説明

カルシウムスケール防止装置及び防止方法

【課題】薬剤費を低減し、運転コストを低く抑えたカルシウムスケール防止装置及び防止方法を提供する。
【解決手段】カルシウムイオンを含む溶液(最終処分場の浸出水W2等)をろ過するろ過機4と、ろ過機から排出された溶液を、カルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離する両性イオン交換樹脂5とを備えるカルシウムスケール防止装置。両性イオン交換樹脂を用いてカルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離し、各々の溶液を別々に処理する。カルシウムイオンを除去するために炭酸ナトリウム等を添加しなくとも、CaSO4によるスケールの発生を最小限に抑えることができ、運転コストを低減できる。ろ過機4を、両性イオン交換樹脂へのカルシウムイオンの供給配管、又はこの配管と両性イオン交換樹脂に再生水を供給する再生水供給配管との合流点Mの下流側の配管に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムスケール防止装置及び防止方法に関し、特に、最終処分場やセメント製造工程等においてカルシウムに起因するスケールの発生を防止する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ処分場等の最終処分場は、リサイクルが困難な廃棄物等を処分するための施設であるが、枯渇化の虞に鑑み、これまで最終処分場で処理されていた廃棄物等の有効利用が推進されている。例えば、都市ごみなどを焼却した際に発生する焼却灰は、近年、セメント原料としてリサイクルしている。都市ごみ焼却灰のうち、気体とともに運ばれ、集塵装置で回収される飛灰は、10〜20%の塩素分を含むため、水洗脱塩設備を用い、飛灰に含まれる水溶性塩素化合物を水洗除去した後、セメント原料として利用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、セメント製造設備には、プレヒータの閉塞等の問題を引き起こす原因となる塩素を除去する塩素バイパス設備が用いられている。近年、上記焼却灰を含む廃棄物のセメント原料化又は燃料化によるリサイクルが推進され、廃棄物の処理量が増加するに従い、セメントキルンに持ち込まれる塩素等の揮発成分の量も増加し、塩素バイパスダストの発生量も増加している。そのため、塩素バイパスダストをすべてセメント粉砕工程で利用することができず、塩素バイパスダストについても水洗処理されていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−100243号公報
【特許文献2】特開2001−129513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、最終処分場では、その浸出水に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)と、SO42-から硫酸カルシウム(CaSO4)が生じ、浸出水の処理装置や後段の排水処理工程においてスケールとして装置に付着し、安定運転が阻害されるという問題があった。また、セメント製造工程における焼却灰や塩素バイパスダストの水洗ろ液についても、上記最終処分場の浸出水と同様の問題があった。
【0006】
そのため、例えば、図6に示すように、最終処分場50からの浸出水W1を沈砂・調整池51に貯留し、沈砂・調整池51から排出された浸出水W2からスケール発生の原因となるカルシウムや、有害な重金属を除去するために薬液反応槽52で薬剤を添加し、ろ過装置53でこれらを沈殿除去し、その後、COD処理及び懸濁物質(SS)の除去を経て、消毒後に放流する。
【0007】
しかし、上記カルシウムの除去には、多量の炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを添加する必要があり、これによって薬剤コストが嵩み、運転コストが高騰するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、最終処分場等におけるスケールの付着による運転への悪影響を最小限に留め、薬剤コストを含む運転コストを低く抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、カルシウムスケール防止装置であって、カルシウムイオンを含む溶液をろ過するろ過機と、該ろ過機から排出された溶液を、カルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離する両性イオン交換樹脂とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、両性イオン交換樹脂を利用してカルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離するため、従来のようにカルシウムイオンを除去するために炭酸ナトリウム等を添加しなくともCaSO4等によるスケールの発生を最小限に抑えることができ、運転コストを大幅に低減することができる。
