータ(M2)78を駆動する。
【0029】デコーダ79は、前記CPU1からのモータ駆動信号にもとづいて、前記ブリッジB,Cのいずれかを選択する。そしてモータ77,78を制御するための4つの信号(オフ、ブレーキ、CW回転、CCW回転)の1つが選択されたブリッジへ出力される。
【0030】このようなフィルム巻上げ・巻戻しモータの駆動回路に、フィルム移動スピードを一定にするための機能を追加した理由は2つある。第1には、フィルム81の磁気トラック81aへデータを記録する時、フィルム81の移動速度が一定でないと、記録密度にムラが生じる。つまり、記録密度のムラにより、データ再生時の障害になる。第2には、フィルムの長さの関係で、調整時間が比較的短く、調整時間を長く取れるように、アジマス調整時の便宜を図ることにある。つまり、アジマス調整においては、磁性帯付マスターフィルムを一定速度で、なるべく遅い速度で駆動する必要がある。ただし、フィルム送出しモータは、フィルムをパトローネから巻取スプールまで駆動するため、フィルムの移動速度を制御する機能は必要ない。
【0031】そして、磁気ヘッド82は、磁気トラック81aへのデータ記録と磁気トラック81aからのデータ再生のために使用される。磁気トラック81aへ記録されるデータは、前記CPU1のDOUTから出力される。
【0032】前記DOUTの出力信号に応じて、バッファ83は磁気ヘッド81aへ電流を流す。データの記録方式は、バイフェーズ記録方式とする。この記録方式では、データの0ビットとデータの1ビットにそれぞれ対応する周波数を決める。ここで、図6(a)には、連続した0ビットデータを示し、図6(b)には連続した1ビットデータを示す。例えば、8ビットデータ“10011101”を記録する際、CPU1は、図6(c)に示すような出力信号をDOUT端子より出力する。
【0033】そして磁化された磁性体が、磁気ヘッド82の前を移動すると、磁気ヘッド82を通る磁束が変化して、磁性体に記録されたデータに応じた信号を磁気ヘッド82は発生する。この信号はヘッドアンプ84により増幅されて再生回路85へ入力する。再生回路85は、ヘッドアンプ84の信号からデータを再生してCPU1へ出力する。
【0034】前記ヘッドアンプ84の出力信号は、カメラの外部からコンタクできる信号端子89へ出力される。この端子89は、アジマス調整時に、磁気ヘッド82の再生する信号をモニタすることに利用できる。又ヘッドアンプ84の出力信号は、包格線検出回路86により波形成形され、前記CPU1のA/Dコンバータ65bへ入力される。
【0035】本実施例のアジマス調整においては、基準信号が記録されたマスターフィルムが使用される。基準信号は交流信号なので再生した信号をそのままA/D変換することは難かしい。そこで包格線検出回路86により直流信号に変換する必要がある。アジマス調整においては、信号端子から出力される交流信号の振幅が最大になるようにヘッドギャップの傾きを調整すればよい。もしくは包格線検出回路の直流信号が最大になるように調整すればよい。また、バッファ87は磁気ヘッド82を退避する際に用いられるソレノイド88を駆動する。
【0036】次に図7のメインフローチャートを参照して、このように構成されたカメラの動作について説明する。ここで構成部材の参照符号は、図1乃至図5に示した参照符号を用いる。
【0037】まず、パワースイッチ(PW)がオンされると、CPU1はパワーONリセットする。そして、I/Oポートの初期化メモリの初期化等を実行する(ステップS1)。
【0038】次に、BKスイッチ16のオン/オフ状態を判定する(ステップS2)。このBKスイッチは、ユーザがフィルムを装填し裏ブタを閉じることによって、オフからオンに切替わる。この切替え(立ち上がり)が検出されると(YES)、サブルーチン“空送り”が実行される(ステップS3)。
【0039】このステップS3の空送りサブルーチンは、フィルム40をパトローネ39から引き出し、巻取りスプール27に所定量巻きつける動作を実行する。しかし、BKスイッチの切替えが検出されなかった時には(NO)、リワインドスイッチ(REW)17のオン/オフ状態を判断する(ステップS4)。
【0040】この判定で、前記リワインドスイッチ17がオンしている時には、サブルーチン“巻戻し”が実行される(ステップS5)。この巻戻しサブルーチンでは、巻取りスプール27のフィルム40をパトローネ39へ巻戻す動作を行なう。しかし、前記ワインドスイッチ17がオフしている時には(NO)、ADJ18スイッチのオン/オフ状態を判定する(ステップS6)。
【0041】このステップS6の判定でADJスイッチがオンしている時は(YES)、磁気ヘッドのアジマス調整に必要な動作であるサブルーチン“アジマス”が実行される(ステップS7)。しかしADJスイッチ18がオフしている時は(NO)、PWスイッチ19のオン/オフ状態を判定する(ステップS8)。
【0042】このステップS7の判定で、PWスイッチ19がオフしている時には(NO)、カメラの動作は禁止され、CPUの動作が停止する。しかし、前記PWスイッチ19がオンしている時は(YES)、測光回路2により測光が行なわれる(ステップS9)。この測光回路2からのデータにもとづいて、シャッタ秒時とシボリ値を算出される。
【0043】次に、表示回路6を用いて測光データ、撮影コマ数等を表示し(ステップS10)、レリーズスイッチ(REL)15のオン/オフ状態を判定する(ステップS11)。この判定で、前記レリーズスイッチ15がオフしている時には(NO)、ステップS2へ移行し、メインルーチンの先頭に戻る。しかし、レリーズスイッチ15がオンしている時には(YES)、測距回路3からのデータにもとづいて被写体距離が算出される(ステップS12)。そしてCPU1は、焦点調節機構5を制御して、被写体にピントを合わせる。そしてステッブS9で算出されたシャッタ秒時とシボリ値にもとづいて、シャッタ制御機構4を制御し、露光する(ステップS13)。
【0044】そしてフィルムへの露光が終了の後、フィルムを1駒巻上げる(ステップS14)。この巻き上げの際に、フィルムカウンタFCoをインクリメントし、撮影データを記憶回路8へ格納する。次に図8のフローチャートを参照して、前述したサブルーチン“空送り”について説明する。
【0045】まず、ソレノイド等のアクチュエータ55へ電流を流し(ステップS21)、圧着パット63と磁気ヘッド62の間に隙間をつくる。前記磁気ヘッド62は、バネ56の張力により、圧着パット63へ圧接される。従って、この圧接された状態では、フィルム52が通過できないため、アクチュエータ55へ通電した、隙間をつくったものである。次に、CPU1のクロックカウンタ(CLK)に入力されるクロック信号をカウントするために、CLKを初期化“0”にクリアする(ステップS22)。
【0046】前記カウンタのカウント動作(カウントUP)を開始させる(ステップS23)。前記クロック信号は、パーフォレーション70がホトリフレクタ68の前方を通過する毎に発生する。従って、クロック信号のカウントによってフィルムの移動量を検知することができる。
【0047】次にフィルム送出しモータを反時計方向へ回転する(ステップS24)。このことにより、フィルムパトローネ39のカプラ42が回転し、フィルムが巻き取られ、スプールへ向かって移動する。そして、カウンタの値がN1 に達するまで待機する(ステップS25)。前記値N1 は、巻き取りスプールとホトリフレクタ68の位置関係で定まる数値である。前記カウンタの値がN1 になると(YES)、フィルムの先端が巻き取りスプールへ達したと判定される。
【0048】次に、所定時間(例えば、100msec程度)モータM2へブレーキをかけてフィルムの移動を止め(ステップS26,S27)、モータをオフする(ステップS28)。
【0049】そして、次の動作に備えて、カウンタを再度、初期化し、カウントを開始する(ステップS29,S30)。そして、D/Aコンバータへフィルムの移動速度Voを設定する(ステップS31)。この移動速度Voは、フィルムがスプールへ巻きつく動作に適した値である。その後、フィルム巻き上げ・巻き戻しモータM1を時計方向へ回転する(ステップS32)。このことにより、フィルムはスプールへ巻き、カウンタの値がN2 に達するまで待機する(ステップS33)。前記値N2 は、スプールへフィルムが巻きつく量を示している。次に、所定量のフィルムが巻きついたら(YES)、フィルムの移動速度を“0”にセットする(ステップS34)。
【0050】そして、フィルムの巻きつけを止めるため、モータへ所定時間(例えば100msec程度)ブレーキをかけ(ステップS35,S36)、モータM1をオフする(ステップS37)。
【0051】その後、磁気ヘッド62をフィルムへ圧接するためアクチュエータ55(ソレノイド)への電流をオフし(ステップS38)、フィルムカウンタFCoをクリア(ステップS39)した後、リターンする。次に図9のフローチャートを参照して、前述したサブルーチン“巻戻し”について説明する。
【0052】まず、フィルムの移動速度VoをD/Aコンバータへ設定する(ステップS41)。ここで、移動速度Voは、フィルムをパトローネへ巻戻す動作に連動してフィルムの磁気トラックへデータを記録のに支障を生じない範囲でもっとも早い速度をVoとして決定する。
【0053】次にフィルム巻上げ・巻戻しモータを反時計方向へ回転させ(ステップS42)、フィルムがパトローネへ巻取られる。CPU1のCLKへ入力されるクロック信号をカウントするために、カウンタをクリアする(ステップS43)。そして、カウンタのカウント動作(カウントUP)を開始する(ステップS44)。
【0054】そして、フィルムカウンタFCoに対応するデータを記憶回路8から読み出し、このデータをフィルムの磁気トラックへ記録しつつ(ステップS45)、そのカウンタの値が“8”に達するまで待機する(ステップS46)。
【0055】前記カウンタの値が“8”になると(YES)、1コマ分のフィルムが巻取られたことになり、フィルムカウンタFCoをデクリメントする(ステップS47)。
【0056】そして、フィルムカウンタFCoが“0”に達しているか否か判定する(ステップS48)。この判定で“0”でない時には(NO)、ステップS43に戻り、動作を継続する。フィルムカウンタFCoが“0”である時には(YES)、CLKへ入力されるクロック信号がなくなるまで待機する(ステップS49)。ここで、クロック信号が発生しない状態とは、フィルムがスプールから外れた状態である。この判定でクロック信号が発生しない状態になった場合に(YES)、所定時間(仮に500msec)待機し(ステップS50)、フィルムは完全にパトローネへ収納されたものとする。そして、モータM1をオフして(ステップS51)、リターンする。次に図10のフローチャートを参照して、サブルーチン“アジマス”について説明する。
【0057】まず、方向フラグへ“0”をセットする(ステップS61)。この方向フラグは、フィルムの移動方向を決定するフラグであり、フラグが“0”の時、フィルムは巻取りスプールへ向かって駆動され、フラグが“1”の時、フィルムはパトローネへ向かって駆動される。
【0058】このサブルーチン“アジマス”は、サブルーチン“空送り”の動作が終了してからコールされる。前記アジマスサブルーチンがコールされた直後には、フィルムはスプールにはずれない程度巻き付いている。従って、1回目のフィルム駆動は、巻取りスプールへ向かって実行される必要がある。
【0059】そして、CPU1のCLKに入力されるクロック信号をカウントするためのカウンタの値をクリアする(ステップS62)。前記カウンタのカウント動作を開始する(ステップS63)。
【0060】D/Aコンバータへフィルム移動速度VADJ を設定する(ステップS64)。このVADJ は遅いほどアジマス調整のための時間が確保できる。従って、この移動速度は、フィルムの巻戻し動作時の移動速度に比べても、フィルムの1コマ巻上げ動作時の移動速度に比べても遅いものがよく、アジマス調整においては、フィルムの移動速度の変動の少ないことも重要である。しかしフィルム移動速度VADJ の値は、あまりにも小さいと駆動回路の特性が悪くなり、フィルムの移動速度に対する変動が大きくなる。つまり変動が大きいと磁気ヘッドから再生される信号も変動して調整が難かしくなる。
【0061】従って、実用的なフィルム移動速度VADJ の値は、駆動回路の特性によって定まり、そのフィルム移動速度VADJ の値をEEPROM等に記憶しておけば、個々の回路の特性に合わせるように変更することかできる。
【0062】次に、方向フラグの状態を判定する(ステップS65)。方向フラグが“0”ならば、フィルム巻上げ・巻戻しモータを時計方向へ回転させ(ステップS66)、フィルムが巻取りスプールへ向かって駆動される。しかし、方向フラグが“1”ならば、モータを反時計方向へ回転させ(ステップS67)、フィルムがパトローネへ向かって駆動される。
【0063】これらのモータの回転動作は、フィルムの移動速度が設定したフィルム移動速度VADJ になるまでA/D変換の動作を実行させないために、モータがスタートした後、所定時間(例えば100msec)待機する(ステップS68)。
【0064】次にA/D変換の回数をカウントするためのADカウンタの値をクリアし(ステップS69)、レジスタSUMADをクリアする(ステップS70)。このSUMADには、A/D変換値の総和が記憶される。
【0065】そして、包格線検出回路からの再生信号をA/D変換し(ステップS71)、A/D変換値をSUMADへ加算し(ステップS72)、ADカウンタの値をインクリメントする(ステップS73)。
【0066】次に、ADカウンタの値が所定値NADに達しているか判定する(ステップS74)。この判定で所定値NADならば(YES)、SUMADの値とNADの値から平均のA/D変換値が算出され(ステップS75)、この平均値が表示回路6へ転送され、表示される(ステップS76)。この表示方法については後述する。そして、表示が終了すると再度A/D変換値を求めるため、ステップS69に戻る。A/D変換の回数NADは、フィルムの移動速度の変動を考慮して決定する必要がある。フィルムの移動速度が変化すると変化に連動して、磁気ヘッドが再生する信号が変動することになる。
