説明

キッチンキャビネット

【課題】 インテリアとしてのデザイン性を確保しつつ、幼児が居ても台所作業を安心して行える対面式のキッチンキャビネットを提供する。
【解決手段】 本発明は、キッチンと共用空間とを仕切る状態で室内に設置される対面式のキッチンキャビネット1に関する。このキャビネット1は、幅方向に並ぶ複数の収容部4を有するキャビネット本体2と、キャビネット本体2の上端部に取り付けられたカウンタートップ3と、キャビネット本体2の共用空間側に貼り付けられた化粧パネル10とを備える。化粧パネル10の表面は、筆記具による筆記とその消去が可能な面よりなり、その表面における上下方向及び幅方向のうちの少なくともいずれかの方向で偏った位置に消去不能な模様を施すことにより、当該表面の大部分に無地の筆記用エリア13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対面式のキッチンキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅用のキッチンキャビネットとして、キッチンと共用空間とを仕切る状態で室内に設置される対面式のキッチンキャビネットが既に市販されている。
かかる対面式のキッチンキャビネットは、シンクやコンロ等が装着されたカウンタートップと、このカウンタートップを下方から支持する箱形のキャビネット本体とから主構成されており、部屋の隅部に沿って設置される通常のキッチンキャビネットと異なり、料理の準備や洗い物等の台所作業をしながらダイニングルームやリビングルームの様子が分かるという特徴がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このため、対面式のキッチンキャビネットでは、例えば、リビングルームで遊ばせている幼児の状態を確認しつつ台所作業を行えるので、幼児の子育てに忙しい家庭に適していると考えられている。
なお、本明細書において、「共用空間」とは、リビングルーム又はダイニングルーム、若しくはこれらを兼用したリビングダイニングルームのことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−102566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の対面式のキッチンキャビネットにおいて、特に幼児が居る家庭の場合に、キャビネット本体の共用空間側の壁面に「お絵かき」や「落書き」ができれば、1人の場合でも幼児を共用空間で楽しく遊ばせておくことができ、料理の準備や洗い物等の台所作業が捗って至便であると考えられる。
しかし、特に対面式のキッチンキャビネットでは、カウンタートップやキャビネット本体の模様や色調を、室内の壁面その他の色調に合わせて選択するのが一般的であることから、キャビネット本体の壁面にユーザが直接筆記することは全く想定されていなかった。
【0006】
一方、キャビネット本体の共用空間側の表面を、筆記具による筆記とその消去が可能な面に形成すれば、その表面にお絵かきや落書きを行うことを幼児に許容することができるが、この場合、キャビネット本体の表面全体を白色系の無地に統一すると、キッチンキャビネットのインテリアとしてのデザイン性が悪化し、キャビネット自体の商品価値が低下する恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、インテリアとしてのデザイン性を確保しつつ、幼児が居ても台所作業を安心して行える対面式のキッチンキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キッチンと共用空間とを仕切る状態で室内に設置される対面式のキッチンキャビネットであって、幅方向に並ぶ複数の収容部を有するキャビネット本体と、前記キャビネット本体の上端部に取り付けられたカウンタートップと、前記キャビネット本体の共用空間側に貼り付けられた化粧パネルとを備え、前記化粧パネルの表面が、筆記具による筆記とその消去が可能な面よりなり、前記表面における上下方向及び幅方向のうちの少なくともいずれかの方向で偏った位置に消去不能な模様を施すことにより、当該表面の大部分に無地の筆記用エリアが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のキッチンキャビネットによれば、化粧パネルの表面の偏った位置に消去不能な模様が施されているので、キャビネット本体のインテリアとしてのデザイン性を有効に確保することができる。