【0011】
また、ろ過機でカルシウムイオンを含む溶液をろ過した後、両性イオン交換樹脂を通過させるため、両性イオン交換樹脂自体にカルシウムスケールが付着して樹脂が固結することを防止することができ、両性イオン交換樹脂の安定した動作を維持することができる。
【0012】
また、上記カルシウムスケール防止装置において、前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管に前記ろ過機を備えることができ、これによって、原水(カルシウムイオンを含む溶液)のスケール付着性に直接対応することができる。
【0013】
上記カルシウムスケール防止装置において、前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管と、該両性イオン交換樹脂に再生水を供給する再生水供給配管との合流点の下流側の配管に前記ろ過機を備えることができる。これによって、再生水によってろ過機を洗浄することができ、ろ過機の長期安定運転を図ることができる。
【0014】
上記カルシウムスケール防止装置において、前記ろ過機には除去する粒子の最大径を10μm以下に設定したものを採用することができる。ろ過機にフィルター式を採用した場合は、粒子が通過する穴の口径を10μm以下にしたものとすることができる。砂ろ過機を採用した場合は、ろ材とろ過機を通過する該溶液の速度を調整して、除去する粒子の最大径を10μm以下にしたものを採用することができる。
【0015】
また、本発明は、カルシウムスケール防止方法であって、カルシウムイオンを含む溶液をろ過し、ろ過した後の溶液を両性イオン交換樹脂に通過させ、カルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、CaSO4等によるスケールの発生を最小限に抑えることができて運転コストを大幅に低減することができると共に、両性イオン交換樹脂自体にカルシウムスケールが付着して樹脂が固結することを防止して両性イオン交換樹脂の安定した動作を維持することができる。
【0016】
上記カルシウムスケール防止方法において、前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管にろ過機を設置し、該ろ過機を通過する該溶液の速度を200m/日以下に制御することができる。これにより、原水のスケール付着性に直接対応することができ、ろ過機を通過する該溶液の速度を200m/日以下に制御すること、すなわちろ過機に容量の大きいものを設置することで、ろ過機の長期運転を確保することができる。
【0017】
上記カルシウムスケール防止方法において、前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管と、該両性イオン交換樹脂に再生水を供給する再生水供給配管との合流点の下流側の配管にろ過機を設置し、該ろ過機を通過する該溶液の速度を200m/日以上に制御することができる。これにより、再生水によってろ過機を洗浄してろ過機の長期安定運転を確保すると共に、ろ過機を通過する該溶液の速度を200m/日以上に制御すること、すなわちろ過機に容量の小さいものを設置することで、原水と再生水とが混合して分離性能(ろ過性能)が低下するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、最終処分場等におけるスケールの付着による運転への悪影響を最小限に留め、薬剤コストを含む運転コストを低く抑えることなどが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるカルシウムスケール防止装置の第1の実施形態を用いた最終処分場の浸出水処理システムを示すフローチャートである。
【図2】図1に示す最終処分場の浸出水処理システムに用いられる両性イオン交換樹脂の動作を説明するための概略図である。
【図3】図2に示す両性イオン交換樹脂の運転例を示すグラフである。
【図4】図1に示す最終処分場の浸出水処理システムの実施例を示すフローチャートである。
【図5】本発明にかかるカルシウムスケール防止装置の第2の実施形態を用いた最終処分場の浸出水処理システムを示すフローチャートである。