【0067】そこで、この変動がキャンセルできるように所定値NADは決定する。この所定値NADにもとづいてA/D変換値の表示をした時、表示の周期が早すぎるならば、さらに大きな値を所定値NADとして用いてもよい。
【0068】しかし、前記ステップS74の判定で、前記ADカウンタの値が所定値NADに達していないならば(NO)、カウンタの値がNPCに達しているか判定する(ステップS77)。このカウンタ値NPCはフィルムの撮影枚数から定まる数値である。パーフォレーション8個で1コマ撮影分のフィルムの長さになる。従ってカウンタ値NPCとして、8×撮影枚数を使用すればよい。
【0069】このステップS77の判定で、カウンタ値がNPCでない時には(NO)、ステップS71に戻り動作が続行される。しかし、カウンタ値がNPCになれば(YES)、フィルムの移行速度を“0”にセットする(ステップS78)。
【0070】そして、モータM1に100msec程度の間、ブレーキをかけて、フィルムを止める(ステップS79,S80)。前記フィルムが停止した後、調整者がアジマス調整を終了とみなせば、ADJスイッチ18をオフする。
【0071】次にADJスイッチ18のオン/オフ状態を判定する(ステップS81)。前記ADJスイッチ18がオフであれば(NO)、マスターフィルムが不要となるので、パトローネへ巻取らなければならない。そこでフィルムの移動速度を最大値のVMAX をセットし(ステップS83)、モータを反時計方向へ回転する(ステップS84)。従って、フィルムはパトローネへ巻戻される。
【0072】しかし、ステップS81の判定でオン状態であれば(YES)、方向フラグを反転し(ステップS82)、ステップS62へ移行する。この動作によりフィルムの移動方向が反転することになる。つまり、ADJSWがオンしている間は、フィルムが往復運動する。そして再生された信号は表示される。したがって再生信号が最大になるように磁気ヘッドの傾きを調整すればよい。
【0073】前記フィルムがパトローネに巻戻された後、CLKへ入力されるクロック信号がなくなるまで待機する(ステップS85)。前記クロック信号が発生しない状態は、フィルムがスプールから外れた状態であることを示す。
【0074】この判定で、クロック信号が消滅すれば(YES)、さらに、所定時間、例えば、500msec待機することでフィルムは完全にパトローネへ収納されるものとし、モータM1をオフして(ステップS87)、リターンする。次に図11には、カメラの外部に設けられた表示部材の一例を示し、A/D変換により得た再生信号の表示について説明する。まず、SEG1は、コマ数表示のためのセグメントである。表示される“EXP 19”は、19コマ目の撮影であることを示している。またSEG2は、シボリ値表示のためのセグメントである。“FN 0.0”は、FNo8.0で露出が行なわれることを示す。
【0075】さらにSEG3は、シャッタ秒時表示のためのセグメントである。表示される“SS 125”は、シャッチ秒時が1/125秒で露出が行なわれることを示している。そして、アジマス調整時は図12のような表示になる。
【0076】SEG1には、“ADJ”と表示されてアジマス調整が可能なことを調整者に告知する。また、SEG3には、“AD 196”と表示され、再生信号のA/D変換値を示している。調整者はSEG3に表示されているA/D値がもっとも大きくなるように、磁気ヘッドの傾きを調整すればよい。
【0077】次に、図13は、ファインダ中に設けられた表示部材の一例である。SEG1は、シボリ値表示のためのセグメントであり、SEG2はシャッタ秒時のためのセグメントである。
【0078】そしてアジマス調整時には図14のような表示になる。再生データはバーレベルで表示されるので、図12の表示に比べて再生信号の最大値を検出しやすい。前述したアジマス調整は、一度実施すれば、再度調整することはほとんどない。また、ユーザが調整すべきものでもない。従って、ADJスイッチ18は、安易に操作できるような位置には、設けない必要がある。
【0079】本実施例ではADJスイッチにより、アジマス調整の動作モードになるようにしたが、操作スイッチが多いカメラならば、特殊なスイッチ操作により動作モードに設定されるようにしてもよい。また、カメラ外部の信号端子からCPUへ信号を送ることで動作モードに設定されるようにしてもよい。
【0080】以上述べたように、アジマス調整のために設けられた動作モードに設定すると、マスターフィルムを通常の撮影時のフィルム速度より遅い、一定速度で移動させ、、アジマス調整時間を確保しつつ、フィルムからの再生信号をカメラの表示部材上に表示して、アジマス調整することが容易にできる。従って、従来必要であった特別な治具を必要とせず、磁気ヘッドのアジマス調整ができる。
【0081】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、可変可能な一定の速度で磁気記録媒体を有するフィルムを移動させ、表示される状態の確認しつつ、前記磁気記録部とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整できる動作機能を有するカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による実施例としてのカメラの概略的な構成を示す図である。
【図2】図2は、実施例としてのカメラのフィルム給送機構を後方より透視した構成を示す図である。
【図3】図3は、フィルムパトローネの構成を示す図である。
【図4】図4は、本実施例に装着される磁性帯付フィルムの走行方向に対する磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構の概念な構成を示す図である。
【図5】図5は、図1に示した駆動回路と磁気情報制御回路の具体的な構成を示す図である。
【図6】図6(a)は連続した0ビットデータ例を示す図であり、図6(b)は連続した1ビットデータ例を示す図であり、図6(c)はCPUのDOUT端子からの出力信号を示す図である。
【図7】図7は、本実施例のカメラの動作を示すメインフローチャートである。
【図8】図8は、図7に示したサブルーチン“空送り”のフローチャートである。
【図9】図9は、図7に示したサブルーチン“巻戻し”のフローチャートである。
【図10】図10は、図7に示したサブルーチン“アジマス”のフローチャートである。
【図11】図11は、本実施例のカメラの外部に設けられた表示部材の一例を示す図である。
【図12】図12は、本実施例のカメラの外部に設けられた表示部材におけるアジマス調整時の表示を示す図である。
【図13】図13は、本実施例のカメラのファインダ中に設けられた表示部材の一例を示す図である。
【図14】図14は、本実施例のカメラのファインダ中に設けられた表示部材におけるアジマス調整時の表示を示す図である。
【符号の説明】
