説明

ガラス粒の製造方法及び装置

【課題】クラックがなく、大きさの揃ったガラス粒を簡単かつ大量に製造することができるガラス粒の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】周面が平坦な水冷ローラ2aと、周面に多数の凹部3を形成した水冷ローラ2bからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつこれらのローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型2のローラ間に、上部から溶融ガラスを供給して、片面に多数の膨出部11が突設されたガラス帯10をローラの下部側へ連続成形し、次いで、このガラス帯10を膨出部11と薄板部12に分離した後、前記膨出部11を分級して所定の大きさのガラス粒を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラックがなく、大きさの揃ったガラス粒を簡単かつ大量に製造することができるガラス粒の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外径が5〜10mm程度のガラス粒で、しかも大きさの揃ったガラス粒を得る方法としては、大きなガラス塊を成形し、これを破砕機等で破砕した後、篩により分級する方法や、前記ガラス塊を水中に投入して急冷しクラックを進展させて破砕した後、分級する方法が一般的である。
しかしながら、このような従来方法においては、所定の大きさ以外のガラス粒が多量に発生するため歩留まりが悪いという問題や、水中急冷の際にガラス粒にクラックが入ってしまい輸送時や使用時において微粒を発生させるという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、周面に球状凹部を形成した2つのローラを水平に近接配置したローラ式成形型を用いて、ガラス球付のガラス帯を連続成形し、そこからガラス球を分離してガラス粒を製造する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、各々のローラに設けた一対の球状凹部同士が完全に一致して回転するように正確な位相合わせが必要となるためローラ稼動条件の設定が難しいという問題や、加熱ローラを使用しているためガラス球を分離するまでに長時間の冷却処理が必要となり、生産速度が遅くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−48731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決して、クラックがなく、大きさの揃ったガラス粒を効率的かつ大量に製造することができるガラス粒の製造方法及び装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつこれらのローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型のローラ間に、上部から溶融ガラスを供給して、片面に多数の膨出部が突設されたガラス帯をローラの下部側へ連続成形し、次いで、このガラス帯を膨出部と薄板部に分離した後、前記膨出部を分級して所定の大きさのガラス粒を得ることを特徴とするガラス粒の製造方法である。
また、この方法によりガラス粒を製造するガラス粒の製造装置であって、溶融ガラスの供給タンクと、この供給タンクの下部に設置されていて、周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型と、このローラ式成形型により連続成形した片面に多数の膨出部が突設されたガラス帯を膨出部と薄板部に分離する分離装置を備えていることを特徴とするガラス粒の製造装置である。
【0007】
前記凹部は、ローラ周面の開口部を最大径として徐々に内径が小さくなる形状であり、凹部の最大深さを前記最大径の80%以下とすることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
また、ガラス帯の薄板部の厚みを、凹部の最大深さの50%以下とすることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつこれらのローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型のローラ間に、上部から溶融ガラスを供給して、片面に多数の膨出部が突設されたガラス帯をローラの下部側へ連続成形するので、所定の大きさの膨出部を大量に生産することができ、また正確な位相合わせも不要であり、冷却時間も短く生産速度を大幅に向上させることが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記凹部は、ローラ周面の開口部を最大径として徐々に内径が小さくなる形状であり、凹部の最大深さを前記最大径の80%以下とするので、成形したガラス帯をローラから容易に離型させることができる。
【0010】
請求項3に係る発明では、ガラス帯の薄板部の厚みを、凹部の最大深さの50%以下とするので、次の分離工程において膨出部にクラックを発生させることなく薄板部を破砕・分離することができる。
【0011】
また、請求項4に係る発明では、溶融ガラスの供給タンクと、この供給タンクの下部に設置されていて、周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型と、このローラ式成形型により連続成形した片面に多数の膨出部が突設されたガラス帯を膨出部と薄板部に分離する分離装置を備えた装置であり、一対のローラの位置合わせを極めて簡単に行うことができ、またローラの回転速度も速くできて、大きさの揃ったガラス粒を効率よく大量に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のガラス粒の製造装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の多数の凹部を形成したローラを示す斜視図である。
【図3】ローラの凹部形状について説明する説明図である。
【図4】ガラス帯の薄板部形状について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明のガラス粒の製造装置を示す概略断面図である。前記ガラス粒は、例えば植木鉢の敷石などの装飾用部材や抗菌性能を持たせた水処理材などに使用されるものであり、粒径が3〜20mm程度のものである。
