説明

カラーフィルタの製造方法及びそれを用いた液晶表示素子

【課題】インクジェット法でカラーフィルタを形成する場合に、画素部分で均一な厚みの着色層が得られ、画素内でのインクの広がりを良くし、画素内での色抜けが生じないようにする。
【解決手段】水系インクを用い、紫外線照射を行うことにより、画素を区切る凸部2の上面4の撥インク性を水の接触角で90°以上とし、凹部の親インク性を水の接触角で20°以下とすることにより、画素周辺での色抜けのないカラーフィルタを得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板上に凸部を形成し、その凸部に囲まれた凹部をインクジェット方式で着色することによるカラーフィルタの製造方法及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示素子用のカラーフィルタは各種の製造方法が提案されている。特に、基板のセル内壁側に着色層を形成してカラーフィルタを製造する方法にはいくつかの方法が知られている。
【0003】例えば、着色インクをオフセット印刷法等によりパターン印刷し、着色層を形成する方法があるが、印刷パターンの精細化には限界があり、生産歩留まりの低下等の問題がある。
【0004】また、着色された紫外線硬化性インクを基板上に全面塗布し、フォトリソ法によりカラーフィルタパターンを作成する方法として顔料分散法がよく使用されている。しかし、顔料分散法では、赤、緑、青の三原色のカラーフィルタを作成するためには、塗布、紫外線照射、現像工程を3回行うことを要し、製造工程上きわめて煩雑である。
【0005】その他、電着塗装法を利用したカラーフィルタの製造方法では、電着塗装される部分にあらかじめパターン状の透明電極を作成しておき、3色のカラーフィルタを製造する。このために、順次夫々に対応する電極に通電し、透明電極上にカラーフィルタ膜を形成する。この方法では3回の電着操作を必要とするうえ、色の重なりによる混色を防ぐ操作を要し、また、3色に対応する透明電極を要するため、最終的な液晶表示セルが電極の形状の制限をうけることもある。
【0006】これらの問題を解決した合理的なカラーフィルタの製造方法として、特開昭59−75205には、インクジェット方式で着色インクを吹きつけして着色層を形成することが提案されている。インクジェット方式で着色を行う場合、その液滴径が数十μmであり、一方、カラーフィルタの画素はおおむね短辺数十μm、長辺数百μm程度である。このことから、ガラス基板にあらかじめ画素を規定する区画を設け、この中へインクジェット方式でインクを吹き付け区画内にインクを拡げることで均一な画素を得ることができる。
【0007】前記提案には、ガラス基板に対し濡れ性の良いインクを用いる場合には、インクに対して濡れ性の悪い物質であらかじめ境界となる凸部を印刷しておく方法が記載されている。また、ガラスに対して濡れ性の悪いインクを使う場合には、インクとの濡れ性の良い材料であらかじめガラスにパターンを形成しておきインクが定着するのを助ける方法が提案されている。さらに特開平6−347637ではインクに対して画素部は濡れやすく、ブラックマスクは濡れにくい組み合わせを用いることが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ブラックマスクを形成する際の種々の汚染によって、画素部分の充分な親水性が得られない場合が多い。通常、ブラックマスクはレジスト保護膜を用いたエッチングで形成したり、ブラックマスクを形成する材料に感光性を持たせてフォトリソによってパターニングする方法が用いられる。しかし、エッチング液又は現像液によって、不要部分が完全に剥離せず、ガラス面の親水性を損なうことがある。
【0009】特に、ブラックマスクに撥インク性を付与する場合には、撥インク物質を用いるために、かすかな汚染でもインクと基材の親和性を大きく損ないやすい。このように画素部が充分に親インク性になっていないと、インクが凹部で充分拡がらず、画素周辺部で色抜けしやすいという問題を生じる。このカラーフィルタを液晶表示素子等に用いた場合、色ムラが生じたり、着色不良による光の漏れによるコントラストの低下を生じたりするという問題がおきやすかった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の問題を解決すべくなされたものであり、基材上に凸部を形成し、その凸部により区切られた凹部にインクジェット方式によってインクを吹きつけて凹部にインクを堆積させて着色層を形成するカラーフィルタの製造方法において、凸部を形成後、エネルギー線を照射することより凹部の親インク性を制御し、その後インクジェット方式によってインクを吹きつけることを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0011】また、そのエネルギー線を照射する処理により、凹部の水の接触角が20°以下となるようにされるカラーフィルタの製造方法、及び、それらの凸部が、ブラックマスクと兼用されているカラーフィルタの製造方法、及び、それらのエネルギー線を基板の凸部が形成されているのと反対側の面から照射するカラーフィルタの製造方法、及びそれらのエネルギー線を基板の両面から照射し、その夫々の照射量を凸部の撥インク性と凹部の親インク性とが所望の値になるように制御するカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0012】さらに、それらの凸部の表面が、RSiXYZ(Rはフッ素原子を含む炭化水素基を表し、X、Y、Zはそれぞれ独立して水酸基、メチル基、炭素数が1〜3のアルコキシ基、塩素原子、又はイソシアネート基を表す)で表される化合物を含む処理剤によって撥インク処理を施されているカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0013】さらには、それらの製造方法により形成されたカラーフィルタを用いた液晶表示素子を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のカラーフィルタの製造方法では、先ず基板上に凸部、好ましくはブラックマスクによる凸部をあらかじめ形成する。その凸部により区切られた凹部をエネルギー線の照射により親インク性にし、その後、インクジェット方式にて着色インクを吹きつけして着色層を形成してカラーフィルタを形成する。
【0015】図1は、本発明のカラーフィルタを模式的に示す断面図である。図1において、1は基板、2は凸部、3は凸部と凸部により区切られた凹部、4は凸部の上面、5は凸部の側面、6は凹部に吹きつけ堆積されて形成された着色層を示す。一番右端の凹部3のみは説明をわかりやすくするために、着色層が形成されていない状態で示してある。
【0016】この図では、わかりやすくするために凸部を4個、凹部を3個のみ示しているが、これは必要な数設けられる。例えば、ストライプ状のカラーフィルタの場合であって、640画素分必要な場合には、1画素当りRGBの3個のカラーフィルタが必要なので、凸部は1921個、凹部は1920個必要になる。液晶表示素子では基板間隙の精密性から表示を行わない表示画素の周辺までカラーフィルタパターンを形成することもあり、その場合にはもっと増えることになる。
【0017】ストライプ状のパターンの場合には、長手方向には凸部が形成されなくてもよいが、画素の周囲を完全に凸部で囲むこともある。特に、モザイク状のカラーフィルタの場合には、画素の周囲は凸部で囲まれる。
【0018】本発明における基板には、一般的には耐熱性の面からガラス基板が用いられる。また、この基板には通常は透明基板を用いるが、反射性の基板や白色に着色したような基板でも本発明は適用できる。この基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものも用いうる。
【0019】本発明で着色層を区切るための凸部は、基板上に線状や格子状に形成される。この凸部の形状は、それにより区切られた凹部が画素に対応するようにされればよい。例えば、ストライプ状のカラーフィルタを形成する場合には線状に形成され、四角の画素に対応させるためには格子状に形成される。これは、画素の形状により適宜定められるので、放射状、円周状等種々の形状も考えられる。
【0020】この凸部は、液晶表示素子等ではブラックマスクを兼用させることが有利である。このため、以下の説明では、凸部がブラックマスクと兼用される例に基づいて説明するが、ブラックマスクとしない場合には、それから黒色の材料や金属遮光層を使用しないようにすればよい。
【0021】ブラックマスクによる凸部の形成方法としては、例えば、金属クロム膜や、金属クロムと酸化クロムを積層したもの、又はカーボンブラック等の黒色顔料と樹脂からなる黒色層を形成し、これらにフォトレジストを塗布、画素部のレジストをフォトリソ法で取り除き、エッチングによって金属クロム等の層を取り除く方法がある。また、よりコスト的に有利な方法としてカーボンブラックなどの黒色顔料と光硬化性樹脂を含む材料による黒色膜を形成し、これをフォトリソ法によって所望のパターンにパターン化する方法がある。
【0022】本発明では、ある程度の高さの凸部を所望のパターンに形成できる公知の種々のブラックマスクの形成法が使用できる。薄膜のブラックマスクと厚膜の樹脂層とを積層して凸部を形成してもよい。
【0023】本発明における凸部は、インクジェット法によって着色する際に、吹きつけたインクが他の画素に流れ込んだり滲んだりすることを防止する役割を果たす。したがって、この凸部の高さはある程度高いことが好ましいが、カラーフィルタとした場合の全体の平坦性が高いことも要求されるので、着色層の厚さに近い高さが選択される。
【0024】具体的には、所望の着色を得るのに必要な吹きつけするインクの堆積量によっても異なるが、通常は0.1〜2μm程度とされる。この凸部の上面にインクが残存すると、平坦性や画素間の着色均一性が損なわれるため、凸部を撥インク性にし、凹部はインクの拡がりを良くするために親インク性にすることが好ましい。すなわち、凸部はインクをはじき、凹部の基板は親インク性を高めている。
