ガイド治具及びこれを用いた締結方法
【課題】可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具及びこれを用いた締結方法を提供すること。
【解決手段】被締結部2にネジ部品3を導くための筒状のガイド治具1。ガイド治具1は、後端から先端にかけて貫通する貫通路11を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部12を有する。円筒状先端部12の先端面121は、軸方向に直交する平面上に形成されている。円筒状先端部12には、先端面121から一部を切り欠いた切欠部13が形成されている。
【解決手段】被締結部2にネジ部品3を導くための筒状のガイド治具1。ガイド治具1は、後端から先端にかけて貫通する貫通路11を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部12を有する。円筒状先端部12の先端面121は、軸方向に直交する平面上に形成されている。円筒状先端部12には、先端面121から一部を切り欠いた切欠部13が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締結部にネジ部品を導くための筒状のガイド治具及びこれを用いたネジ部品の締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置などの製品を組み立てる際に、その構成部品を互いに固定するに当っては、ネジ部品を用いて複数の構成部品を互いに締結するという作業を行うことがある。そして、被締結部が奥まった位置にあるような場合などにも、ネジ部品を容易に被締結部に締結することができるよう、たとえば、特許文献1に示されるような長尺の締結工具を用いることがある。
【0003】
ところが、被締結部が奥まった位置にあるような場合などにおいて、被締結部の周辺にワイヤーなどの移動可能な障害物(以下、適宜「可動障害物」という。)が配置していることがある。そして、場合によっては、このワイヤーが被締結部又はその近傍に覆いかぶさることがある。このとき、そのままの状態でネジ部品を被締結部に締結すると、ネジ部品がワイヤーを噛み込んでしまうおそれがある。これにより、ワイヤーに損傷を与えるおそれがあり、場合によっては断線、短絡等の原因となるおそれがある。また、被締結部へのネジ部品の締結が確実に行われないおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−94347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具及びこれを用いた締結方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被締結部にネジ部品を導くための筒状のガイド治具であって、
該ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、
該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、
かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されていることを特徴とするガイド治具にある(請求項1)。
【0007】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記ガイド治具は上記貫通路を有する。そのため、ガイド治具の円筒状先端部の先端面を被締結部に当接させた状態で、ネジ部品を貫通路に挿入し、その後端から先端へ向かって移動させることにより、容易にネジ部品を被締結部に導くことができる。
【0008】
また、上記ガイド治具は、上記円筒状先端部に上記切欠部を形成してなる。そのため、ワイヤ等の可動障害物が被締結部付近に存在している場合、可動障害物を切欠部に配置するようにガイド治具を被締結部に当接させることができる。そして、この状態から、ガイド治具をその軸方向を中心として回動させることにより、切欠部に位置していた可動障害物が円筒状先端部の外周面に押されてその外周へ移動する。
【0009】
これにより、可動障害物はガイド治具の貫通路から外れた位置に移動した状態となるため、この状態から貫通路を通してネジ部品を被締結部へ供給することにより、可動障害物に妨げられることなく、被締結部にネジ部品を螺合させることができる。そして、被締結部とネジ部品との間への可動障害物の噛み込みを確実に防ぐことができる。その結果、可動障害物の損傷を防ぎ、また、被締結部へのネジ部品の締結を確実に行うことができる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、移動可能な障害物である可動障害物が周辺に存在している被締結部にネジ部品を螺合させて締結する際に、筒状のガイド治具を用いて上記被締結部に上記ネジ部品を導いて、該ネジ部品を被締結部に締結するに当り、
上記ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されており、
上記ガイド治具の上記円筒状先端部の先端面を上記被締結部に当接させると共に、上記可動障害物を上記切欠部に配置する当接工程と、
次いで、上記ガイド治具を、その軸方向を中心として回動させることにより、上記可動障害物を上記円筒状先端部の外周へ移動させる回動工程と、
次いで、上記ネジ部品を上記ガイド治具の上記貫通路を通して上記被締結部へ導くと共に、該被締結部に螺合して締結する締結工程とを行うことを特徴とする締結方法にある(請求項6)。
【0012】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記締結方法においては、上記当接工程と上記回動工程とを有する。そのため、上記可動障害物が上記被締結部付近に存在していたとしても、可動障害物を、ネジ部品と被締結部との間の領域、すなわちガイド治具の貫通路の外側へ移動させることができる。これにより、上記締結工程において、貫通路を通してネジ部品を被締結部へ供給することにより、可動障害物に妨げられることなく、被締結部にネジ部品を螺合させることができる。そして、被締結部とネジ部品との間への可動障害物の噛み込みを確実に防ぐことができる。その結果、可動障害物の損傷を防ぎ、また、被締結部へのネジ部品の締結を確実に行うことができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができる締結方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記第1の発明(請求項1)及び第2の発明(請求項6)において、上記ネジ部品としては、たとえば、ボルト、ナット、ビス等がある。