【0014】
図1において、1は溶融ガラスの供給タンク、2はこの供給タンク1の下部に設置されるローラ式成形型で、一対のローラ2a、2bから構成されている。
前記ローラ2aは周面が平坦な水冷ローラであり、一方、ローラ2bは周面に多数の凹部3、3・・を形成した水冷ローラである。このローラの直径は約10〜20cm、長さは約20〜40cmである。また、図2に示されるように、ローラ2bの周面には多数の凹部3が形成されており、この凹部3は円錐台形状で周面に規則的に配置したものとなっている。凹部3はその他、多角錐台形状、円錐台形状、多角錐台形状、半球形状、半楕円形状など任意の形状とすることができ、また不規則に配置することもできる。
水冷方式としては、内部に冷却媒体の流通管路が形成されており、この流通管路内を流動する冷却水等により冷却が促進される一般的な構造のものを採用することができる。
【0015】
前記ローラ式成形型2の一対のローラ2a、2bは、同軸方向で水平に近接配置され、かつローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるよう構成されている。このローラ式成形型2により、上部から溶融ガラスが供給されて、片面に多数の膨出部11が突設されたガラス帯10がローラの下部側へ連続成形される。
なお図1において、4は前記ガラス帯10を膨出部11と薄板部12に分離するための、例えば水平振動式やドラム式の分離装置である。
【0016】
次に、このような本発明のガラス粒の製造装置によりガラス粒を製造する方法について説明する。
ローラ式成形型2のローラ間に、上部の供給タンク1から溶融ガラスを供給する。ローラの近接部では各ローラ2a、2bが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動しているので、溶融ガラスはこのローラ式成形型2を通過する間に型形状に添って成形・冷却される。この結果、片面に多数の膨出部11が突設されたガラス帯10がローラの下部側へ連続成形されることとなる。次いで、このガラス帯10を分離装置4により膨出部11と薄板部12とに分離した後、例えば篩など(図示せず)の一般的な分級手段により前記膨出部11を分級して、所定の大きさのガラス粒を得るのである。
本発明では従来のような加熱ローラでなく水冷ローラを使用するため、冷却時間が短く生産速度を早くすることができる。なお、前記ローラの回転速度は、約5〜15rpmとかなりの高速回転で運転することが可能である。
【0017】
なお、ローラ2bの周面に形成される凹部3は、図3に示されるように、ローラ周面の開口部を最大径(l)として徐々に内径が小さくなる形状であり、凹部の最大深さ(d)を前記最大径の80%以下とすることが好ましい(d≦0.8×l)。例えば、開口部の最大径を5mmとすると、凹部の最大深さは4mm以下である。
このように、凹部3は徐々に内径が小さくなる形状であるので抜け勾配を確保でき、また凹部の最大深さ(d)を最大径の80%以下としたのでガラス帯10をローラから容易に離型させつつ連続成形することができる。なお、凹部3の具体的な形状としては、円錐台形状、多角錐台形状、円錐台形状、多角錐台形状、半球形状、半楕円形状など任意の形状とすることができる。また、徐々に内径が小さくなる形状としては凹部内周壁の角度が鋭角であればよいが、好ましくは45〜60度である。
【0018】
また、図4に示されるように、ガラス帯10の薄板部12の厚み(t)を、凹部の最大深さ(d)の50%以下とすることが好ましい(t≦0.5×d)。
このように薄板部12の厚みをできるだけ薄くしておくことにより、次工程で膨出部11と薄板部12とに破砕・分離する場合に、板部12のみが簡単に破砕され、しかも膨出部11にクラックが入りにくく高品質のガラス粒を得ることができる。例えば、凹部の最大深さを6mmとすれば、薄板部12の厚みは3mm以下、好ましくは2mm以下である。
【0019】
このように本発明によれば、一対のローラからなる成形型を使用して生産されるため、従来のように破砕後、篩分級して得られるものに比べると歩留まりがよく、かつクラックがない高品質のガラス粒を効率よく大量に生産することができる。また、周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラを用いるため、ローラの位置合わせを簡単に行うことができ、また冷却時間も短く高い生産速度を確保することができるという利点もある。
【符号の説明】
【0020】
1 供給タンク
2 ローラ式成形型
2a 水冷ローラ
2b 水冷ローラ
3 凹部
4 分離装置
10 ガラス帯
11 膨出部
12 薄板部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつこれらのローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型のローラ間に、上部から溶融ガラスを供給して、片面に多数の膨出部が突設されたガラス帯をローラの下部側へ連続成形し、次いで、このガラス帯を膨出部と薄板部に分離した後、前記膨出部を分級して所定の大きさのガラス粒を得ることを特徴とするガラス粒の製造方法。
【請求項2】
凹部は、ローラ周面の開口部を最大径として徐々に内径が小さくなる形状であり、凹部の最大深さを前記最大径の80%以下とする請求項1に記載のガラス粒の製造方法。
【請求項3】
ガラス帯の薄板部の厚みを、凹部の最大深さの50%以下とする請求項1または2に記載のガラス粒の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法によりガラス粒を製造するガラス粒の製造装置であって、溶融ガラスの供給タンクと、この供給タンクの下部に設置されていて、周面が平坦な水冷ローラと、周面に多数の凹部を形成した水冷ローラからなる一対のローラが水平に近接配置され、かつローラの近接部において各ローラが下向きに回転するよう互いに逆方向に駆動されるローラ式成形型と、このローラ式成形型により連続成形した片面に多数の膨出部が突設されたガラス帯を膨出部と薄板部に分離する分離装置を備えていることを特徴とするガラス粒の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−56785(P2012−56785A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200438(P2010−200438)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)