説明

カリックスアレーン結合イリジウム含有金属コロイド

本発明は、カリックスアレーン関連化合物がイリジウム含有金属コロイドに配位している錯体を提供する。錯体は、基材上に固定化することができる。本発明の錯体は、分子の結合及び化学反応の触媒作用に用途を見出す、調整可能で、高度に強靭な分離金属コロイドとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、すべての目的に関してその全体が参照により組み込まれる、2009年10月22日に出願された米国出願第61/254,163号の利益を35USC119(e)(1)の下で主張する。
【0002】
本発明は、カリックスアレーン及び関連化合物に関する。より具体的には、本発明は、コロイド上の少なくとも1個のイリジウム原子に配位した配位原子を含む、カリックスアレーン関連化合物のリンカー成分によってイリジウム含有金属コロイドに配位したカリックスアレーン及び関連化合物に関する。得られたカリックスアレーン結合コロイドは、基材の表面に固定すること、及び触媒として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
カリックスアレーンは、通常はアルカリ性条件下でホルムアルデヒドをp−アルキルフェノールと縮合させることによって作製される周知のクラスの環式オリゴマーである。V.Bohmerは、優れた総説においてカリックスアレーンの化学を総括した(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.34:713頁(1995年))。カリックス[4]アレーン又はO−メチル化カリックス[4]アレーンの4個の酸素原子が金属にキレートする初期の遷移金属錯体が現在知られている(例えば、J.Am.Chem.Soc.119:9198頁(1997年))。
【0004】
金属コロイドは、触媒及び触媒前駆体として有利な特性を有する一群の化合物を構成する。米国特許第4,144,191号では、ヒドロホルミル化によってアルコールを生成するための二金属カルボニルクラスター化合物触媒が開示され;アミン基を含有する有機ポリマーに結合した、RhCo(CO)12又はRh(Co)(CO)12が用いられている。この触媒は、低温で作用し、ほとんどすべてアルコールを生成する。
【0005】
フィンランド特許出願第844634号では、アミン樹脂担体に結合した単金属クラスター化合物Rh(CO)12及びCo(CO)12の混合物が、アルコールの生成における極めて選択的な触媒として作用するとの知見が示されている。クラスター混合物触媒の利点は、調製することがより簡単であり、その活性を金属のモル比率に応じて最適化し得ることである。無機酸化物の表面に担持される場合、Ir及びナノ粒子などのクラスターの形態のイリジウム金属コロイドは、オレフィン水素化(Nature 415:623頁(2002年))及びトルエン水素化(Journal of Catalysis 170:161(1997年)及びJournal of Catalysis 176:310頁(1998年))に対して活性な触媒である。オレフィン水素化の外に、イリジウムは一般に、プロパン水素添加分解、CO水素化、トルエン水素化、デカリン開環及びメチルシクロヘキサンのジメチルペンタンへの関連の転換(Catalysis Letters 131:7頁(2009年)参照)、メタン化、分子内ヒドロアミノ化、一次アリルアルコールの不斉異性化、アリルアミノ化、ヒドロアミノ化、ヒドロチオール化、ヨードアレーンを用いるヘテロアレーンのC−H結合アリール化、[2+2+2]環化付加、メタノールのカルボニル化、メタンヒドロキシル化(Chemical Communications 3270〜3272頁(2009年)参照)、並びに右側のペンダント置換基の有意な脱アルキル化なしの選択的ナフテン開環(米国特許第5,763,731号参照)を含む様々な触媒工程に用いられる。
【0006】
触媒活性などの金属クラスターの化学的特性又は電子結合エネルギーなどの電子的特性は、クラスター(原子の凝集体)の大きさ並びにリガンドの性質及び数に依存して変わることが知られている。金属クラスター及び、一般に、金属コロイド触媒の工業的利用を妨げる決定的な制限は、凝集に対する安定性の欠如であることが、更に知られている(Gatesら、Nature 372:346頁(1994年)。金属クラスターの安定の欠如に対処する方法の一つは、無機酸化物の平面又はゼオライトの内部微多孔性などの担体上にそれらを堆積させることである。これらの表面は、金属クラスターに付加的安定性を付与し、これは、脱カルボニル化される場合でさえも、ゼオライトの内部のIr金属コロイド種について以前に実証された(Gatesら、J.Phys.Chem.B 103:5311頁(1999年)、Gatesら、J.Am.Chem.Soc.1999 121:7674頁(1999年)、Gatesら、J.Phys.Chem.B 108:11259頁(2004年)、及びGatesら、J.Phys.Chem.C 111:262頁(2007年))。しかし、リガンドとして、ゼオライト及び無機酸化物の表面は、有機リガンドと比較した場合、クラスターと相互作用する利用できる官能基を欠く(ゼオライトについてO、Si、及びAlであることに限定される)ために、大部分でクラスターの触媒的及び電子的特性を広範囲に調整する能力が欠けている。さらに、互いに対して組織化された空間様式で離散した多数のクラスターをパターン化することが非常に望ましいが、その理由は、このような組織が原理上は、触媒作用に影響を与えるために用いることもできるからである。これは、多かれ少なかれクラスターのランダムな堆積が至る所で生じるので、鋳型として無機酸化物の平らな表面又はゼオライトの内部微多孔性を用いて行うことはできない。同じことが、金属−有機フレームワーク物質の内部微多孔性を用いる場合にも当てはまる(J.Materials Chem.19:1314頁(2009年)参照)。半導体産業で使用されてきたリソグラフィー製作法は、大きさが均一である金属粒子のアレイを作製するために使用されてきたが、これらの粒子は典型的には、直径100nmより大きい(Somorjaiら、Langmuir 14:1458頁(1998年)参照)。最近、カリックスアレーンは、組織スキャホールド(scaffold)としてカリクッスアレーン分子を用いて最大8個のコバルトコロイドをパターン化するリガンドとして成功裏に用いられた(Vicensら、Dalton Transactions 2999〜3008頁(2009年)及びWeiら、Chem Comm 4254〜4256頁(2009年)参照)。これらのコロイドは、一個だけのアルキン基からなる非カリックスアレーンリガンドに用いられるものと同一の条件下で、Co(CO)又はCo(CO)12のいずれかとアルキン含有レゾルシナレンとの直接反応を介して合成された。しかし、この種の直接反応の手法は、Co(CO)12を用いるときに、金属多面体と反応させる場合、明確な特徴付け可能な一組の生成物を合成することができなかったし、また本明細書で例4に詳述されるように、カリックスアレーン結合イリジウムコロイドの合成に役に立たない。今日まで、イリジウム含有金属コロイドのカリックスアレーン錯体の報告はされてこなかった。金属コロイドに対するリガンドとしてカリックスアレーンを用いる場合のさらなる利点は、カリックスアレーンが、幾何学的制限及び/又は多価によって小さい大きさであるように、合成中のコロイドの核生成及び成長を制限するために用いることができる(Weiら、ChemComm 4254〜4256頁(2009年)参照)。金属コロイド核生成及び成長の間のこの種の制限も、金属コロイドに対するリガンドとしてデンドリマーを用いて以前に実証された(Crooksら、Accounts of Chemical Research 34:181(2001年)参照);しかし、デンドリマーは、離散した多数の8個未満のコロイドをパターン化する制御をすることができない。本発明は、組織化された集合でコロイドをパターン化する能力を与える一方、環境の調整性も与える。
【0007】
カリックスアレーンで錯化された遷移金属の一部の触媒効果は、オレフィン転移[Gianniniら、J.Am.Chem.Soc.121:2797頁(1999年)]、末端アルカンのシクロ環化[Ozerovら、J.Am.Chem.Soc.122:6423頁(2000年)]及びヒドロホルミル化[Csokら、J.Organometallic Chem.570:23頁(1998年)]について示された。それらの調査におけるカリックスアレーンは、金属コロイドにおけるように還元金属間の相互作用を含まない1個又は複数の金属カチオンと配位していた。酸化物表面上にグラフトされている金属カチオンに配位したカリックスアレーンは、拡大された酸化物構造中への凝集を防止することによってグラフト金属カチオンの分離を強制し[Katzら、J.Am.Chem.Soc.126:16478頁(2004年)]、[Katzら、J.Am.Chem.Soc.129:15585頁(2007年)]及び[Katzら、Chem.Mater.21:1852頁(2009年)]、及びまたカリックスアレーン骨格上の置換基としての配位基の性質によってグラフトカチオンの触媒作用を調整する能力も与える[Katzら、J.Am.Chem.Soc.129:1122頁(2007年)]。
【0008】
金属クラスターにカリックスアレーンリガンドを配位させることは、限定されるものではないが、立体的に嵩高い障害としてのカリックスアレーンの役割による凝集に対するより大きい復元力を含む、多くの利点を与え、恐らくはより重要なことに、カリックスアレーンが錯体活性部位の集合のためのナノスケールの組織スキャホールドとして機能する、新規なクラスの高度に調整可能な機能物質の合成を利用できるようにする。カリックスアレーンはまた、カリックスアレーン骨格上の配位官能基及び置換基によって金属コロイドコア上の電子密度にも影響を与え得る。さらに、カリックスアレーンと結合した金属コロイドは、表面上のカリックスアレーン間又はカリックスアレーン空洞の真下に空隙を有し、これは、分子の結合及び触媒作用に用いることができる。上記効果のすべては、カリックスアレーン結合金コロイドについて以前に実証された[Katzら、Langmuir 25:10548頁(2009年)]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
極めて驚くべきことに、本発明者らは、イリジウム金属コロイドとカリックスアレーン関連化合物との間の豊富な配位化学を発見した。本発明の自明でない態様は、従来技術で確立され及び知られた方法を用いて本発明の例示的な実施形態をもたらすことができなかった以下の例4でさらに具体化される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は初めて、カリックスアレーン関連リガンド(又は同義的に用いられる「カリックスアレーン関連化合物」)とイリジウム含有金属コロイドとの間に形成される配位錯体を提供する。リガンドとしてのカリックスアレーンの使用は、いくつかの自明でない利点、例えば、(i)表面上の立体的に嵩高なリガンドとして作用するカリックスアレーン関連リガントによる凝集及びシンタリング(sintering)に対する保護、(ii)カリックスアレーン関連リガンド空洞真下又はカリックスアレーン間の領域に位置した露出金属による金属表面への接近し易さ(例えば、空隙形成による)、(iii)カリックスアレーン関連リガンド上の置換官能基によって金属コロイドコアの電子的及び立体的特性を調整し、したがって、キャッピングされたクラスター触媒作用特性の調整を可能とする能力、並びに(iv)二元機能触媒作用に重要であり得る、微多孔性物質の外面上の小クラスターの選択的配置を可能にすることをもたらす。リガンドに配位した金属コロイドにおける特定の所望の特性を得るために調整可能である、容易に変えられるリガンドとして作用するカリックスアレーン関連化合物も提供される。これらのリガンドを作製し、それらを金属コロイドと配位させる方法も提供される。さらに、それらの化合物を製造する方法及びそれらの使用の方法も提供される−それらの遊離及び固定化状態の両方において。本発明のカリックスアレーン関連金属コロイドは、金属介在プロセスによって触媒される当技術分野で知られているものを含めて、プロセスを触媒するために使用され得る。
【0011】
例示的な実施形態では、本発明は、イリジウム含有金属部分に結合したカリックスアレーン関連部分からなる独特の組成物を含み、これは、凝集/分解に対して金属部分の保護を維持する一方、金属部分の表面で結合及び/又は反応し得る分子への接近し易さも同時に与える。本発明の例示的な実施形態では、カリックスアレーンを用いて、電子的環境、立体的接近、パターン化、及び最終的には、イリジウム含有金属コロイドコアの触媒活性を調整し得る。例示的な実施形態では、本発明は、カリックスアレーン関連部分との配位によってイリジウム含有金属コロイドの反応性の側面を制御する方法も提供する。
【0012】
例えば、結合カリックスアレーンホスフィンリガンドLの数を変えることによって、Irクラスターコアの安定性のみならず、電子密度を調整する能力によって、強力な「触媒反応のための構築キット」が開発された。カリックスアレーンリガンドシェルによって得られる立体的保護は、一連のIr(CO)12−x(L)において結合したカリックスアレーンホスフィンの数の増加とともに、増加すると仮定される。これは、より大きなx値からなるクラスターにとってより大きなクラスター安定性の観察をもたらし、熱的(加熱)プロセスのみならず触媒反応の間の集塊の可能性を減少させるはずである。さらに、金属コアに結合したリガンドの数の増加後に、クラスターコア内の電子密度は、増加すると予想される。これは転じて、触媒活性に影響するとも予想される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、温度プログラム化した酸化分解の間の、シリカと混合した1及びシリカと混合したIr(CO)12の温度に対する重量の導関数(derivative)のプロットを示す。
【0014】
【図2】図2は、(a)酸化条件下でのIr(CO)12の熱重量分析、(b)(a)におけるのと同じ実験の間の温度に対する質量損失の導関数(DTG)、並びに水、フェニル、及びCOに対応する質量分析計シグナルの結果を示す。
【0015】
【図3】図3は、(a)酸化条件下での1の熱重量分析、(b)(a)におけるのと同じ実験の間の温度に対する質量損失の導関数(DTG)、並びに水、フェニル、及びCOに対応する質量分析計シグナルの結果を示す。
【0016】
【図4】図4は、単結晶X線回折から得られたカリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh(Ir(CO)11の構造を示す。左側のIr金属コアは、無秩序であり、Ir(5)、Ir(6)、Ir(7)及びIr(8)原子の位置は、68%占有で示される。
【0017】
【図5】図5は、[1Na]+の分子イオン;実験(上)、理論的模擬実験(下)を示すESI質量スペクトルを示す。
【0018】
【図6】図6は、[1]+の分子イオン;実験(上)、理論的模擬実験(下)を示すESI質量スペクトルを示す。
【0019】
【図7】図7は、1(CHCl中)のIRスペクトルを示す。
【0020】
【図8】図8は、室温での1の31P NMRを示す。
【0021】
【図9】図9は、−58℃での1の31P NMRを示す。
【0022】
【図10】図10は、室温での1のH NMRを示す図である。
【0023】
【図11】図11は、2の31P NMRを示す。
【0024】
【図12】図12は、2の31H NMRを示す。
【0025】
【図13】図13は、2の13C NMRを示す。
【0026】
【図14】図14は、3の31P NMRを示す。
【0027】
【図15】図15は、3の31H NMRを示す。
【0028】
【図16】図16は、3の13C NMRを示す。
【0029】
【図17】図17は、1の単結晶X線結晶構造を示す図である(選択した結合長さ及び結合角は、表1及び表2に示す)。
【0030】
【図18】図18は、単結晶X線回折から得られたカリックス[4]アレーン(OMe)(OCHPPh(Ir(CO)11の構造を示す。左側のIr金属コアは、無秩序であり、Ir(5)、Ir(6)、Ir(7)及びIr(8)原子の位置は、90%占有で示される。
【0031】
【図19】図19は、tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh(Ir(CO)1131P NMRを示す。
【0032】
【図20】図20は、tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh(Ir(CO)11のESI質量スペクトルを示す。
【0033】
【図21】図21は、tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OMe)(OCHPPh(Ir(CO)1131P NMRを示す。
【0034】
【図22】図22は、tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OMe)(OCHPPh(Ir(CO)11のESI質量スペクトルを示す。
【0035】
【図23】図23は、[tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh)]Ir(CO)10のESI質量スペクトルを示す。
【0036】
【図24】図24は、上に示される第1のカリックスアレーン結合金属クラスターの成功裏の合成を基礎とするIrをベースとするカリックスアレーン結合クラスターの選抜を示す。構造(a)の合成は、分子内に4個のIr金属コアを組み入れる。構造(b)の合成は、繰り返しIr及びカリックスアレーン単位の一次元ポリマーを表し、金属クラスター有機骨格の合成に向けての重要な一里塚である。
【0037】
【図25】図25は、(a)1、(b)tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh(Ir(CO)11、及び(c)tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OMe)(OCHPPh(Ir(CO)11のFTIRスペクトルを示す。
【0038】
【図26】図26は、5重量%Ir負荷Ir/γ−Al(ここで、アルミナは、Stremから購入した)のTEM画像(a、b、及びc)、並びに対応するサイズ分布ヒストグラム(d)を示す。
【0039】
【図27】図27は、5重量%Ir負荷Ir/γ−Al(ここで、アルミナは、Degussaから購入した)のTEM画像(a、b、及びc)(低解像度)、並びに対応するサイズ分布ヒストグラム(d)を示す。Irコロイドサイズは、γ−Al(Strem)で調製したIr/γ−Alのサイズ(0.7±2nm)と比較してわずかに増加しているが、誤差の範囲である。
【0040】
【図28】図28は、2重量%Ir負荷Ir/TiOのTEM画像(a、b、及びc)(低解像度)、並びに対応するサイズ分布ヒストグラム(d)を示す。
【0041】
【図29】図29は、2重量%Ir負荷Ir/MgOのTEM画像(a、b、及びc)(低解像度)、並びに対応するサイズ分布ヒストグラム(d)を示す。
【0042】
【図30】図30は、一般式Ir(CO)12−x(式中、x=1、2、3、4)を有する合成された金属クラスターのIRデータを示す。
【0043】
【図31】図31は、(a)視野内の接近し易いクラスター部位を有するIr(CO)3の構造の空間充填図、及び(b)視野内のあまり接近し易くないクラスター部位を有するそれの構造の空間充填図を示す。
【0044】
【図32】図32は、X線回折によってIr(CO)の結晶構造(上)から得られた、底面内の結合角及び長さを示す。
【0045】
【図33】図33は、Ir(CO)11L1クラスターについて上に示した、シリカ担体上の固定化カリックスアレーン結合Irクラスターの合成の概略図を示す。室温でのシリカによるヘキサン中溶解クラスターの処理は、クラスターの固定化(溶媒蒸発なしでさえも)、及び右側に示される黄色の固体をもたらす。シリカの表面上の典型的な担持イリジウム密度は、表面上のIr−カリックスアレーン当たり20〜25nmである。
【0046】
【図34】図34は、308Kでのイリジウムカルボニル触媒上でのエチレンの水素化を示す:15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:4.6cm−1−1;前処理なし。データは明らかに、触媒反応速度に対するSiOH欠陥部位の有意な効果を示す。
【0047】
【図35】図35は、イリジウムカルボニル触媒上でのエチレンの水素化を示す:15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:4.6cm−1−1;308Kでの反応性気体の流れ上の前処理26及び9.5時間(それぞれ、■Ir(CO)11L/SiO及び○Ir(CO)/SiOについて)、並びに□Ir(CO)11L/SiOについて前処理なし。
【0048】
【図36】図36は、a)触媒反応前;b)308Kでの流れ上で10時間後;c)323Kでの流れ上110時間後のIr(CO)11L/SiO(500)の31P CP/MAS固体NMRスペクトルを示す。反応性気体流組成:5%エチレン、15%水素、残りヘリウム。
【0049】
【図37】図37は、エチレンの水素化のための、貯蔵後SiO−500上触媒3を用いるエチレン水素化の活性化エネルギーの決定のためのアレニウムプロットを示す。Ir(CO)/SiO触媒上のエチレンの水素化:15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:4.6cm−1−1;前処理:15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:4.6cm−1−1;308Kで9.5時間、続いて323Kで8時間、続いてAr流上で密封した密閉反応器中室温で3日間。
【0050】
【図38】図38は、Ir(CO)12/MgO(400)触媒上のエチレンの水素化を示す:15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:6.7cm−1−1;323Kにおける;308Kで15%H、5%C、残りHeの流量下で前処理20時間。
【0051】
【図39】図39は、Ir(CO)11PPhMe/SiO(500)触媒上のエチレンの水素化を示す:15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:4.65cm−1−1;前処理なし。
