説明

カラー画像プリンタ及びカラー画像プリンタのための階調補正方法

【課題】変調レーザの制御誤差に起因する横ラインと縦ラインでの濃度差の発生を抑制する階調補正技術を提供する。
【解決手段】主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有するテストプリントの測定濃度値に基づいて、レーザ走査露光のための階調補正方法階調補正が行われる。横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち上がり後の1ドットに立ち上がり補正成分を付加する主走査立ち上がり補正のための立ち上がり補正量を測定濃度値に基づいて算定するステップと、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち下がり前の1ドットに立ち下がり補正成分を付加する主走査立ち下がり補正のための立ち下がり補正量を測定濃度値に基づいて算定するステップとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ走査露光によって感光材料に画像を形成するカラー画像プリンタのための階調補正技術、特にドットの調整に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、写真プリント業界では、写真フィルムに形成された撮影画像をフィルムスキャナによりデジタル化して得られる撮影画像データや、デジタルカメラなどのデジタル撮影機器によって直接撮影画像をデジタル化して得られる撮影画像データに濃度補正や色補正などの画像処理を施した後、これをプリントデータに変換し、このプリントデータに基づいて露光エンジンを駆動し、撮影画像を感光材料(印画紙)に焼き付けるカラー画像プリンタが主流である。このようなカラー画像プリンタでは、露光エンジンとして、感光材料に対してレーザ光を主走査方向に走査するとともに感光材料を副走査方向に移動させることにより画像形成するレーザ露光エンジンが主に用いられている。このようなレーザ露光エンジンでは、ポリゴンミラーに対してレーザ光を照射し、ポリゴンミラーを回転させることによりレーザ光を偏光することにより主走査方向の走査を実現している。
【0003】
カラー画像プリンタにレーザ露光エンジンを採用した場合に生じる、画質低下に関する問題を解決するための種々の提案もなされている。例えば、特許文献1の技術では、複数種類のレーザ光を用いて画像を露光形成する走査露光装置において、レーザ光の変調方式の違いによる色滲みを低減するために、駆動電流の制御による直接変調する第2のレーザ光のスポット径をAOMによる強度変調する第1のレーザ光のスポット径よりも大きくなるようにしている。これにより、第2のレーザ光の積分光量分布が変更され、色滲みを低減している。また、特許文献2の技術では、1ドットの露光を行うためのクロックを4分周し、黒の1ドットの露光を行う際には、分周された4クロックのうち、例えば、3クロックに対応してレーザビームによる露光を行うことにより、ドットの露光時間を短縮し、露光によって形成されるドットの面積を小さくしている。これにより、判定結果に基づいてドットに対する露光時間を短縮することで、ドットの面積の広がりを抑制し、理論上のドット寸法での露光を可能にして、高品質の画像を得ている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−58677号公報(段落番号0008−0012、図12)
【特許文献2】特開平2−160563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、レーザ走査露光では、主走査方向に沿った横ライン及び副走査方向に沿った縦ラインを露光形成したとき、主走査方向においては変調レーザの立ち上がりや立ち下がりの遅れやオーバーシュートあるいはリンギングといった要因で制御誤差が発生するのに対して、副走査方向においてはそのような制御誤差は発生しない。このため、制御誤差の影響を大きく受ける縦ラインと制御誤差の影響を受けない横ラインでは、同じ階調値で露光しても、その濃度値が異なってしまうという問題が生じる。高品質の写真プリントを出力するための高解像度のレーザ露光エンジンを採用した場合、この問題は特に顕著となるが、上記引用文献を含む従来の技術では、十分に解決されていない。
本発明の目的は、変調レーザの制御誤差に起因する横ラインと縦ラインでの濃度差の発生を抑制する階調補正技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
レーザ走査露光によって感光材料に画像を形成するカラー画像プリンタのための階調補正方法において、上記目的を達成するため、前記階調補正が、主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有するテストプリントの測定濃度値に基づいて行われ、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち上がり後の1ドットに立ち上がり補正成分を付加する主走査立ち上がり補正のための立ち上がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定するステップと、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち下がり前の1ドットに立ち下がり補正成分を付加する主走査立ち下がり補正のための立ち下がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定するステップとから構成されている。
【0007】
この階調補正方法では、変調レーザの制御誤差に起因する滲みの影響をほとんど受けない横ライン群からなる横縞テストパターン、変調レーザの制御誤差に起因する滲みの影響を受ける縦ライン群からなる縦縞テストパターンとの2種類のテストパターンを用いて立ち上がり補正量を算定し、同様に2種類のテストパターンを用いて立ち下がり補正量を算定する。その際、立ち上がり補正量は変調レーザの立ち上がりの制御誤差に基づくにじみを低減することで横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するように算定され、立ち下がり補正量は変調レーザの立ち下がりの制御誤差に基づくにじみを低減ことで横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するように算定される。この主走査立ち上がり補正(以下単に立ち上がり補正と称する)及び主走査立ち下がり補正(以下単に立ち下がり補正と称する)後に出力されたプリントにおいては、横ラインと縦ラインの濃度違いは限りなく小さくなり、特に縦ラインに偏った漢字や横ラインに偏った漢字などが入り混じる文章をプリントしても、濃度差が感じられない高品質なプリントが出力される。なお、この立ち上がり補正では、立ち上がりのところに擬似的にオーバーシュート成分を追加することにより、実際の変調レーザの立ち上がりの遅れを軽減することを意図している。また、この立ち下がり補正では、立ち下がりのところに擬似的にアンダーシュート成分を追加することにより、実際の変調レーザの立ち下がりの遅れを軽減することを意図している。