また、切欠部は、円筒状先端部の全周に対して、例えば30〜50%の周方向領域に形成されていることが好ましい。また、切欠部の軸方向長さは、たとえば、円筒状先端部の外径の60〜80%とすることが好ましく、また、3〜10mmとすることが好ましい。
【0015】
また、上記可動障害物としては、たとえば、被覆電線等のワイヤー、ゴム製あるいは樹
脂製の配管チューブ等がある。
なお、本明細書においては、上記ガイド治具を被締結部に当接させる側を先端とし、その反対側を後端とする。
【0016】
また、上記切欠部の周方向端部には、面取り部が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ガイド治具によって上記可動障害物を移動させる際に、可動障害物に損傷を与えることを防ぐことができる。
上記面取り部は、たとえば、R面あるいはC面とすることができる。
【0017】
また、上記ガイド治具は、上記円筒状先端部よりも後端側に、上記切欠部の周方向の形成位置を示すマーキングを有することが好ましい(請求項3)。
これにより、作業中、ガイド治具の円筒状先端部が作業者から見えない位置にあるときも、ガイド治具の周方向における切欠部の位置を、作業者が把握することができる。これにより、可動障害物を切欠部に配置するようにガイド治具を被締結部に当接させる作業が容易となる。
【0018】
また、上記円筒状先端部の後端に、上記ガイド治具の外径が変化する段部が形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ガイド治具を被締結部に当接させる際に、ガイド治具の先端部が作業者から見えなくても、上記段部によって、ガイド治具の軸方向位置を把握することができる。これにより、ガイド治具が被締結部に確実に当接しているか否か、すなわち、ガイド治具の先端面と被締結部との間に、可動障害物が存在していないか否かを把握することができる。
【0019】
また、上記円筒状先端部よりも後端側にハンドル部が形成されており、該ハンドル部の表面は凹凸表面となっていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記ハンドル部によって、上記ガイド治具を回動させることが容易となる。
【0020】
次に、上記第2の発明(請求項6)において、上記当接工程における上記ガイド治具の回動角度は、略180°であることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記可動障害物を、円筒状先端部の外側へ確実に移動させることができる。
【0021】
また、上記被締結部の手前には開口部を設けた障壁が存在しており、該障壁の上記開口部に上記ガイド治具を挿通して、上記円筒状先端部を上記被締結部に当接させながら、上記ネジ部品を上記被締結部に締結することが好ましい(請求項8)。
この場合には、本発明の作用効果を効果的に発揮することができる。すなわち、上記障壁が存在するために、上記可動障害物が被締結部付近に存在する際に、仮に上記ガイド治具を用いなければ、可動障害物を噛み込まないようにネジ部品を被締結部に締結することが困難となるおそれがある。そこで、上記のごとく上記ガイド治具を用いてネジ部品を被締結部に締結することにより、上記のような障壁が存在する場合にも、可動障害物を噛み込むことなく、ネジ部品を被締結部に締結することができる。
【0022】
また、上記可動障害物は、ワイヤーであることが好ましい(請求項9)。
この場合には、可動障害物であるワイヤーを噛み込むことなく、ネジ部品を被締結部に締結することができる。すなわち、一般的に、被締結部の付近にワイヤーが存在する場合にネジ部品を被締結部に締結しようとすると、ワイヤーをネジ部品と被締結部との間に噛み込んでしまうおそれがある。これにより、たとえば、ワイヤーの断線の原因となったり、ワイヤーの被覆チューブが破れて短絡不良の原因となったりするおそれがある。
そこで、かかる場合に本発明を適用することにより、ワイヤーの噛み込みを効果的に防ぎ、短絡や断線等の不具合を生じることなく、ネジ部を被締結部に確実に締結することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の実施例にかかるガイド治具及びこれを用いた締結方法につき、図1〜図13を用いて説明する。
本例のガイド治具1は、図1に示すごとく、被締結部2にネジ部品3を導くための筒状の治具である。
【0024】
ガイド治具1は、図2、図3に示すごとく、後端から先端にかけて貫通する貫通路11を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部12を有する。
円筒状先端部12の先端面121は、軸方向に直交する平面上に形成されている。また、円筒状先端部12には、先端面121から一部を切り欠いた切欠部13が形成されている。
【0025】
円筒状先端部12の後端には、ガイド治具1の外径が変化する段部141が形成されており、該段部141の後端側に、円筒状先端部12よりも外径の大きい中径部14が形成されている。さらに、中径部14よりも後端側にはハンドル部15が形成されている。そして、ハンドル部15の表面は凹凸表面151となっている。本例においては、凹凸表面151は、ローレット加工により形成された細かいメッシュ状の溝によって構成されている。また、ハンドル部15は、上記中径部14よりもさらに外径が大きい。
【0026】
また、図4に示すごとく、円筒状先端部12における切欠部13の周方向端部には、面取り部131が形成されている。本例においては、面取り部131は、略半円状の円弧状の曲面(R面)となっている。
