説明

カーペット、及びカーペットの製造方法

【課題】 本発明は、自由なデザインに基づいて所望の模様を表すことができるカーペットの製造方法を提供する。
【課題手段】 本発明のカーペットの製造方法は、原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸2を基布3にタフトすることにより、パイル生機4を作製する工程と、前記パイル生機4の裏面にバッキング層8を作製する工程と、を有し、前記バッキング層8の作製前又は作製後に、前記パイル生機4をプリント染色することによって、前記パイル生機4のパイル面に所望の模様を表す工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル面に所望の模様を表すことができるカーペット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィスビル、商業施設、マンションなどの住宅などに、パイル面を有するカーペットが敷設されている。
このようなカーペットとしては、矩形状に裁断されたいわゆるタイルカーペットや、ロール状に巻かれて提供される長尺のカーペットなどが挙げられる。
このようなカーペットのパイル面には、パイルを染色することにより、所望の模様が表されている。
【0003】
特許文献1には、染色性の異なる複数種の合成繊維マルチフィラメントと少なくとも1種の原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸であって、染色性の異なる合成繊維マルチフィラメントの各単糸と原着合成繊維マルチフィラメントの各単糸とが交絡している交絡部と、染色性の異なる合成繊維マルチフィラメントの各単糸と原着合成繊維マルチフィラメントの各単糸とが一群をなし交絡が少ない無交絡部とを、捲縮糸の長さ方向に交互に形成すると共に、交絡度が30〜50個/m、無交絡部における原着合成繊維マルチフィラメントの染色性の異なる合成繊維マルチフィラメントへの混繊度が10〜60%の範囲にある杢調多色染色性捲縮糸をタフティングしたパイル布帛を、少なくとも2種以上の染料を用いて染色し、この染色パイル布帛に裏打ち樹脂層を形成した杢調柄カーペットが開示されている。
この特許文献1の杢調柄カーペットは、捲縮糸を用いてパイル布帛(パイル生機)を形成した後、その中の染色性の異なる複数種の合成繊維マルチフィラメントをそれぞれ染色することによって、深みのある色相でコントラストの強い杢調柄を発現できるという効果を奏する。
【0004】
しかしながら、特許文献1のカーペットは、浸染によって得られる杢調柄が予め決まったパターンに限られているので、デザインの自由度が低いという問題点がある。
具体的には、特許文献1のカーペットにおいては、染色性の異なる複数種の合成繊維マルチフィラメントと原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸を用いている。捲縮糸は、染色性の異なる複数種の合成繊維マルチフィラメントを有するので、パイル布帛を染料で染色することにより、各合成繊維マルチフィラメントが染色され、その結果、パイル布帛のパイル面に杢調柄が表れる。前記染料の色を変えると、各合成繊維マルチフィラメントの着色も変わるので、様々な色の染料を任意に用いることにより、色相が異なるカーペットが得られる。
しかしながら、杢調柄自体は、捲縮糸中に含まれる染色性の異なる合成繊維マルチフィラメントの種類や撚り数などに依存するので、パイル布帛を染色する際の染料を変えても、柄模様自体は同様なデザインしか得られない。
従って、特許文献1のカーペットは、浸染に限られるのでデザインの自由度が低いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−70853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、自由なデザインに基づいて所望の模様を表すことができるカーペット及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカーペットは、原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸を基布にタフトしたパイル生機を有し、前記パイル生機をプリント染色することによって、前記パイル生機のパイル面に所望の模様が表されている。
【0008】
本発明の好ましいカーペットは、前記非原着合成繊維マルチフィラメントが1種類の合成繊維からなる。
本発明の他の好ましいカーペットは、前記原着合成繊維マルチフィラメントがアニオン性基を有するポリマーを含む合成繊維からなり、前記非原着合成繊維マルチフィラメントがカチオン性基を有するポリマーを含む合成繊維からなる。
本発明の他の好ましいカーペットは、前記原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントとが無交絡である。
本発明のカーペットは、前記捲縮糸が、撚り回数30回/m〜100回/mの撚加工糸である。
【0009】
本発明の別の局面によれば、カーペットの製造方法を提供する。