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記立ち上がり補正量は、1ドット分の幅をもつ横縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値と、1ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値とに基づいて算定される。立ち上がり特性は、1つのドットが形成され始める時の特性であるので、変調レーザの立ち上がり時の制御誤差に起因する滲みは1ドット分の幅をもつ縦縞テストパターン上に明確に現れる。従って、この1ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンと、滲みに影響をほとんど受けない1ドット分の幅をもつ横縞テストパターンを比較して、立ち上がり補正量を算定することで、横ラインと縦ラインでの濃度差を低減することができる。また、横ラインと縦ラインでの濃度差は、レーザに与える駆動信号としての階調値によっても異なるので、異なる階調値で縦縞テストパターンと横縞テストパターンを形成し、それぞれのテストパターンを用いて所定階調値毎に立ち上がり補正量を求めることが好ましい。
【0009】
同様に、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記立ち下がり補正量は、2ドット分と3ドット分の幅を交互にもつ横縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値と、2ドット分と3ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値とに基づいて算定される。立ち下がり特性は、1つのドットの形成が終了する時の特性であるので、上述した変調レーザの立ち下がり時の制御誤差と区別するため、立ち下がり時の制御誤差に起因する滲みは複数分の幅をもつ縦縞テストパターンの主走査下流側に現れる。実験の結果によれば、2ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンと3ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンのほぼ中間の縦縞テストパターンが適していることが判明した。このため、2.5という中途半端な幅のラインは形成できないので、2ドット分と3ドット分の幅をもつラインとを組み合わせた、縦縞テストパターンと横縞テストパターンを採用している。そのようにして形成された縦縞テストパターンと、横縞テストパターンを比較して、立ち下がり補正量を算定することで、横ラインと縦ラインでの濃度差をさらに低減することができる。ここでも、横ラインと縦ラインでの濃度差は、レーザに与える駆動信号としての階調値によっても異なるという理由から、異なる階調値で縦縞テストパターンと横縞テストパターンを形成し、それぞれのテストパターンを用いて所定階調値毎に立ち上がり補正量を求めることが好ましい。
【0010】
本発明によるさらに好適な実施形態の1つでは、変調レーザの立ち下がり制御遅延によるにじみを低減するために立ち下がり後の1ドットにアンダーシュート成分を付加する主走査アンダーシュート補正のためのアンダーシュート補正量を算定するステップがさらに付加される。安定した形状のドットを形成するには、立ち上がり補正と立ち下がり補正だけでは不十分な場合がある。これは、変調レーザの立ち下がり時に白レベルに到達するまでに遅延が発生し、それによりドットの滲みが発生するからである。この問題は、立ち下がり補正だけでは解消しないために、これを解消すべく主走査アンダーシュート補正(以下単にアンダーシュート補正と称する)が行われる。このアンダーシュート補正に用いられるアンダーシュート補正量はアンダーシュート振幅量に基づいて予め設定したテーブルから決定することができるので、テストプリントの測定濃度値を用いる必要はない。
【0011】
なお、アンダーシュート補正、立ち上がり補正、立ち下がり補正はこの順序で行われ、これらの3つの補正によってドット修正が完了するが、それにもかかわらず、黒領域において、色むらが生じることがある。これは、黒領域における各色成分(印画紙の場合、C・M・Yの)発色濃度に差が生じることに起因する。このため、本発明の好適な実施形態では、さらに黒領域における各色成分の発色濃度を均一化するためのブラックバランス補正を行い、階調変換曲線(テーブル)の黒領域を調整する。
【0012】
本発明は、上述した階調変換曲線補正方法だけでなく、そのような方法をカラー画像プリンタ上で実現するための階調変換曲線補正プログラム及びそのような方法を採用したカラー画像プリンタも権利対象としている。例えば、レーザ走査露光によって感光材料に画像を形成するカラー画像プリンタにおいて、上記目的を達成するため、主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有するテストプリントを出力するテストプリント管理部と、前記テストプリントのテストパターンの濃度を測定して測定濃度値を出力する濃度測定器と、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち上がり後の1ドットに立ち上がり補正成分を付加する主走査立ち上がり補正のための立ち上がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定する立ち上がり補正部と、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち下がり前の1ドットに立ち下がり補正成分を付加する主走査立ち下がり補正のための立ち下がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定する立ち下がり補正部とが備えられている。このように構成されたカラー画像プリンタも、前述した階調変換曲線の補正方法で述べられた作用効果を伴うものであり、上述した種々の付加的な特徴構成を備えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明による階調補正方法を採用したカラー画像プリンタとしての写真プリント装置の外観図が図1に、図解模式図が図2に示されている。この写真プリント装置は、記録媒体の一例である銀塩印画紙P(以下、印画紙Pと称する)に対して露光処理と現像処理とを行う写真プリンタとしてのプリントステーション1Bと、このプリントステーション1Bで使用されるプリントデータの生成・転送などを行う操作ステーション1Aとから構成されている。この写真プリント装置はデジタルミニラボとも称せられるものである。図2からよく理解できるように、プリントステーション1Bは2つの印画紙マガジン11に納められたロール状の印画紙Pのいずれかを引き出してプリントサイズに切断し、切断された印画紙Pに対し、プリントエンジン13が露光を行う。この露光後の印画紙Pを複数の現像処理槽14aを有した現像処理部14に送って現像する。印画紙Pは、さらに乾燥部15で乾燥された後に装置上部の横送りコンベア16に排出され、横送りコンベヤ16によってソータ17に送り込まれる。ソータ17に送り込まれた印画紙P、つまり写真プリントPは、このソータ17の複数のトレイ17aに対してオーダ単位で仕分けられた状態で集積される。印画紙マガジン11から引き出された印画紙Pを、装置内部に配置された、プリントエンジン13、現像処理部14、乾燥部15に搬送するため、印画紙搬送機構12が配置されている。印画紙搬送機構12は、プリントエンジン13の前後に配置されたチャッカー式印画紙搬送ユニットを除いて実質的に多数の挟持搬送ローラ対から構成されている。