また、切欠部13は、円筒状先端部12の全周の約3分の1、すなわち中心角θが略120°の角度分の周方向領域に形成されている。また、切欠部13の軸方向長さLは、たとえば、円筒状先端部12の外径Dの60〜80%とすることが好ましく、また、3〜10mmとすることが好ましい。
【0027】
また、ガイド治具1における貫通路11は、少なくともネジ部品3の最大外径よりも内径を大きく形成されている。本例においては、後述するネジ部品3を回動させる治具であるボックスビット4の最大外径よりも貫通路11の内径は大きい。図3に示すごとく、貫通路11における後端部には、後端側へ向かうに連れて拡径する後端テーパ部111が形成されている。そして、この後端テーパ部111よりも先端側においては、貫通路11は、内径が一定のストレート状に形成されている。
【0028】
また、ガイド治具1は、円筒状先端部12よりも後端側に、切欠部13の周方向の形成位置を示すマーキング16を有する。すなわち、マーキング16は、図2に示すごとく、ハンドル部15の後端部、すなわちガイド治具1の後端部に形成されている。
【0029】
本例において、上記ネジ部品3は六角ボルトである。
また、上記被締結部2は、図1、図5、図7に示すごとく、一対の端子部21、22を重ね合わせると共に雌ネジ部23を設けてなる。端子部21、22は、それぞれネジ部品3を挿通するための挿通孔211、221を設けてなり、これらの挿通孔211、221を重ね合わせるように、端子部21、22が重ね合わされている。
【0030】
一方の端子部21は、電力変換装置の複数の半導体モジュールの電極端子に接続されるバスバーの端子であり、他方の端子部22はコンデンサの端子である。複数の半導体モジュールからなる電力部は、第1のケース51内において組み立てられている。そして、端子部21の近傍をワイヤー6の一部が通過している。コンデンサは、第2のケース52内に収納されている。
【0031】
そして、図1に示すごとく、電力部を収納した第1のケース51と、コンデンサを収納したケース52とを組付けて、電力変換装置を組み立てる際に、電力部における端子部21と、コンデンサにおける端子部22とを、ネジ部品3によって締結する。この締結時に、上述した本例のガイド治具1を用いる。
【0032】
すなわち、上記のごとく、移動可能な障害物である可動障害物としてワイヤー6が周辺に存在している被締結部2にネジ部品3を螺合させて締結する際に、ガイド治具1を用いる。そして、ガイド治具1によって、被締結部2にネジ部品3を導いて、ネジ部品3を被締結部2に締結する。
このとき、以下の当接工程、回動工程、締結工程とを順次行う。
【0033】
当接工程においては、図5、図6に示すごとく、ガイド治具1の円筒状先端部12の先端面121を被締結部2に当接させると共に、ワイヤー6を切欠部13に配置する。
次いで、回動工程においては、図7、図8に示すごとく、ガイド治具1を、その軸方向を中心として回動させることにより、ワイヤー6を円筒状先端部12の外周へ移動させる。
次いで、締結工程においては、図9、図10に示すごとく、ネジ部品3をガイド治具1の貫通路11を通して被締結部2へ導くと共に、該被締結部2に螺合して締結する。
【0034】
当接工程におけるガイド治具1の回動角度は、図6、図8に示すごとく、略180°である。
また、図5、図7、図9に示すごとく、被締結部2の手前には開口部531を設けた障壁53が存在している。この障壁53は、上述した電力変換装置のケース(第1のケース51)の一部である(図1参照)。そして、この障壁53の開口部531にガイド治具1を挿通して、円筒状先端部12を被締結部2に当接させながら、ネジ部品3を被締結部2に締結する。
【0035】
また、上記締結工程においては、図11〜図13に示すようなボックスビット4を用いて、ネジ部品3を保持すると共に、被締結部2にネジ部品3を螺合させる。ボックスビット4は、その先端部に、略六角柱形状の凹部410を設けた保持部41を有する。そして、保持部41の後方に柄部42が設けてある。また、凹部410の底面にはマグネット43が配設されている。これにより、磁性体からなるネジ部品3を磁力によって凹部410内に吸引しておくことができる。
【0036】
上記締結工程においては、図13に示すごとく、ネジ部品3を保持部41に保持した状態で、ガイド治具1の貫通路11に後端側からネジ部品3を挿通して、被締結部2へ到達させる。そして、ボックスビット4を、軸方向を中心に回動させることにより、図9に示すごとく、ボックスビッド4に保持されたネジ部品3を被締結部2の雌ネジ部23に螺合させていく。これにより、ネジ部品3を被締結部2に締結し、一対の端子部51、52を締結する。
その後、ボックスビット4を後退させ、さらにガイド治具1を後退させる。
【0037】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記ガイド治具1は上記貫通路11を有する。そのため、ガイド治具1の円筒状先端部12の先端面121を被締結部2に当接させた状態で、ネジ部品3を貫通路11に挿入し、その後端から先端へ向かって移動させることにより、容易にネジ部品3を被締結部2に導くことができる。
【0038】
また、上記ガイド治具1は、円筒状先端部12に切欠部13を形成してなる。そのため、ワイヤー6が被締結部2付近に存在している場合、ワイヤー6を切欠部13に配置するようにガイド治具1を被締結部2に当接させることができる。そして、この状態から、ガイド治具1をその軸方向を中心として回動させることにより、切欠部13に位置していたワイヤー6が円筒状先端部12の外周面に押されてその外周へ移動する(図5〜図8)。
【0039】
これにより、ワイヤー6はガイド治具1の貫通路11から外れた位置に移動した状態となるため、この状態から貫通路11を通してネジ部品3を被締結部2へ供給することにより、ワイヤー6に妨げられることなく、被締結部2にネジ部品3を螺合させることができる。そして、被締結部2とネジ部品3との間へのワイヤー6の噛み込みを確実に防ぐことができる。その結果、ワイヤー6の損傷を防ぎ、また、被締結部2へのネジ部品3の締結を確実に行うことができる。
【0040】
また、図4に示すごとく、切欠部13の周方向端部には面取り部131が形成されているため、ガイド治具1によってワイヤー6を移動させる際に、ワイヤー6に損傷を与えることを防ぐことができる。