【0052】
【図40】図40は、架橋COリガンドの不在を表す1.1の結晶構造を示す。
【0053】
【図41】図41は、L=ホスフィン(上)及びL=ホスフィナイト(下)を有するIr(CO)11LのIRスペクトルの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
それ自体又は別の置換基の一部として、「アルキル」という用語は、直鎖若しくは分岐鎖、又は環状炭化水素基、或いはこれらの組合せを意味し、それらは、完全飽和、モノ又はポリ不飽和であってもよく、場合によって指定された炭化原子の数(すなわち、C〜C10は、1から10個の炭素を意味する)を有する、一価、二価及び多価基を含む。飽和炭化水素基の例には、限定されるものではないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、同族体及び異性体(例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体及び異性体)などの基が含まれる。不飽和アルキル基は、1つ又は複数の二重結合又は三重結合を有するもの(すなわち、アルケニル及びアルキニル部分)である。不飽和アルキル基の例には、限定されるものではないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−及び3−プロピニル、3−ブチニル、並びにより高級な同族体及び異性体が含まれる。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と呼ばれる。「アルキル」という用語は、「アルキレン」を指すことができ、これは、それ自体又は別の置換基の一部として、限定されるものではないが、−CHCHCHCH−により例示されるように、アルカンから誘導される二価の基を意味し、及び「ヘテロアルキルレン」として以下に記載されるそれらの基をさらに含む。典型的には、アルキル(又はアルキレン)基は、1から24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有するそれらの基が好ましいこともある。「低級アルキル」又は「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短い分子鎖のアルキル又はアルキレン基である。一部の実施形態では、アルキルは、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29及びC30アルキルから選択される任意の組合せ(ただ一つを含む)を指す。一部の実施形態では、アルキルは、C〜C20アルキルを指す。一部の実施形態では、アルキルは、C〜C10アルキルを指す。一部の実施形態では、アルキルは、C〜Cアルキルを指す。
【0055】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、窒素原子(例えば、アミン基)、又は硫黄原子を介して分子の残部に結合したそれらのアルキル及びヘテロアルキル基を指す。
【0056】
それ自体又は別の用語と組み合わせて、「ヘテロアルキル」という用語は、特に断らない限り、1個又は複数の炭素原子並びにO、N、Si、B及びSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖若しくは分岐鎖、又は環式アルキル部分、或いはそれらの組合せを意味し、ここで、窒素原子及び硫黄原子は、場合によって酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、場合によって四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、S、B及びSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に又はアルキル基がその分子の残部に結合している位置に置かれていてもよい。例としては、限定されるものではないが、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH−、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、及び−CH=CH−N(CH)−CHが含まれる。最大2個までのヘテロ原子が、連続していても、例えば、−CH−NH−OCH及び−CH−O−Si(CHなどであってもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、限定されるものではないが、−CH−CH−S−CH−CH−及び−CH−S−CH−CH−NH−CH−によって例示されるように、ヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は、分子鎖末端のいずれか又は両方を占めていることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基について、連結基の方向性は、その連結基の式が書かれている方向によって示唆されない。例えば、式−C(O)R’−は、−C(O)R’−及び−R’C(O)−の両方を表す。
【0057】
「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それら自体又は他の用語と組み合わせて、特に断らない限り、それぞれ、「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環状バージョンを表す。さらに、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は、そのヘテロ環がその分子の残部に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例には、限定されるものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれる。ヘテロシクロアルキルの例には、限定されるものではないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが含まれる。
【0058】
「アシル」という用語は、部分−C(O)Rを含む種を指し、ここで、Rは、本明細書で定義される意味を有する。Rについての例示的な種には、H、ハロゲン、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクロアルキルが含まれる。
【0059】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、それら自体又は別の置換基の一部として、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことが意味される。例えば、「ハロ(C〜C)アルキル」という用語は、限定されるものではないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことが意味される。
【0060】
「アリール」という用語は、特に断らない限り、一緒に融合している又は共有結合している、単一の環又は複数の環(好ましくは1から3つの環)であり得るポリ不飽和芳香族置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、及びSから選択される1から4個のヘテロ原子を含むアリール基(又は環)を指し、ここで、窒素原子及び硫黄原子は、場合によって酸化されており、窒素原子(単数又は複数)は、場合によって四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介してその分子の残部と結合し得る。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、及び6−キノリルが含まれる。上記アリール及びヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、以下に記載される許容できる置換基の群から選択される。
【0061】
簡単のために、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用される場合、「アリール」又は「ヘテロアリール」という用語は、上に定義されたとおりのアリール及びヘテロアリール環の両方を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基が、アルキル基(炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子で置き換えられたそれらのアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)を含む)に結合しているそれらの基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことが意味される。
【0062】
一部の実施形態では、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールのいずれも、置換されていてもよい。基のそれぞれの種類について好ましい置換基は、以下に与えられる。
【0063】
アルキル及びヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルとしばしば称されるそれらの基を含む)の置換基は、「アルキル基置換基」と総称的に称される。一部の実施形態では、アルキル基置換基は、ゼロから(2m’+1)(式中、m’は、このような基における炭素原子の総数である。)の範囲の数における、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、SiR’R”R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R’’’、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R’’’)=NR’’’、−NR−C(NR’R”)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CN及び−NOから選択される。一実施形態では、R’、R”、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素、置換若しくは非置換ヘテロアルキル、置換若しくは非置換アリール(例えば、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換若しくは非置換アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を意味する。一実施形態では、R’、R”、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、アルコキシ、チオアルコキシ基、及びアリールアルキルから選択される。一部の実施形態では、R’、R”、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素及び非置換アルキルから選択される。例えば、本発明の化合物が、2個以上のR基を含む場合、R基のそれぞれは、独立に、これらの基の2個以上が存在する場合にそれぞれのR’、R”、R’’’及びR’’’’基がそうであるよう選択される。R’及びR”が、同じ窒素原子に結合している場合、それらは、窒素原子と組み合わせて、5−、6−、又は7−員環を形成し得る。例えば、−NR’R”は、1−ピロリジニル及び4−モルホリニルを含み得る。一部の実施形態では、アルキル基置換基は、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール及び置換又は非置換ヘテロシクロアルキルから選択される。
【0064】
アルキル基について記載される置換基と同様に、アリール及びヘテロアリール基についての置換基は、「アリール基置換基」と総称的に称される。一部の実施形態では、アリール基置換基は、ゼロから芳香族環系上の開放原子価の総数までの範囲の数で、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R’’’、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R”)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CN及び−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C〜C)アルコキシ、並びにフルオロ(C〜C)アルキルから選択され;ここで、R’、R”、R’’’及びR’’’’は、一部の実施形態では、独立に、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される。一部の実施形態では、R’、R”、R’’’及びR’’’’は、独立に、水素、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換アリール及び非置換ヘテロアリールから選択される。一部の実施形態では、R’、R”、R’’’及びR’’’’は、独立に、水素及び非置換アルキルから選択される。例えば、本発明の化合物が、2個以上のR基を含む場合、R基のそれぞれは、独立に、これらの基の2個以上が存在する場合にそれぞれのR’、R”、R’’’及びR’’’’基がそうであるように選択される。一部の実施形態では、アリール基置換基は、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される。
【0065】
アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2個は、場合によって式−T−C(O)−(CRR’)−U−(式中、T及びUは、独立に、−NR−、−O−、−CRR’−又は単結合であり、qは、0から3の整数である。)の置換基で置き換えられていてもよい。代替として、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2個は、場合によって式−A−(CH−B−(式中、A及びBは、独立に、−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−又は単結合であり、rは、1から4の整数である。)の置換基で置き換えられていてもよい。そのように形成された新たな環の単結合の1つは、場合によって二重結合で置き換えられていてもよい。代替として、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2個は、場合によって式−(CRR’)−X−(CR”R’’’)−(式中、s及びdは、独立に、0から3の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、又は−S(O)NR’−である。)の置換基で置き換えられていてもよい。置換基R、R’、R”及びR’’’は、好ましくは、独立に、水素又は置換若しくは非置換(C〜C)アルキルから選択される。
【0066】
「ヘテロ原子」という用語には、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)及びホウ素(B)が含まれる。
【0067】
特に断らない限り、記号「R」は、アシル、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される置換基の基を表す一般的略語である。
【0068】
「塩(単数又は複数)」という用語は、本明細書で記載される化合物上に見られる特定の置換基に依存して、相対的に非毒性の酸又は塩基で調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が、相対的に酸性の官能性を有する場合、塩基付加塩は、中性形態のこのような化合物を十分な量の所望の塩基と正味又は適当な不活性溶媒中で接触させることによって得ることができる。塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、若しくはマグネシウムの塩、又は同様の塩が含まれる。本発明の化合物が、相対的に塩基性の官能性を有する場合、酸付加塩は、中性形態のこのような化合物を十分な量の所望の酸と正味又は適当な不活性溶媒中で接触させることによって得ることができる。酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導されるもの、及び酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような相対的に非毒性の有機酸から誘導される塩が含まれる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩など、グルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Science、66:1〜19頁(1977年)を参照)。本発明の特定の具体的な化合物は、その化合物を塩基又は酸付加塩のいずれかに変換させ得る塩基性及び酸性官能性の両方を有する。塩の水和物も含まれる。
【0069】
本発明の特定の化合物は、不斉の炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し;ラセミ酸塩、ジアステレオマー、幾何異性体及び個別の異性体は、本発明の範囲内に包含される。光学活性(R)−及び(S)−異性体並びにd及びl異性体は、キラルシントン(chiral synthons)若しくはキラル試薬を用いて調製され、又は従来の技術を用いて分割され得る。本明細書で記載される化合物が、幾何学的不斉のオレフィン二重結合又は他の中心を有する場合、特に断らない限り、それは、化合物が、E及びZの幾何異性体の両方を含むことが意図される。同様に、互変異性型のすべてが含まれる。
【0070】
本明細書で開示される化合物は、このような化合物を構成する1個又は複数の原子において非天然の割合の原子同位体も含み得る。例えば、これらの化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)又は炭素−14(14C)などの放射性同位体で放射性標識化され得る。本発明の化合物の同位体の変形のすべては、放射性であるかどうかにかかわらず、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0071】
実施形態
一態様では、本発明は、金属コロイド、カリックスアレーン関連化合物及びそれらの錯体を提供する。一態様では、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイド;及び(b)リンカー(ここで、該リンカーは、その複数の金属原子の1個に配位した配位原子を含む)を含むカリックスアレーン関連化合物を含む。金属コロイドにとって有用な金属原子には、Ir、Pt、Pd、Ni、Mo、W、及びCoから選択されるものが含まれ、例示的な金属原子はIrである。
【0072】
「カリックスアレーン関連化合物」(“calixarene−related compound”:「カリックスアレーン系化合物」)という用語は、カリックスアレーン及びカリックスアレーンと類似の化合物を、それらが、「バスケット」を形成する部分を架橋することにより連結されたアリール又はヘテロアリール基、及び他の環状基を同様に連結することにより形成される「バスケット」型化合物を含むという点で、包含することが意味される。テキスト「カリックスアレーン再考(Calixarenes Revisited)」(C.David Gutsche、Royal Society of Chemistry、1998年)には、例えば、23〜28頁で、これらの化合物の一部が記載されており、このテキストは、これによって本明細書に参照により組み込まれる。「カリックスアレーン関連化合物」は、そのテキストで挙げられた化合物の種類を含むことが意味される。したがって、それは、フェノール基間の1つ又は複数の架橋が2個以上の炭素原子を含む、「ホモカリックスアレーン」と称される化合物を含む。Gutscheで示さる一例は、シクロブチル架橋を含む第62番である。
【0073】
「カリックスアレーン関連化合物」にはまた、例えば、フェノール基間にそれぞれ、1つ又は複数の酸素、窒素、ケイ素又は硫黄架橋を有する、オキサカリックスアレーン、アザカリックスアレーン、シリカカリックスアレーン及びチアカリックスアレーン、並びに1つ又は複数の白金架橋を有するカリックスアレーン化合物が含まれる。この用語にはまた、Gutsche(1998年)で「カリックスアレーン関連シクロオリゴマー」と称されるものなどの化合物、例えば、フェノール残基よりもむしろフラン又はチオフェンから形成される類似の構造物も含まれる。他のカリックスアレーン関連化合物には、例えば、カリックス[n]ピロール、カリックス[m]ピリジノ[n]ピロール又はカリックス[m]ピリジンが含まれる。「カリックス[n]ピロール」は、α−位で連結された「n」のピロール環を有するマクロ環である。「カリックス[m]ピリジノ[n]ピロール」は、α位で連結された「m」のピリジン環及び「n」のピロール環を有するマクロ環である。「カリックス[m]ピリジン」は、α−位で連結された「m」のピリジン環を有するマクロ環である。
【0074】
カリックスアレーンリガンドの骨格は、遷移金属と錯体を形成するリガンドの能力に干渉しない他の原子で置換され得る。例えば、カリックスアレーンリガンドの骨格は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、アルコキシ、チオエーテル、アルキルシリル、又は他の基で置換され得る。
【0075】
例示的なカリックスアレーン関連化合物は、4、6、又は8つのフェノール部分を有し、したがって、好ましいカリックスアレーンは、カリックス[4]アレーン、カリックス[6]アレーン、及びカリックス[8]アレーンである。カリックス[4]アレーンが、より好ましい。一部の好ましい触媒系では、カリックスアレーンリガンドは、p−アルキルカリックスアレーン、より好ましくはp−t−ブチルカリックスアレーンである。これらの物質を作製する合成手順は、見事に磨きをかけられ、最適化されており、その出発物質、例えば、p−t−ブチルフェノールは、容易に入手できる。
【0076】
例示的なカリックス関連化合物は、ホルムアルデヒドと縮合したフェノール及び置換フェノールの環状オリゴマーであるカリックスアレーンであり、一般構造:
【化1】