このカーペットの製造方法は、原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸を基布にタフトすることにより、パイル生機を作製する工程と、前記パイル生機の裏面にバッキング層を作製する工程と、を有し、前記バッキング層の作製前又は作製後に、前記パイル生機をプリント染色することによって、前記パイル生機のパイル面に所望の模様を表す工程を有する。
【0010】
本発明の好ましいカーペットの製造方法は、前記プリント染色がインクジェットプリント方式によって行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーペット及びその製造方法は、プリント染色によってパイル生機の非原着合成繊維マルチフィラメントが染色されるので、自由なデザインに基づいて、パイル面に所望の模様を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカーペットの1つの実施形態を示す参考断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本発明のカーペットの基本構造は、捲縮糸及び基布を有するパイル生機と、パイル生機の裏面に設けられたバッキング層と、の積層構造である。
1つの実施形態では、バッキング層は、パイル生機の裏面に積層される裏打ち層と、その裏打ち層の裏面に積層された裏面層と、を有し、必要に応じて、前記バッキング層は、補強材を有する。
【0014】
図1は、本発明のカーペット1の層構成の好ましい態様を示す参考断面図である。
このカーペット1は、原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸2を基布3にタフトすることにより、複数のパイル41が形成されたパイル生機4と、その裏面に順に設けられた裏打ち層5と補強材6と裏面層7とを有するバッキング層8と、を有する。裏面層7には、必要に応じて、第2の補強材9が埋設されていてもよい。
【0015】
パイル生機4のパイル面には、プリント染色することによって、所望の模様が表されている(模様は不図示)。
パイル面を形成するパイル41は、図示したようなループパイルでもよいし、図示しないカットパイルでもよい。凹凸による陰影が出やすく且つ原着合成繊維マルチフィラメントがより際立って見えることから、ループパイルを用いることが好ましい。
パイル41の高さは、特に限定されないが、通常、3mm〜10mmであり、特にループパイルの場合には、3mm〜5mmが好ましい。
【0016】
[捲縮糸]
パイル41を構成する捲縮糸2は、原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる撚加工糸である。原着合成繊維マルチフィラメントは、所定色に着色された複数の単糸の集合からなり、可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントは、染色可能な未着色の複数の単糸の集合からなる。これらの各単糸が撚り合わされて捲縮糸2が構成されている。
【0017】
前記捲縮糸2は、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントが交絡されていてもよいし、又は、無交絡でもよい。本発明では、特に、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントが無交絡である捲縮糸2が好ましく、より詳しくは、原着合成繊維マルチフィラメントの各単糸と非原着合成繊維マルチフィラメントの各単糸が無交絡である捲縮糸2が好ましい。交絡された捲縮糸は、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントがよく混じっているが、無交絡の捲縮糸2は、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントが余り混じっていない。かかる無交絡の捲縮糸2を用いることにより、非原着合成繊維マルチフィラメントが染色された後、原着合成繊維マルチフィラメントの色彩と非原着合成繊維マルチフィラメントの色彩が余り混じらなくなる。そのため、色相のコントラストを強調でき、立体感のある模様をパイル面に表すことができる。
【0018】
前記捲縮糸2において、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントの比率は特に限定されない。原着合成繊維マルチフィラメントの比率が余りに高いと、プリント染色によって表すことができる模様が制約され、一方、非原着合成繊維マルチフィラメントの比率が余りに高いと、原着合成繊維マルチフィラメントとプリント染色された非原着合成繊維マルチフィラメントとの色相差が小さくなる。
このような点を考慮すると、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントの比率(原着:非原着)は、好ましくは1:1〜1:4であり、より好ましくは1:2〜1:3である。ただし、前記比率は、捲縮糸2の任意の位置での断面における原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントの面積比である。
【0019】
