説明

ガラスの成形装置及び強化ガラス製造装置

【課題】本発明は、ガラス成形時に、ガラスの温度を適温に保つことができる技術の提供を課題とする。
【解決手段】第1ヒータ27が内蔵されガラス11の縁部53を支える成形リング24と、第2ヒータ28が内蔵されガラス11を上から押して成形する成形型29と、成形リング24の開口19内にガラス11の中央部55を下から温める第3ヒータ40とからなることを特徴とする。
【効果】これにより、ガラス11を全面的に温めることができる。ガラス成形時に、ガラス11の温度低下を防ぎ、ガラス11の温度を適温に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを所定の形状に成形するガラスの成形装置及びこのガラスの成形装置を用いた強化ガラス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に用いられるウインドウガラスは、所定の形状に曲げられたガラスが用いられる。所定の形状にガラスを成形するための成形装置、及びこのような成形装置で成形したガラスを冷却することで強化ガラスを得る強化ガラス製造装置が提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8に示すように、ガラス製造装置100は、ガラス101の搬送路102と、この搬送路102上に設けられガラス101を加熱する加熱炉103と、この加熱炉103の下流に設けられ加熱されたガラス101を成形する成形装置104と、この成形装置104の下流に配置され成形されたガラス101を冷却する冷却装置105とからなる。
【0004】
成形装置104は、加熱炉103で加熱されたガラス101を支える成形リング107と、この成形リング107で支えられたガラス101を押すことでガラス101を所定の形状に成形する成形型108とからなる。
【0005】
このような成形装置104で成形されたガラス101を、冷却装置105で急速に冷却することで強化ガラス109を得ることができる。
【0006】
ところで、このような成形装置104によれば、成形リング107にガラス101が載せられている間に、ガラス101の温度が低下する。冷却装置105に搬送される際の温度が低すぎると、強化ガラス109の品質が低下する。
一方、温度の低下を見込んで、加熱炉103での加熱温度を高くすると、ガラス101の自重でガラス101が必要以上に曲がってしまう。
特に薄いガラス(3.1mm以下のガラス)でこれらの傾向が顕著である。
【0007】
ガラス成形時に、ガラスの温度を適温に保つことができる技術の提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−152333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ガラス成形時に、ガラスの温度を適温に保つことができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る成形装置は、第1ヒータが内蔵されガラスの縁部を支える成形リングと、第2ヒータが内蔵され前記ガラスを上から押して成形する成形型と、前記成形リングの開口内に配置され前記ガラスの中央部を下から温める第3ヒータとからなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る成形装置は、第1ヒータが内蔵されガラスの縁部を支える成形リングと、第2ヒータが内蔵され前記ガラスを上から押して成形する成形型と、前記ガラスを搬送する複数本の搬送ローラと、これらの搬送ローラの上面が前記成形リングの上面より高い位置から前記成形リングの上面より低い位置まで移動するように前記搬送ローラを昇降させるローラ昇降手段と、平面視で前記搬送ローラと重ならない位置に且つ前記成形リングの開口内に配置され前記ガラスの中央部を下から暖める第3ヒータと、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る成形装置は、ローラ昇降手段は、搬送ローラの上面が第3ヒータの下面より下位になるまで、搬送ローラを下降させることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る強化ガラス製造装置は、ガラスの搬送路に沿って、前記ガラスを加熱する加熱炉と、加熱されたガラスに成形を施す成形装置と、成形されたガラスを冷却して強化ガラスを得る冷却装置とがこの順に設けられている強化ガラス製造装置において、