(式中、nは、様々な実施形態において3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16である。)
を特徴とする。例示的な実施形態では、nは4である。波線は、閉じた環を形成する複数のこれらのモノマー単位の結合を表す。このような分子についての一般情報は、例えば、Bauerら、JACS 107、6053頁(1985年)及びC.David Gutscheによるテキスト「カリックスアレーン(Calixarenes)」(これは、「超分子化学」(Supermolecular Chemistry)(J.Fraser Stoddart編;Royal Society of Chemistry、1989年)におけるモノグラフの一部である。)、及び同じ著者による「カリックスアレーン再考(Calixarenes Revisited)」(1998年)に見出すことができる。カリックスアレーンは、空洞が、イオン及び分子を含む多数のゲスト種のための結合部位として機能し得る「バスケット」形状を有する環状オリゴマーの形態である。
【0077】
一部の実施形態では、基Rは、水素であってもよく、又は限定されるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホネート、ホスホン酸、チオール、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルベン、スルホキシド、ホスホニウム、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル及びハロゲンを含む多数のアリール置換基の基のいずれであってもよい。例示的なカリックスアレーンでは、Rは典型的に、OR基にパラの位置における単一置換基を表す。しかし、本発明で利用されるカリックスアレーンは、1個又は複数のR置換基を含み得る。2個以上の置換基が存在する場合、置換基は同じか又は異なることができる。2個の置換基を有するカリックスアレーン化合物の例示的なクラスは、互いに結合しているレゾルシノール部分を含み、典型的には環の周りに異なる配置でフェノキシ基を有するカリックス[n]レゾルシナレンとして当技術分野で知られている。
【0078】
例示的なR置換基には、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールの部分が含まれる。RはHであることもできる。
【0079】
例示的な実施形態では、少なくとも1個のRは、1個又は複数の配位原子を含む。「配位原子」は、金属原子、特に金属コロイドの金属原子と配位する(又は配位結合を形成する)ことができる要素である。例示的な「配位原子」には、窒素、酸素、硫黄、リン及び炭素(例えば、カルベンにおけるような)が含まれる。配位原子は、中性であるか又は荷電されている、例えば、塩の又はそれから誘導される要素であり得る。
【0080】
「カリックスアレーン関連部分」(“calixarene−related moiety”)は、配位原子を含むリンカーを介した金属コロイドへのその配位によって「カリックスアレーン関連化合物又は分子」から誘導される構造物である。
【0081】
「金属コロイド」という用語は、同じか又は異なる金属であることができる少なくとも2個の金属原子から構成される金属粒子の種を指す。金属コロイドは典型に、少なくとも1個の他の有機リガンド(例えば、CO)を含む。金属コロイド上の複数のリガンドは、同じか又は異なることができる。このコロイドは、2つ以上のカリックスアレーン関連部分を含むことができ、これらの部分は、同じか又は異なることができる。
【0082】
したがって、さらなる例示的な態様では、本発明は、カリックスアレーン関連部分に錯化した金属コロイドを含む錯体を提供する。本発明の例示的な化合物は、構造:
【化2】


(式中、Mは金属コロイドであり、Lは、金属コロイドをC(カリックスアレーン関連部分)に結合させるゼロ次又は高次のリンカーである。)
を有する。
【0083】
例示的な実施形態では、錯体は、(a)複数のイリジウム原子を含む金属コロイド;及び(b)複数のイリジウム原子の1個に配位した配位原子を含むリンカーを含むカリックスアレーン関連化合物、を含む。
【0084】
本明細書で記載される任意の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、式:
【化3】