捲縮糸2の太さは、好ましくは3,000dtex〜6,000dtexであり、より好ましくは3,500dtex〜5,000dtexであり、さらに好ましくは3,800dtex〜4,500dtexである。捲縮糸2が太すぎると、プリント染色によって均一に染色し難くなる上、タイルカーペットの目地部などにおいてケバが目立ち易くなる。一方、捲縮糸2が細すぎると、カバリング特性が低下して基布が目立ち易くなる。捲縮糸2の太さが前記範囲であれば、意匠性に優れ、パイル生機上に立体感のある模様を形成できる。
【0020】
また、捲縮糸2の撚り回数は、好ましくは30回/m〜100回/mであり、より好ましくは40回/m〜70回/mである。捲縮糸2の好ましい撚り回数は、捲縮糸2の太さにも依存するが、太さ3,800dtex〜4,500dtexの捲縮糸2における撚り回数の最適範囲は、50回/m〜60回/mである。
前記撚り回数の範囲内であれば、ボリューム感に優れた捲縮糸2が得られる。かかる捲縮糸2を用いてパイル41を形成することにより、パイル41に膨らみを持たせることができ、且つプリント染色された非原着合成繊維マルチフィラメントの色彩を原着合成繊維マルチフィラメントの色彩から引き立たせるように見せることもできる。一方、撚り回数が100回/mを超えると、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントの分かれ目を視認し難く、色相のコントラストが曖昧になるおそれがある。撚り回数が30回/m未満であると、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントからなる捲縮糸が纏まり難く、捲縮糸をタフトしたパイル41が不安定になるおそれがある。
【0021】
原着合成繊維マルチフィラメントは、1種類の合成繊維から構成されていてもよいし、複数の合成繊維から構成されていてもよい。好ましくは、原着合成繊維マルチフィラメントは、1種類の合成繊維から構成される。
原着合成繊維マルチフィラメントの色彩は、特に限定されないが、濃色であることが好ましく、さらに、黒色又は濃グレー色がより好ましく、黒色がさらに好ましい。黒色又は濃グレー色の原着合成繊維マルチフィラメントを用いることによって、プリント染色された非原着合成繊維マルチフィラメントの色彩が際立ち、色相のコントラストに優れたパイル面が形成され得る。
また、原着合成繊維マルチフィラメントが黒色または濃グレー色であれば、非原着合成繊維マルチフィラメントをプリント染色したときに、その染料によって原着合成繊維マルチフィラメントが汚染されたとしても、原着合成繊維マルチフィラメントの色彩が変化し難いので好ましい。特に、彩度及び明度の低い黒色の原着合成繊維マルチフィラメントは、前述の色変化が極めて小さい上、非原着合成繊維マルチフィラメントの色彩を際立たせることができる。
【0022】
また、前述の色変化を実質的に防止するため、原着合成繊維マルチフィラメントとしては、プリント染色に用いられる染料の吸収能がない繊維又は極めて低い繊維を用いることが好ましい。
例えば、プリント染色時に酸性染料が用いられる場合には、原着合成繊維マルチフィラメントは、アニオン性基を有するポリマーを含む合成繊維が用いられ、また、プリント染色時に塩基性染料が用いられる場合には、カチオン性基を有するポリマーを含む合成繊維が用いられる。
本発明では、非原着合成繊維マルチフィラメントを良好に染色するためにプリント染色時には酸性染料を用いることが好ましいことから、原着合成繊維マルチフィラメントは、アニオン性基を有するポリマーを含む合成繊維から構成されていることが好ましい。
【0023】
原着合成繊維マルチフィラメントを形成する素材としては、染着座席が塩基性染料に染まるアニオン性基(例えば、SO末端基)を有するポリマー、或いは、染色座席が封鎖されたポリマーなどが挙げられる。前記ポリマーの基本骨格としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどが挙げられ、好適にはポリアミドである。
なお、原着合成繊維マルチフィラメントは、前記ポリマー以外に、必要に応じて、艶消し剤(例えば、酸化チタンなど)、帯電防止剤、耐候剤、耐熱剤、酸化防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
原着合成繊維マルチフィラメントは、前記ポリマー及び添加剤を含む組成物中に、無機若しくは有機の顔料又は染料を分散し、それを紡糸することによって得られる。
前記顔料又は染料の分散方法としては、ポリマーの重合時に添加する方法、ベースポリマーが溶融紡糸される直前に、あらかじめポリマー中に高濃度に分散されているマスターポリマーを規定の割合計量しながら添加する方法、ベースポリマー及びマスターポリマーをそれぞれ規定量溶融し、溶融状態で混練する方法などが挙げられる。
【0025】
非原着合成繊維マルチフィラメントは、1種類の合成繊維から構成されていてもよいし、複数の合成繊維から構成されていてもよいが、1種類の合成繊維から構成されていることが好ましい。各単糸がそれぞれ異なる合成繊維から構成されている非原着合成繊維マルチフィラメントは、プリント染色の染料に対する前記各単糸間の染色能の相違に基づく柄模様が生じ、プリント染色時に意図していた色相及びデザインを忠実にパイル面に表すことができないおそれがある。
【0026】
非原着合成繊維マルチフィラメントとしては、プリント染色に用いられる染料に対する吸収能が極めて高い繊維を用いることが好ましい。