また、化粧パネルの表面における偏った位置に模様を施すことにより、当該表面の大部分に無地の筆記用エリアが設けられているので、その筆記用エリアにお絵かきや落書きを行わせることにより、幼児が居ても台所作業を安心して行うことができる。
【0010】
本発明のキッチンキャビネットにおいて、前記模様は、例えば、前記表面の下端部より又は幅方向端部よりに偏って配置された木立柄、花柄又はリーフ柄よりなることが好ましい。
かかる図柄を採用すれば、筆記用エリアに対する幼児の筆記が誘発される効果があるとともに、共用空間(リビングルームやダイニングルーム)に面するインテリアとしても、万人受けする適切なデザインに仕上げることができる。
【0011】
本発明のキッチンキャビネットにおいて、前記化粧パネルは、磁性材料よりなる基板にシリカを主成分とする釉薬を焼成させた琺瑯パネルよりなることが好ましい。
この場合、上記琺瑯パネルを採用すれば、その表面がガラス質であるから、筆記具が水性の場合は勿論のこと、油性の場合でも、書かれた絵や文字を確実に消去することができる。また、基板が磁性材料よりなるので、マグネットを利用した玩具、マグネットホルダ又はマグネットクリップ等を琺瑯パネルに吸着させることにより、幼児が遊び易い環境を整えることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の通り、本発明によれば、化粧パネルの表面の偏った位置に消去不能な模様が施されているので、キャビネット本体のインテリアとしてのデザイン性を有効に確保できるとともに、その偏った位置に模様を施すことで化粧パネルの表面の大部分に無地の筆記用エリアが設けられているので、筆記用エリアにお絵かきや落書きを行わせることにより、幼児が居ても台所作業を安心して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るキッチンキャビネットの斜視図である。
【図2】同キャビネットの正面図である。
【図3】同キャビネットの平面図である。
【図4】同キャビネットの右側面図である。
【図5】同キャビネットの左側面図である。
【図6】同キャビネットの背面図である。
【図7】化粧パネルの図柄の変形例を示す同キャビネットの正面図である。
【図8】化粧パネルの図柄の変形例を示す同キャビネットの正面図である。
【図9】化粧パネルの図柄の変形例を示す同キャビネットの正面図である。
【図10】キャビネット構造の変形例を示す同キャビネットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔キャビネットの構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るキッチンキャビネット1の斜視図である。また、図2〜図6は、それぞれ、同キャビネットの正面図、平面図、右側面図、左側面図及び背面図である。
なお、本発明は、主として化粧パネル10の表面模様のレイアウトに特徴があるから、そのレイアウトを理解し易いように、図面において、化粧パネル10以外の構成部材については破線で示すこととした。
【0015】
本実施形態のキッチンキャビネット1は、キッチンと共用空間(リビングルーム、ダイニングルーム又はそれらの兼用ルーム)とを仕切る状態で室内に設置される対面式のものであり、横長のほぼ直方体状のボックスよりなるキャビネット本体2と、このキャビネット本体2の上端部に取り付けられたカウンタートップ3とを備えている。
キャビネット本体2には、各種物品を内部に収容できる引き出しタイプの複数の収容部4が幅方向に並んで設けられている(図6参照)。
【0016】
上記カウンタートップ3は、例えば人造大理石製の人大プレートよりなり、図1及び図3に示すように、ガスコンロ等よりなる加熱器具5と、食器等の洗い場となるシンク6とが、当該カウンタートップ3の左右方向両端部に取り付けられている。
また、カウンタートップ3における加熱器具5の共用空間側には、熱風や飛沫が共用空間に飛び散るのを防止する飛散防止プレート7が立設されている。
【0017】
なお、図1には図示していないが、本実施形態のキッチンキャビネット1を実際に室内に設置してシステムキッチンを構成する場合には、当該キャビネット1の正面から見て左側面部分を部屋の壁面に接合させて施工されるとともに、加熱器具5の上方に換気扇用のレンジフードが設けられる。
【0018】
〔化粧パネルの構成〕
