説明

キャスター付き鞄の移動防止装置

【課題】 鞄内部の収納空間を減少させず、且つキャスター付き鞄を移動させる際のスムーズな移動が可能で、しかも操作が容易なキャスター付き鞄の移動防止装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係るキャスター付き鞄の移動防止装置は、キャスター2が設けられた鞄1の底面に取り付けられるベース3と、ベース3に一端部が回転可能に取り付けられ、他端部がベース3に近接する収納位置と、地面Gに係合し得る係合位置との間を揺動するように揺動操作可能な揺動部材5と、一端部が揺動部材5に回転可能に連結され、他端部がベース3に回転可能に連結されるとともに揺動部材5の揺動に連動してベース3の底面に沿って摺動可能に連結された第一のリンク7と、一端部が第一のリンク7の他端部に回転可能に連結され、第一のリンク7の他端部と共にベース3の底面に沿って摺動するように構成された第二のリンク9と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスター付き鞄の移動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部にキャスターが設けられたロッカーやテーブル等の什器を所望の設置位置から動かないように固定するための移動防止装置が種々提案されている。例えば、特許文献1では、キャスター付きのロッカー等の底面と地面との間に上下動可能に構成された固定用支持脚が設けられており、この固定用支持脚の上部に連結された固定用レバーを押し下げ操作することで固定用支持脚を接地させて、ロッカー等の移動を防止している。
【0003】
また、特許文献2には、両端部にキャスターが取り付けられ、地面に平行に延びる接地脚を有するテーブルが記載されている。このテーブルは、接地脚の内部に収容されたストッパー装置によってテーブルの移動を防止している。このストッパー装置は、回動軸を中心にして揺動可能な傾動部材の先端に固定された接地部材が、接地脚の内部に収容された状態から、傾動部材の揺動に伴なって接地脚の底面から突出して接地することでテーブルの移動を防止している。このとき、傾動部材の上方で回動軸を中心にして揺動可能に設けられ、接地脚の上面の開口部から操作可能な操作部材の一端部が押し下げられることで、傾動部材が下方へ押し下げられ揺動するようになっている。
【特許文献1】特開平11−192805号公報
【特許文献2】特許第3551811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された移動防止装置では、固定用レバーによって固定用支持脚を上方から押し下げることが可能となるように、固定用レバー及び固定用支持脚が上下に配置されている。そのため、固定用支持脚が接地しないように配置され、ロッカー等が移動可能になった状態においても、固定用支持脚がロッカー等の底面から大きく突出する。その結果、地面に突起物等がある場合には、固定用支持脚がこの突起物等と衝突し、このロッカー等をスムーズに移動させることができない。
【0005】
これに対し、特許文献2に記載された移動防止装置では、接地部材が接地脚の内部に収容されるようになっているため、地面に突起物等がある場合においてもテーブルをスムーズに移動させることができる。しかしながら、この特許文献2の移動防止装置では、操作部材及び傾動部材が上下に配置されていることから、高さ方向の占有スペースが大きくなる。
【0006】
本発明では、キャスター付き鞄を対象としており、その移動防止装置として特許文献1に記載のものを適用した場合には、地面に突起物等があると上記のようにスムーズな移動を可能にすることができない。一方、特許文献2に記載のものを適用した場合には、スムーズな移動は可能になるが、移動防止装置が鞄内部の収納空間の一部を占有してしまうことになり、収納空間を減少させてしまうことになる。さらに、特許文献2に記載の移動防止装置は、その操作部材が接地脚の上面の開口部から操作可能となっているため、これをキャスター付きの鞄に適用すると、この操作部材を鞄の内部から操作することになり、操作に手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、鞄内部の収納空間を減少させず、且つキャスター付き鞄を移動させる際のスムーズな移動が可能で、しかも操作が容易なキャスター付き鞄の移動防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るキャスター付き鞄の移動防止装置は、上記問題を解決するためになされたものであり、キャスターが設けられた鞄の底面に取り付けられるベースと、前記ベースに一端部が回転可能に取り付けられ、他端部が当該ベースに近接する収納位置と、地面に係合し得る係合位置との間を揺動するように揺動操作可能な揺動部材と、一端部が前記揺動部材に