例えば、プリント染色時に酸性染料が用いられる場合には、非原着合成繊維マルチフィラメントは、カチオン性基を有するポリマーを含む合成繊維が用いられ、また、プリント染色時に塩基性染料が用いられる場合には、アニオン性基を有するポリマーを含む合成繊維が用いられる。
本発明では、プリント染色時に酸性染料を用いることが好ましいことから、非原着合成繊維マルチフィラメントは、カチオン性基を有するポリマーを含む合成繊維から構成されていることが好ましい。
【0027】
非原着合成繊維マルチフィラメントを形成する素材としては、染着座席が酸性染料に染まるカチオン性基(例えば、NH末端基)を有するポリマーなどが挙げられる。前記ポリマーの基本骨格としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどが挙げられ、好適にはポリアミドである。非原着合成繊維マルチフィラメントは、原着合成繊維マルチフィラメントと同様に、上記各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0028】
原着合成繊維マルチフィラメント及び非原着合成繊維マルチフィラメントの各単糸の断面構造は、かさ高性の点から、異形断面構造及び/又は中空構造であることが好ましい。異形断面構造とは、断面の形状が円形以外であることをいい、例えば、断面三角形、断面扁平状、断面Y字状、断面多角形などが挙げられる。特に、上記各単糸は、それぞれ断面四角形の中空糸が好ましい。断面四角形の中空構造の糸は、かさ高いパイル41を形成できる上、外形に凹部がないので、ほこりやごみが付着し難く、一方、中空部によって光が乱反射されるので、視覚的にも汚れが目立ち難い。
【0029】
上記捲縮糸2は、例えば、原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントを形成する各組成物をそれぞれ独立して紡糸し、延伸及び捲縮した後、両フィラメントを撚り加工することによって得ることができる。
【0030】
[基布]
上記基布3は、捲縮糸2をタフトできるものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。基布3としては、例えば、織布、不織布、編み布などのシート状のものが挙げられる。基布3を構成する繊維の素材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの合成繊維;セルロース、ウールなどの天然繊維;レーヨンなどの半合成繊維などが挙げられる。中でも、特に熱安定性に優れ、製造時に変形しにくいことから、合成繊維を用いることが好ましい。前記繊維は、1種単独で、または2種以上を混紡してもよい。特に、基布3として、ポリエステル不織布、ポリアミド不織布、ポリエステルとポリアミドの混合不織布、ポリプロピレン不織布などを用いることができる。中でも、強度及び寸法安定性に優れることから、ポリエステル不織布を用いることが好ましい。また、基布3は、SBR系、MBR系、PVC系ラテックス、EVA系のプレコート剤でコーティングされたものを用いてもよい。
【0031】
[裏打ち層]
裏打ち層5は、パイル生機4と裏面層7を接合するために、基布3の裏面に設けられる。
裏打ち層5は、通常、合成樹脂から構成される。この合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂などのPVC系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのEVA系、APP樹脂などのAPP系、ポリウレタンなどのPUR系などが挙げられる。加工性、耐久性、及びコスト面などから、ポリ塩化ビニル樹脂などのPVC系を用いることが好ましい。
裏打ち層5には、必要に応じて、カーボンブラックなどの各種顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの充填剤、安定剤、老化防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。
裏打ち層5の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5mm〜5.0mmであり、好ましくは1.0mm〜3.0mmである。裏打ち層5の厚みが厚すぎると、その作製が困難となり、一方、裏打ち層5が薄すぎると、パイル生機4と裏面層7を十分な強度で接着できないおそれがある。
【0032】
[補強材]
補強材6は、寸法安定性等の物性安定性をカーペット1に付与するため、裏打ち層5と裏面層7の境界近辺に設けられる。
補強材6としては、例えば、ガラス、ポリエステル、ポリアミドなどの無機繊維若しくは合成繊維の織布又は不織布などが挙げられる。特に、寸法安定効果に優れていることから、補強材6として、ガラス繊維製の不織布又は織布などが好適に使用できる。
【0033】
[裏面層]
裏面層7は、カーペット1の最裏面を構成する層である。
裏面層7は、通常、合成樹脂又はゴムから構成される。この合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、上記で例示したような、PVC系、EVA系、APP系、PUR系などが挙げられる。加工性、耐久性、及びコスト面などからポリ塩化ビニル樹脂などのPVC系を用いることが好ましい。