(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16から選択される整数である。)
を有する。一部の実施形態では、nは、4、5、6、7及び8から選択される整数である。例示的な実施形態では、nは4である。
【0085】
一部の実施形態では、Rは、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及びリンカーから選択される部分である。例示的な実施形態では、少なくとも1個のRは、配位原子を含む。一部の実施形態では、Rは、置換又は非置換アルキルである。一部の実施形態では、Rは、C、C、C、C、C又はCアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rはプロピルである。一部の実施形態では、Rはメチルである。一部の実施形態では、RはHである。
【0086】
一部の実施形態では、Rは、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン、及びこれらの組合せから選択される部分である。一部の実施形態では、Rは、置換又は非置換アルキルである。一部の実施形態では、Rは、C、C、C、C、C及びCアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rは、tert−ブチルである。一部の実施形態では、Rは、−ORに対してパラ位にある。
【0087】
例示的な実施形態では、少なくとも1個のRは、リンカーである。本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、単一の共有結合(「ゼロ次」)又は本明細書で開示される本発明の要素を一緒に共有結合で連結する、例えば、固体担体をカリックスアレーン関連化合物に連結する若しくはカリックスアレーン関連化合物を金属コロイドに連結する、C、N、O、S、Si、B及びPからなる群から選択される1〜30個の非水素原子を取り込んでいる一連の安定な共有結合をさす。例示的なリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の非水素原子を含む。特に断らない限り、結合(attachment)に関連する「連結する(linking)」、「連結された(linked)」、「連結(linkage)」、「共役させる(conjugating)」、「共役した(conjugated)」及び類似の用語は、リンカーを用いる技術及びリンカーを取り入れている種を指す。カリックスアレーン関連化合物は、複数のリンカーを含み、したがって、より高いレベルのデント数(denticity)を与え得る。
【0088】
一部の実施形態では、リンカーは、ホスフィン、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される部分である。
【0089】
例示的な実施形態では、リンカーは配位原子を含む。例示的な実施形態では、配位原子は、リン、炭素、窒素及び酸素から選択される。配位原子は、当技術分野で知られている多数の様々な部分を介して与えられ得る。便宜上、これらの部分は、P−、C−、N−及びO−含有部分と称され得る。
【0090】
例示的な実施形態では、リンカーは、P含有部分である。特に有用なP含有部分の一つは、ホスフィンである。様々な例示的な実施形態では、リンカー上の配位原子は、ホスフィン部分のリン原子である。一部の実施形態では、「ホスフィン」という用語は、−YP(Y)(Y)(式中、Yは、結合、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択され;Y及びYは、独立に、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される。)を総称的に指す。一部の実施形態では、Y及びYは、それぞれ、置換又は非置換アリールである。例示的な実施形態では、Y及びYは、それぞれフェニルである。一部の実施形態では、Yは、置換又は非置換アルキルである。一部の実施形態では、Yは、C、C、C、C、C又はCアルキルである。一部の実施形態では、Yはメチルである。一部の実施形態では、Yは結合である。
【0091】
ホスフィンリガンドと同様に、ホスフィナイト、ホスホナイト及びホスファイトは、遷移金属触媒反応における多目的に使えるリガンドとして最近出現してきた。N及びO(これらに限定されないが)などの隣接する電気陰性ヘテロ原子の位置決めにより、触媒反応にしばしば有益であるこれらのリガンドの電子的特性の微妙な調整が可能になる。隣接するO及びNの存在は、これらのリガンドに、それらのホスフィン類似体と比較してさらなる酸化安定性を与える。これらのリガンドは、アミノアルコール及びキラルジオールから誘導される多数の天然及び合成キラルプールの利用性のために、高収率で製造することが容易である(モジュール的な手法については、Velder,J.;Robert,T.;Weidner,I.;Neudorfl,J.−M.;Lex,J.;Schmalz,H−G、Adv.Synth.Catal.2008年、350、1309〜1315頁を参照;ホスファイトの合成に関する総説については、Montserrat Dieguez、Oscar Pamies、Aurora Ruiz、及びCarmen Claver、「不斉触媒反応における方法論(Methodologies in Asymmetric Catalysis)」、第11章、2004年、161〜173頁 ACS Symposium Series、ホスファイトの合成についての第880巻(Volume 880 for synthesis of phosphites)を参照;ホスホラミダイトの合成についてはAdriaan J.Minnaard、Ben L.Feringa、Laurent Lefort及びJohannes G.de Vries Acc.Chem.Res.、2007年、40(12)、1267〜1277頁を参照)。
【0092】
ホスフィナイトリガンドが用いられた例は、オレフィンのRh触媒不斉水素化(Blankenstein,J.;Pflatz,A.Angew Chem.Int.編、2001年、40、4445〜47頁)及びPd触媒Suzukiクロスカップリング反応(Punji,B.;Mague,J.T.;Balakrishna,M.S.Dalton Trans.、2006年、1322〜1330頁)である。
【0093】
Pflatz及び共同研究者は、カルベン源としてエチルジアゾアセテートを用いるスチレンのRu触媒不斉シクロプロパン化のためにオキサゾリン系ホスホナイトリガンドを用いた。同じ触媒は、2−プロパノール及び対応するナトリウムアルコキシドの存在下で移動水素化反応の能力も有した(Braunstein,P.;Naud,F.;Pflatz,A.;Rettig,S.、Organometallics、2000年、19、2676〜2683頁)。Pringle、Ferringa及び共同研究者は、Cu(I)−ホスホナイト系触媒によるジエチル亜鉛のエノンへのエナンチオ選択的共役付加を示した(Martorell,A.;Naasz,R.;Ferringa,B.L.;Pringle,P.G.、Tetrahedron Asymmetry、2001年、12、2497〜2499頁)。Ding及び共同研究者は、エナンチオ選択的ヒドロホルミル化反応のためにフェロセン系二座配位ホスホナイトリガンドを用いた(Peng,X.;Wang,Z.;Xia,C.;Ding,K.、Tetrahedron Lett.、2008年、49、4862〜4864頁)。
【0094】
Rajanbabu及び共同研究者は、不斉ヒドロビニル化反応にニッケルホスフィナイト、ホスファイト及びホスホラミダイトリガンドを用いた(Park,H.;Kumareswaran,R.;Rajanbabu,T.V.R.、Tetrahedron、2005年、61、6352〜67頁)。Sandovalらは、デヒドロアミノ酸誘導体の不斉水素化にRh(I)ジホスファイトリガンドを用いた(Sandoval,C.A.;Liu,S.、J.Molecular.Catalysis.A、2010年、325、65〜72頁)。アレーンのPdホスファイト触媒脱ハロゲン化は、Leeらによって報告された(Moon,J.;Lee,S.、J.Organometal.Chem.、2009年、694、473〜77頁)。Pd−トリフェニルホスファイトは、アリルアルコールを用いる脱水アリル化を触媒することが示された(Kayaki,Y.;Koda,T.;Ikariya,T.、J.Org.Chem.、2004年、69、2595〜97頁)。Pd系ビアリールホスファイト触媒は、アリルアセテート、カルボネート及びハロゲン化物の不斉アリル置換反応に有効であることが知られている(Dieguez,M.;Pamies,O.、Acc.Chem.Res.、2010年、43、312〜22頁)。カリックスアレーンホスファイトは、Rh(0)触媒ヒドロホルミル化反応におけるオレフィンの高い直鎖対分岐の比を得るための半球キレート剤リガンドとして用いられた(Monnereau,L.;Semeril,D.;Matt,D.;Toupet,L.、Adv.Synth.Catal.、2009年、351、1629〜36頁)。
【0095】
ホスホラミダイトリガンドは、触媒による不斉水素化(Minnaard,A.J.;Feringa,B.L.;Lefort,L.;de Vries,J.G.、Acc.Chem.Res.、2007年、40、1267〜77頁)、エノンへの共役付加(Jagt,R.B.C.;de Vries,J.G.;Ferringa,B.L.;Minnaard,A.、J.Org.Lett.、2005年、7、2433〜35頁)、及びジエチル亜鉛によるアリルアルキル化(Malda,H.;van Zijl,A.W.;Arnold,L.A.;Feringa,B.L.、Org.Lett.、2001年、3、1169〜1171頁)において用いられた。
【0096】
したがって、一部の実施形態では、リンカーは、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト及びホスホラミダイトから選択される。一部の実施形態では、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されているアルキル(例えば、C、C、C、C、C又はCアルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0097】
一部の実施形態では、リンカーは、C含有部分である。一部の実施形態では、リンカーはカルベンである。特に有用なカルベンには、Arduengoカルベンが含まれる。一例は、一般式:C(R’N)(R”N)(式中、R’及びR”は、イミダゾール又はトリアゾールなどのヘテロ環を形成するために場合によって架橋される様々な官能基(上に総称的に記載されたRなど)である。)を有するジアミノカルベンである。例示的な実施形態では、カルベンは、イミダゾリウム部分によって置換されたアルキル(例えば、C、C、C、C、C又はCアルキル)である。一部の実施形態では、カルベンは、イミダゾリウム部分で置換されたメチルである。一部の実施形態では、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されているアルキル(例えば、C、C、C、C、C又はCアルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0098】
例示的な実施形態では、リンカーは、N含有部分である。様々な有用なN含有部分には、アミン(Inorganica Chimica Acta、2005年、358、2327〜2331頁)、イソニトリル(Organometallics、1994年、13:760〜762頁)、ビス(ピラゾール−1−イル)メタン(Dalton Trans.、2004年、929〜932頁、Pdとの錯体の例について−−同様な錯体は、Irによって可能である)、ピリジン(ピリジン−金錯体(−−Irのような別の貴金属)の例が記載されているDalton Trans.、2003年、2680〜2685頁)、ビピリジン(白金(−−Irのような別の貴金属)を含むカリックスアレーン系ビピリジン錯体が記載されているInorganic Chemistry、2008年、47(12):5099〜5106頁、並びに金(−−Irのような別の貴金属)を含むビピリジン錯体が記載されているInorganica Chimica Acta、1989年、165:51〜64頁)、テルピリジン(イリジウムテルピリジン錯体の例についてJ.Am.Chem.Soc.1999年、121:5009〜5016頁を参照)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(TMEDAとのPd錯体(−−同様の錯体はイリジウム金属について予想される)についてInorganic Chemistry、2003年、42(11):3650〜61頁)、及び1〜10−フェナントロリン(1〜10−フェナントロリンとのPd錯体(同様の錯体は、イリジウム金属について予想される)についてInorganic Chemistry、2003年、42(11):3650〜61頁を参照)が含まれる。他のN含有部分には、アミド、アミン、アミンオキシド、ニトロソ、ニトロ、カルバメート及びピラゾールが含まれる。一部の実施形態では、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されているアルキル(例えば、C、C、C、C、C又はCアルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0099】
例示的な実施形態では、リンカーは、O含有部分である。様々な有用なO含有部分には、アルコキシド(Pdとの錯体(同様の錯体は、Irで可能である)の例についてDalton Trans.、2004年、929〜932頁)、ヒドロオキシド(Pdのヒドロオキシド錯体(同様の錯体は、Irについて可能である)の例についてInorganic Chemistry、2003年、42(11):3650〜61頁)、フェノキシド(フェノキシは、リガンドとしてのカリックスアレーン底部リムROH基(calixarene lower−rim ROH groups)すべてを起源とするであろう)、アセチルアセトネート(acac)(Polyhedron、2000年、19:1097〜1103頁)、カルボキシレート(カルボキシレート−Ir錯体についてInorg.Chem.、1993年、32:5201〜5205頁並びにカルボキシレート−金錯体(Irのような別の貴金属)の例が記載されているDalton Trans.2003年、2680〜2685頁及びVerlag der Zeitschrift fur Naturforschung、2002年、57b:605〜609頁)、二酸化炭素及びカルボネート(J.Am.Chem.Soc.1989年、111:6459〜6461頁)が含まれる。他のO含有部分には、ペルオキソ、エステル及びエーテルが含まれる。一部の実施形態では、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されているアルキル(例えば、C、C、C、C、C又はCアルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0100】
一部の実施形態では、リンカーは、配位原子に加えて、本明細書で記載されるとおりに、1個又は複数のアルキル基置換基で場合によって置換されている、アルキル及びヘテロアルキルから選択される部分である。一部の実施形態では、リンカーは、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、フェニル、イミダゾリウム、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分で置換されている。
【0101】
一部の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、1個又は複数のリンカーで官能基化されている。様々な実施形態では、リンカーは、少なくとも1個の金属原子に配位することができる1個又は複数の配位原子を含む。リンカー官能基化カリックスアレーン関連化合物は、当技術分野で認められた方法で調製され得る。例えば、様々な実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、少なくとも1つのフェノールサブユニットを含む。フェノールヒドロキシルは、脱プロトン化され、そのフェノキシドイオンは、フェノキシドイオンのそれに補完的な反応性を有する反応性官能基を有するリンカー前駆体と反応させ、それにより、カリックスアレーン関連化合物のフェノール酸素原子を官能基化する。当業者が理解するように、フェノール以外の反応性官能基は、カリックスアレーン関連化合物上の置換基として機能することができ、リンカーの結合点として役立つことができる。
【0102】
本発明のリンカー官能基化カリックスアレーン関連化合物の形成に利用される例示的な反応性官能基は、以下に示される。
【0103】
一部の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物のコア及びリンカーは、カリックスアレーン関連コア上の第1の反応性官能基及びリンカーの前駆体上の第2の反応性官能基の反応によって結合される。これらの反応性官能基は、相補的な反応性のものであり、それらは反応して、2つの要素化合物間の共有結合を形成する。
【0104】
例示的な反応性官能基は、これらの前駆体、例えば、アルキル若しくはヘテロアルキル、アリール若しくはヘテロアリール核又はアリール若しくはヘテロアリール核上の置換基、の上の任意の位置にあることができる。同様に、反応性官能基は、アルキル又はヘテロアルキル鎖の任意の位置にある。様々な実施形態では、反応性基がアルキル(又はヘテロアルキル)、又は置換アルキル(又はヘテロアルキル)鎖に結合している場合、反応性基は好ましくは、その分子鎖の末端位置にある。
【0105】
本発明の実施に有用な反応基及び反応のクラスは、一般にバイオコンジュゲート化学(bioconjugate chemistry)の技術分野で周知のものである。本発明のオリゴマーの反応性前駆体に関して利用できる反応の現在好ましいクラスは、比較的穏やかな条件下で進行するものである。これらには、限定されるものではないが、求核置換(例えば、アミン及びアルコールと、ハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)、並びに炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子の複数の結合への付加(例えば、マイケル反応、ディールス−アルダー付加)が含まれる。これら及び他の有用な反応は、例えば、March、「応用有機化学(ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY)」、第3版、John Wiley & Sons、New York、1985年;Hermanson、「バイオコンジュゲート技術(BIOCONJUGATE TECHNIQUES)」、Academic Press、San Diego、1996年;及びFeeneyら、「タンパク質の修飾(MODIFICATION OF PROTEINS:タンパク質の変性)」;Advances in Chemistry Series、第198巻、American Chemical Society、Washington、D.C.、1982年において検討されている。
【0106】
一例として、本発明に利用される反応性官能基には、限定されるものではないが、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、スルフェート、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド(imides)、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、スルファイト、エナミン、イナミン、尿素、シュードウレア(pseudoureas)、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、及びニトロソ化合物が含まれる。反応性官能基には、バイオコンジュゲート、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなどを調製するために用いられるものも含まれる。これらの官能基のそれぞれを調製する方法は、当技術分野で周知であり、特定の目的へのそれらの適用又は特定の目的のための修飾(変性)は、当業者の能力の範囲内である(例えば、Sandler及びKaro編、「有機官能基の調製(ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS)」、Academic Press、San Diego、1989年を参照)。
【0107】
有用な反応性官能基の変換には、例えば:
(a)カルボキシル基(これは、限定されるものではないが、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル)、ハロゲン化酸、アシルイミダゾール、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族のエステルを含む様々な誘導体に容易に変換される);
(b)ヒドロキシル基(これは、エステル、エーテル、ハロゲン化物、アルデヒドなどに変換され得る)
(c)ハロアルキル基(ここで、ハロゲン化物は、求核基、例えば、アミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン、又はアルコキシドイオンなどでその後に追い出され、それにより、ハロゲン原子の位置で新しい基の共有結合をもたらし得る);
(d)ジエノフィル基(これは、例えば、マレイミド基などのディールス−アルダー反応に関与することができる);
(e)アルデヒド又はケトン基(その後の誘導体化が、例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン若しくはオキシムなどのカルボニル誘導体の形成を介して、又はグリニャール付加若しくはアルキルリチウム付加のような機構を介して可能であるようなもの);
(f)ハロゲン化スルホニル基(例えば、スルホンアミドを形成する、アミンとのその後の反応のための);
(g)チオール基(これは、例えば、ジスルフィドに変換又はハロゲン化アシルと反応させ得る);
(h)アミン又はスルフヒドリル基(これは、例えば、アシル化、アルキル化又は酸化され得る);
(i)アルケン(これは、例えば、環化付加、アシル化、マイケル付加などを受け得る);
(j)エポキシド(これは、例えば、アミン及びヒドロキシル化合物と反応し得る);
並びに
(k)核酸合成に有用なホスホラミダイト及び他の標準的な官能基
が含まれる。
【0108】
反応性官能基は、本発明のオリゴマーをアセンブルするために必要な反応に関与、又は干渉しないように選択され得る。代替として、反応性官能基は、保護基の存在によって反応に関与することから保護され得る。当業者は、選ばれた一組の反応条件に干渉しないように特定の官能基を保護する仕方を理解する。有用な保護基の例については、例えば、Greeneら、「有機合成における保護基(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)」、John Wiley & Sons、New York、1991年を参照されたい。
【0109】
一部の実施形態では、錯体は、式Ir(CO)12−x(L)(式中、L=tert−ブチルカリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh)及びx=2、3、4又は5)を有する。したがって、本発明は、ホスフィン含有カリックスアレーンリガンド、例えば、一座配位tert−ブチル−カリックス(OPr)(O−CH−PPh)及び二座配位tert−ブチル−カリックス(OMe)(O−CH−PPhカリックスアレーンリガンドを提供する。
【0110】
1つ又は複数のカリックスアレーン関連化合物が、1つ又は複数の金属コロイドに配位していることができる。特に有用な金属コロイドは、Ir、Pt及びPdから選択される複数の金属原子を含む。1つ又は複数の貴金属(及び/又は1つ若しくは複数の非貴金属とともに)からなるイリジウム含有コロイドが用いられ得る。例示的な実施形態では、金属コロイドは、複数のイリジウム原子を、例えば、Ir(式中、xは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17及び18から選択される)の形態で含む。金属コロイドは、有機リガンド、例えば、−COでさらに置換され得る。
【0111】
一部の実施形態では、複数のカリックスアレーン関連化合物が、金属コロイドに配位している。一部の実施形態では、2、3、4又は5つのカリックスアレーン関連化合物が、金属コロイドに配位している。一部の実施形態では、複数の金属コロイドが、1つ又は複数のカリックスアレーン関連化合物に配位している。
【0112】
本明細書で記載される錯体は、追加の化合物を与えるためにさらなる条件下に置くことができる。例えば、金属コロイドは、本明細書で記載される錯体上で反応を行う工程を含む方法によって形成することができ、ここで、反応は、熱分解(pyrolysis)、熱的分解(thermal decomposition)、酸化分解及びこれらの組合せから選択される。このような金属コロイドは、それらを、本明細書で記載される様々な反応、特に触媒反応に適させる特性を有し得る。
【0113】
基材上の固定化
本発明は、本明細書で記載されるように、基材上に固定化され得るカリックスアレーン関連化合物、金属コロイド及び錯体を提供する。カリックスアレーン関連化合物は、リンカーを介して、又は直接、すなわち、柔軟なつなぎ鎖(tether)によるカリックスアレーン化合物の誘導体化の必要なしに、基材に結合され得る。イリジウム含有金属コロイドは、最初に基材に結合され、その後にカリックスアレーンに錯化され得るか、又はカリックスアレーン関連化合物に結合され、その後にカリックスアレーン関連部分若しくは金属コロイドを介して基材に結合され得る。代替として、イリジウム含有金属コロイドは、カリックスアレーン関連部分が結合している基材と接触させ、それにより、固定化錯体を形成し得る。カリックスアレーンを表面につなぎ留める方法は、一般に当技術分野で公知である。例えば、米国特許出願公開第2005/0255332A1号及び米国特許第6380266B1号を参照されたい。
【0114】
例示的な基材要素には、限定されるものではないが、金属、金属酸化物又は非金属酸化物、ガラス及びポリマーが含まれる。有用な基材の非限定的なリストには、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、クロム、タンタル、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金又は鉄が含まれる。好ましい基材は、シリカ、最も好ましくは遊離ヒドロキシル基を有するシリカである。しかし、他の無機酸化物の基材、好ましくはチタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、タングステン、ニオブ、マンガン、バナジウム、クロム、タンタル、アルミニウム、リン、ホウ素 ロジウム、モリブデン、銅、白金若しくは鉄、又は基材と安定なアリールオキシドを形成する別の元素を用いてもよい。基材は、任意の従来の物理的形態、例えば、ゲル、様々な種類の粒子の内部若しくは外部の細孔、又はウェーハ、チップ、プレートなどの平表面、及びその表面がシリカ又は他の膜でオーバーレイされ得る面又はデバイスであってもよい。少なくともシリカの基材について、一部はカリックスアレーン又は関連化合物と基材との間の結合の剛性のために、この新規な方法は、しっかりと固定されたカリックスアレーン及び/又は関連化合物にとって材料ベース1グラム当たりで報告された最も高い部位密度をもたらす。金属酸化物及びゼオライト(そのままの及び層剥離した)は、本発明の化合物とともに利用される例示的な基材である。
【0115】
例示的な実施形態では、基材は無機酸化物である。本発明に利用される無機酸化物には、例えば、CsO、Mg(OH)、TiO、ZrO、CeO、Y、Cr、Fe、NiO、ZnO、Al、SiO(ガラス)、石英、In、SnO、PbOなどが含まれる。無機酸化物は、様々な物理的形態、例えば、膜、担持粉末、ガラス、結晶などで用いられ得る。基材は、単一の無機酸化物又は2種以上の無機酸化物の複合体からなることができる。例えば、無機酸化物の複合体は、積層構造(すなわち、第1の酸化物の上に堆積した第2の酸化物)を有し得るか又は2種以上の酸化物が連続的非積層構造に配置され得る。さらに、1種又は複数の酸化物を様々なサイズの粒子として混合し、板ガラス又は金属板などの支持材上に堆積させ得る。さらに、1種又は複数の無機酸化物の層は、2種の他の基材層間に挿入され得る(例えば、金属−酸化物−金属、金属−酸化物−結晶)。
【0116】
これらの実施形態では、例示的な固定化方法は、カリックスアレーン関連化合物を、基材と安定なアリールオキシド種を形成することができる元素の1種若しくは複数のポリハロゲン化物及び/若しくはポリアルコキシドとの反応により表面修飾された基材と接触させる工程、又は該基材を、前記1種又は複数のポリハロゲン化物及び/若しくはポリアルコキシドとの反応により前に修飾若しくは誘導体化されたカリックスアレーン若しくはカリックスアレーン関連化合物と反応させる工程を含む。代替の実施形態では、固定化方法には、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、クロム、タンタル、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金若しくは鉄、又は安定なアリールオキシドを形成する別の元素から選択される1種若しくは複数の元素のポリハロゲン化物若しくはポリアルコキシドを基材と反応させ、修飾された基材を形成する工程;及び該修飾された基材をカリックスアレーン関連化合物と接触させ、その結果、該カリックスアレーン関連化合物を少なくとも1つのフェノールの酸素の結合を介して該基材に固定化する工程を含む。
【0117】
基材材料として適当な無機結晶及び無機ガラスには、例えば、LiF、NaF、NaCl、KBr、KI、CaF、MgF、HgF、BN、AsS、ZnS、Siなどが含まれる。該結晶及びガラスは、当技術分野の標準的な技術で調製され得る。例えば、Goodman,C.H.L.、「結晶成長の理論と技術(Crystal Growth Theory and Techniques)」、Plenum Press、New York 1974年を参照されたい。代替として、該結晶は、商業的に購入され得る(例えば、Fischer Scientific)。該結晶は、基材の唯一の要素であり得るか、又はそれらは、1種若しくは複数のさらなる基材要素で被覆され得る。したがって、例えば、1種若しくは複数の金属膜又は金属膜及び有機ポリマーで被覆された結晶を用いることは、本発明の範囲内である。さらに、結晶は、異なる材料、又は同じ材料の異なる物理的形態(例えば、ガラス)からできている基材の別の部分に接触する基材の一部を構成し得る。無機結晶及び/又はガラスを用いる他の有用な基材の構造は、当業者に明らかである。
【0118】
金属も本発明の基材として利用される。基材として本発明で利用される例示的な金属には、限定されるものではないが、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル及び銅が含まれる。一実施形態では、2種以上の金属が用いられる。2種以上の金属は、合金として存在し得るか若しくはそれらは、積層「サンドイッチ」構造に形成され得るか、又はそれらは、互いに横方向に隣接し得る。
【0119】
有機ポリマーは、基材材料の有用な一クラスである。本発明の基材として有用な有機ポリマーは、気体、液体及び溶液中の分子に透過性であるポリマーを含む。他の有用なポリマーは、1種又は複数のこれらの同じクラスの化合物に不透過性であるものである。
【0120】
有用な基材を形成する有機ポリマーには、例えば、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリブタジエン)、ポリアクリル酸(例えば、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシアノアクリレート)、ポリビニル(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ボリ塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリヘテロ環、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、ポリシラン、フッ素化ポリマー、エポキシ樹脂、ポリエーテル及びフェノール樹脂が含まれる。Mol.Cryst.Liq.Cryst.1:1〜74頁(1982年)におけるCognard,J.、「ネマチック液晶及びこれらの混合物の配置(ALIGNMENT OF NEMATIC LIQUID CRYSTALS AND THEIR MIXTURES)」を参照されたい。現在好ましい有機ポリマーには、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セルロース材料、ポリカーボネート及びポリビニルピリジニウムが含まれる。
【0121】
本発明の実施に利用される基材の表面は、滑らかである、粗い及び/又はパターン化されていることができる。該表面は、機械的及び/又は化学的技術を用いて設計され得る。例えば、該表面は、ラビング、エッチング、溝切り、伸縮、及び金属膜の斜め蒸着によって粗く又はパターン化され得る。基材は、フォトリソグラフィー(Kleinfieldら、J.Neurosci.8:4098〜120頁(1998年))、フォトエッチング、化学的エッチング及びマイクロコンタクトプリンティング(Kumarら、Langmuir 10:1498〜511頁(1994年))などの技術を用いてパターン化され得る。基材上にパターンを形成する他の技術は、当業者に容易に明らかである。
【0122】
基材上のパターンの大きさ及び複雑さは、用いられる技術の分解能及びパターンが意図される目的により調節される。例えば、マイクロコンタクトプリンティングを用いると、200nm程度に小さい特徴が基材上に層状化された。Xiaら、J.Am.Chem.Soc.117:3274〜75頁(1995年)を参照されたい。同様に、フォトリソグラフィーを用いると、1μm程度の小さい特徴を有するパターンが生じた。Hickmanら、J.Vac.Sci.Technol.12:607〜16頁(1994年)を参照されたい。本発明で有用なパターンには、くぼみ(well)、囲い、区画、凹部、入口、出口、溝(channel)、トラフ、回折格子などの特徴を含むものが含まれる。
【0123】
認められた技術を用いると、異なる化学的特性の領域を有するパターンの基材が作製され得る。したがって、例えば、隣接し、隔離された特徴の配列は、パターン要素の疎水性/親水性、電荷又は他の化学的特性を変えることによって生成され得る。例えば、親水性化合物は、疎水性材料を用いて隣接する特徴間の「壁」をパターン化することにより個々の親水性特徴に閉じ込めることができる。同様に、正又は負に帯電した化合物は、閉じ込められる化合物のものと同様の電荷を有する化合物からできている「壁」を有する特徴に閉じ込めることができる。同様に、基材構造は、所望の特性を有する層を基材上に直接マイクロプリンティングすることによっても到達できる。Mrkishら、Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.25:55〜78頁(1996年)を参照されたい。
【0124】
様々な例示的な実施形態では、基材は、ゼオライト又はゼオライト様材料である。一実施形態では、本発明の錯体は、ITQ−2−型層状及びゼオライト材料の表面官能基化によって基材に結合している。例示的な結合は、基材のアンモニア処理を介して有効にされる。本発明は、カリックスアレーンに共有結合したこのような官能基化材料を提供する。例示的な実施形態では、官能基化表面は、核生成させ、材料の表面上で金属コロイドを成長させるために用いられる。
【0125】
カリックスアレーン関連化合物は、炭素、硫黄などを含む可撓性リンカー基による合成誘導体化を必要とすることなく、シリカ又は上記のとおりの他の基材上に固定化され得る。得られた固定化カリックスアレーン及び関連化合物は、室温における中性有機分子によってのみならず、低温における気体の物理吸着実験によっても到達され得る親油性空洞を有する。フェノール及びニトロベンゼンは、水溶液からこのクラスの材料内に可逆的に吸着する。
【0126】
得られた固定化カリックスアレーン及び関連化合物は、小分子、タンパク質及びイオン(カチオン及びアニオンの両方)を含む部分を取り込み、したがって、膜における、選択触媒としての、気流中の種の特定の吸着又は捕捉における、高圧液体クロマトグラフィー又はガスクロマトフィーのカラムにおける、及び化学的検出における、を含めて、多くの機能に用いられ得る。Katzら、Langmuir 22:4004〜4014頁(2006年)を参照されたい。
【0127】
様々な実施形態では、本発明は、2つの手段:(a)カリックスアレーン関連化合物を、下記されるとおりのポリハロゲン化物又はポリアルコキシドとの反応により修飾された表面であった基材と接触されることによる、又は(b)基材と、このようなポリハロゲン化物又はポリアルコキシドとの反応により前に修飾又は誘導体化されたカリックスアレーン関連化合物との反応による、の1つによるカリックスアレーン又はカリックスアレーン関連化合物の基材への固定化のための方法を提供する。
【0128】
本発明の例示的な実施形態の一つは、シリカ基材を修飾し、カリックスアレーン関連化合物/部分を基材にシリカ−酸素結合を介して固定化するハロゲン化ケイ素又はアルコキシドの使用である。しかし、前に検討したように、該基材及び/又は該修飾剤は、別の元素のオキシド、ポリハロゲン化物又はポリアルコキシドであってもよい。該修飾剤は、該基材上の主要な元素と同じ元素を含んでもよいか(例えば、酸化アルミニウム基材を修飾するために用いられるアルミニウムアルコキシド)又はそれらは、異なる元素を含んでもよい(例えば、酸化アルミニウム基材を修飾するために用いられる四ハロゲン化ケイ素)。アルコキシドが本発明で用いられる場合、アルコキシドの基材修飾元素(ケイ素、別の非金属、又は金属)は、カリックスアレーンのフェノールの酸素原子に直接結合したようになり、アルコキシドに対応するアルコールが、分離される。本発明の基材修飾剤として用いられる好ましいアルコキシドには、メトキシド、エトキシド及びアルコキシド基当たり最大4個の炭素原子を有する他のアルコキシドが含まれる。
【0129】
別の好ましい実施形態では、遷移金属又はケイ素以外の多価非金属のハロゲン化物又はアルコキシドが、カリックスアレーン又はカリックスアレーン関連化合物を基材に固定化するために用いられる。金属又は非金属は、限定されるものではないが、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、鉄、マンガン、バナジウム、クロム、タンタル、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金又は鉄を含めて、基材と安定なアリールオキシドを形成するいずれのものであってもよい。
【0130】
合成
本明細書で記載されるカリックスアレーン関連化合物、金属コロイド及びこれらの錯体は、当業者の能力の範囲内の方法によって合成され得る。例示的な合成が本明細書で示されるが、しかし、さらなる実用的な合成経路が存在し、及び工夫され得ることが当業者に明らかである。したがって、本発明は、任意の特定の方法によって合成されたカリックスアレーン関連化合物の使用に限定されない。
【0131】
本発明のカリックスアレーン関連化合物の例示的な経路は、以下のスキーム1に示される。
【0132】
本発明は、カリックスアレーン関連化合物が金属コロイドに錯化している化合物を提供する。リンカー上の配位原子及びコロイド中の金属原子の特定の組合せを選択し、該コロイドに結合する配位原子を与えることは、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0133】
本発明は、Ir(例えば、Ir)、Pt、Pd、Ni、Mo、W、及びCoのコロイド;二金属クラスター及びニッケル/コバルトモリブデン/硫化タングステンナノ粒子状触媒への言及により例証される。様々な実施形態では、本発明は、Ir(Co)12をベースとして形成される錯体を提供する。
【化4】