回転可能に連結され、他端部が前記ベースに回転可能に連結されるとともに前記揺動部材の揺動に連動して当該ベースの底面に沿って摺動可能に連結された第一のリンクと、一端部が前記第一のリンクの他端部に回転可能に連結され、当該第一のリンクの他端部と共に前記ベースの底面に沿って摺動するように構成された第二のリンクと、を備え、前記ベースは、前記第二のリンクに設けられた係止部を係止して、前記揺動部材を前記係合位置で保持する被係止部を有しており、前記第二のリンクの他端部によって前記係止部と被係止部との係止状態を解除操作可能に構成され、前記係合位置で、前記第二のリンクの他端部が当該係止状態の解除操作可能な前進位置に配置され、前記収納位置で、前記第二のリンクの他端部が前記ベースに隠れる後退位置に配置されるとともに、当該揺動部材及び前記第一のリンクが前記ベースの底面に沿うように配置されることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、移動防止装置がキャスター付き鞄の底面に設けられているため、鞄内部の収納空間を減少させることがない。
【0010】
また、地面に係合し得る揺動部材が揺動操作可能に構成されているので、従来例のように地面に接地する部材とは別に構成された操作用の部材が不要である。さらに、この構成によれば、揺動運動によって揺動部材を移動させているため、揺動部材が収納位置に配置された状態で鞄の底面に沿うように配置される。そして、第一のリンクも、一端部が回転可能であるとともに、他端部が回転可能で且つ摺動可能に連結されているため、揺動部材の揺動に連動して揺動し、揺動部材が収納位置に配置された状態で鞄の底面に沿うように配置される。その結果、鞄の底面からの移動防止装置全体の突出量が小さくなる。したがって、地面に突起物等があっても移動防止装置が衝突しにくく、鞄の移動をスムーズに行うことができる。
【0011】
さらに、この構成によれば、揺動部材が揺動操作可能に構成されるとともに、揺動部材を係合位置で保持する係止部と被係止部との係止状態を解除する第二のリンクの他端部が、係止状態の解除操作可能な前進位置に配置されるようになっている。そのため、従来例として説明したように鞄の内部から操作する必要がなく、移動防止装置の操作が容易である。
【0012】
また、第二のリンクの他端部は、揺動部材が収納位置にある状態ではベースに隠れる後退位置に配置されているため、揺動部材を収納位置から係合位置へ揺動操作する際に誤って操作されることがなく、移動防止装置の操作性がよい。
【0013】
上記キャスター付き鞄の移動防止装置において、前記揺動部材の他端部は、地面に係合する接地面にゴム製の係合部材を有していることが好ましい。
【0014】
こうすることで、揺動部材の他端部と地面との摩擦抵抗が高まり、キャスター付き鞄の移動防止効果を高めることができる。
【0015】
また、上記キャスター付き鞄の移動防止装置において、前記揺動部材を前記係合位置から前記収納位置に向けて付勢し、前記係止状態を解除すると、前記揺動部材を前記収納位置に移動させて保持する第一の付勢手段をさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、上記係止部と被係止部との係止状態の解除操作を行うと、揺動部材が自動的に収納位置に移動するので、移動防止装置の操作をより容易にすることができる。
【0017】
また、上記キャスター付き鞄の移動防止装置において、前記係止部を前記被係止部に向けて付勢することによって、前記第二のリンクの一端部を中心とする前記係止部の揺動移動を伴なって前記係止部に前記被係止部を係止させる第二の付勢手段をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、揺動部材が係合位置に移動すると、第二のリンクの係止部が自動的にベースの被係止部に係止され、揺動部材を係合位置に自動的に保持することができる。また、第二の付勢手段の付勢力に抗して第二のリンクを移動させるだけで揺動部材の係合位置での保持状態の解除を行うことができる。そのため、移動防止装置の操作をさらに容易にすることができる。
【0019】
さらに上記構成において、前記揺動部材は、前記収納位置で前記第一のリンク及び第二のリンクを収納する収納部を備えることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、キャスター付き鞄の移動防止装置のさらなる省スペース化を図り、デザイン性を良くすることができる。
【0021】