また、裏面層7内の中間位置、上方位置、又は下方位置には、寸法安定性等の物性安定性をカーペット1に付与するため、第2の補強材9が設けられていてもよい。第2の補強材9としては、従来公知のガラスマット、ポリエステル不織布又は織布、その他の不織布や織布などが挙げられる。
裏面層7の厚みは、通常、1.0mm〜3.0mmであり、好ましくは1.5mm〜2.0mmである。裏面層7の厚みが厚すぎると、その作製が困難となり、一方、裏面層7が薄すぎると、不陸吸収効果及び衝撃吸収性能が低下する。
【0034】
[カーペットの形状]
本発明のカーペット1の形状は、特に限定されず、例えば、平面視矩形状に裁断された、いわゆるタイルカーペット態様や、ロール状に巻かれて提供される長尺のカーペット態様などが挙げられる。
床面の施工の容易性という観点から、本発明のカーペット1は、平面視矩形状などの所定形状のタイルカーペットであることが好ましく、特に、平面視正方形のタイルカーペットであることが好ましい。通常の建築物はモジュール単位で設計且つ構築されているので、正方形のタイルカーペットは施工し易い。
【0035】
また、上記タイルカーペットが矩形状である場合、その一辺は、その一辺に隣り合う辺の長さに対して1倍〜5倍であり、好ましくは1倍〜4倍である。前記一辺の長さと前記一辺に隣り合う辺の長さが大きく異なる場合には、意匠性付与の自由度や斬新な意匠を付与することが容易になるが、施工時のハンドリング性や敷設作業が煩雑となる。
より具体的な数値を示せば、タイルカーペットが正方形である場合のその一辺の長さ及びタイルカーペットが長方形状である場合のその長辺の長さは、各々、好ましくは100mm〜1500mmであり、より好ましくは250mm〜1000mmである。
カーペット1の全体厚みは、施工場所に合わせて適宜設定することができるが、通常、5.0mm〜15.0mmであり、好ましくは6.0mm〜10.0mmである。カーペット1の全厚が厚すぎると、その製造が困難であり、全厚が薄すぎると、十分な強度を有さず、さらに、不陸吸収効果及び衝撃吸収性能が低下する。
【0036】
[本発明のカーペットの製造方法]
本発明のカーペット1は、原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸2を基布3にタフトすることにより、パイル生機4を作製するタフティング工程と、パイル生機4の裏面にバッキング層8を作製する裏打ち工程と、パイル生機4をプリント染色することによって、前記パイル生機4のパイル面に所望の模様を表すプリント染色工程と、を有する。
前記プリント染色工程は、前記バッキング層8の作製前又は作製後のいずれの時期に行ってもよい。
【0037】
・タフティング工程
タフティング工程は、基布3に上記捲縮糸2をタフトすることにより、パイル生機4を得る工程である。捲縮糸2のタフトは、従来公知のタフティング機を用いて実施できる。
1インチ当たりのステッチ数及びゲージ数は、製品のカバリングやスタイリングの観点から設定できる。前記ステッチ数は、例えば、8/inch〜18/inchであり、ゲージ数は、1/8〜1/20であることが好ましい。
また、目付けは、500g/m以上であることが好ましい。
【0038】
パイル41は、マルチレベルループパイル又はレベルループパイルのようなループパイルでもよいし、ループを切断したカットパイルでもよい。
好ましくは、パイル形状は、マルチレベルループパイルである。マルチレベルループパイルを有するパイル生機4は、各パイル41が高低差を有するのでパイル面に凹凸が生じ、この凹凸形状と捲縮糸2の染色が相俟って、色彩の深みが醸し出される。
【0039】
・プリント染色工程
プリント染色工程は、パイル生機4をプリント染色することによって、パイル面に所望の模様を表す工程である。
プリント染色とは、未加工のパイル生機又は連続染色やウィンス染色で下地を着色若しくは精練したパイル生機に、さらにデザイン性や意匠性を付与するための染色を行う手法である。プリント染色は、込み入った模様をパイル生機の任意の場所に容易に形成できる上、多量の染料を使わなくてすむため環境に優しいといった利点を有する。
具体的には、プリント染色は、パイル生機4に、ジェットプリント、インクジェット、フラットスクリーン、ロータリースクリーンなどの方法で印捺により柄をパターニングするものである。プリント染色により、パイル生機4にデザイン性や意匠性を付与できる。
【0040】
プリント染色としては、色・柄の設定の自由度が高く複雑なデザインを形成できる、インクジェットプリント方式が特に好適に用いられる。
インクジェットプリント方式は、ジェットプリント染色又はインクジェット染色を含む染色方式である。
【0041】
ジェットプリント染色は、パイル生機4やカーペット1などのカーペット素材を長手方向に送りつつ、ノズルを往復移動させて多数のノズルから染料液を前記カーペット素材の表面に噴射して染色する方法である。このため、インクジェットプリント方式によれば、前記カーペット素材の表面の正確な位置に染料を付与することができる。例えば、所定数のジェットノズルを配列したジェット染色パターニングアプリケーターに前記カーペット素材を通過させることによって染色を行う。
【0042】
