説明

ガラス接合バッグ

【目的】製造された合わせガラスが接着することなく、容易に取り出せ、かつガラス接合バッグBの下布の表面などを損傷することなく設置可能であり、製造される合わせガラスに凹凸を生じさせない、耐久性の良好なガラス接合バッグを提供することを目的とする。
【構成】金属製の支持板5とこの支持板に被せられる上布3とこれらの周縁を開閉自在にシールするためのシール部材7を備えたことを特徴とする。また、前記上布の内側に粘着防止剤を含浸させた粘着防止布9を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス接合バッグ、さらに詳細には、製造された合わせガラスからの中間膜からはみ出した物質がバッグ内壁に接着せず、かつガラスを接合バック内に設置するときに、前記バッグに損傷を与えないガラス接合バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、たとえばポリカーボネート、アクリル樹脂などのプラスチック板あるいは無機ガラスなどの2枚の透明板1間に接着性合成樹脂の中間膜2を挟み込んだ構造をしている。このような合わせガラスを製造する場合、たとえば特公昭63−12786号に記載されているように、2枚の透明板1に中間膜2を挟み込んだ積層体をガラス接合バッグB中に装入し(図5参照)、前記ガラス接合バッグB内を減圧するとともに、このガラス接合バッグBを熱風によって、加熱することによって製造する。このように合わせガラスの製造方法に使用されるガラス接合バッグBは上布3と下布4の周縁部を気密ファスナーなどで開閉自在にした構造になっている。
【特許文献1】特公昭63−12786号公報
【特許文献2】特開2001−97746公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような積層体をバッグB内に設置する際、バッグBの下布4に強く接触し、下布4の表面を傷つけたり、また下布4自体を損傷する事態を生じる恐れがあった。さらにバッグBはゴム引き布で製造されているが、一般にゴム引き布は1m幅のものが多いため、たとえば4m幅のバッグBを製造する場合、1m幅のゴム引き布をつなぎあわせて所定の幅にしているのが現状である。しかしながら、図6に示すようにゴム引き布Fのつなぎ目においては、ゴム引き布Fに凹凸F1を生じる結果となり、合わせガラスGを製造する場合に、この凹凸F1に対応する凹凸が合わせガラスG表面に生じてしまうという欠点もあった。
【0004】
さらに、ガラス接合バッグB内は減圧状態になるために中間膜2が滲みだして合わせガラスを取り出すときに前記ガラス接合バッグBに粘着あるいは接着し、取り出しが容易でないという欠点があった。
【0005】
このような問題を解決するためガラス接合バッグ内面に粘着防止用のフィルム(たとえばフッ素フィルム)を取り付けている。しかしながら、このようなフィルムは柔軟性が乏しく、更に耐久性に劣るため、交換頻度が高く、コスト高になるという欠点があった。
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、製造された合わせガラスが接着することなく、容易に取り出せ、かつガラス接合バッグBの下布の表面などを損傷することなく設置可能であり、製造される合わせガラスに凹凸を生じさせない、耐久性の良好なガラス接合バッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するため、本発明によるガラス接合バッグは、金属製の支持板とこの支持板に被せられる上布とこれらの周縁を開閉自在にシールするためのシール部材を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によるガラス接合バッグは、また、前記上布の内側に粘着防止剤を含浸させた粘着防止布を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下布の代わりに金属製の支持板を設けたため、前記積層体をガラス接合バッグに設置する場合に、前記バッグを損傷することなく、また前記支持板は基本的に平坦であるため、製造された合わせガラスに微細な凹凸を生じることがないという利点を生じる。更に、柔軟性のある布に粘着防止剤を含浸せしめて形成した粘着防止布を、ガラス接合バッグの上布内側に貼着したため、ガラス接合時に中間膜が滲みだしても、ガラス接合バッグに粘着することはなく容易に取り出すことができる。さらに柔軟性のある布を使用しているため、バッグに直接縫製により一体化でき、バッグの寿命まで前記粘着防止布を使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明によるガラス接合バッグBの一実施態様の平面図、図2(a)は前記図1のA−A断面図、(b)は断面における模式図であるが、これらの図より明らかなように、ガラス接合バッグBは上布3と支持板5とを有しており、前記上布3と支持板5の周縁6には全周にわたってシール部材7が設けられた構造になっている。そして前記上布3および支持板5の一辺61は、前記シール部材7が開放しないように接着固定された構造になっている。上記接着固定された一辺61の端部に補強部材8が設けられており、他の辺の前記シール部材7が開放されたときに前記接着固定部に開方向の力が作用しないようになっている(図1および図2参照)。
【0011】
前記支持板5は金属製で、好ましくは軽量で、かつ平滑な、たとえばアルミニウム板材、鉄の板材などを使用する。