1…中央処理装置(CPU)、2…測光回路、3…測距回路、4…シャッタ制御機構、5…焦点調節機構、6…表示回路、7…計時回路、8…記憶回路(EEPROM)、9…磁気情報制御回路、10…磁気ヘッド、11…磁気記録部付フィルム、13…駆動回路、14…フィルム給送機構、15…レリーズスイッチ(REL)、16…裏ブタ検知スイッチ(BK)、17…リワインドスイッチ(REW)、18…アジャストスイッチ(ADJ)、19…パワースイッチ(PW)。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体を有するフィルムを使用するカメラに係り、特に搭載する磁気ヘッドのアジマス調整機能に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、例えば、磁気テープ等の磁気記録媒体に情報を記録及び再生するために用いられる磁気ヘッドは、該磁気テープから情報信号が最大値で読み取れるようにアジマス調整される。このアジマス調整は、磁気テープと磁気ヘッドのギッャプの角度を90°に調整することであり、テープレコーダ等の場合には、マスターテープを一定速度で駆動しながら信号を再生し、その再生信号の値が最大になるように磁気ヘッドを整調ものとして公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述したテープレコーダ等で行われるアジマス調整は、磁気テープを一定速度で移動させながら行う必要がある。
【0004】しかし、従来のカメラのフィルムの巻上げ・巻き戻し機構は、ビデオカメラを除けば、いかに速くフィルムの必要量を送り出す、或いは速く巻き戻すことを主として設計されており、特別に一定速度でフィルムが移動されるてはいない。従って、カメラの磁気ヘッドと該カメラに装着するフィルムの磁気トラックとのアジマス調整ができない。また、巻き戻しの速度が一定であっても、フィルムの長さが短いため、従来の巻き戻し速度では、アジマス調整に十分な時間が確保できない。
【0005】そこで本発明は、可変可能な一定の速度で磁気記録媒体を有するフィルムを移動させ、表示される状態の確認しつつ、前記磁気記録媒体とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整できる動作機能を有するカメラを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、磁気記録媒体を有するフィルムを使用するカメラにおいて、前記磁気記録媒体のトラックに記録されている信号を読み取る読取手段と、この読取手段の出力信号を撮影者に向けて表示する表示手段と、フィルムを巻上げもしくは巻取り方向に移動させる駆動手段と、フィルムの移動速度に応じた信号を出力するフィルム速度検出手段と、このフィルム速度検出手段の出力を用いて、前記フィルムの移動速度が一定になるように前記駆動手段を制御する制御手段とで構成されるカメラを提供する。
【0007】
【作用】以上のような構成のカメラによれば、磁気記録部を有するフィルムの移動速度が通常の速度より減速された一定の速度に設定され、カメラの表示部に表示される調整状態を確認しつつ、特別な調整用治具を必要とせず、前記磁気記録部とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整が実施される。
【0008】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1には、本発明による実施例としてのカメラの概略的な構成を示し説明する。
【0009】このカメラにおいて、カメラの構成部材を制御する中央処理装置(CPU)1が設けられる。このCPU1には、公知の構成からなる測光回路2、測距回路3、シャッタ制御機構4及び焦点調節機構5が接続されている。さらに、前記CPU1には、撮影情報や日付等の各種情報を表示するための表示回路6、日付データを形成するための計時回路7、磁気記録するための情報を一時的に記憶する記憶回路(EEPROM)8、磁気情報の記録、再生を行う磁気情報制御回路9が接続されている。
【0010】この磁気情報制御回路9に接続された磁気ヘッド10は、磁気情報記録再生回路9からのデータを磁気記録部付フィルム11上の磁気記録部に記録したり、フィルム上の磁気記録部に記録された信号を読出して、磁気情報記録再生回路9に供給するためのものである。前記磁気ヘッド10には後述する磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構(図示せず)が設けられている。そして、フィルム給送機構14は、駆動回路13からの駆動制御信号に基いて、磁気記録部付フィルム11を給送するためのものである。
【0011】また、前記CPUには、複数のスイッチが設けられ、そのうちレリーズスイッチ(REL)15がオンすると、CPU1が露出動作させる。裏ブタ検知スイッチ(BK)16は、裏ブタの開閉を検知するためのスイッチである。リワインドスイッチ(REW)17は、オンするとCPU1がフィルムをパトローネへ巻き戻し動作させる。アジャストスイッチ(ADJ)18は磁気ヘッドのアジマス調整を行なう時に操作するスイッチである。パワースイッチ(PW)19は、カメラの電源に連動したスイッチであり、スイッチがオンしている時のみカメラが動作する。
【0012】図2には、フィルム給送機構を後方より透視した構成を示し説明する。この構成は、フィルムパトローネをカメラ本体に装填した直後の状態である。図3にはフィルムパトローネの構成を示す。
【0013】このカメラの本体に設けられたフィルム巻上・巻戻モータ21(M1)の出力軸には、ピニオンギヤ23が設けられており、このピニオンギヤ23は、太陽ギヤ24と噛合している。更にこの太陽ギヤ24は、遊星ギヤ25と噛合しており、該遊星ギヤ25はギヤアーム26を介して太陽ギヤ24の回転軸周りに公転されるように支持されている。
【0014】またカメラ本体の後方より向って右側に設けられたフィルム巻取室には、フィルムを巻き取るための巻取スプール27が回転自在に設けられており、該巻取スプール27の上端面には、前記遊星ギヤ25が反時計方向に公転した際に、該遊星ギヤ25と噛合するスプールギヤ27aが一体的に設けられている。さらに巻取スプール27の下方外周面より、後述するフィルムのパーフォレーションに係合するパーフォレーション係止爪27bが突出している。
【0015】前記遊星ギヤ25が時計方向に公転した際に、該遊星ギヤ25と噛合する位置にアイドルギヤ37が設けられており、この際遊星ギヤ25はアイドルギヤ37、36、35、32を介し、後述するカプラーギヤ33に連結される。
【0016】カメラ本体の後方より向かって右側には、パトローネを収納するためのパトローネ収納室がある。この収納室の上方には、先端が「−」状に突出して形成されたカプラー34を有するカプラーギヤ33が回転自在に設けられている。このカプラー34は、図3に示すように、フィルムパトローネ70に設けられた給送スプール71の上端面に設けられた溝に篏合し、給送スプール71と軸周りに一体にされる。