インクジェット染色も、上記ジェットプリント染色と同様に染料液(染料インク)をノズルから噴射することにより、前記カーペット素材の表面に柄模様を形成する方法であるが、ジェットプリント染色とはインクジェットプリンターを用いる点において異なっている。インクジェットプリンターは、予め記憶させた情報に基づいて、染料液をノズルから液滴化して吐出し、吐出した液を、前記カーペット素材のパイル41に付着させて染色する装置である。インクジェットプリンターの具体的な方式としては、静電吸引方式、超音波振動式、ピエゾ素子方式などがあり、適宜選択して採用することが出来る。
インクジェット染色は、デザインソフトウェアを使用することにより、無限の種類と色彩のデザイン・パターンをパイル生機4に付与することができる。
【0043】
前記染料液に使用される染料としては、一般的な染色工業における区分によると、直接染料、酸性染料、分散染料、反応性染料、蛍光染料などがあるが、これらは、被染体となる捲縮糸2の素材により適宜選定される。また、顔料を分散した顔料インクを染料液として用いてもよい。
染料液の付与量は、パイル生機4の構造や捲縮糸2の素材にもよるが、パイル生機4の目付けが500g/m〜1,200g/mの場合、好ましくは1,000g/m〜4,000g/m、より好ましくは1,200g/m〜2,000g/mである。染料液の付与量が少ない場合、染色斑が発生するおそれがあり、一方、それが多い場合、滲みが生じるおそれがある。
インクジェットプリント染色に使用される染料液は、柄模様の品位に大きく影響することから、染料と糊剤の選定、並びに、粘度、表面張力及びpH等を最適な値に調整することが好ましく、また必要に応じて、分散剤、消泡剤等を適宜添加してもよい。
【0044】
プリント染色によって得られた色柄は、染料液をスチームにより湿熱処理することによって固着した後、洗浄し、乾燥して仕上げられる。
湿熱処理とは、スチーミングにより染料を発色固着する処理を言い、プリント染色において通常行われている処理である。
また、洗浄(ソーピング)とは、染料が捲縮糸2に固着された後、残存した染料、薬品、助剤、糊剤などを完全に洗い落とすことであり、プリント染色において通常行われている処理である。洗浄工程を行うことにより、色相、鮮明度、堅牢度、生地の風合いをより完全に仕上げることができる。
【0045】
なお、先に連続染色又はウィンス染色によってパイル生機4を染色した後、上記プリント染色を行ってもよい。このように先に染色した後にプリント染色することにより、プリント染色を施さない部分の色彩を安定化できる。また、連続染色又はウィンス染色したパイル生機4にバッキング層8を設けてカーペット1を作製した後、このパイル生機4をプリント染色してもよい。
【0046】
非原着合成繊維マルチフィラメントとプリント染色の染料が結合し、パイル面に所望の色模様が表れる。
なお、プリント染色時に原着合成繊維マルチフィラメントも染まっても、上述のように予め濃色に着色された原着合成繊維マルチフィラメントは、殆ど色変化しない。
【0047】
このプリント染色を行えば、様々な柄模様(例えば、込み入った模様など)をパイル面に表すことができ、さらに、プリント染色は少量の染料で染色できるため環境に優しいという利点もある。
プリント染色により、パイル面に、様々な色彩及びスタイル又はモチーフの様々なパターンを表すことができる。前記スタイル又はモチーフとしては、花、葉、装飾、幾何学的デザインなどが例示されるが、これに限られない。
【0048】
・裏打ち工程
裏打ち工程は、上記パイル生機4の裏面に、バッキング層8を形成する工程である。
裏打ち工程は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、コンベア上にポリ塩化ビニル樹脂ペーストなどの裏面層形成材料を塗布して裏面層7を形成し、その上に補強材6を積層し、さらに補強材6の上にポリ塩化ビニル樹脂ペーストなどの裏打ち層形成材料を塗工して裏打ち層5を形成することによって、バッキング層8を得る。最後に、パイル生機4を前記バッキング層8の上に積層して加熱してポリ塩化ビニル樹脂を硬化させ、全体を一体化させることにより、カーペット1を得ることができる。
【0049】
他の方法としては、パイル生機4の裏面に、ポリ塩化ビニル樹脂ペーストなどの裏打ち層形成材料を塗工して裏打ち層5を形成し、この裏打ち層5の裏面に補強材6を積層し、この補強材6の上にポリ塩化ビニル樹脂ペーストなどの裏面層形成材料を塗工して裏面層7を形成し加熱することにより、バッキング層8を得る。最後に、パイル生機4を前記バッキング層8の上に積層して全体を一体化させることにより、カーペット1を得ることができる
バッキング層8の形成は、通常、パイル生機4へのプリント染色前、又は、プリント染色後に行われる。
このようにして得られたカーペット1は、必要に応じて所定の形状に裁断された後、保管及び運搬に供される。
【0050】
本発明のカーペット1の製造方法によれば、プリント染色によって非原着合成繊維マルチフィラメントが染色されるので、非原着合成繊維マルチフィラメントの種類や撚り数などに依存せず、プリント染色の自由なデザインに基づいて、パイル面に所望の模様を表すことができる。
特に、インクジェットプリント方式によって非原着合成繊維マルチフィラメントを有するパイル生機4をプリント染色することにより、色模様の自由度が高く、原着合成繊維マルチフィラメントの濃色と相俟って統一した質感を有しつつ、多様な模様をパイル生機4の表面に表すことができる。
