説明

ガス流量監視システム

【課題】流量制御機器の流量精度を常時監視しつつ、必要な場合には、再検定又は流量監視ユニット自体の自己診断を含む、より信頼性の高い流量検定を行う。
【解決手段】ガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、第1流量監視ユニットによって流量制御機器の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニットが複数回流量異常と検知した時に第2流量監視ユニットによって流量制御機器の流量異常の有無を再検定するよう指令する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置におけるプロセスガス等のガス供給システムに使用する流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量精度を監視するガス流量監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス中の成膜装置や乾式エッチング装置等においては、例えばシラン等の特殊ガスや、塩素ガス等の腐食性ガス、及び水素ガスやホスフィン等の可燃性ガス等を使用する。これらのガス流量は、プロセスの良否に直接影響するので、その流量を厳格に管理しなければならない。特に、近年の半導体基板の積層化、微細化に伴い、プロセスガス供給系における信頼性向上の要求が、従来以上に高まっている。
そこで、例えば、特許文献1に半導体製造プロセスにおける供給ガスの流量制御技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術は、プロセスチャンバへ排出するガス流量を正確に算出するため、マスフローコントローラの下流側に圧力計と最終遮断弁とを備え、最終遮断弁を閉じた後に圧力計の圧力上昇を所定の時間間隔でサンプリングしてから、サンプリングデータの内、相関係数の高い範囲で圧力傾斜角を求めてマスフローコントローラの流量を算出する技術である。なお、特許文献1には、マスフローコントローラの上流側に遮断弁と圧力計とを備え、遮断弁を閉じた後に圧力計の圧力降下を所定の時間間隔でサンプリングしてから、サンプリングデータの内、相関係数の高い範囲で圧力傾斜角を求める技術も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−184600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術には、次のような問題があった。
特許文献1の技術では、マスフローコントローラの上流側又は下流側の遮断弁を閉じた後に圧力計の圧力降下又は圧力上昇を測定するため、流量検定時には必然的にプロセスチャンバへ排出するガス流量が停止されることになる。 しかし、特許文献1の技術では、流量検定の度に、プロセスチャンバへ排出するガス流量が停止されることになるので、半導体製造装置におけるガス供給システムの稼働率が低下するという問題があった。
また、プロセスガスの内、特に成膜用材料ガスは、その特性上ガスライン内でも固形物を析出する可能性があり、マスフローコントローラ内の細管部分に固形物が析出すれば、マスフローコントローラからプロセスチャンバへ排出するガス流量が徐々に変化する。プロセスチャンバへ排出するガス流量が変化すれば、半導体ウェハの歩留率が低下するので、ガス流量の変化を常時監視できるシステムが必要であった。
しかし、特許文献1の技術では、流量検定時にはプロセスチャンバへ排出するガス流量を停止することを前提としているので、システム稼働中にガス流量の変化を常時監視することができないという問題があった。
さらに、マスフローコントローラの上流側に設置する圧力計は、プロセスガス源から供給されるガス圧を計測する必要があるが、プロセスガス源から供給されるガス圧は、通常、0.5MPa程度と高いので、圧力センサに高精度なものを使用することができない。そのため、流量検定時にズレ量が発生した時、圧力センサの誤差なのか、マスフローコントローラ自体のズレ量なのかを判断することが困難であった。
しかし、特許文献1の技術では、マスフローコントローラの流量検定をすることができても、流量検定ユニット自体の診断をすることができないので、より信頼性の高い流量検定ができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量精度を常時監視しつつ、必要な場合には、再検定又は流量監視ユニット自体の自己診断を含む、より信頼性の高い流量検定を行うガス流量監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のガス流量監視システムは、次のような構成を有している。
(1)プロセスガス供給源からのガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、前記流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで前記流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、
前記プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの前記流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、
前記プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、
前記第1流量監視ユニットによって前記流量制御機器の流量を常時監視するとともに、前記第1流量監視ユニットが複数回流量異常と検知した時に前記第2流量監視ユニットによって前記流量制御機器の流量異常の有無を再検定するよう指令する制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