【0017】カメラ本体には、フィルム送出しモータ22(M2)が設けられている。このフィルム送出しモータ22の出力軸にはピニオンギヤ28が設けられており、このピニオンギヤ28は、太陽ギヤ29と噛合している。さらに、この太陽ギヤ29は、遊星ギヤ30と噛合しており、該遊星ギヤ30はギヤアーム31を介して太陽ギヤ29の回転軸周りに公転されるように支持されている。前記ギヤアーム31には、前記バネ41の張力が働くため、フィルム送出しモータ22(M2)が反時計方向に回転した時のみ、遊星ギヤ30とアイドルギヤ32が噛合う。
【0018】フォトリフレクタ39は、フィルムのパーフォレーションを検出するために設けられている。磁気ヘッド20はフィルムの磁気トラックからデータを再生するためと、磁気トラックへデータを記録するために設けられている。
【0019】図4(a)には、本実施例に装着される磁性帯付フィルムの走行方向に対する磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構の概念的な構成を示す。また同図(b)には、前記磁気ヘッド近辺の正面図を示し、同図(c)にはヘッド指示部材の上面図を示す。
【0020】前記ギャップ傾き角調整機構の基板54aには、支軸57を中心に磁気ヘッド62と反対側にバネ56とソレノイド等のアクチュエータ55が配置され、バネ56の引っ張り力により磁気ヘッド62を磁性帯付フィルム53に当接させ、前記アクチュエータ55により磁気ヘッド62が退避される。
【0021】この磁気ヘッド62には、ヘッド支持部材60が溶着されている。前記ヘッド支持部材60は、磁気ヘッド62がフィルム52の磁性帯部に当接するように支軸B61と偏芯ピン59によって、基板54aに取りつけられている。ヘッド支持部材60は、バネ58の張力により支軸B61を中心に(アジマス調整用)偏芯ピン59に付勢する。
【0022】前記偏芯ピン59を回転することで、ヘッドギャップの傾きが調整される。前記偏芯ピン59は、カメラ外部から調整出来る長さをもつ。前記磁気ヘッド62よりフィルム巻き取り側には、フィルム幅に対して、やや広いフィルム上下方向の位置規制部材54b,54cが配置されている。さらに、磁気ヘッド62と対向させ、磁性帯付フィルム52を挟んで圧着パット63が配置されている。
【0023】以上の構成で、基準信号が標準書き込み機により記録された磁性帯付マスターフィルムを、本実施例のカメラに装填して巻上げながら磁気ヘッド62により再生する。その時、フィルム位置規制部材54b,54cである程度フィルム走行の上下位置を規制し、圧着パッド63によりフィルム52のあおりを抑え、アジマス調整することにより、磁性帯付フィルム52と磁気ヘッド62のギャップが90°になり、正確な書き込み及び再生が可能になる。また、カメラで記録された情報を他の機械例えばラボラトリ機で再生するような時の互換性の面でも非常に有効である。次に図5には、図1に示した駆動回路13と磁気情報制御回路9の具体的な構成を示し説明する。まず、CPU1には、フィルム移動速度を設定するために使用されるD/Aコンバータ65a,65bが設けられる。
【0024】前記CPU1が決定したフィルム移動速度は、アナログ信号に変換され前記D/Aコンバータ65aから、差動増幅器66の一方の入力端子へ出力される。前記差動増幅器66の他方の入力端子には、f/v変換器67が出力するアナログ信号が入力される。
【0025】前記f/v変換器67には、フォトリフレクタ68が出力する信号を波形成形回路69により変換したクロック信号が入力される。このクロック信号は、フォトリフレクタ68の前方をフィルム81のパーフォレーション70が通過する毎に前記波形成形回路69から出力される。このクロック信号の周波数はフィルムの移動速度に比例する。前記クロック信号はCPU1へも出力される。前記CPU1は、このクロック信号をカウントすることで、フィルム移動量を検出する。
【0026】従って、前記差動増幅器66は、前記D/Aコンバータ65aの出力とf/v変換器67の出力との差、つまりフィルム移動速度の誤差信号をコンパレータ71へ出力する。コンパレータ71は、差動増幅器66からの誤差信号を判定レベルとして三角波発振器72の出力と比較し、PWM(パルス幅変調)信号を生成する。
【0027】そしてPWM信号によりトランジスタQ1をオン/オフ制御する。このトランジスタQ1を通って、電池73から出力される電力は、ダイオード74、チョークコイル75、コンデンサ76より構成される平滑化回路Aを通してフィルム巻上げ・巻戻しモータ(M1)77を駆動するためのトランジスタQ2,Q3,Q4,Q5からなるブリッジBへ供給される。
【0028】前記平滑化回路Aの出力電圧は、前記トランジスタQ1のオン/オフ比に比例している。そしてトランジスタQ6,Q7,Q8,Q9からなるブリッジCは、フィルム送出しモータ(M2)78を駆動する。
【0029】デコーダ79は、前記CPU1からのモータ駆動信号にもとづいて、前記ブリッジB,Cのいずれかを選択する。そしてモータ77,78を制御するための4つの信号(オフ、ブレーキ、CW回転、CCW回転)の1つが選択されたブリッジへ出力される。
【0030】このようなフィルム巻上げ・巻戻しモータの駆動回路に、フィルム移動スピードを一定にするための機能を追加した理由は2つある。第1には、フィルム81の磁気トラック81aへデータを記録する時、フィルム81の移動速度が一定でないと、記録密度にムラが生じる。つまり、記録密度のムラにより、データ再生時の障害になる。第2には、フィルムの長さの関係で、調整時間が比較的短く、調整時間を長く取れるように、アジマス調整時の便宜を図ることにある。つまり、アジマス調整においては、磁性帯付マスターフィルムを一定速度で、なるべく遅い速度で駆動する必要がある。ただし、フィルム送出しモータは、フィルムをパトローネから巻取スプールまで駆動するため、フィルムの移動速度を制御する機能は必要ない。
【0031】そして、磁気ヘッド82は、磁気トラック81aへのデータ記録と磁気トラック81aからのデータ再生のために使用される。磁気トラック81aへ記録されるデータは、前記CPU1のDOUTから出力される。
【0032】前記DOUTの出力信号に応じて、バッファ83は磁気ヘッド81aへ電流を流す。データの記録方式は、バイフェーズ記録方式とする。この記録方式では、データの0ビットとデータの1ビットにそれぞれ対応する周波数を決める。ここで、図6(a)には、連続した0ビットデータを示し、図6(b)には連続した1ビットデータを示す。例えば、8ビットデータ“10011101”を記録する際、CPU1は、図6(c)に示すような出力信号をDOUT端子より出力する。
【0033】そして磁化された磁性体が、磁気ヘッド82の前を移動すると、磁気ヘッド82を通る磁束が変化して、磁性体に記録されたデータに応じた信号を磁気ヘッド82は発生する。この信号はヘッドアンプ84により増幅されて再生回路85へ入力する。再生回路85は、ヘッドアンプ84の信号からデータを再生してCPU1へ出力する。
【0034】前記ヘッドアンプ84の出力信号は、カメラの外部からコンタクできる信号端子89へ出力される。この端子89は、アジマス調整時に、磁気ヘッド82の再生する信号をモニタすることに利用できる。又ヘッドアンプ84の出力信号は、包格線検出回路86により波形成形され、前記CPU1のA/Dコンバータ65bへ入力される。