さらに、多色のインクジェットプリント方式によるプリント染色を行うことによって、原着合成繊維マルチフィラメントの濃色と相俟って、色相のコントラストに優れた、色鮮やかな模様をパイル生機4の表面に表すことができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
図1に示すような層構成のタイルカーペット1を作製した。その作製手順は、下記の通りである。
捲縮糸2として、1本の原着合成繊維マルチフィラメントと2本の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなり且つこれらが無交絡で片撚りされた加工糸(ノンセットタイプ)を用いた。
【0053】
原着合成繊維マルチフィラメントは、SO基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントで、非原着合成繊維マルチフィラメントは、NH基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントで、これらから形成された捲縮糸2は、太さ4,155dtexであった。
なお、原着合成繊維マルチフィラメントは、黒色に着色され、非原着合成繊維マルチフィラメントは、無着色のものを用いた。
【0054】
上記捲縮糸2を、基布3(ユニチカ株式会社製、商品名「マリックス」)にタフトすることにより、パイル生機4を作製した。捲縮糸2のタフトは、1/10ゲージタフティング機を用い、目付け800g/m、パイル高さ2.5〜4.0mmのマルチレベルループのパイル生機4を作製した。
次に、このパイル生機4を、連続染色機によって精練し、パイル生機4から、プリント染色時の染色を阻害するような繊維油剤や汚れを除去した。
コンベア上に、第2の補強材9としてポリエステル樹脂製ネット(倉敷紡績株式会社製、商品名「クレネット」)を略中間位置に配置した厚み約1.5mmのペースト状ポリ塩化ビニル樹脂からなる裏面層7を形成し、その裏面層7の上に、補強材6としてガラスマット(目付量40g/m)、さらにその上にポリ塩化ビニル樹脂ペーストよりなる約2.0mmの裏打層5を積層し、その上に前記パイル生機4を積層した。その後、全体を加熱してポリ塩化ビニル樹脂を硬化させた。
このようにして得られたカーペット1を、裁断機によってタフト方向及びその直角方向に500mm角に裁断することにより、正方形状に形成した。
【0055】
このカーペット1のパイル面に、コンピュータ制御のジェットプリント染色装置(Zimmer社製、商品名「クロモジェットM 2500/384/6c」)を用いて染料液を噴射することにより、カーペット1を所定の色柄にプリント染色した。
なお、染料液の組成は、0.8質量部の合成糊剤(TANATEX社製、商品名「TANAPRINT ST160 Conc.」)、0.1質量部の金属錯塩酸性染料(ダイスター社製、商品名「ISOLAN」)、0.2質量部のクエン酸、及び98.9質量部の水からなる。
【0056】
染色後のカーペットのパイル面は、表面のカバリングが良く、プリント染色により染色された非原着合成繊維マルチフィラメントに、原着合成繊維マルチフィラメントの色素(黒色色素)に基づく汚染がなく、原着合成繊維マルチフィラメントの原色(黒色)が、好適なアクセントになっていた。また、無交絡の捲縮糸を用いることによって、原着合成繊維マルチフィラメントの色彩と非原着合成繊維マルチフィラメントの色彩が余り混じらず、色相のコントラストが強調され、パイル面に立体感のある模様が表されていた。
このようなカーペットは、オフィス、空港、店舗などのコントラクトカーペットとして好適であると思われる。
【0057】
[実施例2]
実施例1の捲縮糸に代えて下記の捲縮糸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るカーペットを作製した。
実施例2では、捲縮糸2として、染色性の異なる複数種の非原着合成繊維マルチフィラメントと1種の原着合成繊維マルチフィラメントとからなり且つこれらが無交絡で片撚りされた加工糸(ノンセットタイプ)を用いた。原着合成繊維マルチフィラメントは、SO基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントで、非原着合成繊維マルチフィラメントは、NH基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントとSO基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントとからなり、これらから形成された捲縮糸2は、太さ4,155dtexであった。
なお、原着合成繊維マルチフィラメントは、黒色に着色され、非原着合成繊維マルチフィラメントは、無着色のものを用いた。
【0058】
この捲縮糸2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、パイル生機4、裏打ち層5及び裏面層7などを形成した後、裁断して500mm角のカーペットを作製した。このカーペットを、実施例1と同様にしてプリント染色した。