(2)プロセスガス供給源からのガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、前記流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで前記流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、
前記プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの前記流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、
前記プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、
前記第1流量監視ユニットによって前記流量制御機器の流量を常時監視するとともに、前記第1流量監視ユニットが所定回数だけ流量検定した時に前記第1流量監視ユニットと前記第2流量監視ユニットとを同時に流量検定することによって、前記第1流量監視ユニットの検定ズレ量を前記第2流量監視ユニットの流量検定結果に基づいて補正するよう指令する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
次に、本発明に係るガス流量監視システムの作用及び効果について説明する。
(1)プロセスガス供給源からのガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、第1流量監視ユニットによって流量制御機器の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニットが複数回流量異常と検知した時に第2流量監視ユニットによって流量制御機器の流量異常の有無を再検定するよう指令する制御部とを有することを特徴とするので、流量制御機器の流量精度を常時監視しつつ、常時監視において流量異常が確認された時には、より高精度な再検定を行うことにより、システム全体の信頼性を高めることができる。
【0010】
具体的には、第1流量監視ユニットは、複数のプロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインに備えるので、重要なプロセスガスラインを選定して、流量の常時監視ができる。そのため、例えば、流量制御機器内の細管部分に固形物が析出しやすい成膜用材料ガスを使用するガスラインに第1流量監視ユニットを備えることによって、流量異常が生じやすいプロセスガスラインの流量精度を常時監視して、その異常を素早く発見できる。その結果、半導体ウェハの歩留率の向上を効果的に実現できる。
また、第2流量監視ユニットは、プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備えるので、流量制御機器から排出されるガス圧を高精度に計測することができる。これは、流量制御機器から排出されるガス圧は、プロセスガス供給源からの高いガス圧に比べて低く、通常、排出流路には吸引ポンプを設けているので、第2流量監視ユニットにおいては、真空状態に近い低圧となり高精度の隔膜式圧力計を用いることができること等の理由からである。
【0011】
また、第1流量監視ユニットによって流量制御機器の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニットが複数回流量異常と検知した時に第2流量監視ユニットによって流量制御機器の流量異常の有無を再検定するよう指令する制御部を有するので、流量制御機器の流量精度を常時監視しつつ、常時監視において流量異常が確認された時には、より高精度な再検定を行い、第1流量監視ユニットの誤差なのか、流量制御機器自体の異常なのかを判定することができる。
したがって、第1流量監視ユニットの流量精度を第2流量監視ユニットによって補完することで、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を行うことができる。また、ガス供給システムを停止することになる第2流量監視ユニットによる流量検定の回数を必要最小限に減らして、半導体製造装置におけるガス供給システムの稼働率向上にも寄与できる。
よって、(1)の発明によれば、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量精度を常時監視しつつ、必要な場合には、再検定又は流量監視ユニット自体の自己診断を含む、より信頼性の高い流量検定を行うガス流量監視システムを提供することができる。
【0012】
(2)プロセスガス供給源からのガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、第1流量監視ユニットによって流量制御機器の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニットが所定回数だけ流量検定した時に第1流量監視ユニットと第2流量監視ユニットとを同時に流量検定することによって、第1流量監視ユニットの検定ズレ量を第2流量監視ユニットの流量検定結果に基づいて補正するよう指令する制御部とを有することを特徴とするので、流量制御機器の流量精度を常時監視しつつ、所定回数だけ流量検定した時には、流量監視ユニット自体の自己診断を行うことにより、システム全体の信頼性を高めることができる。
【0013】
具体的には、第1流量監視ユニットは、複数のプロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインに備えるので、重要なプロセスガスラインを選定して、流量の常時監視ができる。そのため、例えば、流量制御機器内の細管部分に固形物が析出しやすい成膜用材料ガスを使用するガスラインに第1流量監視ユニットを備えることによって、流量異常が生じやすいプロセスガスラインの流量精度を常時監視できる。その結果、半導体ウェハの歩留率の向上を効果的に実現できる。
また、第2流量監視ユニットは、プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備えるので、流量制御機器から排出されるガス圧を高精度に計測することができる。これは、流量制御機器から排出されるガス圧は、プロセスガス供給源からの高いガス圧に比べて低く、通常、排出流路には吸引ポンプを設けているので、第2流量監視ユニットにおいては、真空に近い低圧となり高精度の隔膜式圧力計を用いることができること等の理由からである。