【0014】
印画紙マガジン11が装着される装着部には印画紙マガジン11に付与されている印画紙IDコードを読み取るIDコードリーダ11aが設けられている。この印画紙IDコードは印画紙Pの種別を一義的に特定するものであり、この印画紙IDコードを認識することにより、印画紙マガジン11に収納されている印画紙Pの種別、つまりプリントに使用される印画紙Pの種別が認識される。
【0015】
プリントエンジン13は、操作ステーション1Aから送られてくるプリントデータに基づいて、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色の光線の照射を印画紙Pに対して行う。この露光処理においては、印画紙Pを副走査方向に搬送しながら、この搬送速度と同期して主走査方向に沿ってライン状に露光が行われる。
【0016】
プリントエンジン13は、図3に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に対応した3種のレーザビームを生成するレーザビーム生成装置130と、縦軸芯周りで高速回転してレーザビームを走査するポリゴンミラー135と、このポリゴンミラー135からのレーザビームの走査速度を変換するfθレンズ136と、横向きのレーザビームを下向きに変更するための偏向ミラー137とを備える。レーザビーム生成装置130は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に対応して、半導体レーザで成るレーザ光源131およびレーザ光源132と、固体レーザで成るレーザ光源133とを備えると共に、G(緑)に対応したレーザ光源133からのレーザビームの強度(光量)を調節(変調)する音響光学変換素子(AOM)で成る光量調節機構134と、3種のレーザビームを反射する3つのビームミラーMr、Mg、Mbとを備えている。
【0017】
この写真プリント装置1は、外側を複数の板金製パネルで覆われた本体フレーム2で形作られている。いくつかの板金製パネルは内部点検のために開放可能な扉として形成されている。特に、現像処理部14の上方を覆っている板金製パネルは、現像処理槽14aに対して上方から手入れすることができるように、ほぼ90度に開放可能な上部カバー10として形成されている。乾燥部15は現像処理部14に隣接して現像処理部14より上方に突き出した突き出しフレーム2aの内部に配置されている。前記横送りコンベヤ16は突き出しフレーム2aから水平方向に延びるように設けられ、上部カバー10との間に空間を作り出している。この上部カバー10と横送りコンベヤ16との間の空間に、図1と図2から明らかなように、レール式移動機構30を介して濃度測定器としての測色計20が突き出しフレーム2aに対して遠近方向に移動可能に取り付けられている。
【0018】
この実施の形態では、上部カバー10は、図1において本体フレーム2の奥側を左右方向に延びている水平軸周りで揺動可能に本体フレーム2に取り付けられている。従って、上部カバー10は、現像処理部14の上方を閉鎖する姿勢と現像処理部14の上方を開放する開放姿勢の間でほぼ90度の揺動が可能となっている。この上部カバー10の開放姿勢への揺動時に、上部カバー10が横送りコンベヤ16と干渉することを避けるため、横送りコンベヤ16も、コンベヤ面が突き出しフレーム2aに接当するまでの、90度の揺動が可能となっている。
【0019】
図4に示すように、突き出しフレーム2aの内部には、印画紙Pを乾燥部15を経て横送りコンベヤ16に排出するとともに、テストプリントTPを乾燥部15を経て測色計20に送り込む排出搬送部60が印画紙搬送機構12の一部として構築されている。排出搬送部60の主要構成要素である挟持搬送ローラ対61は、駆動ローラと従動ローラとを組み合わせて構成されており、2つのローラの間隙に印画紙P又はテストプリントTPを挟みこんで駆動ローラを回転させることで、印画紙Pを下流側へと搬送する。ターンローラ対62は、上流側から上方に向かって搬送されてくる印画紙(写真プリント)P又はテストプリントTPを下方に向かって搬送させるように搬送方向を変化させるためのローラ群であり、例えば、駆動ローラと複数の従動ローラとで構成されている。搬送切換ガイド63は、ターンローラ対62のすぐ下流側に配置されている。印画紙(写真プリント)Pが搬送されている場合では、写真プリントPを横送りコンベヤ16へ送り出す写真プリント排出搬送経路(図4において実線で示されている)が利用され、テストプリントTPが搬送されている場合では、テストプリントTPを測色計20に送り出すテストプリント排出搬送経路(図4において破線で示されている)が利用される。写真プリント排出搬送経路とテストプリント排出搬送経路とは、ターンローラ対62の出口領域で分岐している。排出ローラ対64は、搬送切換ガイド63により誘導される印画紙(写真プリント)Pを、横送りコンベヤ16に排出するためのローラであり、2つのローラの間隙に印画紙(写真プリント)Pを挟み込んで、駆動ローラを回転することで印画紙(写真プリント)Pを搬出する。そして、印画紙(写真プリント)Pは、搬出孔65を通過して横送りコンベヤ16へ落下搬送される。ターンガイド66は、搬送切換ガイド63により案内されるテストプリントTPを、測色計20に誘導するためにテストプリント排出搬送経路に設けられたガイドである。このターンガイド66により、ターンローラ対62より送り出され垂直上方から搬送されてくるテストプリントTPが略水平方向へ搬送方向を変えられ、排出口67を通過して測色計20の搬入口に送り込まれる。
【0020】
測色計20は、搬送されてくるテストプリントTPをコマ送りしながら、テストプリントTPに形成されているテストパターンの濃度を測定するものである。この測色計20は分光測色計であり、その有効測定濃度範囲が約2.2D程度の標準的な製品である。測色計20は、ステッピングモータによって駆動される複数の圧着型の搬送ローラ対23とセンサ部22を備えており、センサ部22にはテストプリントTPに白色光を照射し、センシング対象からの反射光を受け、その反射光からR(赤)、G(緑)、B(青)又はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3原色毎の濃度データを取得するセンサ素子が組み込まれている。取得された濃度データはコントローラ4に転送される。測色計20の筐体21は、測色計20内の温度や明るさを一定にするために設けられており、例えば、合成樹脂部材等で形成されている。搬送ローラ対23は、センサ部22がテストプリントTPのテストパターンの濃度を測定できるようにテストプリントTPを搬送する。センサ部22によってすべてのテストパターンの濃度測定が取得されると、テストプリントTPは、搬送ローラ対23によって排出部24へ搬送される。