【0025】その親インク性の程度は、水系インクを用いた場合、凹部の基板の親インク性が水によって測定した接触角が20°以下であることが好ましい。これが20°より大きいと、凹部でのインクの拡がりが悪くなりやすくなり、画素周辺部で色抜けが生じやすくなる。特に10°以下にすることが好ましい。
【0026】また、凸部の撥インク性は、その水の接触角が90°以上とすることが好ましく、隣接画素へのインクの流出や凸部上へのインクの残存を防止しやすくなり、好ましい。通常は、90〜120°程度にすればよい。
【0027】凸部に撥インク性を付与する方法としては、凸部形成材料に感光性材料を用いて、ガラス上にこれを塗布した上に、撥インク処理することが好ましい。特に、撥インク処理剤として、RSiXYZで表される化合物を含む処理剤を用いることが好ましい。
【0028】ただし、Rはフッ素原子を含む炭化水素基を表し、X、Y、Zは夫々独立して水酸基、メチル基、炭素数が1〜3のアルコキシ基、塩素原子、又はイソシアネート基を表す。
【0029】これはケイ素の4本の結合手にR、X、Y、Zの4種類の基がついているものである。より好ましくは、R−がRf −R1 −である。ここでRf −はパーフルオロアルキル基、−R1 −はアルキレン基を表す。特に、−R1 −が−CH2 CH2 −の化合物が好ましい。このような一般的に含フッ素シランカップリング剤又は含フッ素イソシアネートシランと呼ばれる化合物が、充分な撥インク性と被処理面への密着性を有することから好ましい。
【0030】含フッ素イソシアネートシランについては、被処理面との密着性が高く特に好適である。また、含フッ素シランカップリング剤においては、基材への反応、定着性を高めるため、事前に加水分解を行い、末端のアルコキシ基を水酸基に置換したり、さらに一部縮合反応を起こさせて縮合体とした形でも用いうる。
【0031】上記のRf −は、水素原子が完全にフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基を示し、代表的なものとしてCF3 −、C613−、C817−、C1021−等があげられる。また、側鎖構造を有するものも使用できる。なかでも高い撥水性が得られるという観点から、C817−が特に好ましい。
【0032】これらの化合物で撥インク処理を施す場合、溶媒によって希釈してスピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等の方法で塗布し、乾燥する方法がとられる。
【0033】凸部を形成する樹脂が未硬化の状態で撥インク処理を施す場合、即ち凸部のパターニング前に撥インク処理を施す場合には、凸部を形成する樹脂に悪影響を与えないようにする必要がある。このため、この凸部を形成する樹脂に悪影響を与えないパーフルオロオクタン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロ(トリブチルアミン)等の完全フッ素化化合物の溶媒を用いることが好ましい。
【0034】また、この処理剤の処理層の厚さは処理剤1分子から数分子にあたる厚みがあれば充分である。
【0035】本発明では、この凹部を親インク性にする方法として、エネルギー線の照射を行う。エネルギー線の具体的なものとして、低圧水銀灯によって発生する254nmの波長の光を主として含む紫外光を例示できる。この波長の紫外光では、凸部、凹部ともに親水化ができ、凸部では撥インクの程度のコントロールができ、他方凹部では高い親水性を得ることができる。なお、この波長の照射ではオゾンが発生するが、これも親水化に寄与している。
【0036】これらエネルギー線の照射は、基板の凸部を設けた面側、又はその逆側のいずれから照射してもよく、表側から照射した場合は凸部、凹部同時に、裏面側から照射した場合は主に凹部を選択的に親水化できる。したがって、表面側、裏面側からの照射を組み合わすことにより、必要な凸部、凹部の親水性のバランスを得ることができる。凹部のみ親水化したい場合には、基板の凸部を設けた面と反対側の面からのみエネルギー線を照射すればよい。これは、凸部がブラックマスクと兼用かブラックマスクと積層されている場合に、特に適する。
【0037】これらエネルギー線の照射の照射量は、おおよそ1000〜10000mJ程度でよく、使用する材料によって所望の凸部の撥水性及び凹部の親水性が得られるように適宜実験的に定められればよい。
【0038】凸部を形成する高分子材料としては、アクリル系、ポリイミド系の樹脂が好ましい。また、これをブラックマスクとするため黒色の樹脂を添加したり、樹脂に感光性を持たせるために、種々の感光性ポリマーや硬化剤を添加できる。
【0039】本発明では、インクジェット方式を着色方法として用いる。インクジェット方式としては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
【0040】上記の説明では、親水性インクを用いる例について説明してきたが、用いるインクは油性、水性ともに使用できる。もっとも、表面張力の関係から水をベースにした水系インクの使用がより好ましい。また、そのインクに含まれる着色材は染料、顔料ともに使用でき、耐久性の面からは顔料の使用がより好ましい。