【図6】従来の最終処分場の浸出水処理システムの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、本発明を最終処分場におけるカルシウムスケールの防止に用いた場合を例にとって説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかるカルシウムスケール防止装置の第1の実施形態を用いた最終処分場の浸出水処理システム(以下、「処理システム」と略称する)を示し、この処理システム1は、最終処分場2からの浸出水W1を貯留する調整槽3と、調整槽3からの浸出水W2をろ過するろ過機4と、ろ過機4から排出された溶液L1を、カルシウムイオン濃度の高い溶液(以下「カルシウム含有水」という)L3と、カルシウムイオン濃度が低くSO42-濃度の高い溶液(以下「SO4含有水」という)L4とに分離する両性イオン交換樹脂5と、両性イオン交換樹脂5に供給する再生水L2を貯留する再生水タンク6と、両性イオン交換樹脂5から排出されたカルシウム含有水L3及びSO4含有水L4を各々貯留するカルシウム含有水タンク7、SO4含有水タンク8と、重金属除去装置9と、COD処理装置10とを備える。
【0022】
調整槽3は、最終処分場2のごみ層を浸透した雨水等の浸出水W1を集め、浸出水W1の水質、水量の変化を抑えて均一化を図るために備えられ、その前段には、土砂を沈降分離する沈砂槽等が備えられる。
【0023】
ろ過機4は、調整槽3からの浸出水W2をろ過するため、浸出水W2を両性イオン交換樹脂5に供給する配管に配置され、浸出水W2を直接ろ過する。このろ過機4は、砂ろ過機を採用した場合は、除去する粒子の最大径が10μm以下になるように、砂等のろ材の最大径が2.0mm以下、最小径が0.15mm以上で、ろ過機4を通過する浸出水W2の速度が100〜200m/日の比較的大型のろ過機とすることができる。
【0024】
両性イオン交換樹脂5は、ろ過機4から排出された溶液L1に含まれるカルシウムを除去するために備えられる。両性イオン交換樹脂とは、母体を架橋ポリスチレン等とし、同一官能基鎖中に四級アンモニウム基とカルボン酸基等を持たせて、陽イオン陰イオンの両方とイオン交換をさせる機能を持たせた樹脂である。例えば、三菱化学株式会社製の両性イオン交換樹脂、ダイヤイオン(登録商標)、AMP03を用いることができる。この両性イオン交換樹脂5は、水溶液中の電解質と非電解質の分離を行うことができるとともに、電解質の相互分離を行うこともできる。
【0025】
重金属除去装置9は、SO4含有水L4に含まれる鉛等の重金属を除去するために備えられ、薬液反応槽、フィルタープレス等一般的に用いられる装置を利用することができる。
【0026】
COD処理装置10は、重金属除去装置9において重金属が除去されたSO4含有水L4のCODを低下させるために備えられ、一般的な浄化槽等を利用することができる。
【0027】
次に、上記構成を有する処理システム1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0028】
最終処分場2の浸出水W1を調整槽3に集めて水質、水量の変化を抑えた後、調整槽3からの浸出水W2をろ過機4でろ過する。これにより、両性イオン交換樹脂5自体にカルシウムスケールが付着して樹脂が固結することを防止する。
【0029】
次に、ろ過した溶液L1を両性イオン交換樹脂5に供給し、溶液L1をカルシウム含有水L3とSO4含有水L4とに分離する。図2に示すように、この両性イオン交換樹脂5は、バッチ処理を連続的に行うものであって、予め水を充填し(図2(a))、その後、ろ過機4より両性イオン交換樹脂5に溶液L1を導入し、次に両性イオン交換樹脂5の再生を行うための再生水(工水)L2を導入する(図2(b))。すると、図2(c)に示すように、まずSO4含有水L4が排出され、その後、カルシウム含有水L3が時間経過とともにこの順序で排出される。両性イオン交換樹脂5から排出されたSO4含有水L4及びカルシウム含有水L3は、各々SO4含有水タンク8及びカルシウム含有水タンク7に一旦貯留する。
【0030】
次に、カルシウム含有水タンク7に貯留したカルシウム含有水L3を放流する。一方、SO4含有水タンク8に貯留したSO4含有水L4は、重金属除去装置9を用いて重金属を除去し、さらにCOD処理装置10でCODを低減した後、放流する。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、浸出水W2をろ過機4及び両性イオン交換樹脂5を介してカルシウム含有水L3と、SO4含有水L4とに分離した後、各々を別々に処理するため、従来のようにカルシウムを除去するための炭酸ナトリウム等を添加せずにCaSO4によるスケールの発生を最小限に抑えることができ、運転コストを大幅に低減することができる。