【0014】
また、第1流量監視ユニットによって流量制御機器の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニットが所定回数だけ流量検定した時に第1流量監視ユニットと第2流量監視ユニットとを同時に流量検定することによって、第1流量監視ユニットの検定ズレ量を第2流量監視ユニットの流量検定結果に基づいて補正するよう指令する制御部を有するので、流量制御機器の流量精度を常時監視しつつ、常時監視する第1流量監視ユニットの検定量を高精度な第2流量監視ユニットで校正することによって、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を行うことができる。また、第2流量監視ユニットによる流量検定を必要最小限に減らして、半導体製造装置におけるガス供給システムの稼働率向上にも寄与できる。
よって、(2)の発明によれば、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量精度を常時監視しつつ、必要な場合には、再検定又は流量監視ユニット自体の自己診断を含む、より信頼性の高い流量検定を行うガス流量監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るガス流量監視システムの実施形態を構成するガス回路を含む全体図である。
【図2】(a)は、本実施形態における第1流量監視ユニットを構成するガス回路図であり、(b)は、ガス流量検定時における圧力線図である。
【図3】本実施形態における第1流量監視ユニットを用いて流量制御機器(MFC)の流量精度を常時監視するときの圧力線図である。
【図4】本実施形態における第1流量監視ユニットを構成する部品の断面図である。
【図5】(a)は、本実施形態における第2流量監視ユニットを構成するガス回路図であり、(b)は、ガス流量検定時における圧力線図である。
【図6】本実施形態における第2流量監視ユニットを構成する部品の断面図である。
【図7】本実施形態のガス流量監視システムにおける第1の制御フロー図である。
【図8】本実施形態のガス流量監視システムにおける第2の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るガス流量監視システムの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、はじめにシステムの全体構成と第1流量監視ユニット及び第2流量監視ユニットを説明した上で、その制御フロー及び作用効果について説明する。
【0017】
<ガス流量監視システムの全体構成>
はじめに、本発明に係るガス流量監視システムの全体構成について説明する。図1に、本発明に係るガス流量監視システムの実施形態を構成するガス回路を含む全体図を示す。
図1に示すように、ガス流量監視システム100は、第1流量監視ユニット2と第2流量監視ユニット3と制御コントローラ4とを有し、プロセスガスライン1に配設されている。
プロセスガスライン1は、複数設けられ、各ガスライン11A〜11Dはそれぞれのプロセスガス供給源からのガスA〜Dを第1ライン遮断弁12A〜12Dと流量制御機器10A〜10Dと第2ライン遮断弁13A〜13Dとを経由してから所定のプロセスチャンバ5に供給するガスラインである。プロセスガスA〜Dには、例えば、シラン等の特殊ガスや、塩素ガス等の腐食性ガス、及び水素ガスやホスフィン等の可燃性ガス等が使用される。供給されるプロセスガスのガス圧は、0.4〜0.5MPa程度である。
【0018】
図1に示すように、プロセスガスライン1の内、選択した任意のプロセスガスライン11B、11Dには、第1ライン遮断弁12B、12Dの上流側流路に第1流量監視ユニット2B、2Dを備えている。第1流量監視ユニット2を備えるプロセスガスライン1を任意に選定する理由は、重要なプロセスガスライン1を選定して、その流量を常時監視できるようにするためである。例えば、流量制御機器内の細管部分に固形物が析出しやすい成膜用材料ガスを使用するガスラインには、第1流量監視ユニット2を備えることによって、流量の変化を常に監視して、流量異常を素早くまた確実に検定することができるからである。
第1流量監視ユニット2は、流量制御機器10の前側である上流側流路におけるガス圧の圧力降下を測定することで流量制御機器10の流量監視を行っている。
【0019】
第1ライン遮断弁12A〜12D及び第2ライン遮断弁13A〜13Dは、流量制御機器10A〜10Dに流れるプロセスガスを供給又は停止するエアオペレイトバルブである。流量制御機器10A〜10Dは、例えば、マスフローコントローラであって、マスフローメータとコントロールバルブを組み合わせてフィードバック制御を行い、流量制御を可能にしたものである。したがって、所定の値に設定したガス流量を、安定して排出することができる。
【0020】
第2ライン遮断弁13A〜13Dの下流側流路14は、プロセスチャンバ5の上流側で合流後流路15によって合流している。合流後流路15から分岐する排出流路16、17には、第2流量監視ユニット3を備えている。排出流路は、第2流量監視ユニット3の上流側に設けた第1排出流路16と、第2流量監視ユニット3の下流側に設けた第2排出流路17とからなる。ガス流量検定時には、ガスが第1排出流路16から第2流量監視ユニット3に供給され、第2排出流路17から排出口(Vent)に排出される。第2流量監視ユニット3は、流量制御機器10A〜10Dから第1排出流路16を経由して供給されるガス圧を高精度に計測することができる。これは、流量制御機器10A〜10Dから排出されるガス圧は、プロセスガス供給源からの高いガス圧に比べて低く、通常、第2排出流路17には吸引ポンプ18を設けているので、第2流量監視ユニット3においては、真空状態に近い低圧となり高精度の隔膜式圧力計を用いることができること等の理由からである。
【0021】