また、ガイド治具1は、円筒状先端部12よりも後端側にマーキング16を有する。これにより、作業中、円筒状先端部12が作業者から見えない位置にあるときも、ガイド治具1の周方向における切欠部13の位置を、作業者が把握することができる。これにより、ワイヤー6を切欠部13に配置するようにガイド治具1を被締結部2に当接させる作業が容易となる。
【0041】
また、円筒状先端部12の後端に段部141が形成されている。そのため、ガイド治具1を被締結部2に当接させる際に、ガイド治具1の先端部が作業者から見えなくても、段部141によって、ガイド治具1の軸方向位置を把握することができる。これにより、ガイド治具1が被締結部2に確実に当接しているか否か、すなわち、ガイド治具1の先端面121と被締結部2との間にワイヤー6が存在していないか否かを把握することができる。たとえば、円筒状先端部12が被締結部2に当接したときの段部141が障壁53に当接するように予め設定しておけば、障壁53に対する段部141の位置関係によって、円筒状先端部12が被締結部2に当接しているか否かを把握することができる。
また、ハンドル部15の表面は凹凸表面151となっているため、ハンドル部15によってガイド治具1を回動させることが容易となる。
【0042】
また、上記当接工程におけるガイド治具1の回動角度は、略180°であるため、ワイヤー6を円筒状先端部12の外側へ確実に移動させることができる。
また、被締結部2の手前には開口部531を設けた障壁53が存在しており、障壁53の開口部531にガイド治具1を挿通して、円筒状先端部12を被締結部2に当接させながら、ネジ部品3を被締結部2に締結する。これにより、本発明の作用効果を効果的に発揮することができる。すなわち、上記障壁53が存在するために、ワイヤー6が被締結部2付近に存在する際に、仮にガイド治具1を用いなければ、ワイヤー6を噛み込まないようにネジ部品3を被締結部2に締結することが困難となるおそれがある。そこで、上記のごとくガイド治具1を用いてネジ部品3を被締結部2に締結することにより、上記のような障壁53が存在する場合にも、ワイヤー6を噛み込むことなく、ネジ部品3を被締結部2に締結することができる。
【0043】
以上のごとく、本例によれば、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具及びこれを用いた締結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例における、ガイド治具を用いた締結方法の斜視説明図。
【図2】実施例における、ガイド治具の斜視図。
【図3】実施例における、ガイド治具の一部断面側面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】実施例における、締結方法の当接工程を表す説明図。
【図6】図5のB−B線矢視断面図。
【図7】実施例における、締結方法の回動工程を表す説明図。
【図8】図7のC−C線矢視断面図。
【図9】実施例における、締結方法の締結工程を表す説明図。
【図10】図9のD−D線矢視断面図。
【図11】実施例における、ボックスビットの側面図。
【図12】実施例における、ボックスビットの正面図。
【図13】実施例における、ネジ部品を保持したボックスビットの保持部の断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 ガイド治具
11 貫通路
12 円筒状先端部
121 先端面
13 切欠部
2 被締結部
3 ネジ部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締結部にネジ部品を導くための筒状のガイド治具及びこれを用いたネジ部品の締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置などの製品を組み立てる際に、その構成部品を互いに固定するに当っては、ネジ部品を用いて複数の構成部品を互いに締結するという作業を行うことがある。そして、被締結部が奥まった位置にあるような場合などにも、ネジ部品を容易に被締結部に締結することができるよう、たとえば、特許文献1に示されるような長尺の締結工具を用いることがある。
【0003】
ところが、被締結部が奥まった位置にあるような場合などにおいて、被締結部の周辺にワイヤーなどの移動可能な障害物(以下、適宜「可動障害物」という。)が配置していることがある。そして、場合によっては、このワイヤーが被締結部又はその近傍に覆いかぶさることがある。このとき、そのままの状態でネジ部品を被締結部に締結すると、ネジ部品がワイヤーを噛み込んでしまうおそれがある。これにより、ワイヤーに損傷を与えるおそれがあり、場合によっては断線、短絡等の原因となるおそれがある。また、被締結部へのネジ部品の締結が確実に行われないおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−94347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具及びこれを用いた締結方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被締結部にネジ部品を導くための筒状のガイド治具であって、
該ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、
該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、
かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されていることを特徴とするガイド治具にある(請求項1)。
【0007】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記ガイド治具は上記貫通路を有する。そのため、ガイド治具の円筒状先端部の先端面を被締結部に当接させた状態で、ネジ部品を貫通路に挿入し、その後端から先端へ向かって移動させることにより、容易にネジ部品を被締結部に導くことができる。
【0008】