上記キャビネット本体2の共用空間側の壁部には、化粧パネル10が貼り付けられている。図示の例では、化粧パネル10は、キャビネット本体2の全幅とほぼ同じ幅方向長さを有する正面視長方形状を呈し、キャビネット本体2の共用空間側の壁面の全面を覆っている。
本実施形態の化粧パネル10は、磁性材料よりなる基板にシリカを主成分とする釉薬を焼成させた、2枚1組の琺瑯パネル11A,11Bよりなる。このため、化粧パネル10の表面は、筆記具による筆記とその消去が可能な光沢面となっている。もっとも、化粧パネル10の表面は、筆記及び消去が可能であれば非光沢面であってもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、右側の化粧パネル11Aの表面には、上下方向の下端部よりに偏った位置に、複数本の木々で構成された木立柄12よりなる消去不能な模様が施されている。
また、右側の琺瑯パネル11Aの表面における木立柄12以外の部分は、白色又はこれに近い淡い色の無地となっており、左側の琺瑯パネル11Bの表面は、すべて左側と同色の無地となっている。これにより、化粧パネル10の表面の大部分に筆記用エリア13が設けられている。
【0020】
〔本実施形態の効果〕
上記の通り、本実施形態のキッチンキャビネット1によれば、光沢面に形成された化粧パネル10の表面における偏った位置に木立柄12の模様を施すことにより、当該表面の大部分に無地の筆記用エリア13が設けられている。
このため、上記筆記用エリア13にお絵かきや落書き等の遊びを幼児に行わせながら、ユーザがキッチン側で台所作業を行うことができ、これにより、幼児が居る家庭の場合でも台所作業を安心して行うことができる。
【0021】
また、光沢面に形成された化粧パネル10の表面の偏った位置に消去不能な木立柄12の模様を施すレイアウトになっているので、表面全体に亘って無地にする場合に比べて共用空間側から見た場合の美観が損なわれることがなく、キャビネット本体2のインテリアとしてのデザイン性を有効に確保することができる。
【0022】
更に、本実施形態のキッチンキャビネット1によれば、化粧パネル10の模様が木立柄12よりなるので、図1及び図2に示すように、共用空間に面するインテリアとしても万人受けする適切なデザインに仕上がっている。
また、化粧パネル10の表面の下端部よりでかつ幅方向右端部よりに偏った位置に木立柄12が配置されているので、太陽、雲、虹、草木、昆虫等の動物その他の図柄を、筆記用エリア13に書き足したくなる幼児心理が働き、筆記用エリア13に対する幼児の筆記が誘発されるという効果もある。
【0023】
更に、本実施形態のキッチンキャビネット1では、化粧パネル10として琺瑯パネル11を採用しているので、その表面がガラス質となっている。
このため、筆記具が水性の場合に限らず油性の場合でも、書かれた絵や文字を確実に消去することができる。また、基板が磁性材料よりなるので、幼児がマグネットを利用した玩具を化粧パネル10に貼り付けて遊んだり、筆記具を保持するマグネットホルダやマグネットクリップ等を化粧パネル10に吸着させたりでき、幼児が遊び易い環境を整えることができる。
【0024】
〔化粧パネルの図柄の変形例〕
図7〜図9は、化粧パネル10の図柄の変形例を示している。
図7に示す変形例では、2枚1組の琺瑯パネル11A,11Bのそれぞれに、大きめのモノトーンの花柄14が2つずつ離れて施されている。これらの花柄14は、化粧パネル10の表面の下端部よりに偏った位置に配置されており、当該表面のその他の大部分は無地の筆記用エリア13となっている。
【0025】
また、図8に示す変形例では、2枚1組の琺瑯パネル11A,11Bのそれぞれに、幅方向にウェーブ状に連続したリーフ柄15が施されている。このリーフ柄15は、化粧パネル10の表面の下端部よりに偏った位置に配置されており、当該表面のその他の大部分は無地の筆記用エリア13として設けられている。
更に、図9に示す変形例では、2枚1組の琺瑯パネル11A,11Bのうち、右側の琺瑯パネル11Aに淡いピンク色を基調としたバラの花柄16が2つ施されている。この花柄16は、右側の琺瑯パネル11Aの右端部よりに偏った位置に配置されており、当該表面のその他の大部分は無地の筆記用エリア13として設けられている。
【0026】
このため、図7〜図9に示す変形例の場合にも、上記実施形態の場合と同様の作用効果が得られる。
特に、図7や図9に示す花柄14,16をモチーフにした模様の場合には、男児と女児のどちらかと言えば女児の嗜好により適っているため、筆記用エリア13に対する女児による筆記を誘発する可能性がより高まると考えられる。