図1に示すように、ガス流量監視システム100は、第1流量監視ユニット2及び第2流量監視ユニット3、並びに流量制御機器10と電気的に接続された制御コントローラ4を備えている。制御コントローラ4は、ガス流量監視ユニット100における制御部であり、例えば、第1流量監視ユニット2によって流量制御機器10の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニット2が複数回流量異常と検知した時に第2流量監視ユニット3によって流量制御機器10の流量異常の有無を再検定するよう指令したり、第1流量監視ユニット2によって流量制御機器10の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニット2が所定回数だけ流量検定した時に第1流量監視ユニット2と第2流量監視ユニット3とを同時に流量検定することによって、第1流量監視ユニット2の検定ズレ量を第2流量監視ユニット3の流量検定結果に基づいて補正するよう指令する。また、制御コントローラ4は、例えば、第2流量監視ユニット3によって流量制御機器10の流量異常が有ると判定され、流量制御機器10のズレ量を補正できる場合には、制御コントローラ4からの指令により流量制御機器10の設定値を補正することができる。なお、制御コントローラ4の制御方法については、後述する制御フローにて詳述する。
また、制御コントローラ4は、半導体製造装置6と電気的に接続されている。そのため、例えば、半導体製造装置6は、第2流量監視ユニット3によって流量制御機器10の流量異常が有ると判定された制御コントローラ4からの電気信号を受けて、自働的に稼働を停止する等の措置を採ることもできる。
この場合、制御コントローラ4は、シリアル通信又はアナログ通信のどちらにも対応できる。
【0022】
<第1流量監視ユニット>
次に、第1流量監視ユニットの回路構成について説明する。図2(a)に、本実施形態における第1流量監視ユニットを構成するガス回路図を示し、(b)に、ガス流量検定時における圧力線図を示す。図3に、本実施形態における第1流量監視ユニットを用いて流量制御機器(MFC)の流量精度を常時監視するときの圧力線図を示す。図4に、本実施形態における第1流量監視ユニットを構成する部品の断面図を示す。
図2(a)に示すように、第1流量監視ユニット2は、プロセスガスライン1における第1ライン遮断弁12の上流側流路に配設されている。第1流量監視ユニット2は、ガス供給源側から順に、第1開始遮断弁21と第1測定用タンク22と第1圧力計23と第1温度計24とレギュレータ25とを備えている。
【0023】
第1開始遮断弁21は、ガス供給源からのガスを下流側に供給又は停止するエアオペレイトバルブである。第1測定用タンク22は、ガスを一定量貯留する容器である。第1測定用タンク22の容積は、流量制御機器10の流量によって最適な容積を選定するが、例えば、50〜60cc程度である。ガス流量検定時には、第1測定用タンク22の容器内に貯留したガスが流出してガス圧が降下する。第1圧力計23は、第1測定用タンク22の容器内に貯留したガスの圧力降下を計測する圧力計である。第1圧力計23は、高圧のガスに対応し得るように、例えば、ひずみゲージ式圧力計を用いている。第1温度計24は、第1測定用タンク22の容器内のガス温度を計測する温度計である。レギュレータ25は、流量制御機器10に供給するガスのガス圧を一定に維持するための制御弁である。例えば、レギュレータ25の設定圧は、0.2MPa程度である。
【0024】
次に、第1流量監視ユニットの流量監視方法について説明する。はじめに、1回の流量検定方法を説明する。
図2(b)に示すように、第1開始遮断弁21を弁閉するとガス供給源からのガスが停止されるので、第1測定用タンク22の容器内に貯留したガスが流出してガス圧が降下する。ガス圧の単位時間当たりの圧力降下率が略一定に安定した段階(測定開始点P1)で、第1圧力計23がガス圧を計測する。その後、一定時間が経過した時点(測定終了点P2)で、第1圧力計23が、再度ガス圧を計測する。測定開始点P1のガス圧と、測定終了点P2のガス圧との差である圧力降下量ΔPと、測定開始点P1から測定終了点P2までの時間Δtとを求める。ΔP/Δtは、ガス流量に比例するので、比例係数を乗算して、流量制御機器10からプロセスチャンバ5に供給されるガス流量を算出する。算出したガス流量と、流量制御機器10で設定されたガス流量とを比較して、差異が所定の基準値の範囲内であれば流量は正常となる。一方、差異が所定の基準値の範囲外であれば流量は異常となる。
【0025】
次に、上述した第1流量監視ユニット2を用いて流量制御機器10の流量精度を常時監視する方法を説明する。
半導体製造装置6の稼働中に、制御コントローラ4からの指令により第1開始遮断弁21を所定の時間間隔で連続的に開閉すると、図3に示すように、ガス供給圧力は上昇下降を繰り返す。第1流量監視ユニット2は、供給圧力の降下毎に圧力降下量とその時間から流量を検定する。検定結果は、制御コントローラ4から、監視出力として半導体製造装置6に伝達される。
ガス供給圧力が上昇下降を繰り返す時間間隔は、任意に設定できるが、例えば、数秒から数十秒程度である。また、ガス供給圧力が上昇下降を繰り返すときの圧力下限値は、流量制御機器10の上流側圧力となるレギュレータ25の設定圧力以上である。レギュレータ25の入力側圧力がレギュレータ25の設定圧力以上であれば、レギュレータ25の出力側圧力は変動することなくガス流量を流量制御機器10に供給できるからである。その結果、流量制御機器10の出力側流量も一定に維持できる。
これによって、半導体製造装置6のガス供給系を維持しつつ、第1流量監視ユニット2を用いて流量制御機器10の流量精度を常時監視することができる。
【0026】
次に、上述した第1流量監視ユニット2の部品構成を説明する。