また、上記ガイド治具は、上記円筒状先端部に上記切欠部を形成してなる。そのため、ワイヤ等の可動障害物が被締結部付近に存在している場合、可動障害物を切欠部に配置するようにガイド治具を被締結部に当接させることができる。そして、この状態から、ガイド治具をその軸方向を中心として回動させることにより、切欠部に位置していた可動障害物が円筒状先端部の外周面に押されてその外周へ移動する。
【0009】
これにより、可動障害物はガイド治具の貫通路から外れた位置に移動した状態となるため、この状態から貫通路を通してネジ部品を被締結部へ供給することにより、可動障害物に妨げられることなく、被締結部にネジ部品を螺合させることができる。そして、被締結部とネジ部品との間への可動障害物の噛み込みを確実に防ぐことができる。その結果、可動障害物の損傷を防ぎ、また、被締結部へのネジ部品の締結を確実に行うことができる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、移動可能な障害物である可動障害物が周辺に存在している被締結部にネジ部品を螺合させて締結する際に、筒状のガイド治具を用いて上記被締結部に上記ネジ部品を導いて、該ネジ部品を被締結部に締結するに当り、
上記ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されており、
上記ガイド治具の上記円筒状先端部の先端面を上記被締結部に当接させると共に、上記可動障害物を上記切欠部に配置する当接工程と、
次いで、上記ガイド治具を、その軸方向を中心として回動させることにより、上記可動障害物を上記円筒状先端部の外周へ移動させる回動工程と、
次いで、上記ネジ部品を上記ガイド治具の上記貫通路を通して上記被締結部へ導くと共に、該被締結部に螺合して締結する締結工程とを行うことを特徴とする締結方法にある(請求項6)。
【0012】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記締結方法においては、上記当接工程と上記回動工程とを有する。そのため、上記可動障害物が上記被締結部付近に存在していたとしても、可動障害物を、ネジ部品と被締結部との間の領域、すなわちガイド治具の貫通路の外側へ移動させることができる。これにより、上記締結工程において、貫通路を通してネジ部品を被締結部へ供給することにより、可動障害物に妨げられることなく、被締結部にネジ部品を螺合させることができる。そして、被締結部とネジ部品との間への可動障害物の噛み込みを確実に防ぐことができる。その結果、可動障害物の損傷を防ぎ、また、被締結部へのネジ部品の締結を確実に行うことができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができる締結方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記第1の発明(請求項1)及び第2の発明(請求項6)において、上記ネジ部品としては、たとえば、ボルト、ナット、ビス等がある。
また、切欠部は、円筒状先端部の全周に対して、例えば30〜50%の周方向領域に形成されていることが好ましい。また、切欠部の軸方向長さは、たとえば、円筒状先端部の外径の60〜80%とすることが好ましく、また、3〜10mmとすることが好ましい。
【0015】
また、上記可動障害物としては、たとえば、被覆電線等のワイヤー、ゴム製あるいは樹
脂製の配管チューブ等がある。
なお、本明細書においては、上記ガイド治具を被締結部に当接させる側を先端とし、その反対側を後端とする。
【0016】
また、上記切欠部の周方向端部には、面取り部が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ガイド治具によって上記可動障害物を移動させる際に、可動障害物に損傷を与えることを防ぐことができる。
上記面取り部は、たとえば、R面あるいはC面とすることができる。
【0017】
また、上記ガイド治具は、上記円筒状先端部よりも後端側に、上記切欠部の周方向の形成位置を示すマーキングを有することが好ましい(請求項3)。
これにより、作業中、ガイド治具の円筒状先端部が作業者から見えない位置にあるときも、ガイド治具の周方向における切欠部の位置を、作業者が把握することができる。これにより、可動障害物を切欠部に配置するようにガイド治具を被締結部に当接させる作業が容易となる。
【0018】
また、上記円筒状先端部の後端に、上記ガイド治具の外径が変化する段部が形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ガイド治具を被締結部に当接させる際に、ガイド治具の先端部が作業者から見えなくても、上記段部によって、ガイド治具の軸方向位置を把握することができる。これにより、ガイド治具が被締結部に確実に当接しているか否か、すなわち、ガイド治具の先端面と被締結部との間に、可動障害物が存在していないか否かを把握することができる。
【0019】
また、上記円筒状先端部よりも後端側にハンドル部が形成されており、該ハンドル部の表面は凹凸表面となっていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記ハンドル部によって、上記ガイド治具を回動させることが容易となる。
【0020】
次に、上記第2の発明(請求項6)において、上記当接工程における上記ガイド治具の回動角度は、略180°であることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記可動障害物を、円筒状先端部の外側へ確実に移動させることができる。
【0021】
また、上記被締結部の手前には開口部を設けた障壁が存在しており、該障壁の上記開口部に上記ガイド治具を挿通して、上記円筒状先端部を上記被締結部に当接させながら、上記ネジ部品を上記被締結部に締結することが好ましい(請求項8)。
この場合には、本発明の作用効果を効果的に発揮することができる。すなわち、上記障壁が存在するために、上記可動障害物が被締結部付近に存在する際に、仮に上記ガイド治具を用いなければ、可動障害物を噛み込まないようにネジ部品を被締結部に締結することが困難となるおそれがある。そこで、上記のごとく上記ガイド治具を用いてネジ部品を被締結部に締結することにより、上記のような障壁が存在する場合にも、可動障害物を噛み込むことなく、ネジ部品を被締結部に締結することができる。
【0022】