【0027】
〔キャビネット構造の変形例〕
図10は、本発明を適用可能なキャビネット構造の変形例を示すキッチンキャビネット1の斜視図である。
この変形例にキャビネット1では、キャビネット本体2が、収容ボックス部2Aとその正面側に結合された正面フレーム2Bとを備えており、この正面フレーム2Bは、カウンタートップ3よりも所定高さだけ高くなっている。
【0028】
このため、図10に示す変形例では、化粧パネル10は、上記正面フレーム2Bの正面部分のうち、当該フレーム2Bの右側端部に設けられた収納棚17と、当該フレーム2Bの下フレーム部18とを除く部分に貼り付けられている。
このように、化粧パネル10は、キャビネット1のタイプによっては必ずしもキャビネット本体2の正面側全面を覆う必要はなく、キャビネット本体1の正面側の一部を覆うものであってもよい。
【0029】
〔その他の変形例〕
上記実施形態はすべて例示であり本発明の権利範囲を制限するものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での種々の変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、化粧パネル10が琺瑯パネル11A,11Bで構成されているが、筆記具による筆記とその消去が可能な面を表面に形成可能であれば、基材の材質は金属製でなくてもよく、例えば樹脂製パネルでもよい。
【0030】
また、化粧パネル10の表面に施す模様は、図示の図柄に限定されるものではなく、幼児の嗜好性がより高いその他の図柄、例えば、漫画雑誌やアニメーションのキャラクター、動物又は乗り物等で構成することにしてもよい。
更に、上記実施形態では、化粧パネル10を2枚1組の琺瑯パネル11A,11Bによって構成しているが、キャビネット1の間口やタイプによって化粧パネル10として必要な幅寸法が変化するので、その幅寸法に応じて、1枚或いは3枚以上の琺瑯パネルで化粧パネル10を構成することにしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、キッチンキャビネット1の左側面部分を部屋の壁面に接合させて設置する壁面接合タイプの場合を例示したが、本発明のキャビネット1は、壁面に接合せずに部屋の床面に独立して設置するアイランドタイプであってもよい。
更に、本発明のキャビネット1は、ユーザのニーズに応じてその他の種々のバリーエーションがあり得るものであり、例えば、加熱器具5がないシンク8のみのタイプや、飛散防止プレート7がないタイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 キッチンキャビネット
2 キャビネット本体
3 カウンタートップ
4 収容部
10 化粧パネル
11A 琺瑯パネル
11B 琺瑯パネル
12 木立柄
13 筆記用エリア
14 花柄(モノトーン)
15 リーフ柄
16 花柄(バラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチンと共用空間とを仕切る状態で室内に設置される対面式のキッチンキャビネットであって、
幅方向に並ぶ複数の収容部を有するキャビネット本体と、
前記キャビネット本体の上端部に取り付けられたカウンタートップと、
前記キャビネット本体の共用空間側に貼り付けられた化粧パネルとを備え、
前記化粧パネルの表面が、筆記具による筆記とその消去が可能な面よりなり、前記表面における上下方向及び幅方向のうちの少なくともいずれかの方向で偏った位置に消去不能な模様を施すことにより、当該表面の大部分に無地の筆記用エリアが設けられていることを特徴とするキッチンキャビネット。
【請求項2】
前記模様は、前記表面の下端部より又は幅方向端部よりに偏って配置された木立柄、花柄又はリーフ柄よりなる請求項1に記載のキッチンキャビネット。
【請求項3】
前記化粧パネルは、磁性材料よりなる基板にシリカを主成分とする釉薬を焼成させた琺瑯パネルよりなる請求項1又は2に記載のキッチンキャビネット。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−5698(P2012−5698A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145354(P2010−145354)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)
【Fターム(参考)】