【0032】
また、予めろ過機4で浸出水W2をろ過し、両性イオン交換樹脂5自体にカルシウムスケールが付着して樹脂が固結することを防止しているため、両性イオン交換樹脂5の安定した動作を維持することができる。ここで、ろ過機4によって浸出水W2を直接ろ過しているため、浸出水W2のスケール付着性に直接対応することができると共に、ろ過機4を通過する浸出水W2の速度を200m/日以下に制御すること、すなわちろ過機4に容量の大きいものを設置することで、ろ過機4の長期運転を確保することができる。
【0033】
次に、上記処理システム1に用いたカルシウムスケール防止装置及び防止方法の実施例について説明する。ろ過機4として、口径10μmのカートリッジフィルターを用い、ろ過機4を通過する浸出水W2の速度を59m/日に制御すると共に、両性イオン交換樹脂5として、上述の三菱化学株式会社製の両性イオン交換樹脂、ダイヤイオンAMP03を用い、原水として、表1に示す化学成分を有する最終処分場2の浸出水W2をろ過機4及び両性イオン交換樹脂5に通液し、再生水L2として浸出水W2の2倍の量の新水を通液した。通液量と、両性イオン交換樹脂5を通過した処理液に含まれる各成分の濃度の関係及びその際の処理システム1における水バランスを各々表2、図3及図4に示す。図4において、楕円中の数字が各水の重量比を示す。尚、表1、表2及び図3では、測定した電気伝導度をCl-濃度に換算して示している。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表2及び図3において、通水量/原水量0.14〜1.43までがSO4含有水L4、通水量/原水量1.43以降がカルシウム含有水L3となる。同表及びグラフより明らかなように、SO4含有水L4には、SO42-に加え、Cl-及びNa+を回収することができるとともに、Pb2+、COD及びNH4+についてもSO4含有水L4の方に分離することができるため、カルシウム含有水L3については、これらの除去設備が不要となり、設備コスト及び運転コストを低く抑えることができる。
【0037】
また、このときの水バランスは、図4に示すように、重量0.67の溶液L1と重量1.33の再生水L2を両性イオン交換樹脂5に供給すると、重量1のカルシウム含有水L3と重量1のSO4含有水L4とが発生し、各々別々に処理して放流する。
【0038】
次に、本発明にかかるカルシウムスケール防止装置の第2の実施形態を用いた処理システムについて、図5を参照しながら説明する。
【0039】
この処理システム11は、最終処分場2からの浸出水W1を貯留する調整槽3と、調整槽3からの浸出水W2をろ過するろ過機14と、ろ過機14から排出された溶液L5を、カルシウムイオン濃度の高い溶液(以下「カルシウム含有水」という)L6と、カルシウムイオン濃度が低くSO42-濃度の高い溶液(以下「SO4含有水」という)L7とに分離する両性イオン交換樹脂5と、ろ過機14に供給する再生水L2を貯留する再生水タンク6と、両性イオン交換樹脂5から排出されたカルシウム含有水L6及びSO4含有水L7を各々貯留するカルシウム含有水タンク7、SO4含有水タンク8と、重金属除去装置9と、COD処理装置10とを備える。両性イオン交換樹脂5〜COD処理装置10については、上記第1の実施形態における処理システム1と同様の構成を有する。
【0040】
ろ過機14は、調整槽3からの浸出水W2をろ過するため、浸出水W2の供給配管と、再生水L2の供給配管との合流点Mの下流側の配管に配置され、浸出水W2をろ過すると共に、再生水L2によってろ過機14を洗浄する。このろ過機14は、砂ろ過機を採用した場合は、除去する粒子の最大径が10μm以下になるように、砂等のろ材の最大径が2.0mm以下、最小径が0.3mm以上で、ろ過機14を通過する浸出水W2及び再生水L2の速度が200〜500m/日の比較的小型のろ過機を採用することができる。
【0041】
次に、上記構成を有する処理システム11の動作について、図5を参照しながら説明する。
【0042】
最終処分場2の浸出水W1を調整槽3に集めて水質、水量の変化を抑えた後、調整槽3からの浸出水W2及び再生水タンク6からの再生水L2をろ過機14でろ過し、両性イオン交換樹脂5自体にカルシウムスケールが付着して樹脂が固結することを防止する。
【0043】
次に、ろ過した溶液L5を両性イオン交換樹脂5に供給し、溶液L5をカルシウム含有水L6とSO4含有水L7とに分離する。両性イオン交換樹脂5から排出されたSO4含有水L7及びカルシウム含有水L6は、各々SO4含有水タンク8及びカルシウム含有水タンク7に一旦貯留する。
【0044】