前記成形装置は、第1ヒータが内蔵されガラスの縁部を支える成形リングと、第2ヒータが内蔵され前記ガラスを上から押して成形する成形型と、前記成形リングの開口内に配置され前記ガラスの中央部を下から温める第3ヒータとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、成形リングの開口内にガラスの中央部を下から温める第3ヒータが備えられる。
ガラスの縁部及び上面を温める第1、第2ヒータの他に、ガラスの中央部を下から温める第3ヒータを設ける。これにより、ガラスを全面的に温めることができる。ガラス成形時に、ガラスの温度低下を防ぎ、ガラスの温度を適温に保つことができる。
【0015】
請求項2にかかる発明でも、成形リングの開口内にガラスの中央部を下から温める第3ヒータが備えられる。
ガラスの縁部及び上面を温める第1、第2ヒータの他に、ガラスの中央部を下から温める第3ヒータを設ける。これにより、ガラスを全面的に温めることができる。ガラス成形時に、ガラスの温度低下を防ぎ、ガラスの温度を適温に保つことができる。
【0016】
加えて、請求項2は、成形リングの上面より高い位置から成形リングの上面より低い位置まで昇降される搬送ローラを備える。
搬送ローラ上にガラスがある場合に、搬送ローラを降下させることで、ガラスを成形リングへ載せ替えることができる。一方、成形リング上にガラスがある場合に、搬送ローラを上昇させることでガラスを回収することができる。ガラスの載せ替え作業が、搬送ローラの昇降のみで行うことができる。載せ替え作業にかかる時間が短くてすみ、成形作業の作業時間の短縮を図ることができる。
【0017】
請求項3にかかる発明では、ローラ昇降手段は、搬送ローラの上面が第3ヒータの下面より下位になるまで、搬送ローラを下降させる。搬送ローラを第3ヒータより下位になるまで下降させることで、搬送ローラが第3ヒータから受ける熱の影響を小さくすることができる。これにより、例えば、第3ヒータに断熱材を配置する等の熱対策を最小限にすることができ、第3ヒータをコンパクトにすることができる。
【0018】
請求項4にかかる発明でも、成形リングの開口内にガラスの中央部を下から温める第3ヒータを備える。
ガラスの縁部及び上面を温める第1、第2ヒータの他に、ガラスの中央部を下から温める第3ヒータを設ける。これにより、ガラスを全面的に温めることができる。ガラス成形時に、ガラスの温度低下を防ぎ、ガラスの温度を適温に保つことができる。これにより、高品質の強化ガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る強化ガラス製造装置の平面図である。
【図2】本発明に係る成形装置の断面図である。
【図3】搬送ローラと第3ヒータとの平面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図4の作用図である。
【図6】本発明の成形装置におけるガラス搬入から成形までを説明する図である。
【図7】本発明の成形装置におけるガラス搬出を説明する図である。
【図8】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0021】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、強化ガラス製造装置10は、ガラス11を搬送する搬送路12と、この搬送路12上に設けられガラス11を加熱する加熱炉13と、この加熱炉13の下流に設けられ加熱されたガラス11に成形を施す成形装置14と、この成形装置14の下流に設けられ成形されたガラス11を冷却して強化ガラス15を得る冷却装置16とからなる。
【0022】
搬送路12は、加熱炉13から成形装置14までガラス11を搬送する第1搬送手段17と、この第1搬送手段17の下流に設けられ成形装置14内のガラス11を搬送する第2搬送手段18と、この第2搬送手段18の下流に設けられ冷却装置16内の強化ガラス15を搬送する第3搬送手段19とからなる。
【0023】
第1搬送手段17はローラテーブルが採用でき、第3搬送手段19はガラス11を空気の力で浮上させる浮上搬送手段が採用できる。
第2搬送手段18は、例えば複数本の搬送ローラ20と、これらの搬送ローラ20を一括して支えるローラ支持枠23とからなる。
そして、ローラ支持枠23を囲うようにして、ガラス11の成形時にガラス11を支持する成形リング24が設けられている。すなわち、成形リング24の開口25内に搬送ローラ20は配置されている。
成形装置14の詳細について次図で説明する。
【0024】