【0012】
この支持板5にいずれかにガラス接合バッグB内の空気を吸引するための空気吸引口Sを設けるのがよい。
【0013】
上述の支持板5に被せられる上布3は、この実施態様において、図2に示すように前記支持板5の表面積に対し、若干大きな表面積を備えている。このように上布3の表面積を大きくすることによって、前記ガラス接合バッグB内を減圧するときに、上布3に縦横に皺が寄ることになり、この皺によって空気の流路が形成され、そのためガラス接合バッグB内を均等に減圧することが可能になり、良好な品質の合わせガラスを製造可能になるという利点を生じる。好ましくは、図2(b)に示すように、前記支持板5の長さをXとし、合わせガラスGの厚さをHとしたとき、上布3の長さLはX+4HからX+40Hであるのが好ましい。更に好ましくは上布3の長さLはX+4HからX+20Hである。上布3の長さLがX+4H未満の長さであると空気流路が充分に確保できない恐れがあり、一方X+40Hを超えて設けても、効果を増進することはなく、布の使用量が多くなりコスト高になるとともに、作業性も悪化する。この長さLは合わせガラスGのあらゆる方向において充足するのが好ましい。
【0014】
さらに図1、図3および図4に示すように、上布3の内側に粘着防止布9が貼着されている。この粘着防止布9は、たとえば、図3、図4(a)に示すように前記シール部材7の内側に全周にわたって設けられた台座10を介して、粘着防止布9が形成されている。すなわち、前記粘着防止布9を前記台座10に縫製Sによって取り付けるとともに、前記粘着防止布9が取り付けられた台座10を、前記上布3の内側に接着剤などによって貼着することによって設けることができる。
【0015】
この台座10を設けることなく、粘着防止布9を上布3に貼着する際に、直接縫製により設けると、縫い目より空気が漏れる恐れがあり、気密性が損なわれる恐れを生じる。さらに上布3に全面に接着剤などにより貼着した場合には、柔軟性が損なわれる恐れがある。上述のような事態を防止するために、本発明においては、台座10を介して粘着防止布9を上布3の内側に取り付けている。
【0016】
また、図4(b)に示すように、上布3に直接縫製により粘着防止布9を設ける場合には、前記上布3の外側から縫製部Sを被うようにシールテープ11を貼着する。
【0017】
このような貼着防止布9は、前述のように、柔軟性のある布に粘着防止剤を含浸させたものである。このような布は、柔軟性があり、かつ耐熱性がある布であれば、基本的にいかなるものでもよい。たとえば、ポリアミド6、ポリエステル繊維、ビニロン、芳香族アミド、ガラスクロス等の布を使用することができる。
【0018】
このような布に含浸させる粘着防止剤は、前記中間膜2に粘着防止効果があるものであれば基本的にいかなるものでもよい。前記中間膜2としては、たとえば、EVA、PVB、ウレタン系、アクリル系等のフィルムが挙げられる。このような中間膜2の場合、たとえばシリコーン系の粘着防止剤、特に架橋性シリコーンの一種以上を用いることができる。このような架橋性シリコーンとしては、Poloncoat E、Cat PG、Cat PD(いずれも商標名;信越化学)などの組み合せを使用することができる。
【0019】
前記粘着防止剤の含浸量は、好ましくは1〜100g/m、さらに好ましくは2〜50g/mであるのが好ましい。1g/m未満であると、粘着防止効果が十分でない恐れがあり、一方、100g/mを超えると、柔軟性が失われて硬くなり、耐久性が劣る恐れを生じる。
【0020】
このような粘着防止剤を含浸させる方法は、本発明において基本的に限定されるものではない。たとえば、粘着防止剤を溶剤に溶解した後、布を前記溶液にディッピングすることにより含浸させることができる。このような溶剤としては、架橋性シリコーンの場合、トルエンなどを使用することができる。
【0021】
上述のように構成された粘着防止布9は、好ましくは0.05〜1.0mmの厚さであるのがよい。0.05mm未満であると、ガラスエッジのこすれによる摩耗耐久性が十分でない恐れがあり、一方、1.0mmを超えると、柔軟性が損なわれる恐れがある。
【0022】
前記支持板5は金属製であり、必ずしも粘着防止布9を必要としないが、1つの実施態様においては、前記支持板5の内側にも粘着防止布9を設けることができる。この場合、図4(a)と同様に、前記粘着防止布9を前記台座10に縫製Sによって取り付けるとともに、前記粘着防止布9が取り付けられた台座10を、前記支持板5の内側に接着剤などによって貼着することによって設けることができる。
【実施例】
【0023】
PoloncoatE:CatPG:CatPD:トルエン=10.0:0.2:0.2:89.6重量部の溶液に厚さ0.15mmのポリアミド6製布をディッピングし、130℃で1時間加熱して前記粘着防止剤を布に焼き付け、粘着防止布を製造した。
【0024】
図1ないし図4(a)に示すように、この粘着防止布9に台座10を縫製したのち、前記台座を上布3に接着剤で貼着し、厚さ2mmの表面の平滑なアルミニウム板材(支持板)の周縁に取り付け、ガラス接合バッグを製造した(実施例1)。このとき、製造される合わせガラスG(30mm厚)のあらゆる方向において、前記支持板9の長さX=4mにし、前記上布3の長さLを4.2mとした。
【0025】
また、図4(b)に示すように、粘着防止布9を上布3の周縁部に全周にわたって直接縫製により取り付け、前記上布3の外側より縫製部Sにシールテープ11を貼着して被い、次いで厚さ2mmの表面の平滑なアルミニウム板材(支持板)の周縁に取り付け、ガラス接合バッグを製造した(実施例2)。このとき、製造される合わせガラスG(30mm厚)のあらゆる方向において、前記支持板9の長さX=4mにし、前記上布3の長さLを4.2mとした。