また、本発明に係るキャスター付き鞄は、上記問題を解決するためになされたものであり、上記移動防止装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るキャスター付き鞄の移動防止装置によれば、鞄内部の収納空間を減少させず、且つキャスター付き鞄を移動させる際のスムーズな移動が可能で、しかも操作が容易なキャスター付き鞄の移動防止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るキャスター付き鞄の移動防止用ストッパーの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る移動防止用ストッパーの分解斜視図、図2は図1の移動防止用ストッパーの組立状態を示す正面図、図3は図2の移動防止用ストッパーの縦断面図、図4は図2の移動防止用ストッパーの要部斜視図、図5は図2の移動防止用ストッパーの収納状態を示す縦断面図である。尚、本実施形態では、図1及び図4のX方向を「右」、図1及び図3〜図5のY方向を「前」と称することとする。
【0024】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係るキャスター付き鞄の移動防止用ストッパーは、キャスター2付きの鞄1の底面に取り付けられるベース3と、後端部(一端部)がベース3に回転可能に連結され、前端部(他端部)が地面Gに係合してキャスター付き鞄1の移動を防止するための揺動部材5と、揺動部材5の前端部を地面Gに係合させた状態で保持するための第一のリンク7及び第二のリンク9とを備えている。
【0025】
ベース3は、図3に示すように、鞄1の側面に沿って上下方向に延びる板状の側壁部3aと、鞄1の底面に沿って前後方向に延びる板状の底壁部3bとを有する断面略L字状に形成されており、側壁部3aを鞄1の側面に当接した状態で、後述するガイド板11と共に底壁部3bを鞄1の底面にネジ止め(図示せず)することで固定されている。また、底壁部3bには、図1〜3に示すように、左右端縁及び後端縁に沿って下方へ突出する左右突出壁3c,3c及び後突出壁3dがそれぞれ形成されており、揺動部材5が後述する収納位置にある状態でこれらの内側に収容されるようになっている。
【0026】
ガイド板11は、図1に示すように、ベース3の底面に沿って前後方向に延びる長方形状の基部11aと、基部11aの左右端縁に沿って下方へ起立した一対の左右起立壁11b,11bと、基部11aの前端縁に沿って下方へ起立した前起立壁11cとを有している。この左右起立壁11b,11b及び前起立壁11cの内側には、揺動部材5が後述する収納位置に配置された図5に示す状態で、第一のリンク7を収納するようになっている。また、左右起立壁11b,11bの前端縁11bf,11bfと前起立壁11cとは離間されており、図5に示す状態で、後述する図1に示す挿通軸13をこれらの間に配置するようになっている。
【0027】
また、図1に示すように、左右起立壁11b,11bの後端部にはそれぞれ、挿通孔11d,11dが対を成して形成されており、後述する図1に示す挿通軸15が挿通されるようになっている。また、左右起立壁11b,11bの中央部にはそれぞれ、前後方向に延びる長穴11e,11eが対を成して形成されており、図1に示すスライド軸17が挿通されるようになっている。
【0028】
また、図1に示すように、基部11aの前端縁が矩形状に切り欠かれるとともに、前起立壁11cの上端縁が矩形状に切り欠かれることにより、基部11aと前起立壁11cとで形成される角部の中央部分に断面L字状の開口部11fが形成されている。前起立壁11cの開口部11fには、図4に示すように、後述する第二のリンク9が挿通され、前起立壁11cの内側上端縁11cu及び内側左右端縁11cs,11csによって第二のリンク9の下方向及び左右方向への移動が規制するようになっている。また、基部11aの矩形状の切欠きによって形成された前端縁11g(被係止部)には、後述する第二のリンク9に形成された突部9cの後端縁9cr(係止部)が係止するようになっている。尚、本実施形態では、ガイド板11をベース3と別体で構成しているが、一体的に構成してもよい。
【0029】
揺動部材5は、図2〜図4に示すように、平板状であり、後端部(一端部)がベース3に回転可能に取り付けられており、前端部(他端部)が地面Gに係合する係合位置と、図5に示すように前端部がベース3の底面に近接する収納位置との間を揺動するように構成されている。より詳細には、揺動部材5は、図1から図4に示すように、平面視矩形状の本体部5aと、本体部5aの前端部から左右方向に延びる延出部5b,5bとを有している。この本体部5aには、その左右端縁に沿って上方へ起立した一対の左右起立壁5c,5cが形成されている。この左右起立壁5c,5cの内側には、揺動部材5が収納位置に配置された図5に示す状態で、ガイド板11,第一のリンク7,第二のリンク9及び後述する解除操作部9eが収納されるようになっている。また、左右起立壁5c,5cの後端部にはそれぞれ、挿通孔5d,5dが対を成して形成されている。そして、揺動部材5の左右起立壁5c,5cをガイド板7の左右起立壁11b,11bの外側に配置した状態で、左右起立壁5c,5cの挿通孔5d,5d及びガイド板11の挿通孔11d,11dに、図1に示す挿通軸15を挿通することにより、揺動部材5がガイド板11に取り付けられるとともに挿通軸15を中心に揺動可能となっている。また、この挿通軸15は、図示しないねじりコイルばね(第一の付勢手段)に挿通されており、このねじりコイルばねの一端部がベース3を、他端部が揺動部材5を押圧することによって、揺動部材5が図3に示す係合位置から図5に示す収納位置に向けて付勢されるようになっている。また、揺動部材5の前端部は、図5に示す収納位置において、ベース3の底壁部3bの前端縁3eから突出するようになっており、この突出した前端部を下方に押し下げることにより揺動操作可能となっている。