図4に示すように、図面左から順に、第1開始遮断弁21と、第1圧力計23と、第1温度計24と、レギュレータ25とが、第1マニホールド26の上端に載置されている。第1マニホールド26は、略矩形状をなして内部に第1測定用タンク22が穿設されている。第1測定用タンク22は、矩形断面に形成されている。矩形断面上端の内壁には、第1開始遮断弁21の二次側流路212に連通する流路262と、第1圧力計23に連通する流路263、264と、レギュレータ25の一次側流路253に連通する流路265とが、それぞれ別々に離間して面直に穿設されている。第1圧力計23とレギュレータ25との間にあって、第1測定用タンク22の矩形断面上端の内壁から、第1温度計24のセンサ部241が、下方に突出している。第1マニホールド26の下端には、第1測定用タンク22を封止する板状の蓋部材221が固着されている。第1マニホールド26の図面左端には、下端に設けた入力ポート267と第1開始遮断弁21の一次側流路211とを連通する流路261が形成されている。マニホールド26の図面右端には、下端に設けた出力ポート268とレギュレータ25の二次側流路259とを連通する流路266が形成されている。
【0027】
第1開始遮断弁21は、駆動部213と本体部214とを備え、エアー操作による駆動部がダイアフラム215を上下させて、ガスを供給、停止する。
第1圧力計23は、図示しないセンサ部に連通する流路263、264から、直接に測定用タンク22内のガス圧を計測している。
第1温度計24は、第1測定用タンク22内のガス温度を測定する。センサ部241が、第1測定用タンク22の矩形断面上端の内壁から下方に突出しているので、第1測定用タンク22内のガス温度を、より正確に測定することができる。ガス温度を測定することによって、ガス流量検定時のガスの温度変化を確認し、流量の算出に反映させることができる。
レギュレータ25は、調整機構部251とボディ部250とを備え、レギュレータ25の設定圧力は、調整機構部251の図示しない調整機構によって調整される。調整機構は、図示しない調整スプリングの付勢力を調整してダイアフラム254を上下させる。ダイアフラム254は、圧力制御室255の上端に覆設されている。圧力制御室255には、下方からポペット弁体256の突出部が突出して、ダイアフラム254と当接、離間している。ポペット弁体256は、一次側流路253と連通する弁室258に収容され、圧縮スプリング257によって上方に付勢されている。圧力制御室255の下端には、二次側流路259と連通する帰還流路252が穿設されている。したがって、圧力制御室255には、帰還流路252を経由してレギュレータ25の二次側圧力をフィードバックしている。
【0028】
<第2流量監視ユニット>
次に、第2流量監視ユニットの回路構成について説明する。図5(a)に、本実施形態における第2流量監視ユニットを構成するガス回路図を示し、(b)に、ガス流量検定時における圧力線図を示す。図6に、本実施形態における第2流量監視ユニットを構成する部品の断面図を示す。
図1に示すように、第2流量監視ユニット3は、プロセスガスライン1における第2ライン遮断弁13の下流側流路14が合流した合流後流路15から分岐する排出流路16、17に配設されている。そして、図5(a)に示すように、第2流量監視ユニット2は、流量制御機器10側から順に、第2開始遮断弁31と第2測定用タンク32と第2圧力計33と第2温度計34と操作遮断弁35とを備えている。
【0029】
第2開始遮断弁31は、流量制御機器10からのガスを第2測定用タンク32に供給又は停止するエアオペレイトバルブである。第2測定用タンク32は、ガスを一定量貯留する容器である。第2測定用タンク32の容積及び流量制御機器10の2次側から第2開始遮断弁31の1次側までの流路容積は、流量制御機器10の流量によって最適な容積を選定するが、例えば、第2測定用タンク32の容積は10cc程度、流量制御機器10の2次側から第2開始遮断弁31の1次側までの流路容積は、80〜120cc程度である。第2圧力計33は、第2測定用タンク32の容器内に貯留したガスの圧力上昇を計測する圧力計である。第2圧力計33は、真空状態のガスに対応し得るように、例えば、隔膜式の真空圧力計を用いている。第2温度計34は、第2測定用タンク32の容器内のガス温度を計測する温度計である。操作遮断弁35は、第2測定用タンク32に貯留されたガスを吸引ポンプ17に供給又は停止するエアオペレイトバルブである。
【0030】
次に、第2流量監視ユニット3の流量検定方法について説明する。
図5(b)に示すように、ガス流量検定前には、第2ライン遮断弁13A〜13Dを弁閉するとともに第2開始遮断弁31及び操作遮断弁35を弁開して、第2測定用タンク32等に貯留したガスを、吸引ポンプ18で吸引することによって排出する。第2測定用タンク32等に貯留したガスは排出されるので、ガス圧は低下して略真空状態になる。
その後、流量検定の対象となるプロセスガスラインにおける第2ライン遮断弁13を弁開する。この時、他のプロセスガスラインにおける第2ライン遮断弁13は、弁閉したままである。ガス流量が安定したら、操作遮断弁35を弁閉する。そうすると、流量検定の対象となるプロセスガスラインの流量制御機器10から供給されるガスが、第2測定用タンク32等に貯留する。第2測定用タンク32等では、貯留したガスが増加してガス圧が上昇する。
ガス圧の単位時間当たりの圧力上昇率が略一定に安定した段階(測定開始点P1)で、第2圧力計33がガス圧を計測する。その後、一定時間が経過した時点(測定終了点P2)で、第2圧力計33が、再度ガス圧を計測する。測定開始点P1のガス圧と、測定終了点P2のガス圧との差である圧力上昇量ΔPと、測定開始点P1から測定終了点P2までの時間Δtとを求める。ΔP/Δtは、ガス流量に比例するので、比例係数を乗算して、流量制御機器10から排出されるガス流量を算出する。
算出したガス流量と、流量制御機器10で設定されたガス流量とを比較して、差異が所定の基準値の範囲内であれば流量は正常となる。一方、差異が所定の基準値の範囲外であれば流量は異常となる。この場合、第2流量監視ユニット3は、圧力計に隔膜式の真空圧力計を用い、真空圧力計ではダイヤフラム径が大きいこと等の理由から、ひずみゲージ式圧力計を用いる第1流量監視ユニット2より高精度の流量検定ができる。
【0031】
次に、上述した第2流量監視ユニット3の部品構成を説明する。