【0021】
写真プリント処理装置1は、毎日の運転開始時ごとにセットアップ用にプリントされたテストプリントTPにおける各テストパターン(濃度パターン)を測色計20に搭載されたセンサ部22を用いて測定する。そして、コントローラ4は、このセンサ部22の測定結果に基づいてプリントエンジン13の出力状態を調整するセットアップを行う。通常、写真プリント処理装置1から出力されるプリント品質(プリント濃度)等は、プリントエンジン13の発光状態、各処理槽14aの状態(処理液温度、酸化状態、活性化度合等)によって変化してしまう。このため、テストプリントTPに形成された濃度の異なる複数のテストパターンのそれぞれの濃度をセンサ部22によって測定し、この測定結果に基づいてプリントエンジン13の出力状態の調整、いわゆるセットアップが行われる。このようなセットアップ作業を行うことで、再現性の高い写真プリントを出力することができる。
【0022】
前記操作ステーション1Aは、本体フレーム2に隣接して配置された操作テーブルに構築されている。ここでは、操作ステーション1Aは、写真フィルムから画像データを取得するフィルムスキャナ3、各種情報を表示するモニタ5、フィルムスキャナ3を通じて写真フィルムから読み取られた撮影画像や半導体メモリから直接読み取られた画像データの処理、プリントデータの生成、プリントステーション1Bの制御を行うコントローラ4として機能する汎用コンピュータから構成されている。コントローラ4には、操作入力部として機能するキーボードやマウス、デジタルカメラの撮影画像メモリとして用いられている半導体メモリなどから撮影画像を取得するためのメディアリーダなども接続されている。
【0023】
コントローラ4はコンピュータによって構成されており、写真プリント装置の種々の動作を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエアあるいはその両方で実装されている。本発明に関係する主な機能部として、色調補正やフィルタリング(ぼかしやシャープネスなど)やトリミングなどの各種フォトレタッチ処理を行う画像処理部41、プリント出力する画像データの階調値(入力階調値)を色成分毎にプリントエンジン13の出力階調値に変換するためのデータ群(階調変換特性)を階調変換曲線として印画紙種別毎に格納している階調変換LUT42、この階調変換LUT42を用いて最終的な画像データをプリントエンジン13のための出力階調値に変換する階調変換部43aを備えると共に適切な出力階調値となった画像データからプリントエンジン13を駆動するためのプリントデータを生成するプリントデータ生成部43、IDコードリーダ11aによって読み取られた印画紙IDコードから現在装填されている印画紙マガジン11に収納されている印画紙Pの種類を特定する印画紙種別認識部44、さらに、ドット調整やLUT42の補正などを行う補正モジュール50が挙げられる。なお、上述のように本実施形態においては、印画紙Pの階調変換特性を表している階調変換曲線はルックアップテーブルの形で階調変換LUT42に格納されている。
【0024】
補正モジュール50には、本発明に関係するものとして、テストプリント管理部51、濃度値関係導出部52、濃度値関係解析部53、LUT管理部54、アンダーシュート補正部55、立ち上がり補正部56、立ち下がり補正部57が備えられている。
【0025】
テストプリント管理部51は、主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有するテストプリントTPの出力を管理するものである。濃度値関係導出部52は、テストプリントTPに形成されているテストパターンの測定濃度値を取得し、後段の機能部で処理しやすい形式に処理する。
【0026】
濃度値関係解析部53は、後述するブラックバランス補正のために機能する。つまり、濃度値関係導出部52から、テストプリントPTの所定テストパターンの測定濃度値と当該テストパターンに対応するテスト入力階調値とに基づいて導出されたテスト入力階調値−濃度値関係を受け取り、テスト入力階調値−濃度値関係を用いて各テスト入力階調値における測定濃度値が最小となる色成分の当該最小測定濃度値を特定すると共に、この最小測定濃度値と略同一の濃度値を有する修正入力階調値を色成分毎に算出する。
【0027】
LUT管理部54は、階調変換LUT42の管理を行うものであるが、特にブラックバランス補正のための機能として、濃度値関係解析部53において色成分毎に算出された修正入力階調値から階調変換曲線に基づいて得られる出力階調値と、前記テスト入力階調値とから黒領域擬似変換曲線を作成する黒領域擬似変換関係作成部54aと、黒領域擬似変換関係作成部54aで作成された黒領域擬似変換曲線と黒領域以外の階調変換曲線とを結合して黒領域補正階調変換曲線を作成する結合調整部54bと、結合調整部54bで作成された黒領域補正階調変換曲線に基づいて前記階調変換曲線を補正する補正実行部54cを有している。
【0028】
アンダーシュート補正部55は、変調レーザの立ち下がり制御遅延によるにじみを低減するために立ち下がり後の1ドットにアンダーシュート成分を付加する主走査アンダーシュート補正のためのアンダーシュート補正量を算定する。立ち上がり補正部56は、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち上がり後の1ドットに立ち上がり補正成分を付加する主走査立ち上がり補正のための立ち上がり補正量をテストプリントPTの所定テストパターンの測定濃度値に基づいて算定する。立ち下がり補正部57は、横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち下がり前の1ドットに立ち下がり補正成分を付加する主走査立ち下がり補正のための立ち下がり補正量をテストプリントPTの所定テストパターンの測定濃度値に基づいて算定する。
【0029】
次に、本発明による階調補正で用いられているテストプリントPTを説明する前に、このテストプリントPTが主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有している理由を、図6を用いて説明する。
図6の(a)は、露光ヘッドの主走査方向における理想的な光量(実線)と実際に露光ヘッドから照射される光量(点線)とを表した図である。一方、図6の(b)は、副走査方向における理想的な光量(実線)と実際の光量(点線)とを示している。図から明らかなように、主走査方向では理想的な光量と実際の光量とのずれが生じているのに対し、副走査方向ではずれは生じていない。その理由は、主走査方向に延びる1本の横ラインを形成する際、その始端でプリントエンジン制御信号が立ち上がり、その終端でプリントエンジン制御信号が立ち下がるだけなので、制御信号の立ち上がりや立ち下がりの遅延に起因するドットの変形は生じず、プリント上での滲みも目立たないのに対して、副走査方向に延びる1本の縦ラインを形成した場合、副走査を経て次の主走査を行う毎にそのドットの前後で、プリントエンジン制御信号が立ち上がりと立ち下がりが生じ制御信号の立ち上がりや立ち下がりの遅延に起因する、プリント上で滲みという形で現れてくるドットの変形は顕著に現れるからである。このことから、主走査方向と副走査方向で、露光されるドットの濃度に差が生じ、画質の低下を招いている。従って、横縞テストパターンに対する測定濃度と縦縞テストパターンに対する測定濃度を均一化する補正を行う必要があるが、そのために、横縞テストパターンと縦縞テストパターンとからなるテストプリントPTが効果的となる。