【0030】
また、図4に示すように、左右起立壁5c,5cの中央より前端部寄りの位置にもそれぞれ、挿通孔5e,5eが対を成して形成されており、挿通軸13が挿通されるようになっている。
【0031】
揺動部材5の本体部5aの前端部及び延出部5b,5bの地面Gに係合する接地面には、図1〜図3に示すように、ゴム製の係合部材19が取り付けられており、揺動部材5の前端部は、この係合部材19を介して地面Gに係合するようになっている。尚、本実施形態では、図3に示すように、後述する揺動部材5の前端部が地面Gに係合して係合位置に保持された状態において、鞄1の底面に設けられたキャスター2が地面Gから浮くように構成されている。
【0032】
第一のリンク7は、図1に示すように、平面視矩形状であり、左右端縁に沿って上方へ起立する左右起立壁7a,7aを有している。この左右起立壁7a,7aの前端部(一端部)には挿通孔7b,7bが、後端部(他端部)には挿通孔7c,7cが各端部でそれぞれ対を成すように形成されている。そして、図2〜図4に示すように、第一のリンク7の左右起立壁7a,7aを揺動部材5の左右起立壁5c,5cの内側にした状態で、前端部の挿通孔7b,7b及び揺動部材5の挿通孔5e,5eに、挿通軸13を挿通することにより、第一のリンク7の前端部が挿通軸13を中心に回転可能に連結されている。一方、第一のリンク7の後端部は、その左右起立壁7a,7aをガイド板11の左右起立壁11b,11bの内側にした状態で、当該後端部の挿通孔7c,7c及びガイド板11の長穴11e,11eに、図1に示すスライド軸17を挿通することにより、スライド軸17を中心に回転可能に連結されるとともに、ガイド板11の長穴11e,11eに沿って摺動可能に連結されている。このように構成することで、揺動部材5の揺動に連動して第一のリンク7の後端部が摺動し、第一のリンク7が揺動するようになっている。そして、揺動部材5が収納位置に配置された状態で、第一のリンク7は、ガイド板11の左右起立壁11b,11b及び前起立壁11cの内側に収納されるとともに、第一のリンク7の左右起立壁7a,7aの内側に第二のリンク9の後端側の領域を収容するようになっている。
【0033】
第二のリンク9は、図1に示すように、平面視矩形状であり、左右端縁に沿って下方へ起立する左右起立壁9a,9aを有している。この左右起立壁9a,9aの後端部(一端部)にはそれぞれ、挿通孔9b,9bが対を成して形成されている。そして、図2〜図4に示すように、第二のリンク9の左右起立壁9a,9aを第一のリンク7の左右起立壁7a,7aの内側にした状態で、第二のリンク9の挿通孔9b,9b及び第一のリンク7の後端部の挿通孔7c,7cにスライド軸17を挿通することにより、第二のリンク9の後端部が第一のリンク7の後端部に回転可能に連結されている。そして、第二のリンク9の前端部がガイド板11の前起立壁11cの開口部に挿通されることにより、揺動部材5の揺動に連動して第二のリンク9が第一のリンク7の後端部と共にガイド板11の底面に沿って摺動するようになっている。また、左右起立壁9a,9aの前端部には、切欠部9ac,9acが形成されており、揺動部材5が収納位置にある図5に示す状態で、ガイド部材11の左右起立壁11b,11bの前端縁11bf,11bfと前起立壁11cとの間に配置された挿通軸13を逃がすようになっている。
【0034】
また、図1に示すように、第二のリンク9の上面における前後方向の中央部付近には、突部9cが形成されている。この突部9cは、収納位置から係合位置へ向かう揺動部材5の揺動に連動して前進し、揺動部材5が係合位置に到達したときに、その後端縁9crがガイド板11の前端縁11gより前方に配置される。このとき、突部9cは、後述する板ばね21による上方への付勢力によって、スライド軸17を中心とする上方への揺動移動を伴なってガイド板11の基部11aの切欠き部分11hに落ち込む。これにより、揺動部材5が収納位置に向けて揺動しようとすると、図3及び図4に示すように、突部9cの後端縁9crがガイド板11の前端縁11gに係止され、第二のリンク9及び第一のリンク7の移動が規制されて揺動部材5が係合位置に保持されるようになっている。
【0035】