また、上記可動障害物は、ワイヤーであることが好ましい(請求項9)。
この場合には、可動障害物であるワイヤーを噛み込むことなく、ネジ部品を被締結部に締結することができる。すなわち、一般的に、被締結部の付近にワイヤーが存在する場合にネジ部品を被締結部に締結しようとすると、ワイヤーをネジ部品と被締結部との間に噛み込んでしまうおそれがある。これにより、たとえば、ワイヤーの断線の原因となったり、ワイヤーの被覆チューブが破れて短絡不良の原因となったりするおそれがある。
そこで、かかる場合に本発明を適用することにより、ワイヤーの噛み込みを効果的に防ぎ、短絡や断線等の不具合を生じることなく、ネジ部を被締結部に確実に締結することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の実施例にかかるガイド治具及びこれを用いた締結方法につき、図1〜図13を用いて説明する。
本例のガイド治具1は、図1に示すごとく、被締結部2にネジ部品3を導くための筒状の治具である。
【0024】
ガイド治具1は、図2、図3に示すごとく、後端から先端にかけて貫通する貫通路11を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部12を有する。
円筒状先端部12の先端面121は、軸方向に直交する平面上に形成されている。また、円筒状先端部12には、先端面121から一部を切り欠いた切欠部13が形成されている。
【0025】
円筒状先端部12の後端には、ガイド治具1の外径が変化する段部141が形成されており、該段部141の後端側に、円筒状先端部12よりも外径の大きい中径部14が形成されている。さらに、中径部14よりも後端側にはハンドル部15が形成されている。そして、ハンドル部15の表面は凹凸表面151となっている。本例においては、凹凸表面151は、ローレット加工により形成された細かいメッシュ状の溝によって構成されている。また、ハンドル部15は、上記中径部14よりもさらに外径が大きい。
【0026】
また、図4に示すごとく、円筒状先端部12における切欠部13の周方向端部には、面取り部131が形成されている。本例においては、面取り部131は、略半円状の円弧状の曲面(R面)となっている。
また、切欠部13は、円筒状先端部12の全周の約3分の1、すなわち中心角θが略120°の角度分の周方向領域に形成されている。また、切欠部13の軸方向長さLは、たとえば、円筒状先端部12の外径Dの60〜80%とすることが好ましく、また、3〜10mmとすることが好ましい。
【0027】
また、ガイド治具1における貫通路11は、少なくともネジ部品3の最大外径よりも内径を大きく形成されている。本例においては、後述するネジ部品3を回動させる治具であるボックスビット4の最大外径よりも貫通路11の内径は大きい。図3に示すごとく、貫通路11における後端部には、後端側へ向かうに連れて拡径する後端テーパ部111が形成されている。そして、この後端テーパ部111よりも先端側においては、貫通路11は、内径が一定のストレート状に形成されている。
【0028】
また、ガイド治具1は、円筒状先端部12よりも後端側に、切欠部13の周方向の形成位置を示すマーキング16を有する。すなわち、マーキング16は、図2に示すごとく、ハンドル部15の後端部、すなわちガイド治具1の後端部に形成されている。
【0029】
本例において、上記ネジ部品3は六角ボルトである。
また、上記被締結部2は、図1、図5、図7に示すごとく、一対の端子部21、22を重ね合わせると共に雌ネジ部23を設けてなる。端子部21、22は、それぞれネジ部品3を挿通するための挿通孔211、221を設けてなり、これらの挿通孔211、221を重ね合わせるように、端子部21、22が重ね合わされている。
【0030】
一方の端子部21は、電力変換装置の複数の半導体モジュールの電極端子に接続されるバスバーの端子であり、他方の端子部22はコンデンサの端子である。複数の半導体モジュールからなる電力部は、第1のケース51内において組み立てられている。そして、端子部21の近傍をワイヤー6の一部が通過している。コンデンサは、第2のケース52内に収納されている。
【0031】
そして、図1に示すごとく、電力部を収納した第1のケース51と、コンデンサを収納したケース52とを組付けて、電力変換装置を組み立てる際に、電力部における端子部21と、コンデンサにおける端子部22とを、ネジ部品3によって締結する。この締結時に、上述した本例のガイド治具1を用いる。
【0032】
すなわち、上記のごとく、移動可能な障害物である可動障害物としてワイヤー6が周辺に存在している被締結部2にネジ部品3を螺合させて締結する際に、ガイド治具1を用いる。そして、ガイド治具1によって、被締結部2にネジ部品3を導いて、ネジ部品3を被締結部2に締結する。
このとき、以下の当接工程、回動工程、締結工程とを順次行う。
【0033】
当接工程においては、図5、図6に示すごとく、ガイド治具1の円筒状先端部12の先端面121を被締結部2に当接させると共に、ワイヤー6を切欠部13に配置する。
次いで、回動工程においては、図7、図8に示すごとく、ガイド治具1を、その軸方向を中心として回動させることにより、ワイヤー6を円筒状先端部12の外周へ移動させる。
次いで、締結工程においては、図9、図10に示すごとく、ネジ部品3をガイド治具1の貫通路11を通して被締結部2へ導くと共に、該被締結部2に螺合して締結する。
【0034】
当接工程におけるガイド治具1の回動角度は、図6、図8に示すごとく、略180°である。
また、図5、図7、図9に示すごとく、被締結部2の手前には開口部531を設けた障壁53が存在している。この障壁53は、上述した電力変換装置のケース(第1のケース51)の一部である(図1参照)。そして、この障壁53の開口部531にガイド治具1を挿通して、円筒状先端部12を被締結部2に当接させながら、ネジ部品3を被締結部2に締結する。
【0035】
また、上記締結工程においては、図11〜図13に示すようなボックスビット4を用いて、ネジ部品3を保持すると共に、被締結部2にネジ部品3を螺合させる。ボックスビット4は、その先端部に、略六角柱形状の凹部410を設けた保持部41を有する。そして、保持部41の後方に柄部42が設けてある。また、凹部410の底面にはマグネット43が配設されている。これにより、磁性体からなるネジ部品3を磁力によって凹部410内に吸引しておくことができる。