スキーム1
【0134】
スキーム1は、カリックスアレーン関連化合物が一座配位である錯体に関する。理解されるように、より高いデント数を有するリンカーも利用される。二座配位カリックスアレーン関連分子がリガンドとして用いられる場合、この化合物の金属コロイド及びその他のものが、いくつかの幾何配置の一つにおいて調製され得る。例えば、ジラジアル架橋、アキシャル−ラジアル架橋、ジアキシャル架橋、アキシャル−ラジアル架橋:
【化5】

【0135】
当業者に理解されるように、本発明は、限定されるものではないが、Pt、Pd、Ni、Mo、W、Co、二金属クラスター、及びニッケル/コバルトモリブデン/硫化タングステンナノ粒子状触媒を含む、他の系のコロイドも提供する。
【0136】
一態様では、本発明は、カリックスアレーン結合金属コロイドを合成する方法を提供する。一実施形態では、カリックスアレーン結合金属コロイドを合成する方法は、コロイド金属臭化物から臭化物アニオン追い出しを生じさせるのに適当な条件下で、カリックスアレーン関連化合物を該コロイド金属臭素化物と接触させる工程を含む。
【0137】
一部の実施形態では、該方法は、該接触させる工程の前に、コロイド金属臭化物を形成させるのに十分な条件下でコロイド金属を臭素化剤によって活性化させる工程をさらに含む。一部の実施形態では、該コロイド金属は、複数のイリジウム原子を含み、該臭素化剤は、複数のイリジウム原子の1個又は複数を臭素化する。一部の実施形態では、該コロイド金属臭化物は、イリジウムを含み、場合によって、該イリジウムは、単一の臭化物リガンドに結合しており、及び場合によって、該イリジウムは、Irの形態である。
【0138】
一部の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、カリックスアレーンホスフィン、カリックスアレーンホスフィナイト、カリックスアレーンホスホナイト、カリックスアレーンホスファイト及びカリックスアレーンホスホラミダイトから選択される。
【0139】
一部の実施形態では、アリックスアレーン関連化合物は、カリックスアレーンカルベンである。
【0140】
一部の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、カリックスアレーンピリジン、カリックスアレーンビピリジン、カリックスアレーンテルピリジン、カリックスアレーンピラゾール、カリックスアレーンフェナントロリン、カリックスアレーンイソニトリル、カリックスアレーンアミド、カリックスアレーンアミン、カリックスアレーンアミンオキシド、カリックスアレーンニトロソ、カリックスアレーンニトロ及びカリックスアレーンカルバメートから選択される。
【0141】
一部の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、カリックスアレーンカルボキシレート、カリックスアレーンアルコキシド、カリックスアレーンペルオキソ、カリックスアレーンフェノキシド、カリックスアレーンエステル、カリックスアレーンエーテル、カリックスアレーンアセチルアセトネート及びカリックスアレーンカーボネートから選択される。
【0142】
一部の実施形態では、カリックスアレーン関連化合物は、本明細書で記載される錯体のカリックスアレーン関連化合物、又は本明細書で記載されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0143】
用途
一態様では、本発明は、本明細書で開示される金属コロイド又は金属錯体を用いる触媒プロセスを提供する。本明細書で開示されるカリックスアレーン関連金属コロイド及び錯体は、金属介在プロセス、例えば、オレフィン転移、オレフィンのヒドロホルミル化、及び末端アルカンの環化付加、並びに酸化プロセス、水素化プロセス、及び酸触媒反応などの他のプロセスによって触媒される当技術分野で公知のものを含めて、プロセスを触媒するために使用され得る。例示的な実施形態では、本発明の組成物は、水素処理触媒として有用である。本発明の化合物及び錯体が、用途を見出す他のプロセスには、プロパン水素添加分解、CO水素化、トルエン水素化、メタン生成、分子内ヒドロアミノ化、第一級アリルアルコールの不斉異性化、アリルアミノ化、ヒドロアミノ化、ヒドロチオール化、ヨードアレーンを用いるヘテロアレーンのC−H結合アリール化、[2+2+2]環化付加、及びカルボニル化、メタンヒドロキシル化、並びにナフテン環開環が含まれる(米国特許第5763731号を参照)。なおさらなるプロセスには、水素化反応、例えば、α,β−不飽和アルデヒドの;環化反応、例えば、テルペノイドの(例えば、シトロネラールのメントールへの転換);開環反応、例えば、シクロアルキルの(例えば、メチルシクロヘキサンのジメチルペンタンへの変換、又はナフテン環開環);NOの水蒸気接触改質及び水素化転化反応、例えば、シクロアルキルの(例えば、シクロヘキセン)が含まれる。(Vuoriら、Catal.Lett.、2009年、131:7〜15頁及び米国特許第5763731号を参照)。一般に有用な反応には、有機分子、例えば、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール(これらのいずれも場合によって置換されていてもよい)上で行われる酸化及び還元が含まれる。
【0144】
したがって、一実施形態では、触媒プロセスは、有機分子を(a)本明細書で開示される錯体又は金属コロイド及び(b)還元剤と接触させることによって有機分子を還元する工程を含む。一部の実施形態では、該有機分子は、不飽和分子である。一部の実施形態では、該有機分子は、置換又は非置換アルキル(例えば、不飽和アルキル(不飽和C、C、C、C、C又はCアルキルなど))である。一部の実施形態では、該還元工程は、例えば、還元剤としてHを用いる水素化を含む。
【0145】
一実施形態では、触媒プロセスは、有機分子を(a)本明細書で開示される錯体又は金属コロイド及び(b)酸化剤と接触させることによって、該有機分子を酸化する工程を含む。一部の実施形態では、該酸化工程は、ヒドロキシル化を含む。
【実施例】
【0146】
(実施例1)
実験
すべての化合物は、乾燥窒素雰囲気下でシュレンク技術を用いて取り扱った。無水トルエン、THF及びDMFは、Aldrichから購入した;出発p−tert−ブチルカリックス[4]アレーン及び他の試薬のすべては、分析等級のものであり、受け入れたまま用いた。カリックスアレーン1a、1b、4a、4b、5a及び7aは、文献の手順に従って合成した。ジフェニルホスホリルメチレントシラートは、文献の手順に従って調製した。H、13C及び31P NMRスペクトルは、UC Berkeley NMR FacilityでBruker AV−300(300MHz)装置又はAVB−400(400MHz)装置で、CDCl中(293K)で記録した。H NMRデータは、残存CHCl(7.260ppm)を基準とし、31P NMRデータは、トリメチルホスフェートを基準にする。分析薄層クロマトグラフィーは、プリコートシリカゲルプレート(0.25mm、60F−254、Selecto)上で行い、シリカゲル(Selecto 60)をカラムクロマトグラフィーに用いた。FAB−MSスペクトルは、UC Berkeley Mass Spectrometry Facilityでマトリックスとしてo−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)又はm−ニトロベンジルアルコール(NBA)を用いることによって記録した。融点はすべて未補正である。
カリックスアレーン−ホスフィノオキシド2a、2b、5b及び8aの合成のための一般手順
【化6】


【化7】

【0147】
カリックスアレーン1a、1b、4a、4b、7a(0.35mmol)及び水素化ナトリウム(1a、1bについて0.39mmol、4a、4bについて0.78mmol、7aについて1.56mmol)のTMF/DMF(10/1v/v)中混合物を2時間還流させた。形成した黄色の溶液に、PhP(O)CHOTs(1a、1bについて0.39mmol、4a、4bについて0.78mmol、7aについて1.56mmol)を添加した。反応混合物を48時間還流させた。過剰の水素化ナトリウムを約1.0mlのメタノールでクエンチし、溶媒を蒸発させた。残渣をクロロホルムに溶解させ、水で2回洗浄した。有機相を蒸発乾固させ、精製した。
【0148】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25−ジフェニルホスフィノイルメチレンオキシ−26,27,28−トリメトキシ−カリックス[4]アレーン(配座異性体(conformers)の混合物)(2a):
CHCl/酢酸エチル(1:0.2)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、62%収率の白色粉末が得られた、Rf0.6:融点108〜115℃;
【化8】

【0149】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25−ジフェニルホスフィノイルメチレンオキシ−26,27,28−トリプロポキシ−カリックス[4]アレーン(cone型)(2b)
CHCl/酢酸エチル(1:0.1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、83%収率の白色粉末が得られた、Rf0.7:融点118〜121℃;
【化9】

【0150】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス(ジフェニルホスフィノイルメチレンオキシ)−27,28−ジプロポキシ−カリックス[4]アレーン(cone型)(5b)
CHCl/酢酸エチル(1:0.5)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、53%収率の白色粉末が得られた、Rf0.4:融点134〜138℃;
【化10】

【0151】
、O、O、O−テトラキス(ジフェニルホスホリルメチルオキシ)−テトラブチルオキシ−p−tert−ブチル−カリックス[8]アレーン(8a)
CHCl/メタノール(1:0.05v/v)を用いるフラッシュクロマトグラフィー、白色粉末、Rf0.2;
【化11】

【0152】
カリックスアレーン−ホスフィン3b及び6a、6bの合成のための一般手順
カリックスアレーン2b、5a、5b(7.0mmol)及びPhSiH(各POPhに対して30当量過剰)の15mlのトルエン中溶液を100℃で48時間加熱した。反応の進行を31P NMRでモニターした。反応混合物を蒸発乾固させ、4時間真空にした(0.05mm)。油状の残渣を精製した。
【0153】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25−ジフェニルホスフィノメチレンオキシ−26,27,28−トリプロポキシ−カリックス[4]アレーン(cone型)(3b):
CHClを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、54%収率の白色粉末が得られた、Rf0.9:融点113〜117℃;
【化12】