【0030】
テストプリント管理部51の管理下で、2種類のテストプリントPTが出力される。第1のテストプリントTPが図7に示されている。図7における部分的な拡大図から理解できるように、レーザビームの照射によって印画紙P(テストプリントTP)にドット列としてのラインが形成されるが、主走査方向に延びているドット列を横ラインと称している。これに対して、レーザビームの照射を印画紙Pの副走査方向の移動とともに繰り返すことで副走査方向に延びるドット列が形成されるが、これを縦ラインと称している。本発明での、横縞テストパターンは複数の横ラインから構成された領域であり、縦縞テストパターンは複数の縦ラインから構成された領域である。また、横縞は、濃度の異なる横ライン連続した並びによって作り出されるものであり、例えば、黒(階調値:0)の横ラインと白(階調値:255)の横ラインの並びによって作り出される。同様に、縦縞は、濃度の異なる縦ライン連続した並びによって作り出されるものであり、例えば、黒(階調値:0)の横ラインと白(階調値:255)の縦ラインの並びによって作り出される。
この第1のテストプリントTPは、No.1-1からNo. 1-21までの21種類のテストパターンを有している。No.1-21は白ベタで、それ以外は縞パターンである。縞パターンのうち、上から奇数番目のテストパターンは横縞テストパターンで、偶数番目のテストパターンは縦縞テストパターンである。縞模様としては、1ドット分の幅で形成されたもの、2ドット分の幅と3ドット分の幅を繰り返して形成されているものがある。図7では、1ドット分の幅のものは1オン1オフで表され、2ドット分の幅と3ドット分の幅とが繰り返されるものは2オン2オフ&3オン3オフで表されている。つまり、No.1-1からNo.1-10が1オン1オフで、No.1-11以降は奇数番目が2オン2オフ&3オン3オフで、偶数番目が1オン1オフとなっている。これらのテストパターンを形成する入力階調値もそれぞれ異なっており、入力階調値(R,G,B)=(0,0,0)は階調[0]で、入力値(R,G,B)=(25,25,25)は階調[25]でといったように表現されている。この階調値は8ビット階調で示したものであり、階調[0]が黒に対応している。つまり、上から1番目と2番目のテストパターン(No.1-1とNo.1-2)は階調[0]、次の2つは階調[25]、次の2つは階調[50]、次の2つは階調[100]、次の2つは階調[150]となっている。続いて、No.1-11とNo.1-12からは階調[0]に戻り、順次階調[25]、階調[50]、階調[100]となり、最後のNo.1-19とNo.1-20は階調[150]となっている。ただし、上から奇数番目のテストパターンは示された入力階調値を基本補正曲線に基づいて得られる基準出力階調値に基づいてレーザ露光されるが、上から偶数番目のテストパターンは示された入力階調値を基準からα%変化させた補正出力階調値に基づいてレーザ露光される。α%変化させたテストパターンを作成する理由は、基準テストパターンに対する基準から両サイドにオフセットされた比較テストパターンを得るためである。αの値は、No.1-2、No.1-4、No.1-6が−5で、No.1-8とNo.1-10が−10で、No.1-12、No.1-14、No.1-16が+5で、No.1-18とNo.1-20が+10となっている。なお、No.1-11、No.1-13、No.1-15、No.1-17、No.1-19が立ち下がり補正に利用されるが、それ以外は立ち上がり補正に利用される。
【0031】
第1のテストプリントTPに類似している第2のテストプリントTPが図8に示されている。この第2のテストプリントTPは、No.2-1からNo.2-22までの22種類のテストパターンを有している。No.2-22は白ベタで、それ以外は縞パターンである。縞パターンのうち、上から奇数番目のテストパターンは横縞テストパターンでかつ4オン4オフであり、偶数番目のテストパターンは縦縞テストパターンでかつ2オン2オフ&3オン3オフである。また、奇数番目のテストパターンはブラックバランス補正に利用されるものであり、偶数番目のテストパターンは立ち下がり補正に用いられるものである。ブラックバランス補正に利用されるテストパターンは、上から順に、階調[0]から6の倍数で階調[60]まで変化させている。この第2のテストプリントTPにおける立ち下がり補正に用いられるテストパターンは、全て基準からα%変化させた比較テストパターンであり、αの値は、上から3つが−5で、次の2つが−10で、さらに次の3つが+5で、最後の2つが+10となっている。
【0032】
この2つのテストプリントTPにおけるテストパターンのレイアウトで重要なことは、基準テストパターンと基準からα%変化させた比較テストパターンとが交互に並んでいることである。比較テストパターンをレーザ露光するためには、基準からα%変化させるための補正値をレジスタに設定する必要があるが、このテストパターンレイアウトにより、α%変化させるための補正値をレジスタに設定する作業を基準テストパターンがレーザ露光されている間に行うことができる。
【0033】
〔アンダーシュート補正〕
図9は、アンダーシュート補正の概念を表す図である。アンダーシュート補正とは、直接変調するRおよびBレーザの主走査方向における立ち下がりの制御遅延に起因する滲みを低減するために行われる補正である。なお、図9中のLDバイアス設定値O2とは、印画紙が発色する光量の限界点である。すなわち、LDバイアス設定値以下のD/A変換値に対応する制御電流による光量では、印画紙は発色しない。通常、白ドットを形成する場合には、その後の電流の立ち上がりを考慮して、D/A変換値は0とはせず、LDバイアス設定値に設定されている。
【0034】
しかしながら、このような制御では、白ドットの直前の黒ドットからの滲みが発生し、画質の低下を招いている。この滲みを低減するための補正がアンダーシュート補正である。具体的には、主走査方向における立ち下がり直後の出力階調値から以下の方法により算出された補正値を加算する処理である。
【0035】
アンダーシュート補正における補正値Bは、立ち下がり量Aと立ち下がり量Aに対応して予め設定されているアンダーシュート補正係数X[i]≦0との積により求められる。すなわち、アンダーシュートにおける補正値はB=A×X[f(A)]となる。ここで、iはレジスタ番号、f( )は立ち下がり量をレジスタ番号に変換する関数である。なお、アンダーシュート補正係数は所定の方法により求められ、LUT42に格納される。
【0036】
図9における実線は、主走査方向におけるD/A変換値(出力階調値)の変化であり、この例では2つの立ち下がり部が含まれている。各々の立ち下がり部において、上述の式により補正値BおよびB’が算出され、その補正値によりアンダーシュート補正がなされている(図9の点線部分)。
【0037】
〔立ち上がり補正〕