図6に示すように、図面左から順に、第2開始遮断弁31と、第2圧力計33と、操作遮断弁35とが、第2マニホールド36の上端に載置されている。なお、第2マニホールド36は、3個の矩形状ブロック36A〜36Cに分かれている。図面左右の矩形状ブロック36A、36Cの上端には、左右のV字状流路361、363が穿設され、図面中央の矩形状ブロック36Bの上端には、半円状流路362が穿設されている。
【0032】
また、第2圧力計の筒状部332下端には、略矩形状をなして内部に第2測定用タンク32が穿設されている台座ブロック333が配設され、第2圧力計33の真空チャンバ331と第2測定用タンク32とが連通されている。第2測定用タンク32は、下方に膨出した湾曲断面に形成されている。湾曲断面の内壁には、台座ブロック333の下端に連通し、図面左側に傾斜する左傾斜流路321と図面右側に傾斜する右傾斜流路323と両者の中間に垂下する垂直流路322とが形成されている。
台座ブロック333の下端は、3個の矩形状ブロック36A〜36Cの上端に当接して、左傾斜流路321は左V字状流路361と連通し、右傾斜流路323は右V字状流路361と連通している。台座ブロック333及び3個の矩形状ブロック36A〜36Cの形成された各流路の容積は、流量検定時の測定用タンク容積に含まれるので、流量検定の精度を向上させるよう流路径や流路長を設定することができる。
【0033】
第2開始遮断弁31は、駆動部311と本体部312からなり、本体部312には、一次側流路313と二次側流路315が形成されている。一次側流路313には、第1排出流路16の下流側に連通する入力ポート314が形成されて、ガスが供給される。二次側流路315は、左V字状流路361と連通している。
操作遮断弁35は、駆動部351と本体部352からなり、本体部352には一次側流路353と二次側流路354が形成されている。一次側流路353は、右V字状流路363と連通している。二次側流路354には、第2排出流路17の上流側に連通する出力ポート355が形成されて、ガスが排出される。
なお、第2温度計34は、図示しないが、第2圧力計33内の真空チャンバ内のガス温度を測定するように、第2圧力計33に付設されている。第2圧力計33内のガス温度を、より正確に測定することによって、ガス流量検定時のガスの温度変化を確認し、流量の算出に反映させることができる。
【0034】
<ガス流量監視システムの制御フロー>
次に、本実施形態におけるガス流量監視システム100の制御フローについて説明する。図7に、本実施形態における第1の制御フロー図を示し、図8に、本実施形態における第2の制御フロー図を示す。
まず、本実施形態のガス流量監視システム100における制御フローの基本的な考え方を説明する。本制御フローは、第1の制御フロー(図7参照)と第2の制御フロー(図8参照)とから構成されている。
第1の制御フローは、半導体製造装置6の稼働中に行い、常時監視を前提として流量制御機器10の流量異常を確実に発見し、素早く正常に戻す制御である。この制御には、2種類の流量監視ユニット(第1流量監視ユニット2、第2流量監視ユニット3)が必要である。そして、第1流量監視ユニット2と第2流量監視ユニット3とを、流量制御機器10の上流側と下流側に配設して制御コントローラ4にて使い分ける制御を行う。第1流量監視ユニット2は、流量制御機器10の上流側でプロセスガスを流しながら、常に流量異常がないかを監視する。
しかし、第1流量監視ユニット2は、前述したように流量検定の信頼性が低いので、複数回流量異常と認めたときに、流量異常が本当に生じている可能性が高いと判断して、より流量検定の信頼性が高い第2流量監視ユニット3を用いて、再度流量検定を行う。第2流量監視ユニット3を用いた再検定時には、半導体製造装置6の稼働を停止することになるので、第2流量監視ユニット3は流量異常の可能性の高い時に限定している。
このように、第1流量監視ユニット2によって流量制御機器10の流量精度を常時監視しつつ、第1流量監視ユニット2の常時監視において流量異常が複数回確認された時には、より高精度の第2流量監視ユニット3によって再検定を行うことにより、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を行うことができる。
【0035】
第2の制御フローは、第1流量監視ユニット2が流量制御機器10の上流側でプロセスガスを流しながら、常に流量異常がないか監視する点までは、第1の制御フローと同じである。
第1の制御フローは、第1流量監視ユニット2が発見した流量制御機器10の流量異常を、より高精度の第2流量監視ユニット3によって確実かつ素早く正常に戻す制御であるのに対して、第2の制御フローは、第1流量監視ユニット2をより高精度の第2流量監視ユニット3によって定期的に自己診断する制御である点が異なる。つまり、流量検定の信頼性が低い第1流量監視ユニット2を流量検定の信頼性が高い第2流量監視ユニット3を用いて点検し、第1流量監視ユニット2のズレ量補正を行うことによって、第1流量監視ユニット2の流量検定の信頼性を、より向上させる自己診断機能を有する制御である。
このように、第1流量監視ユニット2によって流量制御機器10の流量精度を常時監視しつつ、常時監視する第1流量監視ユニット2の検定量を高精度な第2流量監視ユニットで校正(自己診断)することによって、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を行うことができる。
【0036】
次に、第1の制御フローについて詳細に説明する。制御フローは図7を参照しながら、また、ガス回路図は図1、図2(a)図5(a)を参照しながら、具体的に説明する。
はじめに、S1において流量制御機器10の流量制御が開始される。そして、S2において第1流量監視ユニット2による流量制御機器10の流量常時監視を行う。具体的には、制御コントローラ4からの指令により、第1流量監視ユニット2の第1開始遮断弁21が、弁閉、弁開を所定の時間間隔で繰り返し、第1圧力計23が圧力降下量を計測しながら流量検定を連続的に行う。