染色後のカーペットのパイル面は、表面のカバリングが良く、プリント染色により染色された非原着合成繊維マルチフィラメントに、原着合成繊維マルチフィラメントの色素(黒色色素)に基づく汚染がなく、原着合成繊維マルチフィラメントの原色(黒色)が、好適なアクセントになっていた。また、無交絡の捲縮糸を用いることによって、原着合成繊維マルチフィラメントの色彩と非原着合成繊維マルチフィラメントの色彩が余り混じらず、色相のコントラストが強調され、パイル面に立体感のある模様が表されていた。
もっとも、SO基を有する非原着合成繊維マルチフィラメントがプリント染色の染料によって充分に染色されなかったため、色柄が若干不鮮明となっており、色相のコントラストの強調が実施例1に比べてやや弱かった。
ただし、実施例2の染色後のカーペットも、色柄によっては、オフィス、空港、店舗などのコントラクトカーペットとして好適であると思われる。
【0059】
[比較例]
実施例1の捲縮糸に代えて下記の捲縮糸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例に係るカーペットを作製した。
比較例では捲縮糸2として、1本の非原着合成繊維マルチフィラメントよりなる第1の非原着合成繊維マルチフィラメントと2本の非原着合成繊維マルチフィラメントよりなる第2の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなり且つこれら第1及び第2の非原着合成繊維マルチフィラメントが無交絡で片撚りされた加工糸(ノンセットタイプ)を用いた。
第1の非原着合成繊維マルチフィラメントとしては、SO基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントを1本用い、第2の非原着合成繊維マルチフィラメントとしては、NH3基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)製の太さ1,385dtexのマルチフィラメントを2本用い、これら3本のマルチフィラメントから形成された捲縮糸2は、太さ4,155dtexであった。
なお、第1の非原着合成繊維マルチフィラメント及び第2の非原着合成繊維マルチフィラメントは何れも無着色のものを用いた。
【0060】
この捲縮糸2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、パイル生機4、裏打ち層5及び裏面層7などを形成した後、裁断して500mm角のカーペットを作製した。このカーペットを、実施例1と同様にしてプリント染色した。
染色後のカーペットは、実施例1及び2のような原着合成繊維マルチフィラメントの原色(黒色)のアクセントがないため、実施例1及び2のカーペットに比べて色相のコントラストの強調が不充分で、パイル面の模様も立体感に乏しかった。また、染色後のカーペットのパイル面は、SO基を有する非原着合成繊維マルチフィラメントがプリント染色の染料によって充分に染色されなかったため、色柄にかすれが見られる状態であり、さらに、前記のように原着合成繊維マルチフィラメントのアクセントがないので、色柄がより不鮮明な印象となっていた。
【符号の説明】
【0061】
1 カーペット
2 捲縮糸
3 基布
4 パイル生機
41 パイル
5 裏打ち層
6 補強材
7 裏面層
8 バッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸を基布にタフトしたパイル生機を有し、
前記パイル生機をプリント染色することによって、前記パイル生機のパイル面に所望の模様が表されているカーペット。
【請求項2】
前記非原着合成繊維マルチフィラメントが、1種類の合成繊維からなる請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記原着合成繊維マルチフィラメントが、アニオン性基を有するポリマーを含む合成繊維からなり、前記非原着合成繊維マルチフィラメントが、カチオン性基を有するポリマーを含む合成繊維からなる請求項1又は2に記載のカーペット。
【請求項4】
前記原着合成繊維マルチフィラメントと非原着合成繊維マルチフィラメントとが無交絡である請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項5】
前記捲縮糸が、撚り回数30回/m〜100回/mの撚加工糸である請求項1〜4のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項6】
原着合成繊維マルチフィラメントと可染性の非原着合成繊維マルチフィラメントとからなる捲縮糸を基布にタフトすることにより、パイル生機を作製する工程と、
前記パイル生機の裏面にバッキング層を作製する工程と、を有するカーペットの製造方法において、
前記バッキング層の作製前又は作製後に、
前記パイル生機をプリント染色することによって、前記パイル生機のパイル面に所望の模様を表す工程を有するカーペットの製造方法。
【請求項7】
前記プリント染色がインクジェットプリント方式によって行われる請求項6に記載のカーペットの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−165990(P2012−165990A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31618(P2011−31618)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】