図10は、立ち上がり補正の概念を示す図であり、実線が主走査方向におけるD/A変換値(出力階調値)の変化を示している。図10の例では、2箇所の立ち上がりを有している。一方は、O1からO2に立ち上がっており、他方はO3からO4に立ち上がっている。このとき、A=O2−O1、A’=O4−O3である。
【0038】
このとき、立ち上がり補正量CおよびC’は、立ち上がり量AおよびA’と、上述の処理により算出されLUT42に格納されている立ち上がり補正係数とに基づき決定される。すなわち、LUT42に格納されている立ち上がり補正係数を−1≦Y[i]≦1とすると、立ち上がり補正量Cは、C=A×Y[f(A)]により求めることができる。ここで、iはレジスタ番号、f( )は出力階調をレジスタ番号に変換する関数である。同様にC’=A’×Y[f(A’)]となる。
【0039】
このようにして、求められた立ち上がり補正量は、立ち上がり直後の出力階調値に加算され、新たな出力階調値が得られる(図10の点線部分)。なお、この例では、立ち上がり補正量は正値となっているが、実際には負値の場合もあり得る。また、補正後の出力階調値が最大出力階調を超える場合や、最低出力階調を下回る場合があるが、その場合には、最大出力階調もしくは最低出力階調に丸める処理を行う。
【0040】
〔立ち下がり補正〕
一方、図11は立ち下がり補正の概念を示しており、実線が主走査方向におけるD/A変換値(出力階調値)の変化を示している。この例では、2箇所の立ち下がりを有しており、一方は、O1からO2に立ち下がっており、他方は、O3からO4に立ち下がっている。このときの立ち下がり量は、それぞれA=O1−O2、A’=O3−O4である。
【0041】
このときの立ち下がり補正量DおよびD’は、立ち上がり補正量と同様に、立ち下がり量BおよびB’とLUT42に格納されている立ち下がり補正係数とに基づき算出される。すなわち、LUT42に格納されている立ち下がり補正係数を−1≦Z[i]≦1とすると、立ち下がり補正量は、D=A×Z[f(B)]、D’=A’×Z[f(B’)]となる。ただし、立ち下がり補正は、立ち下がり後にその状態が2ドット以上継続する場合にのみ行われる。すなわち、立ち下がり直後に立ち上がった場合には、立ち下がり補正は行われない。
【0042】
このようにして、求められた立ち下がり補正量は、立ち下がり直前の出力階調値に加算され、新たな出力階調値が得られる(図11の点線部分)。なお、この例では、立ち下がり補正量は正値となっているが、実際には負値の場合もあり得る。また、補正後の出力階調値が最大出力階調を超える場合や、最低出力階調を下回る場合があるが、その場合には、最大出力階調もしくは最低出力階調に丸める処理を行う。
【0043】
次に、上述した立ち上がり補正係数や立ち下がり補正係数を求める手順を説明するが、両者ともその手順は同様に行われるので、ここでは立ち上がり補正係数を求める手順を図12のフローチャートを用いて説明する。
ここで用いるテストプリントTPは、図7で示した第1のテストプリントTPであり、その中のNo.1-11とNo.1-13とNo.1-15とNo.1-17とNo.1-19以外のテストパターンの測定濃度値が利用される。
【0044】
まず、階調[0]の基準テストパターン(No.1-1)から基準値となる測定濃度値が取得される(#01)。次に、入力階調0に対する比較テストパターン(No.1-2とNo.1-12)から2つの比較値(以下、第1比較値、第2比較値と称する)としての測定濃度値が取得される(#02)。
【0045】
立ち上がり補正部56は、濃度値関係導出部52から取得された第1比較値と基準値との差分値(以下、第1差分値d1と称する)および、第2比較値と基準値との差分値(以下、第2差分値d2と称する)を算出する(#03)。
【0046】
さらに、第1差分値d1および第2差分値d2に基づき近似直線を算出する(#04)。この動作を、図13を用いて具体的に説明する。まず、横軸を比較値と基準値との差とし、縦軸を補正係数とする平面を考え、この平面上に第1差分値および第2差分値に基づく点(以下、点P1、P2と称する)をプロットする。ここで、第1差分値d1の算出の基礎となった比較パターン62aは、+α%の補正係数により補正された露光されたものであるため、点P1の座標は(d1,α)となる。同様に、点P2の座標は(d2,−α)となる。そして、公知の方法により、点P1と点P2を結ぶ線分を求めることにより、近似直線Lが得られる。なお、本実施形態では、2つの比較値に基づき2点を定め、近似直線を求めているが、これに限定されるものではなく、3以上の比較値に基づき、近似直線を求めても構わない。この場合には、最小二乗法等の公知の方法により近似直線を求めることができる。
【0047】
このように算出された近似直線に基づき、補正係数を算出する(#05)。具体的には、算出された近似直線の縦軸切片を補正係数として算出する。図13の例では、直線Lの縦軸切片は、点Pd(0,V)であり、算出される補正係数はVである。
【0048】
以上の処理により、入力階調0に対する補正係数が求められ、この処理を階調[0]から階調[150]までの全ての入力階調に対して繰り返す(#06のNo分岐)。
【0049】
上述の処理により、入力階調0、25、50、100、150に対する補正係数V0、V25、V50、V100、V150が得られる。補正曲線算出手段85は、これらの補正係数から補正曲線を算出する(#07)。図14は、この様子を表した模式図である。図14の上段は、入力階調に対する出力階調の関係を規定する入出力特性曲線である。また、下段は横軸を出力階調、縦軸を補正係数とする平面であり、上述の処理により算出された補正係数V0、V25、V50、V100、V150に対応する点P0、P25、P50、P100、P150がプロットされている。例えば、P0の横軸要素は、入出力特性曲線に基づき決定される。すなわち、入力階調0に対する出力階調が、P0の横軸要素となる。また、P0の縦軸要素は、入力階調0に対する補正係数V0である。このようにして、点P0の座標が決定される。他の点P25、P50、P100、P150も同様にして、決定される。
【0050】
このようにして決定された点に基づき、公知の方法により補正曲線が求められる。本実施形態では、3次曲線による近似が行われており、図14下段の実線が補正曲線として得られることとなる。
【0051】
補正曲線の近似に用いた範囲外の出力階調に対する補正係数として、近似補正曲線の値を使用した場合には、信頼性が低いため、画質が低下する恐れがある。そのため、入力階調150に対応する出力階調B以下に対する補正係数は、出力階調Bに対応する補正係数V150を用いる。すなわち、出力階調区間[0,B]に対する補正係数はV150となる。一方、入力階調0に対応する出力階調A以上に対する補正係数は、出力階調1.1Aまでは、補正曲線の値を補正係数として用いるが、出力階調1.1A以上に対する補正係数は、出力階調1.1Aに対応する補正係数V0’を用いる。すなわち、出力階調区間[1.1A,最大階調]に対する補正係数は、V0’となる。このようにして、全出力階調に対する補正係数が求められ、LUT42に補正係数が格納される(#08)。
【0052】
〔ブラックバランス補正〕