S3において第1流量監視ユニット2の検定回数がN回に到達したか否かを判定し、到達していなければ、S4において流量異常の有無を確認する。ここで、N回は、過去の点検実績等に基づいて任意に設定すればよいが、例えば、1000回程度に設定する。なお、検定回数がN回に到達したときは、第2の制御フローである定期点検の制御に移行する(A)。
S4において流量異常が有りと認定したときは、S5において流量異常の累積回数に加算して累積回数がK回に到達したと認定したときは、S6において流量制御機器10の点検へ移行する。ここで、流量異常の判定値は、任意に設定できるが、例えば、±5%程度に設定する。また、K回は、任意に設定すればよいが、例えば、3回程度に設定する。
【0037】
S7において第2流量監視ユニット3による流量制御機器10の流量検定を開始する。具体的には、制御コントローラ4からの指令により、第2流量監視ユニット3の操作遮断弁35を弁開して吸引ポンプ18で第2測定用タンク内のガス圧を真空状態にした後、操作遮断弁35を弁閉するとともに、第2開始遮断弁31を弁開して第2測定用タンク内のガス圧の圧力上昇量を測定して流量検定する。第2流量監視ユニット3は、前述したように高精度の流量検定が可能であるので、S8において流量異常と認定したときは、S9において流量制御機器10のズレ量補正が可能か否かを確認する。ここで、流量異常の判定値は、任意に設定できるが、例えば、±1%程度に設定する。流量制御機器10のズレ量補正が可能ならば、S10において流量制御機器10のズレ量を補正し、S11においてプロセスを開始する。なお、S9において流量制御機器10のズレ量補正が不可能と認定したときには、S12において流量制御機器10を交換する点検に移行する。結局、流量制御機器10の流量異常の最終的な認定、ズレ量の補正、機器交換については、流量検定の信頼性が高い第2流量監視ユニット3の検定結果に基づいている。
このように、第1の制御フローは、流量制御機器10の流量異常の最終判断及び措置を信頼性の高い第2流量監視ユニット3の検定結果に基づくこととして、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を実現しつつ、必要以上の稼働率低下を防止している。
【0038】
次に、第2の制御フローについて詳細に説明する。制御フローは図8を参照しながら、また、ガス回路図は図1、図2(a)図5(a)を参照しながら、具体的に説明する。
S3において検定回数がN回に到達したときは、S20において第2の制御フローである第1流量監視ユニット2の定期点検の制御に移行する。この場合、半導体製造装置6の稼働は停止される。S21において第1流量監視ユニット2と第2流量監視ユニット3とを同時に用いて流量検定を行う。具体的には、第1圧力計23の圧力降下量と第2圧力計の圧力上昇量を同時に計測して流量検定を行う。S22において両者が検定した流量のズレ量がX%以上でないと認定したときは、S25において第1流量監視ユニット2のズレ量を補正し、S28においてプロセスを開始する。この場合、第2流量監視ユニット3によって算定した流量を正として、第1流量監視ユニット2によって算定する流量が第2流量監視ユニット3の算定値に合致するよう零点又は係数を修正する。なお、第1の制御フローでは、第1流量監視ユニット2は第2流量監視ユニット3の流量検定によって補正された流量で監視しているが、第2制御フローでは、その補正無しの値を基準に補正値を決定する。
【0039】
一方、S22において両者が検定した流量のズレ量がX%以上であると認定したときは、S23において他の第1流量監視ユニット2Aと第2流量監視ユニット3とを同時に用いて、もう一度流量検定を行う。S24においても両者が検定した流量のズレ量がY%以上であると認定したときは、S26において第2流量監視ユニット3が故障している疑いが有ると認定して、第2流量監視ユニット3の点検・修理を行う。S24において両者が検定した流量のズレ量がY%以上でないと認定したときは、S27において第1流量監視ユニット2の故障と認定して点検・修理を行う。なお、X%及びY%の判定値は、任意に設定できるが、例えば、±1%程度に設定する。
このように、第2の制御フローは、第1流量監視ユニット2を、より信頼性の高い第2流量監視ユニット3によって定期的に自己診断することによって、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を実現しつつ、必要以上の稼働率低下を防止している。
【0040】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態のガス流量監視システム100によれば、流量制御機器10の流量精度を常時監視しつつ、必要な場合には、再検定又は流量監視ユニット自体の自己診断を含む、より信頼性の高い流量検定を行うガス流量監視システムを提供することができる。
【0041】
具体的には、本実施形態によれば、第1流量監視ユニット2は、複数のプロセスガスライン1の内、選択した任意のプロセスガスライン11B、11Dに備えるので、重要なプロセスガスラインを選定して、流量の常時監視ができる。そのため、例えば、流量制御機器10内の細管部分に固形物が析出しやすい成膜用材料ガスを使用するガスラインに第1流量監視ユニット2を備えることによって、流量異常が生じやすいプロセスガスラインの流量精度を常時監視して、その異常を素早く発見できる。その結果、半導体ウェハの歩留率の向上を効果的に実現できる。
また、第2流量監視ユニット3は、第2ライン遮断弁13の下流側流路14がプロセスチャンバ5の上流側で合流し、合流後流路15から分岐する排出流路16、17に備えるので、流量制御機器10から排出されるガス圧を高精度に計測することができる。ガス圧を高精度に計測することができるのは、流量制御機器10から排出されるガス圧は、プロセスガス供給源からの高いガス圧に比べて低く、通常、排出流路16、17には吸引ポンプ18を設けているので、第2流量監視ユニット3においては、真空に近い低圧となり高精度の隔膜式の真空圧力計を用いることができること等の理由からである。
【0042】