【0036】
上記締結工程においては、図13に示すごとく、ネジ部品3を保持部41に保持した状態で、ガイド治具1の貫通路11に後端側からネジ部品3を挿通して、被締結部2へ到達させる。そして、ボックスビット4を、軸方向を中心に回動させることにより、図9に示すごとく、ボックスビッド4に保持されたネジ部品3を被締結部2の雌ネジ部23に螺合させていく。これにより、ネジ部品3を被締結部2に締結し、一対の端子部51、52を締結する。
その後、ボックスビット4を後退させ、さらにガイド治具1を後退させる。
【0037】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記ガイド治具1は上記貫通路11を有する。そのため、ガイド治具1の円筒状先端部12の先端面121を被締結部2に当接させた状態で、ネジ部品3を貫通路11に挿入し、その後端から先端へ向かって移動させることにより、容易にネジ部品3を被締結部2に導くことができる。
【0038】
また、上記ガイド治具1は、円筒状先端部12に切欠部13を形成してなる。そのため、ワイヤー6が被締結部2付近に存在している場合、ワイヤー6を切欠部13に配置するようにガイド治具1を被締結部2に当接させることができる。そして、この状態から、ガイド治具1をその軸方向を中心として回動させることにより、切欠部13に位置していたワイヤー6が円筒状先端部12の外周面に押されてその外周へ移動する(図5〜図8)。
【0039】
これにより、ワイヤー6はガイド治具1の貫通路11から外れた位置に移動した状態となるため、この状態から貫通路11を通してネジ部品3を被締結部2へ供給することにより、ワイヤー6に妨げられることなく、被締結部2にネジ部品3を螺合させることができる。そして、被締結部2とネジ部品3との間へのワイヤー6の噛み込みを確実に防ぐことができる。その結果、ワイヤー6の損傷を防ぎ、また、被締結部2へのネジ部品3の締結を確実に行うことができる。
【0040】
また、図4に示すごとく、切欠部13の周方向端部には面取り部131が形成されているため、ガイド治具1によってワイヤー6を移動させる際に、ワイヤー6に損傷を与えることを防ぐことができる。
また、ガイド治具1は、円筒状先端部12よりも後端側にマーキング16を有する。これにより、作業中、円筒状先端部12が作業者から見えない位置にあるときも、ガイド治具1の周方向における切欠部13の位置を、作業者が把握することができる。これにより、ワイヤー6を切欠部13に配置するようにガイド治具1を被締結部2に当接させる作業が容易となる。
【0041】
また、円筒状先端部12の後端に段部141が形成されている。そのため、ガイド治具1を被締結部2に当接させる際に、ガイド治具1の先端部が作業者から見えなくても、段部141によって、ガイド治具1の軸方向位置を把握することができる。これにより、ガイド治具1が被締結部2に確実に当接しているか否か、すなわち、ガイド治具1の先端面121と被締結部2との間にワイヤー6が存在していないか否かを把握することができる。たとえば、円筒状先端部12が被締結部2に当接したときの段部141が障壁53に当接するように予め設定しておけば、障壁53に対する段部141の位置関係によって、円筒状先端部12が被締結部2に当接しているか否かを把握することができる。
また、ハンドル部15の表面は凹凸表面151となっているため、ハンドル部15によってガイド治具1を回動させることが容易となる。
【0042】
また、上記当接工程におけるガイド治具1の回動角度は、略180°であるため、ワイヤー6を円筒状先端部12の外側へ確実に移動させることができる。
また、被締結部2の手前には開口部531を設けた障壁53が存在しており、障壁53の開口部531にガイド治具1を挿通して、円筒状先端部12を被締結部2に当接させながら、ネジ部品3を被締結部2に締結する。これにより、本発明の作用効果を効果的に発揮することができる。すなわち、上記障壁53が存在するために、ワイヤー6が被締結部2付近に存在する際に、仮にガイド治具1を用いなければ、ワイヤー6を噛み込まないようにネジ部品3を被締結部2に締結することが困難となるおそれがある。そこで、上記のごとくガイド治具1を用いてネジ部品3を被締結部2に締結することにより、上記のような障壁53が存在する場合にも、ワイヤー6を噛み込むことなく、ネジ部品3を被締結部2に締結することができる。
【0043】
以上のごとく、本例によれば、可動障害物の噛み込みを防いで確実にネジ部品を被締結部に締結することができるガイド治具及びこれを用いた締結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例における、ガイド治具を用いた締結方法の斜視説明図。
【図2】実施例における、ガイド治具の斜視図。
【図3】実施例における、ガイド治具の一部断面側面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】実施例における、締結方法の当接工程を表す説明図。
【図6】図5のB−B線矢視断面図。
【図7】実施例における、締結方法の回動工程を表す説明図。
【図8】図7のC−C線矢視断面図。
【図9】実施例における、締結方法の締結工程を表す説明図。
【図10】図9のD−D線矢視断面図。
【図11】実施例における、ボックスビットの側面図。
【図12】実施例における、ボックスビットの正面図。
【図13】実施例における、ネジ部品を保持したボックスビットの保持部の断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 ガイド治具
11 貫通路
12 円筒状先端部
121 先端面
13 切欠部
2 被締結部
3 ネジ部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部にネジ部品を導くための筒状のガイド治具であって、
該ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、
該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、
かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されていることを特徴とするガイド治具。
【請求項2】
請求項1において、上記切欠部の周方向端部には、面取り部が形成されていることを特徴とするガイド治具。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ガイド治具は、上記円筒状先端部よりも後端側に、上記切欠部の周方向の形成位置を示すマーキングを有することを特徴とするガイド治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記円筒状先端部の後端に、上記ガイド治具の外径が変化する段部が形成されていることを特徴とするガイド治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記円筒状先端部よりも後端側にハンドル部が形成されており、該ハンドル部の表面は凹凸表面となっていることを特徴とするガイド治具。
【請求項6】
移動可能な障害物である可動障害物が周辺に存在している被締結部にネジ部品を螺合させて締結する際に、筒状のガイド治具を用いて上記被締結部に上記ネジ部品を導いて、該ネジ部品を被締結部に締結するに当り、
上記ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されており、
上記ガイド治具の上記円筒状先端部の先端面を上記被締結部に当接させると共に、上記可動障害物を上記切欠部に配置する当接工程と、
次いで、上記ガイド治具を、その軸方向を中心として回動させることにより、上記可動障害物を上記円筒状先端部の外周へ移動させる回動工程と、
次いで、上記ネジ部品を上記ガイド治具の上記貫通路を通して上記被締結部へ導くと共に、該被締結部に螺合して締結する締結工程とを行うことを特徴とする締結方法。
【請求項7】
請求項6において、上記当接工程における上記ガイド治具の回動角度は、略180°であることを特徴とする締結方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、上記被締結部の手前には開口部を設けた障壁が存在しており、該障壁の上記開口部に上記ガイド治具を挿通して、上記円筒状先端部を上記被締結部に当接させながら、上記ネジ部品を上記被締結部に締結することを特徴とする締結方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、上記可動障害物は、ワイヤーであることを特徴とする締結方法。
【請求項1】
被締結部にネジ部品を導くための筒状のガイド治具であって、
該ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、
該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、
かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されていることを特徴とするガイド治具。
【請求項2】
請求項1において、上記切欠部の周方向端部には、面取り部が形成されていることを特徴とするガイド治具。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ガイド治具は、上記円筒状先端部よりも後端側に、上記切欠部の周方向の形成位置を示すマーキングを有することを特徴とするガイド治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記円筒状先端部の後端に、上記ガイド治具の外径が変化する段部が形成されていることを特徴とするガイド治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記円筒状先端部よりも後端側にハンドル部が形成されており、該ハンドル部の表面は凹凸表面となっていることを特徴とするガイド治具。
【請求項6】
移動可能な障害物である可動障害物が周辺に存在している被締結部にネジ部品を螺合させて締結する際に、筒状のガイド治具を用いて上記被締結部に上記ネジ部品を導いて、該ネジ部品を被締結部に締結するに当り、
上記ガイド治具は、後端から先端にかけて貫通する貫通路を有する筒形状を呈すると共に、先端部に少なくとも外周面が断面略円形状に形成された円筒状先端部を有し、該円筒状先端部の先端面は、軸方向に直交する平面上に形成されており、かつ、上記円筒状先端部には、先端面から一部を切り欠いた切欠部が形成されており、
上記ガイド治具の上記円筒状先端部の先端面を上記被締結部に当接させると共に、上記可動障害物を上記切欠部に配置する当接工程と、
次いで、上記ガイド治具を、その軸方向を中心として回動させることにより、上記可動障害物を上記円筒状先端部の外周へ移動させる回動工程と、
次いで、上記ネジ部品を上記ガイド治具の上記貫通路を通して上記被締結部へ導くと共に、該被締結部に螺合して締結する締結工程とを行うことを特徴とする締結方法。
【請求項7】
請求項6において、上記当接工程における上記ガイド治具の回動角度は、略180°であることを特徴とする締結方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、上記被締結部の手前には開口部を設けた障壁が存在しており、該障壁の上記開口部に上記ガイド治具を挿通して、上記円筒状先端部を上記被締結部に当接させながら、上記ネジ部品を上記被締結部に締結することを特徴とする締結方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、上記可動障害物は、ワイヤーであることを特徴とする締結方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−72868(P2009−72868A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244952(P2007−244952)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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