第二のリンク9の下面側には、図3に示すように、第二のリンク9を上方へ付勢するための板ばね21(第二の付勢手段)が取り付けられている。より詳細には、この板ばね21は、図1に示すように前後方向に延びる帯状に形成されており、後端部に形成された取付部21a、後端部から前端部に向けて延びる胴部21b、及び前端部に設けられた押圧部21cで構成されている。そして、図5に示す揺動部材5の収納位置において、第二のリンク9の後端部に設けられた板ばね固定部9dに取付部21aが固定された状態で、胴部21bが第二のリンク9の前端部に向かって上方へ傾斜するとともに、押圧部21cの先端21dがガイド部材11の前起立壁11cより後方で内側上端縁11cuより上方に位置し、胴部21bの後端縁21brがガイド部材11の内側上端縁11cuより上方に位置するように配置されるようになっている。このような構成により、揺動部材5の収納位置から係合位置への揺動に連動して板ばね21が前進すると、板ばね21の胴部21bがガイド部材11の前起立壁11cの内側上端縁11cuに当接し、押圧部21cが上方へ押し上げられ、第二のリンク9を押圧するようになっている。
【0036】
第二のリンク9の前端部(他端部)には、図1〜図4に示すように、上記のガイド板11の前端縁11g(被係止部)と第二のリンク9の突部9cの後端縁9cr(係止部)との係止状態を解除するための解除操作部9eが設けられている。この解除操作部9eは、揺動部材5の揺動に連動し、図3に示すように揺動部材5が係合位置にある状態でベース3の前端縁3eから突出して解除操作可能な前進位置に配置されるようになっている。この前進位置で解除操作部9eを下方へ押し下げると、第二のリンク9の突部9cの後端縁9crが下方へ移動され、ガイド板11の前端縁11gとの係止状態が解除される。このとき、揺動部材5は上記のように図示しないねじりコイルばねによって収納位置へ向けて付勢されているので、揺動部材5が収納位置に揺動移動するようになっている。そして、解除操作部9eは、この揺動に連動して、図5に示すように揺動部材5が収納位置にある状態で、底壁部3bの前端縁3eから突出せずベース3に隠れる後退位置に配置されるとともに、揺動部材5の左右起立壁5c,5cの内側に収納されるようになっている。尚、本実施形態では、解除操作部9eを第二のリンク9と別体で構成しているが、一体的に構成してもよい。
【0037】
次に、上記のように構成されたキャスター付き鞄の移動防止装置の使用方法について説明する。
【0038】
キャスター付き鞄1を所望の位置で動かないように固定するときは、キャスター2が地面Gから浮くように鞄1を持ち上げる。ついで、図5に示す揺動部材5が収納位置に配置された状態から、ベース3の前端縁3eから突出した揺動部材5の前端部を下方へ押し下げ、揺動部材5を揺動移動させることにより第二のリンク9を前進させる。そして、図2及び図3に示すように、揺動部材5を係合位置に配置した状態で揺動操作を終了すると、第二のリンク9の突部9cの後端縁9crがガイド板11の前端縁11gに係止する。これにより、揺動部材5の前端部の係合部材19が地面Gに係合した状態で保持され、キャスター付き鞄1が所望の位置で動かないように固定される。
【0039】
次いで、キャスター付き鞄1を移動させるときには、図2及び図3に示すベース3の前端縁3eから突出した第二のリンク9の解除操作部9eを下方へ押し下げることにより、第二のリンク9とガイド板11との係止状態が解除される。そうすると、収納位置に向けて付勢された揺動部材5が自動的に揺動移動して図5に示す収納位置で保持される。このとき、図5に示すように、揺動部材5の内部に、ガイド板11,第一のリンク7,第二のリンク9及び解除操作部9eが収納され、揺動部材5がベース3の底面に沿うように配置される。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、板状の揺動部材5の内部に、揺動部材5を係合位置に保持、及びその保持状態を解除するための機構を収納するように構成しているため、鞄1の底面からの移動防止装置全体の突出量が小さくなる。そのため、地面に突起物等があっても移動防止装置が衝突しにくく、鞄の移動をスムーズに行うことができる。
【0041】
また、ベース3の前端縁3eから突出した揺動部材5の前端部を押し下げて係合位置に揺動操作するだけで揺動部材5が自動的に保持され、同じくベース3の前端縁3eから突出する解除操作部9eを押し下げるだけで、揺動部材5の保持状態が解除され、揺動部材5が自動的に収納位置に揺動移動して保持されるため、移動防止装置の操作が容易である。
【0042】
さらに、解除操作部9eは、揺動部材5が係合位置に配置されているときにのみ、ベース3の前端縁3eから突出して解除操作可能な位置に配置されるため、揺動部材5を係合位置に揺動移動させる際に解除操作部9eを誤って操作することがなく、移動防止装置の操作性がよい。