図2に示されるように、成形装置14は、支柱26、26で所定の高さに支持され第1ヒータ27が内蔵される成形リング24と、この成形リング24の上方に配置され第2ヒータ28が内蔵される成形型29と、支柱26、26の内側に配置されローラ支持枠23及び搬送ローラ20を昇降可能に支持する昇降手段31、31と、これらの昇降手段31、31の間に配置されたテーブル36と、このテーブル36に載せられているヒータ支持フレーム38と、このヒータ支持フレーム38の上部に設けられガラス11の中央部55を下から温める第3ヒータ40とからなる。
【0025】
なお、第3ヒータ40は、次のように支持されることが望ましい。
すなわち、ヒータ支持フレーム38の上面に第1脚41を立て、この第1脚41に上方に開口したチャンネル形状のヒータハウジング42を載せる。このヒータハウジング42の底から上に第2脚43、43を立て、これらの第2脚43、43で、第3ヒータ40を支持させる。
【0026】
第3ヒータ40は、図面表裏方向に延びており、発生熱線は上下、左右に均等に放射される。左右及び下へ向かう熱は、ガラス11の加熱に寄与しないため、加熱効率が悪くなる。そこで、本実施例では、第3ヒータ40の下及び左右を、熱反射板44で囲った。熱反射板44は熱線を反転させる。
【0027】
反転させた熱線は、一部が第3ヒータ40に当たり、残部がガラス11に向かう。第3ヒータ40に熱線が当たると、第3ヒータ40へ供給する電気エネルギーが節約できる。
ただし、熱の一部が熱反射板44からヒータハウジング42へ向かう。この熱の流れが加熱効率の低下を招く。対策として、熱反射板44とヒータハウジング42との間に断熱材45を充填した。
【0028】
ところで、第3ヒータ40で発生した熱の一部は、第2脚43、43及び第1脚41を通じてヒータ支持フレーム38に伝わる。この現象は熱伝導現象であるため、熱伝導路の断面積に伝熱量が比例する。そこで、本発明では、細くて断面積の小さな第2脚43、43及び第1脚41で第3ヒータ40を支えるようにした。第2脚43、43及び第1脚41に係る伝熱量を小さくすることができ、加熱効率を高めることができる。
【0029】
次に、昇降手段31について説明する。
昇降手段31には、油圧、水圧、空圧のシリンダを用いることができる。その他、ピニオン・ラック機構やリンク機構も採用可能であるため、昇降手段31は任意の形式のものが採用できる。
【0030】
次に、搬送ローラ20と第3ヒータ40との関係について詳細に説明する。
図3に示されるように、ローラ支持枠23の四隅にそれぞれ昇降手段31が設けられ、ローラ支持枠23内に設けられた軸受51を介して搬送ローラ20が設けられている。
このように配置されている搬送ローラ20に対して、平面視で重ならないように、且つ搬送ローラ20と交互に、第3ヒータ40が配置されている。
【0031】
搬送ローラ20が、上昇限位置にある形態を図4で説明し、下限位置にある形態を図5で説明する。
図4に示されるように、昇降手段31、31を延ばすことにより、搬送ローラ20を、第3ヒータ40の上面よりも上昇させることができる。
【0032】
また、図5に示されるように、昇降手段31、31を縮めることにより、搬送ローラ20を、第3ヒータ40の下方のヒータ支持フレーム38の側方まで下げることができる。
【0033】
平面視で、搬送ローラ20と重ならない位置に第3ヒータ40を配置している(図3参照)ため、第3ヒータ40が干渉することなく搬送ローラ20をヒータ支持フレーム38の側方まで下げることができる。即ち、昇降手段31(昇降手段)は、搬送ローラ20の上面が第3ヒータ40の下面より下位になるまで、搬送ローラ20を下降させる。
【0034】
搬送ローラ20を第3ヒータ40より下位になるまで下降させることで、搬送ローラ20が第3ヒータ40から受ける熱の影響を小さくすることができる。これにより、例えば、第3ヒータ40に断熱材を配置する等の熱対策を最小限にすることができ、第3ヒータ40をコンパクトにすることができる。
【0035】
次に、成形装置の作用について説明する。
図6(a)に示されるように、加熱炉(図1、符号13)から成形装置14内にガラス11が搬送される。
ガラス11が成形リング24の上方まで搬送されたら、ガラス11の搬送を止める。
【0036】
次に(b)に示されるように、昇降手段31を作動させ搬送ローラ20を成形リング24よりも下げる。すると、搬送ローラ20に載っていたガラス11が、成形リング24に乗り移る。
【0037】
搬送ローラ20が成形リング24の下位にあるため、成形型29を下げることができる。そこで、(c)に示すように、成形型29を下ろし、ガラス11を所定の形状に成形する。