【0041】本発明のインクには、着色後の工程を考慮し、加熱によって硬化する、又は紫外線等のエネルギー線によって硬化する成分も添加できる。加熱によって硬化する成分としては、各種の熱硬化性樹脂が広く用いられる。また、エネルギー線によって硬化する成分としては、例えば、アクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体に光反応開始剤を添加したものを例示できる。
【0042】特に、耐熱性を考慮してアクリロイル基、メタクリロイル基を分子内に複数有するものがより好ましい。これらのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体は水溶性のものが好ましく使用でき、水に難溶性のものでもエマルジョン化する等して使用できる。
【0043】本発明では、このようにすることにより、図2に示すようなインクのはじきによる不良を低減できる。図2は、基板11上の2つの凸部12に囲まれた1つの凹部に吹きつけられたインクが基板の親インク性不足によりはじかれたところを示す。即ち、はじきを生じると、中央部に比して周辺部の着色層16の厚みが薄くなりやすく、画素周辺部で着色層が無い部分を生じることもある。
【0044】このような着色層のムラは、画素の色抜けを生じ、表示素子にした際に、コントラストの良いカラー表示が得られにくくなる。これに対して、本発明によれば、凹部に均一な厚みの着色層が得られやすく、画素の色抜けやコントラスト低下を生じにくい。
【0045】本発明では、インクジェット方式で通常はRGB3色のインクを吹きつけて3色のカラーフィルタを形成する。このカラーフィルタは、液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロクロミック表示素子、PLZT等と組合せて表示素子として用いられる。カラーカメラやその他のカラーフィルタを用いる用途にも使用できる。
【0046】図3は、液晶表示素子に使用した場合の例を示す模式的な断面図である。図3において、21は基板、22は凸部、23は着色層、24はその表面を覆う樹脂等による平坦化層、25はIn23 −SnO2 (ITO)、SnO2 等の電極、26はポリイミド、ポリアミド、SiO等の配向膜、27は他方の基板、28は他方の電極、29は配向膜、30はその電極間に挟まれる液晶層である。
【0047】本発明では、この他、必要に応じて、この液晶セルの外側に偏光膜、反射板、位相差板、光源等を配置して液晶表示素子として用いうる。
【0048】
【実施例】
実施例1、2ガラス基板に、黒色に着色されたフォトレジスト(新日鉄化学社製「V−259BK」)をスピンコート法により目標膜厚1.5μmとなるように塗布し、80℃で5分間加熱処理した。C817−C24 −Si(−OCH33 (東芝シリコーン社製「TSL−8233」)をメタノールで希釈し、若干量の水分を加えた。
【0049】これを一晩放置した後、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)で有効成分を抽出し、0.25重量%に希釈し、フォトレジスト膜上にスピンコート法により塗布し、100℃で5分間加熱した。この基板にフォトマスクを介して100mJ露光し、指定現像液に30秒浸漬し、冷水で洗浄後、230℃で1時間ポストキュアを行い、ブラックマスク兼用の、高さが約1.5μm、幅が約30μmの凸部を有する基板を得た。
【0050】この基板を、実施例1では低圧水銀灯により凸部を設けた面側から1500mJ、その反対面側から2500mJの紫外線を照射した。実施例2では低圧水銀灯により凸部を設けた面の反対面側から4000mJの紫外線を照射した。
【0051】これらの基板の凸部に囲まれた凹部に対し、インクジェット法で水系顔料インクを用いて吹きつけを行い、ストライプ状のRGBのカラーフィルタを得た。この結果を表1に示す。
【0052】比較例1エネルギー線の照射をしない以外は、実施例1と同様の方法でカラーフィルタを形成した。この結果を表1に示す。
【0053】
【表1】


【0054】なお、表1の結果において、「○」はいずれもそれらの欠点のないもの(良品)を、「×」はそのような欠点を生じたもの(不良品)を表す。なお、「◎」は「○」よりもより着色層の平坦度が高いことを示す。
【0055】実施例1、2ともに、隣接凹部へのインク流出、画素周辺部での色抜け、画素内での色ムラという欠陥は生じなかった。特に、実施例1のものは、画素内での着色層の平坦度が高かった。一方、比較例のものは、画素内でインクが充分拡がらないため画素周辺部に色抜けが生ずるところがあり、着色層の厚みが画素の中央で厚くなっていて画素内の色ムラがかなり生じた。
【0056】実施例3、比較例2実施例1の画素をドット状にして、RGB画素がモザイク配置になるように凸部を設ける他は実施例1と同様にして、この凸部に囲まれた凹部にインクジェット法で水系顔料インクを用いて吹きつけを行い、モザイク配置のRGBのカラーフィルタを得た。同様に、比較例として、エネルギー線の照射をしない以外は、実施例2と同様の方法でカラーフィルタを形成した。