【0035】本実施例のアジマス調整においては、基準信号が記録されたマスターフィルムが使用される。基準信号は交流信号なので再生した信号をそのままA/D変換することは難かしい。そこで包格線検出回路86により直流信号に変換する必要がある。アジマス調整においては、信号端子から出力される交流信号の振幅が最大になるようにヘッドギャップの傾きを調整すればよい。もしくは包格線検出回路の直流信号が最大になるように調整すればよい。また、バッファ87は磁気ヘッド82を退避する際に用いられるソレノイド88を駆動する。
【0036】次に図7のメインフローチャートを参照して、このように構成されたカメラの動作について説明する。ここで構成部材の参照符号は、図1乃至図5に示した参照符号を用いる。
【0037】まず、パワースイッチ(PW)がオンされると、CPU1はパワーONリセットする。そして、I/Oポートの初期化メモリの初期化等を実行する(ステップS1)。
【0038】次に、BKスイッチ16のオン/オフ状態を判定する(ステップS2)。このBKスイッチは、ユーザがフィルムを装填し裏ブタを閉じることによって、オフからオンに切替わる。この切替え(立ち上がり)が検出されると(YES)、サブルーチン“空送り”が実行される(ステップS3)。
【0039】このステップS3の空送りサブルーチンは、フィルム40をパトローネ39から引き出し、巻取りスプール27に所定量巻きつける動作を実行する。しかし、BKスイッチの切替えが検出されなかった時には(NO)、リワインドスイッチ(REW)17のオン/オフ状態を判断する(ステップS4)。
【0040】この判定で、前記リワインドスイッチ17がオンしている時には、サブルーチン“巻戻し”が実行される(ステップS5)。この巻戻しサブルーチンでは、巻取りスプール27のフィルム40をパトローネ39へ巻戻す動作を行なう。しかし、前記ワインドスイッチ17がオフしている時には(NO)、ADJ18スイッチのオン/オフ状態を判定する(ステップS6)。
【0041】このステップS6の判定でADJスイッチがオンしている時は(YES)、磁気ヘッドのアジマス調整に必要な動作であるサブルーチン“アジマス”が実行される(ステップS7)。しかしADJスイッチ18がオフしている時は(NO)、PWスイッチ19のオン/オフ状態を判定する(ステップS8)。
【0042】このステップS7の判定で、PWスイッチ19がオフしている時には(NO)、カメラの動作は禁止され、CPUの動作が停止する。しかし、前記PWスイッチ19がオンしている時は(YES)、測光回路2により測光が行なわれる(ステップS9)。この測光回路2からのデータにもとづいて、シャッタ秒時とシボリ値を算出される。
【0043】次に、表示回路6を用いて測光データ、撮影コマ数等を表示し(ステップS10)、レリーズスイッチ(REL)15のオン/オフ状態を判定する(ステップS11)。この判定で、前記レリーズスイッチ15がオフしている時には(NO)、ステップS2へ移行し、メインルーチンの先頭に戻る。しかし、レリーズスイッチ15がオンしている時には(YES)、測距回路3からのデータにもとづいて被写体距離が算出される(ステップS12)。そしてCPU1は、焦点調節機構5を制御して、被写体にピントを合わせる。そしてステッブS9で算出されたシャッタ秒時とシボリ値にもとづいて、シャッタ制御機構4を制御し、露光する(ステップS13)。
【0044】そしてフィルムへの露光が終了の後、フィルムを1駒巻上げる(ステップS14)。この巻き上げの際に、フィルムカウンタFCoをインクリメントし、撮影データを記憶回路8へ格納する。次に図8のフローチャートを参照して、前述したサブルーチン“空送り”について説明する。
【0045】まず、ソレノイド等のアクチュエータ55へ電流を流し(ステップS21)、圧着パット63と磁気ヘッド62の間に隙間をつくる。前記磁気ヘッド62は、バネ56の張力により、圧着パット63へ圧接される。従って、この圧接された状態では、フィルム52が通過できないため、アクチュエータ55へ通電した、隙間をつくったものである。次に、CPU1のクロックカウンタ(CLK)に入力されるクロック信号をカウントするために、CLKを初期化“0”にクリアする(ステップS22)。
【0046】前記カウンタのカウント動作(カウントUP)を開始させる(ステップS23)。前記クロック信号は、パーフォレーション70がホトリフレクタ68の前方を通過する毎に発生する。従って、クロック信号のカウントによってフィルムの移動量を検知することができる。
【0047】次にフィルム送出しモータを反時計方向へ回転する(ステップS24)。このことにより、フィルムパトローネ39のカプラ42が回転し、フィルムが巻き取られ、スプールへ向かって移動する。そして、カウンタの値がN1 に達するまで待機する(ステップS25)。前記値N1 は、巻き取りスプールとホトリフレクタ68の位置関係で定まる数値である。前記カウンタの値がN1 になると(YES)、フィルムの先端が巻き取りスプールへ達したと判定される。
【0048】次に、所定時間(例えば、100msec程度)モータM2へブレーキをかけてフィルムの移動を止め(ステップS26,S27)、モータをオフする(ステップS28)。
【0049】そして、次の動作に備えて、カウンタを再度、初期化し、カウントを開始する(ステップS29,S30)。そして、D/Aコンバータへフィルムの移動速度Voを設定する(ステップS31)。この移動速度Voは、フィルムがスプールへ巻きつく動作に適した値である。その後、フィルム巻き上げ・巻き戻しモータM1を時計方向へ回転する(ステップS32)。このことにより、フィルムはスプールへ巻き、カウンタの値がN2 に達するまで待機する(ステップS33)。前記値N2 は、スプールへフィルムが巻きつく量を示している。次に、所定量のフィルムが巻きついたら(YES)、フィルムの移動速度を“0”にセットする(ステップS34)。
【0050】そして、フィルムの巻きつけを止めるため、モータへ所定時間(例えば100msec程度)ブレーキをかけ(ステップS35,S36)、モータM1をオフする(ステップS37)。
【0051】その後、磁気ヘッド62をフィルムへ圧接するためアクチュエータ55(ソレノイド)への電流をオフし(ステップS38)、フィルムカウンタFCoをクリア(ステップS39)した後、リターンする。次に図9のフローチャートを参照して、前述したサブルーチン“巻戻し”について説明する。
【0052】まず、フィルムの移動速度VoをD/Aコンバータへ設定する(ステップS41)。ここで、移動速度Voは、フィルムをパトローネへ巻戻す動作に連動してフィルムの磁気トラックへデータを記録のに支障を生じない範囲でもっとも早い速度をVoとして決定する。
【0053】次にフィルム巻上げ・巻戻しモータを反時計方向へ回転させ(ステップS42)、フィルムがパトローネへ巻取られる。CPU1のCLKへ入力されるクロック信号をカウントするために、カウンタをクリアする(ステップS43)。そして、カウンタのカウント動作(カウントUP)を開始する(ステップS44)。