【0154】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス[ジフェニルホスフィノメチレンオキシ−27,28−ジメトキシ−カリックス[4]アレーン(配座異性体の混合物)(6a):
エタノール/DCM(20/1)からの結晶化により、52%収率で白色固体が得られた;融点123〜131℃;
【化13】

【0155】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス(ジフェニルホスフィノメチレンオキシ)−27,28−ジプロポキシ−カリックス[4]アレーン(cone型)(6b):
CHClを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、41%収率の白色粉末が得られた、Rf0.9;融点128〜132℃;
【化14】


参考文献

【0156】
(実施例2)
カリックスアレーン結合イリジウムクラスターの合成
1の合成
【化15】


スキーム2:(i)Ph(O)CHOTs、NaH、THF/DMF、(ii)PhSiH、トルエン、(iii)[Ir(CO)11Br]BuN、CHCl(R=C−n)
スキーム2により、公知のtert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OH)を介したtert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHP(O)Ph)への合成手法及びその後のホスフィンオキシド還元が概略され、新規なリガンドtert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh)を54%収率で生じる。モノホスフィン2を用いる公知のIr(CO)11Brの選択的置換により、Brアニオン追い出しを介して、1が高収率で黄色の結晶固体として合成される。1のESI質量スペクトルは、m/z=2050.5において1の分子カチオン、[1]とともに、主ピークとしてm/z=2073.5においてナトリウム付加物[1Na]を有する。[1]について実験的に観察された同位体分布は、シミュレーションとよく一致しており、ESI条件下でのカリックスアレーンカチオンラジカル種の形成を示唆する。ESIスペクトル中の[1]の存在は、プロトン化又はカチオン性種が典型的にはエレクトロスプレーイオン化の間に観察されるので、いくらか異常である。室温でのCDCl中1の31P NMR分光法により、−21.8ppmにおける遊離リガンド3の共鳴に対してかなりダウンフィールドにシフトして、−10.2ppmにおいて単一の共鳴が示される。シャープな一重項が、低温でさえも1の31P NMRスペクトルにおける唯一の共鳴として残存し;及び相互転換するアキシャル及びエカトリアル異性体の混合物からなる系と対照的に、溶液中の1の単一の異性体の存在を証明する。
【0157】
典型的な反応において、tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh)0.146g(0.15mmol)及び[Ir(CO)11Br][NBu]0.21g(0.15mmol)をCHCl(25mL)中室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、続いてヘキサンを用いる抽出により生成物を単離し、カラムクロマトグラフィーにより精製して、1を黄色の結晶固体として得た。CHClから1の単結晶をゆっくりした蒸発から成長させた。
【0158】
【化16】

【0159】
tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh(Ir(CO)11
【化17】


典型的な反応において、tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh0.090g(0.08mmol)及び[Ir(CO)11Br][NBu]0.225g(0.16mmol)をCHCl(25mL)中室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、続いてヘキサンを用いる抽出により生成物を単離し、溶媒としてジクロロメタンを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。層拡散法及びCHCl/MeOH溶媒系を用いて、単結晶を成長させた。
【化18】


単結晶X線回折によって得られたこのクラスターの構造を図に含める。
【0160】
tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OMe)(OCHPPh(Ir(CO)11
【化19】


反応剤tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OMe)(OCHPPh0.080g(0.075mmol)及び[Ir(CO)11Br][NBu]0.210g(0.15mmol)をCHCl(20mL)中室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、続いてヘキサンを用いる抽出により生成物を単離し、溶媒としてジクロロメタンを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。31P NMR δ−11.2;
【化20】


単結晶X線回折によって得られたこのクラスターの構造を図に含める。
【0161】
tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh)]Ir(CO)10
【化21】


反応剤tert−ブチル−カリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh)0.15g(0.15mmol)及び[Ir(CO)11Br][NBu]0.105g(0.075mmol)をトルエン(20mL)中80℃で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、続いてヘキサンを用いる抽出により生成物を単離し、溶媒としてジクロロメタンを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【化22】

【0162】
温度プログラム化酸化分解(TPOD)分析
結合COリガンド酸化に対するカリックスホスフィンリガンドの効果は、温度プログラム化酸化分解(TPOD)、続いて熱重量分析及び質量分析を用いて、Ir(CO)12と比較することによって確認し、これは図に示す。シリカと混合したIr(CO)12におけるCOリガンドの酸化は、質量分析を介して115℃で始まる狭い温度範囲で起こる。同様の条件下で、シリカと混合した1におけるTPODの間に135℃の温度まで、質量分析を介したCOリガンド酸化の検出可能な速度は存在しない。シリカと混合した1におけるCO酸化は、広い温度範囲にわたってフェニル損失及び部分的カリックスアレーン燃焼とほとんど同時に起こる。
【0163】
1及びIrCO12中のCOの酸化を、温度プログラム化酸化分解(TPOD)を用いて酸化条件下で特徴付けた。昇華を避けるために、この化合物を大過剰の脱ヒドロキシル化シリカ(前もって、(i)O2/He/Ar5/92/3中600℃で4時間、(ii)続いて、不活性雰囲気下で室温に冷却、(iii)H2/He/Ar15/82/3中600℃に4時間加熱、(iv)(iii)中と同じ気体組成物下で室温に冷却、及び(v)グローブボックス中に保存)と物理的に混合して、固体混合物を形成した。以下の温度プログラムを用いた:40℃で60分間等温、続いて74mL/分の20%O/Ar流下350℃に一定温度上昇(1℃/分)。一体型NetschSTA 309PC Luxx TGA−Netsch 403C AeolosMS−Bruker Tensor 27(TGAモジュールに連結され、MCT検出器を備えた)システムによる質量分析法及び赤外分光法を用いて、気体排出物を流れ上で分析した。したがって、6.48mgのIrCO12を103.84mgの脱ヒドロキシル化シリカと混合した。101.84mgのこの混合物を分析した(5.98mgのIrCO12に相当)。図におけるシリカ系と混合したIr(CO)12について、43℃と350℃の間の熱重量分析によって、1.74mgの質量損失を実測した。これは、この系における完全な脱カルボニル化についての1.82mgの質量損失の理論的予測と同程度とみられる。1について、7.40mgの1を92.08mgの脱ヒドロキシル化シリカと混合した。89.91mgのこの混合物を分析した(6.69mgの1に相当)。図中amu44(COに帰属)の質量分析は、IrCO12/シリカに対して1/シリカにおける二酸化炭素形成のより遅い開始を示す。図中COのMS痕跡は、165℃における小さい肩、並びに176℃及び229℃における2つのより大きなピークとして1/シリカについて現れる。この小さな肩は、1/シリカについてのamu78(フェニルフラグメントに帰属)に相当するシグナルの最大値と一致している。図中シリカと混合した1の系について43℃と350℃の間の熱重量分析によって、4.14mgの質量損失が実測された。これは、この系における完全な脱カルボニル化及びカリックスアレーン燃焼についての4.19mgの質量損失の理論的予測と同程度とみられる。
【0164】
IR分光法
電子供与体としてのカリックスホスフィンリガンドの役割は、Ir(CO)11PPhとの赤外分光比較においても明らかである。CHCl中1の赤外スペクトルは、2087、2055、2017、1842、及び1818cm−1におけるν(CO)領域のバンドを示し、後者の3つの伸縮振動数は、架橋CO基を示す。これらのバンドのすべては、2088、2056、2020、1887、1847及び1825cm−1におけるIr(CO)11PPhについて前に報告された対応するバンドと比較してわずかに赤方にシフトしている。このデータにより、Ir(CO)11PPhと比べて1におけるIr中心のより高い電子密度が実証され、これは、COリガンドに対してより大きな度合いのπ逆供与を生じさせる。
【0165】
単結晶の結晶学
1の構造は、図に示されるように単結晶X線回折を用いてさらに明らかにされる。カリックスホスフィンリガンドは、アキシャルポジションを占め、Ir−P結合は、3つの架橋COリガンドからなる、四面体の底面下に63.26(2)°の角度を形成する。Ir−Ir結合長は、2.70(6)から2.78(6)Åの範囲であり、他の60−価電子数のホスフィン置換Ir四面体コアにおける結合距離と密接に一致している。1における2つの最大Ir−Ir距離は、置換Ir原子に接続している2つの底面端部で生じる。底面とエカトリアルCO基の間に形成される傾斜角は、28.36(4)°、30.17(6)°、30.97(0)°であり、それらの類似性は、Irクラスター構造上のカリックスホスフィンリガンドの小さい立体干渉を意味する。
【0166】
1におけるIrコアの電子密度に対するカリックスホスフィンリガンドの効果は、架橋COリガンドを含むIr−C結合距離における不斉を調べることにより間接的に調査することができる。従来の研究では、モノ置換Irクラスターにおけるドナーリガンドの存在は、その置換Ir原子上のより高い電子密度と相関する。これらの系において、置換Ir原子に結合した架橋COリガンドのIr−C結合距離で観察される不斉があり、置換Ir原子へのIr−C結合は、対応する非置換中心への結合より短い。1において、置換Ir中心に結合した2つの架橋COリガンドについてのIr−C結合は、同様の不斉を示し、これは、それぞれ、Ir(4)とIr(2)、及びIr(4)とIr(3)の間の架橋COについて0.09(1)Å及び0.15(1)Åだけその置換Ir原子を含むIr−C結合長を短くする。この不斉は、残存する第3の架橋COリガンドのIr−C結合距離と著しく対照的であり、これは、実験的不確実さの範囲内で異ならず、カリックスホスフィンリガンドの結果として1における置換Ir原子上のより高い電子密度を実証する。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】