【0043】
以上、本発明に係る表示装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。上記実施形態では、図3に示すように、揺動部材5の前端部が地面Gに係合して係合位置に保持された状態において、鞄1の底面に設けられたキャスター2が地面Gから浮くように構成されているが、係合部材15と地面Gとの間に摩擦抵抗が発生するように構成されていれば、これに限定されるものではない。例えば、係合部材19が接地し弾性変形している状態で、キャスター2が接地していてもよい。
【0044】
また、係合部材19の材質はゴムに限らず、弾性を有する樹脂や表面の粗い樹脂等を用いてもよい。或いは、係合部材19を設けず、揺動部材5の前端部を直接地面Gに係合させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動防止用ストッパーの分解斜視図である。
【図2】図1の移動防止用ストッパーの組立状態を示す正面図である。
【図3】図2の移動防止用ストッパーの縦断面図である。
【図4】図2の移動防止用ストッパーの要部斜視図である。
【図5】図2の移動防止用ストッパーの収納状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 鞄
2 キャスター
3 ベース
5 揺動部材
7 第一のリンク
9 第二のリンク
9c 突部
9cr 後端縁(係止部)
9e 解除操作部
11 ガイド板
11g 前端縁(被係止部)
13,15 挿通軸
17 スライド軸
19 係合部材
21 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスターが設けられた鞄の底面に取り付けられるベースと、
前記ベースに一端部が回転可能に取り付けられ、他端部が当該ベースに近接する収納位置と、地面に係合し得る係合位置との間を揺動するように揺動操作可能な揺動部材と、
一端部が前記揺動部材に回転可能に連結され、他端部が前記ベースに回転可能に連結されるとともに前記揺動部材の揺動に連動して当該ベースの底面に沿って摺動可能に連結された第一のリンクと、
一端部が前記第一のリンクの他端部に回転可能に連結され、当該第一のリンクの他端部と共に前記ベースの底面に沿って摺動するように構成された第二のリンクと、を備え、
前記ベースは、前記第二のリンクに設けられた係止部を係止して、前記揺動部材を前記係合位置で保持する被係止部を有しており、
前記第二のリンクの他端部によって前記係止部と被係止部との係止状態を解除操作可能に構成され、前記係合位置で、前記第二のリンクの他端部が当該係止状態の解除操作可能な前進位置に配置され、
前記収納位置で、前記第二のリンクの他端部が前記ベースに隠れる後退位置に配置されるとともに、当該揺動部材及び前記第一のリンクが前記ベースの底面に沿うように配置されることを特徴とする、キャスター付き鞄の移動防止装置。
【請求項2】
前記揺動部材の他端部は、地面に係合する接地面にゴム製の係合部材を有していることを特徴とする、請求項1に記載のキャスター付き鞄の移動防止装置。
【請求項3】
前記揺動部材を前記係合位置から前記収納位置に向けて付勢し、前記係止状態を解除すると、前記揺動部材を前記収納位置に移動させて保持する第一の付勢手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキャスター付き鞄の移動防止装置。
【請求項4】
前記係止部を前記被係止部に向けて付勢することによって、前記第二のリンクの一端部を中心とする前記係止部の揺動移動を伴なって前記係止部に前記被係止部を係止させる第二の付勢手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のキャスター付き鞄の移動防止装置。
【請求項5】
前記揺動部材は、前記収納位置で前記第一のリンク及び第二のリンクを収納する収納部を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のキャスター付き鞄の移動防止装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の移動防止装置を備えることを特徴とする、キャスター付き鞄。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−142366(P2008−142366A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334050(P2006−334050)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000102290)エースラゲージ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】