【0054】そして、フィルムカウンタFCoに対応するデータを記憶回路8から読み出し、このデータをフィルムの磁気トラックへ記録しつつ(ステップS45)、そのカウンタの値が“8”に達するまで待機する(ステップS46)。
【0055】前記カウンタの値が“8”になると(YES)、1コマ分のフィルムが巻取られたことになり、フィルムカウンタFCoをデクリメントする(ステップS47)。
【0056】そして、フィルムカウンタFCoが“0”に達しているか否か判定する(ステップS48)。この判定で“0”でない時には(NO)、ステップS43に戻り、動作を継続する。フィルムカウンタFCoが“0”である時には(YES)、CLKへ入力されるクロック信号がなくなるまで待機する(ステップS49)。ここで、クロック信号が発生しない状態とは、フィルムがスプールから外れた状態である。この判定でクロック信号が発生しない状態になった場合に(YES)、所定時間(仮に500msec)待機し(ステップS50)、フィルムは完全にパトローネへ収納されたものとする。そして、モータM1をオフして(ステップS51)、リターンする。次に図10のフローチャートを参照して、サブルーチン“アジマス”について説明する。
【0057】まず、方向フラグへ“0”をセットする(ステップS61)。この方向フラグは、フィルムの移動方向を決定するフラグであり、フラグが“0”の時、フィルムは巻取りスプールへ向かって駆動され、フラグが“1”の時、フィルムはパトローネへ向かって駆動される。
【0058】このサブルーチン“アジマス”は、サブルーチン“空送り”の動作が終了してからコールされる。前記アジマスサブルーチンがコールされた直後には、フィルムはスプールにはずれない程度巻き付いている。従って、1回目のフィルム駆動は、巻取りスプールへ向かって実行される必要がある。
【0059】そして、CPU1のCLKに入力されるクロック信号をカウントするためのカウンタの値をクリアする(ステップS62)。前記カウンタのカウント動作を開始する(ステップS63)。
【0060】D/Aコンバータへフィルム移動速度VADJ を設定する(ステップS64)。このVADJ は遅いほどアジマス調整のための時間が確保できる。従って、この移動速度は、フィルムの巻戻し動作時の移動速度に比べても、フィルムの1コマ巻上げ動作時の移動速度に比べても遅いものがよく、アジマス調整においては、フィルムの移動速度の変動の少ないことも重要である。しかしフィルム移動速度VADJ の値は、あまりにも小さいと駆動回路の特性が悪くなり、フィルムの移動速度に対する変動が大きくなる。つまり変動が大きいと磁気ヘッドから再生される信号も変動して調整が難かしくなる。
【0061】従って、実用的なフィルム移動速度VADJ の値は、駆動回路の特性によって定まり、そのフィルム移動速度VADJ の値をEEPROM等に記憶しておけば、個々の回路の特性に合わせるように変更することかできる。
【0062】次に、方向フラグの状態を判定する(ステップS65)。方向フラグが“0”ならば、フィルム巻上げ・巻戻しモータを時計方向へ回転させ(ステップS66)、フィルムが巻取りスプールへ向かって駆動される。しかし、方向フラグが“1”ならば、モータを反時計方向へ回転させ(ステップS67)、フィルムがパトローネへ向かって駆動される。
【0063】これらのモータの回転動作は、フィルムの移動速度が設定したフィルム移動速度VADJ になるまでA/D変換の動作を実行させないために、モータがスタートした後、所定時間(例えば100msec)待機する(ステップS68)。
【0064】次にA/D変換の回数をカウントするためのADカウンタの値をクリアし(ステップS69)、レジスタSUMADをクリアする(ステップS70)。このSUMADには、A/D変換値の総和が記憶される。
【0065】そして、包格線検出回路からの再生信号をA/D変換し(ステップS71)、A/D変換値をSUMADへ加算し(ステップS72)、ADカウンタの値をインクリメントする(ステップS73)。
【0066】次に、ADカウンタの値が所定値NADに達しているか判定する(ステップS74)。この判定で所定値NADならば(YES)、SUMADの値とNADの値から平均のA/D変換値が算出され(ステップS75)、この平均値が表示回路6へ転送され、表示される(ステップS76)。この表示方法については後述する。そして、表示が終了すると再度A/D変換値を求めるため、ステップS69に戻る。A/D変換の回数NADは、フィルムの移動速度の変動を考慮して決定する必要がある。フィルムの移動速度が変化すると変化に連動して、磁気ヘッドが再生する信号が変動することになる。
【0067】そこで、この変動がキャンセルできるように所定値NADは決定する。この所定値NADにもとづいてA/D変換値の表示をした時、表示の周期が早すぎるならば、さらに大きな値を所定値NADとして用いてもよい。
【0068】しかし、前記ステップS74の判定で、前記ADカウンタの値が所定値NADに達していないならば(NO)、カウンタの値がNPCに達しているか判定する(ステップS77)。このカウンタ値NPCはフィルムの撮影枚数から定まる数値である。パーフォレーション8個で1コマ撮影分のフィルムの長さになる。従ってカウンタ値NPCとして、8×撮影枚数を使用すればよい。
【0069】このステップS77の判定で、カウンタ値がNPCでない時には(NO)、ステップS71に戻り動作が続行される。しかし、カウンタ値がNPCになれば(YES)、フィルムの移行速度を“0”にセットする(ステップS78)。
【0070】そして、モータM1に100msec程度の間、ブレーキをかけて、フィルムを止める(ステップS79,S80)。前記フィルムが停止した後、調整者がアジマス調整を終了とみなせば、ADJスイッチ18をオフする。
【0071】次にADJスイッチ18のオン/オフ状態を判定する(ステップS81)。前記ADJスイッチ18がオフであれば(NO)、マスターフィルムが不要となるので、パトローネへ巻取らなければならない。そこでフィルムの移動速度を最大値のVMAX をセットし(ステップS83)、モータを反時計方向へ回転する(ステップS84)。従って、フィルムはパトローネへ巻戻される。
【0072】しかし、ステップS81の判定でオン状態であれば(YES)、方向フラグを反転し(ステップS82)、ステップS62へ移行する。この動作によりフィルムの移動方向が反転することになる。つまり、ADJSWがオンしている間は、フィルムが往復運動する。そして再生された信号は表示される。したがって再生信号が最大になるように磁気ヘッドの傾きを調整すればよい。
【0073】前記フィルムがパトローネに巻戻された後、CLKへ入力されるクロック信号がなくなるまで待機する(ステップS85)。前記クロック信号が発生しない状態は、フィルムがスプールから外れた状態であることを示す。