また、本実施形態によれば、第1流量監視ユニット2によって流量制御機器10の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニット2が複数回流量異常と検知した時に第2流量監視ユニット3によって流量制御機器10の流量異常の有無を再検定するよう指令する制御コントローラ4を有するので、流量制御機器10の流量精度を常時監視しつつ、常時監視において流量異常が複数回確認された時には、より高精度な再検定を行い、第1流量監視ユニット2の誤差なのか、流量制御機器10自体の異常なのかを判定することができる。
したがって、第1流量監視ユニット2の流量精度を第2流量監視ユニット3によって補完することで、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を行うことができる。また、ガス供給システムを停止することになる第2流量監視ユニット3による流量検定の回数を必要最小限に減らして、半導体製造装置6におけるガス供給システムの稼働率向上にも寄与できる。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1流量監視ユニット2によって流量制御機器10の流量を常時監視するとともに、第1流量監視ユニット2が所定回数だけ流量検定した時に第1流量監視ユニット2と第2流量監視ユニット3とを同時に流量検定することによって、第1流量監視ユニット2の検定ズレ量を第2流量監視ユニット3の流量検定結果に基づいて補正するよう指令する制御コントローラ4を有するので、流量制御機器10の流量精度を常時監視しつつ、常時監視する第1流量監視ユニット2の検定量を高精度な第2流量監視ユニット3で校正(自己診断)することによって、システム全体として、より信頼性の高い流量監視を行うことができる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上述した実施形態では、第1の制御フローにおいて、第1流量監視ユニット2が、流量検定の信頼性が低いので、複数回流量異常と認めたときに、流量異常が本当に生じている可能性が高いと判断して、より流量検定の信頼性が高い第2流量監視ユニット3を用いて流量検定を行い、流量制御機器10のズレ量を補正している。このとき、流量制御機器10のズレ量(補正前の値)の履歴を記憶しておくことによって、流量制御機器10のズレ量の傾向監視をすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば半導体製造装置におけるプロセスガス等のガス供給システムに使用する流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量を検定するガス流量監視システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1、11A〜11D プロセスガスライン
2、2B、2D 第1流量監視ユニット
3 第2流量監視ユニット
4 制御コントローラ、制御部
5 プロセスチャンバ
6 半導体製造装置
10、10A〜10D 流量制御機器
12、12A〜12D 第1ライン遮断弁
13、13A〜13D 第2ライン遮断弁
14 下流側流路
15 合流後流路
16 第1排出流路
17 第2排出流路
18 吸引ポンプ
21 第1開始遮断弁
22 第1測定用タンク
23 第1圧力計
24 第1温度計
25 レギュレータ
26 第1マニホールド
31 第2開始遮断弁
32 第2測定用タンク
33 第2圧力計
34 第2温度計
35 操作遮断弁
36 第2マニホールド
100 ガス流量監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガス供給源からのガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、前記流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで前記流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、
前記プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの前記流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、
前記プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、
前記第1流量監視ユニットによって前記流量制御機器の流量を常時監視するとともに、前記第1流量監視ユニットが複数回流量異常と検知した時に前記第2流量監視ユニットによって前記流量制御機器の流量異常の有無を再検定するよう指令する制御部とを有することを特徴とするガス流量監視システム。
【請求項2】
プロセスガス供給源からのガスを流量制御機器を経由してから所定のプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに配設し、前記流量制御機器の前後におけるガス圧の下降又は上昇を測定することで前記流量制御機器の流量監視を行うガス流量監視システムにおいて、
前記プロセスガスラインの内、選択した任意のプロセスガスラインの前記流量制御機器の上流側流路に備える第1流量監視ユニットと、
前記プロセスチャンバの上流側流路から分岐する排出流路に備える第2流量監視ユニットと、
前記第1流量監視ユニットによって前記流量制御機器の流量を常時監視するとともに、前記第1流量監視ユニットが所定回数だけ流量検定した時に前記第1流量監視ユニットと前記第2流量監視ユニットとを同時に流量検定することによって、前記第1流量監視ユニットの検定ズレ量を前記第2流量監視ユニットの流量検定結果に基づいて補正するよう指令する制御部とを有することを特徴とするガス流量監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84857(P2013−84857A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225180(P2011−225180)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】