【0026】
このような構成のガラス接合バッグを使用して、合わせガラスを製造した。2枚の透明板(無機ガラス)1の中間に中間膜2(EVA)を設け、ガラス接合バッグ内を減圧するとともに、熱風によって加熱し、合わせガラスを製造した。
【0027】
比較例1として、上布3及び下布4の内側にフッ素樹脂フィルムを設けたもの、比較例2として上布3及び下布4になんら処理を施さないものを製造した。
【0028】
上記実施例1,2および比較例1,2を炉内に設置し、−93KPaの減圧下で100℃×30分→130℃×60分→冷却(空冷)×60分を1サイクルとする耐久試験を1日3サイクル行った。実施例1,2のガラス接合バッグの上布3は約1年間の耐久性があることが明らかになった。これに対し比較例1では1週間後には皺が発生し、かつもろくなり、使用に耐える状態ではなくなっていた。比較例2では、1サイクルごとに約1時間の掃除が必要となり、実用的ではなかった。
【0029】
また実施例1および2では製造された合わせガラスは、表面に凹凸がなく、平滑な合わせガラスを製造することができた。これによって、上布3に図6に示すような凹凸があっても、合わせガラスの表面の平滑さを保持するうえで、影響がないことがわかった。また、前記合わせガラスの品質は、各部分に歪みがなく均等に製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、下布の代わりに金属製の支持板を設けたため、前記積層体をガラス接合バッグに設置する場合に、前記バッグを損傷することなく、また前記支持板は基本的に平坦であるため、製造された合わせガラスに微細な凹凸を生じることがないという利点を生じる。更に柔軟性のある布に粘着防止剤を含浸せしめて形成した粘着防止布を、ガラス接合バッグの上布の内側に貼着したため、ガラス接合時に中間膜が滲みだしても、ガラス接合バッグに粘着することはなく容易に取り出すことができる。さらに柔軟性のある布を使用しているため、バッグに直接縫製により一体化でき、バッグの寿命まで前記粘着防止布を使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のガラス接合バッグの一実施態様の平面図。
【図2】図1のA−A断面図および断面模式図。
【図3】前記実施態様の詳細図。
【図4】前記実施態様の粘着防止布を取り付けた状態を示す図。
【図5】ガラス接合バッグを使用するときの説明図。
【図6】従来の上布および下布を使用し製造したときにおけるガラスの状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 透明板
2 中間膜
3 上布
4 下布
5 支持板
6 周縁
61 辺
7 シール部材
9 粘着防止布
10 台座
11 シールテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の支持板とこの支持板に被せられる上布とこれらの周縁を開閉自在にシールするためのシール部材を備えたことを特徴とするガラス接合バッグ。
【請求項2】
前記支持板はアルミニウム板材あるいは鉄板材であることを特徴とする請求項1記載のガラス接合バッグ。
【請求項3】
前記支持板の長さをXとし、接合される合わせガラスGの厚さをHとしたとき、上布の長さLはX+4HからX+40Hであることを特徴とする請求項2または3記載のガラス接合バッグ。
【請求項4】
前記上布の内側に粘着防止剤を含浸させた粘着防止布を貼着したことを特徴とする請求項1から3記載のいずれかのガラス接合バッグ。
【請求項5】
前記粘着防止布は、前記上布に直接設けられていることを特徴とする請求項4記載のガラス接合バッグ。
【請求項6】
前記粘着防止布は縫製により取り付けられており、前記縫製部は上布の外側より、シールテープによって被われていることを特徴とする請求項5記載のガラス接合バッグ。
【請求項7】
前記粘着防止布は前記上布の周縁付近に台座を介して設けられることを特徴する請求項4記載のガラス接合バッグ。
【請求項8】
前記粘着防止布は前記台座に縫製により取り付けられることを特徴とする請求項7記載のガラス接合バッグ。
【請求項9】
前記粘着防止剤は架橋性シリコーンの一種以上であることを特徴とする請求項4から8記載のいずれかのガラス接合バッグ。
【請求項10】
前記粘着防止剤の含浸量は、1〜100g/mである請求項4から9記載のいずれかのガラス接合バッグ。
【請求項11】
前記粘着防止布の基体となる布は、ポリアミド6、ポリエステル繊維、ビニロン、芳香族アミド、ガラスクロスである請求項4から10記載のいずれかのガラス接合バッグ。
【請求項12】
前記粘着防止布は0.05〜1.0mmの厚さである請求項4から11記載のいずれかのガラス接合バッグ。
【請求項13】
前記支持板の内側に粘着防止布が設けられている請求項1から12記載のいずれかのガラス接合バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−182581(P2006−182581A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375511(P2004−375511)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】