【0057】この実施例3のカラーフィルタは、実施例1のカラーフィルタと同様に、隣接凹部へのインク流出、画素周辺部での色抜け、画素内での色ムラという欠陥は生じなかった。一方、比較例2のものは、比較例1よりもさらに性能が悪化し、画素内でインクが充分拡がらないため画素周辺部に色抜けが生ずるところがあり、画素内の色ムラもかなり生じた。
【0058】実施例4撥インク処理剤のC817−C24 −Si(−NCO)3 をパーフルオロ(トリブチルアミン)で0.05重量%に希釈して用いた他は実施例1と同様にしてカラーフィルタを形成した。このカラーフィルタは、実施例1と同様に、隣接凹部への流出、画素周辺部での色抜け、画素内での色ムラという欠陥を生じなかった。
【0059】実施例1のカラーフィルタ上に樹脂の平坦化層を形成し、ITOを形成し、それをパターニングし、さらに樹脂の配向膜を形成し、ラビングして第1の基板を形成した。次いで、ガラス基板上にITOを形成し、それをパターニングし、さらに樹脂の配向膜を形成し、ラビングして第2の基板を形成した。この第1の基板と第2の基板とを電極面が相対向するように配置して、周辺をシールして空セルを形成した。
【0060】この空セル内にネマチック液晶を注入し、注入口を封止して液晶セルを形成した。この液晶セルの両側に位相差板と偏光板を配置してFSTN型の液晶表示素子を製造した。この液晶表示素子は美しいカラー表示が可能であった。
【0061】
【発明の効果】本発明は、生産性の良いインクジェット方式でインクを吹きつけてカラーフィルタを製造する際に、凸部の上にインクが付着しにくく、かつ凹部でのインクの拡がりに優れるため画素内での色抜けを生じにくいという効果を有する。これは、液晶表示素子としての表示性能を向上させうる。
【0062】さらに、この親インク処理を凸部を設けたのと反対側の面からエネルギー線の照射で行うことにより、凸部の撥インク性をあまり損なうことなく、凹部の親インク化が容易にできるので、生産性が良い。
【0063】また、凸部の撥インク性が高すぎると、用いるインクや凹部の親インク性の程度によって、画素周辺部で着色層の厚みの低下が生じる傾向がある。本発明では、エネルギー線の照射を基板の両面から行い、凸部の撥インク性も少し低下させ、凹部の親インク性とバランスを取るようにすることにより、より画素内での平坦性を向上させることもできる。本発明は、本発明の効果を損しない範囲内で、種々の応用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラーフィルタの模式的な断面図。
【図2】従来例のインク吹きつけ時の状況を示す模式的な断面図。
【図3】本発明のカラーフィルタを用いた液晶表示素子の模式的な断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】基材上に凸部を形成し、その凸部により区切られた凹部にインクジェット方式によってインクを吹きつけて凹部にインクを堆積させて着色層を形成するカラーフィルタの製造方法において、凸部を形成後、エネルギー線を照射することより凹部の親インク性を制御し、その後インクジェット方式によってインクを吹きつけることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】エネルギー線を照射する処理により、凹部の水の接触角が20°以下となるようにされる請求項1記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】凸部が、ブラックマスクと兼用されていることを特徴とする請求項1又は2記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】エネルギー線を基板の凸部が形成されているのと反対側の面から照射する請求項1、2又は3記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】エネルギー線を基板の両面から照射し、その夫々の照射量を凸部の撥インク性と凹部の親インク性とが所望の値になるように制御する請求項1、2又は3記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】凸部の表面が、RSiXYZ(Rはフッ素原子を含む炭化水素基を表し、X、Y、Zはそれぞれ独立して水酸基、メチル基、炭素数が1〜3のアルコキシ基、塩素原子、又はイソシアネート基を表す)で表される化合物を含む処理剤によって撥インク処理を施されている請求項1〜5のいずれか記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】請求項1〜6のいずれか記載の製造方法により形成されたカラーフィルタを用いた液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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