次に、カルシウム含有水タンク7に貯留したカルシウム含有水L6を放流する。一方、SO4含有水タンク8に貯留したSO4含有水L7は、重金属除去装置9を用いて重金属を除去し、さらにCOD処理装置10でCODを低減した後、放流する。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば、浸出水W2をろ過機14及び両性イオン交換樹脂5を介してカルシウム含有水L6と、SO4含有水L7とに分離した後、各々を別々に処理するため、従来のようにカルシウムを除去するための炭酸ナトリウム等を添加せずにCaSO4によるスケールの発生を最小限に抑えることができ、運転コストを大幅に低減することができる。
【0046】
また、予めろ過機14で浸出水W2を再生水L2と共にろ過し、両性イオン交換樹脂5自体にカルシウムスケールが付着して樹脂が固結することを防止しているため、両性イオン交換樹脂5の安定した動作を維持することができる。ここで、ろ過機14に再生水L2を供給してろ過機14を洗浄することで、ろ過機14の長期安定運転を確保すると共に、ろ過機14を通過する浸出水W2及び再生水L2の速度を200m/日以上に制御すること、すなわちろ過機14に容量の小さいものを設置することで、浸出水W2と再生水L2とが混合して分離性能(ろ過性能)が低下するのを防止することができる。
【0047】
尚、上記実施の形態においては、本発明にかかるカルシウムスケール防止装置及び防止方法を最終処分場の浸出水処理システムに適用した場合を例示したが、この浸出水処理システム以外にも、焼却灰やセメント製造工程で得られる塩素バイパスダストを水洗して得られたろ液、海水から塩を回収する塩回収設備の排水等、カルシウムイオンとSO42-やシュウ酸イオン等を含む溶液であって、カルシウムイオンに起因するスケールが発生する虞のある溶液であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 最終処分場の浸出水処理システム
2 最終処分場
3 調整槽
4 ろ過機
5 両性イオン交換樹脂
6 再生水タンク
7 カルシウム含有水タンク
8 SO4含有水タンク
9 重金属除去装置
10 COD処理装置
11 最終処分場の浸出水処理システム
14 ろ過機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムイオンを含む溶液をろ過するろ過機と、
該ろ過機から排出された溶液を、カルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離する両性イオン交換樹脂とを備えることを特徴とするカルシウムスケール防止装置。
【請求項2】
前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管に前記ろ過機を備えることを特徴とする請求項1に記載のカルシウムスケール防止装置。
【請求項3】
前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管と、該両性イオン交換樹脂に再生水を供給する再生水供給配管との合流点の下流側の配管に前記ろ過機を備えることを特徴とする請求項1に記載のカルシウムスケール防止装置。
【請求項4】
前記ろ過機で除去する粒子の最大径が10μm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のカルシウムスケール防止装置。
【請求項5】
カルシウムイオンを含む溶液をろ過し、
ろ過した後の溶液を両性イオン交換樹脂に通過させ、カルシウムイオン濃度の低い溶液と、カルシウムイオン濃度の高い溶液とに分離することを特徴とするカルシウムスケール防止方法。
【請求項6】
前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管にろ過機を設置し、該ろ過機を通過する該溶液の速度を200m/日以下に制御することを特徴とする請求項5に記載のカルシウムスケール防止方法。
【請求項7】
前記両性イオン交換樹脂に前記カルシウムイオンを含む溶液を供給する供給配管と、該両性イオン交換樹脂に再生水を供給する再生水供給配管との合流点の下流側の配管にろ過機を設置し、該ろ過機を通過する該溶液の速度を200m/日以上に制御することを特徴とする請求項5に記載のカルシウムスケール防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27827(P2013−27827A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166118(P2011−166118)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】