【0167】
(実施例3)
触媒の調製及び特徴付け
Ir/γ−Al触媒:5重量%Ir
IrCl(ヘキサクロロイリデート)を30mlのDI水に溶解させる。この溶液の典型的な濃度は、5重量%Ir負荷について9.13mMである。1gのγ−Al(Strem、95m/g)をヘキサクロロイリデートの水溶液に添加する。この溶液を24時間撹拌する。その後に過剰の水を50℃でロータリーエバポレーションにより試料から除去し、試料をオーブン中110℃で一晩乾燥させる。次いで、試料をO流(5%O、残りHe、20ml/分)中400℃で1時間か焼(calcine)する。か焼の間に、温度は10℃/分の速度で400℃まで昇温する。試料を室温にして(evacuated at room temperature)、そこで1時間保持する。その後、試料を10℃/分の速度で200℃に加熱し、H流(15%H、残りHe、30ml/分)中400℃で4時間還元する。
【0168】
Ir/γ−Al合成概要
図により、直径約0.7nmであるIrコロイドが、γ−Al担体上に5重量%の表面密度で合成され得ること、並びにDegussa及びStrem製担体が、互いに実験誤差範囲内である類似の粒径分布をもたらすことが示される。これらのコロイドは、Ir/γ−Al(これは、2〜3nmの直径範囲におけるものとして前に合成され、及び4〜8nmの範囲においても前に合成された)について前に報告されたものよりかなり小さい。
【0169】
Ir/TiO触媒
IrCl(ヘキサクロロイリデート)を30mlのDI水に溶解させる。この溶液の典型的な濃度は、2重量%のIr負荷について3.66mMのHIrClである。1gのTiO(53m/gのDegussa P25)をヘキサクロロイリデート水溶液に添加する。次いで、この溶液を室温で24時間撹拌する。その後に過剰の水を50℃でロータリーエバポレーションにより除去し、次いで、試料をオーブン中110℃で一晩乾燥させる。その後、試料をO流(5%O、残りHe、20ml/分)中400℃で4時間か焼する。か焼の間に、温度は10℃/分の速度で400℃まで昇温する。試料をHeパージ下で室温に冷却し、次いで、Heでさらに1時間パージする。試料をH流(15%H、残りHe、30ml/分)中200℃で2時間還元する。
【0170】
Ir/TiO合成概要
図により、実測された平均Ir粒径は、1.2±0.4nmと示される。上記手順で合成した大部分のIrコロイドは、1nm直径未満の粒径範囲であるが、少数のIrナノ粒子は、2nmより大きい。このコロイド粒径分布は、TiOに担持されたIr(これは、2.8nm〜4nmの直径範囲である)について文献で以前に報告されたものより相当小さい。
【0171】
Ir/MgO触媒
IrCl(ヘキサクロロイリデート)を30mlのDI水に溶解させる。この溶液の典型的な濃度は、2重量%Ir負荷について3.66mMのHIrClである。1gのMgO(Aldrich、130m/g)を激しい撹拌下この溶液に添加する。その後、この溶液を24時間撹拌する。その後、過剰の水を50℃でロータリーエバポレーションにより除去し、試料をオーブン中110℃で一晩乾燥させる。次いで、試料をO流(5%O、残りHe、20ml/分)中400℃で4時間か焼する。か焼の間に、温度は10℃/分の速度で400℃まで昇温する。試料をHeパージ下で室温に冷却し、Heでさらに1時間パージする。試料をH流(15%H、残りHe、30ml/分)中400℃で2時間還元する。
【0172】
(実施例4)
以下は、カリックスアレーン分子をIr金属コアに配位させる反応の概要であり、これはうまくいかなかった。一般に、四面体クラスターIr(CO)12のリガンド置換反応は、タイプIr(CO)12−x(P)(x=1〜4)のホスフィン置換誘導体に焦点を当てて調べられてきた。このようなクラスター化合物は、典型的には、加熱分解(Watsonら、J.Organomet.Chem.693:1439〜1448頁(2008年))又は酸化−脱カルボニル化を促進する試薬の使用によるIr(CO)12の活性化、続いて対応するホスフィンとの直接反応(これは、ホスフィンリガンドによるCOの正規の置換をもたらす)を含む組合せ手順によって合成された(Watsonら、J.Organomet.Chem.693:1439〜1448頁(2008年))。
【0173】
本発明者らは、上記手法の両方を用いてIr(CO)12におけるカリックスホスフィン置換の反応を行った。加熱分解手法では、Ir(CO)12を、対応するカリックスホスフィンリガンドと高温(90℃)で一晩直接反応させた。これは、カリックスアレーンをイリジウム金属コアに配位させることができなかった。カリックスホスフィンリガンドの存在下で配位的に不飽和のIr(CO)12種に対するNMeO試薬の使用も試みた。しかし、これらの手法の両方で、31P NMRスペクトルは、複数の種及び/又は複数の生成物を示唆する複雑なパターンを示す。ここで重要なことは、これらの手法が、複数の置換種をもたらし得るので選択的合成に適していないことである。より選択的なモノホスフィン置換は、上記のように、置換ホスフィンリガンドによるIr(CO)11BrアニオンからのBrの追い出しによって達成され得る。
【0174】
(実施例5)
カリックスアレーン結合Irクラスターの合成及び特徴付け:クラスター当たりのカリックスアレーンホスフィンリガンドの数の系統的変化
Ir(CO)12−x(L)(式中、x=2〜5、リガンドL=tert−ブチルカリックス[4]アレーン(OPr)(OCHPPh))の合成及び特徴付けが説明される。2(70℃/12時間)から4(110℃/24時間)の一連に沿う進行における合成に必要な温度の増加は、金属クラスターの周囲の立体的保護の増加(−これらの合成の重要な設計目標の1つである)に影響を与える。他の重要な側面−活性部位の電子的調節−は、図30における一連のFTIRスペクトルにより実証される。これらのスペクトルにより、より大きな量のホスフィン置換を有するIrをベースとするコア(xは、一連のIr(CO)12−x(L)で増加する)について、結合ホスフィンリガンドは、Irクラスターコア内の電子密度をより大きい程度に増加させる。結果として、Ir−C結合の逆供与が増加し、C−O結合強度の低下をもたらす。これにより、CO伸縮振動数はかなりの赤方向へのシフトをもたらす(すなわち、3におけるCO末端ピーク:2037;1999;1988cm−1、一方2におけるCO末端ピーク:2065;2039;2004cm−1)。
【0175】
Ir(CO)102の合成及び特徴付け
錯体Ir(CO)10(2)は、Lの2つの等価体による[Ir(CO)11Br]中のBr及び1つのCOリガンドの追い出しによって合成される。Lの2つの等価体による[BuN][Ir(CO)11Br]の処理は、クラスター2及びIr(CO)(3)の混合物をもたらす。カラムクロマトグラフィーによるその後の精製により、純粋2が生成する(約30%)。クラスター2の存在は、高分解能質量分析により証明され、これは、カチオン性セシウム付加物[2Cs]に対応するピークを示す(m/z=3128.95(計算値);m/z=3129.17(実測値))。31P{H}NMRは、同じ強度(1.00:0.97)を有する17.2ppm及び−11.13ppmにおける2つの一重項シグナルを示す。より低い場の共鳴は、アキシャル結合ホスフィンリガンドに帰属され、より高い場の共鳴は、エカトリアル結合リガンドに帰属される。架橋COリガンドにより生成した底面の存在は、IR分光法により証明され、これは、末端及び架橋リガンドの両方についての領域のバンドを示す。最強のIRバンドは、2039cm−1で見られる。1のIRスペクトル(最強のIRバンドは、2055cm−1に見られる)と比較して赤方へのシフトが明らかに見られ、より弱いC−O結合、したがって、より強いIr−C結合を示す。後者は、1に対して2における2つのカリックスアレーンリガンドのために、より電子豊富なIrと一致している。単結晶構造データは、X線回折によって進行中である。
【0176】
Ir(CO)3の合成及び特徴付け
リガンドLの3つの等価体による[Ir(CO)11Br]の70℃での処理により、3が黄色の粉末として形成される(収率:>90%)。この錯体は、カラムクロマトグラフィーにより精製され、クロロホルム溶液をイソプロピルアルコールで層状にすることにより結晶化される。3の高解像度ESI質量スペクトルは、カチオンラジカル錯体[3]+・に対応するピークを示す(m/z=3940.87(実測値);m/z3940.67(計算値))。31P{H}NMR分光法データは、相対強度比1.97対1.00を有する18.39ppm及び−11.30ppmにおける2つのピークを示す。これは、3において、3つのホスフィンリガンドの2つが、等価の位置を占めることを意味する。より低い場の共鳴は、アキシャル位置を占める1つのリガンドに帰属され、一方より高い場の共鳴は、両方ともエカトリアル位置の2つのホスフィンリガンド結合の結果である。
【0177】
X線回折による単結晶構造データが以下の図31及び図32に示され、3つのリガンドLに結合したIrクラスターコアを示す。ホスフィンリガンドLの2つは、等価のエカトリアル位置を占めるが一方、3番目のリガンドLは、アキシャル結合している。構造中にさらなるカリックスアレーンリガンドを配置するため(4及び提示x=5バージョンにおけるように)だけでなく、反応物質について3の接近し易さへの洞察を得るために、空間充填型表示に基づく分子モデルを図30に示す。このモデルにより、Ir金属コアの大部分が保護される一方、クラスターの一面がむしろ曝露され、接近し易いことが示される(図31(a)を参照)。このモデルに基づいて、4におけるさらなるカリックスアレーンリガンドが、頂点のIr位置に結合している(4の単結晶X線回折による証明は未決定である)。1におけるように、3における嵩高のホスフィンリガンドLは、末端及び架橋リガンドの両方に影響を与える。2つのエカトリアル結合ホスフィンリガンドは、単一のアキシャル結合ホスフィンリガンドよりも架橋COリガンドのより高いねじれを引き起こす。したがって、Ir(2)−C(9)−O(9)の角度145.2°及びIr(3)−C(7)−O(7)の角度142.0°は、対応するIr(4)−C(9)−O(9)の角度135.6°及びIr(4)−C(7)−O(7)の角度130.5°よりも大きい。
【0178】
上記Ir(2)/Ir(3)及びIr(4)に関連して結合角の差を促進する中心的現象は、3の底面におけるわずかな不斉(これは、そうでなければ完全な3回対称であることを妨げる)である。この不斉は、アキシャル結合ホスフィンリガンドのために生じる:Ir(4)結合末端COリガンドは、アキシャル結合ホスフィンリガンドのフェニル基に関して互い違い(staggered)の位置を好む。この不斉はまた、Ir−CO架橋距離においても明らかである。Ir(4)−C(9)及びIr(2)−C(9)結合長(2.204Å及び2.104Å)は両方とも、対応するIr(4)−C(7)及びIr(3)−C(7)結合長(2.047Å及び1.946Å)よりも長い。エカトリアルリガンドに結合した2個のイリジウム原子間の調節は、Ir(2)−C(5)及びIr(3)−C(5)結合長がほとんど等しい(2.170Å及び2.175Å)ことである。Ir−CO末端結合長は、1.850Åから1.960Åに変化し、結合Ir原子の性質の有意な依存を示さない。Ir−Ir距離はすべて、2.697Å及び2.757Åの範囲内である。
【0179】
Ir(CO)4の合成及び特徴付け
Lの4つの等価体による[Ir(CO)11Br]の110℃での処理により、暗褐色の溶液が形成される。高解像度ESI質量分析によって、この溶液は、Ir(CO)クラスター([4]+・;m/z=4887.01(実測値);m/z=4887.30(計算値))を含む。作製時の溶液の31P{H}NMR分光分析データは、非常に弱いシグナル及び24.4ppmにおける1つのシャープな一重項を示す。カラム精製後、31P{H}NMRスペクトルは、まだ帰属されていない非常に弱いシグナルだけを含む。同じ溶液は、FTIRスペクトルにおいて3と比べてCO伸縮振動数の明らかな赤方へのシフトを示し(4:2031;1994;1975cm−1;3:2037;1999;1988cm−1)、四置換について予想される傾向と一致している。
【0180】
Ir(CO)5の合成及び特徴付け
文献におけるただ一つの例が、唯一の公知の五置換IrクラスターIr(CO)L’(L’=トリアザ−ホスファ−アダマンタン)に関して見出された(Darensbourg,D.J.;Beckford,F.A.;Reibenspies、J.H.、Journal of Cluster Science 2000年、11、95〜107頁を参照)。これは、還流トルエン中Ir(CO)12とリガンドとの反応により得られる。この五置換Ir(CO)の合成は、Lのただ一つの等価体によるIr(CO)の処理によって計画される。この合成に役立つべきことは、その電子豊富さのために、金属コアがさらなるリガンドLの置換をより受けやすくなるという事実である。当然、立体的に、この置換はリガンドの追加数とともにより困難になる。
【0181】
(実施例6)
担持カリックスアレーン結合Irクラスターによる触媒反応:触媒反応を伴うリガンド交換過程の間の安定リガンドとしてのカリックスアレーンの担体効果及び役割
MgO上の担持Ir(CO)12の合成:文献に基づく対照触媒
最初に、MgOをU字管石英製反応器中乾燥20%O/N流(0.8cm−1−1)下400℃で4時間の期間、前処理した。その後、流れをHe(0.8cm−1−1)に変え、試料をこの温度で10時間か焼した。反応器をHeの流れ下で室温まで冷却し、空気又は水分に接触させることなくグローブボックスに移した。Ir(CO)12及びMgOを、1重量%Ir物質を与える量でグローブボックス中Ar雰囲気下、シュレンクフラスコ中で混合した。ヘキサンを添加し、得られたスラリーを1時間撹拌した。同様の手順を行って、以下のTEM試験用にモノカリックスアレーン−結合Irクラスターをしっかりと固定した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣を真空中室温で一晩乾燥させ、次いで、不活性雰囲気下で保存した。触媒前駆体の必要量を、空気/水分に曝すことなくガラス製反応器に移した。これらの条件は、担持クラスター触媒反応開発者Bruce Gatesの研究グループにより開発された実験手順に基づいて選択したが、前処理の条件においてわずかに変化させた(か焼時間及び条件、すなわち、16時間の全継続期間を有するGateの手順による真空下のか焼に対して18時間の全継続時間を有するKatzグループ手順によるHe流下のか焼)。S.D.Maloney、F.B.M.Van Zon、M.J.Kelley、D.C.Koningsberger、B.C.Gates、Catal.Lett.1990年、5、161〜168頁;F.B.M.Van Zon、S.D.Maloney、B.C.Gates、及びD.C.Koningsberger、J.Am.Chem.Soc.1993年、115、10317〜10326頁;N.D.Triantafillou及びB.C.Gates、J.Phys.Chem.1994年、98、8431〜8441頁;O.S.Alexeev、D.−W.Kim、B.C.Gates、J.Mol.Catal.A:Chem.2000年、162、67〜82頁。
【0182】
SiO−500上の担持カリックスアレーン結合Irクラスターの合成
最初に、SiO(Aerosil 200)を乾燥20%O/N流(1.2cm−1−1)下500℃で4時間、続いてHe(0.9cm−1−1)下500℃で10時間か焼した。その後、試料を、空気/水分に接触させることなくグローブボックスに移した。ホスフィンリガンドを有するIrカルボニルクラスターをグローブボックス中シリカと混合し、1重量%のIr物質を得た。ヘキサンを不活性雰囲気下で添加した。クラスターの溶解が、最初の1分の間に観察され、これは、シリカの上のこの液体の鮮黄色により明らかであった。触媒前駆体の固定化は、10〜15分で起こり、これは、溶液の変色及び黄色の固体の形成により明らかであった(図33)。得られた物質を1時間撹拌して、クラスターの全体の固定化を確実にした。溶媒の蒸発後、残存する固体を真空下、室温で一晩乾燥させ、次いで、不活性雰囲気下で保存した。触媒の必要量を、空気を含まない石英製反応器に移し、反応器バルブまで通じる容積からなるデッド容積をHeで置き換え、反応はさらなる予備処理なしに開始した。同様の手順を、TMSでキャッピングされたSiO−500上のカリックスアレーン結合Irクラスターの固定化についても行った。これらの物質のためのシリカキャッピングは、文献前例に基づく過剰のヘキサメチルジシラザンを用いて行った。
【0183】
触媒として担持Ir(CO)11L1を用いる308Kにおけるエチレン水素化触媒反応:触媒反応に対する担体SiOH対SiOTMS基の効果の比較研究。
キャッピングされていない(天然のシラノールで豊富なシリカ表面)SiO−500上に担持されたIr(CO)11L1の使用により、図34の開いた記号により示されるように35℃における活性で、安定な気相エチレン水素化触媒がもたらされる。308Kにおける触媒反応の前後の物質の31P CP/MAS NMRスペクトル(ここでは図示せず)により、凝集したIr物質のダウンフィールドにシフトした共鳴特性の不在によって担持クラスターIr(CO)11L1の一体化が確認される。TMSでキャッピングされたSiO−500上に担持された同じクラスター1との比較は、図34における黒い記号により示される:エチレン水素化触媒反応は、表面のTMSキャッピング後に不活性である。この結果は、担持白金触媒による観察結果と著しく対照的であり、SiOH基が触媒反応に必要であることを示唆する。これは、より高温で行われるIr(CO)3からなる他の担持クラスターに関する現行の研究の基礎を形成し、その結果、TMSでキャッピングされた及びされていないSiO−500担体表面を比較する場合、触媒活性を増加させ、活性及び不活性触媒間をより差別化する。
【0184】
触媒としてSiO−500担持Ir(CO)11L1及びIr(CO)113を用いる323Kにおけるエチレン水素化触媒反応:触媒反応中のクラスター安定性に対するさらなるカリックスアレーンリガンドの効果の比較試験
308Kにおけるエチレン水素化触媒反応の定常速度を実証する図34と比べると、触媒としてSiO−500上に担持されたIr(CO)11L1を用いる場合に反応温度を323Kに上昇させることは、図35に示されるように、触媒反応の定常速度の欠如をもたらす。31P CP/MAS NMR分光法により、特徴的なダウンフィールド共鳴の存在によって323Kにおける触媒反応後のSiO−500試料に担持された1におけるイリジウム金属の凝集拡大の存在が確認される。323Kにおける触媒反応後のSiO−500試料に担持された使用済み触媒1の目視検査により、凝集(嵩高イリジウム金属の形成)と一致しており、反応前の触媒の鮮黄色とかなり異なっている金属の灰色変色が示される。その323Kにおける触媒反応後の分解のみならず、308Kにおける触媒反応後のSiO−500に担持されたIr(CO)11L1の分解の欠如が、図36に示される31P CP/MAS NMR分光法によって確認され得る。結合ホスフィンに対応する共鳴は、図36bにおいて308Kにおける触媒反応後に保持されるが;しかし、この共鳴は、図36cにおいて323Kにおける触媒反応後にほとんど完全に消失する。
【0185】
しかし、SiO−500上に担持されたIr(CO)11L1と違って、SiO−500に担持されたIr(CO)3の使用は、323Kで安定な触媒をもたらし、これにより、図36に示されるように、エチレン水素化の明確な定常速度が達成される。これにより、3つのカリックスアレーンが単一のカリックスアレーンリガンドを凌いで与える、凝集に対するIrコアの立体保護の追加が実証される。この立体保護は、図31における単結晶X線回折から得られる3の構造の空間充填モデルによって見ることができ、1におけるIrクラスターに結合したただ一つのカリックスアレーンとは対照的に金属コアを包む3における複数のカリックスアレーンによってのみ可能である。
【0186】
SiO−500に担持されたIr(CO)3は、調査した最高温度であった65℃までの温度で安定な定常状態のアプローチを示した。これにより、図37におけるデータを用いて、保存後SiO−500に担持された3の触媒について69kJ/mol(16.5kcal/mol)の触媒反応の活性化エネルギーの計算が可能になった。
【0187】
MgO上のIr(CO)12との安定性比較
担持Irコアの凝集に有利に働かず、強靭性を増大させる強い金属クラスター−担体の相互作用を有することがこの触媒は公知であるので、MgO上のIr(CO)12との比較は適切である。Ir(CO)12は、上記のようにMgOにしっかり固定されて、15%H、5%C、残りHeを用いて308Kにおけるエチレン水素化のための流動反応物質によって流れ上で前処理した;STPにおける総流量:6.7cm−1−1で20時間の期間。その後、触媒反応を、323Kのより高温における以外は同じ流量で継続した。図38に示す結果により、323Kにおける流れ上15時間の経過の間の安定な触媒の欠如が実証され、これらの条件下での担持触媒の分解と一致している。この分解も、反応後の触媒の目視の色変化により支持され、これは反応前の当初の触媒からわずかに異なっていた。これにより、触媒反応の間のイリジウムクラスターの分解が示唆され、触媒反応に伴うリガンド交換過程の間の金属クラスターコアの安定性の保持におけるカリックスアレーンリガンドの重要性(すなわち、シリカ上のIr(CO)を用いる場合の結果と比較して)が実証される。これは、MgOがIrコアを有するリガンドとして強い相互作用を有することが知られているので、なおいっそう効果的であり(A.M.Argo,J.F.Odzak、F.S.Lai、及びB.C.Gates、Nature 2002年、415、623頁;Z.Xu、F.−S.Xiao、S.K.Purnell、O.Alexeev、S.Kawi、S.E.Deutsch、及びB.C.Gates、Nature 1994年、372、346頁)、シリカ上のIr(CO)における3つのカリックスアレーンリガンドにより与えられる立体保護が、強く相互作用するMgOなどの無機酸化物担体のものよりも大きいことを示唆する。
【0188】
SiO−500上のIr(CO)11PPhMeとの安定性比較
Ir(CO)11PPhMeを用いる比較は、このホスフィン結合Irクラスターが、カリックスアレーンリガンドを欠くが、依然としてメチルジフェニルホスフィンリガンドを含むので、適切である。Ir(CO)PPhMeは、カリックスアレーンホスフィンの添加の代わりに、市販のPPhMeを用いた以外は、Ir(CO)11Lと同じ様式で合成した。その後、Ir(CO)11PPhMeは、Ir(CO)11Lについて記載したものと同一の手順を用いてシリカ上にしっかり固定し、15%H、5%C、残りHe;STPにおける総流量:4.65cm−1−1を用いる、308Kにおけるエチレン水素化のための触媒として前処理なしで評価した。図39に示す結果により、流れ上45時間の過程の間の安定な触媒の欠如が実証され、これらの条件下での担持触媒の分解と一致している。この分解は、反応後(すなわち、流れ上45時間後)の触媒の目視の色変化によっても支持され、これは、反応前の浅黄色の当初の触媒に存在しなかった金属性灰色光沢の存在を示す。これにより、触媒反応の間のイリジウムクラスターの凝集が示唆され、触媒反応に伴うリガンド交換過程の間の金属クラスターコアの安定の保持におけるリガンドの凝集が示唆され、触媒反応に伴うリガンド交換過程の間の金属クラスターコアの安定の保持におけるカリックスアレーンリガンドの重要性(すなわち、シリカ上Ir(CO)11L及びIr(CO)の両方を用いる場合の結果と比較して)を実証する。
【0189】
(実施例7)
金属クラスターに結合する官能基の多様性:P含有置換基
カリックス[4]アレーンホスファイトの合成
【化23】