上述したアンダーシュート補正、立ち上がり補正、立ち下がり補正は、変調レーザの制御誤差に起因する横ラインと縦ラインでの濃度差を合わせるためのものであるが、このような補正を行ったとしても、黒領域における各色成分(印画紙の場合、C・M・Y)の発色濃度に差が生じ、黒領域において色むらが生じる。この黒領域の色むらを抑制する補正がブラックバランス補正であり、この補正を通じてLUT42に格納されている階調変換曲線(階調変換データ群)の黒領域が修正される。なお、このブラックバランス補正では、図8で示されている第2のテストプリントTPが利用される。
【0053】
以下に、ブラックバランス補正の手順を図15のフローチャートを用いて説明する。まず、テストプリント管理部51からテストプリントTPの画像データが読み出され(#11)、プリントデータ生成部43の階調変換部43aによって現時点で階調変換LUT42に設定されているデータを用いて階調変換が行われ、生成されたプリントデータに基づいて露光エンジン13が駆動制御され印画紙Pを露光する。露光された印画紙Pは現像処理部14で現像されたのち乾燥され、テストプリントPTとして出力される(#12)。
【0054】
出力されたテストプリントPTは、テストプリント排出搬送経路を経て測色計20に送り込まれ、各テストパターンの濃度値が測定される(#13)。テストプリントPTに対する濃度測定が終了すると、その濃度測定結果が濃度値関係導出部52に転送される。なお、ブラックバランス補正で用いられる測定濃度は、図8で示されている、No.2-1からNo.2-22までの22種類のテストパターンのうち、上から奇数番目となる11個のテストパターンの測定濃度が用いられる。濃度値関係導出部52は、上述した種類のテストパターンの測定濃度値と、当該濃淡テストパターンに対応するテスト階調値(入力値)とをリンクさせ、図16に示すテスト入力階調値−濃度値関係を導出する(#14)。なお、赤色の露光量を減少させると印画紙P上ではシアンの発色が減少し、緑色の露光量を減少させると印画紙P上ではマゼンタの発色が減少し、青色の露光量を減少させると印画紙P上ではイエローの発色が減少するので、図16の縦軸は、赤色の入力値の変化に対してシアンの測定濃度値(図16において「C濃度値」として示す)を表示し、緑色の入力値の変化に対してマゼンタの測定濃度値(図16において「M濃度値」として示す)を表示し、青色の入力値の変化に対してイエローの濃度測定値(図16において「Y濃度値」として示す)を表示している。
【0055】
導出されたテスト入力階調値−濃度値関係から、濃度値関係導出部53が各テスト入力階調値、つまり11個のテストパターンにおける最小測定濃度値:Min〔1〕〜Min〔11〕を特定する(#15)。図16の例では、全てのテストパターンにおいてC濃度値が最小測定濃度値を示しているので、C濃度値が最小測定濃度値となっている。次に、テストパターン毎に、この最小測定濃度値とほぼ同じ濃度値を与えることになる入力値をR,G,B成分で示した修正入力階調値:(inR〔Min〔1〕〕,inG〔Min〔1〕〕,inB〔Min〔1〕〕)〜(inR〔Min〔11〕〕,inG〔Min〔11〕〕,inB〔Min〔11〕〕)を算出する(#16)。図16では、inR〔Min〔1〕〕,inG〔Min〔1〕〕,inB〔Min〔1〕〕)とinR〔Min〔6〕〕,inG〔Min〔6〕〕,inB〔Min〔6〕〕)だけが図示されている。
【0056】
R,G,B成分で示した修正入力階調値が算出されると、黒領域擬似変換関係作成部54aが、現時点における階調変換LUT42を用いて、各修正入力階調値に対応する出力階調値を算出し(#17)、この出力階調値とテスト入力階調値(入力値)とをリンクさせて、図17に示す入力階調値−出力階調値関係を作り出し、この関係を黒領域擬似変換曲線とする(#18)。
【0057】
次に結合調整部54bが、黒領域擬似変換曲線と、黒領域以外の階調変換曲線(LUT42のデータ内容)とを結合して黒領域が補正された、つまりブラックバランス調整された階調変換曲線としての黒領域補正階調変換曲線を作成する(#19)。この黒領域補正階調変換曲線の作成にあたってこの実施形態では、まず、図18に示すように、黒領域擬似変換曲線のうち入力階調値が0から30までの領域の黒領域擬似変換曲線部分が用いられる。さらに、階調変換曲線のうち、黒領域擬似変換曲線において入力階調値が30における出力階調値から20%低下した値、つまり入力階調値が30における出力階調値の80%の値をもつポイントからの階調変換曲線部分が用いられる。その間の空白部は、適切な2次式によって補間され、つなぎ合わされる。図19を用いてこのつなぎ合わせ処理を説明する。ここでは、R成分の曲線を例として説明するが、他の色成分も同様に行われる。図19では、黒領域擬似変換曲線部分の終端をP1としその座標値を(x1,y1)とし、階調変換曲線部分の始端をP2としその座標値を(x2,y2)としている。そこで、まず補助点:P3を設定する。この補助点:P3の座標値(x3,y3)は、この実施形態では、
x3=(x1+x2)/2
y3=(2y1+3y2)/5
と定義されている。
そして、P1とP2とP3の各座標値から算定される二次式を用いてこの空白部分が補間される。その結果、作成された黒領域補正階調変換曲線が図20に示されている。
【0058】
上述したような処理を経てブラックバランス調整済の黒領域補正階調変換曲線が得られると、この黒領域補正階調変換曲線のデータに基づいて、階調変換曲線、つまりLUT42が階調補正実行部54cによって補正される(#20)。
【0059】
上述したように構成されたカラー画像プリンタにおける全体的な調整作業の手順を図21のフローチャートを用いて説明する。この調整作業は、一般的には使用印画紙の種類が変更された時などに実施される。
まず、レーザ光源(Rレーザ光源131、Bレーザ光源132)のレーザバイアス調整が行われる(#51)。このレーザバイアス調整では、レーザ電流モニタの測定結果からレーザバイアス値を求める。さらに、シェーディング補正などを含む、階調変換曲線の全体的な補正である、それ自体はよく知られているセットアップが実行される(#52)。このセットアップで設定された値をセットアップ値と呼ぶ。
【0060】
続いて、本発明に関する複数の補正が開始される。まず、レーザバイアス値とセットアップ値とから演算によってアンダーシュート補正値を求めるアンダーシュート補正を実行する(#53)。さらに、LUT42の基本補正曲線ルックアップテーブルから基本補正値を読み取り、さらにその基本補正値に対して+α%と−α%だけオフセットした補正値を算定する(#54)。まずは、第1のテストプリントのための画像データを作成し、第1テストプリントTPを出力する(#55)。出力された第1テストプリントTPの全テストパターンに対する測定濃度値を取得する(#56)。最初は、立ち上がり補正部56が、所定のテストパターンに対する測定濃度値を用いて、立ち上がり補正値を求め、立ち上がり補正曲線(立ち上がり補正テーブル)を設定する(#57)。つまり、この立ち上がり補正では、1オン1オフの横縞テストパターンの濃度に1オン1オフの縦縞テストパターンの濃度を合わせるための補正値が設定される。立ち上がり補正が設定された段階で、さらに、第2のテストプリントのための画像データを作成し、第2テストプリントTPを出力する(#58)。出力された第2テストプリントTPの全テストパターンに対する測定濃度値を取得する(#59)。