このとき、第1ヒータ27によって、ガラス11の下面縁部53が温められ、第2ヒータ28によってガラス11の上面54が温められ、第3ヒータ40によってガラス11の中央部55が下から温められている。
【0038】
ガラス11の縁部53及び上面54を温める第1、第2ヒータ27、28の他に、ガラスの中央部55を下から温める第3ヒータ40を設ける。これにより、ガラス11を全面的に温めることができる。ガラス成形時に、ガラス11の温度低下を防ぎ、ガラス11の温度を適温に保つことができる。
このようにして成形されたガラス11を、冷却装置(図1、符号16)に向かって搬送する。このときの作用を次図で説明する。
【0039】
図7(a)に示されるように、成形が終了したら、成形型29を上げる。
次に、(b)に示すように昇降手段31を作動させ搬送ローラ20を上昇させる。すると、成形リング24に載っていたガラス11が、搬送ローラ20に乗り移る。
以降、ガラス11は、搬送ローラ20により、冷却装置(図1、符号16)に向かって搬送される。適温に保った状態で冷却装置に搬送することで、ガラスを急激に冷却することができ、高品質の強化ガラスを製造することができる。
【0040】
以上に説明したように、成形装置14は、成形リング24の上面より高い位置から成形リング24の上面より低い位置まで昇降される搬送ローラ20を備えている。
搬送ローラ20上にガラス11がある場合に、搬送ローラ20を降下させることで、ガラス11を成形リング24へ載せ替えることができる。一方、成形リング24上にガラス11がある場合に、搬送ローラ20を上昇させることでガラス11を回収することができる。ガラス11の載せ替え作業が、搬送ローラ20の昇降のみで行うことができる。載せ替え作業にかかる時間が短くてすみ、成形作業の作業時間の短縮を図ることができる。
【0041】
尚、本発明に係る強化ガラス製造装置では、第1搬送手段にローラを用い、第3搬送手段にガラスを空気の力で浮かせて搬送する方法を用いた。しかし、これらの方法は任意に選択することができ、第1搬送手段にガラスを空気の力で浮かせて搬送する方法を用い、第3搬送手段にローラを用いることや、すべての搬送にローラを用いる等、ガラスの搬送方法は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の強化ガラス製造装置は、車両に装着されるウインドウガラスの製造に好適である。
【符号の説明】
【0043】
10…強化ガラス製造装置、11…ガラス、12…搬送路、13…加熱炉、14…成形装置、15…強化ガラス、16…冷却装置、20…搬送ローラ、24…成形リング、25…開口、27…第1ヒータ、28…第2ヒータ、29…成形型、31…昇降手段、40…第3ヒータ、53…縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒータが内蔵されガラスの縁部を支える成形リングと、第2ヒータが内蔵され前記ガラスを上から押して成形する成形型と、前記成形リングの開口内に配置され前記ガラスの中央部を下から温める第3ヒータとからなることを特徴とするガラスの成形装置。
【請求項2】
第1ヒータが内蔵されガラスの縁部を支える成形リングと、第2ヒータが内蔵され前記ガラスを上から押して成形する成形型と、前記ガラスを搬送する複数本の搬送ローラと、これらの搬送ローラの上面が前記成形リングの上面より高い位置から前記成形リングの上面より低い位置まで移動するように前記搬送ローラを昇降させるローラ昇降手段と、平面視で前記搬送ローラと重ならない位置に且つ前記成形リングの開口内に配置され前記ガラスの中央部を下から暖める第3ヒータと、からなることを特徴とするガラスの成形装置。
【請求項3】
前記ローラ昇降手段は、前記搬送ローラの上面が前記第3ヒータの下面より下位になるまで、前記搬送ローラを下降させることを特徴とする請求項2記載のガラスの成形装置。
【請求項4】
ガラスの搬送路に沿って、前記ガラスを加熱する加熱炉と、加熱されたガラスに成形を施す成形装置と、成形されたガラスを冷却して強化ガラスを得る冷却装置とがこの順に設けられている強化ガラス製造装置において、
前記成形装置は、第1ヒータが内蔵されガラスの縁部を支える成形リングと、第2ヒータが内蔵され前記ガラスを上から押して成形する成形型と、前記成形リングの開口内に配置され前記ガラスの中央部を下から温める第3ヒータとからなることを特徴とする強化ガラス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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