磁気撹拌機を備えた250mLの丸底フラスコに、トリス−プロポキシ−4−t−ブチル−カリックス[4]アレーン(775mg、1mmol、1当量)を加えた。これを、100mLの無水トルエン(ナトリウム上で新たに蒸留)に溶解させた。このフラスコに10mLのEtN(CaH上で新たに蒸留)を添加した。このフラスコに低温浴中−40℃に冷却したPhOH(185mg、2mmol、1当量)をトルエン中溶液2mLで添加した。反応混合物を30分間撹拌し、続いて、CHCl中2(M)PCl515μL(140mg、1.03mmol、1.03当量)を30分かけて添加した。反応物を−40℃で一晩撹拌し続け、次いで、室温まで加温した。この粗反応混合物は、31P NMR(128ppm)によりカリックス[4]アレーンホスファイトの形成のみを示した。
【0190】
カリックス[4]アレーンホスフィナイトの合成
【化24】


磁気撹拌機を備えた100mLの丸底フラスコ中で、トリスプロポキシt−ブチルカリックス[4]アレーン(387mg、0.5mmol、1当量)を30mLの無水THFに溶解させ、乾燥氷浴中−78℃に冷却し、10分間激しく撹拌した。このフラスコに、ヘキサン中1.6(M)BuLi(400μL、0.64mmol、1.28当量)を5分の経過の間にゆっくりと添加した。添加後直ぐに、反応フラスコは、無色から淡いオレンジ色に変わり、フェノラートの形成を示した。1時間後、クロロジフェニルホスフィン(100μL、123mg、0.56mmol、1.12当量)を気密シリンジによって添加した。反応物を室温に加温させ、一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーション下で除去し、粗残渣を、溶離液として無水トルエンを用いてシリカゲル上フラッシュクロマトグラフィーにかけた(R=0.88)。無色の粘性油状残渣が、溶媒の除去後に単離され、350mgの重量であった(74%収率)。
【化25】

【0191】
化合物Ir(CO)11L(L=tert−ブチルカリックス[4]アレーン(OPr)(OPPh))1.1の合成及び特徴付け
この表題化合物を、[Ir(CO)11Br]を1当量のリガンドL(t−ブチルカリックス[4]アレーン(OPr)(OPPh)による室温での処理によって合成する。カラムクロマトグラフィーにより、純粋錯体1.1(>90%)が生成する。スキーム3により、合成条件が概略される。高解像度ESI質量スペクトルは、[1.1]・+のパターンを示す(実測値:m/z=2036.6;計算値:m/z=2036.4)。31P{H}NMRスペクトルは、高フィールド(91ppm)に1つの一重項ピークを有する。これは、ホスフィナイトリガンドが1つの位置だけを占めることを示す。対応するホスフィン錯体1と比較して、リンのシグナルは、より高いフィールドにシフトしている。図40における1.1の結晶構造は、アキシャル位置で結合した1つのホスフィナイトリガンドを有するIrクラスターコアを示す。1におけるように、嵩高ホスフィナイトリガンドは、Ir結合COリガンドのゆがみを引き起こす。結合角Ir−C−Oは、非置換Ir原子(平均:178.4°)と比較してホスフィナイト結合Ir原子についてより小さい(177.7°及び176.7°)。結晶構造において、架橋COリガンドは存在しないが、図41中FTIRデータは、架橋CO伸縮範囲における一部のバンド強度を明らかに示す。対応するホスフィン錯体1のFTIRデータと比較して、これらのピークの強度はかなりより低い。これは、化合物1.1が2つの部分:架橋COをもたない主要部分及び架橋COをもつ主要でない部分を有することを示す。このバンドは、1と比較して青方にシフトしており(2092;2055;2032cm−1対2089;2055;2018cm−1)、ホスフィナイト結合Irコアがホスフィン錯体より電子豊富でないことと一致している。
【化26】


スキーム3:1.1、第1のカリックスアレーンホスフィナイト結合金属クラスターの合成。
【0192】
(実施例8)
金属クラスターに結合する官能基の多様性:C含有置換基
カリックス[4]アレーンカルベンの合成
Arduengoカルベンは、炭素上の不対電子を有する中間体であるにもかかわらず、比較的安定な種である。このようなカルベンは、金属結合におけるホスフィン類似体と考えることができ、上記クラスター1〜5で用いられるものなどのホスフィンのものと類似した電子供与体特性を有する。Arduengoカルベンの炭素原子上の電位対は、へテロ環式環内の2個の隣接する窒素により安定化される。
【0193】
カリックスアレーンをベースとするカルベンは、イリジウム−カルボニル結合のためのリガンドとして用いることができる。Irクラスターと一緒の下部リムホスフィン(lower−rim phosphine)の錯体の本発明者らの合成及び特徴付けを基に、本発明者らは、ホスフィン置換基をN−ヘテロ環式カルベン置換基に置き換えることを目標にする。際立って、N−ヘテロ環式カルベンへの前駆体として機能することができる、上部リムイミダゾリウムカリックスアレーン塩(upper−rim imidazolium calixarene salts)の例は少ししか知られていない。本発明者らは、より低級(狭い)マクロ環カリックスアレーン環上にN−ヘテロ環カルベンを取り込むことにより潜在性リガンドの数を拡大することを計画する。
【0194】
親tert−ブチルカリックスアレーン−テトロール6の下部リムの下部リム一官能基化を、DEAD/TPPの存在下でN−メチル−イミダゾールメタノールとのMitsunobu型反応によって行った。生成物7は、適度の収率で単離された。この反応はスキーム4に示す。残念なことに、得られたモノカリックスアレーン−イミダゾリウム塩7は、強い二量体ピークの存在を示すES MSデータによれば二量化する。二量化を避けるために、モノイミダゾリウム塩のトリプロピル類似体を合成した。2つの手法(手法A及び手法B)を用いて、目標モノイミダゾロールカリックス[4]アレーン塩を合成した。
【化27】


スキーム4.N−メチル−イミダゾールメタノール置換基を有するカリックスアレーン下部リムの具体的なモノ官能基化
【0195】
手法A
トリプロポキシカリックス[4]アレーン(コーン型)8を、NaHの存在下で1,2−ジブロモエタンで排他的にアルキル化した。化合物9は、コーン型配座異性体において収率48%で排他的に合成した。ブロモカリックスアレーン9による1−フェニルイミダゾールの四級化を介してカリックスアレーンの目標モノイミダゾリウム塩を得る試みは、スキーム5に示されるようにうまくいかなかった。ブロモカリックスアレーン9をクロロホルム中3日間大過剰の1−フェニルイミダゾールと一緒に排他的に還流させることでさえも、H NMR分光法及び薄層クロマトグラフィーによれば、当初の出発化合物を含む混合物を与えただけであった。
【化28】


スキーム5.カルビン(carbine)前駆体である置換基からなるカリックスアレーンの合成のための不成功合成手法
【0196】
手法B
クロロメチルイミダゾール10を、ヒドロキシメチルイミダゾールヒドロクロリドと塩化チオニルとの反応により合成した。次の合成工程は、スキーム6に示すように、10当量のNaHを用いてインサイチュー(in−situ)で生成するトリプロポキシカリックスアレーン11の一ナトリウム塩と、5当量のMeImCHClとの反応からなる。DMF中室温で撹拌後、目標カリックスアレーンイミダゾール12を良好な収率で合成した。化合物12は、H NMRスペクトル中エカトリアル及びアキシャルのメチレン水素からなるABスピン系の存在により実証されるコーン型配座異性体として存在する。
【0197】
カリウム−tert−ブトキシドによるイミダゾリウム塩の脱プロトン化を介するイミダゾール−2−イリデン−カリックス[4]アレーンの形成は、スキーム5で示すように行うことができた。所望のカルベンは、インサイチューで合成し、その後、スキーム5に示すようにIrクラスターに直ちに錯化する。
【化29】


スキーム6.カルビン前駆体として役立ち得る目標カリックスアレーン12の合成のための成功した手法
【化30】


スキーム7.カリックスアレーンカルベンリガンドの合成、及びそのIr金属クラスターへの錯化のための提案経路
【0198】
本明細書で使用される場合の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」の冠詞は、文脈がそうでないと明確に示すことがない限り、その指示対象の複数を排除しない。「又は」という接続詞は、文脈がそうでないと明確に示すことがない限り、相互に排他的ではない。「含む(include)」という用語は、非網羅的な例を指すために使用される。
【0199】
任意の付属書類におけるものを含めて、本明細書で引用される参考文献、刊行物、特許出願、発行済み特許、アクセッションレコード及びデータベースはすべて、すべての目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数のイリジウム原子を含む金属コロイド;及び
(b)リンカーを含むカリックスアレーン関連化合物であって、このリンカーが複数のイリジウム原子の1個に配位した配位原子を含む、前記カリックスアレーン関連化合物
を含む錯体。
【請求項2】
カリックスアレーン関連化合物が、式:
【化1】


(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16から選択される整数であり;
は、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及びリンカーから選択される部分であり、ここで、リンカーは、ホスフィン、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される部分であり;少なくとも1個のRは、前記リンカーであり;並びに
は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン、及びこれらの組合せから選択される部分である。)
を有する、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
が、置換又は非置換アルキルである、請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
が、C、C、C、C、C及びCアルキルから選択される、請求項2及び3のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項5】
がtert−ブチルである、請求項2から4までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項6】
が、−ORに対してパラ位である、請求項2から5までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項7】
が、置換又は非置換アルキルである、請求項2から6までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項8】
が、C、C、C、C、C又はCアルキルから選択される、請求項2から7までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項9】
がプロピルである、請求項2から8までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項10】
リンカーが、配位原子に加えて、1個又は複数のアルキル基置換基で場合によって置換されている、アルキル及びヘテロアルキルから選択される部分である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項11】
リンカーが、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、フェニル、イミダゾリウム、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分で置換されている、請求項1から10までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項12】
リンカーがホスフィンである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項13】
ホスフィンが、−YP(Y)(Y
(式中、Yは、結合、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択され;並びに
及びYは、独立に、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択される。)
である、請求項12に記載の錯体。
【請求項14】
及びYが、それぞれ、置換又は非置換アリールである、請求項13に記載の錯体。
【請求項15】
及びYが、それぞれフェニルである、請求項13及び14のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項16】
が、置換又は非置換アルキルである、請求項13から15までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項17】
が、C、C、C、C、C又はCアルキルである、請求項13から16までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項18】
がメチルである、請求項13から17までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項19】
が結合である、請求項13から15までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項20】
リンカーがカルベンである、請求項1から11までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項21】
カルベンが、イミダゾリウム部分で置換されたアルキルである、請求項20に記載の錯体。
【請求項22】
カルベンが、イミダゾリウム部分で置換されたメチルである、請求項20及び21のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項23】
配位原子が、リン、炭素、窒素及び酸素から選択される、請求項1から22までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項24】
nが4である、請求項1から23までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項25】
複数のイリジウム原子が、Ir(式中、xは、2,3、4、5、6、7、8、9、10、11,12、13、14、15、16、17及び18から選択される。)の形態である、請求項1から24までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項26】
金属コロイドが、−COで置換されている、請求項1から25までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項27】
複数のカリックスアレーン関連化合物が、金属コロイドに配位している、請求項1から26までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項28】
2、3、4又は5つのカリックスアレーン関連化合物が、金属コロイドに配位している、請求項27に記載の錯体。
【請求項29】
複数の金属コロイドが、1つ又は複数のカリックスアレーン関連化合物に配位している、請求項1から28までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項30】
基材上に固定化された、請求項1から29までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項31】
カリックスアレーン関連化合物又は金属コロイドが、基材に直接結合している、請求項30に記載の錯体。
【請求項32】
請求項1から31までのいずれか一項に記載の錯体上で反応を行うことを含む方法によって形成される金属コロイドであって、反応は、熱分解、熱的分解、酸化分解及びこれらの組合せから選択される上記金属コロイド。
【請求項33】
カリックスアレーン結合金属コロイドを合成する方法であって、カリックスアレーン関連化合物とコロイド金属臭化物とを、コロイド金属臭化物から臭化物アニオン追い出しを引き起こすために適当な条件下で接触させることを含む上記方法。
【請求項34】
接触させる工程の前に、コロイド金属を臭素化剤で、コロイド金属臭化物を形成するために十分な条件下で活性化させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
コロイド金属が、複数のイリジウム原子を含み、臭素化剤が、複数のイリジウム原子の1個又は複数を臭素化する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
コロイド金属臭化物がイリジウムを含む、請求項33から35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
イリジウムが、単一の臭化物リガンドに結合している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
イリジウムが、Irの形態である、請求項35から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンホスフィン、カリックスアレーンホスフィナイト、カリックスアレーンホスホナイト、カリックスアレーンホスファイト及びカリックスアレーンホスホラミダイトから選択される、請求項33から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンカルベンである、請求項33から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンピリジン、カリックスアレーンビピリジン、カリックスアレーンテルピリジン、カリックスアレーンピラゾール、カリックスアレーンフェナントロリン、カリックスアレーンイソニトリル、カリックスアレーンアミド、カリックスアレーンアミン、カリックスアレーンアミンオキシド、カリックスアレーンニトロソ、カリックスアレーンニトロ及びカリックスアレーンカルバメートから選択される、請求項33から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンカルボキシレート、カリックスアレーンアルコキシド、カリックスアレーンペルオキソ、カリックスアレーンフェノキシド、カリックスアレーンエステル、カリックスアレーンエーテル、カリックスアレーンアセチルアセトネート及びカリックスアレーンカルボネートから選択される、請求項33から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
カリックスアレーン関連化合物が、請求項1から31までのいずれか一項に記載の錯体のカリックスアレーン関連化合物である、請求項33から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
有機分子を(a)請求項1から31までのいずれか一項に記載の錯体又は請求項32に記載の金属コロイド、及び(b)還元剤と接触させることによって、有機分子を還元することを含む触媒プロセス。
【請求項45】
有機分子が、置換又は非置換アルキルである、請求項44に記載の触媒プロセス。
【請求項46】
還元工程が水素化を含む、請求項44及び45のいずれか一項に記載の触媒プロセス。
【請求項47】
有機分子を(a)請求項1から31までのいずれか一項に記載の錯体又は請求項32に記載の金属コロイド、及び(b)酸化剤と接触させることによって、有機分子を酸化することを含む触媒プロセス。
【請求項48】
酸化工程がヒドロキシル化を含む、請求項47に記載の触媒プロセス。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図25】
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【図34】
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【図35】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図36】
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【図40】
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【図41】
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【公表番号】特表2013−508145(P2013−508145A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535424(P2012−535424)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053818
【国際公開番号】WO2011/050300
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】