【0061】
次に、立ち下がり補正部56が、第1のテストプリントTPに形成されている基準となるテストパターンと第2のテストプリントTPに形成されて比較用のテストパターンの測定濃度を用いて、立ち下がり補正値を求め、立ち下がり補正曲線(立ち下がり補正テーブル)を設定する(#60)。つまり、この立ち下がり補正では、2オン2オフ&3オン3オフの横縞テストパターンの濃度(2.5ドットに相当する濃度)に2オン2オフ&3オン3オフの縦縞テストパターンの濃度を合わせるための補正値が設定される。次に、LUT管理部54が、第2のテストプリントTPの所定のテストパターンの測定濃度を用いて、基本階調曲線の黒領域を修正するブラックバランス補正を実行する(#61)。
【0062】
以上の一連の補正処理を通じて、このカラー画像プリンタは、変調レーザの制御誤差に起因する横ラインと縦ラインでの濃度差の発生が抑制されるとともに、黒領域における横ラインと縦ラインとの間の色むらが抑制される状態となる。なお、1回の調整作業で満足できる結果が得られなかった場合には、ステップ#53からステップ#61までの処理が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による階調補正方法を採用したカラー画像プリンタとしての写真プリント装置の外観図
【図2】図1による写真プリント装置のプリントステーションを示す模式図
【図3】プリントエンジンの構造を説明する模式図
【図4】写真プリント装置の排出搬送部と測色計とを示す模式断面図
【図5】写真プリント装置に組み込まれたパソコンに構築される本発明に関係する主な機能を示す機能ブロック図
【図6】露光制御の遅れを表す模式図
【図7】第1のテストプリントを示す模式図
【図8】第2のテストプリントを示す模式図
【図9】アンダーシュート補正を説明する模式図
【図10】立ち上がり補正を説明する模式図
【図11】立ち下がり補正を説明する模式図
【図12】補正値算出方法の処理の流れを示すフローチャート
【図13】補正値の算出方法を説明する模式図
【図14】補正値の近似曲線を求める方法を説明する模式図
【図15】本発明による階調変換曲線補正処理のフローチャート
【図16】入力値−測定濃度値関係を示すグラフ
【図17】黒領域擬似変換曲線を示すグラフ
【図18】黒領域擬似変換曲線と基本階調変換曲線との結合前の状態を示す説明図
【図19】黒領域擬似変換曲線と基本階調変換曲線との結合処理を説明する説明図
【図20】ブラックバランス調整された基本階調変換曲線を示すグラフ
【図21】カラー画像プリンタにおける全体的な調整作業の手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0064】
4 コントローラ
13 プリントエンジン
20 測色計(濃度測定器)
41 画像処理部
42 LUT
43 プリントデータ生成部
43a 階調変換部
50 補正モジュール
51 テストプリント管理部
52 濃度値関係導出部
53 濃度値関係解析部
54 LUT管理部
54a 黒領域擬似変換関係作成部
54b 結合調整部
54c 階調補正実行部
55 アンダーシュート補正部
56 立ち上がり補正部
57 立ち下がり補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ走査露光によって感光材料に画像を形成するカラー画像プリンタのための階調補正方法であって、主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有するテストプリントの測定濃度値に基づいて前記階調補正が行われるものにおいて、
横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち上がり後の1ドットに立ち上がり補正成分を付加する主走査立ち上がり補正のための立ち上がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定するステップと、
横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち下がり前の1ドットに立ち下がり補正成分を付加する主走査立ち下がり補正のための立ち下がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定するステップと、
からなる階調補正方法。
【請求項2】
前記立ち上がり補正量は、1ドット分の幅をもつ横縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値と、1ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値とに基づいて算定される請求項1に記載の階調補正方法。
【請求項3】
前記立ち下がり補正量は、2ドット分と3ドット分の幅を交互にもつ横縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値と、2ドット分と3ドット分の幅をもつ縦縞テストパターンを異なる階調値で形成された複数の横縞テストパターンに対する測定濃度値とに基づいて算定される請求項1又は2に記載の階調補正方法。
【請求項4】
変調レーザの立ち下がり制御遅延によるにじみを低減するために立ち下がり後の1ドットにアンダーシュート成分を付加する主走査アンダーシュート補正のためのアンダーシュート補正量を算定するステップがさらに付加される請求項1から3のいずれか一項に記載の階調補正方法。
【請求項5】
黒領域における各色成分の発色濃度を均一化するためのブラックバランス補正を行うステップがさらに付加される請求項1から4のいずれか一項に記載の階調補正方法。
【請求項6】
レーザ走査露光によって感光材料に画像を形成するカラー画像プリンタにおいて、
主走査方向に延びる横ライン群からなる横縞テストパターン及び副走査方向に延びる縦ライン群からなる縦縞テストパターンを有するテストプリントを出力するテストプリント管理部と、
前記テストプリントのテストパターンの濃度を測定して測定濃度値を出力する濃度測定器と、
横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち上がり後の1ドットに立ち上がり補正成分を付加する主走査立ち上がり補正のための立ち上がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定する立ち上がり補正部と、
横ラインと縦ラインの濃度違いを低減するため変調レーザの立ち下がり前の1ドットに立ち下がり補正成分を付加する主走査立ち下がり補正のための立ち下がり補正量を前記測定濃度値に基づいて算定する立ち下がり補正部と、
を備えたカラー画像プリンタ。
【請求項7】
変調レーザの立ち下がり制御遅延によるにじみを低減するために立ち下がり後の1ドットにアンダーシュート成分を付加する主走査アンダーシュート補正のためのアンダーシュート補正量を算定するアンダーシュート補正部がさらに備えられている請求項6に記載のカラー画像プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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