【0074】この判定で、クロック信号が消滅すれば(YES)、さらに、所定時間、例えば、500msec待機することでフィルムは完全にパトローネへ収納されるものとし、モータM1をオフして(ステップS87)、リターンする。次に図11には、カメラの外部に設けられた表示部材の一例を示し、A/D変換により得た再生信号の表示について説明する。まず、SEG1は、コマ数表示のためのセグメントである。表示される“EXP 19”は、19コマ目の撮影であることを示している。またSEG2は、シボリ値表示のためのセグメントである。“FN 0.0”は、FNo8.0で露出が行なわれることを示す。
【0075】さらにSEG3は、シャッタ秒時表示のためのセグメントである。表示される“SS 125”は、シャッチ秒時が1/125秒で露出が行なわれることを示している。そして、アジマス調整時は図12のような表示になる。
【0076】SEG1には、“ADJ”と表示されてアジマス調整が可能なことを調整者に告知する。また、SEG3には、“AD 196”と表示され、再生信号のA/D変換値を示している。調整者はSEG3に表示されているA/D値がもっとも大きくなるように、磁気ヘッドの傾きを調整すればよい。
【0077】次に、図13は、ファインダ中に設けられた表示部材の一例である。SEG1は、シボリ値表示のためのセグメントであり、SEG2はシャッタ秒時のためのセグメントである。
【0078】そしてアジマス調整時には図14のような表示になる。再生データはバーレベルで表示されるので、図12の表示に比べて再生信号の最大値を検出しやすい。前述したアジマス調整は、一度実施すれば、再度調整することはほとんどない。また、ユーザが調整すべきものでもない。従って、ADJスイッチ18は、安易に操作できるような位置には、設けない必要がある。
【0079】本実施例ではADJスイッチにより、アジマス調整の動作モードになるようにしたが、操作スイッチが多いカメラならば、特殊なスイッチ操作により動作モードに設定されるようにしてもよい。また、カメラ外部の信号端子からCPUへ信号を送ることで動作モードに設定されるようにしてもよい。
【0080】以上述べたように、アジマス調整のために設けられた動作モードに設定すると、マスターフィルムを通常の撮影時のフィルム速度より遅い、一定速度で移動させ、、アジマス調整時間を確保しつつ、フィルムからの再生信号をカメラの表示部材上に表示して、アジマス調整することが容易にできる。従って、従来必要であった特別な治具を必要とせず、磁気ヘッドのアジマス調整ができる。
【0081】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、可変可能な一定の速度で磁気記録媒体を有するフィルムを移動させ、表示される状態の確認しつつ、前記磁気記録部とカメラ本体に設けられた磁気ヘッドとのアジマス調整できる動作機能を有するカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による実施例としてのカメラの概略的な構成を示す図である。
【図2】図2は、実施例としてのカメラのフィルム給送機構を後方より透視した構成を示す図である。
【図3】図3は、フィルムパトローネの構成を示す図である。
【図4】図4は、本実施例に装着される磁性帯付フィルムの走行方向に対する磁気ヘッドのギャップ傾き角調整機構の概念な構成を示す図である。
【図5】図5は、図1に示した駆動回路と磁気情報制御回路の具体的な構成を示す図である。
【図6】図6(a)は連続した0ビットデータ例を示す図であり、図6(b)は連続した1ビットデータ例を示す図であり、図6(c)はCPUのDOUT端子からの出力信号を示す図である。
【図7】図7は、本実施例のカメラの動作を示すメインフローチャートである。
【図8】図8は、図7に示したサブルーチン“空送り”のフローチャートである。
【図9】図9は、図7に示したサブルーチン“巻戻し”のフローチャートである。
【図10】図10は、図7に示したサブルーチン“アジマス”のフローチャートである。
【図11】図11は、本実施例のカメラの外部に設けられた表示部材の一例を示す図である。
【図12】図12は、本実施例のカメラの外部に設けられた表示部材におけるアジマス調整時の表示を示す図である。
【図13】図13は、本実施例のカメラのファインダ中に設けられた表示部材の一例を示す図である。
【図14】図14は、本実施例のカメラのファインダ中に設けられた表示部材におけるアジマス調整時の表示を示す図である。
【符号の説明】
1…中央処理装置(CPU)、2…測光回路、3…測距回路、4…シャッタ制御機構、5…焦点調節機構、6…表示回路、7…計時回路、8…記憶回路(EEPROM)、9…磁気情報制御回路、10…磁気ヘッド、11…磁気記録部付フィルム、13…駆動回路、14…フィルム給送機構、15…レリーズスイッチ(REL)、16…裏ブタ検知スイッチ(BK)、17…リワインドスイッチ(REW)、18…アジャストスイッチ(ADJ)、19…パワースイッチ(PW)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気記録媒体を有するフィルムを使用するカメラにおいて、前記磁気記録媒体のトラックに記録されている信号を読み取る読取手段と、この読取手段の出力信号を撮影者に向けて表示する表示手段と、フィルムを巻上げもしくは巻取り方向に移動させる駆動手段と、フィルムの移動速度に応じた信号を出力するフィルム速度検出手段と、このフィルム速度検出手段の出力を用いて、前記フィルムの移動速度が一定になるように前記駆動手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とするカメラ。
【請求項1】 磁気記録媒体を有するフィルムを使用するカメラにおいて、前記磁気記録媒体のトラックに記録されている信号を読み取る読取手段と、この読取手段の出力信号を撮影者に向けて表示する表示手段と、フィルムを巻上げもしくは巻取り方向に移動させる駆動手段と、フィルムの移動速度に応じた信号を出力するフィルム速度検出手段と、このフィルム速度検出手段の出力を用いて、前記フィルムの移動速度が一定になるように前記駆動手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とするカメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図11】
【図5】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開平6−51394
【公開日】平成6年(1994)2月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−203939
【出願日】平成4年(1992)7月30日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【公開日】平成6年(1994)2月25日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)7月30日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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